1: 2010/11/06(土) 14:52:54.01 ID:Pekhsey30


  秋山澪はピック売りの貧しい少女である



澪「ピックゥ! ピックはいりませんか!! ピック買って下さああァい!!!」

澪「あっ、そこのお姉さん、ピック買ってもらえませんか!!」

OL「えっ? いや、別に……」

澪「お願いしますっ!! これが売れてくれないと、私・・私・・もう生きていけなくて・・・」ウルッ

OL「ごめんなさい。そういうのはちょっと……」ソソソ

澪「待ってください! ピック! ピックさえあればいつの日か・・!!」

OL「あの……ご、ごめんなさいっ!」

  タタタタッ....


澪「ああっ・・そっ、そんな・・まだ今日一個も売れていないのに・・・くそう、ちくしょう・・・」

3: 2010/11/06(土) 14:54:54.38 ID:Pekhsey30
澪「でも・・負けちゃだめだ! なんとしてもピックを売らなくちゃ・・!!」


澪「ピックはいりませんかああァ!! ピックゥ・・あ、そこのお兄さんっ」

リーマン「ん? はぁ、なにか?」

澪「ピックいりませんでしょうか!!」

リーマン「え? ピックって、あの弦楽器なんかに使う?」

澪「正確には撥弦楽器です! 楽器が音を生む母としたら、ピックは父みたいな存在です!!」

リーマン「あ、あー、そうなんだ。でも残念だけどうちにはそういうの置いてないし」

澪「ない、だと・・・。まさか、嘘でしょ・・信じられない・・・」

リーマン「と、いうわけなんで」

澪「ででででででも!! だったら是非この機会にピックから交流を深めてみても」

リーマン「あーもう。しつこい勧誘は嫌いなんだよねぇ。他所いってくんない?」プイッ スタスタ


  ヒュウウウウウウ~....

澪「・・・・・・ちくしょう」

澪「何が悪いっていうんだ・・・ちくしょう・・ピックに少しも罪なんてないのに・・・」

5: 2010/11/06(土) 14:58:03.99 ID:Pekhsey30
カップル「イチャイチャ キャイキャイ アンアン」

澪「くそ・・年の瀬だからって浮かれやがって・・・。ちくしょう・・ちくしょう・・!!」

澪「ようし。ここは雪玉を作って・・中心にピックを入れて・・・ふふwジュネーブざまぁww」

澪「これでも食らええェ!! しあわせものに・・・天誅うううゥをおおおおォ!!!」


  ブオオオォンッ!! シュルッ!! ヒュウウウウゥゥゥゥ....


