32: 2014/08/29(金) 00:25:55.39 ID:e+U6VhFF0
ココア「チノちゃん……。なんでそんなこと言うの……?」

チノ「い、いつもいつもベタベタし過ぎなんですよ!
   少しは自重してください」

ココア「分かったよ……。気を付けるから……」

チノ「少しは反省してください! 分かりましたね!」

ココア「あ……。チノちゃん」

チノはラビットハウスを出て行った。

35: 2014/08/29(金) 00:28:06.16 ID:e+U6VhFF0
チノ「はぁ……。どうしてこう私は素直じゃないんでしょう……」

足元の石ころをぽかりと蹴った。

チノ「本当はココアさんのこと大好きなのに……」

俯いたまま歩く。

チノ「ココアさんを傷付けてしまったでしょうか」

ふと顔を上げると、そこは甘兎庵の前だった。

38: 2014/08/29(金) 00:30:09.98 ID:e+U6VhFF0
千夜「うふふ。思春期の女の子はね、そういうものなのよ」

チノ「そうなんですか」

千夜「ええ。そうよ」

千夜はにっこりと笑みを浮かべる。

チノ「でも……。少し言い過ぎてしまったかもしれません」

千夜「大丈夫よ。ココアちゃんはチノちゃんのことが大好きなんだから。
    ……チノちゃんはココアちゃんのことどう思っているの?」

チノ「……それは」

千夜「うん」

相変わらず笑みを浮かべたまま、千夜が頷く。

チノ「……私もココアさんが大好きです」

40: 2014/08/29(金) 00:32:03.08 ID:e+U6VhFF0
千夜「それなら素直にならなきゃね?」

チノ「そうなんですけど……」

チノは分からなかった。
どうしてココアにひどいことを言ってしまったのだろう。

千夜「ちゃんと謝れば許してもらえるのよ。ね?」

チノ「……はい。分かりました」

千夜「うん」

チノ「私、ココアさんに謝ってきます」

チノは千夜にお礼を言うと甘兎庵を飛び出した。

41: 2014/08/29(金) 00:34:17.30 ID:e+U6VhFF0
ココア「……私。チノちゃんに嫌われちゃった」

虚ろな目をしたココアは、フラフラと立ち上がった。
椅子が引っかかり、ガタリと音が鳴る。

ココア「どうして……。こんなに好きなのに……」

そのままフラフラと、ココアはラビットハウスから出て行った。

45: 2014/08/29(金) 00:37:54.97 ID:e+U6VhFF0
チノ「ココアさーん。……あれ」

ラビットハウスはもぬけの殻だった。

チノ「……どこに行ったんでしょうか」

オープンの時間になれば帰ってくるかと思い、
チノは一人でお店の準備を始めたが、
結局その日、ココアが帰ることは無かった。

49: 2014/08/29(金) 00:40:03.49 ID:e+U6VhFF0
チノ「どこに行ってしまったんでしょう」

リゼ「チノ……」

チノ「うっ……。うぐっ……。わたっ、私が……っ!
   嫌いとか言ったから……っ!」

リゼ「……チノのせいじゃないよ」

チノの肩に、そっと手が乗せられた。

チノ「リゼさん……」

リゼ「ココアのことだ。きっとふらっと帰ってくるだろ」

チノ「……っ。はい……っ! そうですね!」

二人の期待に反して、ココアはいつまでも帰ってこなかった。

51: 2014/08/29(金) 00:42:40.05 ID:e+U6VhFF0
シャロ「あれは……?」

シャロがバイトを終え、夜遅くに街を歩いていると、
見覚えのある後姿が目に入った。

シャロ「ココア……?」

すぐに雑踏に紛れ消えていったが、確かにココアのように見えた。

シャロ「どうしてこんな時間に」

53: 2014/08/29(金) 00:45:11.03 ID:e+U6VhFF0
リゼ「えっ!? ココアを見た!?」

チノ「どこでですか!? シャロさん!」

二人の剣幕に、シャロは驚いて少し後ずさった。

シャロ「は、はい……。多分、おそらくですけど」

昨晩、街中で見た後姿のことを話す。

リゼ「いったいどうしてそんな時間に……」

チノ「ココアさん……」

二人の疑問の答えは、考えていても出てこなかった。

55: 2014/08/29(金) 00:47:46.06 ID:e+U6VhFF0
カランコロン。
千夜が開店準備をしていると、扉についているベルが鳴った。

千夜「いらっしゃいませ。まだお店は……」

言いかけて、目の前の光景にしばし固まる。

ココア「ち、千夜ちゃん……」

千夜「ココアちゃん!? どうしたの! その怪我!?」

ボロボロに引き裂かれた服から覗いた生傷から、
まだ赤い血が滴っていた。

59: 2014/08/29(金) 00:52:04.24 ID:e+U6VhFF0
ココア「私チノちゃんに嫌いって言われて、それで氏のうと思って……」

千夜「ココアちゃん……」

千夜は甘兎庵を臨時休業にすることにした。
ココアの現状が非常に深刻だと思ったからだ。

ココア「でも思い切りがつかなくて、始めてお酒を飲んだの。
     オシャレな感じのバーだった……」

千夜「……うん。それで?」

ココアは顔を俯けて、淡々とした様子で語っていた。

61: 2014/08/29(金) 00:55:21.96 ID:e+U6VhFF0
ココア「お酒なんて飲むの初めてだから、すぐにふわふわ良い気持ちになったの。
     それで、今なら氏ねるかなって、バーが入ってる建物の屋上に上って……」

