2: 2011/04/28(木) 01:09:53.22 ID:o2VEKWHI0

――この世界は、希望を持つ者を絶対に見捨てないの!


『1人の少女が笑います』


――ほら、ほぅら……お迎えが……

3: 2011/04/28(木) 01:11:20.47 ID:o2VEKWHI0
――お疲れさま、いっしょにいこ?

――うんっ!

――あなたたちの祈りを、絶望で終わらせたりしない

4: 2011/04/28(木) 01:13:55.97 ID:o2VEKWHI0
『希望を持つこと自体に価値を認め、希望そのものを肯定する、希望の神』

『彼女の新世界には魔女はいません』

『魔法少女は最期に希望を尽くして、彼女のもとに還っていくのでした』

『だから、魔女はもう生まれないはずでした』

5: 2011/04/28(木) 01:16:13.73 ID:o2VEKWHI0
ペンが踊り、文字は跳ねる。

『これは私の最期の記録です』

『私が残さなければ誰も覚えていないことになってしまう、世界の真実です』

6: 2011/04/28(木) 01:22:21.18 ID:o2VEKWHI0
――うっ

――マミさん?

――おいどうした!?


――あぁぁっぁぁああ!!

7: 2011/04/28(木) 01:25:35.44 ID:o2VEKWHI0
『広がる歪みと極彩色の空間』

『二度と有り得ないはずだった』

『この光景は』


――何だよこれ

――どうなってんだよっ!?

――魔女!?

8: 2011/04/28(木) 01:27:36.00 ID:o2VEKWHI0
『私の中に封印された記憶を呼び覚ましました』

『魔女――希望から絶望へ堕ちた、魔法少女のなれの果て』

『逃れ得ぬ運命』

――でも、まどかはもう絶望する必要なんてないって言った!!

――まどか

――ねえ、まどか

――どうなってるのよ、まどか!

9: 2011/04/28(木) 01:28:59.10 ID:o2VEKWHI0
――あれが魔女、だね? 暁美ほむら

――インキュベーター!


『現れたインキュベーターは言います』


――僕たちはついに君の言う、希望の神の存在を感知した。

――彼女はこの宇宙の外に確かに存在している。

――まどか!

――まどかに何があったというの!

10: 2011/04/28(木) 01:31:37.22 ID:o2VEKWHI0
『世界の法則を体現するだけの彼にとって、どんな現象も驚くには値しないのです』


――神は弱っている

――彼女の祈りは膨大な希望のエネルギーによって維持されてきた

――でも

――全世界、いや無数に枝分かれした全時空で、一体どれだけの絶望が

――撒き散らされているか、わかるかい?


『神様は絶望を消し去るわけじゃないのです』

11: 2011/04/28(木) 01:36:32.24 ID:o2VEKWHI0
――鹿目まどかは限界さ

――インキュベーターとしてもそろそろ行動を起こさないとね

――また、みんなの希望を食い物にするつもりなの!?


『希望が絶望を生むなんて、希望を抱くことが間違いだなんて、おかしいと思いませんか?』

『そんなルール変えてみせると宣言した、神様の意志に従いたい』

12: 2011/04/28(木) 01:41:48.34 ID:o2VEKWHI0
――ごらんよ これが今の神の有り様だよ


『それは例えるなら日食でした。光に闇が取り入り侵食していく様子でした』


――ここは鹿目まどかの生み出した希望の極点にして絶望の終着点

――君たちの言葉で言えば……天国かな?

――まどか!!


『ぐるぐると螺旋を描き、神様のもとに収束していく絶望』

13: 2011/04/28(木) 01:42:57.01 ID:o2VEKWHI0
――ごめんね、ほむらちゃん……わたし、みんなを助けたかった……

――神様になって、みんなを救おうなんて、調子に乗ってたよ……

――これでも、がんばったんだけどね……

――だけど……だけどもう、ちからが……ないの……

――マミさんも、ほむらちゃんも、助けられない……

――ごめんね、わたし、弱くって……!


『神様だって泣くのです』

14: 2011/04/28(木) 01:46:28.69 ID:o2VEKWHI0
――世界って重たいね……絶望って……重たいね……

――わたしは、こんな場所にひとりぼっちで……

――みんなの絶望を背負って、いつまでも?

――わたしがやってきたことって、結局……!


『希望の神様は、絶望しようとしていました』


――あなたが絶望したら、世界の希望はどうなるの!!

――あなたは神様なんだから……何だってできるはずでしょ!?

15: 2011/04/28(木) 01:52:34.69 ID:o2VEKWHI0
――わたしはね……わたしの力はね

――みんなの希望なの

――なら

――なら、私が希望をっ!!

――あなたに祈りを!!


『私は両の手を合わせ、祈りました』

16: 2011/04/28(木) 01:53:22.66 ID:o2VEKWHI0
――大丈夫、もう大丈夫だよまどか

――あなたは1人じゃない

――ほむらちゃん……!

