1: 2011/08/10(水) 22:25:44.04
ガチャ ポフッ

マミ「はぁ……疲れたぁ」

マミ(もう、このまま寝てしまいたい)

マミ(仕事に行って、残業して、それから魔女退治だなんて)

マミ「はぁ~、中学校のころは良かったなぁー」

マミ(キュゥべぇも、いつの間にかいなくなっちゃった)

マミ(友達、作らなかったし、どうせ遊ぶ暇なんてないけど……)

マミ「せめてお化粧くらいは落とさないと……」モソッ

19: 2011/08/10(水) 23:33:17.42 ID:t9UOL4h+0
マミ「……そういえば職場で話題のドラマが今日ね」

ピッ

マミ「……あら? この女優さんって……鹿目さん?」

TV『―――――!』

マミ「すごい……これがあの鹿目さん……」

 いつの間にかこんなに綺麗になって……。

 それに比べて私は……はぁ……」

ピッ プツン

マミ「……元気にしてるかしら……。 って、ドラマ出てるのに元気よねあはは……。

 ……久しぶりに電話してみようかしら。 番号変わってないといいなぁ……」

22: 2011/08/10(水) 23:38:43.62 ID:t9UOL4h+0
……プルルッ

マミ(! かかった! かかったけど……い、いきなり電話しても良かったのかしら)

カチャッ

マミ(あっ)

?『もしもーし』

マミ「あ、か、鹿目さん?」

まどか『はい、鹿目まどかですよー? ウェヒヒ、お久しぶりですマミさん!』

マミ「ひ、久しぶりね!」

まどか『本当に、あはは。 10年……以上ですよね! びっくりしました!』

マミ「そうね! えっと、その……」

まどか『はい?』

マミ「そう! テレビをね、すっごく久しぶりにみたら鹿目さんが映ってて!」

まどか『えぇーっ!? い、今ですか……』

マミ「え、えぇ、今なのよ……」

28: 2011/08/10(水) 23:45:53.74 ID:t9UOL4h+0
まどか『わたしがデビューしたのもう12年前ですよ……?』

マミ「え?」

まどか『マミさんがそんなに芸能に疎いとは思ってませんでした!』

マミ「あはは……そういえば、全然そういうの見なくなったわねぇ」

まどか『見なくなったわねーって、何年見てないんですかあはは』

マミ「18年前の雑誌がまだテーブルに乗ってるわ……」

まどか『うそだぁーあはは。 ところで、テレビみて電話くれたってことはもちろんアレですよね?』

マミ「え、えっと?」

まどか『ぁ、えっと、このドラマ主演なんですよ!』

マミ「あぁ! お、おめでとうございます」

まどか『ありがとうございます。 ティヒヒ』

マミ「本当にすごいわ……」

まどか『マミさんに褒めてもらえるなんて嬉しいです!』

31: 2011/08/10(水) 23:51:03.53 ID:t9UOL4h+0
マミ「そんな、今の私なんて」

まどか『マミさんはきっといつまでもマミさんですよ!』

マミ「うふふ、ほんと、鹿目さんのがよっぽど……」

まどか『そだ! 今度の週末マミさんの家行ってもいいですか?』

マミ「えっ?」

まどか『オフの日なんで! まだあのマンションに住んでます?』

マミ「え、えぇ。 住んでるけど……」

まどか『あ、都合悪いですか? ごめんなさい一方的に進めちゃって』

マミ「ううん、大丈夫、私も休みだから! うん、頑張って掃除しておくわ!」

まどか『ウェヒヒ、ありがとうございます! あ、さやかちゃんも誘いますねー』

マミ「美樹さんも?」

まどか『だめでした?』

マミ「いいえ、大丈夫よ」

まどか『やった! それじゃ、えっと、もう少し詳しい時間とかわかったらまた電話しますね!』

マミ「えぇ、わかったわ」

34: 2011/08/10(水) 23:55:40.55 ID:t9UOL4h+0
マミ「それじゃ……」

まどか『はいっ! 久しぶりにマミさんと喋れて楽しかったです!』

マミ「こっちこそ、突然電話してごめんなさいね」

まどか『ウェヒヒ、案外暇な時間もあるので大丈夫ですよ!』

マミ「じゃあ、週末楽しみにしてるわね」

まどか『お世話になります! おやすみなさいー』

マミ「はい、おやすみなさい……」

ピッ……

マミ「……ふぅ。 鹿目さんは変わらないわね……。

 それにしても、この家片付くかしら……。

 一体いつから掃除してないのよ私……!

 でも、ふふっ、楽しみね……! がんばって片付けないと!」

37: 2011/08/11(木) 00:00:03.60
ピッ

まどか「……」

ピッピッ……プルルッ

さやか『はーいさやかちゃんでーす』

まどか「さやかちゃん……」

さやか『ん? どうしたの』

まどか「マミさんから電話があってね!」

さやか『おぉー! マミさん、懐かしい響き……。 で、どうしたの?』

まどか「今週末にマミさんの家に行くことになったから、さやかちゃんも行こうよ!」

さやか『おー、今月は日本に居るから大丈夫だよーって知ってるよね』

まどか「ウェヒヒ、だから誘ったんだよ!」

さやか『マミさんかぁ。 懐かしいなぁ。 元気そうだった?』

まどか「ちょっと元気なかったかも……?」

さやか『そっかぁ。 じゃあ頑張って励ましてあげないとね!』

まどか「うん。 でも……」

44: 2011/08/11(木) 00:08:02.34
さやか『えぇっ、どうしてそんな嘘を……』

まどか「マミさんちゃんとテレビ見てなかったみたいだし、ちょっと見栄を……ティヒヒ」

さやか『だからって主演なんて……』

まどか「話し合わせてくれると嬉しいなって!」

さやか『うーん、わかった! まーでも、正直に言うならその時はフォローするから!』

まどか「うん、ありがとうさやかちゃん」

さやか『でも、うーん、まぁ……』

まどか「あはは……ごめんね」

さやか『あぁもう、わかったわかった。 猫かぶりならまかせてよ!』

まどか「さやかちゃんの演技頼りないなぁ」

さやか『まどかは女優様だもんねぇ』

まどか「あはは……はぁ……」

さやか『ご、ごめん』

まどか「ううん、えっと、時間は何時ぐらいがいいかな――」

52: 2011/08/11(木) 00:17:21.36 ID:RLkW4kZP0
――

マミ(……この書類いつまでだっけ……)

OL.A「昨日見た?」

OL.B「見た見た。 主演の三国さん綺麗だったよねぇ」

マミ(……ん?)

