1: 2012/07/15(日) 16:35:43.45 ID:7kIj8ZYw0

俺「え?ああ…そうなんだ。よろしく」
(もう今は3月だぞ…今更初GDとか何やってたんだこの女)

女「みなさんはどれぐらいGDやりましたか?」


同じグループのメンバーを見つつ、彼女は質問した。
GDのメンバーは俺をいれて6人だ。

テーブルに座り、お互い向き合った状態で、下を向き静まりかえっている。

他のグループはガヤガヤと雑談をし、それなりに活気づいていた。
だが俺のグループはというと、ずっと沈黙。

まだ会社説明会は始まっていない。

6: 2012/07/15(日) 16:38:47.95 ID:7kIj8ZYw0

女2「…え、えっと」

静まり返った中で最初に彼女の質問に
返答をしたのが、女2だった。

自信のなさそうな、あまり元気のない女子。

女2「私は2回目です。やっぱり緊張しますね。」

笑顔がない。殺伐した空気がつづく。

女1「そうなんですかー。リラックスしましょうよ!」

そういってメンバーに笑いかける女1

女2「あとのみなさんは? あ 自己紹介しませんか。」


俺(えっ…待って まだGD始まってないよ!自己紹介はまだ違うんじゃないか!)

9: 2012/07/15(日) 16:41:34.01 ID:7kIj8ZYw0

俺より先に声をあげたのが、男1


リア充 見るからにイケメン

すぐに内定もらえそうな顔だった。


男1「本格的な自己紹介はまだ大丈夫かな~
    佐藤っていいます。よろしく。」

そんな感じで、軽く名前の言い合いだけはした。

女1「ふふふ~。名前覚えるのって大変ですね。」

男2(こちらも大人しそうな男子)
「就活してると色々な人に合いますしね、そのたびに覚えるのが大変です。」

14: 2012/07/15(日) 16:45:07.82 ID:7kIj8ZYw0

女3は名前を言ったとき以外、黙っていた。
彼女は会社説明会が始まるまで雑談には参加せず、
静かにこちらの話を黙って聞いていた。

女1「これって今も、人事の方 見てたりするんですかね?」

コソッと女1が耳打ちで俺に聞いてきた。
女1は隣に座っていたので、何かと俺に話しかけてくる。

地雷を踏みそうで怖かった。

「さ、さあ…どうだろうね。」

曖昧に返した。

もし人事が見てるとしたら、なるべく評価を下げたくなかったからだ。

17: 2012/07/15(日) 16:48:48.88 ID:7kIj8ZYw0
男2「それにしても、…説明会の開始時間は過ぎていますよね?
   なんで始まらないんだろう…」

男2は時計を見ながら、グループのメンバーの顔色を伺いつつ発言した。

女1「まだ就活生が全員来てないからじゃないですか?」

俺「いやー、それはないよ。来てない人は暗黙の了解で
  今後の通知なしで 落とされたようなものだから。」

女1「あっ、そうなんですか?」


どうやら女1は「バックレ」「ドタキャン」が就活生にいることを知らないらしい。

19: 2012/07/15(日) 16:53:18.90 ID:7kIj8ZYw0
女1「おかしいですねー!じゃあ何故始まらないのでしょうか。」

女1は会社説明会にあまり緊張していないようだった。

初GD…ともいうのに 普通に会話を楽しんでいた。

男1(佐藤)「もしかして試されているのかなあ?」

男2「えー!それは新しいですね。今までにそんなのなかったです。」

男1(佐藤)「いやあ…そうと決まったわけではないけど。」

女2「だ、誰かが '開始まだですか?' と聞くのを待ってるとか、ですかね?」

うーん…

21: 2012/07/15(日) 16:55:25.98 ID:7kIj8ZYw0
俺「下手に出ないほうがいいんじゃないかな?」

男1(佐藤)「そうだねー。会社の出方もあるだろうし。」

女2「で、でも ただ待ってるだけだと '自主性がない' って判断されるとか。」

俺「いやいや考えすぎでしょ。」


女2がなんとなく面倒くさそうなタイプだと思った。
GDを数回してきた俺からすると

でもでもだって~、とか
否定ばかりする人は GDをしていると、なかなか面倒くさい。

22: 2012/07/15(日) 16:58:22.86 ID:7kIj8ZYw0
そうこうしているうちに、

開始予定時間から10分ほど遅れて 会場の照明が落ちた。

いよいよ、だ…。


女1「おっ?始まりかな!」

まるでこれから映画の上映でも観るかのような、
うきうきとした様子の彼女。


「えー。こんにちは。本日はみなさん
 我が会社にお越しいただきまして、まことにありがとうございます…。」

そういって会社説明会がスタートした。

23: 2012/07/15(日) 17:03:34.14 ID:7kIj8ZYw0

会社説明会をもう20社としてきた俺としては

なんてことのない作業。
話を聞いて、重要だと思ったところはメモをとる。

眠気が襲ってきたときは、パンフレットを見ているふりをしつつ
何かを考え込んでいるかのような、仕草をとる。


女1はというと、真剣に社長の話をきいていた。

一言一句聞き逃さないぞ、というような姿勢でメモをとっている。

女2は周囲の社員の目を気にしているようで、
なんとなく落ち着かない様子だ。


男1は言うまでもなくイケメンで
男2も大体俺と同じ様子。


問題は、女3…

27: 2012/07/15(日) 17:07:54.20 ID:7kIj8ZYw0

先ほどの雑談にもいっさい入ってこなかった彼女。

女3の名前は、柏木という。
一見するとそんなに大人しそうな女性でもないのだが、

とにかく全く会話に参加してこない。

その状態でGDをすることはかなり危険なのだが…
メモは適度にとりつつ、みんなと同様、パンフレットを眺めたりしている。


(うーん。なんだかなぁ。このグループ大丈夫だろうか。)

そんな不安を抱えつつ、1時間半の会社説明会が終わり、

トイレ休憩タイムへとなった。

28: 2012/07/15(日) 17:10:56.73 ID:7kIj8ZYw0

人事「10分ほど休憩時間を与えます。
   休憩中は何をしていても構いません。
   休憩が終わりましたら、グループディスカッションへと移るので
   準備をしてお待ちください。」

そして再び、照明が明るく会場を照らした。

トイレに行こうと思い、俺は席をたった。

すると釣られてグループの数名も席をたった。


会場から出ると、男1(佐藤)が話しかけてきた。

29: 2012/07/15(日) 17:14:03.67 ID:7kIj8ZYw0

男1(佐藤)「やあ… えーと立川(俺)君、だったかな?」

俺「ああ。そうだよ 佐藤…さん、くん?」

男1(佐藤)「まあどっちでもいいよww いよいよだね」

俺「ああ。このグループ大丈夫かねえ。」


まあそんな感じで適当に佐藤とは話した。

話を聞くと、就活経験が豊富に見えるような彼でも、

実はまだGDは2回目らしい。女2と一緒だ。



俺はというと説明会は20社近く受けたが
GDは5回目。 勝率は1/2

30: 2012/07/15(日) 17:17:19.29 ID:7kIj8ZYw0

もちろん会場に入るときは、佐藤とは離れて無言で入った。

そして会場入り口付近の人に会釈をすることも忘れなかった。


グループのテーブルへと戻り、
無言で着席する。


メンバーを見てみると、それぞれ行動がいろいろだ。


女2はというと、まじめな様子でパンフレットとメモを見ている。
もちろん手持ちぶさたで、’そうしているふり’かもしれないが。

女1はというと、男2と会話をしているようだ。
机を挟んだ少し離れた距離であるので、声が大きい。

女3はというと、携帯とにらめっこ。

メールを打っているようだ…

って、おい。

32: 2012/07/15(日) 17:19:05.36 ID:7kIj8ZYw0

いくら人事が「休憩中は何をしていても構わない」といっても…

さすがにそれはないだろう。

いや実際 俺は人事じゃないし、本当のところは知らないが
これからGDをするというのに携帯、メール。

やはりどこかこの子はずれていそうだ。



雑談にも参加しないし、やる気がないのだろうか。

33: 2012/07/15(日) 17:22:32.34 ID:7kIj8ZYw0

まだ休憩が終わるには2~3分あったので、
女1と男2の会話に参加しようと思った。

女1「えー!○○商社も受けてるんだあ。すごいねえ。」


…大きな声で他社の話をするとか。

大丈夫かよこいつら!!!

