1: 2020/11/07(土) 18:20:09.264 ID:qwQIn6vm0
DQN「オラァッ!」

バキィッ!

金髪「ぐはっ……!」

DQN「この町で誰が一番強いか分かったか? あぁん!?」

金髪「わ、分かりました……」

教師「コラーッ! なにをしてるんだ!」

DQN「ちっ、またかよ……」

2: 2020/11/07(土) 18:23:01.993 ID:qwQIn6vm0
母「いつもいつも申し訳ありません」

教師「いえ、とんでもない」

母「うちは母子家庭で、しっかり教育できてなかったばっかりに……」

母「このままじゃあの子は……」シクシク

教師「……」

教師「お母さん、任せて下さい」

教師「必ず私があいつを更生させてみせます」

3: 2020/11/07(土) 18:26:30.353 ID:qwQIn6vm0
DQN「こんなとこに呼び出しやがって……なんだよォ?」

教師「お前、将来はどう考えてるんだ」

DQN「将来ィ? 知らねーよ。とりあえず喧嘩だけはやめられねーがな!」

教師「大学に行くつもりはないか?」

DQN「大学って、例えばどこだよ?」

教師「東大」

DQN「ハァ? お前バカか? 俺が入れるわけねーだろ! 百万回生まれ変わったって無理だ!」

教師「んなことは分かってる……だが」

5: 2020/11/07(土) 18:29:09.976 ID:qwQIn6vm0
教師「ここならどうだ?」パサッ

DQN「なんだこの安っぽいパンフレットは……って」

DQN「東大喧嘩学部ゥ!?」

教師「そうだ……あの東大が新しく設立した喧嘩学部!」

教師「ここならお前にうってつけだろう?」

DQN「……!」

6: 2020/11/07(土) 18:32:06.802 ID:qwQIn6vm0
教師「ここに入れば喧嘩の相手には困らない」

教師「日本最高レベルの喧嘩相手とずっと戦えるぞ」

教師「しかも、“東大生”という肩書きもついてくるオマケつきだ!」

教師「想像してみろ……東大生になった自分の姿を!」

DQN「……」ホワンホワン



DQN「ヒャッハー! 俺は東大生だー!」

「ステキー!」 「ワルのくせに超高学歴!」 「濡れちゃうっ!」

8: 2020/11/07(土) 18:35:10.304 ID:qwQIn6vm0
DQN「やるよ!」

DQN「俺……東大に入る!」

教師「お前ならそういってくれると思ってたよ」

DQN「で、どうすりゃいい!? 誰をブッ倒せば東大に入れるんだ!?」

教師「ん~……とりあえず……」

DQN「番長だろうと格闘家だろうと、どんな奴だってブッ倒してやるぜ!」

9: 2020/11/07(土) 18:38:15.077 ID:qwQIn6vm0
教師「国語を勉強しろ」

DQN「は……?」

教師「現代文はもちろん、古文もしっかり勉強しろよ」

DQN「おい……なんで喧嘩学部入るのに勉強しなきゃなんねーんだよ!」

教師「喧嘩ってのは、なにも殴り合うだけじゃあるまい。当然、口喧嘩もある」

DQN「まあな」

教師「そんな時、ものをいうのは国語力! 豊富なボキャブラリーで相手を煽りまくれ!」

教師「口喧嘩で相手を圧倒すれば、その後の喧嘩の勝率も上がるしな!」

DQN「な、なるほど……」

12: 2020/11/07(土) 18:41:14.322 ID:qwQIn6vm0
DQN「だけど、古文は勉強する必要なくねーか?」

教師「もしも……」

DQN「?」

教師「もしも平安時代あたりからタイムスリップしてきた猛者が、お前に挑んできた時困るだろう?」

DQN「たしかに……!」

DQN「俺、やるよ! 国語勉強するよ!」

教師「国語を勉強したら、その次は――」

DQN「いよいよ喧嘩か!?」

17: 2020/11/07(土) 18:44:49.352 ID:qwQIn6vm0
教師「数学だ」

DQN「数学……!? また勉強かよ!」

教師「数学とは、すなわち数を支配する学問」

DQN「それと喧嘩とどんな関係があるんだよ?」

教師「例えば、喧嘩する時、相手の数を把握しておくのは基本だろ?」

DQN「その通りだ……スタミナ配分ミスると勝てる喧嘩も勝てねえからな」

教師「そうだ。相手が1人、10人、50人の時はそれぞれ戦い方も変わってくるはずだ」

教師「だから、数学も勉強しろ!」

DQN「分かったよ。これも喧嘩に勝つためだ!」

22: 2020/11/07(土) 18:47:31.466 ID:qwQIn6vm0