OL.A「うんうん、あれで29なんて信じられないよねー」

OL.B「若く見える、のにもっと大人の女性って感じの雰囲気も持ってて」

マミ「あの、主演どなたですって?」

OL.A「え? あのテレビに疎いことで有名だった巴さんが主演誰だって……」

OL.B「ひゃー、槍が降るわ!」

マミ「ちょ、ちょっと」

OL.A「うふふ、ごめんごめん。 主演は三国織莉子さんよ」

OL.B「ちなみに本名は三が美しいって字なんだってー」

マミ「そ、そうなの……。 えっと、鹿目まどかって人は……?」

OL.A「かなめまど……あぁー! 円かなめさんね。 あの人は――」

57: 2011/08/11(木) 00:24:41.26 ID:RLkW4kZP0
―― 週末 ――

マミ(そ、そろそろかしらね。 紅茶も新しく買ったし……、

 ケーキも大丈夫……。

 大丈夫……大丈夫……うん……)

ピンポーン

マミ「! はーい。 うふふ、いらっしゃい」

まどか「ぇへへ、おじゃましまーす」

さやか「しまーす」

マミ「美樹さん……久しぶりねぇ」

さやか「そうですね……グスッ」

マミ「え、え?」

さやか「いやー、あんまりに懐かしくて涙が」

まどか「さやかちゃんったら」

マミ「ふふふ、さ、上がって?」

60: 2011/08/11(木) 00:30:39.13 ID:RLkW4kZP0
さやか「おぉ……マミさんの家だ……」

マミ「えぇ、私の家よ」

まどか「ま、マミさん、本当に雑誌が残って……」

マミ「片付けようかと思ったけど、せっかくだから、ね?」

さやか「あはは。 やだ、本当に泣きそう」

まどか「さ、さやかちゃん……」

さやか「この感覚はまるでベートーヴェンの田園第二楽章小川のほとりの……」

マミ「え、えーと……?」

まどか「ほらさやかちゃん、マミさん困ってるよ!」

さやか「はっ、すみません!」

マミ「ふふふ……。 お茶、入れてくるわね」

まどか「マミさんの紅茶……」

さやか「それはまるで……」

まどか「もういいよ!」

さやか「てへ」

64: 2011/08/11(木) 00:38:03.27 ID:RLkW4kZP0
まどか「はっきりとは覚えてないけど、なんだかそのままって感じだね」

さやか「童心にかえるねぇ」

まどか「童心……ってマミさんまだ魔法少女やってるのかな……」

さやか「あぁ……どうなんだろうね」

まどか「わたしたちは結局、ならなかったし……」

さやか「なってたらと思うと、ぞっとするね」

まどか「うん。 マミさんが色々考えさせてくれて」

さやか「悩んでる間にいつの間にかキュゥべえが居なくなって……」

マミ「おまたせー」

まどか「わー、ケーキもあるなんて!」

さやか「きっとめちゃうまなんだろうなぁ!」

マミ「ふふふ、ほんと懐かしいわね……」

65: 2011/08/11(木) 00:43:16.10 ID:RLkW4kZP0
マミ「ところで、美樹さんは……」

さやか「マミさん!」

マミ「はい?」

さやか「じゃーん」ドヤッ

マミ「指輪? あ、結婚指輪!?」

さやか「ですよー。 今は上条さやかです!」

マミ「け、結婚……。 おめでとう……! っていつしたのかしら」

さやか「7年前ですね。 マミさんにも招待状送ったのに……」

マミ「えっ……」

さやか「え……」

マミ「ご、ごめんなさい」

さやか「あはは、いいですよー」

マミ「じゃあ、上条さんって読んだほうがいいのかしら」

さやか「いやー、マミさんには美樹さんって呼んでもらいたいです!」

マミ「そう? じゃあ、美樹さん……」

71: 2011/08/11(木) 00:49:42.99 ID:RLkW4kZP0
マミ「美樹さんは今何を?」

さやか「専業主婦ですねぇ……」

まどか「またまた謙遜しちゃって」

マミ「?」

まどか「さやかちゃんの旦那さんって、あの上条恭介ですよ?」

マミ「えっと、どなたかしら……?」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「予想通りだね」

マミ「えっ?」

さやか「上条恭介といったら、知らない人はいないぐらいの世界的作曲家、指揮者ですよ!

 ってこれあたしが言うの?!」

まどか「ウェヒヒ」

マミ「ぜ、全然知らない……わ……」


75: 2011/08/11(木) 00:57:10.55 ID:RLkW4kZP0
さやか「まぁ、マミさんは大女優まどかの存在も知らなかったぐらいだし……」

まどか「もう少し世間に目を向けたほうがいいですよ!」

マミ「はい……」

さやか「まどかがマミさんに説教する日がこようとは……」

まどか「わたしもびっくりだよ……」

マミ「今度からもう少しニュースとか見るわ……!」

さやか「……その、あんまり世間がどうとかわからないのって、魔法少女やってるから……とか?」

マミ「! そ、そうね……。 30にもなって魔法少女ってのも、笑っちゃうわよね」

まどか「マミさんすごいです……」

マミ「仕事終わって、魔女倒して、家につくとすぐに寝ちゃって、おきてまた仕事」

さやか「うぅ、すごい大変そう……」

マミ「でも、今生きてられるのはこれのおかげだから……。

 あの時で人生終わってたって思うと、こんな今でも悪くないと思うの」

まどか「マミさん……」

81: 2011/08/11(木) 01:03:56.26 ID:RLkW4kZP0
マミ「それにしても、大女優と……セレブ? かしら?

