1: 2017/07/18(火) 21:46:33.588 ID:sXdPCUCI0
ガヴリール「……」カチカチ

ヴィーネ「……」

ガヴリール「……」アタマポリポリ

ヴィーネ「ねえ、ガヴ」

ガヴリール「ん?なんだよヴィーネ」

ヴィーネ「長くなってきたし、あんたそろそろ髪切ったら?」

ガヴリール「別にいいじゃん……めんどくさいし、そんなことにお金使いたくないし」

ヴィーネ「女の子なんだし、もっと気を遣わないとだめよ」

ガヴリール「めんどくさ……あ、そうだ。ヴィーネが切ってくれない?」

ヴィーネ「えっ?」キョトン

2: 2017/07/18(火) 21:47:50.286 ID:sXdPCUCI0
ガヴリール「私はお金をかけずに、しかも外に出る労力を使わずに髪を切れる」

ガヴリール「ヴィーネは私の髪にたっぷり触れる」

ガヴリール「これぞウィンウィンの関係だ」

ヴィーネ「……なんか腑に落ちないところがあるんだけど」

ヴィーネ「っていうか私、髪なんて切ったことないわよ?」

ガヴリール「大丈夫、ちょっと全体的に梳いて、前髪を揃えてくれればいいから」

ヴィーネ「でも……失敗したら怖いし」

ガヴリール「失敗しても別に恨みはしないから、まあ気軽にちょちょいとやっちゃってよ」

ヴィーネ「そう……じゃあ、やってみようかしら」


4: 2017/07/18(火) 21:49:28.840 ID:sXdPCUCI0
ガヴリール「櫛、髪切りはさみ、梳きばさみ、ヘアピンっと」ズラーッ

ガヴリール「こんなもんでいいだろ」

ヴィーネ「ずいぶん用意がいいのね……」

ガヴリール「天界にいたころお母さんがよく切ってくれててさ。その時使ってたのを持ってきたわけ」

ガヴリール「いまでもたまに自分で切ったりしてるし」

ヴィーネ「へえ……。え、じゃあ今回も自分で切ればいいじゃない」

ガヴリール「それすらもめんどくさい……」ダラーン

ヴィーネ「あんたねえ……」ハァ

6: 2017/07/18(火) 21:50:34.935 ID:sXdPCUCI0
ガヴリール「で、問題はどこで切るかってことだけど」

ゴチャゴチャ…

ヴィーネ「この散らかった部屋じゃ無理ね……」

ガヴリール「別にいいじゃん、切った後で掃除すれば一石二鳥でしょ」

ヴィーネ「私が切りにくいのよ!」

ガヴリール「しょうがないな……じゃ、あそこしかないな」

ヴィーネ「?」

7: 2017/07/18(火) 21:51:36.859 ID:sXdPCUCI0
ガラガラッ

ガヴリール「ここなら部屋より片付いてるし、後片付けしやすいだろ」

ヴィーネ「洗面所ね。たしかに片付いてはいるけど……」

ガヴリール「おあつらえ向きに鏡もあるし、ちょうどいいだろ」

ヴィーネ「ええ、そうね」

ヴィーネ「……」ジーッ

ヴィーネ(私とガヴって、こんなに身長差あったんだ……ガヴちっちゃかわいい……)

ガヴリール「ヴィーネ?どうかした?」

ヴィーネ「なっ、なんでもないわよ!早く切りましょ!」アセアセ

9: 2017/07/18(火) 21:52:51.812 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「洗面台と床に新聞紙を敷いて……」バサッ

ヴィーネ「鏡の正面に椅子を置いて、と」

ヴィーネ「これで切った髪の毛をあとでまとめて捨てられるわね」

ヴィーネ「排水溝に髪の毛を流すと詰まっちゃうからね、絶対やめなさいよ?」

ガヴリール「なるほどー。主婦の知恵だな」

ヴィーネ「だれが主婦よ……」

12: 2017/07/18(火) 21:54:13.077 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「大き目のビニール袋ってあるかしら?」

