1: 2013/01/28(月) 11:34:04.58 ID:FOpM/nFAO


女商人「……なんでわくわくしてるの?」

女武闘家「え~?だって久々の冒険って感じじゃん。」

武闘家「最近は腕がなまっちゃってさ~。」ブンブン

商人「それってもしかして私も、って話じゃあないよねぇ?」ジッ


武闘家「……ふっふっふ……」ニヤニヤ

商人「(...私も連れてく気だこの子。)」



 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1359340444

2: 2013/01/28(月) 11:54:28.97 ID:FOpM/nFAO


30分前

【アリアハン 武闘家の家】


トントン
ガチッ

商人「こんにちはー!」ヒョイ

武闘家の母「あれっ?その顔。商人ちゃん?」

商人「あ。おばさん!お久しぶりです~!元気ですか?」

武闘家の母「ほんと久しぶりじゃないのさ~!元気よ元気。」
武闘家の母「しばらく会わないうちにまぁた大人っぽくなっちゃって~、このこの~」ウリウリ

商人「そ、そんなぁ~。変わらないですよ、別に。」タジ

武闘家の母「まったく~娘も、商人ちゃんみたいに大人になってくれないものかねぇ。」

商人「(相変わらずパワフルだな~おばさんは。)」

4: 2013/01/28(月) 12:10:47.51 ID:FOpM/nFAO

武闘家の母「あ、そうそう。今日は突然どうしたの?仕事?」

商人「うん。ルイーダさんに前々から頼まれていたものが手に入ったから届けに来たんです。」

商人「そのついでに久々におばさんと武闘家の顔を見に寄ってみたんですよ。」

武闘家の母「そうなんだ。遠くからご苦労様だよ。お父さんには会ったかい?」

商人「それが、父はお城に行ってるようでいなかったから。」

武闘家の母「城内販売か。あれって最初は商人ちゃんが始めたのよね。」

商人「今は父が引き継いでやってくれてるので嬉しいです。」ニコ

5: 2013/01/28(月) 12:24:58.27 ID:FOpM/nFAO

商人「ねえおばさん。そういえば武闘家は道場にいるの?」

武闘家の母「ああ~ごめんね。たぶんもう帰ってくる頃だと思うけど...」


ガチャ
バターン!


武闘家「ただいま~!!」

武闘家「お母さんお母さん!大変なんだよ!聞いて聞いて!」ドタバタ

武闘家の母「はいはい。帰ってきたそばから賑やかだね~この子は。」

武闘家「大変なんだってばさ!ゆ、行方不明になっちゃったんだってさ!」

武闘家の母「行方不明ぇ~?誰が?」

武闘家「勇者だよ!勇者!いなくなっちゃったんだって!」


商人「えーっ!!」

武闘家「えっ?」

6: 2013/01/28(月) 12:55:44.42 ID:FOpM/nFAO


武闘家「あれ!商人じゃん!久しぶりだねー!今日はどうしたの?」

商人「いやいや、それより勇者が行方不明ってどういう事なの?あの子がいなくなるって...」

武闘家「ああ~そうだ、勇者勇者。今日は少し早く終わりにしたから、城内をウロウロしてたんだよね、そしたら...」


武闘家が商人の父親が城内出張でやっている道具屋兼パン屋で
買い物をしていると、城内に自分はラダトームの兵士隊長と名乗る男が
入ってきて見張りの兵士に緊急の報告のため至急、陛下に謁見したいと告げていた。

武闘家はそれを聞くや、近づいて兵士隊長の男に自分は勇者パーティー
だった人間だけど何かあったのか?打ち明けた。
すると男はすぐさまこう言ったのだった。

『その勇者殿と半年以上連絡がまったく取れませぬ。今までこんな事はなかった。』と。

7: 2013/01/28(月) 13:11:08.85 ID:FOpM/nFAO

商人「半年以上か...たしかにここ1年くらいは滅多に顔を見せなくなったけど。」

武闘家「私もそう。あいつがアリアハンにも来たって話もないんだよねぇ。」

商人「でも勇者に限ってなにかあるとは思えないけど、第一あの強さだし。」


武闘家「……………」


武闘家「何が匂うね、これは。」キラッ

商人「(あの目、ヤな予感...)」


武闘家「じゃあ探しに行こ~」ワクワク

9: 2013/01/28(月) 13:36:41.75 ID:FOpM/nFAO

勇者と仲間達が魔王バラモス、大魔王ゾーマを倒してから3年あまりが経ち、平和な世界が広がっていた。

しかし、そんな世を世界中の人間達が謳歌する中で、英雄となった勇者の行方がわからなくなっていたのだ。

ゾーマ討伐後、下の世界アレフガルドを治める国ラダトームに
身を寄せていた勇者が、城を飛び出して流浪の旅人となり、2年と9つの月を数えた。

その間、勇者は上と下の世界を自由に行き来し、ラダトームの城にも
一月に最低一度は必ず戻っていた。さらに各地に散った仲間にもたびたび会いに行っていたのだ。

しかし半年ほど前から彼女は城にも仲間にも姿を見せなくなっていた。
業を煮やしたラダトーム王はもしやと思い、アリアハンに使いを出したようだ。

しかしアリアハンにも半年前から勇者は姿を見せなくなっていたのだ。

10: 2013/01/28(月) 14:02:40.01 ID:FOpM/nFAO

そんな勇者の失踪?を聞きつけた元勇者パーティーの一員だった武闘家は、
幼馴染みでこれまた元勇者パーティーの一員だった商人を半ば強制的に連れ出して
勇者を探す旅に出たのだった。


武闘家は自分が師範を務める道場を母親に任せ、
着の身着のままで愛用の鉄の爪を持ちアリアハンを出たのだ。


そしてまずは商人の支度もしないといけないと、彼女の住む《商人の町》ホープバークに向かうことになった。


13: 2013/01/28(月) 15:24:38.63 ID:FOpM/nFAO
【アリアハン 郊外】


武闘家「さて、じゃあホープバークに向けてレッツゴー!」ビシッ

てくてく

商人「あ、ねえ、武闘家何してるの?」

武闘家「ん?何って、ほらレッツゴー!」ビシッ

商人「じゃあなくて、なんで歩いてるの?キメラの翼で行くんでしょ?」


武闘家「…………」ポケー


商人「…………」


商人「(ん?ま、まさか徒歩で?)」ゴクッ

武闘家「うん、そうだよ。歩いてだよ。」

商人「心を読むな!」ガクッ


14: 2013/01/28(月) 15:28:22.88 ID:FOpM/nFAO

武闘家の提案で、冒険は徒歩が基本でしょ!の元、
アリアハンからまずは徒歩でとなりかけたが、商人の都合もあり、とりあえずは
キメラの翼でホープバークに行くことにした。