 そんな住む世界の違う二人とこうやって喋ってるなんて、なんだか不思議ね」

さやか「いやぁ……、マミさんがあの時引き止めてくれなかったらきっと」

まどか「こんな人生送れてないと思いますし……」

さやか「マミさんにはどんな立場になっても頭上がりませんよ!」

マミ「ううん、私、そんなこと言われるほど強い人じゃないから……」

まどか「そんなことないと思います! マミさんはずっとわたしたちの頼れる先輩なんですから!」

マミ「鹿目さん……、ふふ、ありがとう……」

ピリリリッ

さやか「おっと、すみません、ちょっと電話……」

86: 2011/08/11(木) 01:13:01.89 ID:RLkW4kZP0
マミ「……そういえば、暁美さんや佐倉さんはどうしてるのかしら」

まどか「ほむらちゃんはカウンセラーやってますよー」

マミ「カウンセラー?」

さやか(うん、うん。……は、奥の……)

まどか「自分が入院してたときに色々してくれたカウンセラーの先生が素敵だったって」

マミ「そうなの……って、もしかして駅前の暁心療内科って」

さやか(はい…ごめ……な…い。 はい)ピッ

まどか「そうそこです! でも今は学校でカウンセリングしてるとか……言ってたような?」

さやか「ごめーん。 何の話?」

まどか「ほむらちゃん達は今どうしてるかなーって」

さやか「あぁー。 ほむらも頑張ってるねぇ」

マミ「電話はよかったの?」

さやか「え、あ、はい。 急ぐ用事でもなかったので大丈夫でした!」

89: 2011/08/11(木) 01:18:58.71 ID:RLkW4kZP0
マミ「暁美さんも、魔法少女よね……。 それなのにお医者さんだなんて」

まどか「やりがいあって楽しいって言ってますよ」

マミ「やり甲斐ね……。 私の職場とは程遠い言葉ねぇ」

さやか「ほむらはああ見えて溜め込むタイプだからちょっと心配よね」

まどか「わたしが話し相手になってあげてるから大丈夫!」

マミ「ふふ、まだ鹿目さんにべったりなのね」

まどか「えへへ、わたしもたまにお世話になってるし、お返しです」

さやか「まどかは今でも優しいねぇ。 いい子いい子」

まどか「そ、そんな年じゃないよもぉ!」

さやか「……杏子はどうしてるんだろうなぁ」

まどか「うーん、杏子ちゃんはさっぱりだよね」

マミ「徒歩で世界一周! とかしてそうね……」

さやか「あはは、してそう!」

まどか「それで、いつかひょっこり現れてくれそう……!」

98: 2011/08/11(木) 01:31:13.70 ID:RLkW4kZP0
さやか「で、その時仁美が……」

マミ「ふふ、美樹さんらしい……」

まどか「あはは……。 あ、もうこんな時間」

さやか「ありゃー残念! もっとマミさん宅堪能したかったのに!」

マミ「ふふっ。 二人とも忙しいものね」

まどか「ぇへへ」

マミ「美樹さんはさておき」

さやか「ちょ、ちょっと酷いー!」

マミ「鹿目さんは女優さんですものね……!」

まどか「……マミさん」

マミ「……何かしら? また良かったら、是非来」

まどか「……知ってるんですよね?」

101: 2011/08/11(木) 01:39:39.97 ID:RLkW4kZP0
マミ「何のことかしら」

まどか「……とぼけてもわかりますよ。 そんな素人演技。

 わたし……あはは、これでも女優、ですから……」

マミ「そう……。 でも本当に何のことかわからないのよ?」

まどか「……そう、ですか。 ウェヒヒ、ごめんなさい、変な事言って」

さやか「全くまどかったら何わけの分からないこといってるのよー」

まどか「……さやかちゃんフォロー下手だね」

マミ「何もわからない私からみてもちょっと酷いわね」

さやか「そんな……渾身の出来だったのに……」

まどか「あはは」

マミ「ふふふ」

103: 2011/08/11(木) 01:44:20.97 ID:RLkW4kZP0
さやか「それじゃ、えーと、お世話になりました」

まどか「さやかちゃんそれだとなんだか変だよ……!」

マミ「また、よかったら来てちょうだいね?」

まどか「はい!」

さやか「またケーキ食べに来ます!」

マミ「ふふ、昔に戻ったみたい」

まどか「ぇへへ」

ピリリリッ

さやか「こ、このタイミングで電話ぁ!? ごめん! 一旦外でるね!」

ガチャッ バタン

まどか「あらら……」

マミ「ほんと、大変ねぇ……」

108: 2011/08/11(木) 01:48:59.64 ID:RLkW4kZP0
まどか「……マミさん」

マミ「いいのよ、鹿目さん」

まどか「ごめんなさい……」

マミ「また、いつでもいらっしゃい? おいしい紅茶とケーキ、用意しておくから」

まどか「……はい。 ありがとう、ございます……」

マミ「そうね、今度は暁美さんも連れてくるといいわ」

まどか「あはは、はい。 引きずってでも連れてきます!」

マミ「そ、そこまでして連れてこなくても……ふふっ」

111: 2011/08/11(木) 01:53:25.59 ID:RLkW4kZP0
ガチャッ

さやか「ごめーん」

まどか「電話大丈夫なの?」

さやか「う、うーん、ちょっと急がないと、かも」

マミ「あら、それじゃ、美樹さんも良かったらまた来てね?」

さやか「はい! って言っても結構世界股にかけちゃってるんで」

マミ「あっ、そうね、世界的ですものね」

さやか「英語もしゃべれますよ」

まどか「それは初耳……!」

さやか「でぃす いず あ どーあ」

マミ「……」

まどか「……」

115: 2011/08/11(木) 02:00:25.71 ID:RLkW4kZP0
まどか「えっと、急ぐの?」

さやか「そうだった。 マミさん、今日はありがとうございました」

マミ「いえいえ。 すごく、楽しかったわ」

まどか「わたしも楽しかったです!」

さやか「いわずもがな!」

マミ「ふふ、じゃあ……また、ね?」

まどか「はい! また……!」

さやか「マミさんも頑張ってくださいー」

マミ「ありがとう」

パタン

マミ「……本当に、本当に楽しかったわ……。

 ぁはは……歳ね……涙腺が緩く……。 グスッ……」

120: 2011/08/11(木) 02:09:30.66 ID:RLkW4kZP0
まどか「楽しかったー!」

さやか「うんうん」

まどか「また行こうね?」

さやか「もちろん! でも次日本来るのいつかなぁ……」

まどか「日帰りでがんばろうよ」

さやか「そんな無茶な」

まどか「ウェヒヒ」

さやか「あはは。 それじゃー、まどかも元気でね」