男2「まあ○○商社は第一希望ではないですよ~
    受かったらラッキーぐらいに思ってます。」

俺はちらりと周囲の社員の顔をみた。

こっそり社員たちが手元の書類にチェックをいれていること、

それを見逃さなかった。

もちろん会話をしているこいつらは全くそのことには気づいていないようだが。

34: 2012/07/15(日) 17:24:16.43 ID:7kIj8ZYw0

地雷臭がハンパ無いので、会話に参加することはやめた。

休憩の残り時間を、おとなしくパンフレットを見て過ごした。


本日は’履歴書・筆記用具持参’ とだけあったので
ESはまだ出していない。

つまり、ここで書かされるのだ。

そのネタ準備もしておきたかった。

35: 2012/07/15(日) 17:31:17.46 ID:7kIj8ZYw0

物凄くやってはいけないような会話を、両方向から聞きつつ、

再びマイクの音がした。

人事「お待たせいたしました。
  えー、ではこれからグループディスカッションのほうへ移ります。
  担当の者はそれぞれの場所へ移動してください。」


その声を聞き、まわりの社員たちが
’持ち場’へと移動する。


俺たちのグループには イケメン爽やか系若手社員がやってきた。

「こんにちは。」

その声に合わせて、全員が声を返す。
男2が背筋をピンと伸ばしなおしたりして、妙にはりきっているのがおもしろかった。

36: 2012/07/15(日) 17:35:03.17 ID:7kIj8ZYw0

若手社員が席に座る動作のあいだに、

俺はまわりのグループをチラッと見てみた。

それぞれのグループにはちらほら席が空いている。
これは「説明会~GD」の流れではよくある光景だ。

というのも、説明会だけは参加するが、GDには参加しない。

物凄くもったいないことだと思う。

せっかく交通費をかけて会場に来るなり、説明会の時間枠をゲットするなり、
数時間もの会社説明を聞いたにもかかわらず、帰宅…

チャレンジだけでもすればいいのになーって思う。


どうやらまわりのGD管理者?も若手社員ばかりのようだ。

38: 2012/07/15(日) 17:38:11.79 ID:7kIj8ZYw0

「えーそうですね。最初に自己紹介をさせていただきましょうか。」

そういって我がグループのGD監督者は、三角折りにした
ネームプレートのようなものを、みんなに見えるように席においた。


「私の名前は山田xxといいます。入社して2年目で
 今は営業のほうを担当しております。よろしくお願いします。」

その声に釣られて、メンバーも「よろしくおねがいします」と返す。

ひときわその声が目立つのが男2。


さっきのアカン会話が、山田さんにチェックされていたことも知らないで
彼はやる気満々だ。

39: 2012/07/15(日) 17:44:19.21 ID:7kIj8ZYw0

山田「みんな緊張…してそうだね?」

女1が隣で、ごくり と唾を飲む音が聞こえた。

先ほどまであんなに元気のあった彼女だが
どうやら 監督者の登場で、緊張してきたらしい。


誰も山田さんの問いかけに返答しない。

ので、声を発そうとした。そのとき

男1(佐藤)「さきほどまではみんなで楽しく話してたんですがね~
   やっぱり緊張しますね。」

そういってコミュ力全開の返事をしていた。


よかった。ここで俺のつまらない’そうですねー’っていう返事なんてしなくて。

ナイス佐藤。
GDはグループの結束力が大事だ。

誰かひとりが目立つ、とか 誰かひとりが喋らない、
それだとなかなかGDは通過しない。

40: 2012/07/15(日) 17:47:20.32 ID:7kIj8ZYw0

女2「そうですねっ、木村さんがすごくグループの会話をリードしてくれたんですね。」

木村さん、というのは 女1のことだ。

さりげなくヨイショ。なんの意味があるんだ…と思ったが、スルー。

女1(木村)「…は、はい。楽しく!GD出来たらいいなあって思ってます!」


そういって山田さんのほうに女1は笑いかけた。

場の空気が少し和んだのを彼は見逃さなかったようで、

ほほえみ返した彼だが、キリッと表情をかえて本題へと入った。


「では、GDを早速始めたいと思います。」

42: 2012/07/15(日) 17:53:03.30 ID:7kIj8ZYw0

山田「本日はこの資料を使います。回してもらえますか?」

そういって山田さんは資料を配っていく。
渡された資料を隣にまわしながら、みんな黙り込む。


いよいよ、だ… なんか俺まで緊張してきた。


資料はA4の紙が2枚あり、ホチキスで留められていた。
軽く少量のイラストと、 大量の文字が書かれている。


山田「まずは、文章を読んでいただきます。  
   そしてその上で プリントに自分の考えを書いてもらいます。
   時間は10分です。開始はグループで決めてください。では、スタート。」


その声と同時にメンバー全員が視線を資料へと落とした。

びっくりしたことがある。
全員が黙々と問題を読むなか、隣の女1は

何かを鉛筆で紙に書き込んでいた。

それが何かはあとになって分かるんだが、
山田さんは、女1のこの様子を見逃さず、記録用紙に書き留めていた。

41: 2012/07/15(日) 17:53:03.16
最近のGDってこういう馴れ合いを求められてるのか?
一人じゃ何も考えられないゆとり脳にしか見えない

43: 2012/07/15(日) 17:54:02.71 ID:7kIj8ZYw0
>>41
なれ合わないと落ちるよ
GDはコミュニケーション能力とか、空気が読めるかとか
自分の立場を分かったうえでの発言をしているか、とか
そういうのを見られる気がする。

ちなみに自分GD落ちた経験なし

44: 2012/07/15(日) 17:59:03.45 ID:7kIj8ZYw0
一方の俺は、女1のことなんてどうでもよくて
問題に集中しようと、とにかくプリントと向き合った。

今回のGDの内容を説明するとしたら、


’無人島にたどりついた船がぶっ壊れた。
 島へは戻れない。そんな中、みんなが病気に陥る。ワクチンは3つしかない。
 メンバーは10人いる。ワクチンを打たない限り数日後に氏んでしまう。
 あなたがこの状況の場合 誰にワクチンを打ちますか?’


といったようなものだ。

メンバーの説明も 細々とひとりひとり、書かれていた。

持ち時間を気にしながら、考え込んだ。

45: 2012/07/15(日) 18:03:05.41 ID:7kIj8ZYw0
10名の詳細を見たところ、

自分として下した決断は

’子供 女性 カウンセラー にワクチンを打つ’ というものだ。

これが無難…というか きっと自分と同じ回答をしているものは多いだろうなぁと思った。

そして考えをプリントに書き留めようと、ホチキスで留められた
2枚目のプリントへと目をおとした。


そこで、やっと気がついたことがある。

女1は…


最初にGDメンバー全員の名前を書いていたんだ。

あとで意見発表があることを知ってか否か、それを実行していた。
’メンバー思い’ そう、きっとこれだ。

確かめようとおもって、
チラッと横を見たら、やはりもうすでにGDメンバーの名前が
ちゃんと記載してあった。

(なるほどなー…ただのゆとり女子ではなかったか)

47: 2012/07/15(日) 18:05:50.55 ID:7kIj8ZYw0

それに、なんとなくの記憶をたどると
女1…木村さんは、メンバーのネームを見ずに、書き込んでいた。

おそらくちゃんと俺たちの名前を
’覚えるの大変’と言いつつ、しっかり覚えていたのだ。


それぞれ最初に名前を書いて
胸元に名字をかいたネームはつけていたが、

俺はすっかりそのことを忘れていた。


メンバーの名前どうこうよりも、

いかに問題を早く読み、自分の考えを固め、
GDに入る準備ができるか…そんなことしか考えていなかった

48: 2012/07/15(日) 18:09:01.39 ID:7kIj8ZYw0
あわてて、なんだか置いていかれたような気持ちになりつつ、

手早くメンバーの名前を書き込んだ。


そして自分のコメントも資料に書き込む。

手持ちぶさたになり、視線をあげると まだメンバーは
資料を読んでいるところだった。

チラッとみえたプリントに、女2は
とても小さく端っこに自分の考えを書いていた。


どうやら真ん中のスペースはみんなの意見を書くつもりだったらしい。

ああ 俺 自分のことしか考えていないなと気づいた。
もちろん自分は真ん中に大きく自分の意見を書いていて

GDメンバーの名前や意見なんかは少ししかスペースをとっていなかった。


消したくなって書き直そうと思ったが、時間的にももう遅いだろう。

書記よりも話し合いが大事だ!!!そう思うことにして、みんなが鉛筆を置くのを待った。

49: 2012/07/15(日) 18:12:20.84 ID:7kIj8ZYw0
することがなかったので、
資料を見ているふりをしながら、俺はGDメンバーの様子を見た。


男2… どうやら問題を読み終わり、意見を書こうとしている。
2枚目のプリントに目をやり、そこでやっと彼も俺と同じことに気がついた。

メンバーの名前…あわててGDメンバーの胸元のネームを見ている。


はー…すごいな
こういうことが自然と最初に出来てしまう女1
それもGD初なのに…こういう人がGD通過するんだろうな

そう思った。


そして大体の元が鉛筆を置き、

無言の空間が流れる。

もちろん山田さんは何も言わない。あとは俺たちの出番だ。

51: 2012/07/15(日) 18:15:45.11 ID:7kIj8ZYw0

俺「さて…そろそろ大丈夫ですか?」

そういってメンバーひとりひとりの目を見る。

もちろん、GDの役割である’リーダー’なんてやる気は根っから無かった。


ただ、最初に声をあげて発言する…。

これってたぶんすごく重要なことな気がしたから、リーダーシップのつもりでやってみた。


男1(佐藤)「そうだね。他のグループの人たちも始めているみたいだし
   僕たちのグループもやろうか?」

そういってさりげなく佐藤が俺の発言をフォローした。


だが、訪れる無言…。

気まずい空気…さて、ここからどうやって話し合いにもっていこうか。

52: 2012/07/15(日) 18:19:26.17 ID:7kIj8ZYw0

そんなときに、意外にも声をあげたのは女3だった。



あの ずーっと終始無言だった女3。
態度の変わりようにとにかくびっくりした。


女3「端からまずは、ワクチン3名を’自分だったら誰に打つか’
   言っていきませんか?資料の記録用紙にも1人ひとりの意見を書くことを求められています。
   これが効率的な発表の仕方だと思うのですが、いかがですか?」