律「ドベアジェット!!!!」

澪「わ・・・し、しまった、コントロールが・・・」

律「おいコラァ! そこの薄汚い女、なにしてくれるぅ!」

澪「わわわわ・・きっと、ピックを粗末にしたからピックの神様が罰を与えたんだ・・・そうだ、そうに違いない・・・」ガクガク

律「おいそこの、聞いてるのか? 今結構怒ってるんだぞ!」

澪「あああ・・・ピックさん、いえピック様ごめんなさい。次は絶対に外したりはしません・・・!!!」

律「ってそっちじゃねえだろ!」

6: 2010/11/06(土) 15:01:18.37 ID:Pekhsey30
澪「ええと・・それで、一人だけの方、お怪我はありませんか??」

律「いちいちムカつく言い方をする奴だな……」

律「で、なにいきなり見ず知らずの人に雪玉とか投げつけてるわけ?」

澪「それは・・・まぁちょっとした鬱憤を晴らしたくなって、つい・・・」

澪「あっ、でも! あの雪玉に当たったということは、あなたがピックに対して酷いことをした報復だったという」

律「あるわけねぇだろオンドルァ!」

澪「ひいっ!」

律「私はドラマーなんだ。だから使うのはドラムスティックだ。ピックは専門じゃない」

澪「ドラマーだって・・!?」

律「そうだ。だからあんたの言ってるピックの報復とかいうのは……」

澪「きっとドラムが走りすぎているからだ!! だから、特にベースのピック経連からマークされていて」

律「しつこいわこのボケナスビ!」クワッ

澪「きゃぅんっ!!」

9: 2010/11/06(土) 15:04:38.76 ID:Pekhsey30
律「そんで、こんなくそ寒い路上でどうしてピックなんか?」

澪「それは、財産がこれしかないので・・・たくさん買って、全部売りさばけば大儲けだって・・・」

律「なるほど可哀想な子だったのか……」

澪「はい! 可哀想な子です! だから」

律「って堂々と言われるとそういう気もなくなるわ!」

澪「そ、そんなぁ・・・」シュン

澪「・・・あの、実はおばあちゃんが病気で寝込んでいて、その・・・お薬を買ってあげないと」

律「えっ? そんな事情が……?」

澪「はい。もうピックりとも動けなくて、いつピックり逝ってしまうか分からない状態で。ピックニックにも行けなくて」

律「途端に胡散臭くなったな、オイ」

澪「だからお願いします! ピックを、一つでもいいからピックを!!」

律「……分かった。じゃあその嘘っぽい事情に免じて雪玉を当てたことは許してやる。だがピックは買わん」

澪「うう・・そんなぁ・・・ぐずっ」

11: 2010/11/06(土) 15:07:54.22 ID:Pekhsey30
律「はいはいもう行くから。弟と映画見る約束なんだ。はぁ、全くどうしていつも弟となんかと……」

澪「お互い寂しい身ですね・・・」

律「うるへぇ! なんかお前に言われると腹立つ! んじゃもう」

澪「・・・あっ、あっ、あああっー!!!」

律「おま、いい加減に……」

澪「違う! ちが違うんです! 悪気はないんです、ただ・・・」

律「ただ……?」

澪「そのおでこに刺さったピックを、返してもらえないかなぁって・・・」

律「お、で、こ?」スリスリス..コツッ

律「…………あ、本当だ。きれーに刺さっとる」

澪「ピク美ちゃんが、私以外の人間に初めて好意を抱くなんて・・!!」

律「名前つけとるんか! まぁともかく、抜いてしまえば……。む、むむ……あれ?」

律「ぬ、抜けない!?」

澪「・・・・・・ふふw」キラーン

13: 2010/11/06(土) 15:11:17.59 ID:Pekhsey30
律「ふんぬーっ! ふんぬーっ!」

澪「あのぉ、あもし抜けないのでしたらぁ、買い取っていただかないとぉ・・・」ワクワク

律「ぬわーっ! 駄目だこりゃ。完全に根元までグサリといってやがる……」

律「……って、ハッ! もしかしてお前、これが目的ではじめから」

澪「えっ、ちっ、違います違います! あなたに当たってしまったのは本当にただの偶然で・・・」

律「つまり相手は誰でもよかったってことか!」

澪「あああああ違うんです!! 私可哀想な子だから頭のほうもちょっと」

律「黙れこのピック詐欺師! お前には一銭も払わないからな!」

律「くそっ! もうこれ以上構っていられるか」ダッ

澪「ああっ・・ピック! 私のピック! しかもそれ一つしかない鼈甲のやつ! ピク美ちゃぁん!!
  摩擦音を最小に抑え、しかも決め細やかさを残しつつダイナミックにアタックできる、一番高いのおおおォ!!!」

律「んなもん知るか!」ダダダッ


  ヒュルルルルルルウウゥゥ~....


