1: 2009/11/22(日) 00:41:03.44 ID:WzmNWF+W0
1.

ピンポーン

起子「初めてお目にかかります」
男 「うお」
承子「私達、四人で一つ、一心同体」
男 「は、はあ」
転子「でも好みのタイプは人それぞれ」
男 「えっ」
結子「なにとぞよろしゅうおねがいします」
男 「あ、あの……どちら様で?」

2: 2009/11/22(日) 00:42:23.05 ID:WzmNWF+W0
2.

男 「部屋間違えてないか?」
起子「お間違えではないのです」
承子「私達今日からここで暮らします」
転子「あなたは浴槽で寝てもらいます」
男 「えっ」
結子「どうぞよろしくおねがいします」
男 「は、はあ……」

男 「ってなんだいそりゃ」

3: 2009/11/22(日) 00:43:11.74 ID:WzmNWF+W0
3.

男 「宿を探しているのか?」
起子「宿を探していたのです」
男 「なら近くにホテルが──」
承子「お金が掛かります」
転子「だから寄生します」
結子「なにとぞ、よろしくおねがいします」
男 「何が何やら……」

起子「起子です」
承子「承子です」
転子「転子です」
結子「結子です」
男 「聞いてません」

5: 2009/11/22(日) 00:44:20.26 ID:WzmNWF+W0
4.

男 「なんで俺の家なんだ?」
起子「とてもお腹がすいて」
承子「フラフラと彷徨っていたら」
転子「青いキャンパスに描かれた一筋の綺麗な虹を」
結子「見かけたのです」

男 「は?」

6: 2009/11/22(日) 00:45:15.16 ID:WzmNWF+W0
5.

男 「で、どうするんだ。居座らせはしないが──」
男 (結構可愛い四人組だし)
男 「ファミレスで飯くらいなら奢ってやるぞ」
起子「それはそれは」
承子「私達、お腹ぺこぺこなので是非」
転子「遠慮させて」
結子「頂きます」
起子「……」
男 「……」

7: 2009/11/22(日) 00:46:36.66 ID:WzmNWF+W0

6.

◆ ファミレス「ジョニィ」

男 「腹減ってるなら素直に言えばいいのに」
起子「たまには私達も」
承子「意思の食い違いというものが」
転子「あるの」
結子「です」
男 「今のは普通だったな」
起子「たまには私達も」
承子「意思の疎通というものが」
転子「出来ないの」
結子「です」
男 「どっちなんだよ」

8: 2009/11/22(日) 00:47:44.27 ID:WzmNWF+W0
7.

男 「というか、お前達の意思決定、転子に委ねられてないか?」
起子「!」
男 「一番大事な所が転子に捻じ曲げられてるじゃないか」
承子「……確かに」
転子「そんなことはない」
結子「のです」
男 「……」

起子「承子が結論を」
承子「付けてしまえば」
転子「私の出る幕は」
結子「ないのです」
男 「ほう?」
起子「私達はお腹が空いたので」
承子「ご飯をご馳走になります」
転子「が、あなたに奢ってもらうのはイヤ」
結子「です」
男 「だめじゃねーか」

9: 2009/11/22(日) 00:49:50.20 ID:WzmNWF+W0
8.

男 「で、何頼む?」
起子「サラダ」
承子「スープ」
転子「ハンバーグ」
結子「フルーツパフェ」
男 「フルコースだな」
起子「……」
男 「本当にそれでいいのか?」

12: 2009/11/22(日) 00:53:12.31 ID:WzmNWF+W0
9.

起子「というのは冗談でですね」
承子「私達、皆で一緒に」
転子「おうどん」
結子「を食べたいと思います」

起子「……」
承子「……」
結子「……」
転子「?」

男 「すみませーん」

13: 2009/11/22(日) 00:55:02.99 ID:WzmNWF+W0
10.

起子「そして運ばれてくる」
承子「おうどん四つ」
転子「私やっぱりハンバーグにする」
結子「無理だと思います」

男 「あ、一応会話も出来るんだな」

14: 2009/11/22(日) 00:57:54.03 ID:WzmNWF+W0
11.

