1: 2012/03/12(月) 02:29:01.21 ID:SH3QDPwC0
P「ねぇ、スーパーアイドル伊織ちゃん」

伊織「もうその呼び方はやめなさいよね!」キィー

二年前俺と伊織は結婚した
当時トップアイドルだった伊織は引退して

伊織と初めて会って六年たつもう伊織も20歳だ
そして伊織の成人式がそろそろあるそんな日

P「なあ、振袖はほんとにレンタルでいいのか?」

伊織「はぁ…だから私はそれで十分よ、そう何度も着るものでもないし」

P「でも一生に一回だぞ、せっかくだしいいものを着てほしいんだ」

伊織「ありがとう、でも気持ちだけ受け取っておくわ」

3: 2012/03/12(月) 02:30:30.00 ID:SH3QDPwC0
こうなると伊織も頑固だから簡単には気持ちは変えないだろう
せっかくの成人式なんだから伊織にはレンタルで済ましてほしくない
レンタルでは伊織を大切に育ててくれたご両親にも申し訳がない

伊織のご両親にも晴れ着を見てほしいが
伊織と伊織のご両親は俺たちが結婚すると
報告しにいってから絶縁状態にあった

P「伊織ちゃん、伊織ちゃん」

伊織「なによ?気持ち悪いわね…どうしたの?」

P「ご両親にも晴れ着を見てもらおうよ」

伊織「ふん、いいのよあんな頑固者たちは…」

P「せっかくだし家族で記念写真でも撮った方がいいよ」

伊織「だから、いいって言ってるでしょ!」

どうやら怒らせてしまったみたいだ
ほんとは家族に会えなくてさみしいはずなのに

どうやら自然に仲直りは難しそうなので
伊織の実家に行って両親を連れてくるしかないのか

そう思った俺は次の日会社を休んで伊織の実家に行くことにした

4: 2012/03/12(月) 02:31:20.30 ID:SH3QDPwC0
P「やっぱ、でけぇ…」

伊織の実家についた俺はその広さに圧倒されてしまう
いきなりきてしまったけどご両親はいるだろうか
そんなことを思いながらチャイムを押した

はい、どちらさまですか?
そんな声がインターホンから帰ってくる

P「えーっと、伊織の夫です」

少々お待ちくださいと言われ十秒ほど待っていると門があいた
玄関まで行くと執事の新堂さんが待っていてくれた

新堂「どうぞこちらへ」

黙ってついていくと客室に通された
俺たちが結婚報告に来た時と同じ部屋だ


6: 2012/03/12(月) 02:31:39.78 ID:SH3QDPwC0
しばらく待っていると伊織の母親が現れた

P「お久しぶりです」

伊織母「どうもPさん、伊織は元気かしら?」

P「はい、二人で元気にやっています」

伊織母「それで今日はどうしたのかしら?」

P「実はですね…」

俺は伊織の母に成人式に振袖を着た伊織と
家族で写真を撮ってほしい旨を伝えた

8: 2012/03/12(月) 02:32:06.63 ID:SH3QDPwC0
伊織母「私としてはとりたいですよ、でもあの子はなんと?」

P「いやそれが素直にうんとは言ってくれなくて…」

伊織母「そうねぇ…
    夫も伊織とけんかしているから簡単にはいかないでしょうし」

P「お父様と話をさせていただけませんか?」

以外にも母親の方はあまり怒っていないみたいだった
あとは伊織の父親をどう説得するかみたいだ

伊織母「わかりました、では明日の夜夫と伊織と一緒に食事をしましょう
    その席で話してみてはどうかしら?」

P「ありがとうございます!では明日よろしくお願いします」

こうして以外にもあっさり話し合いの場を設けてもらうことができたので
その日の夜その話を伊織にした

伊織「はぁ…なに勝手なことしてくれてるのよ」

P「そんなこと言わずに俺のために来てくれよ」

伊織「もうわかったわよ…行けばいいんでしょ、
   ほんとあんたってお人よしよね…」

10: 2012/03/12(月) 02:33:57.27 ID:SH3QDPwC0
そして次の日の夜
伊織と二人で水瀬家の前に立っていた

伊織「久しぶりね…」

P「じゃあチャイム押すぞ」

伊織「ええ…」

チャイムを押しインターホンの声にこたえると門が開いた
玄関までの道のりを歩いているとき横を見ると
心なしか伊織も緊張しているみたいだった

新堂「お久しぶりです、お嬢様」

新堂さんが伊織に深く頭を下げると伊織はやさしく微笑んで

伊織「久しぶりね新堂、元気そうでよかったわ」

新堂「ありがとうございます、ではこちらにどうぞ」

そんなやり取りが終わると昨日の部屋に通された

P「ほんとこの家広いよな…」

伊織「こんな広さ無駄よ、無駄。だって五人家族よ!?」

なぜか伊織が怒っていると伊織の両親が部屋に来た

11: 2012/03/12(月) 02:34:31.81 ID:SH3QDPwC0
伊織父「久しぶりだね…」

P「お、お久しぶりです」

伊織「ふん…」

P「おい…、伊織ちゃんとあいさつしろよ」ボソボソ

伊織「どうもお久しぶりです…、お父様、お母様」

伊織母「久しぶりね、伊織」

しばらく四人でテーブルを囲み本題には触れず会話も弾むことなく食事をしていた
そして

P「あのっ…今日はご両親にお願いがあって伺ったんです」

伊織父「家内から聞いているよ、成人式のことだろう?」

P「はい、伊織の成人式をぜひ一緒に祝ってほしいんです」

13: 2012/03/12(月) 02:35:00.89 ID:SH3QDPwC0
伊織父「うむ…私も自分の娘を祝うことはやぶさかではないが、
    伊織はどうなんだ?」