教師「地理と歴史も学んでおくべきだろう」

DQN「地理ィ? 歴史ィ? 笑わせんな! なんでだよ!」

教師「地理を把握しておけば、喧嘩で有利に立てることはいうまでもない」

教師「リアス式海岸ではこう戦うとか、扇状地ではこう動く……とか」

DQN「それは分かる……」

教師「それに人類の歴史ってのは戦いの歴史でもある。ようするに喧嘩の歴史だ」

教師「歴史を学べば、間違いなく喧嘩も強くなる!」

DQN「うおおおおおおおお! そういうことか!」

26: 2020/11/07(土) 18:50:28.455 ID:qwQIn6vm0
教師「それと、理科も勉強しろ」

DQN「理科なんて、ひょろひょろの白衣着た奴がやるもんだろ! 俺はやりたくねえ!」

教師「人間の体の動きってのは全て物理で説明できる」

教師「物理を極めれば、喧嘩を極めることも可能!」

DQN「マジかよ!」

教師「化学を学んでおけば、喧嘩に薬品を使うような卑劣な輩に出会った時、困らないぞ」

DQN「ああ、たまにいるぜ! 酸みたいなの投げつけてくる奴!」

教師「今までよく無事だったな」

29: 2020/11/07(土) 18:53:26.719 ID:qwQIn6vm0
教師「最後に、英語」

DQN「英語ォ? 俺は日本人だぞ!」

教師「おいおい、21世紀は喧嘩もグローバルになる時代だぞ?」

教師「もしアメリカ人に喧嘩を売られたら……どうするんだ?」

DQN「あ……!」

教師「無様なジェスチャーなどしたら、それこそ『HAHAHA! クレイジージャップ!』と笑われてしまうぞ!」

DQN「喧嘩で恥はかけねえ! 英語もペラペラにならないと……」

31: 2020/11/07(土) 18:56:41.810 ID:qwQIn6vm0
DQN「すげえ説得力だった……。分かったよ、俺勉強するよ!」

教師「お前が東大を目指すなら、俺は全力で応援する。協力は惜しまない」

教師「ただし……これからはもう喧嘩するなよ」

DQN「ハァ? 喧嘩学部に入るなら、喧嘩しなきゃダメだろ! 喧嘩は場数がものをいうんだ!」

教師「逆だ。喧嘩学部に入ったら、それこそ今までとは比べ物にならない修羅の日々が待っている」

教師「少しでも体力を温存しておかないと……氏ぬぞ」

DQN「……」ゴクッ

DQN「分かった……俺もう卒業まで喧嘩しねえ!」

教師「約束だぞ」

33: 2020/11/07(土) 18:59:10.445 ID:qwQIn6vm0
勉強を始めるDQN――

DQN「……」カリカリ

DQN「……」カリカリカリ

DQN「……」カリカリカリカリカリ

DQN(俺はこんなことも知らなかったのか……)

DQN(勉強ってなんて楽しいんだ!)

DQN(もちろん、喧嘩ほどじゃあねえが……)

35: 2020/11/07(土) 19:02:12.531 ID:qwQIn6vm0
母(あの子、ずっと部屋に引きこもってるけど、どうしたのかしら)

母(まさか、シンナーとかやってるんじゃ……!)

母「開けるわよ……」ガラッ

DQN「……」カリカリ

母「な、なにやってるの!?」

DQN「勉強」

母「どれぐらい……!?」

DQN「昨日の夜からだからもうすぐ20時間になるかな。やっとエンジンかかってきたぜぇ!」

母「どうしちゃったの……!?」

37: 2020/11/07(土) 19:05:11.066 ID:qwQIn6vm0
不良「おーい、最近隣の高校の奴らがチョーシこいてんだ」

ヤンキー「シメにいこうぜ!」

DQN「いや……やめとくわ」

不良「な、なんで!?」

DQN「今日はちょっと……“館”に行かなきゃならねえからよ」

不良(まさか……極真会館!? すげえ! 俺たちとはレベルが違う……)

DQN(さて、図書館行くか)

39: 2020/11/07(土) 19:08:23.099 ID:qwQIn6vm0
DQN「……」

教師「このところ、メキメキ成績が伸びてるじゃないか!」

DQN「元が低かったから当然だろ」

DQN「登山だって標高が上がってくにつれきつくなる。3000m超えると高山病が出てくるしな」

DQN「俺は今まさに、そんな局面ってところだ。東大入るレベルにはまだまだ……」

教師「お前の口から“高山病”なんて言葉を聞けるなんて……」

DQN「おいおい、バカにしすぎだろ」

40: 2020/11/07(土) 19:11:13.245 ID:qwQIn6vm0
DQN(模試の結果が返ってきた……)