――1人で全てを背負おうとしないで

――あなたが絶望しても、私は希望をあげるから!!


――まどか?

17: 2011/04/28(木) 01:55:26.50 ID:o2VEKWHI0
『気がつくと私は何もない虚空を漂っていました』

――ほむらちゃん!

『いきなり後ろから抱きついてきたのは……』

――まどかっ

――嬉しい……嬉しいよ、ほむらちゃん

――大丈夫なの?

――時間を止めてるの。ほむらちゃんと久しぶりにお話したくって

18: 2011/04/28(木) 01:56:13.31 ID:o2VEKWHI0
――わたしのこともちゃんと話せてないしさ

――で、でも今は

――今だからだよ

――ほむらちゃんの祈りがわたしに力をくれてる

――何でも聞いて。今じゃないと、次はずっと先になっちゃうよ?

『降りてくる光と這い上がる闇が互いに混じり合って空間を定めていきます』

19: 2011/04/28(木) 01:58:20.39 ID:o2VEKWHI0
――過去と未来の全ての魔法少女を救おうなんて……勝算はあったの?

――そんなのはなかったよ。でもあのときは自分はどうなってもいい
みんなを救えればそれでいいって思ってたから

――どんな感じなの?
過去と未来の全てが見えるっていうのは?

――うーん、言葉にできないよ

『神様は困ったような顔をしました』

『私の胸にはある疑念が広がります』

20: 2011/04/28(木) 01:59:25.49 ID:o2VEKWHI0
――まさか……あなた裏では他の子と話してて私とは話半分なんじゃ……

――ち、ちがうよ! そんなわけないよ!

――冗談よ、かわいいかわいい女神様

――むぐぐ……

21: 2011/04/28(木) 02:00:36.94 ID:o2VEKWHI0
――消えた魔法少女は、どこへいくの?

――わたしのところへ

――そして最後の希望を胸に抱いて安らかに眠るんだよ

――いつか、わたしもまどかと一緒になれるのね

22: 2011/04/28(木) 02:01:30.71 ID:o2VEKWHI0
――最後に聞くわ

――これは夢? それともあなたの世界なの?

――わかんない

――わかんないけど、なんでもいいよ

――ほむらちゃんとこうしてまたお話できるんだから

――そうね

――いつかまたここで。会えたらいいわね

――会えるよ、いつか、必ずね。

23: 2011/04/28(木) 02:02:29.20 ID:o2VEKWHI0
『私が祈りを捧げると、闇は晴れていきました』


――そんな!


『心を持たないインキュベーターが、驚愕していました』


――たった1人の祈りが、世界を救えるわけがない……!!


『光は神のもとにたゆたい、神は闇を吹き飛ばしていきます』


――1人じゃない

――私たちは1人じゃない

――彼女のことを、忘れぬ限り

24: 2011/04/28(木) 02:05:17.08 ID:o2VEKWHI0
『闇が晴れていくと、そこには数え切れないほどの、少女がいました』

『皆が、祈りを捧げていました』

『希望の神様、鹿目まどかへ』


――みんな!!

――わたしなんかのために

――ありがとう

25: 2011/04/28(木) 02:06:05.74 ID:o2VEKWHI0
――みんな、ありがとう!!


『神様は感謝の涙をこぼし、燃え上がる花弁の弓を構え、光の矢を射ました』

『全ての絶望を葬るために』


――がんばって……まどか……!

26: 2011/04/28(木) 02:09:23.64 ID:o2VEKWHI0
マミ「あら、暁美さん? やっと目が覚めたのね」

ほむら「マミさん……!」

杏子「なんだ? なんか書いてたのか?」

27: 2011/04/28(木) 02:11:29.19 ID:o2VEKWHI0
『やっぱり神様は偉大なのでした』

『私は重ね重ね、神様の慈悲を噛みしめて』

28: 2011/04/28(木) 02:13:17.13 ID:o2VEKWHI0
ほむら「……そうね」

ほむら「……ほんの少しの、奇跡と」

ほむら「……希望の」

ほむら「……おはなし、よ」


マミ、杏子「……?』

29: 2011/04/28(木) 02:15:39.52 ID:o2VEKWHI0
『幾多の戦いを潜り抜け』

『ようやく私は、終わりを迎えようとしていました』


――あぁ、もう、限界ね

――やっと

――やっと、会えたねっ……ほむらちゃん……!!

――ひさしぶりだね、まどか

――これからは、ずっといっしょだよ!!

――ええ、そうね、そうなんだよね

30: 2011/04/28(木) 02:21:34.21 ID:o2VEKWHI0
『神様……いえ』

『まどかは』

『遠い日の、遠い世界の記憶の通りに、微笑んでいました』

――さ、いっしょにいこ?


ほむら「……おわり」

32: 2011/04/28(木) 02:32:12.19
おつ

引用元: ほむら「消えた魔法少女は、どこへいくの?」