1: 2017/11/28(火) 01:15:19.436 ID:Mn/lQ/7e0
男「……」

女頃し屋「……」コソコソ…

男「おい、お嬢さん」

女頃し屋「!」ビクッ

男「安全装置が外れてるぜ」ニヤッ

女頃し屋「えっ!?」

4: 2017/11/28(火) 01:18:31.956 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「あ、ありがとう!」

女頃し屋「安全装置が外れてたら、危ないものね! 暴発しちゃうものね!」

男「ふっ、その通りだ」

女頃し屋「あなた銃に詳しいの?」

男「まぁな……」

男「世界中のあらゆる銃のデータが、俺の頭の中にはあるのさ……」トントン

女頃し屋「すごーい!」

6: 2017/11/28(火) 01:21:17.984 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「もしかしてこの業界じゃベテランなの?」

男「まぁな……」

男「お前さんは?」

女頃し屋「あたしはまだまだよ! 経験のない新人なの!」

男「ふっ、だろうな」

男「ベテランだったら、そんな初歩的ミスを犯すはずないからな」

女頃し屋「尊敬~!」

10: 2017/11/28(火) 01:24:31.550 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「あのー、よかったらあたしのマンションに来ない?」

男「いいのかい?」

女頃し屋「うん、色々とお礼もしたいし」

男「いいだろう。ここから近いのか?」

女頃し屋「まぁね!」

男「やれやれ、狼が兎の巣に招かれることになっちまったぜ」

11: 2017/11/28(火) 01:26:40.540
プロだ

12: 2017/11/28(火) 01:27:35.845 ID:Mn/lQ/7e0
―マンション―

女頃し屋「はい、コーヒー」

男「ふっ、いただくぜ」

女頃し屋「だけど、よく一目で分かったわね~。安全装置が外れてるって」

男「この業界はそれぐらい一目で見抜けなきゃ務まらないさ」

女頃し屋「そりゃそうよね~。あたしももっと勉強しなきゃ!」

男「ふっ、頑張れよ」

13: 2017/11/28(火) 01:28:52.902
飲むなよ

14: 2017/11/28(火) 01:30:22.240 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「あの~、実は相談があるんですけど」

男「なんだい?」

女頃し屋「今度あたし大事な仕事があるんだけど、あたしの仕事手伝ってくれない?」

男「……」

男「いいぜ」

女頃し屋「ありがとう! 初仕事だから心細かったの!」

18: 2017/11/28(火) 01:33:24.352 ID:Mn/lQ/7e0
男「どんな仕事だい? 営業? 宣伝? それとも企画・開発かな?」

女頃し屋「どれも違うわ。実戦……ってとこかな?」

男「? ……ふうん」

男「ま、実践は大事だな。手伝ってやるよ」

女頃し屋「ありがとう!」

男「もちろん、報酬はそれなりに貰うがな」

女頃し屋「そりゃもう! 折半しましょ!」

男「おいおい、太っ腹だな。一回メシおごってくれるぐらいでいいのによ」

19: 2017/11/28(火) 01:36:18.785 ID:Mn/lQ/7e0
男「で、実践ってのは具体的には?」

女頃し屋「もちろん頃しよ」

男「頃し? 顧客への頃し文句を考えろってことかな?」

女頃し屋「アハハ~、ギャグがうまいんだから!」

男「?」

女頃し屋「殺人に決まってるでしょ~!」

男「……え?」

男「サツジン?」

22: 2017/11/28(火) 01:40:20.197 ID:Mn/lQ/7e0
男「あのさ、ちょっとさっきの銃持たせてもらっていい?」

女頃し屋「いいけど?」

男「……」ズシッ

男(……重い)

男「もし持ってたら、弾も見せて」

女頃し屋「いいよ。なんだったら一つあげようか?」

男「あ、ありがと」

男(……これも重い)

男「あ、あのさ……これってもしかして本物?」

女頃し屋「やだ~、なにいってるの? 本物に決まってるじゃない!」

男「へ、へぇ~」

24: 2017/11/28(火) 01:43:40.655 ID:Mn/lQ/7e0
男「ちょっと聞きたいんですけど……」

男「もしかして、君の仕事ってお金をもらってターゲットを頃す系のお仕事?」

女頃し屋「今さらなんでそんな確認するの?」

女頃し屋「そうに決まってるじゃない! ね、同業者さん?」

男「……!」

男(オイオイオイ、待て待て待て)

男(俺は頃し屋なんかじゃねーぞ!)