DQN「文系科目は一見点数を取れてるように見えるが、問題に救われた部分が大きい」

DQN「理系科目はまだまだ甘いが、弱点は浮き彫りになった。長所を伸ばしつつ、弱点を補強する!」

DQN「方針は見えた! もっともっと勉強しねえと! 過去問も解きまくって――」

DQN「……」カリカリ

DQN「……」カリカリカリ

……

……

43: 2020/11/07(土) 19:14:22.997 ID:qwQIn6vm0
時は流れ……

不良「高校最後の夏休みだー!」

ヤンキー「よっしゃー!」

不良「どうするよ? ナンパでも行くか?」

ヤンキー「そりゃいい! 今なら山行けば山ガールを引っかけられるかも!」

不良「DQN、お前も行こうぜ!」

DQN「いや、俺は夏休みは他の山を登る……」

不良「どこ?」

DQN「受験の天王山だ!」

46: 2020/11/07(土) 19:17:13.158 ID:qwQIn6vm0
202X年 冬――

DQN(ついに受験シーズン……)

DQN(“大学入学共通テスト”を経て、2月下旬に行われる“二次試験”に受かれば、東大に入れる……)

DQN(やるだけのことはやった……どうなろうと悔いはねえさ)

DQN(だが……ッ!)

DQN「行くぜ、東大ッ!」

母「頑張ってね!」

教師「全てをぶつけてこいッ!」

教師(かつては、群れをはぐれた荒くれライオンといった風情だったDQNだが……今や王者の風格ッ!)

48: 2020/11/07(土) 19:20:15.592 ID:qwQIn6vm0
――

――

――

DQN「受かったぜぇ!」

DQN「自分でも信じられねえ! マジで『なんで私が東大に!?』だろこれ!」

教師「あれだけ努力したんだ……自信を持って誇るべきだ」

DQN「これで……これで俺は東大喧嘩学部に入れるんだな!?」

DQN「赤門くぐって、思う存分強い奴らと喧嘩できるんだな!?」

教師「……」

49: 2020/11/07(土) 19:23:15.923 ID:qwQIn6vm0
教師「……すまん」

DQN「!?」

教師「実は……東大に喧嘩学部なんて学部はないんだ……」

教師「お前に見せたパンフレットは、俺が捏造したものだったんだ……」

教師「せめて、これをきっかけに勉強してくれればと思って……」

DQN「……フッ」

DQN「なんとなく……分かってたさ。そんな学部ないんだってことぐらい」

教師「いくらでも殴ってくれ! お前にはその資格がある!」

DQN「殴るわけねえだろ。俺はあんたのおかげでまともになれた」

DQN「ありがとうございました……先生!」

教師「DQN……!」

52: 2020/11/07(土) 19:26:28.627 ID:qwQIn6vm0
入学式――

DQN(大勢が集まってる――)

東大生A「……」ゴゴゴゴゴ…

東大生B「……」メキメキメキ…

東大生C「……」シュインシュインシュイン

DQN(どいつもこいつもなんて“東気”出してやがる……!)

DQN(同じ東大生でも、俺と奴らじゃジャギとケンシロウぐらいの違いがある!)

DQN(だけど、俺は猛勉強して、この中で成り上がってやるぜ!)

57: 2020/11/07(土) 19:29:28.053 ID:qwQIn6vm0
――

――

記者「今はどういった活動を?」

DQN「今は、ミーズ族とアヴラ族の仲裁を行っています」

DQN「長年争ってきた二つの部族ですが、ようやく和解の時を迎えられそうですよ」

記者「東大卒業後、世界各地でこういった仲裁を行ってきたわけですね」

DQN「これが自分の使命だと思ってますから」

記者「あなたの高い学力と度胸があってこそ、務まる使命ですね」

DQN「ありがとうございます」

58: 2020/11/07(土) 19:32:12.902 ID:qwQIn6vm0
記者「何か、最終的な目標などはございますか?」

DQN「はい、それはもちろん――」

DQN「かつて東大喧嘩学部を目指した者として、世界中の喧嘩を止めることです!」







― 完 ―

59: 2020/11/07(土) 19:32:52.751
感動した!乙!

62: 2020/11/07(土) 19:36:28.735

先生の作戦大成功だな

引用元: DQN「東大喧嘩学部ゥ!? それなら俺にだって入れるぜェ!」