男 「四人は姉妹なのか?」
起子「そういうわけでもないんですが」
承子「あえて言うなら」
転子「穴姉妹」
結子「ではありません」
男 「そこは流石に否定するんだな」
起子「同じ施設で生まれ」
承子「同じ施設で育った」
転子「穴姉妹」
結子「ではありません」
男 「……」

16: 2009/11/22(日) 01:01:12.34 ID:WzmNWF+W0
12.

起子「お腹いっぱいです」
承子「起子、おつゆは飲まないの?」
転子「飲まないなら結子が飲みます」
結子「飲みません」

男 (仲はいいんだな……)

起子「あ、あの」
男 「うん?」
承子「見ず知らずの私達にご飯をご馳走してくれて」
男 「ああ、いいよいいよ」
転子「礼は言わないぜ」
男 「いや、言えよ」
結子「次会う時は敵同士だ」
男 「えっ?」

18: 2009/11/22(日) 01:03:48.21 ID:WzmNWF+W0
13.

チュンチュン

男 (結局泊めてしまった……)
起子「おはようございます」
承子「おはようございます」
転子「おはようございません」
結子「おはようございます」
男 「ああ、おはよう」
起子「私、朝ごはんの材料を買いに行ってきます」
男 「金あるのか?」
承子「もちろん」
転子「ありません」
結子「ください」

男 「やれやれ……」

19: 2009/11/22(日) 01:05:35.85 ID:WzmNWF+W0

14.

男 「他の三人は付いてこなくて良かったのか?」
起子「ええ、大丈夫です」
男 「一人でも喋れるんだな」
起子「ええ、勿論です」
男 「仲、いいんだな」
起子「そうでもありません。たまには姉妹喧嘩とかもす」
男 「ん?」
起子「文字制限です」
男 「なんだそりゃ」

21: 2009/11/22(日) 01:06:53.56 ID:WzmNWF+W0
15.

男 「おーい、帰ったぞ」
起子「ただいま」
承子「おかえり」

男 「……あれ?後の二人は?」
起子「転子と結子は」
承子「散歩に行った」
男 「そうか」
起子「朝ご飯の準備をします」
男 「お、朝ご飯、作ってくれるのか!ってまあそのくらいはやってもらわんとな」
承子「気をつけたほうがいい」
男 「ん?」
起子「どういうことかな?」
承子「どうでもいいこと」

男 「うーん……?」

22: 2009/11/22(日) 01:09:23.75 ID:WzmNWF+W0

16.

男 「君も別に一人で喋れるよね」
承子「当たり前ですが」
男 「四人とも、趣味も同じなの?」
承子「同じだったり違ったりしますが」
男 「転子が好きな男のタイプは違うって言ってたけど」
承子「違ったり同じだったり」
男 「どっちつかずだなあ」
承子「受け渡す役ですから」

男 「ところで、俺の事がタイプな子は」
承子「いない」
男 「そこだけきっぱりかよ!」

27: 2009/11/22(日) 01:11:45.03 ID:WzmNWF+W0
>>23 ゆいこです

17.

起子「おかえり」
承子「おかえり」
転子「おかえり」
男 「ただいま、だろ。結子は?」
起子「転子と結子が散歩に行くと」
承子「必ず転子が先に帰る」
転子「そして結子は水の底」
男 「んな馬鹿な。まあじきに帰ってくるかな」
起子「多分」
承子「恐らく」
転子「きっと」

起子「では朝食作りを続行しますので」
承子「くれぐれも転子を来させぬよう」
転子「なんてひどい」
男 (なんとなくわかる気がする……)
起子「だってあなたお味噌汁の中に」
承子「大福餅入れるじゃない」
男 「よし、俺が命に代えても抑えているから安心して作ってこい!」
転子「むぐぐぐ」

30: 2009/11/22(日) 01:16:20.37 ID:WzmNWF+W0

18.