メンバー全員ポカーン。
山田さんがどう思っているか、表情はさすがに読めなかったが、
GDのメンバーはとにかく驚愕だったと思う。

だって今まで全く雑談に参加してこなくて

愛想もなにもなくやる気のなさそうだった女子が

笑いかけて大きな声で俺たちに提案している。なんだこれ。

53: 2012/07/15(日) 18:23:08.01 ID:7kIj8ZYw0
女1は、とにかく嬉しそうだった。
まるで女3が自分に心を開いてくれた!とでもいいたげなテンションで。

女1「賛成です!じゃあ、私端っこにいるし 私から言ってもいいかな?」


そこで、全員が「どうぞ。」「お願いします。」と言い合う。

女1「はい、私だったらー…。」


そんな感じで各々が自分だったら誰にワクチンを打つのかを発表する。

端まで発表し終わると、再び訪れる無言。


発表中、ずっと女1と女2は各々の意見を理由をふくめてメモしていた。
女2は紙と向き合うことが多くて、ほとんど顔をあげていない。

女1(木村)は、とにかくメモをしつつも
笑顔全開でメンバーの話に頷いていた。


そう、GDでは笑顔や頷きはとても重要になる。まあ、女なら。
男が笑顔全開で頷いてたらきもいし。でもどうだろ。営業志望なら大事なのかなあ。

55: 2012/07/15(日) 18:26:36.15 ID:7kIj8ZYw0
そこで沈黙を打ち破ったのも俺。

結構いい仕事してる気がする。


俺「そうですねー。やはり’子供と女性に打つ’っていう考えが多いですよね。」

男2「ですねー。子供と女性に打たない人… ああ柏木さん(女3)だけですね。」

女3「わー。私だけですか!!」

そういって女3は考え込む。

何か言い出すのは雰囲気でなんとなく分かったから
メンバーもその空気を読み取り、彼女が発言するのを待っている。

59: 2012/07/15(日) 18:32:14.85 ID:7kIj8ZYw0

女3「私が女性や子供を選ばずに、’開発者、獣医、元漁師’
 の3名を選んだのに理由があります。きっとみなさん
 個々の無人島メンバーのプロフィールを見たときに
 同情心から’女性・子供’を選んでいませんか?
 というのも、私は「3人を助けるのではなく、全員が助かる方法」を考えたのです。」


笑顔ではっきりとそう言う柏木さん(女3)はとても凛々しかった。

さっきまで雑談に参加しなかったのは何でだろうというぐらいに。


女1「えっ、全員が助かる方法ってどういうことですか?」

男1(佐藤)「実は僕も同じこと考えてましたよ。
  どうにかして全員助けられる方法はないのか、と。興味深い意見です。」


そんな感じで討論に膨らみがだんだん出来てきた。

’全員が助かる方法’俺は一切そんなことなんて考えてなかった。
ただ3人 誰にワクチンを打つか、それだけの話し合いだと思っていた。

深い。

64: 2012/07/15(日) 18:37:48.31 ID:7kIj8ZYw0

女3「資料の文章の確認をしましょう。
 女性のプロフィールには’旦那さんという愛する人の元へ帰りたがっている。けがは軽い。’
 子供のプロフィールには’症状が重い。一刻もはやくワクチンを打たなければ…’
 と書かれています。確かに女性は幸せな生活を送っていたでしょう。
 だから同情心でワクチンを打ち、元の暮らしへ返したい気持ちは分かります。
 ですが、他のメンバーだって同じように家族がいます。
 子供だって可哀想だけれど、病気に苦しむのは全員同じです。
 そして…ワクチンを打ったからといって’必ず治る’とはこの文章には書かれていませんし、
 ましてや船は壊れています。どうやって帰るのでしょうか?」



……

頭が回らなくなってきた。

そんなに深いところまで この文章から読み取っていない。


男2「なるほど…確かに船がないと帰ることはできませんね。  
   ワクチンを打ったところで帰る方法がないのなら
   一生無人島に居続けることになってしまいますね。」

66: 2012/07/15(日) 18:43:21.86 ID:7kIj8ZYw0

女2「でも、だって可哀想じゃないですか?子供このままでは氏んでしまいますよ。」

きた。’でもでもだって~’系。

女3「そうですね。ですから、私は
   ’船の知識のある元漁師が舟を修正し、開発者と獣医がその舟に乗り 
   どうにかして本国でワンクチの開発をできないか…。
  獣医は帰らなくてもいいです。一応医者ですから、みなさんの病気のケアができないかなと思いました。」


俺「それならカウンセラーでもいいんじゃないですか?
  なぜカウンセラーではなく獣医を選んですか?」

女3「自分でも不純な動機ですね…カウンセラーは ただ
 励ましあえればそれでいいかなって。…ああうまくいえないです。」

まあそんな感じで話し合いは進む

67: 2012/07/15(日) 18:47:51.48 ID:7kIj8ZYw0

話し合いは女3の意見を中心に行われた。

女2はとにかく、「女性と子供」を助けることをゆずらない。


それでも話し合いの方向性は一応
「全員助ける」というものにはなっていった。


そして再び訪れる沈黙…


男1(佐藤)「漁師に舟を直せる力があるとは限らないしなー」

男2「そうですね。もし本国に戻り、ワクチンの開発をするにしても
 そのあいだに全員が氏んでしまう可能性のほうが高いと思います。」

女2「簡単にワクチンができるとは思えないんですよ!!
 やっぱりここは氏んでしまう可能性のほうが高いです!!
 だからこそ女性と子供を助けるべきです!!」

俺「いやーそれは理由になってないんじゃないか?
 やっぱりなんとかして全員が生き残る方法を考えようよ。」

女2「全員が生き残るなんて無理ですよ!」

69: 2012/07/15(日) 18:52:03.26 ID:7kIj8ZYw0

女1「まあまあ。落ち着いて。確かに私だって女性と子供には
 助かってほしいですよ~!でもやっぱ1番は全員が助かったら
 ハッピーエンドじゃないですか?だからその方法を考えましょう♪」

女2「でもそんな方法ないよ…。」

女3「やっぱり病気をなおすころが重要ですからねえ。  
  獣医なりカウンセラーにはワクチン打つべきだと思いますよ?」


そんな感じで、最初は雲行きの怪しかったこのグループだけど
なんとか討論にはなっていた。

女3の的確な資料の読み方、情報のとりかた
それがすごかった。自分には出来なかったし

女1のようにメンバーのことを考える力も自分にはなかったし

なんとなく自分がこのGDの話し合いにおいていかれている気がした。

70: 2012/07/15(日) 18:55:51.92 ID:7kIj8ZYw0

「残り5分ほどで話し合いをまとめてください。」

そういわれて、俺たちは話し合いをまとめる方向性にうつった。

だが、一向に譲らない女2の意見。
どうしても「女性と子供にワクチンを打つ」ことをしたいようだ。


結局、はっきりとしたグループの答えは出なかった。

これでいいのかは分からないが、
一方的に理由なしに「じゃあ女2の意見に賛成しよう」っていうのも
よくなかったと思うからだ。

かといって女2が反対しているのに対し
むりに「獣医 開発者 元漁師」にワクチンを打つ、という意見にも出来なかった。


山田「お疲れ様です。みなさん緊張したでしょう?」

久しぶりに山田さんが発言をした。
GD中、彼は一切言葉を発することなく、とにかく
記録用紙に何かを書き留めていた。

71: 2012/07/15(日) 19:00:54.83 ID:7kIj8ZYw0

山田「GDっていろんな意見が出ておもしろいですよね。  
 答えが大事じゃないんですよ。人との意見のなかで
 何かを発見できたり、へぇーそういう見解もあるんだー!って納得できたら
 それでいいと思います。答えは1つではないですよ。では続いて質問に参ります…。」

そんな感じで質問タイムにうつった。

GDでの挽回がしたかったので(あまり発揮できなかった)
とにかく質問はあらかじめ考えていたものや、

説明会中に不思議に思った点を聞いた。


ここまで時間がたつと、それぞれの性格がなんとなくわかる。

女1はとにかく人の気持ちを考えて、空気を読むのが得意だ。
女2は大人しい反面、積極的でもあるが、空気が読めない
女3は無駄なときは発言しない。ここぞというときに自分の意見を言い、またちゃんと相手の意見も聞く。
男1は言うこともなく。もうきっとGDも通過だろう
男2は俺と同じ感じ。大人しいけど発言するけど 無難な発言すぎる。


