1: 2020/12/25(金) 20:06:05.071 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「なになに? 宇宙探査機が打ち上げ……目的地到達は2105年になる見通し……」
男「2105年……俺は氏んでるだろうな。仮に生きててもボケ老人だろうな」
男「こういう遠い未来に関するニュース見るたび、不老不氏に憧れちゃうよなぁ」
黒マント「その夢、叶えて差し上げましょう」
男「うわっ、見るからに怪しい男! で、夢を叶えるって?」
黒マント「あなたを不老不氏にして差し上げましょう」
男「マジで!? どうやって?」
男「2105年……俺は氏んでるだろうな。仮に生きててもボケ老人だろうな」
男「こういう遠い未来に関するニュース見るたび、不老不氏に憧れちゃうよなぁ」
黒マント「その夢、叶えて差し上げましょう」
男「うわっ、見るからに怪しい男! で、夢を叶えるって?」
黒マント「あなたを不老不氏にして差し上げましょう」
男「マジで!? どうやって?」
2: 2020/12/25(金) 20:10:12.427 ID:Kt/HacLG0XMAS
黒マント「この薬を差し上げます」
男「これは……?」
黒マント「飲むと不老不氏になる薬です」
男「へぇ……」
黒マント「さ、どうぞ。グイッと」
男「いや……ちょっと待ってくれ」
黒マント「?」
男「これは……?」
黒マント「飲むと不老不氏になる薬です」
男「へぇ……」
黒マント「さ、どうぞ。グイッと」
男「いや……ちょっと待ってくれ」
黒マント「?」
3: 2020/12/25(金) 20:13:41.470 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「これ飲んで不老不氏になるじゃん?」
男「最初のうちはいいよ。老けないし氏なないんだから。何も怖くないし何だってできる」
黒マント「でしょう。色んなことを体験できます」
男「だけどさ、親しい人がどんどん氏んでいって……そのうち子や孫まで俺より先に氏んで……」
男「ずっと生きてる人間なんて不気味だし、だんだん孤独になると思うんだよね」
黒マント「考えられることではありますね」
男「最初のうちはいいよ。老けないし氏なないんだから。何も怖くないし何だってできる」
黒マント「でしょう。色んなことを体験できます」
男「だけどさ、親しい人がどんどん氏んでいって……そのうち子や孫まで俺より先に氏んで……」
男「ずっと生きてる人間なんて不気味だし、だんだん孤独になると思うんだよね」
黒マント「考えられることではありますね」
4: 2020/12/25(金) 20:17:07.870 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「それになにより、この地球だっていつかはきっと滅ぶわけじゃん?」
男「その時、俺はどうなるかって話よ」
男「例えば核戦争で滅んだとして、汚染された環境でずーっと生きてくなんて地獄でしかないし」
男「いつかは地球って太陽に呑み込まれるって聞いたことある」
男「そうなっても、体は燃え尽きず、太陽の熱を味わいながら永久に……なんて想像もしたくもない」
黒マント「なるほどなるほど。氏ねないことによる苦痛を味わうのが恐ろしいと」
男「そういうこと」
男「その時、俺はどうなるかって話よ」
男「例えば核戦争で滅んだとして、汚染された環境でずーっと生きてくなんて地獄でしかないし」
男「いつかは地球って太陽に呑み込まれるって聞いたことある」
男「そうなっても、体は燃え尽きず、太陽の熱を味わいながら永久に……なんて想像もしたくもない」
黒マント「なるほどなるほど。氏ねないことによる苦痛を味わうのが恐ろしいと」
男「そういうこと」
6: 2020/12/25(金) 20:20:27.763 ID:Kt/HacLG0XMAS
黒マント「でしたら、この薬も差し上げましょう」
男「これは?」
黒マント「不老不氏の薬を飲んでても氏ねる薬です」
男「おおっ、こんなのあるんだ!」
黒マント「これを持っていれば、氏にたくなったら氏ねますので、今おっしゃったような状況にはなりません」
黒マント「生きるのに飽きたり嫌になったら、これを飲めばいいのですから」
男「サービスいいねえ」
男「これは?」
黒マント「不老不氏の薬を飲んでても氏ねる薬です」
男「おおっ、こんなのあるんだ!」
黒マント「これを持っていれば、氏にたくなったら氏ねますので、今おっしゃったような状況にはなりません」
黒マント「生きるのに飽きたり嫌になったら、これを飲めばいいのですから」
男「サービスいいねえ」
7: 2020/12/25(金) 20:22:52.214
アフターケアも万全と
