6: 2010/11/29(月) 20:12:20.15 ID:pw0crdbA0
教師「このように、先生はKのお嬢さんに対する恋心を知りながらそれを裏切ってしまう―ーーー」

梓(……今日部活どうしょうかな…)

梓(先輩たちは受験のために自宅学習だから来ないだろうし…)

梓(一人で行ってもなあ)

梓(イヤ、だめだめ!私一人でもちゃんと練習しないと!)

梓(あそこのフレーズ、まだ完璧に弾けない。あそこの弾き方ももっと磨かなきゃ)

梓(練習しなきゃいけないところはたくさんある)

梓(一人でもやらないと…)

7: 2010/11/29(月) 20:16:25.20 ID:pw0crdbA0
教師「友を裏切り、お嬢さんと結ばれた先生。しかしその後Kは自ら命を絶ってしまう」

梓(…)

梓(来年から、先輩たちいなくなっちゃうんだよね…)

梓(先輩たち、どうしてるかなあ)

梓(澪先輩と紬先輩はちゃんと勉強してそうだよね。律先輩と唯先輩はちゃんとやってるのかな)

梓(律先輩は澪先輩の家に行ってそうだな~。いいなあ、私も澪先輩ん家行きたい)

梓(…唯先輩はどうだろう、勉強してるのかな)

梓(…)

梓(ふふっ、なんか勉強続かなくてヴァイオリン弾いちゃってそう)

梓(…最近唯先輩の音聴いてない…)

教師「Kの氏によってKの気持ちを知り、Kに近づいていく先生。その〝こころ〟とは?」

9: 2010/11/29(月) 20:27:04.30 ID:pw0crdbA0
キーンコーンカーンコ-ン♪

教師「よーし、今日の授業はここまで。各自、先生の〝こころ〟を想像してみること」

梓(あ、放課後だ…)


――――――

―――――――――――――


憂「梓ちゃん、今日は軽音部行くの?」

梓「うん、ちょっと練習行こうと思って。憂も来る?」

憂「ごめんね、今日はお買い物に行かないといけないんだ」

梓「そうなんだ。じゃあまた今度ね」

憂「本当にごめんね」

梓「ううん、じゃあまた明日ね!」

憂「うん、またね~!」


梓(…部室行こう)


12: 2010/11/29(月) 20:38:17.35 ID:pw0crdbA0


――――――

―――――――――――――


梓「…」テクテク

梓「…」トテトテ

 ~♪

梓「ん?」

 ~♪♪

梓(この音…、誰か部室で演奏してる?)
 
 ♪~♪♪

梓(これは…)

梓(…バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ、ト短調二楽章のフーガ…)

13: 2010/11/29(月) 20:41:16.20 ID:pw0crdbA0

梓(たった1本のヴァイオリンのためにフーガを作ったというまさに大曲中の大曲)

梓(知名度も高くて、コンクールの課題曲でもよく取り上げられる)

梓(……私も大好きでよく聴く曲…)

梓(一体誰が…、まさか、唯先輩?)

 ダッ!――


※曲を知らない人用参考動画:

シェリング
http://www.youtube.com/watch?v=66Lq1nHRp24


6歳の神童
http://www.youtube.com/watch?v=2qRrz4Cp43Y



梓「はあはあ」チラッ

梓「…」

梓(あれは…、唯先輩だ)

15: 2010/11/29(月) 20:45:35.26 ID:pw0crdbA0
唯「♪」


梓(…唯先輩)

梓(…相変わらずテンポは揺れるし、弾き方も雑)

梓(でも、すごい…。いつの間にこんな曲を…)

梓(聴き入る…)


唯「♪~~…」

唯「ふい~」

梓(終わった…)

ガチャ

梓「唯先輩?今日来てたんですね?」

唯「おお、あずにゃ~ん!待ってたよ~!」ダキッ!

梓「にゃあ!ゆ、唯先輩苦しいです!」

唯「久しぶりのあずにゃんだからねえ~!充電充電」


16: 2010/11/29(月) 20:50:17.41 ID:pw0crdbA0
ギュゥ

梓「電化製品ですか…(唯先輩、あったかい…)」

唯「よ~し、よしよし!」

梓「あ、あの、そろそろ離してくれませんか?」

唯「ええ~、あずにゃんのいけず!!」プイ

梓「う…。き、今日はどうしたんですか?自宅で勉強してなくて大丈夫なんですか?」

唯「1日中勉強してても疲れるからね!ちょっとした息抜きだよ!」

唯「それに、あずにゃんにも会いたかったし!」

梓「はあ…。でも、感心しました。意外とちゃんと勉強してるんですね」

唯「ふふ~ん、驚いたでしょ!これもみんなと同じ大学に行くためだからね~」

梓「あ…」ズキン

唯「ん?あずにゃんどうかした?」

梓(そっか…、4人は卒業しても一緒なんだ…)

17: 2010/11/29(月) 20:53:18.95 ID:pw0crdbA0
唯「あずにゃん?」

梓「…なんでもありません」

唯「……そう?」

梓(もし4人とも落ちれば……)

梓(ハッ!私ってばなんてことを!こんなこと考えるなんて最低だ…)

唯「…あずにゃん、何考えてるの?」

梓「い、いえ、それより、せっかくですから練習しましょうよ!唯先輩はもう楽器出してますし!」

唯「う~ん、そうだねえ、ムギちゃんがいないからお茶もできないし…。でも、二人で何の曲やろっか?」

梓「そうですねえ…、あ、いい曲がありますよ」ガサゴソ

梓「これをやりましょう!」

唯「2つのヴァイオリンのための協奏曲?お、バッハさんの曲なんだね!」

18: 2010/11/29(月) 20:56:35.51 ID:pw0crdbA0
梓「知っていますか?」

唯「いや、知らない…」

梓「そうですか…。でも、唯先輩、さっきバッハの無伴奏弾いてましたよね?」

唯「ありゃ、聴かれちゃってたか。お恥ずかしい~」

梓「ええ。先輩が短調の曲も弾けたとは驚きです」

唯「何気にひどい!!」

梓「冗談です。あんな曲を知っていたんですね?」

唯「うん、昔澪ちゃんにCD貸してもらって、それからずっと練習してたんだ。ここだとみんなで

 演奏するできるけど、家で練習するときは一人だからね~。一人でできる曲も練習してみたんだ」

梓「そうなんですか。結構家で練習してるんですね、憂が言ってましたよ」

唯「えへへ~、家にいるとすぐにケースから出しちゃうんだ!ごはん食べるときと、お風呂入る

 とき以外はずっとヴー子と一緒だよ!」

梓(え?じゃあ家でどれだけ練習してるの?)

19: 2010/11/29(月) 20:59:07.38 ID:pw0crdbA0
梓「…」

唯「ねえねえあずにゃん、この曲どんな曲なの?楽譜読めない~…」

梓「(相変わらずすごいのかすごくないのかわからない人だ…)家にならCDあるんですが、ちょっと

 弾いてみましょうか?」

唯「おお!先生、お願いします!」

梓「わかりました、ちょっと楽器出しますね」ゴソゴソ

梓「ちょっとAの音もらえますか?」

唯「ほいほい」♪~

梓「♪~」

梓「ありがとうございます」

唯「わくわく!」

梓「…それじゃ、いきますね」

唯「…」コクリ

20: 2010/11/29(月) 21:03:43.22 ID:pw0crdbA0
~~♪♪♪~~


梓「ふう…」

唯「おおお…、かっこいい曲だねえ!」

梓「今のが一楽章の1stパートです。唯先輩はこっちを弾いてください。私は2ndを弾きますので」

唯「了解!今のにさらに2ndが加わるんだね!楽しみだなあ」

梓「どうします?ちょっとやってみますか?」

唯「お、初見大会だね!よし、あずにゃんに一回弾いてみてもらったし、やってみよう!」

梓「わかりました。それでは、さっきはいきなり入りましたが、本来は2ndが先に入って、1stは

 5小節目から入りますので」

唯「うん、ちゃんと数えてるね!」

梓「本当は2分の2拍子なんですが、4分でこのぐらいの速さでやってみましょう。1、2、3、4――

 どうですか?」

22: 2010/11/29(月) 21:08:10.49 ID:pw0crdbA0
唯「おーけい!」

梓「ではいきます…」スゥ

梓「~♪」

唯「…………」スゥ

唯「~♪」

梓(!)

梓(この曲はあの有名な教本、鈴木ヴァイオリンにも登場する)

梓(つまり、練習曲としても優秀な一見扱いやすい曲)

梓(イージーなフィンガリングと運弓で弾けてしまう)

梓(…ちょっと試してみる気でこの曲を選んだんだけど)

梓(それを、いきなりこんな風に弾けるなんて…。唯先輩の音、すごく光ってる…)

梓(唯先輩ってこんなに…、でも…、絶対に負けない!!)

23: 2010/11/29(月) 21:11:10.28 ID:pw0crdbA0
梓(…次は1stのソロパートか…)

唯「♪」

梓(この曲は)

梓(ただの練習曲なんかじゃない。有名なヴァイオリニストのレパートリーの一つにもなる)

梓(ヴァイオリニストにはまさにゆりかごから墓場まで持っていく、そんな大切な曲)

梓(…この人は本当に……)

梓(でも、次は私の番!やってやるです!)

梓「…」スゥ

梓「♪」

唯「!」

唯(あずにゃん…)

24: 2010/11/29(月) 21:14:09.67 ID:pw0crdbA0
梓(…)チラッ

唯(…)チラッ

唯梓「♪」


~~♪♪♪~~


唯「ごめんね、あずにゃん…」

梓「いえいえ、一応1楽章通ったじゃないですか!初見にしてはすごいですよ!」

唯「そ。そ~お?」

梓「そおですよ!!」

唯「えへへ…。あ、そうだ、今日この後あずにゃんの家寄って帰ってもいい?この曲のCD聴いて

 みたい!」

梓「いいですよ。それじゃあ、行きますか」

26: 2010/11/29(月) 21:18:56.74 ID:pw0crdbA0
意外にも弾いたことある人いてワロタwww


唯「あれ、もう行っちゃうの?」

梓「早く行って帰った方が先輩のためでしょ?仮にも受験生なんですから」

唯「仮じゃなくて本受験生だよ~…。でも、あずにゃんの言うとおりだね。そうしよっか」

梓「はい。じゃあ、行きましょう!」


――――――

―――――――――――――


唯「お邪魔しま~す!」

梓「どうぞお構いなく。今日は両親も遅くなるようなので」

唯「おお、じゃああずにゃんとイチャイチャし放題だね~?」


28: 2010/11/29(月) 21:20:56.14 ID:pw0crdbA0
梓「え…、いやそんなわけないじゃないですか!!」

唯「…ちえ~」プイ

梓(冗談だよね…?)