澪「・・・・・・」ポツーン

澪「・・・氏にたい」

15: 2010/11/06(土) 15:14:31.11 ID:Pekhsey30
  ビュウウウウウゥゥゥ~

澪「うう・・大量の山盛りピック・・・。この中で一番鋭いピックなら、手首切って氏ねるのかなぁ」

  あのー

澪「へへっ。やっぱり駄目だ。こんな可愛い子たちを、私みたいな汚れた血で染めるなんて・・・」

  ぐあい悪いんですかー

澪「こうなったら、例えいたいけな子を騙しても・・・。ふふっ。私が、絶対ににお前たちの買い主を見つけてやるからな」

  笑いながら泣けるってきようですねー

澪「それにしてもさっきからよく分からない幻聴みたいなものが・・・」


唯「もおおおおっ! おきゃくさーん! しゅーてんですよー!」

澪「わあぁ降ります降ります! ・・・って、あれっ? ここ駅じゃない!! ていうか誰っ!?」

唯「誰、って言われても……。たまたま通りかかっただけなんだけど」

澪「あ、そうなんだ。ふぅん・・・。ね、ねぇ、きみ! いや、あなた!!」

唯「うん? なあに?」

澪「ピッ・・・ぐっ、駄目だ! この子、なんて純粋な目をしてやがる! 私は・・こんな子をカモになんて・・!!」

唯「……ほえ?」

16: 2010/11/06(土) 15:17:46.64 ID:Pekhsey30
唯「んー。なんかよく分からないけど、困ってるなら、私でよければ相談にのるよっ」ニパッ

澪「そうだん・・? こ、こんな薄汚れた私の話を聞いてくれるのか!?」

唯「……汚れてる? そんなのあんまり関係ないよ。私は可愛いものが好きで、見つけるのが得意なんだ~」

澪「そんな、可愛いだなんて・・。確かに顔出ちには凄く恵まれたほうだって薄々感づいてたけど・・・」

唯「あ、うん……。でっ! こんなところでなにやってたの?」

澪「・・・あのな、ピックを売ってるんだ。でも全然誰も買ってくれなくて」

唯「ぴっく? ふぅん。道端で売ってる人はじめて見たかも」

澪「所詮底辺の仕事だったんだ・・。これでビッグになれるって、信じ込まされて・・!!」

澪「・・・あと、実はおばあちゃんが悪い人に騙されてて、このままじゃ利子が膨らむ一方で・・!!」

唯「……そうなんだ。大変なんだね。むう、でも困ったな……今ちょうどお財布が」

澪「いや・・いいんだ。ピックをピックとして使ってくれない人じゃないと、ピックとして生まれたピックが可哀想だから・・」

唯「だったら! 私なんてぴったr……」


  オネエチャーン ドコー? オネイチャアアアアン!!