まどか「うん。 ……さやかちゃんも」

さやか「おう。 またねー」

まどか「またね」

さやか「……Si prega di Aiuto」

まどか「? さやかちゃん何か言った?」

さやか「へ? 何も言ってないよ」

まどか「……そう」

132: 2011/08/11(木) 02:22:12.21 ID:RLkW4kZP0
――

さやか「ただいまー……」

恭介「さやか、どこへ行っていたんだ?」

さやか「はぁ……恭介また飲んだでしょ。 お酒はダメだって言って……」

恭介「どこへ行っていたと聞いてるんだ!」

さやか「友達の家だって、前から言ってるじゃん。 何度も電話かけてきて……ほんとにもう!」

恭介「そんな事言って、本当は他の男の所に行ってたんじゃないのか?」

さやか「行ってません」

恭介「嘘だ!」

ガシャン!

さやか「っ……。 行ってないって言ってるでしょ!」

138: 2011/08/11(木) 02:26:24.16 ID:RLkW4kZP0
恭介「嘘だ!」

ガンッ

さやか「ぐっ……」

恭介「腕も足も」

ガンッ

恭介「動かない僕をおいて」

ガンッ

恭介「出ていくつもりだったんだろ!」

ガンッ

さやか「そんな……事……」

恭介「嘘だ!」

ガンッ

恭介「嘘だ!」

ガンッ――

147: 2011/08/11(木) 02:32:55.37 ID:RLkW4kZP0
――

恭介「……さや、か……?」

さやか「……」

恭介「さやか! どうして、あぁ僕が……また……あぁ……。

 さやか……起きてくれ、さやか……さやか……!」

さやか「……だい……じょうぶ……」

恭介「さやか!」

さやか「恭介おいて……一人に、し……たり……しないから……」

恭介「ごめん……さやか、ごめん……ごめんよ……」

さやか(そうだよ……恭介は……あたしが……いない、と――)

207: 2011/08/11(木) 07:43:46.55 ID:RLkW4kZP0
――

まどか「ただいまー。 おかえりー……なんて。

 はぁ、今日は楽しかったなぁー……」

チカッチカッ

まどか「留守電? 珍しいなぁ」

ほむら『ほむらよ。 明日は検診だけど覚えてるかしら。

 前回すっぽかしたんだから明日は来なさいよ?』

まどか「忘れてたよ! 今日じゃなくてよかったぁ」

ほむら『――時ぐらいに、いつも通りにね。 それじゃ』

ガチャッ ヨウケンノサイセイガオワリマシタ

まどか「ふわー。 ねむ……。 もう今日は寝ちゃおー……」

ボフッ

まどか「……ぁーお化粧ぐらいは落とそう」モソッ

238: 2011/08/11(木) 10:48:12.75 ID:RLkW4kZP0
ほむら「さて、前回はどうして忘れてたのかしら?」

まどか「ウェヒヒ、なんでだろうね!」

ほむら「はぁ……自分から見てほしいって言っておいて忘れるなんて……」

まどか「うぅ、ごめんね……」

ほむら「ま、良いわ。 それで、最近の調子はどう?」

まどか「えっとねー、昨日マミさんの家に行ったんだよ!」

ほむら「へぇ、珍しいわね」

まどか「マミさん、わたしが俳優やってるのついこの間知ったって」

ほむら「マミらしいわね……」

まどか「それで電話くれてー。 さやかちゃんと一緒に……」

247: 2011/08/11(木) 11:05:45.10 ID:RLkW4kZP0
まどか「今度はほむらちゃんも連れて行くって約束したから、行こうね?」

ほむら「そうね、うまく時間が合えば行ってみたいわ」

まどか「ぇへへ、楽しみだなぁ」

ほむら「そうね……」

まどか「マミさん、楽しかったとか懐かしいーとか言ってくれて……。

 わたし、ちゃんと演技出来てたってことだよね?」

ほむら「まどか。 いつも言っているけれど、あなたは演技なんてしてないわ」

まどか「……」

ほむら「私もさやかや仁美も、あなたのその今の性格しか見たことないし」

まどか「でも……」

ほむら「今が本当に演技だって言うのなら、素を見せてもらえるかしら?」

まどか「そ、それは……」

252: 2011/08/11(木) 11:13:25.57 ID:RLkW4kZP0
ほむら「……大丈夫よまどか。 あなたは、あなただから」

まどか「うん……」

ほむら「誰もあなたの中に住んでたりなんかしないし、ちゃんと自分を持ってる」

まどか「……うん」

ほむら「不安ならまた来ればいいわ。 私じゃなくても、さやかでも仁美でも……、マミでも。

 きっと、いえ、必ず受け止めてくれるわ」

まどか「ぇへへ、ありがとう……」

ほむら「焦らなくてもいいのよ。 ゆっくり、自分のペースで、ね?」

まどか「うん……!」

258: 2011/08/11(木) 11:24:23.75 ID:RLkW4kZP0
ほむら「じゃ、また1ヶ月先に予約入れておくわね」

まどか「うん。 あー……ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」

ほむら「何かしら?」

まどか「じ、ぷれーが、でぃ、あいゆーと、って何かな?」

ほむら「何それ」

まどか「昨日さやかちゃんと分かれる時にさやかちゃんが言ってたんだー」

ほむら「さやかがねぇ……。 ということはイタリア語かしら……」

まどか「どうして?」

ほむら「音楽用語はイタリア語が多いのよ?」

まどか「そうなんだー」

ほむら「発音からなんとなくアルファベットに変えると……Si prega di aiutoかしら?」

まどか「なんだかイタリアっぽいね!」

ほむら「い、イタリアっぽいって何よ……」

264: 2011/08/11(木) 11:30:41.38 ID:RLkW4kZP0
ほむら「イタリア語といえばマミね」

まどか「そうなの?」

ほむら「ティロ・フィナーレ! ってあれイタリア語だったと思うんだけど……」

まどか「ティロ・フィナーレ……あはは」

ほむら「ふふっ、不滅の言葉よね」

まどか「あはは。 よーし、マミさんに聞いてみよう……!」

ほむら「それがいいわね。 ドイツ語ならわかったのだけど」

まどか「皆すごいね……」

ほむら「イタリア語知らないのになんて言ったか覚えてるまどかもすごいわ」

まどか「ぇへへ、職業柄……かな?」

272: 2011/08/11(木) 11:38:45.16 ID:RLkW4kZP0
――

マミ(この書類、なんでまだここにあるのかしら……)

ヴーッヴーッ

マミ(メール……鹿目さんからだわ!)

from:鹿目さん
Subject:ティロ・フィナーレ!

