1: 2015/10/28(水) 04:22:00.734 ID:V/RrCZIj0
女の子「遺伝子がそれを存続させるために存在するのなら、個体の生理的欲求はもはや無機的な手続きにすぎません」
女の子「しかしどうでしょう。およそプログラムされてはいない欲求が多すぎです。その多くは醜く歪曲した虚ろなものです」
女の子「人間は進化で社会性を獲得し、あるいは社会性を個体が強いられています。ある意味で、社会的な欲求もまた手続きなのかもしれません」
女の子「しかしわたしはこれに同意しません。不必要で、あるいは堕落的で、醜悪な欲、これが欲深さを拡充し、遺伝子の目的と個体の手続きを阻害もしくは減衰させているのです」
女の子「永遠の存在はありません。全ては飽和し均一になるルールです。この不要な欲に基づく退化、といいましょうか、これはこの視点から言えば種の持ちうる手続きの飽和であり、すべての欲求は欲深さの極大を持って均一化されうる」
女の子「……ずっと、先のことです。わたしが氏んだ、ずっと後。なにかのきっかけで、流れが変わるかもしれません」
女の子「……こういうはなし、きいてくれるの、あなたぐらい」
女の子「ふふ、そう、ですよ。適当な思いつきを、だらだらと話すのに、真剣に、考えて、きいてくれるのは」
女の子「こういうのが、手続きにあたるとおもいますか」
女の子「……いえ、わたしは……べつに、悟ったり、諦めてるわけじゃ、ないです」
女の子「しかしどうでしょう。およそプログラムされてはいない欲求が多すぎです。その多くは醜く歪曲した虚ろなものです」
女の子「人間は進化で社会性を獲得し、あるいは社会性を個体が強いられています。ある意味で、社会的な欲求もまた手続きなのかもしれません」
女の子「しかしわたしはこれに同意しません。不必要で、あるいは堕落的で、醜悪な欲、これが欲深さを拡充し、遺伝子の目的と個体の手続きを阻害もしくは減衰させているのです」
女の子「永遠の存在はありません。全ては飽和し均一になるルールです。この不要な欲に基づく退化、といいましょうか、これはこの視点から言えば種の持ちうる手続きの飽和であり、すべての欲求は欲深さの極大を持って均一化されうる」
女の子「……ずっと、先のことです。わたしが氏んだ、ずっと後。なにかのきっかけで、流れが変わるかもしれません」
女の子「……こういうはなし、きいてくれるの、あなたぐらい」
女の子「ふふ、そう、ですよ。適当な思いつきを、だらだらと話すのに、真剣に、考えて、きいてくれるのは」
女の子「こういうのが、手続きにあたるとおもいますか」
女の子「……いえ、わたしは……べつに、悟ったり、諦めてるわけじゃ、ないです」
5: 2015/10/28(水) 04:27:32.671 ID:V/RrCZIj0
女の子「……ひとは、欲深さから生まれました」
女の子「欲深さそのものです。それに、欲が深いだとか、欲求が多いだとか、そもそも議論が成立しません」
女の子「……でも、それで、非生産的な感情の、嫌な気持ちの連鎖が、無意味に繰り返されます」
女の子「……いえ、無意味に、というのは、よくないですね」
女の子「すべての物事存在に意味などありません。あるのはそうである現象と未来の結果だけです」
女の子「現象は観測される限りしか、認識できません。未来の結果はすでに決定しています」
女の子「だから……ぜんぶ、手続きなんです」
女の子「……あなたと、こうして、いっしょにいるのも」
女の子「……そう考えると、悔しくて、寂しくて」
女の子「……」
女の子「欲深さそのものです。それに、欲が深いだとか、欲求が多いだとか、そもそも議論が成立しません」
女の子「……でも、それで、非生産的な感情の、嫌な気持ちの連鎖が、無意味に繰り返されます」
女の子「……いえ、無意味に、というのは、よくないですね」
女の子「すべての物事存在に意味などありません。あるのはそうである現象と未来の結果だけです」
女の子「現象は観測される限りしか、認識できません。未来の結果はすでに決定しています」
女の子「だから……ぜんぶ、手続きなんです」
女の子「……あなたと、こうして、いっしょにいるのも」
女の子「……そう考えると、悔しくて、寂しくて」
女の子「……」
6: 2015/10/28(水) 04:35:32.457 ID:V/RrCZIj0