唯「あっ、憂!」

17: 2010/11/06(土) 15:20:49.16 ID:Pekhsey30
憂「あっ、お姉ちゃん! も~、随分探したんだからぁ」

唯「でひひ、めんごめんご」

憂「ほらもう帰らないと時間が……って、え……。そちらの方は?」ジトー

澪「あ、ここっこ、こんばんわ・・・。はは・・」

唯「可愛い子でしょ! ねぇ憂、私のお財布持ってるでしょ? 早く出しt」

憂「ちょっ、お姉ちゃん! ちょっとこっちきて!」グイッ

唯「えっ、なっ、どどうしたの?」ズルズル

澪「・・・・・・」


憂「お姉ちゃん、最近お小遣いすぐ使っちゃうみたいだけど、いっつもああいう人に使ってるの?」ヒソヒソ

唯「そうでもないけど……。ああいう人ってどういうこと?」

憂「それは、言い方悪いけど乞食とかそういう人。いい、お姉ちゃん。ああいう人にお金あげちゃだめなの」ヒソヒソ

唯「えー。どうして?」

憂「甘やかすからちゃんとした仕事に就こうとしないんだよ。それに、臭いし汚いから、ね!」ヒソヒソ


澪「・・・なに話してるか分かる自分が嫌いだ・・嫌いだ・・・」メソッ

19: 2010/11/06(土) 15:23:50.71 ID:Pekhsey30
憂「はい、お話し終了っ! 分かったらお返事は?」

唯「むうううぅっ! 分かりましたぁ……」

澪「・・・・・・」

憂「それじゃあ失礼します。ほら、お姉ちゃん。ギー太が寂しい寂しいって言っておうちで待ってるから」

澪「・・・ぎーた? ぎーたー・・・まさかギター・・!?」

唯「あっ、うん、まぁ……ギー太っていうギターがあるんだけど、言い出すタイミングが」

澪「・・・それを先に言わないとだめじゃないかああああああァ!!!」

唯「わ! なんか人が変わった!?」

憂「は、早く行っちゃお!」

澪「持ってるなら持ってるって最初に言ってよ! ピック必要だよ!! ピック求めてるよね!?
  なに勝手に決めつけていたんだ・・・ワタシ!! ちょっ、買って! ピック買って! 一つ騙されたと思って!!!」

憂「お姉ちゃん! 早くこっち!」

唯「ふええぇ、怖い、怖いぃっ!」

澪「あっ・・ちょっまっ・・・!!! あぁっ・・ピックを粗末にする者はピックに泣くんだぞおお!!」

唯「ふええぇん!」スタタタッ

20: 2010/11/06(土) 15:27:20.26 ID:Pekhsey30
澪「・・くそっ!! くそッ!! あそこで気持ちを抑えていれば、今度買ってくれたかもしれないのに・・・」

澪「なにやってるんだ・・・馬鹿、馬鹿ぁ。・・このザマが、これまでの私の人生のツケ・・!!」


  ゴォーン! ゴオーン! ゴオォーン!!

澪「うわ、もうこんな時間!? ・・・次が駄目だったら、もう今日は諦めるしか・・・」

澪「ようしっ!! これで終いだと思って、最後は気合入れていくぞ・・・うんっ!!!」

梓「……」テクテクテク

澪「・・・!!? って、あんなところにギターを背負ってる女の子がいるじゃないか・・」

澪「これはまさしく天戒!! 神様の思し召しだ!! 待ってろ、今行く・・!!」ダンッ


  バッ! ザザザ...キキイィ!!

梓「わっ! なに!?」

澪「ピックゥ!! ピック買って下さああァい!!!」

21: 2010/11/06(土) 15:30:24.65 ID:Pekhsey30
梓「ピックって……あのピックのことですか?」

澪「そうです! その背中のギターですよね・・お願いします!! いっぱいあるので、好きなの選んでいいので!!」

梓「は、はぁ……。まぁ見るだけでしたら構いませんが……」

澪「ありがとうございますぅ!!」パアァ

梓「凄い笑顔だ……。それで、ええと、どこですかピック?」

澪「よいしょっ・・・これですっ!!」ズーン

梓「多っ! あ、でも、これだけあれば掘り出しものも……」

澪「どれがいいですか? 色の多さなら、その辺の色エンピツより負けていませんよ!!」

梓「は、はぁ。色はあんまり気にしないので、素材ですかねぇ……」



  ガサゴソ ガサゴソ

梓(安物が多いなぁ。中古も混じってるっぽい。もしかしてこの人……)

澪「ど、どうですか・・。なにか気に入ったものは・・!!」ワクワク

23: 2010/11/06(土) 15:33:37.04 ID:Pekhsey30
梓「あのぉ、いつもこういう売り方してるんですか?」

澪「こういうっていうと・・・どういう?」

梓「ですから、全部出して好きなのどうぞーって。良さそうなの一つもないんですけど」

梓「……もしかして、出し惜しみとかしてません?」

澪「あ、いや、ええと・・・ついさっきまであったんですけど・・・」モジモジ

梓「さっきまで?」

澪「実は・・最後の隠しピックのピク美ちゃんを雪玉に入れて投擲しちゃって・・・」

梓(……どういう状況だったんだろう……)

梓「とにかくですけど、全然いいのないです。っていいますか、これほとんどベース向きじゃないですかっ!」

澪「えっ・・!? ピックに向き不向きとかあるんですか?」

梓「当たり前です! おにぎり形とかドロップ形とか、厚みもかなり重要ですが、なんといっても素材命ですね! 