男(ガンマニアで、エアガンやモデルガンのメーカー勤めのサラリーマンでございますよぉぉぉぉぉ!!!)

27: 2017/11/28(火) 01:46:31.787 ID:Mn/lQ/7e0
男(落ち着け……今さら正体は明かせない。落ち着け、俺! 深呼吸だ!)ヒッヒッフー

男「ち、ちなみに……ターゲットは?」

女頃し屋「政治家よ!」

男(政治家!?)

女頃し屋「名前は――」

男「……!」

男(次期総理大臣確実っていわれてる政治家だ……新聞やニュースで名前を見ない日はない)

男(大物すぎるじゃねえかぁぁぁぁぁ!)

30: 2017/11/28(火) 01:49:47.134 ID:Mn/lQ/7e0
男「あのぉ~」

女頃し屋「ん?」

男「もし……今からやっぱり手伝うのやめるっていったらどうする?」

女頃し屋「そんなの許さないんだから~! ターゲットまで聞いておいてさ」

男「ハ、ハハ……だよね~」

女頃し屋「この場で戦闘が始まっちゃうわよ!」

男「ハ、ハハハ……」

32: 2017/11/28(火) 01:54:05.970 ID:Mn/lQ/7e0
男「だ、だけど……あいつは相当大物よ? そんな奴、本当に殺せるのかな?」

男「いつも屈強のガードマンが脇を固めてると思うけど……」

女頃し屋「平気、平気! 依頼人が絶好のタイミングを教えてくれたから!」

男「絶好のタイミング……?」

女頃し屋「ターゲットはジョギングが趣味みたいで」

男(ああ、ジャージ姿で有権者にアピールしてたこともあったな)

女頃し屋「今夜、ターゲットがある人気のない通りを一人でジョギングするっていうのよ!」

男「へ、へぇ~、なんて都合のいい……」

男「って今夜!? 明日とか明後日じゃなく!?」

女頃し屋「うん、今夜! あと何時間もないよ」

女頃し屋「ってわけで、よろしくね!」

男「よ、よろしく……」

33: 2017/11/28(火) 01:57:14.194 ID:Mn/lQ/7e0
男(このままじゃ殺人の片棒を担がされる! テロといっても過言じゃない! 逃げないと!)

女頃し屋「あ、ちょっと」

男「ひゃいっ!?」

女頃し屋「もし逃げようとしたら、撃っちゃうからね! 心配ないと思うけど」

男「へ、へへへ……そんなわけないじゃないすかぁ~、アネさん」

女頃し屋「なんかキャラ変わってない? 汗もすごいし」

男「いやぁ~、元々こんなもんだったよ、ハハハ……」

35: 2017/11/28(火) 01:59:18.720
アネさんは笑う

37: 2017/11/28(火) 02:00:31.022 ID:Mn/lQ/7e0
―ターゲットが通る道―

女頃し屋「ここで待ってれば、ターゲットが通るってさ」

男(結局、付き合うことになってしまった……)

女頃し屋「じゃ、あなたはそこにいて。あたし一人でやるつもりだけど、もしもって時は出てきて!」

男「アイアイサー!」

女頃し屋「よ~し、この仕事を成功させて絶対名を上げてやる!」

男(来ちゃダメ~、政治家さん! 逃げてーっ!)

38: 2017/11/28(火) 02:03:30.192 ID:Mn/lQ/7e0
スタスタ…




男「誰か来た……?」

女頃し屋「うん、時間通り」

男(だけど、ずいぶん若くないか? そもそもジョギングしてないし……)

39: 2017/11/28(火) 02:07:51.285 ID:Mn/lQ/7e0
ヒットマン「そこに隠れてるんだろ。出てこいよ」



女頃し屋(え!?)

男「な、なんかヤバそうな奴が来たんですけど……どう見ても政治家には見えない感じの……」

女頃し屋(なんなのよ、誰なのよアイツ!?)