女の子「現象なんです」
女の子「むかし、小学生のときですね、子供会で、公民館の集会所に集まって、夏の映画鑑賞会があったんです」
女の子「そのときみたのはアニメ版の『銀河鉄道の夜』なんですが、ゆったりした話で、すこし眠くなってしまったんですね」
女の子「でもいちばん最後、エンドロールのあたりです。『春と修羅』の引用が音読されて、一瞬で目が覚めました」
女の子「わたしがずっと、考えていたことの、ひとつの解釈でした」
女の子「びっくりです。猫ちゃんが立って歩いて汽車にのる話が、こんなラストの言葉で、思わず泣いてしまいました」
女の子「え、みたことないんですか」
女の子「『春と修羅』はいつも持ってるので貸してあげても構いませんよ」
女の子「いえ、何冊か、もっていましてね、へへ」
女の子「むかし、小学生のときですね、子供会で、公民館の集会所に集まって、夏の映画鑑賞会があったんです」
女の子「そのときみたのはアニメ版の『銀河鉄道の夜』なんですが、ゆったりした話で、すこし眠くなってしまったんですね」
女の子「でもいちばん最後、エンドロールのあたりです。『春と修羅』の引用が音読されて、一瞬で目が覚めました」
女の子「わたしがずっと、考えていたことの、ひとつの解釈でした」
女の子「びっくりです。猫ちゃんが立って歩いて汽車にのる話が、こんなラストの言葉で、思わず泣いてしまいました」
女の子「え、みたことないんですか」
女の子「『春と修羅』はいつも持ってるので貸してあげても構いませんよ」
女の子「いえ、何冊か、もっていましてね、へへ」
7: 2015/10/28(水) 04:41:34.815 ID:V/RrCZIj0
女の子「……眠い、ですか」
女の子「人間は毎日、平均して一日の1/4を眠ってすごします」
女の子「氏ぬ頃には、累積として数十年の眠りを経ているわけですね」
女の子「わたしはこのはなしをきいて、セミの一生を思い浮かべます」
女の子「セミは地上に出る数週間のために、数年から十数年前、土の中ですごします」
女の子「それがセミという遺伝子の現象の有り様であって、個体の義務付けられた手続きです」
女の子「そこに善意も悪意も、意志も思想もありません」
女の子「また結果でも規則でもありません」
女の子「だからこそ、わたしは寂しく思うのです」
女の子「人間は毎日、平均して一日の1/4を眠ってすごします」
女の子「氏ぬ頃には、累積として数十年の眠りを経ているわけですね」
女の子「わたしはこのはなしをきいて、セミの一生を思い浮かべます」
女の子「セミは地上に出る数週間のために、数年から十数年前、土の中ですごします」
女の子「それがセミという遺伝子の現象の有り様であって、個体の義務付けられた手続きです」
女の子「そこに善意も悪意も、意志も思想もありません」
女の子「また結果でも規則でもありません」
女の子「だからこそ、わたしは寂しく思うのです」
9: 2015/10/28(水) 04:46:25.185 ID:V/RrCZIj0
女の子「人間以外の動物あるいは植物、いえ、その他の存在に感情があるのか、という議論があります」
女の子「魚はハラワタを取り出されるとき何を思っているのか」
女の子「屠殺されるために肥やされる豚は餌に食らいつきながら何を考えているのか」
女の子「……ふふ」
女の子「これが人間の欲のなす力です」
女の子「嫌なことは見えない聞こえない考えないわからない知らない」
女の子「反知的欲求ですね。そんなことを考えて理解したとしてご飯が喉を通らなくなるだけです」
女の子「人間は欲でできているんです」
女の子「……もちろん、わたしも」
女の子「魚はハラワタを取り出されるとき何を思っているのか」
女の子「屠殺されるために肥やされる豚は餌に食らいつきながら何を考えているのか」
女の子「……ふふ」
女の子「これが人間の欲のなす力です」
女の子「嫌なことは見えない聞こえない考えないわからない知らない」
女の子「反知的欲求ですね。そんなことを考えて理解したとしてご飯が喉を通らなくなるだけです」
女の子「人間は欲でできているんです」
女の子「……もちろん、わたしも」
10: 2015/10/28(水) 04:52:23.403 ID:V/RrCZIj0
女の子「……ふふ、さっきの、悪趣味な例で、ふふふ、どきどきしてきてしまいました」