澪「つまり!! つまりこの子たちにも個性があるっていうんだな!!?」

梓「え? はぁ。そりゃあそうですけど」

澪「そうか! ピク助・・ピク次郎・・ピク恵にピク子!! みんな似てるようだけど実は違うんだな!!
  私は嬉しいよ・・・社会の歯車にあてられるような、無個性ピックになんて育っていなくて・・・!!!」

梓「この人なんか気持ち悪い……」

24: 2010/11/06(土) 15:37:04.58 ID:Pekhsey30
梓「あの、よく分からない感動中のところもう一ついいですか?」

澪「はひ?」

梓「あのですね、毎回「好きなのどうぞ」じゃ良いものから買われていくに決まってるじゃないですか」

梓「そんなんだから安物中古しか残らなくて苦労するんですよ。例えば玉石混交でセット売りとかしないと」

澪「すいません・・。私、可哀想な子なので、その辺のことよく分からなくて・・・」

梓「……はぁ。そうですか……」

澪「あっ! でもでも! 可哀想さ具合だったら凄い自信ありますよ・・!!」

澪「実は、おばあちゃんの新しい旦那さんが、通帳と印鑑奪って行方をくらましちゃったりとか!!!
  ・・あとあと! 実はおばあちゃんの遺産をもらえる人が急に増えたりとか・・!! 他にも色々ピーチクパーチク!!」

梓(本当かなぁ……?)

梓「まぁ色々大変そうなのは分かりましたから……頑張って下さい。私もう」

澪「えっ!? 同情してくれないんですか・・? ピック買って、優越感満たしてみようとか思っちゃったりいかがですか・・!?」

梓「…………」ゾゾゾ

梓「やっぱりこの人気持ち悪いーっ!」ダーッ



澪「・・・あっ、あっ・・」ポツーン

25: 2010/11/06(土) 15:40:09.14 ID:Pekhsey30
  シーン・・・・ ビュウウゥッ! ・・・シーン・・・

澪「・・・寒い。・・・眠い。でも、お腹へった・・・もう駄目だぁ・・・」

澪「あぁ・・今頃ほとんどの人たちは暖炉の効いた、屋根のある、ふかふかのベッドで・・・」

澪「もう真夜中・・・人がいなかったら、売るもの売れないじゃないかぁ・・・」


  ワァーユキヨー! サイトウミテー スゴイマッシロー♪ 

澪「ん? あれは・・・?」



紬「やっぱり雪は見るものじゃなくて触るものねっ。そー……つ、冷たいいっ!」

斉藤「お嬢様。そうあまりはしゃがれませんよう」

紬「まぁ斉藤。お屋敷に閉じこもってばかりでは運動不足になってしまうわ」

紬「こういう時くらいは……そぉれっ! うふふ、斉藤のお髭が真っ白しろ♪」



澪「・・ふんっ!! 箱入り娘のお嬢様かっ! ちくしょう・・自慢しにきたのか! ちくしょう・・」

27: 2010/11/06(土) 15:43:10.55 ID:Pekhsey30
紬「あら……。ねぇ斉藤、あの子、あんなところでなにやってるのかしら?」

斉藤「ハッ。あの様な輩は闇に紛れ、下賤な商いを主としているのです。決して近づかれませんよう」

紬「でも、見たところ、私と年格好ほとんど同じくらいの女の子よ。まさかそんな……」

斉藤「左様。ああいった娘たちは末端として利用されているのです。ですが小さくとも悪なのです」

紬「そう……。話しかけてみたかったのだけど、残念ね」

斉藤「さあさあ。明日も早朝からピアノの先生がいらっしゃいます。そろそろ帰りましょう」




澪「・・・はぁ。私も生まれ変わったら、お嬢様になりたいなぁ・・」

澪「そしたら・・毎日使い捨てに鼈甲ピックを使って、ピックを敷き詰めたピック風呂に浸かって・・・どゥへへw」


  ドビュウウウウフォオオオオオッ!!