マミ「ぶっ」

OL.A「巴さんどうしたの!?」

マミ「えっ、な、なんでもないわ! ちょっとむせただけで」

マミ(な、なんて件名で送ってくるのよあの子……!)

本文:仕事中、ですよね? ごめんなさい!
 「Si prega di aiuto.」ってどういう意味かわかりますか?
 たぶんイタリア語だと思うんですけど……(゜.゜;

マミ(あぁ、だからティロ・フィナーレ、ね……。 最近叫んでないなぁ。

 今日は久々にティロってみようかしら……!)

278: 2011/08/11(木) 11:45:08.15 ID:RLkW4kZP0
――

ほむら「その件名は酷いんじゃない?」

まどか「ウェヒヒ、あ、返事きたー」

Subject:アルティマシュート!

ほむら「ぶっ」

まどか「マミさん……!」

マミ『辞書ひかないと分からないの、ごめんなさいね?

 帰ったら調べてみるから、また後でメール送ります』

まどか「マミさんやっぱりティロ・フィナーレしかイタリア語知らないんじゃ……」

ほむら「そ、そんなことないわ……たぶん」

まどか「マミさんからイタリア成分取ったらドリルしか残らないよ……」

ほむら「えっ、まだドリルなの?」

まどか「ううん、さすがにもう下ろしてたよ!」

288: 2011/08/11(木) 11:52:23.08 ID:RLkW4kZP0

         ──   ┌─┐  ─┐  ─┼-  │   / /
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   ,//    / /     ,   |ヽ、     ヽ  .!  .! ! ___,__    i'i'´ .! ト 、
    /    /  l     /   / ヽ\ _,   ヽ  |   | V ,  ` ゝ ,/l   |i ヽ \
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   ノr \r,.|  |    |  /'´      ゝ,_,-r-、 | ,|  | /  //´  /  ,ノ    ̄
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      X! |  .!   |l レ__       ゝ-''  / ,イ|   ! |   /__,/
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         ゝヽ ヽヽ| ヽ_-ソ   ,         / L__,r―'
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        r――-,/´         | |` ヽ  イi、ヽ_    `ヽ、//  //

289: 2011/08/11(木) 11:54:17.20 ID:RLkW4kZP0
マミ「えへへ、やっぱりもう恥ずかしいわね……」

マミ(でも楽しい! こんな気持ちで戦うのは久しぶり!)

マミ「もう何もこわ……これ以上先を言ってしまうと危険な気がするわ」

マミ(さぁ、早く帰って鹿目さんに返事しないと……!)