15: 2013/01/28(月) 15:44:55.32 ID:FOpM/nFAO
【商人の町ホープバーク】


商人「着いたぁ~。一時はどうなることかと思ったけど、一安心ね~。」

武闘家「うわっ!またでっかくなってない?前に来た時よりもさ。」

商人「そう?私はずっと住んでるから実感ないけど。でもそろそろ町から市に申請してもいいころだ、っておじいちゃん言ってたな。」

武闘家「じゃあそうなったらホープシティーになるわけ?」

商人「ううん。いくら大きくなっても名前は変えないつもりだよ。まあ私に権限はないんだけどね、へへ。」

武闘家「ふ~ん。いろいろあったけど商人が一から作り上げた町だもんね。」

商人「よーしとりあえず私の店に戻らなきゃ。行こう武闘家!」

武闘家「はーい!」


タッタッタ

16: 2013/01/28(月) 16:10:51.02 ID:FOpM/nFAO
【ホープバーク 商人の店(家)】


商人「はい到着っと。ただいま~!」

ガチャ

青年「ああ、おかえり。商人ちゃん。、とあれぇ?」

武闘家「こんちわー!久々に武闘家さんがやってきましたよ。青年くん元気だった?」ヒョイ

青年「武闘家さん!?久しぶりだな~相変わらず元気だね。」

商人「あ、青年くん。店番ありがとう。ごめんね遅くなっちゃって。」

青年「いいよ気にしないで。それより道中何事もなかった?魔物もいないわけじゃないんだし。」ニコ


商人「うん、大丈夫。ふふふ、心配症だな青年くんは~。」


武闘家「いひひひ。熱いね、お二人さんっ。つんつん。」ニタニタ

商人「きゃっ!こら武闘家、毎度毎度茶化さないでよ。ねえ、青年くん?」カァー

17: 2013/01/28(月) 16:29:52.92 ID:FOpM/nFAO

青年「あ、いやぁ。たしかに僕も茶化されると恥ずかしいけど....」

青年「商人ちゃんとこうして付き合ってると自分は幸せモノだな~って思うんだ。」キッパリ

商人「せっ、青年くん....(嬉しいけど氏ぬほど恥ずかしいよー)」カッカカッカ

武闘家「ヒューヒュー!ストレートだね。男だねっ!熱いよ、このっ!
こっちまで赤くなっちゃうよー。まいったね。」カァ

商人「……なんであなたが赤くなってんの?」


………………………



青年「あ、そうだ。そういえば武闘家さんはなぜここへ?遊びにきたの?」

武闘家「へ?あ、ああ。忘れてた忘れてた。」

商人「まったく~。なにしに来たのやら。」


18: 2013/01/28(月) 16:42:18.94 ID:FOpM/nFAO

武闘家「うんとね、ええと。あれだあれ、勇者。」

青年「勇者さん?……がどうかしたの?」

商人「行方不明になったみたいなんだ。勇者が。」

青年「行方不明だって?どうしてまた。」

武闘家「半年くらい前から、さっぱり見なくなったんだよねあいつ。」

商人「青年くんはここ半年で勇者を見たり、見たって話とかを聞いたことはない?」

青年「う~む。たしかに8ヶ月ほど前かな、勇者さんがホープバークにも来たよね?」

商人「うん。私の店にも顔出してくれたし、青年くんにもおじいちゃんにも会ってたものね。」

青年「でもたしかにそれ以降は勇者さんは来てないな。それまではちょくちょく来てたのにね。」

19: 2013/01/28(月) 17:03:03.17 ID:FOpM/nFAO

武闘家「んで、そんなわけで勇者を探す旅に出てるってわけなんだよね。」

青年「なるほど………」


青年「………じゃあ君も行くんだね?」チラ

商人「…………」コクリ

青年「寂しいけど、君の大切な仲間が行方知れずじゃあ仕事にも力が入らないだろう。」

青年「気を付けて行ってくるんだよ。まあ元賢者様だから心配はいらないかな?あっはっはー。」


武闘家「青年くん....ごめんね商人を連れ出して。」

青年「僕だって男だ。男はどっしり構えて我慢我慢さ。僕はこの町で君らの無事を祈ってるよ。」ニコ

商人「青年くん、ありがとう。必ず勇者を探し出して帰ってくるよ。」

青年「うんうん。それでこそ僕が大好きな商人ちゃんだ。」

20: 2013/01/28(月) 17:33:29.66 ID:FOpM/nFAO

商人は店を一時休みにして、武闘家と共に旅に出る決意をした。

ふと自分の店のカウンターの隅に立て掛けてある剣を手に取り、装備した。

修行~賢者時代に愛用していた鋼鉄の剣だ。

商人がパーティーに入った時に勇者からもらった剣で、勇者のお下がりだが、以後、旅が終わるまでずっとこの剣を使っていたのだ。

武器を見たり売るのは好きだが、武器を使うことに興味がない彼女が今でも唯一、手入れをし、手放さず、大切にしていた剣。

その剣をじっと見つめた。


商人「(勇者、いったいどこに行っちゃったんだろう。)」

21: 2013/01/28(月) 17:47:12.33 ID:FOpM/nFAO

武闘家「商人。そろそろ出よっかー。」

商人「うん、わかった。行こう。」スッ


二人は青年と店の前で別れ、町の出口に向かって歩き出した。
別れ際、青年が思い出したかのように商人に言おうとしたが、躊躇してしまった。

青年「(商人、君が無事に帰ってきたら、その時には....)」



二人の旅が始まるその時と同じくして、世界のあちこちでは見えないところで不穏な影が動きはじめていたのをまだ二人は知るはずもなかった。



序章 おわり

24: 2013/01/28(月) 21:19:17.39
登場人物紹介 その1


商人♀
21歳(前作時18歳)

アリアハン出身の商人。
3年前の大魔王ゾーマ討伐時の勇者パーティーの一人で
当時は商人から賢者に転職し、主に魔法で攻守に活躍。
ゾーマ討伐後は悩んだ末に賢者から商人に再転職し、
商人自身が町作りに関わったホープバークにて
自分の店を開いて暮らしている。

ホープバークにて初代町長を務めている時には
町民に重税などを負担させ、利益ばかりを追うように
なった末にある男の策謀によりクーデターを
起こされ投獄されるという過去を持つ。

同じホープバークの宿屋を営む青年から好意を寄せら
れており、ゾーマ討伐後に恋人として付き合うように
なる。恋愛経験がそれまで皆無だったこともあり、
青年の天然で大胆な発言や行動に困惑して赤面する。

得意な事は料理、商売。
苦手な事は掃除、洗濯。

家族は故郷アリアハンに道具屋兼パン屋を営む父親のみ。
母親は商人が8つの時に流行り病で他界。

25: 2013/01/28(月) 21:35:27.67
登場人物紹介 その2


武闘家♀
20歳(前作時17歳)

アリアハン出身&在住の武闘家。
3年前の魔王バラモス、大魔王ゾーマ討伐時の勇者
パーティーの一人で、バラモス討伐後にある理由から
一時パーティーを抜け、自分探しの旅に出る。
ただし勇者一行がゾーマとの戦いの最中に助っ人
として参加した、その際に僧侶に転職していた。

ゾーマ討伐後はあっさりと武闘家に出戻りし、母親
が師範を務めるアリアハン城内にある武術道場で
師範代としてその実力を発揮し、指導にあたっていた。
(後に師範に昇格)

しかし、勇者の行方不明の事実を知り、彼女を探す
ために幼馴染の商人を連れて旅に出た。


非常に明るく元気でそれが元でトラブルを起こす
こともしばしば。その行動や言動の幼さからか未だに
なかなか年齢通りに見られることは少ない。

得意な事は食事、戦闘。
苦手な事は魔法、料理。

家族は故郷アリアハンで武術道場を開く母親のみ。
父親については詳細は不明。

26: 2013/01/28(月) 21:52:12.33
登場人物紹介 その3


青年♂
23歳(前作時20歳)