澪「ざぶぅッ!! へっ・・へっ、へっぐじぃ!! ううぅ寒い、下手なこと考え込んでると凍え氏んじゃう・・」

澪「・・・そうかっ! ピック! 寒いなら、こいつを使ってずっと動いていればいいじゃないか!!」

29: 2010/11/06(土) 15:46:18.11 ID:Pekhsey30
澪「ベー助!! 出番だぞっ!!」


  ベベンベンベン「ハッ!」 ベンンベンベンベ「ヤッ!」


澪「こうやって体を動かし続ければ・・・続ければッ・・・」

澪「あぁ、そういえば今日売り損ねた子たち・・・みんな楽器が使えるっぽかったな・・・」

澪「はじめにドラムの恫喝デコで、次にギターの見せかけ偽善者で、次もギターで毒舌ちびすけ、
  それからピアノ・・・キーボードもできるかな、あのファッキンお嬢様・・・」

澪「なんだ、完璧じゃないか・・!! これで一つのバンドが組めるぞっ!!」

澪「ああっ、もし違う世界で出会っていれば・・きっとあのメンバーで演奏を・・・」



  モヤモヤ モヤモヤァ....

澪「・・んっ。なんだ!? 目の前に眩しい霧が立ち込めてきたぞ・・・」


  そのとき彼女は見たのである。自分を見捨てた少女たちが、楽器を持って微笑んでいる姿を


澪「まぼ・・ろし・・?? いや、違う、本物!! 本物だっ!!!」

31: 2010/11/06(土) 15:49:21.49 ID:Pekhsey30
澪「なんだ! さっきからそこにいるなら、いるって言ってくれればいいじゃないか!!」

律『・・・・・・』

澪「ちょっ、どうして黙ってるんだよ。さっきまでの威勢の良さはどうした・・!?」

唯『・・・・・・』

澪「ほおら、唯なんて呆れて声もでないじゃないか。全く、律らしくないぞっ!!」

梓『・・・・・・』

澪「あっ、梓ごめんな。真面目に練習しなきゃな。ようし、それじゃそろそろ・・・」

紬『・・・・・・』

澪「ああ、ムギ、分かってるよ。照れくさいけど、いつもフォローありがとうな・・・///」


澪「よおし!! 武道館に向けて、私たちの青春をはじめるぞ・・っ!!」

澪「・・・じゃあまず、第一曲目ッ!!!」


   ...........


澪「ねーし!!」

33: 2010/11/06(土) 15:52:46.91 ID:Pekhsey30
  そして一夜が明けた。道端にあの少女が、ぴくりとも動かずに横たわっていた

律「えーっと、確かこの辺りだったはずなんだけど……」


律「おー、いたいた! ……って、おい、大丈夫か? おい、昨日のピック売り!」

律「こんなに、こんなに冷たくなって、まさか……」ガシッ

律「し、氏んでる……!」


唯「えーとー、どこだっけかなぁ。この辺のはずなんだけどー」

唯「あっ、見つけたぁっ!」

律「ん? えっ? ちょっ、誰だお前」

唯「ほぇ、私? 私はね、昨日ピックを売ってもらおうとしたんだけど、色々あって買えなくて。
  でね、今朝ギー太の練習してたらピックが割れちゃって、やっぱり売ってもらおうと思って来たんだ~」

唯「……なんだけど、ピック売りの子どうしたの? 寝ちゃってるの?」

律「ああ、寝ちゃってるんだ。永遠の眠りの中に……」

唯「!? そっ、そんな……」

34: 2010/11/06(土) 15:56:15.31 ID:Pekhsey30
律「実は私も昨日、ピックを買ってくれと言われたんだが、色々あって金を払わずに持って帰ってしまって。
  後から、やっぱり返したほうがいいって思って、来てみたんだけど……」