男 「んで君が四人の意思決定役か」
転子「そうではない」
男 「ひねくれものだなぁ」
転子「そうでもない」
男 「他人と違うことを言わないと気がすまないとか?」
転子「それでもない」
男 「日本の首都は」
転子「名古屋」
男 「アメリカの大統領は」
転子「ワシントン」
男 「初めてのキスの味は」
転子「歯磨き粉」
男 「したことあるのか?」
転子「ない」
男 「胸のサイズは?」
転子「巨乳が好きなのか?」
男 「え?」
転子「巨乳が好きなのか?」
男 「いや、すまんかった」
転子「巨乳が好きなのか?」
男 「……まあ、どちらかというと」
転子「F65」
男 「うそをつけ」

31: 2009/11/22(日) 01:19:06.41 ID:WzmNWF+W0
19.

男 「そういえばさ」
転子「なんだ」
男 「誰が一番年上なの?」
転子「私」
男 「え、そうなのか」
転子「起子は承子より年が低い。私と結子は同い年だ」
男 「ふむふむ」
転子「結子は起子より年が低い」
男 「つまりみんな同い年なんだね」
転子「そういうこと」
男 「ひねくれものだなぁ」

33: 2009/11/22(日) 01:21:55.52 ID:WzmNWF+W0
20.

男 「帰ってこないな」
起子「結子は」
承子「いつも」
転子「帰ってこない」
男 「んな馬鹿な。探しに行ってくる」
起子「ご飯」
承子「までには」
転子「戻らなくていい」

男 (三人だと何か調子狂うな)

35: 2009/11/22(日) 01:25:13.91 ID:WzmNWF+W0
支援ありがとうございます

21.

男 「おーい……いたいた。何やってんだ?」
結子「……」
男 「花を眺めているのか?」
結子「ではありません」
男 「ああ、蝶々か」
結子「です」
男 「なんで延々と蝶を眺めてるんだ」
結子「飛び立ったら行こうと思ったのです」
男 「……で、いつまで経っても飛び立たないと」
結子「そういうことです」

37: 2009/11/22(日) 01:28:13.49 ID:WzmNWF+W0
22.

男 「いい天気だな」
結子「そう思います」
男 「散歩は日課なのか?」
結子「でもないです」
男 「天気がいいからか」
結子「です」
男 「四人はどこから来たんだ?」
結子「西の方からです」
男 「西の方っていうと……関西か?」
結子「そうでもありません」
男 「名古屋あたり?」
結子「そうかもしれません」
男 「何で来たんだ?」
結子「電車です」
男 「はるばる東京まで?」
結子「そうです」
男 「……」
結子「……」
男 (話題が続かねえ……)

39: 2009/11/22(日) 01:31:52.58 ID:WzmNWF+W0
23.

男 「いただきます」
起子「いただきます」
承子「いただきます」
転子「いただいてます」
結子「いただきます」
男 「やはり四人だな」
起子「何がですか?」
男 「いや、なんでも……ぐふっ」
承子「当たりましたね」
転子「起子の料理は必ず一人分罠がある」
男 「な、なぜそんなことを……」
結子「知りません」
男 「知らないのかよ!」

起子「だって聞こうとしても」
承子「四人で一セットですから」
転子「前の人に質問するまもなく」
結子「話題が終わるのです」
男 「めんどくさい奴らだな」

男 「それで、何で爆弾作るんだよ」
起子「何となく」
男 「なんだそりゃ」

41: 2009/11/22(日) 01:34:14.25 ID:WzmNWF+W0
24.

男 「ご馳走様でした」
起子「ごちそう」
承子「さま」
転子「ぢぇし」
結子「た」
男 「……今噛んだだろ」
転子「……」
起子「今」
承子「噛んだでしょ」
転子「噛んでない」
結子「だそうです」
男 「へえ」

起子「じゃあ、片付けは」
男 「俺がやれってか?」
承子「他に誰がやる」
男 「誰がってお前達四人も」
転子「手伝わない」
結子「です」
男 「あっそう」

42: 2009/11/22(日) 01:36:46.27 ID:WzmNWF+W0
25.