カザーブ出身の宿屋経営者。
3年前に商人の町ホープバークの宿屋経営者募集の
チラシを見てやってきて、すぐに宿屋を任されること
になる。

ロマリアやポルトガで宿屋の見習いとして勉強をし
ていたようでその手腕をホープバークでも発揮し、
宿屋を繁盛させることに成功。同時に町民の先頭に
立ち、引っ張っていくリーダーシップ力も高く、
商人が投獄&釈放されたあとに老人と商人の推薦
により2代目町長になる。

現在は3年の任期を終え、3代目町長に老人を指名し再び
宿屋経営を本格化させている。

同じ町に住む商人に好意を寄せており、なかなか
思いを告げることができずにいたがあるタイミングで
商人に手紙を書き、結果商人と付き合いはじめた。
天然なところがあり、商人を困惑させたりしている
が本人はまったくの自覚がないとみられる。

得意な事は掃除、運動。
苦手な事は会議、経理。

家族は故郷カザーブで宿屋を営む父親と祖母。

38: 2013/01/30(水) 09:28:30.10 ID:269dME+AO

【スー大陸 フィールド】


武闘家「ねえ商人。まずはどっから行けばいいかなぁ。」

商人「とにかく闇雲にあちこち行くのは無駄だからね。う~ん...」


武闘家「勇者はほとんどの城や町に行ってるだろうからな~。」

商人「(じゃあとりあえず近場から当たってみるか。)」

商人「よし。近めのポルトガあたりから行ってみよっか。」

武闘家「ポルトガ?黒胡椒好きな王様の国か~。うん了解!」

商人「では、さっそく。」ガサゴソ

商人はバッグからキメラの翼を取りだした。

39: 2013/01/30(水) 09:46:18.06 ID:269dME+AO

武闘家「あれ?キメラを使うんだ?ルーラは使わないの?」

商人「え?ま、まあね。さっき自分の店の在庫から拝借してきたし。」

武闘家「そっか~、魔力もったいないもんね。魔法使いみたいに沢山あれば楽だけど。」


商人「ああ。そういえば、今回は魔法使いと僧侶は誘わないの?」

武闘家「う~。あの二人もなにかと忙しいじゃん。邪魔しちゃ悪いかな~と思ってさ。」


商人「もしもーし。私もそれなりに忙しいんだけどなぁ?武闘家さん?」

武闘家「あっ!ああー、まあそこは幼馴染みの成せる技といいますか、その~。あっはっはー!」バシバシ

商人「うっ、痛い痛い!」


40: 2013/01/30(水) 10:03:30.39 ID:269dME+AO

【ポルトガ 城下町】


武闘家「やー、相変わらず賑わってるな~この国は。」

商人「さすが、各国との貿易拠点と言われてるポルトガね。なんか血が騒ぐよ私!」ワクワク

武闘家「ほ~ら。みたことか。商人だって、まんざらでもないじゃんか~。」ハァ

商人「まあまあ。じゃあ二手に別れて情報収集ね。私はあっち、あなたはそっちお願いね~。」ニコニコ


武闘家「あっ。迷わず商店街の方に行きやがった...」

武闘家「まったく~。ま、じゃあ私も行くか。」スタスタ


41: 2013/01/30(水) 10:21:19.65 ID:269dME+AO

【ポルトガ 城下町 商店街】


『いらっしゃい~いらっしゃい!』

『安いよ~!お客さん遠慮せずに見てってよ!』

『昨日、入ったばかりの逸品だ~!この機会を逃す手はないぜ~。』

ガヤガヤ

商人「すごい活気!熱い商人魂を感じるなぁ。私も負けないようにしなきゃ!」ウキウキ

商人「あ!あれは、滅多に市場に出回らないとされるアサシンダガー!」

商人「こっちは、普通じゃ手に入らないはずの不思議な木の実が!」

商人「うわ~新鮮そうなお魚~!お刺身にしたらどれだけ美味しいんだろ~!」ジュル


商人は情報収集そっちのけで商店街をじっくり見て回っていた。

42: 2013/01/30(水) 10:36:11.97 ID:269dME+AO

すると、一人狂喜乱舞する商人に初老の男が声をかけた。


商人「あー、あれも売ってるなんてここは半端ないよねぇ。」

初老の男「ちょいそこのお嬢さん。」

商人「売値が○○Gなら仕入れはおそらく...」ブツブツ

初老の男「そこの赤い髪のお嬢さん。」

商人「○○Gで売るとして...はい?」クルッ

初老の男「おお、気付いてくれたか。元気にしとるかの、ホープバークのお嬢さん。」

商人「あ。あなたはたしか。チョコレート屋の旦那さん!」


商人が世話になっているチョコレート屋の主人が店先から声をかけていたのだ。

43: 2013/01/30(水) 10:51:44.97 ID:269dME+AO

【ポルトガ チョコレート屋】


商人「あの、さっきはすみませんでした。夢中になってて。」ペコリ

主人「構わんよ。私ら商売人の性みたいなもんじゃい。元気があって良いことじゃの。」

商人「いつもチョコを仕入れさせてもらってありがとうございます。」

主人「お前さんには特別じゃよ。他にはウチのチョコは出しとらんよ。」

主人「それより、どうじゃ。店の方は儲かってるか?」ニヤニヤ

商人「はい。まあぼちぼちですかね。去年よりは上がってます。」ニコッ

主人「うむ、なによりじゃな。して、今日はわざわざポルトガに?」


商人「はい...少しお聞きしたい事があって。」

44: 2013/01/30(水) 11:06:18.62 ID:269dME+AO

商人は馴染みのチョコレート屋の主人にこれまでの成り行きを話した。


主人「あの娘がのう。いなくなったとは...」

商人「なにか今の勇者に関して知っていることはありませんか?」

主人「たしか、半年以上前まではたまにポルトガにも来てたようでなぁ。」

主人「あれは...7月ほど前か。ウチの店にチョコを食べに来たぞ。」

商人「では、それ以降は勇者を見ていないんですね?」

主人「見ていないのう。今思うと不思議じゃな。たんと見なくなった。」

商人「そうですか...」


商人「(やっぱり半年前から勇者はポルトガにも来ていない。)」

45: 2013/01/30(水) 11:27:10.91 ID:269dME+AO

商人は主人にお礼を言い、店を出た。

周りの様々な店の人間に勇者のことを聞いて回ったが
返ってくる答えは同じようなものばかりであった。


誰に聞いても勇者を半年前あたりから今現在まで見た者はいなかった。


商人は別の場所で情報収集をしてるであろう武闘家を探すために、城方面に向かった。


すると武闘家がちょうど向こうから歩いてくるのが見えた。

46: 2013/01/30(水) 11:38:37.54 ID:269dME+AO

【ポルトガ城 正面船着き場】


商人「おーい、ぶとうか~!こっちこっち!」ブンブン

武闘家「ん?あ、商人!」タッタッタ

商人「さっきはごめん、武闘家に城の方を任せちゃって。」

