1: 2014/08/08(金) 14:56:39.09 ID:b0fTxJpd0
ココア「突然どうしたの? チノちゃん」

チノ「世の中が嫌になりました。私、不良になります」

ココア「ええっ! 何かあったの?」

チノ「別に何もありません。しいて言うなら、私の内面の問題です」

ココア「そっかぁ……」

チノ「お願いします。私を立派な不良にしてください」

ココア「うーん……」

6: 2014/08/08(金) 14:59:13.57 ID:b0fTxJpd0
ココア「分かったよ。でも、ひとつだけ条件があるの」

チノ「なんでしょう」

ココア「私のことは”姐さん”って呼んでね」

チノ「ねえさん?」

ココア「そう! 不良は、目上の人のことを姐さんって呼ぶの」

チノ「そうなんですか」

ココア「チノちゃんは、私の弟子になって、教えを乞うわけだから。ね?」

チノ「分かりました。姐さん」

ココア「……っ!!!」ブルブル

10: 2014/08/08(金) 15:01:12.07
ねえさん?あねさん?

11: 2014/08/08(金) 15:02:16.58 ID:b0fTxJpd0
チノ「ところで。姐さんは、不良に詳しいんですか」

ココア「そりゃ当然でしょ。チノちゃんくらいの歳には素手で人を頃してるわ」

チノ「ええっ! すごいです」

ココア「まぁね。最強だったから(嘘だけど)」

チノ「では、まず私は何をしたらいいんでしょう」

ココア「そうね……。とりあえず見た目は大事よ」

チノ「見た目?」

ココア「そう、見た目。髪を奇抜な色に染めるとか」

チノ「なるほど。でも私もう奇抜な色してますよ」

ココア「確かに」

12: 2014/08/08(金) 15:03:52.17
確かに

15: 2014/08/08(金) 15:05:55.60 ID:b0fTxJpd0
ココア「じゃあ見た目はそのままでいいよ。次はメンチの切り方ね」

チノ「メンチ? お肉屋さんで売ってるやつですか」

ココア「違うよぉ。睨み付けるってこと」

チノ「睨み付ける」

ココア「うん。ちょっと私にメンチ切ってみて」

チノ「…………」ムゥ

ココア「そんなんじゃダメだよ。もっと、この世の全てを憎んで睨み付けるの」

チノ「…………」ムゥ

ココア「そんなかわいい顔じゃ、頭撫でられておしまいだよ」

チノ「……すいません。姐さんのこと好きだから、睨み付けられません」

ココア「……っ!!!」ビクンビクン

18: 2014/08/08(金) 15:09:06.93 ID:b0fTxJpd0
ココア「メンチは合格だよ」

チノ「えっ。あれでいいんですか」

ココア「うん。恐怖のあまりパンツが少し湿っちゃったわ」

チノ「私、不良に近づけたでしょうか」

ココア「もう少しだね。次は不良の基本、カツアゲのやり方だよ」

チノ「カツアゲ……? おに」

ココア「お肉屋さんじゃないわ」

チノ「……そうですか」

ココア「カツアゲって言うのはね、知らない人からお金を脅し取っちゃうことよ」

チノ「ええっ」

20: 2014/08/08(金) 15:12:24.96 ID:b0fTxJpd0
チノ「ダメですよ。そんな悪いことしたら」

ココア「普通はそうだけど、チノちゃんは不良でしょ?」

チノ「はい」

ココア「不良は、悪いことを率先してやらなきゃいけないのよ」

チノ「なるほど」

ココア「じゃあ私がお手本を見せるわね」

チノ「お願いします、姐さん」

ココア「まずメンチを切るわ」ムムッ

チノ「……こっちをすごい睨んでますね」

23: 2014/08/08(金) 15:15:30.84 ID:b0fTxJpd0
ココア「……」ムムッ

チノ「……」ムゥ

ココア「何見てるのよ!」

チノ「わっ!」

ココア「誰に向かってメンチ切ってるの!」

チノ「……ごめんなさい」

ココア「謝ってもすまないよ! お金出して!」