俺落ちたかなー・・・orz

そう思いつつ、やはり 質問タイムがおわると
ES書きの時間となった。

志望動機・自己PR・入社後したいこと
などが書く欄があった。

72: 2012/07/15(日) 19:04:55.69 ID:7kIj8ZYw0

みんなが黙々と紙に目を落とし、鉛筆を走らせる。
ここまでの時間で会場に入ってからすでに3時間ほどは経過していたので
みんな疲れきっているのが分かった。

集中力が切れそう中、最後の力をふりしぼって
一生懸命になってESを書いた。

最初にESを書き終わらせたのは男1(佐藤)だった。


早すぎる。もしや適当に書いたか?と思ったけど
彼がそんなことをするような人物にも見えなかった。


男1が山田さんにESを提出するときにチラッとそちらを見たところ
かなり綺麗な字で細々と、空白はなく紙は黒くなっていた。

(すげー。負けてらんないや)


男1は「ありがとうございました」
と俺たちに頭をさげ、山田さんにも「ありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。」
と言い、その場を去っていった。

75: 2012/07/15(日) 19:10:40.14 ID:7kIj8ZYw0

俺もESを書き上げ、席を立ち
みんなに挨拶をし 去っていこうとする。


なんだか切ないな。
そんな思いでメンバーの様子を見た。
みんな必氏になってESを書いている。


こうやってたった数時間だけど、
自分たちの意見をぶつけあった仲間がいて、

知り合ったばかりなのに さよならをしなければならない(笑)


もう一生会うことはないんだよなー。


今までも何社も説明会受けて、選考受けてきたけど
そのたびに 仲良くなったやつがいたって
結局連絡をとりあうこともない。

連絡先を交換して終了。

就職活動の出会いなんてそんなものか。

そう思いながら会場を出たんだ。

77: 2012/07/15(日) 19:13:32.35 ID:7kIj8ZYw0

そしたら意外にも、男1がそこにはいた。

男1「よっ。お疲れ様!」

俺「えっ。」

男1「せっかくGDでこうして出会えたんだからさ~ 
  全員の連絡先知っておきたいじゃん?」


さすがイケメンリア充。
とりあえず、他のメンバーが出てくるのを待つことにした。


彼の意見を聞いて俺は
「どうせ就活なんてその場かぎりの出会いだよ」

と言いたくなった。

だが、まだ選考数回、説明会も数回の彼に
現実を突きつけるのはどうかと思ったからそれは言わずにいた。

78: 2012/07/15(日) 19:17:03.39 ID:7kIj8ZYw0

結局全員が会場から出てくるのをむかえて、

それぞれアドレス交換をした。


駅へと行く中、それぞれが雑談を楽しむ
なぜか2人ずるで話していた。 男1と男2・女2と女3
というペアー。必然的に俺は女1と話すことになった。


「「………」」

なぜだかむこうも大人しい。
微妙に気まずい空気が流れる。

女1「いやー、疲れたね!」

俺「そうだね。木村さん初GDだもんね?」

女1「うん。そうよー。私柏木さんにはびっくりしたあ。」

81: 2012/07/15(日) 19:19:08.33 ID:7kIj8ZYw0

その声を聞いてか、柏木さんが振り返った。

女3「え、なんで?」

女1「だって全然最初は喋らなかったのに!
  意見しっかりしてるし!もしかして理系?」

女3「まあね。私は木村さんのほうがすごいと思うけどw」


まあそんな感じで駅まで雑談して、
俺は路線違ったからみんなと別れて帰った。

なんとなくいい時間だったなーって余韻に浸りながら。

82: 2012/07/15(日) 19:22:42.30 ID:7kIj8ZYw0

もちろん、経験どおり

「どうせ就活なんて、連絡先交換してもその場だけの出会い」


その通りだった。

いや俺が自分からメールを送っていれば変わったのかもしれないが。

GDを受けたその日は全員と「今日はおつかれー!また話そう」

そういった社交辞令のメールを交わした。
それだけだ。

選考結果は選考日から1週間後。

その間、もちろん俺は他にも選考や説明会があった。
新しい会社のことを覚えたり、ESを書いたりしなければいけなかったので

だんだんとあの日にあった出来事・仲間のこと 顔すら忘れかけていた。


そんなこんなで1週間が経過した。

93: 2012/07/15(日) 19:33:48.10 ID:7kIj8ZYw0

1週間後のその日も俺は説明会があった。

あのときと同業種で同じ県の説明会だ。

交通費が痛かったが。


電車の中には、春休みを謳歌していると思われるカップルや
私服姿の学生がいた。

その中でリクルートスーツの存在は目立つ。


同じ車両に俺と… 見覚えのある後ろ姿。


よくありがちなポニーテールの普通の後ろ姿だが

あの日討論した仲間。まだ忘れていなかった。

そう偶然の再会だ。

96: 2012/07/15(日) 19:36:07.98 ID:7kIj8ZYw0

俺「あのー。もしかして。」

女性に声をかけた。もし人違いだったら
とても恥ずかしいことになっていただろう。

「はい?」

そう、その女性は間違いなく木村さん(女1)だった。

俺「覚えていますか?」

木村「あー。えーと…。…ああ!!あのときの」

一瞬忘れていたようで、変な顔をしたが
スーツを着ていることで、俺が誰なのか思い出してくれたらしい。

木村「あのときはお世話になりました~」

「いやーすごいすごい。こんなことってあるんですね!」と言いながら。

そういって笑いかけてきた。

100: 2012/07/15(日) 19:40:25.86 ID:7kIj8ZYw0

俺「今日も選考か何かですか?」

木村「そうですねー。○○の説明会なんですよ。
   だからxx駅で降りたくて。」


さすがに、説明会の会社・会場は違った。

しかしxx駅は、自分が説明会を受けるところと、とても近い場所だ。


俺「じゃあ説明会が終わったらお互いに食事でもしない?」

そういった感じで会うことになった。
話を聞いてみたところ、彼女もまだ選考結果は着ていないらしい。

今日くることになっている。もしかしたら
お互いが サイレントお祈りフラグかも…

いやまだ時間も早いし、諦めるのは早いだろう。

103: 2012/07/15(日) 19:43:34.18 ID:7kIj8ZYw0

いつものごとく、だるい気持ちになりつつ説明会を聞いた。

本日の企業はESも履歴書も持参、ということになっていたし
選考も特にやる予定がなく 気楽な気持ちで行くことができた。


この説明会では特に誰とも話さなかった。

予定どおり、待ち合わせ時間には間に合い
木村さんと食事をすることが出来た。


一応携帯をチェックしたが、企業からの
選考についての連絡は来ていない。

彼女も同じだった。

105: 2012/07/15(日) 19:48:00.36 ID:7kIj8ZYw0
木村「私まだ就活はじめて1ヶ月たってないんですよね~
  でも最近は毎日説明会、説明会、説明会…で疲れましたよ。
  昨日なんて2社も説明会聞いたんですよー。」

そういって愚痴をこぼす。

俺「一日に2社は確かにきついね。頭ごちゃごちゃになりそう。
  全部このあたりの企業受けてるの?」

木村「そうだねー。実家から通えるところがいいから。
   この前受けたところあるじゃない?あれとか本社がすごい近くだから。」

俺「なるほど。それなら余計通りやすいよ。やっぱり会社側も近場の人を取りたいだろうし。」


そんな感じで、話を聞くところ
彼女のなかでの第一希望の会社は 1週間前に受けたあの会社だそうだ。
俺はというと、正直別にどこがいいという第一希望がまだ無かった。

それでもやはりあの日、会社の人と温かさや
山田さんという人の存在、説明会での内容…

それらを聞いてあそこに入りたい!と思う気持ちは前より強くなった。

GDの手応えがなかったので正直、受かっている自信がなく
期待を持ちたくなかったのが事実だ。

106: 2012/07/15(日) 19:50:56.91 ID:7kIj8ZYw0

それでも、もしGDを通過していたら…
あの日のメンバーに「通過した!」とメールをすることができる。


’全員通過’って時々、聞く言葉だけど
実はそれを願っていたりもした。

またあいつらに会いたい。


それはどうやら木村さんも同じだ。

食事を終えて、3時頃だった。
だが、まだ選考の結果のメールは来ていない。


木村「はー。こうしている間に自宅に郵便で
 ESと履歴書の郵送されてたら…やだなぁ。」

そういって落ち込んでいた。

俺「いやー。郵送はないんじゃない?
 合否に関わらずメールをするっていってたし。」

木村「だといいなー。」

そんな感じで就活の話だけをして、お互い別れた。

107: 2012/07/15(日) 19:53:08.14 ID:7kIj8ZYw0


選考の結果が来たのは、俺が家に着いたとき。
午後6時頃だった。


某就活サイトのメールBOX
「新着メッセージ1件。」

…きた!!