ガヴリール「ゴミ袋用のポリ袋でよかったら……このへんに」ガサガサ

ガヴリール「お、あったあった。ほら」ポイッ

ヴィーネ「ありがと。これの底の部分を切って~……」チョキチョキ

ヴィーネ「頭からかぶせて、裾を折り返せば……ほら!ヘアーエプロンの完成!」

ガヴリール「へあー……なんて?」

ヴィーネ「髪の毛が服とかにつかないようにする道具よ」

ガヴリール「ほう……便利だけど、なんか子ども扱いされてるみたいだな」

ヴィーネ「あ、ごめん……嫌だった?」

ガヴリール「ううん、別に? 頼んだのは私なんからさ、嫌なわけないよ」

ヴィーネ「そう? ……よかった」

13: 2017/07/18(火) 21:55:23.175 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「それじゃ、始めるわよ」

ガヴリール「お願いしますよ、店長さん」チョコン

ヴィーネ(椅子に座ると、ますますちっちゃいわね……)マジマジ

ガヴリール「……なんか失礼なこと考えなかったか?」

ヴィーネ「え、いや、そんなことないけど……」アセアセ

ガヴリール「急かすようで悪いけど、このあとネトゲのイベントがあるんだよね」

ヴィーネ「……はいはい、注文の多いお客さんね」

14: 2017/07/18(火) 21:56:12.715 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「ふんふんふふ~ん♪」

ヴィーネ「お櫛で御髪(おぐし)を梳かします~♪」

ヴィーネ「ぐっしぐっしぐっし~♪」

ガヴリール(また変な歌を……)

ヴィーネ「……もう、ろくに手入れしてないからボサボサじゃないの」

ガヴリール「別にいいじゃん、めんどくさい」

ヴィーネ「ちゃんと整えてあげれば……ほら!こんなに綺麗なのに」サラサラ

ガヴリール「……そう、かな」

ヴィーネ「見た目だけでも天使らしくしないとダメよ?」

ガヴリール「さらっと失礼なこと言うな」ムスッ

15: 2017/07/18(火) 21:58:28.887 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「……」サラサラ

ガヴリール「……」

ヴィーネ「……」ススーッ サラサラ

ガヴリール「……あのー、ヴィーネさん?」

ヴィーネ「んっ!?何?」ビクッ

ガヴリール「いやー、いつまで髪触ってるのかなって」

ヴィーネ「あっ、ごめん!なんか手触りよくって……」

ガヴリール「……まあ、別に好きなだけ触っててもいいんだけど……」ボソッ

ヴィーネ「えっ、でもゲームの時間が……」

ガヴリール「それとこれとはっ!……別問題だし」

ガヴリール「切ってもらう対価としてこれくらい払ってもいいかなー、なんて」

ヴィーネ「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね♪」

16: 2017/07/18(火) 21:59:59.209 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「……」ススーッ サラサラ…

ヴィーネ(まっすぐストレートな、透き通るような綺麗な金髪)

ヴィーネ(こうやって指を絡ませると沈み込むように馴染んで、すーっと素直に指が通る)

ヴィーネ(ずっとこうやっていたくなる、クセになる感覚)

ヴィーネ(なんだか懐かしい感じがするのは何でかしら)

ガヴリール(なんだろ、ヴィーネに髪触られるの、嫌じゃないっていうか)

ガヴリール(ヴィーネの指先触れられてる髪から、優しさが伝わってくる)

ガヴリール(気持ちいいな……)トローン…

ガヴリール(なんか懐かしい感じがするのは何でだろう)

20: 2017/07/18(火) 22:01:14.338 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「……」ボーッ

ガヴリール「……」ボーッ

ヴィーネ「はっ!私ったら何を……」

ガヴリール「うわっ!そ、そうだよ何ぼーっとしてんの!」

ヴィーネ「ガヴだってぼーっとしてたじゃない!」

ガヴリール「しっ、しーてーなーい!」

ヴィーネ「してましたーっ!」

ガヴィーネ「むぅ~~っ……!」

21: 2017/07/18(火) 22:02:35.972 ID:sXdPCUCI0
ガヴリール「……」ジーッ

ヴィーネ「……」ジーッ

ガヴリール「……ふっ」

ヴィーネ「ふふっ」

ガヴリール「なに張り合ってんだよ私たち」

ヴィーネ「ほんとにね……ふふっ♪」

ガヴリール「ま、緊張も解けたってことで……そろそろお願いするよ」

ヴィーネ「わかったわ、待たせてごめんね」

22: 2017/07/18(火) 22:03:17.697 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「じゃあ、切っていくけど……ほんとにいいのね?」

