1: ◇NEjhwSDejY 2015/01/08(木) 21:08:35.92 ID:LFlqc1nF0

―― 土曜日の夕方、事務所

美希「ふぁ~、レッスン疲れた! 新曲のダンスちょっとムズいの」

伊織「あら、ちょうど良い」スクッ

美希「あ、でこちゃんだ」

伊織「ちょっと給湯室 行ってくるから持ってて頂戴」スッ

美希「お、うさちゃん」

伊織「すぐ戻るから」コツコツ...

美希「……行っちゃったの」

2: 2015/01/08(木) 21:09:42.95 ID:LFlqc1nF0

美希「ふー、最近うさちゃんを預かる事が多くなったけど」ウリウリ

美希「その辺へ置いとけば良いのになぁ……」

うさ「それほど大切なんですよ、僕が」

美希「そう言うものかなぁ」


・ ・ ・ ・


美希「えっ」

うさ「どうも」

3: 2015/01/08(木) 21:11:43.11 ID:LFlqc1nF0

美希「で、どういう事なの?」

うさ「分からないです」

美希「スピーカーが付いてるとか?」

うさ「無いと思いますが」

美希「じゃあ、どうやって声出してるの?」

うさ「難しい事 聞きますねぇ」

美希「ふーむふむ」ギュ

うさ「わわっ///」ビクン

美希「……全然 振動してないの」

うさ「ちょ、ちょっと離してっ!///」アワアワ

美希「え、なに? 照れてるの?」スッ

うさ「てってて、照れてないです!!///」ストン

美希「ふーん。うさちゃん、男の子だったんだ」

うさ「そ、そんな、伊織ちゃん以外に、駄目です……」カァアア

コツコツ...

4: 2015/01/08(木) 21:12:38.26 ID:LFlqc1nF0

伊織「……ん、はいお茶」コトッ

美希「あっ! ねぇねぇ、でこちゃん!」

伊織「何よ、大きな声出して」

美希「あのね、うさちゃんね!」

伊織「えぇ」

美希「実は、男の子なんだって!」

伊織「はぁ!?」

5: 2015/01/08(木) 21:13:53.49 ID:LFlqc1nF0

―― 美希、状況説明後

伊織「うさちゃんが、ねぇ……」

美希「でも今は何にも喋らないの」

伊織「うーん」

美希「……」



美希「……ねぇ、でこちゃん」

伊織「ん、何よ?」

美希「ミキの言う事、信じてる?」

伊織「全然」

美希「ハッキリ言い過ぎぃ!」

伊織「だって、ぬいぐるみよ?」

美希「い、言い返せないの……」

伊織「そりゃ、喋ってるのを見れれば信じるけど……」

美希「うっうさちゃん! 喋るのぉ!」ナデナデナデナデェ!


うさ「……」

伊織「……」


美希「……赤っ恥なの」

6: 2015/01/08(木) 21:15:41.34 ID:LFlqc1nF0

美希「でこちゃん、ちょっと貸して?」

伊織「良いけど、変な事しないでよ?」スッ

美希「ただギュっとするだけだよ!」ギュ

伊織「ふーん」


・・・・


美希「反応ないなぁ」ギュウウ...

伊織「……ねぇ、本当に、さっきは反応したの?」

美希「うん! 抱いてあげたらチョー照れてたの!」

伊織「ふ、ふーん……」

美希「んー、じゃあ次はチューしてみよっかなー♪」ムチュー!

伊織「ぎゃああぁぁああストップ!!」バッ!

美希「わわっ!」

伊織「何すんのよ馬鹿! 汚いじゃない!」

美希「むぅ、失礼だよー」

伊織「ったく、どういうつもりよ」

美希「……」

7: 2015/01/08(木) 21:17:02.59 ID:LFlqc1nF0

美希「ねぇ、もう一回2人きりにして」

伊織「はぁ? もう変な事すんじゃないわよ?」

美希「どこまでOK?」

伊織「お触りまでよ!」

8: 2015/01/08(木) 21:18:17.38 ID:LFlqc1nF0

――応接室に2人(?)きり

美希「……ねぇ、うさちゃん」

うさ「……」

美希「……」



うさ「……ごめんなさい」

美希「ああー! やっぱり知らんぷり してたんだ! 酷いよぉ!」ユサユサ!