タイトル

「2次選考のお知らせ」




もうこの時点ですごく嬉しかった。
次のお知らせ、があるということ=通過 だからだ。


落ちたときは大抵が
「選考結果のお知らせ」となる。

108: 2012/07/15(日) 19:57:01.95 ID:7kIj8ZYw0

わくわくしながら開いたが、やはり通過の知らせだ。


「先日は我が会社にお越しいただきありがとうございました。
 厳選なる審査の結果、立川様には二次選考に進んでいただきたいと思います。」


そして選考予約日の画面があった。

自分の予定がない時間をさがし、予約を送信した。
スケジュール帳を見てみると 会社の説明会やら選考でびっしりだったが

やはりそれ以上に「通過」というものが嬉しかった。


だめだと思っていただけに、まさかの結果に驚いた。

あいつらは…どうだったのだろうか?
こんな俺が通過ということは、もしや全員通過か?

132: 2012/07/15(日) 20:58:53.76 ID:7kIj8ZYw0
最初にメンバーからメールが届いたのは…

男1(佐藤)からだった。

宛先はあのときのメンバー全員で
「受かりました。みんなはどうだったかな?」

という内容のもの。

やはり、というか、まあ受かるだろうとは思っていた人物だ。
「おめでとう。」と返しつつ、自分が受かったことも報告する。


続いて、まさかの女2と男2の通過の連絡の報告…
驚いた。男2はともかく
女2も通るとは… いったいGDで何を見ているのだろうか。


残る報告は女3と木村(女1)のものだった。

自分の通過を知ったときに、木村には1番最初に報告した。

だがメールの返事は彼女からなかなか来なかった。

134: 2012/07/15(日) 21:03:39.99 ID:7kIj8ZYw0


(もしや彼女落ちたのかな)

そう思いつつ、いやそんなことはないだろうと思った。

彼女は空気を読んだ発言をしていたし、
女3にも落ちるような要素はなかったはず。

でもまさかの俺や、女2,男2が通過ということは…



そんなとき、携帯の電話のバイブの音がした。


ブーブーブー…

「着信先:木村」

「…えっ?もしもし。どうしたの。」


137: 2012/07/15(日) 21:07:21.11 ID:7kIj8ZYw0

いきなりの電話に戸惑う。

それと同時に、電話がなんだか嬉しかった。


「通過したあああ!私も!通過だよ!お互いおめでとう!
 嬉しいー!!!みんな通過だっ。あとは柏木さんの報告だけだね。」


そういって俺たちはしばらく雑談をした。
お互いに、選考を通過したという喜びで舞い上がっていた。

ほのかなるフラグの予感…!



きっと女3も通過だろう。
おそらく全員通過だ、そう思った。

だがこの日、柏木さんから連絡が来ることはなかった。

翌日起きたときに彼女からメールが届いていた。
宛先はあの日のメンバー全員で、内容は

「時間ぎりぎりまで連絡を待っていたのですが、どうやら私は落ちてしまいました。
 みなさんは今後の選考を頑張ってください。GD、楽しかったです。」

というものだ。

139: 2012/07/15(日) 21:11:17.98 ID:7kIj8ZYw0
なんとも意外な結果で、本当に不思議だった。

その結果に、木村さんも驚いたらしく
「意外すぎてびっくり!!」とメールがきていた。


女3の悪い点をあげるとしたら
GD前の雑談に一切入ってこなかったことぐらい、だ…。

でもそんなところを人事が見ていたのだろうか?
あれを選考の評価に入れるとしたら酷な気がする。


でも彼女が落ちた理由が、他に思い当たる節もなかった。

ESや履歴書の書き方に問題があったのだろうか。

謎はいっぱいだったが、
もう終わったことだし 気にしないようにした。

あれだけ自分の意見をはっきり言うことができて、
人の意見を聞き、データを分析できる人ならば
絶対どこかで拾ってくれる会社があるはずだからだ。

140: 2012/07/15(日) 21:17:19.64 ID:7kIj8ZYw0

そして待ちに待った2次選考の日。


この日のために、俺は何度となく就職課の人に面接練習をしてもらった。

志望動機も、ESに書いたこととは別のことを言うように練習してきた。
他の企業でも何度か面接はしてきたので、それなりに場数は踏んでいるはずだった。


これが4月の出来事。


何度となく使っている路線に乗り、

再びあの会場へと戻ってきた。

だが今度はGDを受けたときとは違う 少し小さな部屋。

待合室だ。’グループ面接’を受けるメンバーを見てみる。

141: 2012/07/15(日) 21:20:15.70 ID:7kIj8ZYw0

なんと、偶然は重なるものだ。

そこの待合室には見覚えのある顔がいた。


俺をいれて4名。

それぞれが全く話さず、自分の手元にある資料なりを読んでいる。

だから俺も彼に話しかけることができなかった。
そう、佐藤(男1)だ。 同じ日の同じ時間帯にグループ面接

しかもあんなイケメンと一緒とか…

嬉しいような複雑な気持ちだ。
残りの2名もなかなか整った顔立ちだ。

外見スペックでいうなら自分が一番下だった。

142: 2012/07/15(日) 21:23:48.99 ID:7kIj8ZYw0
佐藤はというと、どうやら俺の存在に気がついていない。

ずっとメモが書かれているノートを見るなり
提出した履歴書のコピーなどを見たりで、
自分の世界に入り込んでいた。

まわりの空気に押されるように 自分も面接で聞かれそうなことに対する
答えのシュミレーションをした。



そんなこんなで、グループ面接の時間がいよいよやってきた。
4名が書類などをカバンに入れ、席を立ち 部屋を移動する。

そこでやっと佐藤が俺に気がついた。

「よお。久しぶり。」

それだけお互い言うと、黙り込む。



143: 2012/07/15(日) 21:28:41.42 ID:7kIj8ZYw0
お互いに緊張しているのが分かる。

面接室に入ると、面接官が席を指定してきたので
そのとおりに順番に席の前に立つ。


面接官は、先日の監視員よりも おそらく入社歴が長いように思われる。
優しそうな、どこにでもいそうな中年のおじさんだ。


席順は学歴…おそらくそうであろう。

だが、質問形式は端から順番に、というわけではなく
挙手でするように、と説明された。


「そうですね…まずは挙手ではなく 端から
 ’簡単な自己紹介’をお願いします。」

簡単な自己紹介… これまた難しい注文だ。

145: 2012/07/15(日) 21:34:58.34 ID:7kIj8ZYw0

ちなみに1番最初は佐藤だ。

自己紹介を聞いたところ、
やはり、思った通りの某有名私立大学出身…

手短な自己紹介も分かりやすく、彼がどういう人物なのか
容姿とリンクして一発でつかめた。


次は俺の紹介の番となった。

大学名、そしてこれまた手短に自分の紹介をする。

まわりのメンバーが「うんうん」と頷いている。

就活生ならよくやるであろう。「あなたの話をちゃんと聞いてますよ」っていう
面接官へのアピールだ。

147: 2012/07/15(日) 21:39:48.16 ID:7kIj8ZYw0

そして3人目、4人目…

4人目の出身学校名を聞いたとき
よく聞いたことのないような明らかにFラン大学の名前を言っていて、
よっしゃぁと内心ガッツポーズした。


もちろん今までの選考での体験も含めて、
学歴が全てではないことは知っている。

だが、自分より下がいると思ってしまうと内心喜んでしまう。
そんな自分がいやでもあるんだけども。


最初に面接官が質問してきたものは
「学生時代に1番頑張ったこと」

よくある鉄板の質問だ。


挙手性… それを思い出して
まず俺は真っ先に手を挙げた。

まわりのメンバーも「!」みたいな反応した。

148: 2012/07/15(日) 21:42:21.27 ID:7kIj8ZYw0

普通最初はやりたがらないであろう’1番’
それをあえて積極的にやることが、やる気があるという自己主張をするつもりだった。

まあ適当に話して まわりもうんうんと頷いていた。

おそらくこの場合、ほとんどの人は頷いて聞いているふりをしつつ
自分が何を話すかを考えている場合が多いと思う。

俺もそうだから。特に、何を言えばいいか分からないときはよくそうする。

もしそこで面接官に「今の意見について、立川君はどう思いますか?」と言われたらアウトだけれど。



次の質問では、挙手は最後にすることにした。
むしろそういう作戦をたてた。

グループ面接はGDではないから、目立ってもいいと思う。
それでもやはり協調性のないやつだとは思われたくなかったから、そうした。

156: 2012/07/15(日) 21:59:35.15 ID:7kIj8ZYw0
質問を重ねていくたびに、佐藤がすごいやつであることが分かった。

(自分の語彙力でここに書くと、あまりすごいやつだと表現できなさそうだから
どういう感じかは想像に任せる。)