武闘家「商人ってばああいう場所に行くと私以上にテンションが上がるんだからー。」

商人「へへ。すみませぇん。」シュン


武闘家「それより何か掴めた?チョコ屋のおじさんのところにも行ったんでしょ?」

商人「あ、うん。でも勇者の手掛かりになりそうな話はなんにもなかったよ。」

武闘家「そっちもか~。私も王様とか大臣さんとかいろんな人に聞いたけど、さっぱり。」

47: 2013/01/30(水) 11:46:59.25 ID:269dME+AO

商人「う~ん、特になしか。」

武闘家「あ、ただ...」

商人「ん?ただ?」

武闘家「ここに来る直前なんだけど、城の外で見張りを
してる兵士が言ってた事が気になってさぁ...」

商人「見張りの兵士さんが何て?」

武闘家「ええとね。」


48: 2013/01/30(水) 11:58:26.06 ID:269dME+AO

ほんの数分前
【ポルトガ城 城外】


武闘家「(んー、みんな同じだな。どうなってんだ、これ。)」

武闘家「(あ、見張りの兵士にも聞いてみよう一応。)」

武闘家「あの~、見張りの兵士さん?ちょいと聞いてもいいかな?」

見張り兵士「え?わ、私でありますか。何でございましょうか?」ピシッ

武闘家「勇者って最近、見かけたりしたかな?私くらい小柄な女の子なんだけど。」

見張り兵士「あの魔王を倒したっていう勇者様ですよね。いえ最近はめっきりお見かけしません。」

武闘家「だよねぇー。わかったありがとうね。」ニコ

見張り兵士「いえ!とんでもありません!」ビシッ


見張り兵士「あっ!ただ。」

武闘家「どしたの?」

49: 2013/01/30(水) 12:09:46.66 ID:269dME+AO

見張り兵士「勇者様はいつも城から出てきて、そこの船着き場
の前でルーラの魔法で飛び立っていかれるのですが...」

見張り兵士「7ヶ月ほど前の時は、ルーラではなくキメラの翼を使っていました。」

武闘家「え?ルーラじゃなくてキメラを?間違いないの?それって。」

見張り兵士「はい。それまでは絶対ルーラを使っていたのに、
あの時だけはキメラの翼を使っていました。」

見張り兵士「今思うと何故だろ?って思いますが。」



…………………


50: 2013/01/30(水) 12:18:37.93 ID:269dME+AO

商人「その時だけは勇者はキメラの翼を?」

武闘家「たしかに些細なことだから私も気にしなかったけど...」

商人「大のルーラ好きのあの子が魔力だってあるはずなのに、わざわざキメラで。」

武闘家「そうなんだよ!よく考えるとヘンなんだよね。けっこうさ。」

商人「(なにか意味があるのかな?)」


武闘家「待って。そういえば商人もさっきルーラじゃなくてキメラを使ってたよね?」

商人「う。それは。」ギク


51: 2013/01/30(水) 12:28:13.95 ID:269dME+AO

武闘家「元賢者なんだから使おうと思えばルーラは使えるよね?」

商人「たしかにそうなんだけど....」

武闘家「使わない理由は?」ズイ


商人「………魔法の力が怖いんだ。」ポツリ

武闘家「怖い?」

商人「ただでさえ、普通の人から見れば魔法なんて珍しいでしょ。」

商人「まあ初歩的なものから高等なものまで使える人は少ないけど、いる。」

商人「私の住む町の教会のおばさんなんか、僧侶の魔法は全部できるしね。」

52: 2013/01/30(水) 12:38:19.62 ID:269dME+AO

商人「ただ、『私達』はあの大魔王を倒すくらいのレベルまで強くなった。」

商人「平和な世になって、こんな力はなくても良くなったのに、
その力を持ってることがふと怖くなったんだ。」


武闘家「なんだ、そういう事なんだー?」ホッ

商人「へっ?」

武闘家「私はてっきり魔法をド忘れしちゃったのかと思ったよ~はっはっは!」

商人「ううん、忘れようとしても身に染みついちゃってるから、無理だよ。」


武闘家「………私も、商人と同じ事は思ってるよ。怖いってね。」

商人「武闘家...」

53: 2013/01/30(水) 12:51:05.84 ID:269dME+AO

武闘家「まあ~だけど身に付けちまったものはどうしよもないからさ。」

武闘家「いいんじゃない?商人の思うようにすれば。大丈夫だって!」

商人「………そっか。そうだよね。怖がってても仕方ないか。」

武闘家「私なんてさ、僧侶の魔法ほとんど忘れたもんね。」ドヤッ

商人「わ、忘れたぁ?じゃああの時使ってたフバーハとかは。」

武闘家「できないですけど?」シレッ

商人「(お気楽だな~この子は。)」

武闘家「まあ、とにかく勇者の行方を探さないとね。」

商人「(ただ勇者が気まぐれで使わなかったのか。)」

商人「(私みたいな理由でか。それとも他の?)」

54: 2013/01/30(水) 13:01:00.02 ID:269dME+AO


商人と武闘家は勇者の行動に疑問を持ちながらも、
情報を集めるべくポルトガを後にし、次なる場所に向かった。


商人「じゃあ次はイシスね。行くよ武闘家。しっかり掴まっててよ。」

武闘家「りょーかいっス!」ギュ

商人「『ルーラ』!」


ヒューーン!


57: 2013/01/30(水) 14:26:31.55 ID:269dME+AO


勇者を探す旅を続ける商人と武闘家はポルトガの後、
南にある砂漠の中の城イシスに向かい、同様に勇者についての情報を
得ようとしたが、振るわなかった。

同じような情報ばかりの中、やはり
勇者はルーラを使わずキメラの翼を使っていた、との目撃証言を得たのみであった。

さらにアッサラーム、バハラタにも行ったが、情報としてはほぼ同じものばかりであった。

行き詰まりを感じた二人は、ある人物に知恵を借りるべく、急遽レーベに向かったのだった。


58: 2013/01/30(水) 14:28:09.61 ID:269dME+AO

【レーベ村】


武闘家「う~ん懐かしいなぁレーベは。魔法使いは元気にしてるかな~?」

商人「静かで自然がいっぱいでいいところだよね。今日はここに泊まろうか?」

武闘家「お、いいね~。ここの宿は山菜料理がめちゃ美味しいんだー。」ワクワク

商人「決まりだね。じゃあとりあえず暗くなってきたから先に宿屋に部屋を取りに行こ。」

ザッ

二人が宿屋に向けて歩き出したその時、
真正面から大きい氷の刃が二人に向けて飛んできた。

ヒュン!
ヒュン!

武闘家「!!」

武闘家「商人ッ!前!」ジャキ

商人「えっ!」バッ

商人「(氷?)」カチャ


59: 2013/01/30(水) 14:45:42.88 ID:269dME+AO

武闘家「はっ!」シュ

商人「えいっ!」ビュ

カキンッ!
カキンッ!