チノ「……分かりました、姐さん」

ココア「ストップ! そんな素直に出しちゃダメだよ」

チノ「えっ」

28: 2014/08/08(金) 15:19:04.54 ID:b0fTxJpd0
ココア「一回断らないと。知らない人っていう設定なんだから」

チノ「なるほど。不良の道は厳しいですね」

ココア「じゃあやり直すよ? ……お金出して!」

チノ「嫌です。お金ありませんので」

ココア「じゃあちょっとぴょんぴょん飛んでみてよ。うさぎみたいにね」

チノ「……こうですか? ぴょんぴょん」ピョンピョン

ココア「別に手でお耳を表現しなくていいから。もう一回飛んで」

チノ「ぴょんぴょん」チャリンチャリン

ココア「そっちのポケットに、お金が入っているわね!」

チノ「!?」

29: 2014/08/08(金) 15:22:11.59 ID:b0fTxJpd0
チノ「どうして分かったんですか?」

ココア「ふっふーん。ぴょんぴょんすると、小銭が音をたてるのです」

チノ「……なるほど。勉強になりますね」

ココア「これでもう教えることは何もないわ」

チノ「じゃあ……!」

ココア「でもまだ不良じゃないよ」

チノ「……そうですか」ションボリ

ココア「実戦を積んで、初めて不良を名乗れるんだよ!」

チノ「……っ!?」

31: 2014/08/08(金) 15:25:18.55 ID:b0fTxJpd0
ココア「知らない人にやると怖いから、まずは知ってる人で試してみよう」

チノ「はい。じゃあリゼさんにやってみます」

ココア「……リゼちゃんはダメだよ」

チノ「なんでですか? リゼさんが一番近しい人ですよ。
   こちらから出向かなくても、お店に来るわけだし」

ココア「でも、ダメなんだよ。
    だってリゼちゃんは”ホンモノ”だから」

チノ「本物……?」

ココア「そう。リゼちゃんが、本気でチノちゃんにメンチを切ったら」

チノ「切ったら……?」ゴクリ

ココア「チノちゃん。運が良くて即氏だよ」

チノ「即氏……っ!?」

32: 2014/08/08(金) 15:27:12.28
運が悪いとどうなっちまうんだ…

34: 2014/08/08(金) 15:28:48.04 ID:b0fTxJpd0
ココア「そう。苦しまずに氏ねたら、ラッキーってレベルだね」

チノ「恐ろしいです」

ココア「だからシャレの通じそうな千夜ちゃんに試してみよう」

チノ「分かりました」

ココア「そうと決まったら善は急げだね。すぐに甘兎庵に行くよ。
    私も入口までは付いていくから」

チノ「恩に着ます。姐さん」

ココア「チノちゃん。手順は完璧ね?」

チノ「完璧です」

38: 2014/08/08(金) 15:31:39.91 ID:b0fTxJpd0
~甘兎庵前~

ココア「じゃあ頑張ってきてね。チノちゃん」

チノ「頑張ってきます。姐さん」

~甘兎庵店内~

チノ「……」ムゥ

千夜「いらっしゃ……あら。チノちゃんじゃない。こんにちは」

チノ「……」ムゥ

千夜「……? もしかしてご機嫌ななめ?
   ココアちゃんと喧嘩でもした?」

チノ「……」ブンブン

千夜「……違うのね」

41: 2014/08/08(金) 15:34:45.03 ID:b0fTxJpd0
千夜「分かった! 睨めっこね。私、結構強いのよ」プゥー

チノ「ぶふっ!」

千夜「やったー。勝ったぁ!」

チノ「ふうふう……。違います」

千夜「じゃあどうしたの?」

チノ「……千夜さん。お金ください」

千夜「あら。お財布忘れちゃったのね?
   それならお代はいつでもいいから。
   好きなもの頼んでいいわよ」

チノ「そうじゃなくてですね。お金をください」

千夜「うーん……?」

42: 2014/08/08(金) 15:38:12.16 ID:b0fTxJpd0
千夜「何か欲しいものでもあるの?
   本当はこういうのはよくないんだけど……」ガサゴソ