そんなこんなで1時間ほどで面接は終わった。
適度に緊張したが、まあ手応えもそこそこ。

挨拶をすませ、面接室を出る。


出た後も俺たちは無言だ。

そして会場を出たときに、真っ先に声を発したのは
やはり佐藤だった。

「せっかくの出会いだし、アドレスを交換しようぜ!!」


…彼は毎回こんなことをしているのだろうか。
選考のたびにこんなことをしていたらアドレス帳が
どうでもいいやつでいっぱいになるのではないか。

157: 2012/07/15(日) 22:02:41.42 ID:7kIj8ZYw0
とりあえず、俺も残りの2名とはアドレスを交換した。


おそらく仲良くなることもないであろうが…一応。

駅まで歩く途中、佐藤が話しかけてくる。

佐藤「おまえが通過するとは思わなかったぜ、正直。」

イケメンは直球でそう言ってきやがった。
まあそうだろうな。GDの時は無難な発言ばかりで、
自分ですら通過するとは思わなかったし。


俺「だろうなあ。自分でもびっくりしてるわ。
  なんで柏木さん落ちたんだろうねえ。」

佐藤「柏木…?あー、あの子か。」

何人もの人とアドレスを交換している佐藤だ、
名前も顔もごちゃごちゃだろう。

それでも女3のことはちゃんと覚えているようだった。

159: 2012/07/15(日) 22:06:05.68 ID:7kIj8ZYw0
佐藤「絶対あの子は通ると思ったんだがな。
  だからGD後も、何度か電話したりで連絡とってたんだが、今はパッタリだ。
  本当にGDは何を見ているか、わかんねえなー。」

どうやら佐藤はなかなか性格が出来ていらっしゃる。

受かりそう=今後も連絡を取り続ける
見事な作戦だ。

落ちたから用なし、と…。

駅で「また次の選考で会えるといいな!」と別れたが

どうだろう。
グループ面接ともなると、そろそろ大量落としが始まるであろう。

いったい自分はどこまで進めるかな。

160: 2012/07/15(日) 22:11:02.56 ID:7kIj8ZYw0

今回の選考も、結果は1週間後にメールで、ということだったので
その間、他の会社の面接を受けたり説明会を見たりした…


そうこうしているあいだに
だんだんとこの会社にどうしても入りたい、と思うようになってきた。

そして面接で「もっとこうすればよかったなあ」という後悔もうまれてきた。
今回のグループ面接では、志望動機に一切ふれてこなかった。

定番である質問だから、特に念入りに答えようとしていたんだが、ショックだ。


選考結果を待つその1週間のあいだには
木村もこの会社のG面接があったらしく
「最悪だ~~絶対おちた」と言っていた。

あれから木村とは頻繁に連絡をとりあう仲となった。
一応ライバルでもあるが、就活仲間でもある。

「そういえば面接受けたときに女2ちゃんも居たよー
 あいかわらず自分の世界で突っ走ってたけど。」

なんとなく面接での彼女の主張が想像できておもしろかった。

161: 2012/07/15(日) 22:17:16.49 ID:7kIj8ZYw0
なかなか思うように就活はいかなかった。

同業種の会社で、グループ面接までは何社かいっていたが、
そこから先に進むのがなかなか難しい。

GD(GW)で落ちたことはないが、グループ面接は今のところ全落ちだ。

だから今回のこの会社も

ひょっとしたらだめかも…そう思った。



そうしているあいだに男2から久しぶりにメールが届いた。

GDの通過した日以来、やつとは連絡をとっていなかったので
おそらくG面接の結果報告だろう。

佐藤から聞いた話によると、男2は俺たちより
1日前の日に面接をしたらしい。


だからきっと、俺と佐藤は明日、結果がくる…。

163: 2012/07/15(日) 22:21:15.41 ID:7kIj8ZYw0

タイトル:**社、2次選考結果について。

宛先は俺、佐藤、木村、女2へだった。


「お祈りされました。本当に残念です。
 就職活動大変だと思いますが、お互いに頑張りましょう。
 スーツが汗だくになる季節の前に内定、とりたいですね。ではまた。」


なんとなく予感はしていたが、彼は落ちたらしい。

自分と似たキャラであるだけに、明日の自分と重ねてしまう。
きっと俺も落ちているだろう。


GDは目立たなくても無難な発言をしていれば
ほとんど通るであろう。だが、G面接ではそうはいかない。

難しい。

164: 2012/07/15(日) 22:24:18.61 ID:7kIj8ZYw0

「報告ありがとな。お互い頑張ろう。」
それだけメールを打ち、機械的に彼のアドレスを消した。

もちろん柏木のアドレスも携帯にはもうない。

それだけの出会いだ。

あの日どんなに暑く語り合おうとも、
就職活動なんて本当に一瞬の出会いだ。

相手が落ちたのだと分かったら、もう接点もない。

関係を繋ぐ意味も分からない。必要性もない。


佐藤もきっと、あいつが通過し、俺が落ちたら
速攻で俺のアドレスなんて消すであろう。

…木村はどうなんだろう。

どちらかが落ちたら、それで終わりの関係なんだろうか。

165: 2012/07/15(日) 22:27:54.96 ID:7kIj8ZYw0

男2の報告を受けてか、半ば俺は諦め半分で選考の結果を待つことになった。


次の日、某就活サイトを見るのが怖くてなかなか開けずにいた。
メールBOXに新着があるか、それの確認をしたいようでしたくなかった。

履歴書やESに追われているふりをして、携帯を放置した。


でも生憎、この日は大学の講義もなく、プライベートな予定もなく、
就活の予定も入っていなかった。

だから必然的にやることがなく、携帯を手にした。

何通かメールが届いている。
もちろん企業からではなく、個人的に。

166: 2012/07/15(日) 22:30:52.20 ID:7kIj8ZYw0

木村から「結果きたあ?一番に教えてね!」というもの。

佐藤から「俺はまだきてないよ。ドキドキするねv」というもの。

あとは普通の友達から。
G面接をした日にアドレスを交換した男2人からも
まだ連絡は来ていないようだ。


なんとなくいつものくせで就活サイトを開いてしまった。

(う、うわ…まだ見るつもりなかったのに)

新着メッセージ1件、 それがあの企業であるか
それは開いてみないとわからない。

168: 2012/07/15(日) 22:35:04.20 ID:7kIj8ZYw0

覚悟を決めて開いた。




タイトル「3次選考のお知らせについて」


うわ、まじかよ…きたあああああ!

通過した!!よっしゃぁ、と思いつつも
まだ油断は出来なかった。


手応えはあったといえど、男2の連絡を受けて

通過する自信なんざ無くなっていたからだ。



「先日は我が会社にお越しいただき、ありがとうございました。
 厳選なら審査の結果、是非 立川様には三次選考に
 参加していただきたいと思い連絡をいたします。
 つきましては……。」



169: 2012/07/15(日) 22:37:16.51 ID:7kIj8ZYw0

文章を読み返し、嬉しくてひとりでにやけてしまった。

手早くスケジュール帳を確認し、’個人面接’の予定を入れる。


残すは個人面接、社長面接のみだ…。

まさかG面接を通過できるなんて!
それがただただ嬉しかった。


一応「最初に報告して」と言っていたので
木村に連絡をいれた。
嬉しかったのでメールではなく、電話で

彼女も俺の通過を喜んでくれた。
その一方で「私…通過してるかな」と不安そうにつぶやいていた。


電話を終えると、

佐藤、あの日の二人、女2 にもメールを一斉送信した。
「通過したよ。みんなはどう?」と。

177: 2012/07/15(日) 23:00:15.60 ID:7kIj8ZYw0

佐藤からは速攻でメールが返ってきて

「俺も通過!お互いおめ!!
 おまえから連絡遅いから落ちたかとてっきり思ったぜ。」

とまたまたストレートな返事が返ってきた。

思ったとおり、やはり佐藤は落ちない。
このまま最終面接まで行く…そんな気がする。


女2はもちろんまだ企業から連絡が来ていなくて
(木村と同日に受けたわけだから、まだ合否が出ないであろう)
「おめでとう」だけ言われた。

残り… あの日の2人

その片方は通過、もう一方は落ちる という結果になった。
通過したのは、俺がpgrした 名前も聞いたことないような大学の方の男。

確かにG面接中の彼は、俺らの中で 一番はきはきと大声で愛想よく喋っていた気がする。

この会社は学歴じゃなくて、ちゃんと中身重視なんだなと再確認した。

180: 2012/07/15(日) 23:04:12.95 ID:7kIj8ZYw0

そして後日、木村から通過の報告、女2もまさかの通過。

意外にも、大量落としはまだなのだろうか?