二人は自分の武器で咄嗟に氷の刃を弾いた。


『さすがね二人とも。まだ衰えてないようね。』ザッ


武闘家「へっへ~あったり前じゃん!」ドヤッ

商人「まったく...普通に歓迎してほしいのになぁ。」ブツブツ


魔法使い「久しぶりね。武闘家、商人。元気だったかしら?」

黒い三角帽子、薄緑色の法衣、橙色のマントを纏い、魔導師の杖を手に魔法使いがあらわれた。


60: 2013/01/30(水) 14:51:07.30 ID:269dME+AO



魔法使いの久々の荒い歓迎に答えた二人は、
宿屋に部屋を取り、すぐに魔法使いの家に向かった。

すっかり日は落ちて、月が地面を照らしている。


真ん丸な形をした不気味なほどに大きな満月だった。


61: 2013/01/30(水) 15:06:18.95 ID:269dME+AO

【レーベ 魔法使いの家】


魔法使い「さっきは突然驚かせてごめんね。久々のお客だから嬉しくて。」

商人「まあ、初めてじゃないからいいけどねぇ。」

武闘家「商人は気ぃ抜いてたもんね、さっきは。」

商人「忘れてたもん。そんなの。」プイ

魔法使い「ふふふ。相変わらず仲良しね、安心したわ。」

武闘家「魔法使いは最近はどうなの?教室の方は。」

魔法使い「まあまあね。元々が師匠が細々とやってたものだし。」

商人「そっか。なによりよね。旦那様は元気?」

魔法使い「ええ。毎日家の裏手で畑仕事よ。今は疲れて寝ちゃってるけど。」チラッ

魔法使いの旦那「くか~くか~」スー


62: 2013/01/30(水) 15:15:48.46 ID:269dME+AO

武闘家「しっかしまあ、まさか結婚してたなんてびっくりだよ!」

商人「ゾーマ討伐してすぐだったんでしょ。教えてくれればお祝いしたのにね。」

魔法使い「...恥ずかしくて。結婚してだいぶ経ってからの報告になっちゃったわね。」

武闘家「でも。めでたいことは良いことさ!私達は嬉しいよ。」ニコッ

商人「そうだよ。よかったね!頼もしい旦那さんで。」ニコッ


魔法使い「ありがとう二人とも。」

63: 2013/01/30(水) 15:29:46.07 ID:269dME+AO



魔法使い「それはそうと。あなた達が来たのって、もしかして?」チラッ

商人「魔法使いはなんでもわかっちゃうんだね。そう、勇者の事なんだけど。」

魔法使い「やっぱり。」

武闘家「何か知ってるの!」ガバ

魔法使い「ううん。何もわからないわ。だから私も近々、あなた達の
どちらかか、僧侶に会いに行こうと思ってたところよ。」

魔法使い「約半年前から、勇者は姿を見せなくなった。最初はあの子の事だし、
心配はしていなかったけど、気になりはじめてね。」

武闘家「その勇者の事で一つだけ気になる事があって、魔法使いに聞きに来たんだ、私達。」


64: 2013/01/30(水) 15:39:50.17 ID:269dME+AO

商人は魔法使いに勇者がルーラを使わないで各地を移動していた事を話した。


魔法使い「たしかに勇者にしてはありえない行動ね。あの子は当時ルーラを覚えたての頃、
よく失敗してたから私がコツを教えてあげていたわ。」

魔法使い「それからはどこに行くのにもルーラを使ってた。
私もだけどルーラが大好きなの。」

商人「(ルーラマニアね、魔法使いと勇者って)」

魔法使い「そんなあの子が魔法を使わないってのは引っ掛かるわね。」

武闘家「魔法使いもそう思うよね?」

魔法使い「ええ。」コクリ

65: 2013/01/30(水) 15:50:40.37 ID:269dME+AO

商人「なぜなんだろう?今はそのくらいの小さな情報しかなくて...」


魔法使い「私が今思うに、いくつかの可能性が考えられる。」

武闘家「可能性?どんな?」

魔法使い「まず一つ目。」

魔法使い「勇者は『意図的に魔法を使うのを控えている』。」

商人「意図的に、って使いたくないっていう意味?」

魔法使い「それは、なんとも言えないわ。ただ使えるけど使わない、と言い換えてもいい。」

商人「う~ん。理由はわからないもんね。」

魔法使い「まあ、それならそこまで心配はしなくてもいいんじゃないかと思うけど...」

66: 2013/01/30(水) 16:06:47.41 ID:269dME+AO

魔法使い「そして二つ目。」

魔法使い「勇者の『ただの気まぐれ』。」


武闘家「気まぐれぇ?ああ~、あいつの事だしそういう可能性も...」

魔法使い「ないわ。残念だけど。武闘家。」キッパリ

武闘家「え?」


魔法使い「二つ目はただの可能性であり、実際にはあり得ない事なのよ。」


商人「あの勇者が、一ヶ所だけでなく数ヶ所だけどルーラを
使わずにわざわざキメラの翼を使っているから、でしょ?」

商人「あと、それが理由ではこの行方不明は説明できない。」

魔法使い「そう。」


67: 2013/01/30(水) 16:16:10.64 ID:269dME+AO

武闘家「じゃあ...」

魔法使い「私も一つ目、二つ目なら、と思うんだけど。」


魔法使い「そして三つ目。」ビッ


魔法使い「勇者は何らかの方法で『魔法が使えない状態』にある。」

商人「!!(まさか。)」

武闘家「使えない状態?ん~。」

魔法使い「簡潔に言うわ。おそらくだけど...」


魔法使い「勇者は『誰かの手によって魔法を封じられている』ってことね。」


68: 2013/01/30(水) 16:26:10.23 ID:269dME+AO


武闘家「誰かに封じられているって誰なの?」

魔法使い「それがわかれば苦労しないわよ~。」

魔法使い「ただ、あまり楽観視できる状態じゃない事は確か。」


商人「ね、ねえ魔法使い。質問なんだけど。」

魔法使い「なに?」

商人「それっていうのは『マホトーン』と同じと考えていいの?」

魔法使い「………似てるけど違うと思う。」

商人「似てるけど、違う?」

魔法使い「マホトーンはその効果が一定時間しか続かないでしょ?」

69: 2013/01/30(水) 16:37:12.38 ID:269dME+AO

魔法使い「ただ、勇者に掛かっているのものは持続性があるみたい。」

魔法使い「単なる魔法でこんな効果は聞いた事がないわ。」

商人「そんな!それじゃ、まるで....」


商人「『呪い』にかけられてるみたいじゃない!」


魔法使い「………そう。なにかしらの強い呪いの類いが
勇者にかけられている可能性が高いわ。」

武闘家「呪い。あの半端ない強さの勇者が呪いにかかるなんて。」

商人「勇者....」

70: 2013/01/30(水) 16:46:28.10 ID:269dME+AO


魔法使い「私がわかるのはおおよそこの位ね。まだ情報が足りないけど。」

武闘家「もっといろんな所を廻って情報を集めなきゃね!」

商人「そうだね!明日起きたらすぐに出よう武闘家。」

魔法使い「私はとにかく、古い文献や師匠に聞いて調べてみるわ。なにか分かるかもしれない。」

武闘家「頼むね、魔法使い。」

魔法使い「まかせて!」コク

商人「じゃあ私達は明朝にはここを発つよ。」

71: 2013/01/30(水) 16:56:48.02 ID:269dME+AO


魔法使いは二人が出たあと、ふとため息をついた。

勇者が今どのような状況にあるのか、わからない自分に呆れるように。

しかしふいにもう一つの不安が魔法使いを襲った。


魔法使い「(そういえば、僧侶。)」

魔法使い「(あの子からもここ2ヶ月くらい手紙が来ない...)」

魔法使い「(なにもなければいいけど...)」


魔法使い「ほら、あなた、そのまま寝ると風邪引くよ。ちゃんと着替えて。」ユサユサ


76: 2013/01/30(水) 21:21:20.44
登場人物紹介 その4


魔法使い♀
22歳(前作時19歳)