うさ「ちょ、待っ!」アワアワ

美希「ちゃんと、でこちゃんに説明してよぉ!
    ミキ、でこちゃんに頭ヘン、って思われちゃったの!」

うさ「だっ、だから それには訳が!」

美希「え、訳?」


うさ「だって、恥ずかしいじゃないですか」

美希「ミキの恥はどうなるの?」マガオ

うさ「す、すみません……」

9: 2015/01/08(木) 21:19:07.68 ID:LFlqc1nF0

うさ「それで、ぇと。 美希さんにご相談したい事が」

美希「ミキに?」

うさ「伊織ちゃんからの信頼を得ている美希さんに、です」

美希「信頼? いっつも鬱陶しがられてるけど」

うさ「それは上辺だけです」

美希「ふーん?」

うさ「伊織ちゃんは捻くれているので、あまり他人に素を出しません」

うさ「どうでも良い相手に対して程、愛想が良くなるのです」

美希「あー、うさちゃんにも愛想イイよね!」

うさ「僕はそこを超越しています」

美希「例外があると分かりにくいよ!」

うさ「例外は僕だけです!」ドン!

美希「ふ、ふーん……」タジタジ

10: 2015/01/08(木) 21:20:26.57 ID:LFlqc1nF0

美希「で、相談って何?」

うさ「伊織ちゃんの、ファーストキスが欲しいのです」

美希「キモいの」

うさ「はっ、話を聞いて下さい!」

美希「んー、なぁに?」ジトー

うさ「その目、心がキュっとします……」

12: 2015/01/08(木) 21:21:55.68 ID:LFlqc1nF0

うさ「僕は、何の変哲もないウサギのぬいぐるみ。
   体は古く、限界が近づいています」

うさ「そう遠くない未来、伊織ちゃんとの別れが来るでしょう」

美希「でこちゃんなら修復とか出来るんじゃない?」

うさ「仮に全身を修復したとして
   それは僕と呼べるでしょうか」

美希「難しい事を言うねぇ」

うさ「すみません、美希さんには理解出来ないでしょうか」

美希「さすがは でこちゃんの相棒。上から目線パねぇの」

うさ「えへへ……」ニヤニヤ

美希「褒めてないよ!」

13: 2015/01/08(木) 21:23:02.75 ID:LFlqc1nF0

美希「で、別れと初キスの関係は?」

うさ「……残したい、んです」

美希「え?」

うさ「伊織ちゃんの心に、僕を残したいんです」

美希「もう残ってるんじゃない?」

うさ「もっと強くです!」

14: 2015/01/08(木) 21:23:58.42 ID:LFlqc1nF0

美希「それじゃあキリがないと思うけど」

うさ「……確かに、この”好き”から生まれる欲求には際限が ありません
   ですので、せめて今出来る事 全てを……」

美希「うーん、ずいぶん入れ込んでるねぇ」

うさ「当然です! もう10年以上も一緒なんですよ!」

美希「でもでこちゃん、さっきキッスはダメだって」

うさ「それは、僕が他の女とスるのが許せなかったんですよ」

美希「違うと思うけど」

うさ「そうに決まってます!」

美希「めんどいから本人に聞こっか」

うさ「構いません!」

15: 2015/01/08(木) 21:24:56.27 ID:LFlqc1nF0

―― 伊織 再び応接室へ

伊織「うさちゃんが、私とキスぅ?」

美希「うん」

伊織「汚れちゃうから、気は進まないわねぇ」

美希「ほら見ろなの」

伊織「へ?」

美希「んじゃーでこちゃん! またサヨナラなの~♪」

伊織「はぁ!? いったい何なのよ!」

美希「良いから良いから~♪」グイグイ

16: 2015/01/08(木) 21:25:42.03 ID:LFlqc1nF0

――応接室に2人(?)きり

美希「……ね? ミキの言った通りでしょ?」

うさ「うぅ……」

美希「だいたい男子ってそんなモンだよね
    自分に都合良いように勘違いしてるの」

うさ「そんな、僕に限って……」

美希「そういうトコだよ」

うさ「うぐぅ」

美希「で、どうするの?
    でこちゃんの気持ちを無視してまでスる?」

うさ「そ、それは……」

美希「うんうん、そうだよね
   ここで強引に行くって言われなくてミキは安心 ―― 」

ガタッ!