──

男 「かれこれ三日も経ってしまったがいつまで居座るつもりだ」
起子「そりゃ永遠に」
承子「あなたが氏ぬまで」
転子「あなたが氏んでも」
結子「私達は居座ります」
男 「いや、そうしたいのは山々なんだけど……俺も金ないし」
起子「金ならある」
男 「は?」
承子「ほら」
男 「うお、どこに隠してたんだ。ってか何で持ってるんだ」
転子「昨日施設から送られてきた」
男 「マジで?」
結子「マジで」

男 「アテがあるなら最初に言ってくれればよかったのに……」
起子「だって言わなかったじゃない」
承子「お金のことなんて」
転子「工口本のこともね」
男 「そりゃ言わなかったけど……って何勝手に引き出し開けてるんだ! やめろ!」
結子「けがらわしい」

男 「ん? なんで金あるのに居候されてんだ? 俺」

43: 2009/11/22(日) 01:39:34.34 ID:WzmNWF+W0
26.

明くる日

起子「……」
男 「どうしたんだ? 塞ぎ込んで」
起子「……」
男 「他の三人は?」
起子「……散歩」
男 「置いてかれて拗ねてんのか?」
起子「ちがう」
男 「三日連続で爆弾当てられた事は別に恨んじゃいないぞ」
起子「ちがう」
男 「まったく。どうしたってんだ」
起子「ちなみにそれわざと」
男 「あ?」

45: 2009/11/22(日) 01:43:29.91 ID:WzmNWF+W0
27.

男 「ただいま。起子は?」
承子「あのまま部屋に引きこもっている」
転子「でも食事は食べてる」
結子「食いしん坊ですから」
男 「参ったな。何かあったのか?喧嘩とか?」
承子「してない」
転子「媚びない」
結子「顧みない」
男 「何を言ってるんだ何を」

男 「っていうか俺の部屋なんだが……」

46: 2009/11/22(日) 01:47:05.68 ID:WzmNWF+W0
28.

男 「こういうの、よくあることなのか?」
承子「めったに」
転子「ないね」
結子「おまえのせいだ」
男 「お、俺のせいか?」
承子「うん」
転子「まあ、違うけど」
男 「え?」
結子「おまえのせいだ」
男 「はあ」

47: 2009/11/22(日) 01:49:43.77 ID:WzmNWF+W0
29.

男 「おーい、入るぞ」
起子「駄目」
男 「着替えてんのか?」
起子「そうじゃない」
男 「俺の部屋なんだが」
起子「扉の所にドミノがある」
男 「うそをつけ」

ガチャ

バララララララララララララララ

男 「……」
起子「……」
男 「い、いや、すまんかった」
起子「……」

50: 2009/11/22(日) 01:52:29.18 ID:WzmNWF+W0

30.

男 「で、どうしたんだ」
起子「……」
男 「話さないと何もわからんぞ」
起子「話したくない」
男 「何か深刻な悩みなのか?」
起子「そう」
男 「うーん……」
起子「でてってよ」
男 「話してくれたらアイスパフェおごってやる」
起子「いらない」
男 「じゃあこの携帯に付いてるゲコ太ストラップでどうだ」
起子「話す」
男 「えっ」

51: 2009/11/22(日) 01:54:35.00 ID:WzmNWF+W0
31.

起子「……喋りたいんです」
男 「ん?」
起子「私だって! 最初以外の台詞を喋りたいんです!」
男 「……はあ?」
起子「いつも私は冒頭の台詞ばっかり」
男 「うん」
起子「みんな後ろに続くだけ」
男 「まあそうだが」
起子「自分の始めた話がどこか知らない結論に達す」
男 「それもかなり変な場所に」
起子「その不安、あなたに分かりますか?」
男 「すまないとは思うが、まったく分からん」
起子「私だって話の腰を曲げたい。結論を話したい」
男 「承子は?」
起子「別にいいです」
男 「あ、そう」

55: 2009/11/22(日) 01:57:23.70 ID:WzmNWF+W0
32.