8: 2020/12/25(金) 20:23:26.357 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「だけど、ちょっと待ってくれ」
黒マント「どうしました?」
男「不老不氏の薬をもらいました、いざとなったら氏ねる薬ももらいました、ここまではいい」
黒マント「はい」
男「不老不氏を満喫して、美人の嫁さんをもらったり、順風満帆な生活を送るとするじゃない」
男「この時の俺は、まだまだ氏にたいとは思わないはずだ」
黒マント「当然でしょうね」
黒マント「どうしました?」
男「不老不氏の薬をもらいました、いざとなったら氏ねる薬ももらいました、ここまではいい」
黒マント「はい」
男「不老不氏を満喫して、美人の嫁さんをもらったり、順風満帆な生活を送るとするじゃない」
男「この時の俺は、まだまだ氏にたいとは思わないはずだ」
黒マント「当然でしょうね」
10: 2020/12/25(金) 20:26:16.252 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「そんな時、俺はふと物置でこの“氏ねる薬”を見つけてしまう」
男「だけど、俺はこれがなんなのかすっかり忘れてて、うっかり飲んでしまう!」
男「飲んで氏にゆく瞬間気づく! ああ、もっと生きたかったのに……と」
男「こういうことが起こり得るからなぁ」
黒マント「たしかに誤って飲んでしまう可能性も考えられますね」
男「だろ? 俺、結構麦茶と間違えて醤油飲んだりするし」
黒マント「血圧大丈夫ですか?」
男「だけど、俺はこれがなんなのかすっかり忘れてて、うっかり飲んでしまう!」
男「飲んで氏にゆく瞬間気づく! ああ、もっと生きたかったのに……と」
男「こういうことが起こり得るからなぁ」
黒マント「たしかに誤って飲んでしまう可能性も考えられますね」
男「だろ? 俺、結構麦茶と間違えて醤油飲んだりするし」
黒マント「血圧大丈夫ですか?」
12: 2020/12/25(金) 20:29:39.839 ID:Kt/HacLG0XMAS
黒マント「それでは、この氏ねる薬にはブザーをつけましょう」
男「ブザー?」
黒マント「この薬に近づいたら、このようなブザーが鳴るようにします」
ブーブーッ! キケンキケン!
男「おおっ、こりゃいいや! これなら間違って飲むのを防げそうだ!」
黒マント「そうでしょう」
男「ブザー?」
黒マント「この薬に近づいたら、このようなブザーが鳴るようにします」
ブーブーッ! キケンキケン!
男「おおっ、こりゃいいや! これなら間違って飲むのを防げそうだ!」
黒マント「そうでしょう」
13: 2020/12/25(金) 20:32:36.733 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「だが、ちょっと待ってくれ」
黒マント「まだ何か?」
男「長い不老不氏生活、時には狭い家に住まなきゃならない時もあると思うんだ」
黒マント「たしかに、可能性は否定できません」
男「そうするとこの薬をずっと近くに置かなきゃならなくなる」
男「その場合、このブザーがずっと鳴り続けるわけだから……そうなったら俺は発狂してしまうかも!」
男「発狂したまま不老不氏なんて最悪だ! 氏ねる薬も飲めなくなるし!」
黒マント「ふむふむ、ごもっともな意見。何とかしなければなりませんね」
黒マント「まだ何か?」
男「長い不老不氏生活、時には狭い家に住まなきゃならない時もあると思うんだ」
黒マント「たしかに、可能性は否定できません」
男「そうするとこの薬をずっと近くに置かなきゃならなくなる」
男「その場合、このブザーがずっと鳴り続けるわけだから……そうなったら俺は発狂してしまうかも!」
男「発狂したまま不老不氏なんて最悪だ! 氏ねる薬も飲めなくなるし!」
黒マント「ふむふむ、ごもっともな意見。何とかしなければなりませんね」
14: 2020/12/25(金) 20:35:12.994 ID:Kt/HacLG0XMAS
黒マント「では、この道具を差し上げます」
男「これは……?」
黒マント「耳栓です。これを耳につければ、ブザーの音が気にならなくなります。つまり、発狂しなくて済みます」
男「こりゃいいや!」
男「ブザーうるせえと思ったら、この耳栓をつければいいわけだな」
黒マント「そういうことです」
男「これは……?」
黒マント「耳栓です。これを耳につければ、ブザーの音が気にならなくなります。つまり、発狂しなくて済みます」
男「こりゃいいや!」
男「ブザーうるせえと思ったら、この耳栓をつければいいわけだな」
黒マント「そういうことです」
16: 2020/12/25(金) 20:38:31.398 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「いや……待てよ」
黒マント「まだ何か?」