伊織「ふん…別にどっちでもいいわ」

伊織父「そうか、ではやめておこう…」

伊織母「ちょっとあなた、そんな言い方しなくても…」

P「伊織もなんだその言い草は」

伊織「うるさいわね!大きなお世話よ」

この後終始無言のまま気まずい会食をすることになった
余計に関係を悪化させてしまったみたいだ
成人式を祝ってもらうどころじゃない
完全に失敗だ
このまま帰るわけにはいかないなと考えていた
すると伊織の父親が口を開いた

伊織父「伊織話がある、少し私の部屋にきなさい。
    Pくんはすこし待ってていてくれたまえ」

そういうと伊織の父親は部屋を後にした

伊織「じゃあちょっと言ってくるわね」

P「ああ…」

そういうと伊織も部屋を出て行った

14: 2012/03/12(月) 02:35:31.08 ID:SH3QDPwC0
P「大丈夫でしょうか?伊織は…」

伊織母「大丈夫よ…あの子本当はやさしい子だからあなたもよく知っているでしょ?」

それからしばらくの間俺と伊織の母は待つことになった。

伊織父「まあ座りなさい」

伊織「はい」

伊織父「どうだ?結婚生活は」

伊織「あの人と一緒に楽しくやっているわ」

伊織父「お前が嫁に行くと言った時私は反対だった。
    実際大した話し合いもせず追い返してしまうような結果になってしまった」

伊織「ええ…そうね」

伊織父「世間知らずな成人もしていない娘が社会人と結婚しようって言うんだ
    父親としては当然許すわけにはいかないと思った
    その時の気分に流されているだけだって
    もしかしたら水瀬家の財産を狙っているのかも知れないとも考えた
    お前にはちゃんと大学にいって
    ある時になったら育ちが同じようないい子と結婚するのが幸せだと
    ずっとそう考えていたんだ。」

伊織「………」

16: 2012/03/12(月) 02:37:00.35 ID:SH3QDPwC0
伊織父「でも今日のお前たちの顔を見てわかったよ
    別に私の思ってたお前の人生だけが幸せじゃないんだって」

伊織「お父様…」

伊織父「さっきは意地張ってすまなかった結婚の報告の時のことも合わせて謝らせてほしい」

伊織「いえ…こっちこそごめんなさい
   やっぱり私も家族に成人式を祝ってもらえたらうれしい…」

伊織父「ああ、それじゃあ私の方できちんと振袖は用意させてくれ
    たしかレンタルで済ますといっていたな」

伊織「いらないわ、どうせ何度も着ないもの」

伊織父「いや、親として最後の責任だと思って用意させてもらいたい」

伊織「にひひ、ありがとう……パパ」

伊織父「ふふ…じゃあPくんにもよろしく頼むよ」


17: 2012/03/12(月) 02:37:26.62 ID:SH3QDPwC0
伊織「あとね、さっきパパはパパの思ってた人生でも
   私が幸せになれるって言ってたじゃない?

   それはねあいつと出会っていなかったらそうかもしれないわ
   でもねあいつと出会ってあいつに特別で大切な感情を持てた
   一緒に暮らせないとしてもずっと愛してしまえるくらいにね
   だからあいつと出会った時点であいつと結婚するほか
   本当に幸せになるのはあり得ないと思えたの
   
   だから18でアイドルをやめて結婚したのよ…」

伊織父「そうか、わかったよ…ずっと幸せにな」

伊織「にひひ、あたりまえじゃない!じゃあねパパ!振袖楽しみにしてるわ」

18: 2012/03/12(月) 02:37:52.23 ID:SH3QDPwC0
ーーーーーーーーーーーーーー

伊織「お待たせ、帰りましょ」

P「おかえりもういいのか?」

伊織「ええ、じゃあねママ、成人式でまた」

この帰り道伊織はとても幸せそうな表情をしていた
その顔で俺まで幸せになってくるくらいに

数日後伊織の両親から伊織宛に振袖が届いた
それに袖を通した伊織はとてもきれいでかわいくて
はしゃいでいる姿は出会った頃の六年前と変わっていないあどけなさが残っていた

19: 2012/03/12(月) 02:38:15.05 ID:SH3QDPwC0
そして成人式には水瀬家でのお祝いのあと家族写真を撮ることになった

伊織父「きれいになったな、伊織」

伊織母「ふふ、とても似合っているわね」

伊織「あ、当たり前でしょ、トップアイドルだったんだからね!」

伊織は照れ隠しに誇らしげに胸を張る

これをきっかけに記念日だけじゃなく
ふとした日常に水瀬家の思い出を作っていってほしいと思えた

きっと日常の思い出の方が小刻みに鮮明に記憶を埋め尽くすはずだから

終わり

21: 2012/03/12(月) 02:39:44.32
はええよ
面白かった

23: 2012/03/12(月) 02:40:13.91
おつー

引用元: P「六年後の伊織」伊織「なに一人で言ってんのよ!?」