300: 2011/08/11(木) 12:09:25.94 ID:RLkW4kZP0
マミ『助けてとか、助けてほしいって意味になるみたいね』

まどか「えぇっ……」

マミ『あまり平和そうな意味じゃないから電話してみたけれど……何かあったの?』

まどか「実は、これ昨日さやかちゃんが言ってたんです……。 たぶん」

マミ『美樹さんが……。 えーと、たぶんっていうのは?』

まどか「私が聞いて覚えてたのを、ほむらちゃんに書き換えてもらったんですけど」

マミ『二人ともすごいわね……』

まどか「でも、意味聞いたら、聞き間違えだったんじゃないかなって……」

マミ『……私は美樹さんの最近全然知らないから……。 思い当たることとかないの?』

まどか「う、うーん……ちょっぴり……ありますけど……」

マミ『それならやっぱり……』

まどか「……わたし明日さやかちゃん訪ねてみます!」

マミ『……私も行くわ』

まどか「えっ、でも仕事は?」

マミ『ふふ、有給余ってるから大丈夫』

318: 2011/08/11(木) 12:23:31.09 ID:RLkW4kZP0
――

マミ「ここが美樹さんの家……」

まどか「いつ来てもおっきいなぁ……」

ほむら「正確には上条恭介の家だけれどね」

マミ「暁美さんも来たのね」

ほむら「まどかのあんな顔みて放っておける訳ないでしょ?」

マミ「ふふ、相変わらずね」

ほむら「あの頃より、かなり老けたけどね……」

マミ「そうね……老いたわね……」

まどか「お婆ちゃんだよね……」

?「……あのー……」

332: 2011/08/11(木) 12:37:23.29 ID:RLkW4kZP0
まどか「あっ、ゆまちゃん」

マミ「えーと……?」

ほむら「簡単にいえば上条家のメイド長よ」

マミ「め、メイド……」

ゆま「鹿目様、暁美様、巴様、今日はどのようなご用件で?」

まどか「もーそんなにかしこまらなくてもいいよー」

ゆま「そ、そう言われましても……」

ほむら「さやかは居るかしら?」

ゆま「ぁ、奥様は今ちょっと……」

インターホン『いいよ、通して』

ゆま「えっ、でも……」

インターホン『大丈夫』

まどか「……」

ゆま「……どうぞ。 ご案内します」

336: 2011/08/11(木) 12:47:06.79 ID:RLkW4kZP0
マミ「……奥様って」

まどか「あはは」

ほむら「さやかに一番似合わない呼び方ね」

マミ「中に入ってもやっぱり広いわね……」

まどか「わたしは何度か来てるからなんとなーくわかりますよ」

ほむら「住んでても迷いそうね、ゆま」

ゆま「うん、たまに……。 あっ、そんなことないです!」

まどか「昔みたいに普通に喋ってくれたらいいのにー」

ゆま「あの頃はまだ若かったんです……」

まどか「そうだよね、皆もうお年寄りだもんね……」

ほむら「見るも無残なお婆ちゃんですものね……」

ゆま「二人とも歳の割には若く見えますよ!」

まどか「歳の割には……」

ほむら「ゆま、あなたも油断してたらあっという間に30になってあそこのお婆ちゃんみたいになるのよ」

マミ「ちょっと!」

346: 2011/08/11(木) 12:56:39.91 ID:RLkW4kZP0
マミ「1歳違うだけなのに30代か20代かでこんなに扱いが違うなんて……」

ほむら「私とまどかはまだ20代なのよ。 若いの。 30代のマミとは違うのよ!」

まどか「ちょっとほむらちゃん。 ウェヒヒ」

ゆま「ついたよお婆ちゃん方」

マミ「ほら、二人がいじめるから拗ねてるじゃないこの子」

まどか「ウェヒヒ、ごめんねー」

ゆま「……奥様、お連れしました」

さやか『うん、ありがと。 入って』

ゆま「それでは、また後ほど」

ほむら「えぇ、案内ありがとう」

まどか「おじゃましまーす……」

378: 2011/08/11(木) 13:59:55.32 ID:RLkW4kZP0
さやか「ごめんね。 ドアまで出迎えに行くのが普通だけど今日はちょっと、動けなくて」

まどか「ううん……」

さやか「ま、座ってよ」

マミ「え、えぇ……」

さやか「想像以上だった?」

ほむら「そうね。 多少は予想していたけど……」

さやか「嬉しいよ、皆が来てくれて。 お茶も出せなくてごめんね……」

まどか「ううん、あんまり動かないで……」

さやか「動きたくても動けないんだってーあはは……はぁ……」

382: 2011/08/11(木) 14:07:40.46 ID:RLkW4kZP0
さやか「……酔うとね、ぶつんだよ。 木刀でこう、ガン、ガンって」

まどか「……」

さやか「木刀なんか振り回したら、上手くバランス取れないのに、必氏で、さ」

マミ「……」

さやか「でもすぐに冷めるんだ。 それですごく謝ってくるの」

ほむら「……」

さやか「で、あたしは許しちゃうわけだ」

まどか「そんなのを……前から……?」

さやか「うん。 昔からずっと。 中学生の時にも、CDプレイヤー叩き壊したこともあるし。

 昔から、たまにカッとなる時があるんだよ、あいつは……」

390: 2011/08/11(木) 14:14:18.77 ID:RLkW4kZP0
マミ「……助けて欲しいっていうのは、その……DV、から解放されたいってこと……なのかしら?」

さやか「たぶん、違う」

まどか「じゃあ……どうして……?」

さやか「あはは、ほんとどうして、あんなこと言ったんだろうね。

 ……あたしは悲劇のヒロインになりたかったのかもね。

 こんな歳で……あはは。 誰かに知ってもらいたかったのかな……」

まどか「……わたしが、恭介さん説得するよ!」

さやか「いいよ、まどか。 今のままでいいんだ……」

ほむら「……」

まどか「どうして……」

394: 2011/08/11(木) 14:19:29.49 ID:RLkW4kZP0
さやか「あたしさぁ……避けないんだよね。 ううん、避けられないんだ。

 一回でも避けたらそのままバランス崩してひっくり返って、

 あたしが手助けしないと起き上がれもしなくなるのに……」

まどか「……」

さやか「恭介はあたしがいないとダメなんだよ……。

 恭介を一人にはできない。 それはきっと、あたしも恭介がいないと……ダメってことなんだよ」

まどか「そんなの絶対……」

さやか「おかしいよね。 あはは、きっと狂ってるんだよ。 あたしらさ。

 うん、でも、ちょっと狂気があるほうが作曲家人生にも箔がつくってもんだよね」

まどか「……さやかちゃんわたし」

ほむら「まどか」

まどか「……」

398: 2011/08/11(木) 14:26:45.66 ID:RLkW4kZP0
ほむら「本当にいいのね?」

さやか「うん。 皆が聞いてくれてすごく心が軽くなったよ」

まどか「いつでも話聞くから、ね?」

さやか「ありがとうまどか」

マミ「私は……」

さやか「マミさん。 あんまり気にしないでください。 大丈夫ですから……」

マミ「……わかったわ。 頼りにならないかもしれないけど、何かあったらいつでも言ってね?」

さやか「はい、ありがとうございます」

まどか「それじゃ……その……体大事にしてね?」

さやか「うん。 またね」

ほむら「あぁ、これ渡しておくわ」

さやか「名刺?」

ほむら「えぇ、でもちょっと特別な、ね。

 受付でみせたら予約とか全部すっとばして私に会えるから」

さやか「うん、ありがとう……」

403: 2011/08/11(木) 14:33:44.77 ID:RLkW4kZP0
ゆま「……」

まどか「……」

マミ「……ゆまちゃんも、辛いわね」

ゆま「いえ……。 今日はありがとうございました」

ほむら「あぁ、あなたにも渡しておくわね、名刺」

ゆま「? ありがとうございます」

まどか「え?」

ほむら「ついでよ、ついで」

まどか「ゆまちゃんにもなにかあるのかと思ったよ……」

408: 2011/08/11(木) 14:43:28.77 ID:RLkW4kZP0
――

ほむら「……」

マミ「……」

まどか「……さやかちゃん……」

ほむら「……やっぱりね」

まどか「え?」

マミ「来ると思ったわ」

まどか「二人とも何を……」

ほむら「魔女よ」

マミ「こんな暗澹な雰囲気を出した美女が3人もいたら寄ってくるに決まってるわね」

まどか「……」

マミ「……えへ」

ほむら「恥ずかしいからやめなさい……」

412: 2011/08/11(木) 14:51:37.61 ID:RLkW4kZP0
ほむら「ほら、一般人のまどかもいるんだからさっさと倒すわよ」

マミ「そうね……」

まどか「久しぶりマミさんのステップが見れると思ったのに光っただけで変身しちゃった……。

 衣装も落ち着いたのに変わってるし……時間の流れこわいよぉ……」

マミ「ちょっと鹿目さん……」

ほむら「ティロ・フィナーレ」

まどか「ティロ・フィナーレ」

マミ「良いわよ、叫んであげるわよ! こうなったらやけよ!」

419: 2011/08/11(木) 14:55:08.88 ID:RLkW4kZP0
マミ「      ティロ・フィナーレ!