トントントン…ガチャ


梓「どうぞ適当にくつろいでください」

唯「どうもどうも。相変わらずあずにゃんの家は音楽で溢れてるねえ」

梓「両親がかなり集めていますからねえ…。置き場がなくて私の部屋にまでCDや楽譜があるんですよ」

唯「羨ましいなあ~。うちはお父さんもお母さんも音楽なんかやってなかったし、憂は昔ピアノやってたけど、今はやってないし…。私もあずにゃんみたいな家庭に育ったら、もっとヴァイオリン上手だったんだろうなあ」

梓「そんなことありませんよ。それに、私の家に生まれたら唯先輩が唯先輩じゃなくなってしまいます」

30: 2010/11/29(月) 21:24:07.52 ID:pw0crdbA0
唯「ガーン!それじゃあ、私には音楽はダメってこと!?」

梓「いえ、唯先輩の音楽は魅力的ですよ」

唯「え?あずにゃん今なんて…」

梓「あ…、な、何でもないです!それより、早速CD聴いてみましょうよ!!」

唯「う、そうだねえ。聴こう聴こう!」

梓(誰の演奏にしようかな…)

梓「唯先輩、誰か好きな演奏者とかいます?CD何枚かあるんですが」

唯「ん~ん、誰のでもいいよ~」

梓「わかりました。それでは…」

梓(どうしようかな…。あ、そうだ、あれを聴かせてみたら面白いかも!!)ニヤ

32: 2010/11/29(月) 21:28:49.62 ID:pw0crdbA0
梓(ハイフェッツが多重録音で1stと2ndの両方を弾いているこの録音…。初めて聴いたときは本当に驚いた)

梓(同じ人が両方のパートを弾いているから曲がわかりやすいし、何よりもハイフェッツのテクニックが半端じゃない)

梓(唯先輩に聴かせるならこれぐらいインパクトがないとね)

梓「これにしますね」

唯「うん、いざお願いします!」

 ガチャ、キュイーン…

 ~♪~

※参考音源:

http://www.youtube.com/watch?v=ojKltaF_ViA&NR=1


http://www.youtube.com/watch?v=AvxtRiiOJbo


録音が古すぎて聴けない!って人はこちらをどうぞ

34: 2010/11/29(月) 21:31:00.09 ID:pw0crdbA0


梓「どうでした?」

唯「おおう、いい曲だねえ…。弾いてる人もすっごくかっこよかったよお~」ウルウル

梓「お、大げさですね。でも、この曲がよく知られていて人気がある理由がわかりますよね」

唯「うんうん。ねえあずにゃん、これって双子で弾いてるの?なんか音の感じがそっくりだね!」

梓「いえ、実は同じ人が両方のパートを弾いてるんですよ」

唯「え?同じ人が?」

唯「???」

梓「いやあの、変な意味じゃなくて1回ずつ弾いて録音してるんだと思いますよ…」

唯「あっ、なるほど~!私てっきり…」


36: 2010/11/29(月) 21:34:22.50 ID:pw0crdbA0

梓「はあ…」

唯「ねえねえあずにゃん、それよりもっとこの曲練習しようよ!」

梓「え?構いませんけど…、受験勉強は大丈夫ですか?」

唯「うん。家でちゃんと勉強しておくから、また今日みたいに息抜きにやろうよ!」

梓(息抜きにこの曲か…、大丈夫かなあ)

唯「む、その顔は私を大丈夫かなって見下している顔だな!?」

梓「そうです」

唯「ひどい…、そんなことをいうあずにゃんにはこうだ~!」ウリウリ

梓「や、やめてください~」

唯「えへへ~」

梓(…今、私の部屋で唯先輩と二人っきりなんだな…)

37: 2010/11/29(月) 21:37:32.28 ID:pw0crdbA0
唯「…」

唯「…こうやってあずにゃんの部屋でふたりっきりでくっついてるのって新鮮だねえ!」

梓「!?そろそろ離してくださいっ!」

唯「ほ~い」

梓「(びっくりした…)そ、それじゃあ楽譜と一緒にこのCDも貸しましょうか。そっちの方が練習しやすいでしょう?」

唯「おお、ありがとうあずにゃん!!」

梓「でも、まずはちゃんと受験勉強してくださいね。大学落ちちゃったらニートになっちゃいますよ!」

唯「はうっ!その言葉はやめてあずにゃん…」

梓「ふふっ、でも本当にやらないと唯先輩だけ落ちちゃいますよ?」

唯「…そうだね…」

梓(あれ?)

唯「よ~し、じゃあ、勉強もしないといけないし、今日はこれで帰るね!」

39: 2010/11/29(月) 21:40:30.46 ID:pw0crdbA0



梓「あ、は、はい。わかりました」

唯「うん!あずにゃん、CDありがとうね~」

梓「いえ、他にもCDありますし、いつ返していただいても構いませんから」

唯「わかった~!じゃあ、また部室行くときはメールするね♪」

梓「そうですね、そうしていただけると助かります」

唯「うん、あずにゃん、バイバ~イ!」フリフリ

梓「お疲れ様でした~!」フリフリ


梓「…練習しよう」


――――――

―――――――――――――


梓(さて、やるとなったらちゃんと譜読みしとかないと…)

41: 2010/11/29(月) 21:44:42.63 ID:pw0crdbA0
キーンコーンカーンコーン

梓(やっと放課後か…、昨日遅くまで練習してたから眠い…)

梓(今日はメールも来てなかったから、唯先輩はいないだろうけど、練習してから帰ろう…)

憂「梓ちゃん、なんだか眠そうだね」

梓「あ、憂。うん、ちょっと昨日遅くまで練習しててね…」

憂「そうなんだ~」

梓「ねえ、唯先輩はちゃんと勉強してる?」

憂「それがね~、お姉ちゃんったらすごいんだよ!あんなに勉強してるお姉ちゃんは始めてかも~!」

梓「そ、そうなんだ」

憂「うん!!あ、でもね、昨日は夜に息抜き!、って何か聴いたことない曲ずっと練習してたよ」

梓「!」

42: 2010/11/29(月) 21:46:36.48 ID:pw0crdbA0
すまん、>>39>>41の間抜かしてた。


梓(スコアスコアっと…。あった)

梓(あ、一楽章だけでいいのかな…?)

梓(唯先輩もああ言ってたけど、やっぱり忙しいだろうからそんなに来られないだろうし…)

梓(でも、二人きりで演奏したのなんて、あまり無いよね…)

梓(ご近所のおばあさんの頼みが断れないからって、試験期間中なのに、二人で練習したとか)

梓(そういえば今回と一緒だな~。でも、今回はもっと大事なテストが控えてるんだもんね)

梓(………)

梓(あと、どのくらい一緒に演奏できるんだろう?)

梓(一応全楽章譜読みしておこう)


――――――

―――――――――――――

45: 2010/11/29(月) 21:50:04.04 ID:pw0crdbA0

憂「あんだけ1日勉強してるんだもん。お姉ちゃんずいぶん楽しそうだったなあ~」ポワー

梓「そ、そう…」

憂「梓ちゃん、今日も練習行くの?」

梓「うん、ちょっとやらなきゃいけない曲があってね」

憂「…そうなんだ。それじゃ、また明日ね!」

梓「うん、また明日ね~!」


梓(…よし、行こう)


――――――

―――――――――――――


ガチャ

律「お、梓遅かったじゃないか!」

46: 2010/11/29(月) 21:53:41.77 ID:pw0crdbA0

紬「あら、いらっしゃ~い!」

梓「あ、あれ、みなさんお揃いでどうしたんですか?」

澪「受験勉強の息抜きにな、ちょっと遊びに来たんだ」

唯「あ~ずにゃ~ん!!」ダキッ

梓「ゆ、唯先輩」

律「いや~、久しぶりの光景だな~!」

紬「よきかなよきかな~♪」

澪「ははは、唯、ほどほどにしてやれよ?」

唯「もうちょっとだけ~」

紬「ほら、唯ちゃんお茶入りましたよ~」

律「おお、やっぱりこれがないとやってられませんな~!」

唯「わ~い、ムギちゃん、今日のおやつなに~?」

梓「ふう…、みなさんいつもどおりですね。受験勉強はいいんですか?」

48: 2010/11/29(月) 21:57:36.67 ID:pw0crdbA0
澪「これでもみんなちゃんと受験勉強してるんだぞ」

律「そうだぞ~!〝みんな〟ちゃんとやってるんだぞ~!」

澪「そうだな、律も珍しくちゃんとやってるもんな」

律「おい澪、珍しくって言うなあ~!私が普段やってないみたいじゃん!!」

紬「あらあら♪」

唯「ムギちゃんおかわり~」

律「お前は会話に参加しろ~!」

梓(みんな本当にいつもと変わらないなあ)

唯「…」チラッ

梓(ん?)

唯「…」ニコッ

梓(あ…、唯先輩)

49: 2010/11/29(月) 22:01:53.31 ID:pw0crdbA0
澪「ところで律、赤本はどこまでやったんだ?」

律「う…、さ~てなんのことやら…」

澪「それじゃあ、去年出題の古文がどんな話だったか言ってみろ」

律「…あ、あれだろ?光源氏が同性愛者のお姉さんに真実の愛を説く話だったっけ?」

澪「そんな話はない!!!」

紬「にこにこ」


――――――

―――――――――――――

51: 2010/11/29(月) 22:05:02.66 ID:pw0crdbA0
律「いやあ~、やっぱりムギの入れるお茶はうまいなあ~」

唯「うん!あれを飲むと勉強がはかどる気がするよ~」

紬「ありがとう!また息抜きにお茶しましょうね♪」


澪「梓」

梓「はい?」

澪「今日いきなり押しかけてすまなかったな。練習の邪魔じゃなかったか?」

梓「いえ、久しぶりにみんなそろって楽しかったです」

澪「そうか、それならいいんだ。いや、事前に連絡しておけばよかったなあと思って」

梓「いえ、別にかまいませんよ」

澪「…実は、今日部室行こうって言い出したのは唯なんだ」

梓「え?」

52: 2010/11/29(月) 22:08:36.13 ID:pw0crdbA0

澪「本人は久しぶりにみんなでお茶が飲みたいって言ってたんだけどな。どうも、梓が心配だったみたいでな」

梓「…そうなんですか」

澪「…ごめんな、受験終わったらまた部室に行くからさ」

梓「ええ、わかってます。今はみなさん大切な時期ですから」

澪「梓…」

律「お~い澪~、何やってんだ~?お前ん家こっちだろ~?」

澪「あ、もうこんなところか。じゃあ、梓、私たちはこっちだから」

梓「あ、はい」

澪「また遊びに行くよ」

梓「ありがとうございます」

紬「じゃあ、唯ちゃん梓ちゃん、またね~♪」

54: 2010/11/29(月) 22:12:46.55 ID:pw0crdbA0
唯「ばいば~い!」

梓「お疲れ様です」

唯「じゃああずにゃん、途中まで一緒に帰ろ~!」

梓「あ、はい」

唯「今日のムギちゃんのお菓子、おいしかったねえ~!」

梓「そうですね」

梓(なんでだろう、なぜかちょっと緊張する…)

梓(澪先輩にあんなこと言われたからかな…)

唯「ねえあずにゃん」

梓「は、はい?」

唯「今日久しぶりに5人そろったねえ~!楽しかった?」

梓「(!)ええ、すごく楽しかったです」

55: 2010/11/29(月) 22:17:11.39 ID:pw0crdbA0

唯「やっぱり放課後ティータイムはこうでなくちゃねえ!」

梓「そ、そうですねえ」

梓(ちょっと聞いてみようかな)