レーベ出身&現在住の魔法使い。
3年前の魔王バラモス、大魔王ゾーマ討伐時の勇者
パーティーの一人で 当時は魔法使いから僧侶に、
その後、攻撃力アップのために戦士に転職。
しかしゾーマ討伐後はアリアハンでなく故郷のレーベに戻り、
再び魔法使いとして師匠の後を継ぎ魔法教室を開業する。

魔法使いから僧侶に転職したことにより、結果すべての
魔法を会得することになった。魔法使いに戻ったことに
より半減していた魔力も戻り、さらに増加をしている。

22歳の若さながらその実力や知識は世界でも5本の指に
入るほど。本人は人前に出ることを嫌うために
レーベからは基本外出等はしない。 静かにキレる。

勇者パーティーに入る前からすでに婚約者がいたが
仲間には内緒にしていた。ゾーマ討伐後すぐに故郷で
結婚した。相手は同郷の一般農夫(26歳)

得意な事は研究、詠唱。
苦手な事は外出、甘味。

家族は同郷に両親が健在。夫。
僧侶とはアリアハンに住んでいた頃の幼馴染同士。

82: 2013/01/31(木) 09:23:44.56 ID:UN5Y+7qAO
約2ヶ月前
【?の城 隠し牢屋】


??「おや。起きましたか?」

僧侶「……こ、ここは……」

??「かなり多目に睡眠薬をかがせたつもりでしたがね...」

僧侶「……私は一体……」

??「さすが勇者のお仲間だけあるようですね。」

僧侶「(すごい眠気...薬?)」

僧侶「(ムリやりにでも...『ザメハ』)」パッ

??「ただ、まだ頭がぼんやりするようだな。」

僧侶「あなたは、誰なのですか?」キッ

??「なに?そうか、覚醒魔法でねぇ。さすがですね、その判断力。」

僧侶「質問に答えてください。あなたは一体誰?」

83: 2013/01/31(木) 09:38:12.26 ID:UN5Y+7qAO

??「さてね。私はただの雇われの身ですのでね。」

僧侶「……雇われの身?」ピク

カチャ
グググ...