男「耳栓つけたはいいけど、そのまま耳から取れなくなったらどうしよう」
黒マント「詰まってしまったらまずいですね」
男「ずっと音が聞こえないなんて……想像するだけで恐ろしい!」
黒マント「では、このピンセットもお付けしましょう。これでほじくれば取れるはずです」
男「うーん……」
黒マント「どうしました?」
黒マント「まだ何か?」
男「耳栓つけたはいいけど、そのまま耳から取れなくなったらどうしよう」
黒マント「詰まってしまったらまずいですね」
男「ずっと音が聞こえないなんて……想像するだけで恐ろしい!」
黒マント「では、このピンセットもお付けしましょう。これでほじくれば取れるはずです」
男「うーん……」
黒マント「どうしました?」
17: 2020/12/25(金) 20:42:11.534 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「俺……不器用なんだよね」
黒マント「ほう」
男「ピンセットの扱いなんて特に苦手でさ……かえって耳栓を押しちゃいそう」
男「ハナクソも、たまにほじってたらかえって押し込んじゃうし」
黒マント「私もよくやります」
男「耳栓を押し込んで、鼓膜やら三半規管やらを潰しちゃうかも……うわぁ、痛い痛い痛い!」
黒マント「では、この器用になる薬を差し上げます」
男「いやぁ~、悪いね!」
黒マント「ほう」
男「ピンセットの扱いなんて特に苦手でさ……かえって耳栓を押しちゃいそう」
男「ハナクソも、たまにほじってたらかえって押し込んじゃうし」
黒マント「私もよくやります」
男「耳栓を押し込んで、鼓膜やら三半規管やらを潰しちゃうかも……うわぁ、痛い痛い痛い!」
黒マント「では、この器用になる薬を差し上げます」
男「いやぁ~、悪いね!」
18: 2020/12/25(金) 20:43:40.761
黒マントいい奴だろ
20: 2020/12/25(金) 20:45:57.981 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「だけど……ちょっと待った」
黒マント「どうされました?」
男「例えば惚れた女がいるとするじゃん?」
男「その人が『私は不器用な男がタイプなの!』とか言い出したら、器用じゃ困る!」
黒マント「不器用な男性が好き、という女性は多いですからね」
男「だろ? 器用になっちゃうのも考えものなんだよ」
黒マント「どうされました?」
男「例えば惚れた女がいるとするじゃん?」
男「その人が『私は不器用な男がタイプなの!』とか言い出したら、器用じゃ困る!」
黒マント「不器用な男性が好き、という女性は多いですからね」
男「だろ? 器用になっちゃうのも考えものなんだよ」
21: 2020/12/25(金) 20:48:50.155 ID:Kt/HacLG0XMAS
黒マント「でしたら、シンプルにモテ薬を差し上げましょう」
男「夢のアイテムきた! これで勝つる!」
黒マント「懐かしいフレーズですね。これを飲めばたちまちモテモテ」
黒マント「あなたが器用だろうと不器用だろうと関係ありません」
黒マント「上手く使えば、世界中の女性を虜にすることだって夢ではありません」
男「うへへへ、よだれが止まらねえぜ!」
男「夢のアイテムきた! これで勝つる!」
黒マント「懐かしいフレーズですね。これを飲めばたちまちモテモテ」
黒マント「あなたが器用だろうと不器用だろうと関係ありません」
黒マント「上手く使えば、世界中の女性を虜にすることだって夢ではありません」
男「うへへへ、よだれが止まらねえぜ!」
22: 2020/12/25(金) 20:51:04.528 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「だけど、ちょっと待った!」
黒マント「なんでしょう?」
男「こういうモテ薬って効き目強すぎて、種族問わなかったりするじゃん?」
男「例えば、ゴリラとかライオンのメスに迫られたら、たまったもんじゃない」
黒マント「そういうご心配がおありなら、これもお付けしましょう」
男「これは……香水?」
黒マント「はい、動物に嫌われるフェロモンを配合した香水です」
男「山歩きする時に便利そう」
黒マント「なんでしょう?」
男「こういうモテ薬って効き目強すぎて、種族問わなかったりするじゃん?」
男「例えば、ゴリラとかライオンのメスに迫られたら、たまったもんじゃない」
黒マント「そういうご心配がおありなら、これもお付けしましょう」
男「これは……香水?」
黒マント「はい、動物に嫌われるフェロモンを配合した香水です」
男「山歩きする時に便利そう」
23: 2020/12/25(金) 20:53:10.730 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「だけど、動物に嫌われたらペット飼えなくなっちゃう。それも寂しいなぁ」