 ティロ・フィナーレ!         ティロ・フィナーレ!

             ティロ・フィナーレ!」 

ほむら「出番が無いわ……」

まどか「あはは……。 マミさん輝いてるね」

ほむら「そうね。 給料さえ入るならマミには最高の仕事でしょうね」

マミ「ふぅ。 ま、こんなもんね!」

ほむら「歳なんだから無理しちゃだめよ」

まどか「そうですよ。 腰とか大丈夫ですか?」

マミ「……」

424: 2011/08/11(木) 15:00:16.85 ID:RLkW4kZP0
――

マミ「ふぅ……。 ただいま」

マミ(……美樹さんも、鹿目さんもあんな辛い環境で……。

 それにくらべて私は……)

マミ「私って何なんだろう……はぁ」

マミ(このまま私は魔法少女を続けて、老婆になってもティロ・フィナーレ……。

 結婚とか……はぁ。 できるのかしら。 もう30よ私……)

マミ「……あなたのハートにティロ・フィナーレ」

マミ(……ばかっぽい。 もし結婚して、子供ができたら、子育てしながら魔法少女……?

 お、恐ろしすぎるわ……。 もし子供がが間違ってSG飲み込んだり……しないわよねさすがに)

マミ「……はぁ」

マミ(寝よう。 ティロ・おやすみーレ)

447: 2011/08/11(木) 15:51:56.18 ID:RLkW4kZP0
――

OL.A「円かなめさんはね、デビュー当時、もう10年ぐらい前? はすごかったんだよ」

OL.B「そうそう。 高校生であの演技力かぁー!って」

OL.A「でも最初の仕事が特徴的だったっていうか」

OL.B「円さんにぴったり過ぎたっていうか、ねぇ」

OL.A「演技が同じキャラに見えちゃうのよね」

OL.B「もちろん、ちゃんと幅はあるんだけど、デビュー当時が濃すぎてねぇ」

OL.A「結局アクが強いまま扱いづらい俳優になっちゃったのか」

OL.B「失速に失速を重ねて、今じゃほとんどテレビでは見ないよね」

OL.A「悪い噂は全然聞かないから、ファンはまだ多いらしいけど……」

456: 2011/08/11(木) 16:01:41.89 ID:RLkW4kZP0
OL.B「あーでもほら、一回自殺未遂してちょっと話題になったじゃん」

OL.A「あぁ、そういえばそういうこともあったね」

OL.B「そのあとはちょっと影がある俳優になって幾つかサスペンス系にもでてたけど」

OL.A「今じゃ全然だね……」

OL.B「ま、俳優なんてなるのに一握り、残るのも一握りだもん。 しょうがないよね」

OL.A「今回のも三国さんが円さんとすごく仲がいいから友情出演したような感じで」

OL.B「三国さんといえば、マネージャーの呉野キリコさんが徐々に株上がって――」

――

460: 2011/08/11(木) 16:06:18.75 ID:RLkW4kZP0
――

マミ(……鹿目さん……)

マミ「ん……もう朝…………?」

ピリリリッ ピリリリッ

マミ「はい、もしもし……」

上司『巴さん? どうしたの、もう13時だけど……何かあった?』

マミ「え? あっ!」

上司『……今からでもこれるなら来てもらいたいんだけど』

マミ「はい、すみません……急いで行きます、はい……失礼します……」

マミ(あぁ、なんてこと……。 私の首がティロ・フィナーる……)

465: 2011/08/11(木) 16:12:20.89 ID:RLkW4kZP0
上司「いやー、巴さんが寝坊とはねぇ」

マミ「すみません……」

上司「いやいや。 普段頑張ってもらってるから気にしないでいいよ」

マミ「はい……」

上司「昨日も急に有休とったりして、何かあったんじゃないかって皆が心配してねぇ」

マミ「そうですか……すみません、ありがとうございます」

上司「今日は定時でいいから、ゆっくり休んでまた明日から頑張ってね」

マミ「はい……」

470: 2011/08/11(木) 16:17:23.12 ID:RLkW4kZP0
OL.A「もー、巴さん心配したんですよ!」

マミ「ごめんなさいね」

OL.B「仕事出来る人で私ら憧れてるんですから!」

マミ「そんな、私はそんなに優秀な人じゃないわ」

OL.A「そんなことないですよー!」

マミ「ありがとう……グスッ」

OL.B「ちょ、ちょっと巴さん……」

OL.A「本当に大丈夫なんですか?」

マミ「大丈夫よ……。 ふふ、歳で涙腺が、ね?」

OL.A「そんな」

OL.B「私らよりちょーっとだけ年上なだけじゃないですか! あはは」

476: 2011/08/11(木) 16:27:08.22 ID:RLkW4kZP0
――

マミ(……あれから何度も遅刻するようになってしまった……)

上司『巴さん……。 さすがにあんまり遅刻するようでは……』

マミ『はい……すみません……』

マミ(どうして朝起きれないんだろう……? 夜も、眠れないし……)

上司『……』

マミ『すみません……』

マミ(……仕事も手につかない。 すごく、だるい……)

OL.A『巴さん……。 一回病院に行ってみたらどうですか?』

OL.B『そうですよ。 あんまりに元気なくて心配で心配で……』

マミ(……暁美さん……)


マミ(……体が重い。 こんな気持ちで外出するのは初めて……。

 もう、何もかもが怖い……)