僧侶「あ、これは。(う、動けない!)」

??「申し訳ないが、拘束させてもらっています。」

僧侶「外してください。」

??「できない相談ですね。」

僧侶「ただの図書館の司書を捕まえて何がしたいのです?」

??「司書?ああ、そのようですね。ただ資料によると
あなたは元僧侶だと書いてありますが?」

僧侶「…………」


??「そしてあなたは元賢者でもある。」

84: 2013/01/31(木) 09:49:27.49 ID:UN5Y+7qAO

僧侶「なぜそれを、あなたが?」

??「言えません。」

??「ただ、雇われの身と言いましたが、私は個人的にあなたに興味がある。」

僧侶「私に?何かおかしな事でもしようものなら許しません!」

??「いえ、決してそのような事は。ただ私は『元賢者』のあなたに興味がある。」

僧侶「え?どういう意味なの?あなたは....」




??「私は賢者と申します。」

85: 2013/01/31(木) 10:09:50.48 ID:UN5Y+7qAO

【レーベ 郊外の平原】


商人「ここからどこに行けばいいと思う武闘家?」

武闘家「んー。手掛かりがあまりに少ないもんねぇ...なにか勇者に繋がるモノか。」

商人「仕方ない。とりあえずまだ行っていない城や町かなぁ。」

武闘家「だね。あ~あ、空を飛んでる鳥さんは気楽でいいよな~。気持ち良さそうだし。」

商人「まあ気楽さは鳥さんといい勝負よ、武闘家は。ふふ。」

武闘家「あ、そうかな?いい勝負かー。」ヘラッ

商人「(いや、褒めたわけじゃないんだけどなー。)」


商人「…………あ。」

86: 2013/01/31(木) 10:22:59.79 ID:UN5Y+7qAO

武闘家「あ?」

商人「そうだ。私ったらすんごい手掛かりをスルーするところだった。」

武闘家「……………」

商人「…………(ん?)」

武闘家「商人、突然ギャグ飛ばしてどーしたの?」

商人「はい?」

武闘家「いやほら『スルーするところだった』って。面白くないし。」


商人「…………あんたね」イラッ

武闘家「ひっ!ごめんちゃい。」ペコペコ


商人「いいからほら早く掴まって...」

武闘家「わ、わかりましたー」ギュ

商人「『ルーラ』」シュン

87: 2013/01/31(木) 10:31:49.00 ID:UN5Y+7qAO

【レイアムランドのほこら】


武闘家「さっきのはそういう事だったんだね。」

商人「そう。そういう事!」

武闘家「ラーミアか。」

商人「妖精さん達とラーミアならなにか知ってるかもしれないでしょ?」


商人は勇者と仲良しだった伝説の鳥ラーミアとほこらを守る
妖精なら何か知ってるんじゃないかと、レイアムランドにやってきた。

二人はほこらの階段を上がっていった。

88: 2013/01/31(木) 10:45:58.51 ID:UN5Y+7qAO


武闘家「あ、いたいたー。妖精さん達~!」ブンブン

妖精(姉)「あなたは。たしか。」

妖精(妹)「武闘家さん。」

商人「こ、こんにちは~。」

妖精(姉)「そちらは初めて見るお顔ですね。ですが...」

妖精(妹)「商人さん、ですね。ラーミアから聞いています。」

商人「初めましてっ。ラーミアさんには以前、背中に乗せていただいて、あの」アタフタ

武闘家「な~に慌てふためいてるワケ?」ジー

商人「だってー、妖精さんなんて私初めてだし、いい印象与えないと...」ヒソヒソ

武闘家「なんで?あなたはヘンなところでズレてるよねー。」

妖精「「?」」

89: 2013/01/31(木) 10:55:17.82 ID:UN5Y+7qAO

ラーミアの姿がなかったが、妖精によると早朝の空中散歩に出ているらしい。

二人は妖精に勇者について聞いてみるが、このほこらにも半年
以上来ていない上、勇者がラーミアを呼び出した事もないという。

それ以前は頻繁に訪れてはラーミアと空中散歩をしたり、
妖精姉妹と長話をして楽しんでいたようだった。

ラーミアが今、空中散歩をしているのも上空から勇者の気配を探しているのだという。

しかし、ラーミアでも勇者の気配を感じることができないらしい。


90: 2013/01/31(木) 11:09:28.70 ID:UN5Y+7qAO


妖精(姉)「しかし、勇者様の気配がしないとなると。」

妖精(妹)「こちらの世界にはいないのではないかと思います。」

武闘家「ってことはさ。つまり。」

商人「うん。アレフガルドにいるのね、勇者は。」

妖精(姉)「いくらラーミアでも。」

妖精(妹)「下の世界アレフガルドには行く事は叶いません。」

妖精(姉)「頼れるのは、あなた達だけです。」

妖精(妹)「ラーミアも私達も勇者様とまたお会いしたいのです。」


武闘家「よっしゃ!まかせて~!ね、商人?」

商人「うん!私達で勇者を見つけます。」


妖精「「勇者様をよろしくお願いします。」」


91: 2013/01/31(木) 11:56:16.86 ID:UN5Y+7qAO

【アレフガルド ラダトーム大陸の平原】


商人「どれくらいぶりになるのかな、こっちの世界は。」

武闘家「私もかなりぶりだな~。2年は来てないよ。」

商人「不思議ね、こっちにもちゃんと太陽があって明るいんだもの。」

武闘家「そりゃ私達がゾーマを倒して呪いを解いたんだから当たり前でしょー。」

商人「そうだったね。」ニコ

武闘家「魔物も~いないね。つまんないなぁ。」ガックリ

商人「だいぶ減っちゃったみたいね。
今あっちの草むらにスライムベスがいたけど...」

武闘家「えっ!どこどこ?スライムちゃーん出ておいで~!」キョロキョロ

武闘家「あ、見ぃ~っけ。」ダッ

商人「…はいちょい待ち!」ガッ

武闘家「うぎゅっ!ゲホッゲホッ。な、なにすんのよー?ひぃっ!」

商人「目的を見失わない。」ゴゴゴ

92: 2013/01/31(木) 12:22:52.84 ID:UN5Y+7qAO

【ラダトーム城下町】


武闘家「ラダトーム賑やかだねー、やっぱりアレ以来みんな生き生きしてるよ!」

商人「よかった。みんな楽しそうにしていて、私達も頑張った甲斐があったのか。」

武闘家「僧侶にも早く会いたいね、元気でやってるかな~あの子。」

商人「久々だもんね。じゃあ城に早く行くよ、武闘家。…ん?」

タッタッタ

『ホラ早く行ってみましょうよ~。あっちの商店街で大安売り始まったみたいよ!』


商人「………」ゴクッ


商人「………」ポリポリ


商人「ま、まあ。城もいいけどさ。まずはあっちで情報収集しよっか....ひぃぃ!」

武闘家「商人ちゃん?鉄の爪鑑定してくれない?」ニコニコ

商人「…城に行きましょうか。」ガク


94: 2013/01/31(木) 14:29:59.51 ID:UN5Y+7qAO

レイアムランドにてラーミアと妖精達の情報で上の世界に勇者はいない、
とわかった商人と武闘家の二人はすぐさまその足でアレフガルドに飛んで行った。


二人ともアレフガルドの世界に訪れるのはかなり久しぶりだった
ようでフィールドや町中でしばし様子を伺っていたが、人々が明るく生き生きと生活している
のを見ると、ホッと安心した。