梓「でも、今日はみなさんどうして急にお茶しに来られたんですか?」

唯「うん、みんな受験勉強で疲れちゃっててねえ~…。それで息抜きしようって!」

梓「そうでしたか…、誰が言い出したんです?」

唯「…ううん、みんなとメールしたら何か流れでねえ~!」

梓「…なるほど」

唯「あ、そうだ、明日あの曲練習しに行ってもいい?」

梓「え?明日ですか?唯先輩、本当に勉強大丈夫なんですか?」

57: 2010/11/29(月) 22:21:27.39 ID:pw0crdbA0
唯「あずにゃん、1日中勉強なんてしてらんないよ~!頭がパンクしちゃう!」

梓「まあそれはそうなんですけど…」

唯「ね?だからいいでしょあずにゃ~ん!?」ダキッ

梓「こ、こんなところでくっつかないでください!」

唯「いいって言うまで離さないよ~!」ウリウリ

梓「…いいですよ」

唯「ホント!?」パアア

梓「ただし、約束してください」

唯「え?」

梓「部室に来るまではちゃんと勉強しててください」

唯「あずにゃん…」

梓「それならいいですよ」

唯「わかった。約束するよ、あずにゃん!!」フンス

梓「お待ちしてますよ?あ、それじゃあ、私はこの辺で」

58: 2010/11/29(月) 22:25:19.84 ID:pw0crdbA0
唯「うん!じゃあ明日ね!!」

梓「はい、お疲れ様です」

唯「バイバ~イ!」

梓(唯先輩、本当に大丈夫なのかな…?)


――――――

―――――――――――――


梓『やっほー、憂』

憂『こんばんは、梓ちゃん。急に電話なんてどうしたの?』

梓『今部屋?』

憂『ううん、居間にいるよ』

梓『…唯先輩いる?』

59: 2010/11/29(月) 22:29:31.96 ID:pw0crdbA0
憂『ううん、私一人だよ』

梓『そうなんだ…』

梓『…』

憂『…』

憂『お姉ちゃんなら、部屋で勉強してるよ。お姉ちゃんがどうかした?』

梓『い、いや、別にそんなわけじゃないけど…』

憂『そうなの?お姉ちゃん今日部室行ってたんでしょ?帰ってからずっと勉強してるんだよ』

梓『へ、へえ~、唯先輩が』

憂『うん、それで今お夜食作ってあげてるんだ~』

梓『そ、そうなんだ。じゃ、じゃあ邪魔したかな。もう切るね』

憂『え?梓ちゃん?』

梓『また学校でね!』ガチャ

梓「…」プー プー

61: 2010/11/29(月) 22:32:27.58 ID:pw0crdbA0
梓(唯先輩、ちゃんと勉強してるんだ)

梓(今回は私がスケジュール組まなくてもよさそうだね)

梓(明日、本当に来てくれるのかな)


――――――

―――――――――――――


キーンコーンカーンコーン

梓(ようやく授業終わった…。練習に行こう)

梓(…)

梓(あれ?今日はヴァイオリンの音しないな)

梓(唯先輩いるのかな…?)

ガチャ

唯「あ、あずにゃ~ん!」

梓「唯先輩、もう来てたんですね」

唯「うん!今日はあずにゃんのために私がお茶とお菓子を用意したんだよ!」

63: 2010/11/29(月) 22:35:31.90 ID:pw0crdbA0
梓「え?」

梓(本当だ、私のティーカップ…。唯先輩、紅茶入れられたんだ…)

唯「えへへ、授業疲れたでしょ?たまには二人でお茶しよーよ!」

梓「そうですね、昨日もしましたけど、最近はお茶の回数も減りましたし。」

唯「でしょでしょ?まあ、ちょっと飲んでみてくだせえ」

梓「はい、いただきます――」

ゴクッ

梓(ん…?)

梓「…」

唯「ど、どう?」

梓「あ、そうですね、何かいつもと味が少し違うというか…。葉変えたんですか?」

唯「う…」

梓「! い、いえ、決してまずいわけでは!」

唯「うん…、実はね、私はムギちゃんみたいにお茶なんか入れられないから、商店街で買ってきたんだけど」

65: 2010/11/29(月) 22:38:48.09 ID:pw0crdbA0
唯「やっぱりムギちゃんがいないとダメだね~、えへへ~…」

梓(唯先輩…、私のために…)

梓「いえ、唯先輩のおかげで気分がすっきりしました!」

唯「あずにゃん…」

梓「今度から私がお茶を入れます!だから唯先輩は心配しないでください!」

唯「おお、頼もしいねえ!あずにゃん分補給~!!」ガバッ

梓「ふにゃああああ!!!?ち、ちょっと唯先輩…」

唯「あずにゃんはいい子だねえ~!」

梓「ふにゃあ~…」

梓(勢いで言っちゃったけど、お茶の入れ方なんかわからないし…。憂に教えてもらおう…)

梓「あ、あの、唯先輩、そろそろ練習しませんか?」

唯「ほえ?そうだねえ、はじめようか!」

70: 2010/11/29(月) 22:43:19.16 ID:pw0crdbA0
>>62 さわ子先生は原作になぞらえてヴァイオリンです。
>>64 ヤフオクで1円からとかあるぜ?ただ、しょぼい楽器だと上達しない…。あと、絶対に誰かに習った方がいい

――――――

―――――――――――――


唯「さて、はじめますか」

梓「はい」

梓(改めて、バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲第一楽章)

梓「テンポはどれぐらいを考えてますか?」

唯「テンポ記号はVivaceだよね。結構早いってことだよね?」

梓「Vivaceは本来かなり早いです。ただ、CDを聴いてみましたよね?本当にVivaceで弾いてる演奏者はクレーメルぐらいしか浮かびません。反対にゆっくりな演奏もたくさんありますし…」

唯「そっかあ。じゃあじゃあ、とりあえずあのCDと同じぐらいで」

唯「1、2、3、4…ぐらいでどうかな?」

76: 2010/11/29(月) 22:46:31.55 ID:pw0crdbA0
梓「わかりました。今回はそのぐらいでやってみましょう」

梓「それでは、私から入りますので…。いいですか?」

唯「りょ~かい!!」

梓「…」

梓(まず2ndヴァイオリンが主題を奏で、ついで1stヴァイオリンがイ短調で呼応する…)

梓(行こう)

梓「…スゥ」


~♪♪♪~


梓「この辺りでいったん止めましょう」

唯「ふい~」

梓「唯先輩、出だしのところもう少しテンポで入っていただけますか?私も合図送るようにしますので…」

唯「は~い!」

79: 2010/11/29(月) 22:49:53.46 ID:pw0crdbA0

梓「ところで、ソロのところ、ボーイングとフィンガリングどうしてます?」

唯「う~ん、あのCDみたいに聴こえるようにしてみたんだけど」

梓「ちょっと弾いてみてもらっていいですか?」

唯「うん、こんな感じ」

♪~

梓(うわ…、確かにハイフェッツっぽい…)

唯「あ、あずにゃん、ど、どう?」

梓(最初のオクターブのとことか、すごく音が響いてる…。私だって…)

梓「いえ、私が唯先輩の弾き方に合わせます」

唯「そう?」

梓「ええ、練習しておきます…」

81: 2010/11/29(月) 22:53:51.91 ID:pw0crdbA0
唯「なんだかやらせちゃってるみたいですまないねえ」

梓「いえ、唯先輩の弾き方かっこよくていいと思いますよ」

唯「おお、褒めても何も出ないよ!?」

梓「それは残念です」

唯「もう~。そうだそうだ、練習記号のここのところ何だかぐちゃぐちゃでよくわからないんだけど…」

梓「そうですか、じゃあ、そこのところからもう一度やってみましょう」

~♪♪♪~


85: 2010/11/29(月) 22:57:57.23 ID:pw0crdbA0


梓「すっかり遅くなっちゃいましたね」

唯「疲れた~!今日はがんばったね!」

梓「ええ、おかげでだいぶ方向が固まってきましたね」

唯「うん、家でもう少し練習してくるね」

梓「はい。でも唯先輩?まずは受験勉強ですよ?」

唯「うっ!?そうだった…」

梓「はあ…。受験大丈夫ですか?」

唯「とりあえず、明日は一日勉強するよ」

梓「そうですね。また息抜きが必要になったら連絡してください」

唯「了解!じゃあ、あずにゃん、バイバ~イ!」

梓「お疲れ様です!」

89: 2010/11/29(月) 23:03:01.93 ID:pw0crdbA0
梓(…)

梓(帰って練習しよう)

梓(唯先輩、結構細かいところまでさらってあった)

梓(受験勉強で忙しいはずなのに)

梓(…私が唯先輩を引っ張ってあげないと!)

梓(唯先輩のためにできることをしないと)


――――――

―――――――――――――


キーンコーンカーンコーン

梓「ねえ、憂?」

90: 2010/11/29(月) 23:07:23.97 ID:pw0crdbA0
憂「あ、梓ちゃん、どうしたの?」

梓「私にお茶の入れ方を、教えてくれない…?」

憂「え?お茶を?」

梓「うん…。ムギ先輩みたいにお茶を入れられるようになりたいんだ」

憂「そうなんだ。うん、いいよ!それじゃあ、今日うち来る?」

梓「そうだね、でも、今日は家で晩ごはん食べるって言ってるからなあ…。じゃあ、ごはん食べた後に行くね」

憂「そう?明日休みだし、うちに泊まってく?」

梓「う~ん、とりあえず、準備だけはしておくね」

憂「わかった。じゃあ、うちで待ってるね!」

梓(よし、これでお茶を入れられるようになるんだ!そして唯先輩に…)

梓(がんばるぞ!)

92: 2010/11/29(月) 23:12:46.67 ID:pw0crdbA0
――――――

―――――――――――――


梓「こんばんは~」

憂「あ、梓ちゃん!待ってたよ~!」

梓「あれ、これ唯先輩の靴…?」

憂「うん、お姉ちゃんなら部屋で勉強してるよ」

梓(あああ!!憂の家には唯先輩がいるんだった!!だめじゃん!!)

憂「大丈夫だよ。ほら、ちょっと来て」

梓「え?」

94: 2010/11/29(月) 23:16:50.41 ID:pw0crdbA0
ガチャ

憂「ほら、お姉ちゃんしっかり勉強してるでしょ?」ボソ

梓「ホントだ…」ボソ

唯「…」

梓(真剣な表情…。ホントにちゃんと勉強してるんだ…)

憂「だから台所に居ても気づかれないよ?」

梓「うん…」


憂「じゃあ、早速やってみようか。ティーセット出すから少し待っててね」

96: 2010/11/29(月) 23:22:10.75 ID:pw0crdbA0
梓「うん、手伝うよ」

憂「ありがとう。よし、それじゃあ、まず基本から行くね」

憂「まずお湯を用意するんだけど…」

梓「はい!」

梓(…唯先輩のためにがんばるんだから)


梓「ふう…」

憂「梓ちゃん、お疲れ様!初めてにしては上出来だよ!」

梓「ううん、憂のおかげだよ」

憂「梓ちゃんが一生懸命やってたからだと思うよ?さあ、飲んでみよう?」

97: 2010/11/29(月) 23:26:35.28 ID:pw0crdbA0
梓「あ、おいしい!」

憂「でしょでしょ?自分で入れるとすっごくおいしく感じるよね!」

梓(これなら…、唯先輩も満足してもらえるかな?)