G面接であまり落とされないということは
個人面接できっとふるいにかけられるに違いない。


もっとがっちりと、しっかり受け答えが出来るようになっていなければ。

そう思いつつ、数週間後にひかえるその会社の面接の準備をした。


その間にも何社からか、「面接お祈り」の通知が来た。

出かけ先から家に帰り、ポストに投函されている書類…
「ああ落ちたんだな。」と分かり、一気にやる気がなくなる。

でもそんな中、木村と連絡をとりあったり

企業からの通過メールを読むことで、自分のモチベーションがあがった。

182: 2012/07/15(日) 23:09:14.91 ID:7kIj8ZYw0

いよいよ個人面接の日、となった。5月某日。

俺よりも先に、すでに佐藤が個人面接を済ませていて

「アドバイスくれ!どんなこと話した?」と俺が聞いても
彼は教えてくれなかった。

ただ「手応えはあり。」と言っていた。


もちろんアドバイスなんざくれるはずがないであろう。
もうここまで来たら、敵だ。 敵対視するに決まっている。

仲間だからアドバイスあげる~!とはならない。

言ってしまえば心の中ではお互い’落ちてしまえ’とも思っているはず。


でも何故か、木村に対しては落ちろ とは思えなかった。

もう乗り慣れた路線で、あの会場へと向かう。

頭の中で何度も会社の志望動機を思い浮かべたり、
何度もパンフレットを見たり、自分の企業研究ノートを読み込んだりした。

183: 2012/07/15(日) 23:13:11.20 ID:7kIj8ZYw0

面接室へ入ると、以前の面接よりもやはり、
入社歴の長そうな中年のおじさんがいた。

「本日はよろしくお願いします。
 ○○大学からきた立川と申します。」

面接官「どうぞおかけください。」

「失礼いたします。」


個人面接は今回が初だったので、とにかく緊張した。

ライバルが同席していないという状況は気楽ではあったが、

反対に言ってしまえば、面接官は自分という人間にじっくり向き合ってくる。

一言発したことに対して、深く深く返答を求めてきた。

185: 2012/07/15(日) 23:15:57.01 ID:7kIj8ZYw0
正直、うまく答えられなかったし
何度も返事に詰まってしまったりした。

志望動機も直接はふれてこなかった。

でも、どうしても言いたかったので
無理矢理違う話にくっつけて 入りたい理由ものべてしまったりした。

面接官の表情は読み取れなかった。


途中で「立川君の地元は**県なんだね。あそこはいいところだよねえ。」

と世間話をされてしまった。

この瞬間にもう終わったと思った。
面接において、世間話をされること。これ以上に辛いことはない。
前にも経験があった。集団面接のときに自分だけ家族のことを聞かれた。

それがとにかく辛くて、もうそんな展開にだけはしたくなかったのに。

187: 2012/07/15(日) 23:18:49.02 ID:7kIj8ZYw0

世間話とはもう「あなたは落ちた」と言われているようなものだ。

まずこんな展開になって通過、はありえない。

そう思ったら今までの苦労だとか企業研究だとか
いろんな人に手伝ってもらった面接だとか、
GDメンバーのこととか、思い出したら泣きそうになった。

正確に言うと、涙がうっすらにじんだ。
きっと面接官はそれを見逃さなかったし、俺の気持ちも見抜いたはず。

「話を戻そう。」

そういってまた質問に戻ってくれた。


でもやはり駄目だったと思う。

初めての個人面接だったから、それもある。
でも自分自身のことをちゃんとアピール出来なかった。
それが大きい。深く深く聞かれると、答えられない。

具体的なことを話したいのになかなか浮かばない。
自己分析が足りなかった。

189: 2012/07/15(日) 23:23:15.40 ID:7kIj8ZYw0

またもや、選考結果は1週間後、という形に。

全くもって手応えなんてなかったし、今度こそ落ちることを予感した。
やっとここまで通過できる企業があったのに…

今更になって’みんなの就活日記’というサイトに登録してみた。

この企業をみてみると
やはり同時期に面接を受けたと思われる者の書き込みが

「3次で落ちたー」という者が多かった。

どうやらこの会社は個人面接からが本番らしい。
俺もこいつらの仲間入りだろうなと思った。

木村は「大丈夫だよー!私もうまく面接手応えなかったけど
 まだ分からないじゃん。」といつもの調子で明るく励ましてくれたが…

188: 2012/07/15(日) 23:20:36.14
俺のとき社長面接で
30分の予定の中
一般的な面接系10分、雑談40分って感じで普通に受かってたぞ

190: 2012/07/15(日) 23:23:17.03
なんで世間話=落ちたなの?

191: 2012/07/15(日) 23:24:48.28 ID:7kIj8ZYw0
>>188
>>190
自分の考えすぎかな?
世間話されたときにうまくいった試しがない。
世間話=自分に興味がない、だと思ってる
特に、G面接のときに自分だけ兄貴の話を聞かれて辛かった。
他の人には頑張ったことだの、長所だの聞いてたのに。

個人面接のときも、「○○県のどのあたりに住んでるの?」
とか明らかに「なんだその質問」って感じのものだったし…
内容と雰囲気によるんじゃないかな?

192: 2012/07/15(日) 23:24:58.13
きみのこと興味なくなたってことだろ

194: 2012/07/15(日) 23:29:47.86 ID:7kIj8ZYw0

やはり予想通り、一週間後のメールには

「3次選考のお知らせ」

と、タイトルから落ちたことを連想させてくれるメールが届いた。

なんだか全てが崩れ落ちたような気がして、

どこの会社に落ちたことよりもショックだった。

今までの仲間・ライバルの存在が大きかったのも
ここだったから、どうしてもここに入りたかったんだ。

「先日は我が会社にお越しいただきましてありがとうございました。
 さて、貴殿につきましては慎重に選考をさせていただきましたが、
 残念ながらご希望にそえない結果となりましたのでご通知申し上げます。
 今後の立川様のご検討をお祈りいたします。」

195: 2012/07/15(日) 23:34:33.79 ID:7kIj8ZYw0
もう何度となく見飽きたお祈りの通知だったが、
今回ほど辛いことは今までなかった。

そして度重なる辛い知らせが…

それは、佐藤と木村が この会社を通過したこと。


喜びたいのに、素直に喜べないのが正直な気持ちだ。

ちなみに女2と、俺がpgrした男は
俺と同様に個人面接で落ちたらしい。

だがやはりこの会社は個人面接で大量落としをしていることは間違いなかった。


佐藤はともかく、木村が俺に気を遣っていることは直ぐに分かった。


今まで 女3・男2・G面のときの男…と
相手が落ちるたびに「残念だったね。」とメールを送って、
アドレスをすぐに削除していたが、今になって彼らの気持ちが分かるようになった。

落ちるのは本当に辛い。ライバルが通過していると分かっていたら、なおのことだ。

202: 2012/07/15(日) 23:46:50.65 ID:7kIj8ZYw0
きっと佐藤はもう俺のアドレスを削除しているだろう。

就活の出会いなんざ、こんなものだよ。
儚い。 きっと木村だってそのうち俺に連絡すらしなくなるさ。


でも違った。

俺が落ちた日からも、彼女は以前と変わることなくメールをたくさんしてくれたし
「この会社、立川君どう?」と、興味がありそうなところを
URLを添えて送ってきてくれたりもした。

プライドが軽く傷つけられる気もしたが、
素直に説明会に参加するなりした。

いつまでもショックで立ち直らない訳にもいかなかったから。

それでも俺は以前ほど就活を頑張ろう!という気にはなれなくなっていた。

むしろもう就活を辞めたかった。

203: 2012/07/15(日) 23:49:56.52 ID:7kIj8ZYw0
それから月日が経って、木村は個人面接を見事通過。

どうやら彼女の話によると、佐藤も通過したそうだ。


いよいよ残すは最終面接のみだけらしい。

俺がやりたかった最終面接…
だから悔いなくやりきってほしかった。


そのあいだも、就活をしているふりをして
俺はもうどこの会社も受けていなかった。

これ以上やっても もううまくいく気がしなかったんだ。


最初は少しだけ休もうと思っていた。

だが、だんだんと戻ろうにも
就職活動と向き合うのがいやになってしまい、

面接すっぽかし、せっかくゲットできた説明会枠をドタキャン

そればかりになった。

204: 2012/07/15(日) 23:53:57.09 ID:7kIj8ZYw0

あげくには「就職浪人でいいや、もう。」

そう考えるようにもなった。

卒業後3年間は新卒として見てもらえる期間だ。(あれ2年間だっけ)
だからそのあいだに仕事が見つかればいい、そう安易な考えももっていた。

実際卒業してしまえば、就職を見つけることは
今以上に大変なことなのは分かっていたはずなのに。


そうこうgdgdと 将来が見えないでいる中、

6月上旬、佐藤の内定報告を木村から聞いた。

木村「すごいねえ。私たちのグループから内定者がでるなんて。」


確かにすごいことだ。

説明会+GDを受けたあの日、会場には100人といた。
別日にも選考は行われていたので、受験者はもっといる。

そのなかで 内定 を彼は勝ち取ったのだ。

確かになんとなく初めて会ったときから
「内定もらいそうだな、こいつ」とは思っていたが

見事にそれが的中した。

205: 2012/07/15(日) 23:56:49.90 ID:7kIj8ZYw0

もちろん、直接的に佐藤から連絡がくることは一切なかった。
もう彼のなかで俺は’落ちた人’なのだから 用はないだろう。


こうやって月日が経ってみると
今までいろいろな企業で知り合った人たちのことを懐かしく思う

彼らの中で内定を取ったものはどれぐらいいるのだろうか?

女3や男2は内定をもらえたのだろうか?

今も、みんなめげずに負けずに、就職活動に燃えているのだろうか?