男 「別に、話せばいいんじゃないか?」
起子「だめです、秩序だから」
男 「そんな堅く考える必要もないと思うがなあ。さっきだって三人でやってたし」
起子「それでも順番は守るものです」
男 「別に年功序列ってわけじゃないんだろ」
起子「それはそうですけど」

男 「しかし、そういうこと考えるんだな」
起子「きっとツンデレだって普通にデレたい時もあるし、
   クーデレだって熱血漢になりたい時があるし、
   口リ校長だって校長やめたい時があるんです」
男 「怒られるぞお前」
起子「そういうものなんです」
男 「お前文字制限は?」
起子「そういうものなんです」
男 (いいのかよ)

56: 2009/11/22(日) 02:00:45.39 ID:WzmNWF+W0
33.

承子「どうだった」
男 「お前達に言えないような悩みがあるんだとさ」
転子「珍しい」
結子「ですね」
男 「珍しいのか?」
承子「私達、秘密なんて無いですもの」
転子「好みのタイプ、性癖、体重、へそくりの在り処まで」
結子「えっ」
男 「えっ」

59: 2009/11/22(日) 02:03:41.35 ID:WzmNWF+W0
34.

男 「ところでお前達、本当はなんで家に来たんだ?」
承子「実はこの世界、悪魔の力に蝕まれつつあり」
転子「今こそ魔道をもう一度目覚めさせなければならない」
結子「私達と貴方は、前世で共に戦った五人の勇者なのです」
男 「はいはい。で、なんで家に来たんだ?」
承子「なんとなく」
男 「なんとなくなのか?」
転子「なんとなく」
男 「んな馬鹿な」
結子「小説は事実より偶なり」
男 「え?」

60: 2009/11/22(日) 02:05:45.18 ID:WzmNWF+W0
35.

男 「おーい、晩御飯だぞ。ここに置いとくか?」
起子「……」
男 「ったく、置いとくぞ。風呂入る時言えよ」
起子「ちょっとまって」
男 「ん?」

ガチャ

起子「入って」
男 「ん、ああ」

バタッ

起子「やっぱり、話そうと思うんです。三人に」
男 「おお、そうか。そいつはよかった」
起子「それで、もし良かったらあなたに付いていてほ」
男 「ん」
起子「しいと思って」
男 「別に構わないが」
起子「良かった」
男 「うん」
起子「じゃあ出てって」
男 「マイペースだなおい」

63: 2009/11/22(日) 02:09:03.39 ID:WzmNWF+W0
36.

起子「ねえ、みんな。聞いて」
承子「あら起子、久しぶり」
転子「五年と四ヶ月ぶり」
結子「随分と痩せ細ったね」
男 「朝会ったばかりだろうが。んで、起子が話したいことあるってさ」

起子「あのね……わ、私も、最後に話してみたいの!」
男 (別に俺いなくていいんじゃないか……?)
承子「最後?」
転子「私や」
結子「私みたいに?」
起子「そう!」

65: 2009/11/22(日) 02:10:59.45 ID:WzmNWF+W0
37.

承子「なんだ」
転子「そんなことで」
結子「悩んでたのね」
男 「おいおい、そんなことはないだろう」
起子「そ、そうだよ! 私、どんなに悩んだか」
男 「それもどうかと思うが」
承子「別に」
転子「話したければ」
結子「話せばいいじゃない」

67: 2009/11/22(日) 02:13:00.80 ID:WzmNWF+W0
38.

起子「だって私達話す時は」
承子「『順番』が必要だと思っているようだが」
転子「別になくても話せる」
起子「!」
男 「!」
結子「そしてお前の両親はやせてきたので最寄りの町へ解放しておいた」
男 「何の話だ」

起子「順番、いらないの?」
承子「そもそも私達」
結子「誰か欠けてても」
転子「問題なく話せるじゃない」
起子「そっか……」
男 「いや気付けよ」

69: 2009/11/22(日) 02:16:50.43 ID:WzmNWF+W0
39.