美希・うさ「えっ!?」


伊織「う、うさちゃん……?」

17: 2015/01/08(木) 21:26:30.13 ID:LFlqc1nF0

―― 伊織、美希から事情を聴く

伊織「信じ難いけど、実際に聞いちゃうと……」

うさ「い、伊織ちゃん……」ドキドキ

美希「でこちゃんに抱かれてハァハァ言ってたんだって」

うさ「ちょっとぉミキさん!?」

伊織「……まぁ、お年頃なら仕方ないわね」ジトー

うさ「その目は止めてよ!」

18: 2015/01/08(木) 21:27:56.35 ID:LFlqc1nF0

伊織「……まぁ、何て言うの?」

うさ「はい?」

伊織「もっと自信を持ちなさいよね」

うさ「じ、しん?」

伊織「そう、自信」


伊織「この伊織ちゃんに、大切に思われてるって言う、自信よ」

うさ「……!」


うさ「い、伊織ちゃん……」


美希「 ―― 」

19: 2015/01/08(木) 21:29:15.31 ID:LFlqc1nF0


伊織「まさか、こうして うさちゃんと話せるなんて思わなかったわ」


伊織「でね、私、意外な事に気付いたの」

うさ「意外な事?」

伊織「私 今まで、うさちゃんに沢山 話を聞いて貰って来たけど」


伊織「感謝の気持ちを、伝えた事は無かったな、って」

うさ「い、伊織ちゃん……」

伊織「だから、その……」



伊織「今まで、私と一緒に居てくれて」

伊織「本当に、ありがと……」

うさ「……!」

20: 2015/01/08(木) 21:30:26.47 ID:LFlqc1nF0


うさ「ぅ……」

うさ「い、伊織、ちゃん……」ウルウル


伊織「なぁに?」


うさ「ぼ、僕の方こそ」

うさ「こんなに、大事にしてくれて」

うさ「そ、その……」


伊織「……ふふ、ゆっくりで良いわよ?」

うさ「あ、あの。昔、腕が壊れた時」


うさ「伊織ちゃんが、一生懸命に治してくれたり」

伊織「えぇ」

うさ「あと、中学生になっても、色んな所へ連れて行ってくれて」


うさ「僕みたいな、普通のぬいぐるみ。 なのに……」

伊織「えぇ」

うさ「あと、遠足で、伊織ちゃんが……」

伊織「えぇ……」


…………

……

.

21: 2015/01/08(木) 21:31:43.73 ID:LFlqc1nF0


美希「うさちゃん、黙っちゃったね」

伊織「……そう、ね」

美希「でも、良かったの?」

伊織「何がよ?」

美希「だって、でこちゃん。
    うさちゃんの話を聞いてるだけで」

美希「でこちゃんは ほとんど喋ってなかったし」

伊織「ふふ、良いのよ」

美希「ふーん……?」

伊織「私は、ありがとう、って伝えられれば、それで十分」

美希「そっ、か」

22: 2015/01/08(木) 21:32:22.78 ID:LFlqc1nF0


美希「……えへへ」

伊織「何よ、気持ち悪いわね」

美希「だって、でこちゃん」


美希「―― 何だかすっごく、嬉しそうだから♪」

.

23: 2015/01/08(木) 21:33:51.90 ID:LFlqc1nF0
以上です!

24: 2015/01/08(木) 21:35:43.80

トリップの付け方間違ってるけど

引用元: うさちゃんとでこちゃん