唯「そうだったんだ……」



梓「えーと、この角を曲がったところに」テクテク

梓「こんにちわー。昨日のピック売りさーん。……って、あの、あなたたちは?」

律「あ、もしかしてお前もそのクチか。でも、残念だけど、こいつはもう……」

梓「えっ……ちょっ、ピック売りさん!? まさか!」ユサユサ

律「駄目だ。氏んでる」

梓「う、嘘……。ちょうどパパから、ピックをが大量に欲しいって聞かされたところだったのに……」ウルウル

唯「泣きたいなら、泣いていいんだよ」ギュッ

梓「うっ、もっと、もっと早く来れていたら……」ポロポロ

律「私だって、そう思ってるさ……クソッ!」

36: 2010/11/06(土) 15:59:15.86 ID:Pekhsey30
紬「しゃらんらしゃらんら~、お屋敷抜けだしてきちゃったぁ♪」

紬「これならうるさい斉藤にとやかく言われずに済むわぁ」



紬「こんにちわ~。街角のピック売りさんっ。……って、あら、皆さんは?」

律「おっ、また仲間が増えたみたいだな」

紬「昨日はお話できなかったから、改めて来てみたんだけど。どうして皆さんしんみりしているの?」

紬「あっ、なんて白い顔になって、まさか……!?」

唯「うん。残念だけど、そうみたい」

紬「そう……。そうだったの……」



澪「・・・・・・」チーン

一同「…………」シーン

37: 2010/11/06(土) 16:02:31.29 ID:Pekhsey30
唯「そういえばこの子、ベース持ってるみたいだけど」

律「ベースか……。一回くらい、こいつとリズムビート刻んでみたかったな。相棒のドラマーとして」

唯「あなたドラムできるんだ!? そしたら、私がリードギター弾きたかったな」

梓「私だって! リズムギターなら任せてください!」

紬「あら。そうしたら私はキーボードで参加しちゃおうかしら」

律「なんだ、みんなほどよくパートが分かれてるじゃないか! こいつがまだ生きてたら、みんなで一緒に演奏できたのにな……」

唯「そうだね。もし生きてたら」

梓「うぅ……それ以上言わないで下さい。また涙が」ウルウル

紬「まぁ。なきむしさんなのね」

梓「そっ、そんなことないですぅ!」カアァ



  『 ピックゥ!! ピック買って下さああァい!!! 』



一同「えっ!?」

39: 2010/11/06(土) 16:05:34.71 ID:Pekhsey30
純「ピックゥ! ピックはいりませんか!! ピック買って下さああァい!!!」

律「き、君は……君もピック売りの少女か!」

純「あっ、そ、そうです! ピック売ってます! 一つでいいので買っていただけませんか・・!?
  好きなの選んでもらって構わないので!! うちの氏にかけのおばあちゃんのために・・・!!!」

唯「はいはい! 買います、一つ買います!」

梓「私は二十個くらい!」

純「わあぁ・・!! あっ、ありがとうございますっ!!」パアァ

紬「ねぇ、ピック売りさん。もしかして……あなたもベースが弾けたりするのかしら?」

純「ベース・・当たり前ですよ!! ベースが弾けなきゃピック売りは務まりません!!」

律「よしきた! お前を今日から私たちのバンドに招待する!」

唯「あっ、いいねぇ! でも、まだお互いのことよく知らないし、とりあえずお茶にしようよぉ」

紬「まぁそれは素敵ね♪ 紅茶とお菓子ならたくさん用意できるわぁ」

純「皆さん・・どうして見ず知らずの私にそこまで・・・」

梓「理由なんてなんだっていいんだよ! さぁ、行こっ!」



澪「・・・・・・」ヒュオオオォ

40: 2010/11/06(土) 16:08:39.25 ID:Pekhsey30


 こうして一人のピック売りの少女は天へと召されていった....

 しかし忘れないで欲しい。彼女の犠牲が別の誰かを助けたことを....


 おわりである

41: 2010/11/06(土) 16:09:16.12
全然泣けねえwwwwwwwwwwwwww

42: 2010/11/06(土) 16:09:51.19
笑えばいいのか悲しめばいいのかわかんねwww


引用元: 澪「ピックゥ!! ピック買って下さああァい!!!」