承子「全くそんなことで悩むだなんて、かわいいこね」
転子「食べちゃいたいくらい」
起子「うう」
結子「あ、今のは比喩よ」
男 「いや誰も本当とは思わねえよ」
起子「ってことは私も」
承子「結子みたいに」
転子「最後を締められる?」
結子「それは駄目よ」
起子「えっ」
男 「えっ」

73: 2009/11/22(日) 02:20:05.78 ID:WzmNWF+W0
40.

承子「だってあなたが最後を締めたら」
転子「結子は職を失い橋の下で夜露を過ごすことになる」
男 「起子の代わりに最初を話せばいいんじゃないか?」
結子「私が最初に話し始めることなんてないと思うけど」
男 「確かにずっと沈黙が続くだけだな」

起子「え、じゃあ永遠に私は」
承子「最後の台詞を」
転子「喋ることなんて」
起子&結子「で──」

起子「……」
結子「……きないのよ」
男 「……」

75: 2009/11/22(日) 02:24:14.22 ID:WzmNWF+W0
41.

起子「つまり転子が二番目に話したり」
承子「結子が三番目に話したり」
転子「あるいは承子が最後を締めることが出来ても」
結子「起子が最初の台詞を喋ることは出来ないということ」
起子「そんな……」
承子「だから多分私達は」
転子「結局いつも同じ順番で」
結子「話してきたのね」
男 「なんか分かった気になってきたが実際なんだこれ」

77: 2009/11/22(日) 02:29:00.22 ID:WzmNWF+W0
42.

起子「でも……なんだか、それでいい気がしてきた」
男 「ん? 最後を締めたいんじゃなかったのか」
承子「ずっと慣れ親しんできたものだもの」
転子「嫌なはずはないし」
結子「心地いいものだもの」
起子「人は誰しも役割を与えられている」
承子「私達はただそれが」
転子「昨日のレールガン予約し忘れた」
結子「人より顕著に現れているだけなのね」
男 (ん…?)

80: 2009/11/22(日) 02:34:23.36 ID:WzmNWF+W0
43.

起子「わかった。私、これからも『最初』を喋り続ける」
承子「私は次を」
転子「私はその次を」
結子「そして私が締めるのです」
男 「めでたしめでたし」
起子「そしたらなんだか」
承子「お腹が空いたね」
男 「いや、さっき食べたばかりだろう」
転子「お腹が」
結子「空いたね?」
男 「……分かったよ、何か作ってやるから」

起子「でもたまには」
承子「やってもいいかも」
転子「気が向いたら」
結子「風が向いたら」

82: 2009/11/22(日) 02:37:02.36 ID:WzmNWF+W0
44.

結子「そんなこんなで、この話は一旦おしまい」
転子「けれど、まだまだ受難は続く」
承子「問題山積み、苦労は尽きず」
起子「私達の物語は、今始まったばかりなのです!」


起子「……あれ?」


~完~

83: 2009/11/22(日) 02:37:59.27 ID:WzmNWF+W0
以上です。
大して中身の無いショート・ショートですが見てくださった方々、支援してくださった方々ありがとうございました。


84: 2009/11/22(日) 02:38:11.72
乙。楽しかった。
そして起子オメw

90: 2009/11/22(日) 02:50:22.35 ID:WzmNWF+W0
みなさんありがとうございます

>>89
今のところ続きは考えてませんがキャラがなかなか生きてくれたのでそのうち書くやもしれません
期待しないでお待ちください

94: 2009/11/22(日) 03:00:40.74 ID:WzmNWF+W0
あっ
>>75の6行目は
>結子「起子以外が最初の台詞を喋ることは出来ないということ」
でした。「以外」が抜けてました。すみません

ではおねむです

引用元: 起承転結「おじゃまします」