1: 2012/01/22(日) 01:58:51.05 ID:eVBdjDC2O
お仕事を終えた帰りのバスの中

そう言って笑ったやよいちゃんはとっとも可愛かったです

二人だけのお仕事はあまり無いから、なんだか新鮮でした

5: 2012/01/22(日) 02:03:23.30 ID:eVBdjDC2O
「雪歩さん、一人っ子って寂しくないですかぁ?」

バスが走り出して少し経ったころ、窓側の座席に座ったやよいちゃんにそう聞かれました

「寂しくはないけど…やよいちゃんを見てると羨ましくなるかなぁ」

「へ?そうなんですか?」

「賑やかそうだから」

7: 2012/01/22(日) 02:05:31.77 ID:eVBdjDC2O
「けっこう大変なんですよ?」

「やよいちゃんは長女だったよね?」

「はい!私、こう見えてもお姉さんなんですぅ」

お姉さんかぁ…

私も、やよいちゃんみたいな妹だったら欲しいかなぁ

8: 2012/01/22(日) 02:08:09.98 ID:eVBdjDC2O
「雪歩さん、子供に好かれそうですよね?」

「え?うーん…私は好きなんだけど…ね」

「?」

「親戚とか近所の子供と遊ぶと、パンチとかキックされちゃうの…」

「そういうときはちゃんと叱らなきゃですよ!」

9: 2012/01/22(日) 02:09:50.49 ID:eVBdjDC2O
叱ったら怒ったりするのは苦手なんですぅ…

「やよいちゃんはどんなふうに叱るの?」

「私ですかぁ?"めっ!"って」

効果あるのかなぁ、それ…

10: 2012/01/22(日) 02:11:41.15 ID:eVBdjDC2O
「雪歩さんも言ってみて下さい!」

「えっ?…め、めっ…」

「とっても可愛いですぅ!」

それじゃダメな気がするだけど…

11: 2012/01/22(日) 02:13:35.81 ID:eVBdjDC2O
「私、いつもは面倒を見てる立場だから」

「うん」

「だから、誰かに甘えたくなるときがあって…」

同じ長女でも、私とは違うんだなぁ…

13: 2012/01/22(日) 02:19:30.38 ID:eVBdjDC2O
「雪歩さんみたいなお姉ちゃんがいたら、いっぱい甘えさせてくれるかなーって」

「…ふふ。じゃあ、いまだけ妹になってみる?」

「えぇ!?いいんですかぁ?」

「うん、いいよ」

窓越しに1月の西日を浴びるバスの車内は暖かくて、なんだかほっこりした気分になります
斜め前の座席では、おばぁちゃんが気持ちよさそうに居眠り

14: 2012/01/22(日) 02:22:10.55 ID:eVBdjDC2O
「えっと、じゃあ…雪歩…お姉ちゃん?」

「なぁに、やよいちゃん」

「だめですよぉ!お姉ちゃんは"やよい"って呼んで下さい!」

けっこうディティールにこだわるんだね、やよいちゃん…

15: 2012/01/22(日) 02:24:32.24 ID:eVBdjDC2O
「じゃあ…なぁに、やよい?」

「うわぁ…私、どうしよう…」

「ど、どうしたの?」

「嬉しいけど照れちゃいますぅ、えへへ」

ふふ
顔真っ赤だよ、やよい?

16: 2012/01/22(日) 02:26:59.06 ID:eVBdjDC2O
書きため分終了ー

ここから投下遅くなります

※雪歩とやよいを見ながらひたすらほっこりするだけのSSです

18: 2012/01/22(日) 02:29:58.07 ID:eVBdjDC2O
「えっとえっと…次はぁ…」

「慌てなくても大丈夫だよ、やよい。まだ時間あるから」

「はい、雪歩お姉ちゃん!」

なんだか私も照れてきちゃいました…

でも、私の妹がとっても可愛いです

19: 2012/01/22(日) 02:32:28.64 ID:eVBdjDC2O
「雪歩お姉ちゃんに相談があるんですけど…」

「やよい?」

「は、はい」

「お姉ちゃんに敬語使っちゃダメなんだよ?」

「あ…」

ディティールにこだわらなきゃ、ですよね?

20: 2012/01/22(日) 02:40:44.67 ID:eVBdjDC2O
「雪歩お姉ちゃんに相談がある…んだけど」

「なぁに?」

「クラスの男の子のこと」

「え?え?…ひょっとして恋愛相談?」

「…うん」

や、やよい、聞く相手間違ってるよぅ…

あっ!
ここからしばらくオフレコですよ!

23: 2012/01/22(日) 02:49:46.90 ID:eVBdjDC2O


……

………

「そっかぁ!押してもダメなら埋めてみろ、なんだね!」

「うん!頑張ってね、やよい」

…ひょっとして聞こえちゃいました?