男「あ、あのぉ~……依頼人に、報・連・相した方が……」

女頃し屋「いわれなくてもそうするわよ!」

41: 2017/11/28(火) 02:12:21.541 ID:Mn/lQ/7e0
依頼人『ん、なんだ? 話が違う?』

依頼人『ハハハ、大物政治家頃しなんて大仕事を君のような小娘に依頼するわけなかろう』

依頼人『実は私が本当に依頼したのはそちらにいるヒットマンなのだが』

依頼人『彼は少々ブランクがあって、久しぶりに実戦の勘を取り戻したいというのでね』

依頼人『ちょうどいい準備運動になりそうな君に嘘の依頼をさせてもらったわけだ!』

依頼人『というわけだ。安心して彼に殺されてくれたまえ』

女頃し屋「なによそれぇ!」

女頃し屋「あんた、あたしが生き残ったら絶対許さないんだから!」

依頼人『ハッハッハ、大丈夫』

依頼人『君が生き残る確率はゼロだ』

42: 2017/11/28(火) 02:15:08.618 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「うう……こんな、こんなことって……」

男「ようするに……初仕事でハメられちゃったってこと?」

女頃し屋「……そういうことよ!」

男「どうすんの!? アイツ、メチャクチャ強そうだよ!?」

女頃し屋「こうなったら覚悟を決めなきゃ! やるしかないわ!」ダッ

男「ああっ!」

44: 2017/11/28(火) 02:18:58.507 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「あんたなんかに殺されてたまるか!」

ヒットマン「フッ、女の頃し屋だったか。いいウォーミングアップになりそうだ」


パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!

パンパンッ! パンッ! パンパン! パンッ!



男「ひえええええっ……!」

男(本格的に撃ち合いが始まったぁ~~~~~!!!)

46: 2017/11/28(火) 02:21:14.478 ID:Mn/lQ/7e0
ヒットマン「やるじゃねえか、お嬢さん」パンッパンッ

女頃し屋「なんて動きなの……!」パンッパンッ





男(一見互角に撃ち合ってるようだけど……素人目にも分かる)

男(彼女は完全に遊ばれてる……!)

男(敵は彼女をいつでも殺せるけど、この戦いは練習みたいなもんだからわざと長引かせてるんだ……)

47: 2017/11/28(火) 02:24:21.513 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「あっ!」カチカチッ

ヒットマン「メチャクチャに撃ちまくるからそうなるんだ。ほとんどド素人だな」

ヒットマン「さて、そろそろトドメを刺すか。一発で脳天撃ち抜いてやる」

女頃し屋「くっ……!」




男(ま、まずい……彼女が殺されてしまう……!)

男(どうしよう、どうしよう……!?)

男(助けてあげたいけど、俺にできることなんて……)

50: 2017/11/28(火) 02:28:18.635 ID:Mn/lQ/7e0
男(いや、待てよ……)

男(ヒットマンの発砲数は覚えてる)

男(あのヒットマンの銃なら、ヤツもあと一発で弾切れになるはず!)

男(だけど経験豊富っぽい頃し屋が、なんでわざわざそんなことを……!?)

男(きっとアイツは……実戦の勘を取り戻すため“残り一発で仕留める”ってのをやりたいんだろう)

男(だったら、その一発さえ妨害できれば……! ヤツも丸腰同然になる!)

55: 2017/11/28(火) 02:33:31.697 ID:Mn/lQ/7e0
ヒットマン「氏ね!」グッ…

女頃し屋「くうっ!」

男「おい」ザッ

ヒットマン「!?」

男「安全装置が外れてるぜ」

ヒットマン「は?」パンッ

ヒットマン「あ」

ヒットマン(し、しまった!)

ヒットマン(突然出てきたあの男がわけ分からんこというから、とんでもない方向に撃っちまった!)

62: 2017/11/28(火) 02:36:40.790
ポンコツVSポンコツ

63: 2017/11/28(火) 02:40:11.602 ID:Mn/lQ/7e0
ヒットマン「なんだお前は!?」

男「ふっ、俺は頃し屋さ。しかもベテランのな……」

ヒットマン「んなわけねえだろう! 俺には同業者のニオイってのが分かるんだよ!」

男「すみません嘘つきました! 私はしがないサラリーマンでございます! 土下座しますです!」ガバッ

女頃し屋「えっ……!」

ヒットマン「素人の気配に気づかない上に邪魔されるとは……俺もサビついたもんだな」

ヒットマン「さっさと弾補充して頃しちまうのもいいが……邪魔をした罰だ!」

男「なるべく楽に頃して下さい!」

ヒットマン「てめえはなぶり頃しにしてやる!」

男「いやぁぁぁ! も、申し訳ありま――」

ドカッ! バキッ! ドカッ! ドゴッ! ガッ!