憂「…ねえ、梓ちゃん」

梓「うん?」

憂「どうして急にお茶の入れ方なんて覚えようと思ったの?」

梓「え?い、いや、来年はムギ先輩もいないし、私もお茶の入れ方ぐらい知ってないと先生が困るかなと思って…」

憂「そうなんだ…。昨日お姉ちゃん部室行ったんだよね?なにかあった?」

梓「別に…、ちょっと二人で話して、練習して…それだけ」

憂「そっか…。そうだ、梓ちゃん、お姉ちゃんにお茶もって行ってあげたらどうかな?」

梓「え?私が?」

98: 2010/11/29(月) 23:31:32.62 ID:pw0crdbA0
憂「そう。いつもこのぐらいの時間に私がお夜食もって行ってあげてるんだけど、今日はせっかく梓ちゃんががんばってお茶入れてくれたんだし」

梓「い、いや、私は…、うん、そうだね、わかった…」

憂「うん!お姉ちゃんもきっとよろこぶよ!」


――――――

―――――――――――――


唯「…」カリカリ

唯「…」カリカリ

唯「…」ゴシゴシ

唯「…」カリカリ

コンコン

99: 2010/11/29(月) 23:37:19.25 ID:pw0crdbA0
唯「うい~?」

ガチャ

梓「唯先輩」

唯「え?」

梓「お疲れ様です…。あの、お茶を入れました」

唯「え?え?なんであずにゃんが??」

梓「今度から私がお茶を入れるって、言ったじゃないですか…」

唯「………あ、あずにゃん」

梓「ちゃんと勉強してるんですね。私、感心しました。お茶、ここに置きますね」

唯「あずにゃん」

ダキッ

100: 2010/11/29(月) 23:40:37.13 ID:pw0crdbA0
梓「…ゆ、唯先輩、また補給です…か」

唯「勉強疲れたよ…あずにゃん」

梓「んっ、唯先輩…」

スリスリ

梓「お、お茶が冷めちゃいます」

唯「…もしかして、あずにゃんが入れてくれたの?」

梓「は、はい」

唯「それじゃあ、冷めちゃったら悪いね。飲もう!」

スッ

101: 2010/11/29(月) 23:45:25.01 ID:pw0crdbA0
唯「おいし~い!あずにゃん、すごいねえ!」

梓「い、いえ、憂に教えてもらったんで」

唯「正直者だねえ。でも、本当においしいよ。憂が入れてくれるのとなんだか違う気がする」

梓「やっぱり憂が入れた方がおいしいですか…?」

唯「おお!ヤキモチ!?かわいいこと言ってくれるねえ、あずにゃん!」

ダキッ

梓「ひゃあ!ま、またですか!」

唯「だってあずにゃんがあ~」

憂「お姉ちゃ~ん?梓ちゃ~ん?」

102: 2010/11/29(月) 23:48:54.53 ID:pw0crdbA0
梓「あ、憂…」

唯「あずにゃ~ん」

憂「ふふふっ、お姉ちゃん、あったかいでしょ?」

梓「え?う、憂まで…」

憂「ねえ、梓ちゃん、もう時間遅いけどどうする?今日は泊まっていきなよ?」

梓「そうだね…」

唯「おお!じゃああずにゃん、一緒に寝よ~?」

103: 2010/11/29(月) 23:53:43.88 ID:pw0crdbA0
梓「いえ、やめておきます」

唯「即答!?」

憂「お姉ちゃんの勉強の邪魔になるから、遠慮してるんだよね?」

梓「そうです!唯先輩は油断したらすぐ息抜きするんですから!」

唯「ええ~!?今日も一日部屋でずっと勉強してたのに!」

梓「じゅ、受験が終わるまでは油断大敵です!」

憂「まあまあ、梓ちゃん、今日は私の部屋で寝よ?」

梓「うん…。唯先輩、すみません」

唯「ぶー、まあ、仕方ないか~…」

104: 2010/11/29(月) 23:58:44.42 ID:pw0crdbA0
梓「はい、それでは寝る支度をしてきますので…」

憂「うん。じゃあ、お姉ちゃん勉強がんばってね!」

唯「うん!あずにゃん、お茶ありがとうね」

梓「いえ、唯先輩のお口にあってよかったです」


梓「ごめんね、結局泊まらせてもらっちゃって」

憂「ううん、いいの。それより、お姉ちゃんと一緒の部屋じゃなくてもよかったの?」

梓「!!な、なに言ってるの、私が居たら唯先輩の勉強の邪魔でしょ」

憂「…そんなことはないと思うんだけどなあ」

105: 2010/11/30(火) 00:02:50.07 ID:PJl+uL2v0
梓「さあさあ!今日は疲れちゃった。もう寝よう?」

憂「え?まだ早い時間だけど、わかった。お布団出すから待ってってね」

梓「ありがとう」

憂「よいっしょっ…と。はい、準備できたよ~!じゃあ、電気消すね?」

梓「うん。おやすみ、憂」

憂「梓ちゃん、おやすみなさい」

カチッ

梓(…)

梓(…)

梓(唯先輩と二人きりなんて今までも良くあったことだけど)

106: 2010/11/30(火) 00:07:22.78 ID:PJl+uL2v0
梓(でも、一緒の部屋で二人きりで眠るとなると)

梓(なんでだろう、眠れない気がする)

梓(唯先輩、まだ勉強してるのかな…)

梓(…)

梓(zzz)


――――――

―――――――――――――


~♪♪

108: 2010/11/30(火) 00:13:35.40 ID:PJl+uL2v0
梓「…うん?」

梓「ヴァイオリンの音…?」

梓「唯先輩?」

ガバッ


唯「♪~♪~」

梓(唯先輩、こんな朝早くから…)

梓(…)

梓(バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ、第三番ホ長調のプレリュード…)

109: 2010/11/30(火) 00:17:39.83 ID:PJl+uL2v0
梓(…)

梓(すごい、朝日が金色のヴェールをまとって空気にまとわりついているよう)

梓(なんだかいつもの唯先輩らしくない、優しい音)

梓(やっぱりホ長調のヴァイオリン曲はすばらしい)

梓(楽譜見てないけど…、CDの音を覚えているんだろうな)

梓(澪先輩が貸したCDはシェリングかな)

梓(いけいけのハイフェッツやミルシュタインもいいけど、シェリングもやっぱりいいなあ)

梓(つくづくバッハの奥深さを感じる)

梓(…それにしても、音のなかに唯先輩の音が混じって…)

梓(…こんな唯先輩もいいなあ)

111: 2010/11/30(火) 00:22:26.21 ID:PJl+uL2v0

憂「あ、おはよう、梓ちゃん!」

梓「あ、憂、おはよう」

憂「ごめんね~、お姉ちゃん、最近朝はああやって練習してるんだ。起こしちゃった?」

梓「ううん、いつもこのくらいに起きてるから…」

112: 2010/11/30(火) 00:27:08.73 ID:PJl+uL2v0
憂「そうなんだ。朝こうやってヴァイオリン聴いてるのって、なんかいいよね~!」

梓「うん、そうだね…」

憂「お姉ちゃんの演奏、どう?」

梓「うん、とってもいい…」

憂「」ニヤニヤ

梓「はっ!い、いや、ちょっとまだ荒っぽいかな!」

憂「ガーン!ううっ…」

梓「じょ、冗談だよ!…正直ちょっと聴き入っちゃった」

憂「そう?えへへ!あ、朝ごはんできたからお姉ちゃん呼んできてくれない?」

梓「わかった」

115: 2010/11/30(火) 00:31:27.22 ID:PJl+uL2v0
唯「~♪」

梓「唯先輩」

唯「♪~」チラッ

梓(ううっ、なんか唯先輩の演奏姿がまぶしい…!いつも見ていたのに…)

梓(弾いたままこっち向かれるとなんかドキッとする…)

梓「ご、ごはんできたそうですよ?」

唯「そうなんだ、すぐ行くよ~!片付けるからちょっと待ってて~」

梓「はい」

116: 2010/11/30(火) 00:35:18.85 ID:PJl+uL2v0
憂「今日の朝ごはんはハムエッグだよ~」

唯「おお!ハムエッグ~!!」

梓「私の分まで作ってもらってごめんね」

憂「お客様なんだから当然だよ~」

唯「」モグモグ

憂「あ、お姉ちゃんいただきます言った?」

唯「いただきまふ!!」

梓「ふふっ!いただきます」

唯「えへへ、食卓にあずにゃんがいるなんて、不思議な気分だね~」

梓「そ、そうですね」

117: 2010/11/30(火) 00:39:41.05 ID:PJl+uL2v0
憂「梓ちゃん、今日はどうするの?」

梓「うーん、特に予定はないけど…」

唯「あずにゃん、それなら一緒に練習しようよ!」

梓「え…?勉強は大丈夫なんですか?」

唯「昨日ずっとやってたからね!」

梓「ええ~、ホントに大丈夫ですか~?」

憂「うん、今日ぐらい大丈夫なんじゃないかな?お姉ちゃん、赤本もほとんど終わってるもんね」

梓「すごい…、そうなんですか?」

唯「エッヘン!」フンス

梓「それじゃあ…、でも少しだけですよ?」

118: 2010/11/30(火) 00:45:13.41 ID:PJl+uL2v0
唯「ホント!?やったあ!!」

憂「お姉ちゃん、よかったね!」

梓「とりあえず、楽器取りに一度家に帰りますね。それからまた来ます。お昼ごはん食べてから来ますので、それまでは勉強しててください!」

唯「うひ~、あずにゃん、厳しい~」

憂「お姉ちゃん、がんばってね!」

唯「あ~う~、憂まで…」

憂梓「ふふっ!!」

アハハハハハハハ


――――――

―――――――――――――

122: 2010/11/30(火) 01:01:39.26 ID:PJl+uL2v0

梓「さて、それじゃあこの前の続きからやりましょうか」

唯「うん!お願いします!」フンス

梓「憂はスコア見て気づいたところを言ってね」

憂「これを見てればいいんだね。わかった」

唯「よし、やろう!」

梓「はい!…行きます!」

梓「…」

梓「…スゥ」

~♪

124: 2010/11/30(火) 01:07:16.95 ID:PJl+uL2v0
梓「♪~」チラッ

唯「…」コクリ

唯「♪」

~♪♪~

憂「…」

――――――

―――――――――――――

梓「だいぶ噛み合うようになってきましたね」

憂「お疲れ様~」

126: 2010/11/30(火) 01:12:50.57 ID:PJl+uL2v0
唯「やっぱりこの曲いい曲だよね!なんか演奏してるうちにあずにゃんの音が絡んできて…」