483: 2011/08/11(木) 16:36:13.12 ID:RLkW4kZP0
――

ほむら「わざわざ律儀に予約入れてこなくてもマミなら……」

マミ「名刺、もらってないのだけど……」

ほむら「……ごめんなさい」

マミ「いいのよ。 それで……その……」

ほむら「……ちょっと二人にしてもらえるかしら?」

看護師「はい、わかりました」

ほむら「これでいいかしら?」

マミ「えぇ……」

486: 2011/08/11(木) 16:43:44.20 ID:RLkW4kZP0
ほむら「――グリーフシードは使ってるの?」

マミ「使ってるわ。 でも、どうしてもこれ以上綺麗にならないの」

ほむら「……5割、いえ6割ぐらいは濁ってるわね」

マミ「どうしてかしらね。 こうやって濁りだしてからずっと体が重くて」

ほむら「……正直に言うわ。 ……寿命よ」

マミ「寿、命……?」

ほむら「そもそも、魔法"少女"ですもの。 こんな歳になって続けている時点でおかしいのよ」

マミ「でも、それはあなたも一緒――」

ほむら「……」

マミ「あなた、それ……もうほとんど真っ黒じゃない……!」

492: 2011/08/11(木) 16:48:29.25 ID:RLkW4kZP0
ほむら「カウンセラーしてるとね、色々な人に出会って、色々な悩みを聞いて……。

 一時的な事でも、やっぱり蓄積していくのよ」

マミ「……」

ほむら「そうやって、少しずつ心の底に溜まっていって、もうそろそろ限界かもね」

マミ「ソウルジェムが、真っ黒になったら、どうなるの……?」

ほむら「……」

マミ「……」

ほむら「……願いの効果が切れるわ」

マミ「……じゃあ、私は……」

ほむら「氏ぬことに、なるでしょうね……。 だから寿命……」

マミ「……そう……」

506: 2011/08/11(木) 16:54:36.64 ID:RLkW4kZP0
ほむら「……ごめんなさい」

マミ「え?」

ほむら「あの帰り道、私たちが煽らなかったらもう少し長く持ったかもしれない、と思って」

マミ「ううん、いいのよ。 あの時、本当はすごく楽しかったから……。

 久しぶりに暁美さんと一緒に戦って、鹿目さんを守って……。

 まるで昔に戻ったみたいだった。 本当に、楽しかった」

ほむら「……マミ」

マミ「そんな悲しい顔しないで。 私は願いで生きて、貴女たちに出会えたんだから。

 もう、十分生きたってことなのよ。 きっと、ね」

ほむら「……ありがとう」

マミ「それはこっちの台詞よ。 ありがとう、暁美さん。 来てよかったわ」

510: 2011/08/11(木) 17:02:53.65 ID:RLkW4kZP0
――

マミ(……私、氏ぬのね。 でも、うん。 いい人生だった……。

 仕事は……もう辞めましょう。 大丈夫、あの子達ならきっと。

 後は、最後まで魔女を倒す……。 そうよ、私は魔法……美女! そう、美女よ!

 ふふ、頑張らないと! 体が軽い。 こんな気持ち久しぶり……。

 私は一人なんかじゃない。 最後まで、守りたい人達がいる……。 だから――

 もう何も怖くない!)

519: 2011/08/11(木) 17:09:05.11 ID:RLkW4kZP0
――

まどか「お疲れ様でしたー」

織莉子「お疲れ様です。 あの、まどかさん?」

まどか「はい?」

織莉子「その……。 よかったらうちの事務所に来ませんか?」

まどか「え?」

織莉子「まどかさんは、きっと最後の一握りになれると思うんです。

 でも、そちらの事務所が自分でも分からないうちにそれを潰しているんです」

まどか「そんな、わたしなんか……」

織莉子「いいえ。 まどかさんは絶対に大女優になれますわ!」

まどか「織莉子ちゃん……」

織莉子「こちらはいつでも受け入れできるから……!」

まどか「うん……。 ありがとう……!」

528: 2011/08/11(木) 17:15:21.99 ID:RLkW4kZP0
――

まどか(ぇへへ……織莉子ちゃんと同じ事務所かぁ……)

受付嬢「こんにちは」

まどか「こんにちは。 えっと、これを」

受付嬢「あ……。 その、申し訳ないのですが――」

まどか「え……?」

534: 2011/08/11(木) 17:18:37.17 ID:RLkW4kZP0
――

まどか(ほむらちゃんが、行方不明って……。

 聞いてないよ! そんなの……!)

まどか「まさか……」

まどか(まさか魔女に……? そんな、違うよね?

 そうだ、マミさん……。 マミさんなら知ってるかも……!)

ピッピッピッ……プルルッ

まどか(お願い、出て……! マミさん……!)

ルスバンデンワサービスニ……

まどか(……マミさん。 仕事中……かな? そうだよね、仕事中だよね)

まどか「……っ!」

まどか(違う。 嫌な予感がする。 マミさん、ほむらちゃん……!)

544: 2011/08/11(木) 17:24:24.99 ID:RLkW4kZP0
――

ピンポーン ピンポーン

まどか「マミさん! 居ませんか! マミさん!」

ピンポーン ピンポーン

まどか(マミさん……。 やっぱり仕事……?)

ガチャッ

まどか「えっ」

まどか(……ドアが……開いた?)

まどか「マミ……さん……?」

キィッ

まどか(真っ暗……)

まどか「マミさーん。 はいりますよー?」


バタン――


549: 2011/08/11(木) 17:29:14.56 ID:RLkW4kZP0
――

あら、鹿目さん。 いらっしゃい。

ちょっとだけ久しぶりね。 メールも電話もしなくてごめんなさい。

待っててね、今お茶入れるから。

どうしたの? そんな青い顔して。 もしかして体調悪いの?

もう、どうして逃げるの? そんな子は……えいっ、ほら捕まえた!

全く、こんなに震えて――――

556: 2011/08/11(木) 17:32:05.13 ID:RLkW4kZP0
――

「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

「わー、ぬいぐるみが喋った!」

「ぬいぐるみじゃないよ。 僕の名前はキュゥべえ!」

「きゅーべえ?」

「うん! 今、見滝原はわるーい魔女に狙われているんだ――

559: 2011/08/11(木) 17:32:46.75 ID:RLkW4kZP0
おわり

563: 2011/08/11(木) 17:34:02.53
うわぁぁぁぁぁ、いやな終わり方しやがったあ!!
でも後味引くなあ。

乙!

573: 2011/08/11(木) 17:38:47.96
結局連鎖は続くのか…

後味は悪いけど楽しませてもらったよ 乙

引用元: マミ「さすがに30にもなって魔法少女続けるのは辛いわね」