アドレスを消してしまっては、もうその状況を知ることもできない。
ましてや連絡先を交換していない人の状況なんて、わからない。

そうやって考えたら就活の出会いってすごいと思う、本当に。

210: 2012/07/16(月) 00:04:44.64 ID:7kIj8ZYw0


今までに何人も、連絡先こそ交換しなかったが
仲良く会話を交わした人物はいた。男女関係なく。

その人たちは今も就活を頑張っているのだろうか。

終わりが見えない、この戦争に(笑)


佐藤の内定報告の数週間後、木村から連絡がきた。

最終で彼女は、あの会社からは落とされたらしい。

だが、別業種であるホテル関係のほうで
1社、内定をもらえたそうだ。

。」

212: 2012/07/16(月) 00:09:05.04 ID:qGE2kz1B0

早速電話をして、彼女に祝福の言葉をのべる。
久しぶりに電話をする。なんとなく就活をしていない罪悪感から
彼女に話しかけるのが怖かった。


俺「内定おめでとう。」

木村「立川君ありがとう。本当にありがとう!」

話によると、もう就活をやめてここにすることに決めたらしい。
明るい彼女だから確かに接客の仕事は似合っていると思う。


俺「ホテルって結構ブラックな感じの業務らしいけど平気なの?」

木村「土日週休じゃないね、うん。でもこのさい仕方がないかなあって
  それにホテル関係に興味があったのも嘘じゃないしね!」

話を聞いているだけで、自分との落差を感じて凹んだ。
たった数ヶ月で、ここまで差がつくものなのだな、と。


いや 今までの人生の積み重ねの差だろう、これは。
一体どうすれば今までの人生の穴を埋められるのだろうか。

213: 2012/07/16(月) 00:14:37.49 ID:qGE2kz1B0
話によると、木村は女2、女3、男2の連絡先を消していないらしい。

それどころか、むしろ近況報告をしあっているそうだ。
相変わらず女2は内定はとれていないし、あの性格からもなかなか面接は苦労続きらしい。
そして男2も、内定は0

だが女3はというと、2社ほど内定をゲットしているらしい。
でもあくまでもやりたいのはこの業界であり、そのために今も就活を続けているそうだ。


…GDでの’仲間思いの女1’突然それを思い出した。
懐かしく思える。あのとき感じたそれぞれの人物への印象はやはり間違っていない。
人間見た目が9割、だというけどこのことなのかなとも思う。

面接官も個々のそういうのを読み取って
内定者の良いところを見つけてくれたのだろう。

俺にある 俺らしさってなんなんだろうな。

215: 2012/07/16(月) 00:18:13.81 ID:qGE2kz1B0

やはり就活の出会いというものは儚いものだ。


内定も決まって時間が出来た、ということで
木村が「会いに来て!遊ぼう」ということになった。

わざわざ木村の住んでいる土地まで再び足を運んだ。

使い慣れたあの路線、懐かしい電車の座席…。
あの企業を受けていた頃の自分を思い出す。

ああ就活してたんだなぁ。本気でこの会社に入りたいって
頑張ってたんだよなぁ。俺今なにやってるんだろう…


そう思いながらも、久しぶりに会える彼女に期待をふくらませていた。

217: 2012/07/16(月) 00:22:24.50 ID:qGE2kz1B0
それは夏休みに入った8月のとある日のことだ。

久しぶりにあった彼女。
「お久しぶり~!」という明るいテンションはあの日以来何も変わっていない。

就活以外では初めて目にする彼女の姿だった。
思い出の中では ’リクルートスーツに黒髪のポニーテール、薄化粧’ だ。

だけど当然私生活ではそんなこともなく、
あの頃の面影などなくなり、髪も茶色に染め、垢抜けていた。

数週間前まで就職活動をしていた、なんて誰も想像がつかないような。


「立川君ちゃんと元気にしてる?」

以前彼女と食事をとった思い出の店で、再び食事をした。

221: 2012/07/16(月) 00:26:19.14 ID:qGE2kz1B0
ドリンクを飲むときの、彼女の左手の薬指に
光るリングが目に入った。


ああ俺は何を期待していたんだろうな、本当に。

俺「元気にしてるよ。」

木村「ちゃんと就活しなきゃだめだよ!?」

俺が就活をもうしていないことに、
なんとなく彼女は気づいていたらしい。

木村「まだまだいい会社、いっぱいあるんだからね。」

そう言ってはくれたけど、でも自分のなかで
就職活動を頑張る意味も、理由もよくわからなくなっていた。

先がみえないし きっとどこを受けてもうまくいかないだろう
そう思うようになってしまっていたのだ。

俺「GDメンバーとまだ連絡とってるらしいけど、佐藤はどうしてる?」


224: 2012/07/16(月) 00:30:15.70 ID:qGE2kz1B0
一通りの雑談や近況報告などを終えたあと、
話すことがなくなったのでなんとなく聞いてみた。

そしたら何故か顔を赤くさせてやがる。

木村「…元気にしてるよー。」

俺「結構連絡とってるの?」

木村「うん。まあ毎日っていうか…うん。付き合ってるんだ。」


俺「……えっ……。あ、あぁ そうなんだ。」

そこで彼女は付き合うに至までのノロケをしてくれた。
選考を進めていくなかで、佐藤と連絡をとりあうことが増えていたらしい。
知らなかった。

しかも他にも数社、一緒に受けていた企業があるらしい。
最終的に木村が某ホテルに勤めることを決めたのも
佐藤がその周辺で働くことになるであろう、と予想できたからだという。

225: 2012/07/16(月) 00:31:19.36
おい佐藤、おい・・・

228: 2012/07/16(月) 00:34:06.13 ID:qGE2kz1B0
就活中の俺の心の支えでもあった彼女。


彼女もきっとそうだ、と勝手に思いこんでいた。
だけど彼女の支えになっていたのは
実際 俺ではなくて、おそらく佐藤だ。

さすがイケメンリア充。内定も取れて
俺とは比べものにならないぜ、本当に…。

幸せにしてやってくれよ。何やってるんだろうなまじで。

俺「なんで今日久しぶりに会おうと思ったの?
 彼氏が不安にならない?」

木村「えー。だって立川君とはそういう関係じゃないじゃん?
 たける(佐藤)も あなたなら安心してると思うよー♪
 就活で出会った仲間。だよ!」

233: 2012/07/16(月) 00:37:15.58
心に刺さる(´;ω;`)

234: 2012/07/16(月) 00:38:31.77 ID:qGE2kz1B0

こうして俺の就活での恋は終わった。

もうきっと俺から木村に連絡をとることはないだろう。

あっちから連絡がくることはあるだろうが、
もう浮かれて雑談をしたりなんざ、しない。しない!しないぞ俺は!


ただ就職活動でひとつだけいいことがあったとしたら
人との出会いって儚いけど、いいものだなってことだ。

こんなに多くの人と 出会い 別れ があったのも
就活が初めてだと思う。
一期一会の意味が、なんとなくわかる。

佐藤が知り合う人々に連絡先をわざわざ聞いていたのも、間違いではないと思う。
だってそこでさよならしたらもう一生会うこともできないような人だから。

あのGDの日、会場の外で佐藤が待っていてくれなかったら
みんなの連絡先を知ることもなかったし、木村とこうして外で会うこともなかったと思う。

237: 2012/07/16(月) 00:42:54.34 ID:qGE2kz1B0
あとになって「みんな内定もらえているのかな?」と気になったときに

もし俺だけだったら、みんなの連絡先を知らなかったら…
就活の様子を想像するだけで、実際がどうなっているかなんて知ることもできなかった。

連絡先を交換していたから知ることができた。
人との出会いって暖かいし、それがあるだけで頑張ることもできる。
自分が通過したときに喜んでくれる仲間がいて、

また落ちたときに悲しんでくれる仲間がいる、その感動を教えてくれたのも就職活動だ。

きっと努力し続けたら人は報われる。



――こうして俺の就活での恋は終わった。

もうきっと俺から木村に連絡をとることはないだろう。

あっちから連絡がくることはあるだろうが、
もう浮かれて雑談をしたりなんざ、しない。しない!


肝心なる就職活動は今 停滞中だ。

そう…まだ時間はあるじゃないか。

だから俺はこれからも就職活動を頑張るぞ。    完

238: 2012/07/16(月) 00:43:52.62
おわたwwwwwww

まあ乙

239: 2012/07/16(月) 00:44:37.03
連休中になんという鬱なものを読ませてくれたんだ…
おつw

242: 2012/07/16(月) 00:45:43.64
就活か……

企業の憂さ晴らしだよな

246: 2012/07/16(月) 00:47:00.33 ID:qGE2kz1B0
まじか…ありがとう

フィクションありきりだから実際こう、ってわけでもないけど

就活もうずっとしてないんだけど
まだ間に合うのだろうか・・・・

254: 2012/07/16(月) 00:53:10.91 ID:qGE2kz1B0
なんだこれw

>>247
自分が唯一進んでいたのがこの企業だったんだ
メンツはちょっと違うけど
GDしたメンバー今どうしているのかなと思って。

2,3次のときに前回の選考の人がいて
ああ偶然の出会いってすごいなあって思ったんだが

257: 2012/07/16(月) 00:59:03.49 ID:qGE2kz1B0
>>255
それは想像に任せるからおもしろいのではないか?w


今家にごきぶりの赤ちゃんがいて涙目だわ
おまえらも気をつけてな。

楽しかったー。こういうの完結できたの久しぶり

引用元: 女「私GD初めてなんですよー。よろしくお願いします^^」