チノ「すぐ出さないでください。一回断るものです」

千夜「そうなの?」

チノ「そうです。じゃあやり直します。……お金ください」

千夜「ごめんね。今お金無いのよ」

チノ「じゃあぴょんぴょん飛んでください。うさぎみたいに」

千夜「こうかしら? ぴょんぴょん」ピョンピョン

チノ「手でお耳を表現しなくていいです。もう一回」

千夜「……? ぴょんぴょん」ピョンピョン

チノ「お金の音がしない……っ!?」

47: 2014/08/08(金) 15:41:33.06 ID:b0fTxJpd0
チノ「千夜さん。本当にお金ないんですか?」

千夜「あるわよ。……ほら」

チノ「あ、お札だ」

千夜「そうね」

チノ「小銭はないんですか?」

千夜「着物だと、どうしてもジャラジャラしちゃうから……。
   お財布もかさばるし、持ち歩かないのよ」

チノ「なるほど」

千夜「ところでチノちゃんは何の用事で来たの?」

チノ「いえ、もう済みましたので。失礼します」

千夜「……? そうなの。また遊びに来てね」

49: 2014/08/08(金) 15:44:38.02 ID:b0fTxJpd0
チノ「姐さん。……ダメでした」

ココア「見てたよ。あれは完敗だね」

チノ「私、もしかして不良に向いてないんでしょうか」ションボリ

ココア「そんなことないわ。あれは千夜ちゃんが格上だっただけよ」

チノ「そうなんですか?」

ココア「ええ。あの様子だと、千夜ちゃんは確実に人を頃しているわね」

チノ「物騒ですね」

ココア「伊達に着物を着てはいないわよ。
    着物って言うのは侍の戦闘服だからね」

チノ「なるほど。さすがです」

52: 2014/08/08(金) 15:48:05.27 ID:b0fTxJpd0
ココア「次は、シャロちゃんにしましょう」

チノ「はい。シャロさんならいけそうな気がします」

ココア「今日は公園のクレープ屋でバイトしてるはずだわ」

チノ「じゃあ公園に行きましょう」

ココア「私も途中まで付いていくからね」

チノ「ありがとうございます。姐さん」

~公園入口~

ココア「じゃあ私はここで待ってるからね」

チノ「行ってきます」

55: 2014/08/08(金) 15:51:37.14 ID:b0fTxJpd0
チノ「今のうちにメンチの練習をしておきましょう」ムゥ

不良「おい。何メンチ切ってんだよ」

チノ「えっ」

不良「お前だよ。なんだよコラ」

チノ「……すいません」

不良「謝って済むか!」ドン!

チノ「ひっ!」

不良「殴られたくなきゃ金出せよ、オイ」

チノ「どうしよう……」ガタガタ

62: 2014/08/08(金) 15:54:39.31 ID:b0fTxJpd0
ココア「チノちゃん!」

チノ「……! 姐さん!」

不良「あー? なんだてめぇは」

ココア「相手はまだ子供じゃないですか!
    恥ずかしくないの!?」

不良「……なんだよ、オイ」ガン!

ココア「……っ!!! ……いっ…………たぁ」

チノ「ココアさん!」

不良「これ以上やられたくなかったら金出せよ、オラ」

67: 2014/08/08(金) 15:58:05.56 ID:b0fTxJpd0
ココア「……嫌です」

不良「へぇ……」ガン!ゴン!

ココア「…………っっっ!!!?? ぐぅぅぅううう…………」

チノ「ココアさんっ!? ……早く本気出してやっつけちゃってください!
   本当は強いんですよね!? ココ……、姐さんっ!!!」

ココア「……はぁはぁ。……チノ、ちゃん」

不良「ああ? 誰が強いって?」

ココア「……ごめんね。チノちゃん。あれ、嘘なの……」

チノ「ええっ!」

不良「なんだぁ?」

71: 2014/08/08(金) 16:01:39.96 ID:b0fTxJpd0
ココア「私、本当は強くなんてない……。
    不良だったってのも、嘘なのよ……」