女の子「こういう自分が、嫌なんです……嫌、嫌、ふふ、嫌なんですよ」
女の子「嫌いは好きの裏返し。すばらしい言葉です」
女の子「嫌い、嫌い、嫌い、好き、好き、好き……」
女の子「……わたしのこと、きらいって言ってください」
女の子「……意地悪なんですね。じゃあ好きって言えるんですか」
女の子「…………」
女の子「……嫌い。そういうふうに、軽いのが、嫌い、なんですからね」
女の子「……でも、好き」
女の子「……や、やっぱり、嘘、嫌い」
女の子「……」
女の子「こういう自分が、嫌なんです……嫌、嫌、ふふ、嫌なんですよ」
女の子「嫌いは好きの裏返し。すばらしい言葉です」
女の子「嫌い、嫌い、嫌い、好き、好き、好き……」
女の子「……わたしのこと、きらいって言ってください」
女の子「……意地悪なんですね。じゃあ好きって言えるんですか」
女の子「…………」
女の子「……嫌い。そういうふうに、軽いのが、嫌い、なんですからね」
女の子「……でも、好き」
女の子「……や、やっぱり、嘘、嫌い」
女の子「……」
13: 2015/10/28(水) 04:59:21.689 ID:V/RrCZIj0
女の子「……魚がハラワタを取り出される時の話、していいですか」
女の子「……わたしの実家は、魚屋なんですね」
女の子「……父は、大事な娘を魚臭くしちゃいけねえ、って、あまり手伝ったり、とかは、なかったんですけど」
女の子「子供のとき、ある日父が風邪をひいて、母と二人で多少でも店をやろうと、わたしも手伝ったことがあります」
女の子「もちろん捌いたりできないので、荷物運びとか、接客とかですけどね」
女の子「で、母親が捌くところを、珍しいものですから、見てるんです」
女の子「……その魚が鯖、って、そういうの、面白くないので、やめてください」
女の子「見てるんです。魚の目が、ちらちらと、わたしと目が合うんです」
女の子「包丁が入るとき、引っくりかえされるとき、ゴミ箱に頭部が切り落とされて放り込まれるとき」
女の子「……ふふ、趣味が、悪いですかね」
女の子「……わたしの実家は、魚屋なんですね」
女の子「……父は、大事な娘を魚臭くしちゃいけねえ、って、あまり手伝ったり、とかは、なかったんですけど」
女の子「子供のとき、ある日父が風邪をひいて、母と二人で多少でも店をやろうと、わたしも手伝ったことがあります」
女の子「もちろん捌いたりできないので、荷物運びとか、接客とかですけどね」
女の子「で、母親が捌くところを、珍しいものですから、見てるんです」
女の子「……その魚が鯖、って、そういうの、面白くないので、やめてください」
女の子「見てるんです。魚の目が、ちらちらと、わたしと目が合うんです」
女の子「包丁が入るとき、引っくりかえされるとき、ゴミ箱に頭部が切り落とされて放り込まれるとき」
女の子「……ふふ、趣味が、悪いですかね」
15: 2015/10/28(水) 05:07:22.761 ID:V/RrCZIj0
女の子「豚の話は、中学の職業体験のときでした」
女の子「養豚場なんて、わたししか行きませんでしたよ」
女の子「どうしてって、せっかく受け入れてくれるのに、誰も行かないんじゃあ、あれだろ、と、担任の先生がタバコで黒ずんだ歯を見せながらわたしに言ったからです」
女の子「女の子って、気を遣われて、あんまり大変な作業とか、させたりというのはなくて、えさやりをしたんですね」
女の子「太るけど満腹にならない餌だと言っていました」
女の子「餌置きに敷き詰めると、すぐに食べに来ました」
女の子「かわいいでしょう、と担当のおばさんがいいました」
女の子「わたしは愛想笑いをしながら頷いて、とても後悔しました」
女の子「あ、悪趣味だーって顔、してますよ」
女の子「昔の話ですからね、好きに言えます」
女の子「養豚場なんて、わたししか行きませんでしたよ」
女の子「どうしてって、せっかく受け入れてくれるのに、誰も行かないんじゃあ、あれだろ、と、担任の先生がタバコで黒ずんだ歯を見せながらわたしに言ったからです」
女の子「女の子って、気を遣われて、あんまり大変な作業とか、させたりというのはなくて、えさやりをしたんですね」
女の子「太るけど満腹にならない餌だと言っていました」
女の子「餌置きに敷き詰めると、すぐに食べに来ました」
女の子「かわいいでしょう、と担当のおばさんがいいました」