黒マント「でしたら、ここにフェロモンを受け付けない特別な動物がおります」
動物「ミューミュー!」
男「わっ、可愛い! 犬や猫に負けてないや!」
黒マント「この動物なら、さっきの香水をかけていても、問題なく飼うことができます」
男「ぜひ飼いたいな。だけど……」
黒マント「でしたら、ここにフェロモンを受け付けない特別な動物がおります」
動物「ミューミュー!」
男「わっ、可愛い! 犬や猫に負けてないや!」
黒マント「この動物なら、さっきの香水をかけていても、問題なく飼うことができます」
男「ぜひ飼いたいな。だけど……」
24: 2020/12/25(金) 20:56:28.676 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「餌代かかるんでしょ?」
黒マント「ご安心下さい。餌培養ツールがございます」
黒マント「これを使えば、簡単にこの動物の餌を増やせます。つまり、食費はかかりません」
男「ふむふむ、空気に当てるだけで、どんどん餌が増えていくのか……」
男「あ、だけどちょっと待った!」
黒マント「どうされました?」
男「餌が増えすぎて、取り返しのつかないことになりそうで怖い! どこぞの栗まんじゅうみたいに……」
黒マント「そうなった場合、ちゃんと対処法を用意しております」
黒マント「ご安心下さい。餌培養ツールがございます」
黒マント「これを使えば、簡単にこの動物の餌を増やせます。つまり、食費はかかりません」
男「ふむふむ、空気に当てるだけで、どんどん餌が増えていくのか……」
男「あ、だけどちょっと待った!」
黒マント「どうされました?」
男「餌が増えすぎて、取り返しのつかないことになりそうで怖い! どこぞの栗まんじゅうみたいに……」
黒マント「そうなった場合、ちゃんと対処法を用意しております」
27: 2020/12/25(金) 21:00:25.322 ID:Kt/HacLG0XMAS
黒マント「この火炎放射器を使えば、餌を簡単に焼き払えます。増えすぎる心配はありません」
男「気分はモヒカンだな! でも……」
黒マント「でも?」
男「もし火事になったら……」
黒マント「この水呼び出しポンプで、いくらでも水を呼び出せます。たちまち鎮火できるでしょう」
男「水をドバーッと出せるわけか! だけど……」
黒マント「だけど?」
男「気分はモヒカンだな! でも……」
黒マント「でも?」
男「もし火事になったら……」
黒マント「この水呼び出しポンプで、いくらでも水を呼び出せます。たちまち鎮火できるでしょう」
男「水をドバーッと出せるわけか! だけど……」
黒マント「だけど?」
28: 2020/12/25(金) 21:03:12.864 ID:Kt/HacLG0XMAS
男「俺、泳げないんだよね……。子供用プールでも溺れるレベル」
黒マント「大丈夫、この水着を着ていれば、魚のように泳げます」
男「うおっ! すげえ! あ、今のダジャレじゃないよ」
男「うーん、でも気になることが一つ……」
………………
…………
……
黒マント「大丈夫、この水着を着ていれば、魚のように泳げます」
男「うおっ! すげえ! あ、今のダジャレじゃないよ」
男「うーん、でも気になることが一つ……」
………………
…………
……
29: 2020/12/25(金) 21:06:22.122 ID:Kt/HacLG0XMAS
黒マント「これはいかがでしょう?」
男「こりゃいい! だけど……うーん、ちょっと待って。例えば……」
通行人A「あの二人、まだやってやがる」
通行人B「ずーっと、似たようなやり取りを繰り返してるな。よく飽きないもんだ」
通行人A「ところで、いつからやってるんだ?」
男「こりゃいい! だけど……うーん、ちょっと待って。例えば……」
通行人A「あの二人、まだやってやがる」
通行人B「ずーっと、似たようなやり取りを繰り返してるな。よく飽きないもんだ」
通行人A「ところで、いつからやってるんだ?」
30: 2020/12/25(金) 21:08:23.382 ID:Kt/HacLG0XMAS
通行人B「一説によれば2020年からやってるらしいから……もう500年以上やってるな」
通行人A「夢中になりすぎて、老いることも氏ぬことも忘れてるのかもしれないな」
完
通行人A「夢中になりすぎて、老いることも氏ぬことも忘れてるのかもしれないな」
完
31: 2020/12/25(金) 21:12:22.369
乙
どこまで記録を伸ばせるのだろうか
どこまで記録を伸ばせるのだろうか
32: 2020/12/25(金) 21:17:54.446
わろた
そのうち宇宙に行きそうだな
そのうち宇宙に行きそうだな
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