梓「ちょ、ちょっと唯先輩!?変なこと言わないでください!」

憂「でもホントに後半はすごく良くなってたよ」

梓「そ、そう?憂も練習に付き合わせちゃってごめんね」

憂「ううん、楽しかったよ!音楽っていいね!」

唯「でしょでしょ!憂もやればいいのに~」

憂「私はいいよ~。ね、それより次は二楽章やるの?」

梓「!」チラッ

128: 2010/11/30(火) 01:17:56.92 ID:PJl+uL2v0
唯「…もちろん全楽章やるよ!ね、あずにゃん!」

梓「え?あ、は、はい」

憂「わあ~!ね、ね、梓ちゃん、この二楽章はどんな曲なの?」

梓「うん、ゆっくりしたテンポで、一楽章の平行調のヘ長調で始まるの。一楽章は少し暗い雰囲気だったと思うけど、二楽章は長調でとっても落ち着く雰囲気だよ」

憂「へ~、この楽章も梓ちゃんから始まるんだね」

梓「うん。唯先輩、8分の12拍子なんで、しっかりアンダーカウントしてくださいね」

唯「8分の12拍子…、8部音符が小節に12個あるんだよね!」

梓「そうです。それじゃあ、一度弾けるとこまで弾いてみましょう」

唯「了解!」

130: 2010/11/30(火) 01:23:41.91 ID:PJl+uL2v0
憂「二人ともがんばって!」

梓「行きます…」

梓「…」スゥ


梓「唯先輩ストップ、ストップ!」

唯「♪~ほえ?」

梓「全体的になのですが、メロディーですしある程度自由に弾いていただいていいのですが、あんまりテンポ揺らされると伴奏がついていけないですし、もったりした印象になります」

梓「今は二人だけなんですが、本来はさらに合奏部が伴奏していますので…」

唯「そっかそっか、ごめんね。憂、スコア見せてくれない?」

134: 2010/11/30(火) 01:32:23.84 ID:PJl+uL2v0

憂「お姉ちゃん、ここのとこだよ」

唯「おお、確かに…」

梓「でもよく歌っているところはすごくいいと思います」

唯「ホントに!?」

梓「はい。一度私が1stを弾きます。唯先輩は憂とスコアを見ながら、特にバスを意識するようにしてリズムを確認してみてください」

唯「はい!」

憂「お姉ちゃん、私が指でなぞってあげるね」

唯「ありがと~、うい~」


~♪~


135: 2010/11/30(火) 01:38:20.59 ID:PJl+uL2v0
唯「……あずにゃんすご~い……」

梓「……それじゃあ……もう一回やってみましょう………」

梓「………そこ……音程が………」

梓「……ここの歌いどころはここを目指して………」

唯「……うん………了解………」

唯「………ここのボーイングどうしよう………」

唯「………ここは私に合わせてね…………」

梓「……………」

唯「……………」

憂「……………」

139: 2010/11/30(火) 01:49:33.02 ID:PJl+uL2v0

グツグツ

憂「今日はお鍋だよ~」

唯「おお!変わった鍋だねえ!」

梓「す、すごい…憂、これは何鍋?」

憂「今回はイタリアンテイストのシーフードトマト鍋です!」

唯「ヨーロピアンだねえ~」

140: 2010/11/30(火) 01:54:26.69 ID:PJl+uL2v0
梓「うう、たくさん練習しておなか空いちゃったから、すごくおいしそうに見える…」

憂「お姉ちゃんも梓ちゃんもすっごくがんばってたからね!たくさん作ったからいっぱい食べてね」

唯「おお!いただきま~す!!」

梓「いただきます!」

唯「はふはふ、ねえあずにゃん、今日二楽章かなり詰めたし、三楽章はどんな感じで行こう?」

梓「はふはふ、そうですね、やっぱり唯先輩はあのCDみたいに弾きたいですか?」

唯「憂、おかわり!そうだねえ、あのCD以外にもいろんな弾き方があるの?」

梓「結構いろいろな演奏がありますよ。特にバッハは様々な解釈がありますし、アレンジもかなりありますからね」

憂「二人とも真剣だね!ねえ、私もそのCD聴いてみたいなあ!」

唯「そうだね、ごはん食べたら聴こう!」

梓「いいですね、やる前にもう一度確認の意味も込めてそうしましょう」

142: 2010/11/30(火) 02:00:46.65 ID:PJl+uL2v0
梓「それじゃあ、今日はこのぐらいで帰ります。親も心配していると思いますので」

唯「うん、昨日今日とありがとうね。なんだか、あずにゃんのおかげでヴァイオリンすごく上達した気がするよ」

梓「そんな…それは私も一緒です。唯先輩と一緒に弾いていると…なんていうか刺激になります」

唯「そーお?」

梓「は、はい。それより唯先輩?ホントにこんなに練習していて大丈夫なんですか?確かに唯先輩がすごく勉強しているのはわかりました。ただ、その、それでも私が邪魔をしていないか心配で…」

唯「…あずにゃん、聞いて。私は絶対に受かるよ。だって…」

梓「え?」

唯「もし私が落ちちゃったら、あずにゃん責任感じちゃうでしょ。だから、絶対に受かる。だから、あずにゃんと一緒にいればいるほど私はがんばれるんだよ。だから、あずにゃんは邪魔なんかじゃないよ」

梓「ゆ、唯先輩…」

143: 2010/11/30(火) 02:04:26.48 ID:PJl+uL2v0

唯「だから、これからもよろしくね!」

梓「は、はい!」

唯「じゃあ、また明日は勉強するから、明日の分のあずにゃん分補給していい?」

梓「…どうぞ」

ギュ

唯「…」

梓「…」

144: 2010/11/30(火) 02:08:34.15 ID:PJl+uL2v0
――――――

―――――――――――――


梓(こうして、あるときは放課後の部室で、あるときは唯先輩の家で)

梓(様々なCDを聴いたり、バッハに関する文献を読んでみたり、憂にピアノで伴奏してもらったり)

梓(試行錯誤を続けながら、私と唯先輩の練習は続いていった)

梓(そして、唯先輩の受験の日がとうとうやってきた)

梓(唯先輩のことが心配でしょうがなかった私は、朝、唯先輩の家に向かっていた)

152: 2010/11/30(火) 07:40:57.74 ID:PJl+uL2v0

ピンポーン

憂「はーい、あれ、梓ちゃん、こんな朝早くにどうしたの?」

梓「おはよう、憂。唯先輩がちゃんと起きたか気になって…」

憂「…そのためにわざわざ?梓ちゃん、そんなにお姉ちゃんのこと…」

梓「あ、いや、そういうんじゃなくて!!」

梓「…なんか自分の目で唯先輩が起きて受験に向かうところを見ないと今日一日もやもやしそうで」

憂「そ、そう?学校で私に聞けばいいのに…」

ピンポーン

憂「はーい、って、律さんに澪さん!」

154: 2010/11/30(火) 07:44:16.53 ID:PJl+uL2v0
律「おはよー、憂ちゃん。唯もう起きてる?」

澪「寝過ごして受験不合格とかやらかさないか心配でな」

紬「おはようございます。唯ちゃんもう起きてる?」

憂「紬さんまで!?」

梓(…唯先輩、みんなから愛されてるんだなあ…)


澪「唯、ちゃんと受験票持ったか?」

唯「うん、大丈夫だよ」

律「そんなこと言ってる澪が実は忘れてきたりするんだよな~」

澪「そんなわけないだろ…、って、あれ!?受験票がない!!」

律「あ、こんなところに澪の受験票が~☆」

ボカッ

律「目が醒めたぜ…」

155: 2010/11/30(火) 07:48:07.10 ID:PJl+uL2v0

澪「ったく…、それじゃ、憂ちゃんたちとはこの辺りでお別れだな」

憂「あ、はい…」

梓「みなさん、がんばってくださいね!」

律「おう!それじゃな!」

唯「あ!忘れ物があったや!!」

憂「ええ!?」

梓「え!?大丈夫ですか、今から間に合うんです…か!?ふぐっ!」ダキッ!

唯「あずにゃん分補給し忘れてた~」

グリグリ

160: 2010/11/30(火) 07:59:17.58 ID:PJl+uL2v0
紬「…あらあら!」

澪「唯もよく飽きもせず抱きつくよなあ」

唯「えへへ~」

律「まったく、ほら、唯そろそろ行くぞ?」

唯「は~い。…あずにゃん、がんばってくるからね…」ボソッ

梓「絶対に、合格してください…」ギュッ

律紬「…」

澪「ほら、行くぞ」

唯「うん、よし、行くぞ~!!」

律「よ~し、それじゃあ行きますか」

162: 2010/11/30(火) 08:05:54.82 ID:PJl+uL2v0

憂「よし、私たちも学校いこ?」

梓「あ、家に忘れ物してきちゃった。憂、先に行ってて?」

憂「え?あ、梓ちゃん、遅刻しちゃうよ~!」

梓「ごめん、先生に言っておいて~!!」ダッ


梓「…」ハアハア

梓「財布の中…、1万円」

梓「ふう」

ガラガラ

梓(神様、私は先輩方が大好きです)

梓(でも、以前、先輩方が受験で落ちてほしい、と心の隅で思いました)

梓(そうしたらもっと一緒に居られる…。本当に自分勝手で、浅ましい考えを持っていました)

163: 2010/11/30(火) 08:10:07.65 ID:PJl+uL2v0
梓(あのことは謝ります。今年一年、私に不幸が起こっても構いません。)

梓(だから、どうか、どうか4人を同じ大学に行かせてあげてください)

ヒック..ヒック..

梓(どうか、あの4人を引き離さないであげてください)

パンッ パンッ

梓(これで、私にできることはやりました)

梓(みさなん、がんばってください)

梓(唯先輩、絶対に受かってくださいね)


165: 2010/11/30(火) 08:15:14.51 ID:PJl+uL2v0
澪「こ、ここがN女子大か…」
朝はこれでラスト。出かけてきます。


紬「どきどき…」

律「よ~し、覚悟しろN女子大!!!」

澪紬「お~!!!」

唯「がんばるぞ~!!」

唯(…)


――――――

―――――――――――――


183: 2010/11/30(火) 18:06:04.57 ID:fVoIMCWV0
さわ子「それで、今日はみんな来るの?」

憂「ええ、合格してたらみなさんで報告に来るそうです」

梓「あー…、なんだか緊張してきた…」

憂「も、もー梓ちゃんが緊張してド、ドウスルノー」

純「憂もね…」

ガラッ

純「あっ!」

梓「!」ドクン!

梓(うう、振り向けないよお…。もし、一人でもいなかったらどうしよう…)

梓(唯先輩がいなかったらどうしよう…)

184: 2010/11/30(火) 18:10:36.40 ID:fVoIMCWV0
ブルブル

純「ほらっ!梓!」

梓(!)