男「ぎゃあああああっ……!!!」

64: 2017/11/28(火) 02:44:42.415 ID:Mn/lQ/7e0
ヒットマン「お嬢さん、助けに入ってもいいんだぜ?」チラッ

女頃し屋「!」

ヒットマン「もっとも新米のお嬢さんは予備の弾丸なんて準備してねえだろうし」

ヒットマン「殴りかかってきても結果は見えてるがな!」

女頃し屋「くっ!」

ヒットマン「このクソ素人が! 楽には氏なさねえぞ!」

ヒットマン「オラッ! 俺の蹴りは重いだろうが! 俺は本物の頃し屋だからなぁ!」

バキッ! ガッ! ゴッ!

男「がはっ……!」

67: 2017/11/28(火) 02:47:37.058 ID:Mn/lQ/7e0
ドカッ! ガッ! ガスッ!

男(ん、“重い”……!?)

女頃し屋(ん、“本物”……!?)

男「――!」ハッ

女頃し屋「――!」ハッ

男(そうだ、あの時!)

女頃し屋(そう、あの時!)

男(俺はあの子から、一発だけ弾丸をもらってる!)

女頃し屋(あたしはあの人に、一発だけ弾丸を渡してる!)

男「それえっ!」ポイッ

女頃し屋「ナイスパス!」パシッ

ヒットマン「なにぃ!?」

69: 2017/11/28(火) 02:51:20.191 ID:Mn/lQ/7e0
ヒットマン「し、しまった!」

女頃し屋(この距離ならいける!)

女頃し屋「この一発は……絶対外さない!」


パァンッ!




ヒットマン「ぐっ!?」

ヒットマン「はぁぁぁぁぁ……」ドサッ…

72: 2017/11/28(火) 02:55:36.716 ID:Mn/lQ/7e0
男「ぐうっ……げほっ、げほっ……」

女頃し屋「大丈夫?」

男「大丈夫じゃないけど……なんとか……」

男「それよりあのヒットマンは……頃したのか?」

女頃し屋「失神してるけど生きてはいるみたい……急所を外しちゃった」

女頃し屋「やっぱりあたしってダメね……。まんまと依頼人に騙されて、戦った相手も殺せず……」

男「そんなこと……ないよ」

男「頃しをしなくて……済んだじゃないか……」

74: 2017/11/28(火) 03:00:14.442 ID:Mn/lQ/7e0
男「俺の正体はさっきいった通りだけど……」

女頃し屋「……」

男「君も今ならまだ引き返せる。足を洗わないか?」

女頃し屋「でも、あたし……!」

女頃し屋「頃しはしてないとはいえ、頃し屋を名乗って依頼まで……!」

男「今までの君は安全装置が外れてたんだけなんだよ」

男「これからは……俺が君の安全装置になってみせる!」

女頃し屋「なんかイマイチよく分からないんだけど……」

男(極上の頃し文句のつもりだったのに)

女頃し屋「……でも、なってくれるっていうんなら、お願いします」

男「よろしく!」

79: 2017/11/28(火) 03:04:58.485 ID:Mn/lQ/7e0
男「あのヒットマンは縛って通報しておけば捕まるだろうし……」

男「あとは……」

女頃し屋「うん」コクッ

女頃し屋「もしもし」

依頼人『え!? なんでお前が生きてるんだ!?』

女頃し屋「この通り、生き残っちゃったから、後は分かるよね?」

女頃し屋「いつになるか分からないけど、必ず報復するからね~! じゃあね~!」

依頼人『ま、待って下さい! 許して下さい! お願いしま……』

ピッ

男「これで依頼人は一生君の影にビクついて生きてくんだろうな!」

女頃し屋「いい気味!」

80: 2017/11/28(火) 03:05:39.616
依頼人小物すぎワロタ

82: 2017/11/28(火) 03:08:45.607 ID:Mn/lQ/7e0
女頃し屋「足を洗ったはいいけど、これからどうしようかな~」

男「やることないなら、俺の仕事を手伝わないか?」

男「今、会社からオリジナル銃を作れって、プロジェクトのリーダーを任されててね」

男「もちろん本物を作るわけじゃないけど、元頃し屋の視点からも意見を聞きたいんだよ」

女頃し屋「いいわ、手伝ってあげる!」





―おわり―

81: 2017/11/28(火) 03:08:03.066
起承転結が美しい

83: 2017/11/28(火) 03:10:13.074
乙!面白かった

引用元: 男「お嬢さん、安全装置が外れてるぜ」女殺し屋「えっ!?」