千夜は真剣な顔で、黙って頷いた。
ココアが生きているということは、その時に何かあったはずなのだ。
やや前傾姿勢を取って、ココアに顔を近づける。

ココア「柵によじ登って、そのまま飛び降りたのよ」

千夜「……え?」

63: 2014/08/29(金) 00:57:50.82 ID:e+U6VhFF0
千夜「ちょ、ちょっと待って。ココアちゃん」

一回話をストップする。
とにかく気持ちをリセットさせなければ。
千夜は深呼吸を繰り返した。

千夜「どうしてココアちゃんは生きているの?
    それとも」

言いかけたが、その先を言うのを躊躇した。
ココアの返事がイエスだった場合、
自分の心が耐えられるのか分からなかったから。

ココア「なんで生きてるか? 千夜ちゃん。私ね」

68: 2014/08/29(金) 01:01:29.20 ID:e+U6VhFF0
ココア「屋上の下にベランダが合ってね。そこの植え込みに落ちちゃったんだよ」

千夜「そ、そうなの」

身構えていた千夜は急に脱力感に襲われた。
生傷もそれでついたのか。
反面、ココアに何もなくて良かったという安心感が優った。

千夜「どうしてラビットハウスじゃなくてここへ?」

ココア「それは……」

千夜は質問をぶつけると、ココアは言いよどんだ。

ココア「チノちゃんと……、顔を合わせるのが怖くて」

顔を上げるとやっとそれだけ言った。

70: 2014/08/29(金) 01:04:54.85 ID:e+U6VhFF0
千夜「チノちゃんすごく心配していたわよ。お願いだから帰ってあげて」

ココア「でも……」

千夜「ココアちゃんもつらいだろうけど、チノちゃんもつらいのよ。
    分かってあげてね。”嫌い”だなんて、つい口をついて出ちゃっただけだわ」

ココアはしばらく俯いたまま考え込んでいたが、
ぱっと顔を上げた。

ココア「うん! 分かったよ。私、帰ってチノちゃんに謝る」

71: 2014/08/29(金) 01:06:56.94 ID:e+U6VhFF0
オープン前のラビットハウスの扉が開いた。
店内にいたチノ、リゼ、シャロの三人が、弾かれたようにそちらを向く。

ココア「チノちゃーん……」

チノ「ココアさん!」

わっ、とチノがココアに駆け寄ると、胸に顔をうずめた。

チノ「どこ行ってたんですか! 心配したんですよ!」

ココア「チノちゃん……」

チノはしばらく、ココアの胸で声を上げて泣いていた。

73: 2014/08/29(金) 01:10:47.70 ID:e+U6VhFF0
テーブルに移動すると、ココアは昨晩あったことを話した。
話を聞いている間中、チノは涙を流していた。

リゼ「まぁ無事で良かったけど……。ココア、昨日はどこで寝たんだよ」

ココア「植え込みで気を失っててね、ついさっき気付いたんだよ」

シャロ「ホームレスじゃないんだから……」

三人が話していると、チノが突然立ち上がり、ココアへと歩み寄った。

ココア「チノちゃん……?」

74: 2014/08/29(金) 01:13:10.57 ID:e+U6VhFF0
べちん。
乾いた音と同時に、ココアの顔が横を向いた。
その頬に、チノの手形状にジンジンとした痛みが残る。

チノ「なんで氏のうと何てしたんですか……」

ココア「チノちゃん……」

チノ「……なんで氏のうなんて考えるんですか!
   私を置いて氏ぬなんて、許しませんから!」

75: 2014/08/29(金) 01:14:54.69 ID:e+U6VhFF0
ココア「ごめんね……。チノちゃん」

ココアが謝ると、チノが頬を差し出した。

チノ「……原因は私ですから。ココアさんも私のこと叩いてください」

痛みに備えるため、チノは目を閉じた。
その頬に。
ちゅっ。
と柔らかい感触が伝わる。

チノ「……ココアさん?」

ココア「えへへ。これでおあいこね」

77: 2014/08/29(金) 01:16:21.57 ID:e+U6VhFF0
チノ「ココアさん!」

ココア「チノちゃん!」

二人はきつく抱きしめ合った。
頬を大粒の涙が伝う。

チノ「もう氏のうなんてしないでくださいね!
    私……、ココアさんのこと大好きです!」

ココア「私も大好きだよ! チノちゃん!」

78: 2014/08/29(金) 01:18:24.51 ID:e+U6VhFF0
リゼ「うわぁ……。なんか私達、疎外感がすごいな」

シャロ「そうですね。リゼ先輩……」

リゼ「……なんでこっちにほっぺた突き出してくるんだよ」

シャロ「いや、そう言う流れかな……、って」

リゼ「しないからな?」

シャロ「……はい」

82: 2014/08/29(金) 01:21:42.71 ID:e+U6VhFF0
ココア「チノちゃーん」

チノ「うう……。ううううう……」

ココアがぎゅうぎゅうとチノに頬ずりをしている。

リゼ「あれ以来、ココアはチノにべったりだなぁ」

ココア「だってチノちゃんも私のこと好きなんだもんねー」

チノを抱きしめる手に力を込めた。
さらにきつく頬ずりを繰り返す。

ココア「ねー?」

チノ「……コ、ココアさんのことなんて好きじゃ有りません!」

終わり

84: 2014/08/29(金) 01:26:30.03
乙!

86: 2014/08/29(金) 01:33:29.23
ココアちゃん心弱すぎだろ

引用元: チノ「コ、ココアさんのことなんて好きじゃ有りません!」