1: 2017/05/04(木) 19:06:23.394 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

……これは彼女の口癖

2: 2017/05/04(木) 19:06:43.304 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

彼女は私を見る度にいつもこう言う。

どうやら私の事をライバルだと思ってい

るらしい。迷惑な話だ

4: 2017/05/04(木) 19:07:14.522 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

まただ。なんど断っても彼女は私に

突っかかってくる。どうして私にこんな

こんなにも勝負を仕掛けてくるのか。

……分からない

5: 2017/05/04(木) 19:07:46.823
わたし達は起き上がり、うしろを振り向く。
ひしゃげた車が壁につっこんで、煙を上げている…。
…ふと気付くと、車と壁の間に、なにか変な形の固まりが、押し付けられたみたいにつぶれてる。
その変な固まりを中心に、壁にびっしゃりと、赤い液体が飛び散ってる。
まるで、大きな赤い花柄みたいに。

……耳につき刺さる高い音が、ヴィーネさんの悲鳴だって気付くまで、ずいぶん時間がかかった。
ヴィーネさんは、なんで叫んでるんだろ…?
わたしは、ぼんやりと壁を見詰めていた。
変な固まりは壁でつぶれたトマトみたいに、微動だにしない。
あれがもし生き物なら、間違いなく氏んでる。

…あれがもし、人間だとしたら、顔を壁に向けて、ちょうど背中の当たりで車に挟まれている形になる。
ヴィーネさんはその変な固まりに駆けよって、車を必氏にどかそうとしている。
…馬鹿ですねぇ…。いくらヴィーネさんが力持ちでも、車は動かせませんよ…。
ああ、ヴィーネさん、だめですよ。手が汚れるからその変な固まりに触っちゃ…。
車と壁の間から、ヴィーネさんが変な固まりを引っ張り出そうとするたび、それはぶらぶらと力なく揺れる。
ヴィーネさんの制服は真っ赤に染まってる。…あーあ、後で洗うの、大変ですよ…。 サターニャさんに手伝ってもらわなきゃ…。
そう言えばサターニャさんは、どこに行ったんでしょう?
サターニャさんは、ほら、もうすぐ車の下の方から、『いたーい…』なんて言いながら出てくるに決まってます…。
あはは、ヴィーネさん、まわりの大人に叱られてます。
…あのオトナ達がいなくなったら、きっと、サターニャさんは車の下あたりから、『いたーい…』なんて、笑いながら出てくる。
そうに決まってる。 そうに決まってる。 絶対に。絶対に絶対に…。

気がついたら、わたしも、変な固まりに駆け寄っていた。 鉄と、生肉の匂い。
ねえ、サターニャさん。 家に帰るから、そこから出て来てよ。
……うちに帰って、ごはん作って、ずっと、楽しく幸せに暮らすんだからさ。
3人でずっと仲良く。
ねえ。動いてよ、ねえ、サターニャさん…。
ねえ………………。

6: 2017/05/04(木) 19:08:10.104 ID:Y3irbTCh0

「勝負よガヴリール!」

まただ。なんど断っても彼女は私に突っか

かってくる。どうして私にこんなにも勝負

を仕掛けてくるのか。

……分からない

7: 2017/05/04(木) 19:08:53.567 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

毎日毎日彼女は私に勝負をしかけてくる。

よく飽きないものだ。たまには真剣に相手

でもしてやろうか。

……暇だしね

8: 2017/05/04(木) 19:09:29.446 ID:Y3irbTCh0
「……」

今日はサターニャは休みらしい。馬鹿でも

一丁前に風邪引くんだな。

…。

……帰りにうどんでも買ってってやるか

……暇だからな

9: 2017/05/04(木) 19:10:23.231 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

風邪が治ったと思ったらすぐにこの台詞だ。

あいつの体力は無尽蔵かよ。まあ、それが

あいつらしいところだけど。でも、風邪が

治った後くらい大人しくしてろよ………ぶ

り返しちゃうぞ……

10: 2017/05/04(木) 19:10:54.113 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

ぶり返しはしなかったみたいで安心した。

それにしても、コイツには私と勝負しない

っていう選択肢はないのか。

……まあ、いいか

11: 2017/05/04(木) 19:11:27.994 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

今日も聞こえてくるこの台詞。

なぜかこの台詞を楽しみにしている私。

……あぁ、そうか、そういうことなのか

12: 2017/05/04(木) 19:11:44.978 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

「おう!受けて立ってやるよ!」

「珍しくノリいいじゃない!」

「……暇だからな!」

13: 2017/05/04(木) 19:12:21.027 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリ……」

今日は最後まで言わせない。

「ちょっと待て、私はお前に言いたいことがあるんだ」

「……なにかしら」

私は彼女に思いを告げた。

「ガヴリール……」

「…………。」

「まさかあんたにその言葉を言われるなんてね」

「いいわよ!」

「……いえ、よろしくお願いします!」

その日、私は彼女のライバルを卒業した

14: 2017/05/04(木) 19:13:14.163 ID:Y3irbTCh0
「勝負よガヴリール!」

ライバルを卒業した、と言ったな

あれは嘘だ、いや厳密には嘘ではないか

「あれ、どうしたの?ガヴリール」

「あぁ、ちょっとな。昔のことを考えてたわ」

「ふーん、まあいいや」

「じゃあ仕切り直して勝負よ!」

「あぁ!来い!」

彼女は今でも私の大切なライバル。

そして大切なパートナーとして、今でも


私の隣にいる。

おわり

15: 2017/05/04(木) 19:13:38.151 ID:Y3irbTCh0
綺麗なガヴサタを書きたかったんです

ありがとうございました!

17: 2017/05/04(木) 19:18:27.677

引用元: ガヴリール「私とアイツ」