唯「あれー?」

澪「みんないる…」

律「さわちゃんまたお菓子くってんのかよ」

紬「お久しぶり~」

梓(あ、あ…)

梓「唯せんぱ…!うぐっ!?」ダキッ

唯「あずにゃん、久しぶりー!!」

梓「ぷはっ!!ゆ、唯先輩、今日来たってことは…!?」

唯「うん…、N女子大、合格したよ!!」ブイ

185: 2010/11/30(火) 18:15:13.29 ID:fVoIMCWV0
梓「!!ゆ、ゆいせんぱぁぁい!!!」ダキッ

唯「ふおおおおおおおおおおお!!!???」

梓「唯先輩よかった…よかった…」

ギュー--

唯「…よしよし、絶対に受かるって約束したでしょ?」

梓「は、はい」

紬「…まあ」

律「いやー、見せ付けてくれるねえ~」

梓「み、澪先輩もムギ先輩もおめでとうございます」

澪「ありがとう」

187: 2010/11/30(火) 18:20:16.12 ID:fVoIMCWV0
律「さあ、私にも祝福の抱擁を!!」

梓「うっ…」チラッ

唯「…」ジー

梓「り、律先輩よく合格しましたね~。あんなに遊んでたのに」

律「へ?」

梓「もしかしてムギ先輩のコネ入学ですか?」

紬「まあまあ」

律「梓…」ユラァ

梓「はう!律先輩、ギブギブ…」

紬「ふふっ、じゃあ、私お茶入れるわね!」

唯「…これで卒業まではまた部活できるね!」

澪「ああ、そうだな」

188: 2010/11/30(火) 18:25:22.74 ID:fVoIMCWV0
――――――

―――――――――――――


律(こうして、また今までどおり部活動が再開したのだが…)

澪「…」

紬「…」

律「…おかしい」

唯「え?」

梓「どこかおかしいところがありましたか?」

律「唯と梓が合いすぎてる!!」

190: 2010/11/30(火) 18:30:01.63 ID:fVoIMCWV0
澪「うん、リズムだけじゃない、ニュアンスとかも揃いすぎてるんだ!!」

梓「合ってるならいいじゃないですか!私はとても良かったと思います!」

唯「そうだよ~!澪ちゃんもこっちの方がいいでしょ~?」

澪「そ、それはまあそうなんだけど…」

律「なんか違和感が…」

紬「ま、まあまあ、少し休憩しましょう?私お茶入れるから…」

梓「あ、ムギ先輩、私も手伝いますよ?」

紬「えっ!?」

唯「よし、澪ちゃんりっちゃん、お茶入るまでさっきのところもう一回やろうよ!!」

澪律「えっ!?」

191: 2010/11/30(火) 18:36:07.92 ID:fVoIMCWV0
梓「♪♪」

紬「…」

唯「♪♪」

澪律「…」

澪(な…)

律(なんだかなあ…)

紬(う~む…)

澪律紬「…」


――――――

―――――――――――――

192: 2010/11/30(火) 18:42:06.01 ID:fVoIMCWV0
梓(3月1日)

梓(ついに唯先輩たちの卒業式がやってきた)


梓(桜、きれい…)

梓(卒業式が終わったら部室に来るように言われたけど何だろう)

梓(何か緊張するなあ)

ガラッ

梓「こ、こんにちはー」

唯律「…」スポッスポッ..

梓(卒業証書入れる筒で遊んでる…。今日も部活は平常運転なんだな…)

193: 2010/11/30(火) 18:45:47.99 ID:fVoIMCWV0
梓「あのー、今日私が呼ばれたのって…」

紬「もちろんお茶会するためよ?さ、座って座って」

律「いやー、あっという間の3年間だったなあ」

唯「あと5年くらい高校生やりたいよね」

さわ子「5年経ったら私三十路になっちゃうわね…」

唯澪律紬梓「…」シーン

さわ子「ちょっと!何か言ってよ!」

律「えーっと、さわちゃんはもう既に30歳の貫禄があるから大丈夫…」

さわ子「なぁんですってぇええ!!??」

律「ギャー!!」

194: 2010/11/30(火) 18:50:12.54 ID:fVoIMCWV0
澪「…よく私たちだけで3年間やってこれたなあ…」

梓「先輩たちが1年生のときって上級生はいなかったんですか?」

律「ほう!わたひが潰れかけては部活を再建しはんだへ!」ニョー

梓「え、すごい…」

律「いや、わたしのカリスマ性が人を惹きつけたというかー!」

澪「他の部活に入ろうとしてた私とムギを無理矢理引きづり込んだんだがな」

紬「引きづりこまれちゃった~!」

梓「はあ…。唯先輩も無理矢理入らされたんですか?」

律「唯は自主的に入ったんだぜ?」

梓「え!?」

195: 2010/11/30(火) 19:00:21.93 ID:fVoIMCWV0
唯「ふっふっふ、私が入ったおかげで正式に部と認められたのだよ」

梓「…ああ、お菓子に釣られたんですね」

唯「さすがあずにゃん、私のことよくわかってる~ぅ!」ダキッ

律「バカにされてるの気づけよ…」

唯「ふふっ」チラッ

梓(バカになんてしてない。もちろんさっきのは冗談。だって…)チラッ

紬「ねえねえ、梓ちゃんはどうして入部してくれたの?」

梓「…不覚にも新入生歓迎コンサートに感激してしまって」

律「んー?なに、もっとおっきな声でー!!」

梓「でも、いざ入ってみたら部長は適当だしお菓子ばっかりたべてるんでがっかりでした!!」

196: 2010/11/30(火) 19:05:14.41 ID:fVoIMCWV0

律「う、ぐえ~!!」

梓(そうだなあ、あの演奏を聴いたのが始まりだったんだ…。それで、先輩方に、唯先輩に出会えたんだ…)

唯「…ねえねえ、私の印象はどんなだった?」

梓「…!」

梓(入部した頃の唯先輩の感想かあ…)

梓「…いい印象と悪い印象、どっちから聞きたいですか?」

唯「えっ!!じゃ、じゃあ、わ、悪い印象からで…」

梓「じゃあ言いますね。唯先輩はだらしないし、ヴァイオリンの扱い方は知らないし弦の張替えも一人でできないし楽譜も読めないしすぐ抱きついてくるし、変なあだ名つけるし…」

唯「はぅ…」

197: 2010/11/30(火) 19:10:49.64 ID:fVoIMCWV0
梓「まだまだありますけど聞きます?」

唯「も、もういいです」ズーン

梓「遅刻の常習犯だしすぐに物事を忘れるしお菓子のことしか頭にないし全然練習しなかったし…」

唯「あぅぅぅ…!」

律「梓っ!ストップ、ストーップ!!」

梓「でも」

梓(でも)

唯「…!」

律「!」

梓「でも、一緒にバンド組んだらすごく楽しかったし、唯先輩の明るさに何度も助けられたし…」

梓(やだ、神様に誓ったのに…)ヒック

唯「あ、あずにゃん…?」

198: 2010/11/30(火) 19:15:56.70 ID:fVoIMCWV0
梓(神様が私の願いをかなえて4人を幸せにしてくれたのに)ヒック

梓「もう楽譜忘れても抱きついてきても怒らないから、怒らないから…」

梓(自分の気持ちが抑えられない…どうして私はこんなにわがままなんだろう…)

ヒック

梓「卒業、しないでよぅ…」

ヒック

ヒック

唯「……ありがとう、あずにゃん」

ギュッ

唯「ほら、泣かないで?」

梓「こ、子供扱い…しないでください…」

ゴシゴシ

199: 2010/11/30(火) 19:22:26.02 ID:fVoIMCWV0
唯「…今回あずにゃんを呼んだのはね、あずにゃんのために作った曲を聴いてほしいからなの」

律「泣いてたら聴き逃しちゃうぞー?」


200: 2010/11/30(火) 19:25:16.39 ID:fVoIMCWV0
梓(あんまり上手じゃないなあ)

梓(相変わらず律先輩は走るし)

梓(唯先輩の弾き方はデタラメ)

梓(でも、そこに澪先輩が入って、さらにムギ先輩が加わると)

梓(とっても素敵な音楽になる。まるで、ジグソーパズルのように)

梓(そんな4人が奏でる音楽は、初めて新歓演奏会を聴いたときのように輝いていました)


201: 2010/11/30(火) 19:32:36.13 ID:fVoIMCWV0
律「ほら、泣いてる場合じゃないぞ!今度は梓が部長なんだから!」

紬「どんな部活になるんだろうね!」

梓「う、う、今よりずっとすごい部活にしてやるです!」

澪「おお、その意気だ!」

紬「文化祭絶対に行くからね!」

唯「よし、それじゃあ、今からあずにゃんも一緒に演奏しようよ!」

梓「はい!」

律「お、いいな!よし、どうせだし、カセットにうちらの演奏録音しようぜ~!」

紬「おお、いいわねえ!」

梓(こうして、私たちは自分たちのできる曲をすべて録音することにしました)

梓(今までみんなでやってきた曲を)

202: 2010/11/30(火) 19:40:03.69 ID:fVoIMCWV0
梓(そして…最後の曲が終わりました)


律「よっしゃあ!これでうちらのアルバムが完成だな!」

澪「ああ。カセットだから、あとでパソコンに移して編集するか」

紬「いいわねえ!澪ちゃん、私にもデータちょうだい!」

梓「先輩方、お疲れ様です」

唯「ねえ、澪ちゃん」

澪「ん、どうした?唯にもちゃんとデータ渡すよ?」

唯「ううん、そうじゃなくて…、まだカセットに録音できる?」

律「うーん、もうB面もいっぱいじゃないか?」

澪「いや、まだもう一本カセットあるよ?まだ何かやりたい曲があるのか?」

203: 2010/11/30(火) 19:47:45.97 ID:fVoIMCWV0
紬「もしかして、唯ちゃんのソロコンサートかしら!?」

唯「ううん、違うよ。ね、あずにゃん?」

梓「え!?唯先輩、もしかして…」

唯「うん。あずにゃん、あれ、やろうよ。私、あずにゃんとの演奏を残しておきたい」

梓「唯先輩…」

律「お、なんだなんだ~?いつの間に二人で練習してたんだ?」

紬「まあ、唯ちゃんと梓ちゃんのデュオね!」

澪「へえ。なんて曲をやるんだ?」

唯「えへへ、それは聴いてみてのお楽しみだよ~?あずにゃん、楽譜持ってきてる?」

梓「もちろんです。それに、あれだけやればなくても弾けますよ!」

梓(唯先輩と二人でたくさん練習した大切な曲だから)

204: 2010/11/30(火) 19:53:43.11 ID:fVoIMCWV0
唯「それじゃあ」

梓「ええ、やりましょう」

唯「あずにゃん、ありがとっ!それじゃあ、りっちゃんたちは観客ね!!」

律「ほ~いほい。高みの見学させてもらうかな~」

澪「…よし、唯、録音の準備できたぞ」

紬「わくわく」

梓「唯先輩、Aください」

唯「はい」

A~

梓「ありがとうございます」

♪~

205: 2010/11/30(火) 20:00:58.66 ID:fVoIMCWV0
唯「いい?」

梓「はい。それでは、行きますよ?」

唯「…」コク

梓「…」

律(…なんだ?二人とも、真剣な眼つきになった…)

澪(この緊張感、一体何の曲をやるつもりなんだ?この前みたいにホッチキスじゃなさそうだが)

紬(唯ちゃん、梓ちゃん…)

梓「…スゥ」

梓「♪」

律(この曲は!!)