25: 2012/01/22(日) 02:55:29.63 ID:eVBdjDC2O
「雪歩お姉ちゃんは好きな人いないの?」

「えっ?私は…」

…考えないようにしてるんです
辛いのは、やっぱり嫌だから

押すことすらできない、弱虫な私
穴掘って埋まれたらラクなんだろうなぁ…

27: 2012/01/22(日) 03:00:00.80 ID:eVBdjDC2O
「お姉ちゃん?」

「あ、ごめんね…」

「…めっ!」

「えっ?」

「えへへー。叱ってみましたぁ」

「…ありがと」

オレンジ色に変わり始めた西日が、同じ色をしたやよいちゃんの髪に吸い込まれていきました

28: 2012/01/22(日) 03:05:32.34 ID:eVBdjDC2O
「もう少し続けよっか?姉妹ごっこ」

「うん!」

やよいちゃんの笑顔を見ていると、悩んでても仕方ないって思えてきます

"相手を元気にする天才"なんです、やよいちゃんって

29: 2012/01/22(日) 03:12:37.92 ID:eVBdjDC2O
私は…

どんな気持ちにできるんだろ?
私の目の前にいる人たちを

「うぅ…雪歩お姉ちゃん、また考えごとしてる…」

「あ、ごめんね…」

「私、拗ねちゃおっかなー?」


30: 2012/01/22(日) 03:16:11.57 ID:eVBdjDC2O
「ごめんね、やよい」

頭を撫でられたやよいちゃんは、うつむいてモジモジしてます

可愛いなぁ

この顔を見たら、クラスの男の子も絶対にやよいちゃんのこと好きになりますよね?

33: 2012/01/22(日) 03:20:10.72 ID:eVBdjDC2O
「雪歩お姉ちゃんは、何でアイドルになろうと思ったの?」

「えっと…自分を変えたくて…かな?」

もっと強くなれるかな、って

まだまだですけどね…

34: 2012/01/22(日) 03:22:59.91 ID:eVBdjDC2O
「やよいは?」

「家計を助けられるかなーって」

…エラいなぁ

私は自分のことで精一杯なのになぁ

これじゃあ、どっちがお姉ちゃんなのかわかんないよ…

35: 2012/01/22(日) 03:27:46.21 ID:eVBdjDC2O
「でもね、いまはちょっと違うんだよ?」

「どんなふうに?」

「…楽しいなぁ、って」

「え?」

「みんなといるのが」

そう言って窓の外を見たやよいちゃんの表情は、ドキドキしてしまうほど大人っぽかったです

36: 2012/01/22(日) 03:32:31.15 ID:eVBdjDC2O
「私を元気にしてくれるから…」

「みんなが?」

「うん!」

やよいちゃんはちゃんとお返ししてる
元気を貰った分、みんなを元気にしてる

だけど私は…

37: 2012/01/22(日) 03:34:50.92 ID:eVBdjDC2O
「雪歩さんもですよ?」

「私は…」

「こうやって、私に付き合ってくれてます!」

「それだけだもん…」

またネガティブモード
変わらないなぁ、私

38: 2012/01/22(日) 03:38:14.98 ID:eVBdjDC2O
「雪歩さんといると、すごく優しくなれます」

「優しく?」

「はい!きっと雪歩さん自身が、とっても優しいからですよ?」

「嫌われるのが怖いだけだよ…」

それに、傷つくのも

41: 2012/01/22(日) 03:46:12.66 ID:eVBdjDC2O
「優しい人は相手の痛みがわかる人だって、お母さんが言ってました」

「…うん」

「雪歩さんもきっとそうです!」

「過大評価だよ、やよいちゃん…」


43: 2012/01/22(日) 03:49:13.62 ID:eVBdjDC2O
「そんなことないですぅ!」

イヤだなぁ…
やよいちゃんが私を元気にしようとしてくれているのに…

それに応えられないよ…

45: 2012/01/22(日) 03:52:51.39 ID:eVBdjDC2O
「うー…」

やよいちゃん、困った顔してます…
みんなを困らせてばっかりですよね、私

大好きなあの人のことも…

あ…
いまのは忘れて下さい…

46: 2012/01/22(日) 03:55:41.87 ID:eVBdjDC2O
「…雪歩さん!」

「は、はい!」

いきなり私のほっぺたをつねったやよいちゃん

「ふぇっ?ふぇっ?」


47: 2012/01/22(日) 03:58:59.11 ID:eVBdjDC2O
「…あ、ごめんなさい。痛かったですかぁ?」

「えっと…どうしたの、やよいちゃん?」

「…雪歩お姉ちゃん!」

「は、はい!」

やよいちゃん、目がウルウルしてます

48: 2012/01/22(日) 04:04:42.64 ID:eVBdjDC2O
「叱って下さい!」

「えっ?」

「悪いことしたから、叱って下さい!」

ウルウルしたままの瞳で真っ直ぐに私を見ているやよいちゃん

車窓から見えた弓張り月は、青白く輝いていました

49: 2012/01/22(日) 04:09:46.57 ID:eVBdjDC2O
「…雪歩お姉ちゃん」

「…ふふ」

「…叱るときは笑っちゃダメですぅ」

「うん、そうだよね…やよい!」

「はい!」

私は優しくなんてないけど…
やよいちゃんの痛みはちゃんと伝わったよ?

51: 2012/01/22(日) 04:14:17.31 ID:eVBdjDC2O
「めっ!」

「…えへへー」

「…ふふ」

「ちゃんと叱れましたね」

「うん。だってホントに痛かったんだもん」

これくらいのウソなら平気ですよね?

54: 2012/01/22(日) 04:22:55.37 ID:eVBdjDC2O
「うぅ…ごめんなさい…」

「今回だけ許してあげる」

「ホントに?」

「可愛い妹だから、ね?」

「えへへー」


55: 2012/01/22(日) 04:31:08.31 ID:eVBdjDC2O
渋滞に捕まったバスはゆっくりと進み、車窓には二人の姿が映っています

やよいちゃんは、私の肩に頭を預けて眠ってしまいました

終点まではまだ時間がかかりそう
その間、私も眠ることにします

可愛い妹の、可愛い寝息を聞きながら



お し ま い

59: 2012/01/22(日) 04:41:47.61
乙!

やよゆきは和み

引用元: 「うっうー!雪歩さん、お疲れさまでしたぁ!」