ガヴリール「大丈夫だって。私も見てるから、ミスってたら言うからさ」

ヴィーネ「わかったわ。じゃあまずは梳きばさみで全体を軽くしていくわね」

ガヴリール「ういーっす」

ヴィーネ「……」チョキチョキチョキ

ガヴリール「……」

ヴィーネ(緊張する……)チョキチョキ

ガヴリール「そんなに強張らなくていいよ、ちゃんとできてるし」

ヴィーネ「そう?ならいいんだけど」

23: 2017/07/18(火) 22:04:08.389 ID:sXdPCUCI0
チョキッ チョキチョキ

ヴィーネ(全体のバランスを考えて……毛量が偏らないように)

ヴィーネ(意外と難しいわね……)

ガヴリール「ヴィーネ?」

ヴィーネ「ん? どうしたのガヴ?」

ガヴリール「暇だからさ、なんか話してよ」

ヴィーネ「あのねえ……ガヴは暇かもしれないけど私は集中してるのよ」

ガヴリール「じゃあ歌でもいいよ。料理してるときとか歌ってるじゃん」

ヴィーネ「あ、あれ聞いてたの……? ちょっと恥ずかしいんだけど」テレッ

ガヴリール「あれ聴くの結構好きなんだよね、楽しそうな感じで」

ヴィーネ「そうなの……/// で、でも今は歌わないわよ、絶対!」

25: 2017/07/18(火) 22:05:13.308 ID:sXdPCUCI0
~5分後~

ヴィーネ「ふんふんふふ~ん♪」

ヴィーネ「綺麗な金髪きっちり切って~♪」

ヴィーネ「ちょきちょきちょきちょき梳きましょう~♪」

ガヴリール(歌ってるじゃん……もしかして無自覚なのか?)

ガヴリール(……でもなんか、聴いてると安心するというか)

ガヴリール(昔、お母さんに髪を切ってもらったの思い出すな……)

ガヴリール「お母さん……」ボソッ

ヴィーネ「はっ!?私はあなたのお母さんじゃないわよっ!」クワッ!!

ガヴリール「なんだその過剰反応!?」ビクッ

27: 2017/07/18(火) 22:06:27.202 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「うん、だいたい梳けたわね。どう?」

ヴィーネ「見た目はそんなに変わらないんだけど……鏡を見てみて?」

ガヴリール「どれどれ……おおー、いいじゃんいいじゃん!軽くなって涼しくなったよ」

ガヴリール「ヴィーネって理容師の素質あるんじゃない?」

ヴィーネ「悪魔の素質は無いのにね……」ドヨーン

ガヴリール「ちょっ、勝手に落ち込むなよ……褒め損じゃん」

ヴィーネ「……でも、ありがとうね。ちょっと自信持てたわ」

ガヴリール「あと、前髪も伸びてるから揃えてほしいんだけど……頼める?」

ヴィーネ「もちろんよ。理容師ヴィーネさんに任せなさい!」ニコッ

28: 2017/07/18(火) 22:07:40.027 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「それじゃあ今度はこっちを向いて……っ!」ドキッ

ヴィーネ(わかってたけど、前髪を切るには向き合わないといけないのよね……)

ガヴリール「はいよ、椅子をヴィーネの正面に置けばいいんだな」クルッ

ガヴリール「……ヴィーネ? どうしたんだよ固まって」

ヴィーネ「あ、えっと……見つめられると緊張するな、というか」

ガヴリール「切ってる間は目を瞑るから大丈夫だろ」

ヴィーネ「あー……それもそうね」

ヴィーネ(それでも耐えられるかしら……)

30: 2017/07/18(火) 22:08:53.149 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「長さはどれくらいがいいの?」

ガヴリール「目の上くらいかな。今のままだと完全に目が隠れちゃってるし」

ヴィーネ「前髪って結構印象変わるわよね。責任重大……」ドキドキ

ガヴリール「どうせ私のことなんて誰も見てないんだし、テキトーでいいんだよテキトーで」

ヴィーネ「いいわけないでしょ!!」

ガヴリール「うぇっ!?」ビクッ

ヴィーネ「あ、ごめん大声出して……でもきっと、誰も見てないなんてことはないわよ」

ガヴリール「ふ、ふーん……でも私のことを見てるなんて、相当物好きな奴なんだろうな?」ニヤッ

ヴィーネ「……本当にね?」クスッ

31: 2017/07/18(火) 22:10:06.075 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「まずは前髪を横に揃えて切って……」チョキッ