律澪紬(バッハのドッペルコンチェルト!?)

206: 2010/11/30(火) 20:06:26.16 ID:fVoIMCWV0
梓「♪」チラッ

唯「…」コクッ

唯梓「♪~」

紬(出だしは完璧にそろってるわね)

律(梓ならこの曲をやったことがあったとしてもおかしくない。でも、いつの間に唯はこんな曲を!?)

澪(…もうすぐソロだな)

梓「…」♪~

唯『オクターブのあとのパッセージなんだけど、上昇する音形と下降する音形とを分けて意識してみない?』

梓『いいですね、すべての音を同じように弾くとつまらなく聴こえますからね。それでは、それぞれに頂点を設けて、それを目指してクレッシェンド、デクレッシェンドしましょうか』

唯『いいねえ!こんな感じ?』

207: 2010/11/30(火) 20:14:36.95 ID:fVoIMCWV0
梓(…もうすぐ、唯先輩のソロ)チラッ

唯「…」スゥ

唯「♪」

律(うまい!)

澪(発音もいい…。それでいて後半のパッセージもすごく情感豊かだ)

梓「…」スゥ

唯梓「♪」

紬(二人の音が絡み合って…。なんていい曲なの…)

澪(伴奏部なしでここまで聴かせられるとはな)


唯梓「…」フゥ

澪(一楽章が終わったけど、二人の緊張が解けない)

律(まさか二楽章もやるつもりなのか!?)

紬(がんばれ、唯ちゃん、梓ちゃん!!)

208: 2010/11/30(火) 20:20:01.40 ID:fVoIMCWV0
梓「…」チラッ

唯「…」コクッ

梓「…」スゥ

梓「♪」

澪(おお、一楽章とだいぶ雰囲気を変えてきたな)

紬(ヘ長調のやわらかさがよく出てるわね)

律(気持ち入ってるな…、集中してる)

唯梓「♪」

澪(バスがいないのにメロディーが重くならない)

紬(かなり叙情的に歌いこんでるのに)

律(…まるで会話してるようだな。うまくお互いに支えあってる)

澪(バックからオーケストラが聴こえてくるよう)

唯梓「♪♪♪~」

209: 2010/11/30(火) 20:25:29.05 ID:fVoIMCWV0
唯梓「…」フゥ

律(二楽章も弾ききったか…。でも、楽器をおろす気配がないな)

澪(…まさか、全楽章通すのか!?)

紬(二人とも、いっけえ!!)

唯「…」スゥ

唯「♪」 梓「…」スゥ

唯梓「♪」

律(って、早!?)

澪(なんてスピード!!)

紬(まさかこのスピードで弾ききるつもりかしら)

210: 2010/11/30(火) 20:30:21.77 ID:fVoIMCWV0

梓「…」♪

梓『唯先輩、ちょっと三連符のリズムが甘いです。そうですね、どちらかというと前につんのめってますね…』

唯『うう…、だってね!だってね!その前まで16分でアンダーカウントしてるとよくわからないんだもん!?それに…』

梓『え?それに?』

211: 2010/11/30(火) 20:35:29.31 ID:fVoIMCWV0
唯『この三連符ってなんか今までの音符と違うんだよね…、だからこう、気持ちが入りすぎちゃって…』

梓『それで走っちゃうと…?』

唯『そうなの!』

唯「…」♪

梓『確かにここはアンダーカウントしづらいのである程度じゃ慣れも必要だと思います。メトロノーム使ってやってみましょう』

梓「…」♪

梓『…さっきメトロノーム使ったときはばっちりだったんですけどね…』

唯『あずにゃん、ごめん…』

梓『…でも』

唯『え?』

212: 2010/11/30(火) 20:40:40.21 ID:fVoIMCWV0
梓『確かにこの三連符はいままでにはなかった新しい要素です。唯先輩の弾き方が正しいのかはわかりませんが、聴いていてすごく心にくるものがあります』

唯『あずにゃん…』

梓『それは音楽をやる上ですごく大切なことだと思います。どうです、逆に全体のテンポをあげてやってみませんか?』

唯「…」♪

梓「…」♪

梓(三楽章をつめればつめるほど、唯先輩がこの楽章を弾いているときの集中力が増していった)

梓(これぐらいのテンポで唯先輩はぶれない。むしろ唯先輩の解釈、『らしさ』をよく表現できる)

梓(そんな唯先輩の演奏に私も合わせてみせる)

梓(二年間、同じ楽器を隣で弾いてきたんだから!!)

唯梓「♪♪」

213: 2010/11/30(火) 20:49:05.62 ID:fVoIMCWV0
澪(もうすぐ唯のソロ…)

律(このまま行くのか?)

唯「♪」

澪(おお、音量はピアノに落としてるけど相変わらず発音もいいし頑強な演奏…)

紬(弱くなってない。気持ちまでは落ちていない!)

律(唯のやつ、なんっつー集中力してやがるんだ!!??)

唯「♪」チラッ 梓「…」スゥ

唯梓「♪」

律(!梓のやつ…)

紬(こんな唯ちゃんを見るのは初めてかも)

澪(そして梓も…)

唯「♪」 梓「♪」

214: 2010/11/30(火) 20:55:00.43 ID:fVoIMCWV0
梓(もうすぐ8分音符のユニゾンのところだな)

梓『唯先輩、ここのところ、5小節目から雰囲気が変わるのがわかります?』

唯『そうだね、ちょっとそこのところちょっと表現変えたいよね』

梓(…)

唯『5小節目の頭二つの音量ちょっと落としてみるのはどう?』

梓『いいですね!一回やってみましょうか』

梓(…)

梓(きた…!)

梓「♪」

梓「♪」チラッ

唯「♪」チラッ

梓(!)ドキッ

215: 2010/11/30(火) 21:01:35.23 ID:fVoIMCWV0
梓(なんだろう、なんか今唯先輩と目が合った瞬間胸が…)

梓「♪」 唯「♪」

梓(…)

唯『ふ~、これで三楽章も通ったね!』

梓『はい!ようやくここまで来ましたね!全楽章出来ちゃうなんてすごいです!』

唯『はあ~、これで一応この曲も終わりかな?』

梓『…え?』ズキン

梓(…)

唯『ねえあずにゃん、受験前日うちに来ない?』

梓『え?前の日なんかに行ってもいいんですか!?』

唯『前日に詰め込んだってだめだよ。それより、多分、少しは私も緊張すると思うから…』

唯『えへっ、ごめんねあずにゃん…』プルプル

梓『唯先輩…』

梓(…どうして)

216: 2010/11/30(火) 21:06:35.73 ID:fVoIMCWV0
梓(どうしてこんなに唯先輩のことが浮かぶんだろう)

梓(…)

梓(もうすぐ二回目のユニゾン…)

梓(もうすぐ、この曲が終わっちゃう)

梓(どうしてこんなに胸が苦しいんだろう)

梓(どうして、こんなに気持ちが高鳴ってくるんだろう!)

梓(唯先輩!!!!)

唯「!!」♪~

律(なんだ、梓の音が…)

澪(今までは1stのサポート役をこなしていたのに…、雰囲気が変わった…?)

紬(! 梓ちゃん、がんばって!!)

唯(…あずにゃん)

217: 2010/11/30(火) 21:12:37.77 ID:fVoIMCWV0
唯「…」♪

唯「♪」 梓「!」

澪(8分のユニゾンの後も音量を落とさない!!)

律(このまま最後まで行くのか!?)

紬(…まだ出せるでしょう?)

梓「♪」 唯「!」

唯梓「♪」

律(すごっ!嵐のようなパッセージ…)

澪(最初から耳に残る三連符だったけど、これは圧巻だ!)

律(しかも、まだクレッシェンドしていく…!!)

澪(なんて演奏なの!!?)

紬(…)ジワッ

218: 2010/11/30(火) 21:18:09.91 ID:fVoIMCWV0
唯梓「♪」

唯梓「♪♪」

唯梓「♪♪♪」

唯梓「♪~~~」

・・・

唯「…」

梓「…」

律「…」

澪「…」

紬「…」

澪「…」パチ

律「…」パチ

律澪「…」パチパチパチ

219: 2010/11/30(火) 21:23:44.93 ID:fVoIMCWV0
パチパチパチパチ

澪「おつかれ!!」 律「いや~、すごい演奏だったn」

紬「だめ」

澪律「え?」


ヒック

澪律「…!」

梓「…」

梓「唯先輩…」

唯「…なぁに?」

梓「私…、まだ唯先輩のいいところを…言ってませんでしたね…」

唯「…」

220: 2010/11/30(火) 21:29:31.64 ID:fVoIMCWV0
梓「さっきも言いましたが、唯先輩はいつでも明るく振舞ってくれて。でも」

唯「…」

梓「それだけじゃなくて、いつも表には出さないけど、すごく気を遣ってくれて」

唯「…」

梓「音楽に対しても、唯先輩はヴァイオリンの扱い方も知らないし、弦の交換も出来ないのに…、私なんかよりも全然楽器を大切にしてて…私なんかよりもずっと楽器と一緒で…」

ヒック

唯「あずにゃん…」

梓「楽譜も読めないし、曲の知識も全然ないのにこんなに魅力的な演奏が出来て…」

ヒック

梓「こんなにも音楽に一生懸命で!!」

唯「…違うよあずにゃん」

222: 2010/11/30(火) 21:34:56.67 ID:fVoIMCWV0
梓「…グスッ」

唯「あずにゃんがそうさせてくれたんだよ。私一人じゃこうはなれなかった。あずにゃんと一緒に演奏して、考えて…」

律澪「…」

唯「私はただ楽器を触っていられれば幸せだった。みんなと演奏できればそれでよかった。でも、あずにゃんが音楽の本当の魅力はもっともっと大きいってことを教えてくれた。私は音楽が好きなんだって気づかせてくれた!」

唯「だから、私のいいところはあずにゃんが作ってくれたんだよ」

梓「唯せんぱぁい!!!」

ダキッ

梓「ゆいせんぱい…!!ゆいせんぱい…!!私、もうゆいせんぱいと一緒に音楽が出来ないのやだぁ…ゆいせんぱいとはなれたくない!! ゆいせんぱいのことが、ゆいせんぱいの音が大好きなのぉ…」

唯「あずにゃん、ありがと」

ナデナデ

224: 2010/11/30(火) 21:40:57.02 ID:fVoIMCWV0
梓「はぁ、はぁ…」

唯「あずにゃん、ちょっとがんばっちゃったね。大丈夫。さっき一緒に弾いたときに…、あずにゃんの音と一緒にあずにゃんの気持ちが伝わってきたから…。だから、もう言ってくれなくても大丈夫だよ」