チノ「そんな……嘘……」

ココア「そうなの……。ごめんね……」

チノ「……その”嘘”って言うのが、嘘です」

ココア「チノちゃん……?」

チノ「姐さんが強くないのなら、私のこと助けに来れなかったはずですよ。
   不良にやられながら、私のこと庇えるわけなんてないんです……」

ココア「……」

チノ「私……。やります……。姐さんの、弟子だから!」ムゥ

不良「何メンチ切ってんだオラァ!」

73: 2014/08/08(金) 16:05:01.14 ID:b0fTxJpd0
ココア「チノちゃん! やめて!」

チノ「……」ムゥ

不良「マジでぶっ殺されてぇみたいだな……」ゴキゴキ

チノ「……」ガタガタ

不良「オラアアアア!!!!!」

ココア「チノちゃん!」

不良「……っ!? あ……、が…………」バタン

チノ「…………」ガタガタ

ココア「……あれ?」

リゼ「なんだよ、こいつ」

ココア「リゼちゃん!」

78: 2014/08/08(金) 16:08:39.32 ID:b0fTxJpd0
チノ「リゼさん……」ガタガタ

リゼ「おー、チノ。よく頑張ったな」ナデナデ

ココア「リゼちゃん……。何やったの?」

リゼ「ああ。シャロの店で買ったクレープ食ってたら、
   ココアの叫び声が聞こえてさ。慌てて駆けつけたんだよ」

チノ「あそこにいて声が聞こえたんですか……」

リゼ「そしたらこの倒れてるのとチノがメンチの切り合いしてたのが見えて。
   私もチノに加勢したんだ。まさか一睨みで倒れるとは思わなかったけどな」

ココア「リゼちゃんすごいね……」

ココア「私と違って……」ボソリ

82: 2014/08/08(金) 16:12:57.27 ID:b0fTxJpd0
チノ「姐さんの言ったとおりでしたね! すごいです!」

ココア「えっ……? 私は、何も……」

チノ「リゼさんは”ホンモノ”だって言ってたじゃないですか」

リゼ「えっ。私が本物……? なんだよ、照れるな……」

チノ「姐さんに一生ついていきます! また色々教えてください!」

ココア「……うん! 任せて!」

リゼ「って、ココア!? お前傷だらけじゃないか! 早く手当てしないと」

ココア「えへへ……。なんか夢中で……」

チノ「家に救急セットがありますよ!」

84: 2014/08/08(金) 16:16:10.22 ID:b0fTxJpd0
ココア「いたたたた……」

チノ「姐さん。大丈夫ですか?」

ココア「うん。かわいい弟子のためだからね」

チノ「……ありがとうございます」

リゼ「しかし……。まだあんな不良が生息していたとはなぁ」

チノ「そういえば、あんまり見かけたことありませんね」

リゼ「当然だろ。この街には千夜がいるからな」

ココア「……それって、どういうこと?」

リゼ「ん? なんだ。知らないのか?」

チノ「私も知りません」

92: 2014/08/08(金) 16:19:52.59 ID:b0fTxJpd0
リゼ「あいつはのほほんとしてるから、不良に絡まれやすいんだが……」

ココア「なんかそれっぽいね」

リゼ「でも、危機回避能力は異常に高いんだよな。
   だから、あいつに絡んだ不良は、ダンプに撥ねられたり、
   銃撃戦の流れ弾が当たったり、崖から落ちたり、
   空爆されたり、ハチの大軍に追われたりするんだ」

チノ「壮絶ですね……」

リゼ「気付いたら街から不良が消えてた」

ココア「そうなんだ」

チノ「また姐さんの言ったとおりでしたね」

ココア「まぁ、千夜ちゃんが直接頃したわけじゃないみたいだけど……」

98: 2014/08/08(金) 16:23:43.81 ID:b0fTxJpd0
~公園~

不良「……いてて。まだ頭がクラクラしやがるぜ……」

千夜「大丈夫ですか?」

不良「ああ!? なんだてめぇは!」

千夜「いえ……。人が倒れているのが、見えたものですから」

不良「余計なお世話なんだよ! ぶち頃すぞ!」

ヤクザ「おい、兄ちゃん。誰に向かって物言ってんだ。この野郎」ニヤニヤ

不良「あ……。え? いえ……」

ヤクザ「ちょっと事務所行くか馬鹿野郎」ニヤニヤ

不良「ちょ……誰か……。助けて……」ズルズル

千夜「……行ってしまわれました」

104: 2014/08/08(金) 16:27:10.52 ID:b0fTxJpd0
リゼ「ところで。さっきからその”姐さん”ってのはなんなんだ?」

チノ「姐さんは、姐さんですから」

リゼ「……ふうん?」

チノ「姐さん! また、お願いしますね」

ココア「チノちゃん! 任せて!」

リゼ「まぁ。仲がいいなら、いいことだな」

こうして、チノは不良への第一歩を踏み出したのであった。

終わり

105: 2014/08/08(金) 16:27:54.08

引用元: チノ「ココアさん。私、不良になりたいんです」