女の子「わたしは愛想笑いをしながら頷いて、とても後悔しました」
女の子「あ、悪趣味だーって顔、してますよ」
女の子「昔の話ですからね、好きに言えます」
16: 2015/10/28(水) 05:14:20.977 ID:V/RrCZIj0
女の子「……ふふふ、気分が悪いですか」
女の子「わたしはこうやって欲に逆らったことすると、どきどきしちゃいます」
女の子「ある意味、それも欲ですけどね。でも、こういうのが、わたしの好き、なんです」
女の子「……べつに、理解を求めるわけではないです」
女の子「……ただ、まともに、取り合ってくれるのが、あなた、なので」
女の子「……」
女の子「……その、わたしも、あなたのこと、理解するのは、なかなかできないとおもいます」
女の子「もちろん、あなたが偏屈だとか変わってるとかじゃなくて、わたしが偏執で偏執なだけです」
女の子「……自分でいうのは、良くないって、言われてました。ごめんなさい」
女の子「……こういうのも、嫌い、というより、だめ、ですね」
女の子「わたしはこうやって欲に逆らったことすると、どきどきしちゃいます」
女の子「ある意味、それも欲ですけどね。でも、こういうのが、わたしの好き、なんです」
女の子「……べつに、理解を求めるわけではないです」
女の子「……ただ、まともに、取り合ってくれるのが、あなた、なので」
女の子「……」
女の子「……その、わたしも、あなたのこと、理解するのは、なかなかできないとおもいます」
女の子「もちろん、あなたが偏屈だとか変わってるとかじゃなくて、わたしが偏執で偏執なだけです」
女の子「……自分でいうのは、良くないって、言われてました。ごめんなさい」
女の子「……こういうのも、嫌い、というより、だめ、ですね」
17: 2015/10/28(水) 05:19:14.772 ID:V/RrCZIj0
女の子「……」
女の子「……」
女の子「……いえ、べつに、もう、ないです」
女の子「寝ましょう、か」
女の子「……」
女の子「……いつも、遅くまで、すいません」
女の子「……」
女の子「あ、あなたは……わたしに……求めたりはしないんですか」
女の子「……そ、そうですよ、わたしがこんなこというのは、異常事態ですよ」
女の子「好きでやってる、んですか……」
女の子「……それは、反応に、いえ、答えにこまりますね」
女の子「……喜ぶ、べきなんですかね」
女の子「……」
女の子「……いえ、べつに、もう、ないです」
女の子「寝ましょう、か」
女の子「……」
女の子「……いつも、遅くまで、すいません」
女の子「……」
女の子「あ、あなたは……わたしに……求めたりはしないんですか」
女の子「……そ、そうですよ、わたしがこんなこというのは、異常事態ですよ」
女の子「好きでやってる、んですか……」
女の子「……それは、反応に、いえ、答えにこまりますね」
女の子「……喜ぶ、べきなんですかね」
18: 2015/10/28(水) 05:23:40.124 ID:V/RrCZIj0
女の子「……じゃあ、おやすみ、なさい」
女の子「……」
女の子「……し、知ってるんですからね、寝たふりして、わたしが寝た頃、寝顔をみてるの」
女の子「……そういうの、嫌、ですからね」
女の子「……だめ、なんですよ」
女の子「……」
女の子「……だめ、っていうと、欲が促進されますね。一般的に」
女の子「……いい、ですよ」
女の子「な!なにいってんだわたし、おかしいぞ……」
女の子「……ね、寝るので、寝ましょう、いいですね、寝るんです」
女の子「……」
女の子「♪……」
めでたし
女の子「……」
女の子「……し、知ってるんですからね、寝たふりして、わたしが寝た頃、寝顔をみてるの」
女の子「……そういうの、嫌、ですからね」
女の子「……だめ、なんですよ」
女の子「……」
女の子「……だめ、っていうと、欲が促進されますね。一般的に」
女の子「……いい、ですよ」
女の子「な!なにいってんだわたし、おかしいぞ……」
女の子「……ね、寝るので、寝ましょう、いいですね、寝るんです」
女の子「……」
女の子「♪……」
めでたし
19: 2015/10/28(水) 06:19:06.926
めでたしめでたし
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