梓「ぐすっ、だめです」

唯「え?」

梓「一番大切なこと、まだ言ってません」

唯「…あずにゃん、だめ」

梓「私」


梓「唯先輩のことが好きです」

225: 2010/11/30(火) 21:46:25.72 ID:fVoIMCWV0
澪「え?…えええええええ!!?」

梓「唯先輩を離したくない。もう唯先輩なしじゃ無理です」

澪「ちょ、えええ!!??」

律「お前はちょっとだまれ」ポカ

澪「!!???!!?」

紬「あらあら」

唯「あずにゃん…」

梓「…」

唯「ありがと、あずにゃん。でも、ごめんね」

梓「…」

唯「私たち女の子だし、急に言われても私返事できない…」

226: 2010/11/30(火) 21:53:12.41 ID:fVoIMCWV0
梓「そう…ですよね…」

唯「でもね、あずにゃん」

梓「はい…?」

唯「私、待ってるから」

梓「え?」

唯「一年間、新しい舞台であずにゃんのことずっと待ってるから。ね?」

梓「! は、はい!」

唯「そしたら…、私の答えを言うよ」

梓「グスッ、…いいんですか?唯先輩が受かって私が落ちるとでも思いますか?逃がさないですよ?」

唯「ええー!!?なんかひどい!!」

唯梓律紬「あはははははは!!」 

澪「!!???!?」

227: 2010/11/30(火) 22:00:31.28 ID:fVoIMCWV0
律「いやー。ムギいいもん見させてもらったなあ」

紬「そうね~、どうしてビデオカメラを持ってこなかったのかしら~」

梓「! ちょ、ちょっと!!今見たことは忘れてください!!!」

唯「ええ~、忘れちゃっていいの~…?」

梓「いや、あの、そうじゃなくて!!」

律「あっはっは!忘れろって言ってもなあ、ムギ?」

紬「ね~りっちゃん♪」

梓「???」

律「まだ録音続いてるし!!」

梓「えええええええええええええ!!!??」 唯「おおお~~…!!」

228: 2010/11/30(火) 22:02:49.12 ID:fVoIMCWV0
梓「今すぐ消してください!!」

律「むりむり~!そんなことしたらさっきの演奏も消えちゃうし~♪いいのかなぁ~♪」ニヤ

梓「そ、それは…」

紬「帰って早速ダビングしなきゃ!鑑賞用と、保存用と…」

唯「あ、ムギちゃんムギちゃん!私にも~!」

梓「あああああああ……そんなあ~…」

澪「!!??!??!?」

律「お~い澪、そろそろ帰ってこ~い…」

キャッキャッ 
ワタスデス~ ヤ~ダヨ
ダビング10コハイルワネ..


――――――

―――――――――――――

229: 2010/11/30(火) 22:07:00.88 ID:fVoIMCWV0
ここからエピローグです。てか、読んでくれてる人いるんだろうか…
ちょっと小腹すいたんで豚汁休憩してきます

235: 2010/11/30(火) 22:31:02.77 ID:fVoIMCWV0
梓(あれから1年が過ぎました)

梓(今日は私の引越しの日です)


唯「ふ~!これで、荷物全部だね!」

梓「はい。唯先輩の車があるおかげで助かりました」

唯「エッヘン!」フンス

梓「昨年の夏休みに唯先輩の車で出かけたときは氏ぬかと思いましたけどね」

唯「だって、あれはあずにゃんが海に行きたいなんて言うからあ~!」

梓「うっ…、あんなに海が遠いなんて知りませんでした…」

唯「でも、あのときは楽しかったねえ~」

梓「…はい。なんだかんだで、高校三年生も楽しめました。唯先輩のおかげです」

236: 2010/11/30(火) 22:36:47.60 ID:fVoIMCWV0
唯「えへへ~、憂のふりして学校に行ったのは自分でもなかなかがんばったと思う!」

梓「まさか修学旅行にまでくっついてくるとは思いませんでしたけどね。友達なんて憂が二人!?ってかなり驚いてましたよ?」

唯「あのときはあせった~!!でも、おかげで二人で夜景も見られたしね~!」

梓「ええ。唯先輩、来てくれてありがとうございました」

唯「あずにゃんを一年も放ってなんておけないよ!」

梓「ゆ、唯先輩…、あ、このオーディオセットどこに置けばいいですかね?」

唯「おお、さすがあずにゃん、良さそうなものをお持ちですなあ…」

梓「音楽やるならこれぐらい当然です。あ、唯先輩のパソコンってマックなんですね」

237: 2010/11/30(火) 22:41:20.88 ID:fVoIMCWV0
唯「iPodに音楽入れるのにいいんだよ~!」

梓「じゃあ、これもその近くに置かせてもらいますね」

唯「どうぞ~。あずにゃんもiPod持ってきた?」

梓「ええ。私もiTunes使わせていただきますね」

唯「いいよ~、何か面白い曲入れよっか?あ、そうだ、去年みんなで演奏した音源あるよ!!」

梓「ぶっ!!そ、そうですね、最後の演奏以外でお願いします…」

唯「ええ~?なんで~!?あずにゃんの愛の告白が…」

梓「もうっ!その話はしないでください!!」

238: 2010/11/30(火) 22:44:48.69 ID:fVoIMCWV0
唯「照れてるあずにゃん、かわい~!!」ダキッ

梓「んっ、唯先輩…」ギュッ

唯「…今日から、あずにゃんとここで一緒に暮らせるんだね」

梓「はい…、一年間はやっぱり長かったです」

唯「ごめんね?」

梓「…どうして謝るんですか。これからは離しませんから」

唯「あずにゃん…」

梓「…あ、そろそろ澪先輩の家に向かわないといけない時間じゃないですか?」

唯「え?ホントだ!あずにゃんの入学祝いなのに、あずにゃんがいなかったら意味がないもんね!」

239: 2010/11/30(火) 22:48:29.21 ID:fVoIMCWV0
梓「そうですね。今日は引越しがあるから、澪先輩が気を遣ってくれたんですよね」

唯「そうだよ!りっちゃんがごはん作ってくれてるんだって!」

梓「律先輩、ホントに料理上手なんですね…、意外です」

唯「そう?でも、最近は澪ちゃんもりっちゃんに料理教えてもらってるんだって~」

梓「そうなんですか。…さて、準備も出来たんで行きましょう!」

唯「うん!!」


――――――

―――――――――――――

240: 2010/11/30(火) 22:52:40.51 ID:fVoIMCWV0
梓「うわあ、夕暮れが綺麗ですねえ!」

唯「いいでしょ~。ちょっと高いところにあるから、自転車とかだと大変なんだけど、眺めがすっごくいいんだあ~」

梓「…唯先輩、一年間もあんな広い部屋を借りてて、家賃払うの大変だったんじゃないですか?これからは私が多めに家賃払いますから」

唯「ダメだよ~?二人で割り勘にしようって決めたじゃん。それに、私が一年間待つって言ったんだから。当然だよ」

梓「…私、先輩と二人で生活できてホントにうれしいです」

唯「あずにゃん、ありがと!…そうだ、澪ちゃん家行く前に…」

梓「…補給ですか?」

唯「うん!」ギュッ

梓「えっ!?唯先輩、あの、手を…?」

唯「うん、澪ちゃん家に着くまでこうやって手から少しずつあずにゃん分を補給するね…」

梓「唯先輩…」

ギュッ

242: 2010/11/30(火) 22:54:32.84 ID:fVoIMCWV0



――――――

―――――――――――――


唯「つかれたあ~!」

梓「もうへろへろですぅ~…」

バサッ

唯「あ、ダメだよあずにゃん!髪解いてからベット行かないと跡つくよ~?」

梓「う~ん、せんぱぁい、ほどいてぇ~?」

唯「あらあら、今夜は甘えんぼさんだねっ♪」

ホドキホドキ

梓「…いつから澪先輩と律先輩は同棲してるんでしたっけ?」

唯「う~ん、大学入ってわりとすぐじゃなかったっけなあ~?」

梓「なんだか、部屋の家具とか、物の配置とか…」

唯「えへへ、なかなか仲良くやってそうでしょ?」

245: 2010/11/30(火) 23:00:17.77 ID:fVoIMCWV0


梓「やっぱりそうなんですかね?」

唯「二人は直接言ってこないけどね、ムギちゃん探偵の意見によると、『あの二人は黒ね!』らしいよ!」

梓「ムギ先輩するどいからなあ…。間違いなさそう」

唯「今日も二人を幸せそうに眺めてたからねえ。去年のあずにゃんの告白のおかげであの二人の〝こころ〟も変わったみたい」

梓「そうですか…」

唯「…」

梓「…」

唯「ねえあずにゃん、あのね?」

梓「すぅすぅ…」zzz

唯「あずにゃん、…寝ちゃったの?」

梓「…」zzz

梓「ゆいせんぱぁい…すきですぅ…」zzz

唯「…ごめんね、あずにゃん」

247: 2010/11/30(火) 23:07:14.88 ID:fVoIMCWV0
ナデナデ

唯「まだ私の気持ち、直接伝えてないよね…」

唯「多分、言わなくっても伝わってると思うけど…」

チラッ

唯「…それじゃああんなふうに告白してくれたあずにゃんに悪いよね」

唯「一年間待ってたのはあずにゃんもだもんね…」

唯「…ふぅ」

唯「風邪引くよ?あずにゃん」

ファサ


唯「…」

唯「…」

唯(よぉし…!)

248: 2010/11/30(火) 23:12:49.84 ID:fVoIMCWV0
――――――

―――――――――――――


チュンチュン

梓「う~ん」

梓「…朝?唯先輩?」

梓「…あれ、いない」

梓(ん?メモ…。唯先輩の字だ)

唯『今日は一コマ目からだから先に行くね!』

唯『後で部室で待ってるよ!』

梓(そっか、今日は一コマ目からだから先に行くっていってたっけ…)

梓(えーっと、壁に唯先輩と私の履修登録表貼っておいたんだよね)

249: 2010/11/30(火) 23:21:34.25 ID:fVoIMCWV0
梓(うん、唯先輩は一コマ目からだな。私は…、二コマ目からか…)

梓「今何時なんだろ、って、やばっ!!そろそろ行かないと私も間に合わない!?」

バタバタッ

梓「筆記用具にテキストに、あと楽器と楽譜!」

梓「あ、そうだ、iPod聴きながら行こう!」

スチャ

梓「よし、行って来ま~す!!」

バタン

梓「あれ、アーティスト名、HTT…?唯先輩が入れておいてくれたんだ。せっかくだし、これ聴きながら行こうかな…?」


ピッー

251: 2010/11/30(火) 23:26:32.33 ID:fVoIMCWV0
――――――

―――――――――――――


ピッー

梓『私は唯先輩のことが好きです………』


律『まだ録音続いてるし!!………』


梓『あああああああ……そんなあ~…………』


ピッー


唯『あーこほんこほん』


唯『聞こえますか~?』

252: 2010/11/30(火) 23:29:04.49 ID:fVoIMCWV0
唯『えへへ、なんだかこういうときって緊張します』

唯『でも、ちゃんと言わなきゃね』

唯『今日は4月10日、時間はもう夜中です』

唯『天気は晴れ。窓から星がたくさん見えます』

唯『出会ってから三年が経ちました』


唯『私、平沢唯は、中野梓のことを―――』


おわり

255: 2010/11/30(火) 23:35:33.96
>>1乙にござりまする

引用元: 唯「2つのヴァイオリンのための協奏曲?」