ヴィーネ「自然に見えるように、細かくはさみを入れればいいわね」チョキチョキ

ヴィーネ(最初は怖かったけど、案外いけるものね)チョキチョキ

ヴィーネ(……)ジーッ

ヴィーネ(……目を瞑ってこっちを向いてるガヴを見てると……なんだか)

ガヴリール「……」

ヴィーネ(キスされるのを待ってるみたいに見えてくるような……)

ガヴリール「……ヴィーネ? 手が止まってるみたいだけど、どうかした?」

ヴィーネ「ひゃいっ! な、なんでもないわ! もうすぐ終わるからっ!」アセアセ

ガヴリール「?」

32: 2017/07/18(火) 22:11:23.457 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「ふぅー……終わったわよ」

ガヴリール「どれどれ……おお、悪くないじゃん!視界が開けた!」

ヴィーネ「短すぎない? 変な形じゃない?」

ガヴリール「大丈夫、ちゃんとできてるよ。ありがと」

ヴィーネ「じゃあ、片付けましょうか。ビニール袋を外して、新聞紙をまとめて……」

ガヴリール「あ、ちょっと待って」

ヴィーネ「どうしたの?」

ガヴリール「もうひとつお願いがあるんだけどさ……あとで、さっきみたいに髪を撫でてくれない?」

ヴィーネ「……えっと、それは……」

ガヴリール「髪を切ったあとの手触りを確認してほしいの!それだけ!」プイッ

ヴィーネ「……うん。わかったわ」クスッ

33: 2017/07/18(火) 22:12:30.424 ID:sXdPCUCI0
ヴィーネ「……」サラサラ

ガヴリール「……どう?」

ヴィーネ「ん、柔らかくて良い感触よ。」

ガヴリール「あのさ……さっき撫でられた時さ、なんか懐かしい感じがしたんだ」

ヴィーネ「えっ、ガヴもなの? 実は私も思い出して……」

ガヴリール「ヴィーネもだったんだ……なんか嬉しいな」

ヴィーネ「忘れるわけがないじゃない、大切な思い出よ」

ガヴリール「それもそうか」フフッ

34: 2017/07/18(火) 22:13:32.174 ID:sXdPCUCI0
ガヴリール「私が天界から下りてきて、私たちが出会って友達になって」

ヴィーネ「ガヴったら本当にいい子だったから、可愛くてつい何回も頭を撫でさせてもらったわね」

ガヴリール「……今はこんな駄天使だけどな」

ヴィーネ「……こんな駄天使でも、ガヴはガヴよ。変わらないわ」

ガヴリール「この懐かしさは、あの時と同じ感触だったんだな」

ヴィーネ「……髪を整えるだけで、こんなに印象が変わるなんてね」ナデナデ

ガヴリール「髪は女の命とはよく言ったもんだな」

ヴィーネ「ねえ、どれくらい撫でてていいのかしら」ナデナデ

ガヴリール「……ヴィーネの気の済むまで、ずっと撫でてていいよ」

ヴィーネ「……うん」ナデナデ

…………

……

37: 2017/07/18(火) 22:15:32.614 ID:sXdPCUCI0
ガヴリール「今日はほんとにありがとな、助かった」

ヴィーネ「ううん、私もちょっと楽しかったわ。時間かかっちゃってごめんね、イベントがあったんでしょ?」

ガヴリール「いいんだよ、ゲームなんてちょっとの課金で逆転できるんだし」ガシッ

ヴィーネ「そんなことしてるからお金がなくなるのよ……」

ガヴリール「ヴィーネが散髪してたら、散髪代が浮くようになるからいいんだよ!」ニヤッ

ヴィーネ「あんたねえ……」

ガヴリール「あのさ、迷惑じゃなかったら……これからも頼みたいんだけど、どうかな」チラッ

ヴィーネ「……いいに決まってるじゃない!」ニコッ

ヴィーネ「だって私は、ガヴ専属の理容師さんなんだもの、ね♪」


おしまい。

39: 2017/07/18(火) 22:16:41.500 ID:sXdPCUCI0
ありがとうございました。ヴィーネがガヴの髪を切るだけのお話でした。

41: 2017/07/18(火) 22:19:11.697
天才か

43: 2017/07/18(火) 22:25:49.487
おつ

引用元: ガヴリール「ヴィーネに髪を切ってもらおうかな」