二人は勇者の情報を得るためと、僧侶が司書として働いている
図書館に行き彼女に会うため、ラダトーム城に向かった。

95: 2013/01/31(木) 14:47:06.36 ID:UN5Y+7qAO

【ラダトーム城】


兵士A「誰だお前たちは?」

兵士B「許可証がなければ城に入る事はできない。」

武闘家「えー!前は普通に入れたのに、なんで?」

兵士A「陛下の意向だ。許可証がなければ帰れ帰れ。」

商人「そんな。どうして。」

武闘家「許可証なんかないよ!だけど私達は勇者の仲間だ。」

兵士B「なに?勇者殿の?」

兵士A「ならばしばし待っていろ。」タッタッタ


………………………


兵士A「待たせたな、特別に許可が降りた。陛下が直々に会いたいとの事だ。」スッ

商人「王様が直々にですか?」

武闘家「なら文句ないね、さ、商人入ろ入ろ!」

商人「う、うん...」

商人「(城に来た途端に雰囲気が変わった。なんだろう?)」

96: 2013/01/31(木) 15:08:07.99 ID:UN5Y+7qAO

【ラダトーム城内 王の間】


ラダトーム王「おお。そなた達、よく来たな。久方ぶりではないか。」

商人「お久しぶりでございます、王様。」ペコリ

武闘家「久しぶりです。」ペコッ

王「よいよい頭を上げい。たしか商人と武闘家であったな?早速だが勇者の行方は知らぬか?」

商人「その事で。私達も勇者を探しているのです。」

武闘家「王様も知らないんですか。私達も勇者を探してここまで来たんだけど...」

王「なんと!お主らも知らぬと申すのか。」

商人「(ここにも戻ってないのね勇者は。)」

王「ぬぬぬ。あやつは一体どこに行っておるのだ。」

王「ロトの称号を与えてやったまではよかったが、勝手に城を出たと思ったらフラフラしおって。」

武闘家「まあ勇者には合わなさそうだしね、そういう堅っ苦しいのはさ。」


97: 2013/01/31(木) 15:24:18.19 ID:UN5Y+7qAO

王「なにか申したか?」ジロ

武闘家「あー、いえいえなにも。」

商人「私達もこの後、各地を回ってみるつもりです。」

王「そうかそうか。ではもし勇者を見つけたならすぐに知らせてもらいたい。」

商人「わかりました。あと...」
商人「なぜに城内に入るのに許可証が必要になったのですか?」

王「む?その事か。やはり世界が平和になった反面、そこを突いてくる不審者やコソ泥が増えてきてな。」

王「そのような輩を城内に入れぬよう、警備を強化しておるのだ。わかってくれ。」

武闘家「ふ~ん。平和になってもそういうみみっちいヤツがいるんだね。」

商人「そうでしたか、無礼な質問お許しください。」


98: 2013/01/31(木) 15:39:47.57 ID:UN5Y+7qAO

王「こちらこそ、兵士どもが失礼した。」


王「そうだ。勇者の事もだが。ちと困った事になっていてな。」
商人「困った事ですか?」

王「二人とも、図書館にも用事があるであろう?」

武闘家「はい。司書をしてる僧侶にも会いに来たんだけど。」

王「誠に言いにくい事だが、その娘もいなくなってしまったのだ。」


商人「えっ!?そんな!」

武闘家「なんで?僧侶も...」

王「ここ1ヶ月、いや2ヶ月近くから姿が見えないのじゃ。」

商人「図書館に来ていないのですか?彼女の家には行かれたのですか?」

王「う、うむ。部下にも城下町外れにある家に行かせたが、どこにもいない、との事じゃ。」

商人「(僧侶まで...あの子だって腕は立つはずなのに。)」

99: 2013/01/31(木) 15:56:40.81 ID:UN5Y+7qAO

王「申し訳ない。お主達の大事な仲間を。
随時、部下達に僧侶の行方を探させておるが...」

王「いかんせん風のように消えてしまってな、見つからないのではないか...」


武闘家「そんな事ない!
あの子は絶対見つかるよ!私達が探してみせる。」

商人「僧侶は責任感が強い子です、自分の
大好きな仕事を放り出して、いなくなるなんてありえません!」

王「し、しかし、現にここまで探してもいないとなると...」



『陛下。そのお仲間様達の言う通りです。諦めてはなりません。必ず僧侶さんは見つかりますよ。』


王「ん?お主は。おお!戻ってきておったのか。」


王「賢者殿。」


100: 2013/01/31(木) 16:11:32.16 ID:UN5Y+7qAO

賢者「しばらくぶりです、陛下。」

王「よくぞ戻った。例の件については後でお聞かせ願いたい。」

賢者「はい。」


武闘家「賢者さん?あなたが?」チラッ

賢者「あなた達の事は城の皆さんから聞いていますよ。」ニコッ

賢者「あの大魔王ゾーマを倒したという勇敢な勇者パーティーの方々だと。」

武闘家「勇敢な、なんて。面と向かって言われると照れちゃうな~」クネクネ

商人「赤くなってるよ武闘家。顔、顔。」

武闘家「あ!まずいまずい」アセ


賢者「武闘家さんと商人さんですね?私は賢者といいます。以後お見知りおきを。」ペコリ

商人「こちらこそ。私は商人です。こっちのクネクネは幼馴染みの武闘家です。」

101: 2013/01/31(木) 16:24:40.16 ID:UN5Y+7qAO

武闘家「クネクネって誰よ?」クネクネ

商人「まだ顔、赤いじゃないの。」


賢者「幼馴染みのチームワークですか。素晴らしい。そして可憐だ。」

武闘家「へ?可憐。私が?」

賢者「あなたのような可憐な方々が汚ならしい魔物達を相手に戦っていたなんて。勿体ない。」

賢者「ただ、そんな凛とした姿も美しいですよ、お二人ともね。」

商人「あ、ありがとうございます。」

商人「(いい人そうだけど、オーバーよね。青年くんとはまた違って。)」

武闘家「凛として美しい。かぁ~」ポケー

商人「(ダメね、これじゃ。)」ハァ

102: 2013/01/31(木) 16:37:34.31 ID:UN5Y+7qAO

賢者「し、失礼しました。ついあの勇者様のお仲間と話せる
とは思いませんで。気分が高揚してしまいました。」ペコリ


商人「いいんです。あの、賢者さんはここのお城の方なのですか?」

王「うむ。2年ほど前より大臣お抱えの相談役といったところか。
頭がキレるのでな、政治的な事も任せておる。」

賢者「まあ賢者になったのはここ1年ほどですが。」ニコ


商人「というと、上世界の...」

賢者「ダーマ神殿で、です。もちろん。」ニコッ

賢者「おっと、失礼。大臣殿にも帰還連絡をせねば。」

賢者「では。陛下。商人さん、武闘家さん、失礼したします。」スッ

103: 2013/01/31(木) 16:50:13.24 ID:UN5Y+7qAO

商人「(ダーマ神殿か、ツライ修行をしたんだろうな。)」

王「では、お主達。わしも用があるのでな。今日のところは失礼させてもらう。」

商人「あ。は、はい!ありがとうございました。」

武闘家「私は凛として可憐なんだぞ~、さらに美しい~。」ポケー

商人「はいはい、おしまい!賢者様は行っちゃったよ~。」パンパン

武闘家「は?あ、なんだ。今のは。」キョロキョロ

商人「(それにしても僧侶までいなくなるなんて絶対ヘン。)」

商人「(勇者と僧侶の失踪は関連があるのかな?)」

商人「まあ、とにかく。一旦町に戻って宿屋に行こう。疲れた。」

商人「武闘家、ほら行くよー!」グーイ

武闘家「くっ、首はヤメテ!」ズリズリ


104: 2013/01/31(木) 17:03:29.81 ID:UN5Y+7qAO

【ラダトーム城内 大臣執務室】


大臣「戻ったか賢者よ。」

賢者「はい。すべて順調に進んでおります。」

大臣「陛下はどうだ?」

賢者「気付く気配もありません。」

大臣「ふん、ボンクラめ。」

賢者「それより、どうやら勇者の仲間とやらが動き出したようです。」

大臣「なに?表世界にいるという奴らか。大丈夫なんだろうな?かなり強いと聞くぞ。」

賢者「まあ。ご心配なく。」


賢者「(私は人間の争いなどには興味はない。貴方もただの駒だ。)」

119: 2013/02/01(金) 09:47:03.98 ID:8G6i/pWAO

【ラダトーム城下町 宿屋】


武闘家「あ~あ。僧侶まで行方知れずなんてどうなってんだろ。」

商人「…多分だけど、偶然なんかじゃない。自然発生的な話じゃない気がする。」

武闘家「おっかしいもんね、勇者がさ、フラフラするのは、まあ分かるとして...」

商人「(…何気にひどくない?)」

武闘家「僧侶みたいなしっかりした子が何もせずにいきなりいなくなるのは、ないよねぇ。」

商人「それは本当に思うよ。一緒に旅してた時も、
一人で買い物する時は私達に断ってから行ってたくらいだし。」

武闘家「律儀だもんね。それこそ私や勇者なんか好き放題だったから、うんうん。」

商人「(……納得してるよ)」


120: 2013/02/01(金) 10:13:14.90 ID:8G6i/pWAO


商人「ねえ、武闘家。ちょっとさ気になる事があるんだけど。」

武闘家「うん、どーぞ。」

商人「あなたがアリアハンのお城で『勇者が行方不明になった』
っていう話を聞いたのは、ラダトームの兵士さんからって言ってたよね?」

武闘家「そうだよ。」

商人「その兵士さんの顔は覚えてる?特徴とか、なんでもいいんだけど。」

武闘家「覚えてるよ、もちろん!衝撃的な話だったからなおさらにね。」

商人「ホント?よかった~さすがね。」ホッ

武闘家「エッヘン!で、それがどうかしたの?」

商人「明日またお城まで行くよ。その兵士さんに聞きたい事があるから。」

武闘家「?」

121: 2013/02/01(金) 10:50:04.64 ID:8G6i/pWAO

【ラダトーム城下町 道具屋】


店の主人「これでいいのかいお姉ちゃん?」ドサッ

商人「はい、助かります~!」

主人「薬草30個、毒消し草30個、満月草30個、紙袋、と、しめて1400Gだな。」

商人「え~?高いよ、おじさん。もっとまけてよー!」

主人「高い?これでも引いたんだぜ?」

商人「だってさ、こんなに沢山買ったんだから、その分を引いてよ~。
なかなかこんなに買う人なんていないでしょ。ね?ね?」

主人「う、まあ、たしかに沢山買ってくれるしなぁ。じゃあしめて1200Gでどうだ?」

商人「なるほど~。いいかも~。」

主人「だろう?なっ?」

商人「んー?待って、たしか昨日って大安売りやってたよね~?」キラッ

主人「ありゃあ昨日までだな。残念だけど。」


122: 2013/02/01(金) 11:15:23.37 ID:8G6i/pWAO

商人「だって私、別の用事があって来れなかったんだもん!冷たいな~おじさんってば...」

主人「ダメったらダメだ。」

商人「いじわる。いいも~ん。あっちのよろず屋さんのおじさんなんかさ、さっき行ったら、
昨日の安い値段でたっくさん聖水オマケしてくれたよ!」

主人「なに?よろず屋の野郎が!」ガタッ

商人「やっぱり今はお客さんがいかに喜んでくれるかが大事だもんね~。」

商人「たった一日の違いだけでねぇ、やっぱりよろず屋さんで買い直そうかな?」チラッ

主人「くそ、あのスかした野郎にゃ負けらんねぇ。」ブツブツ

商人「ここはサービス精神が足りない
ですよーって言いふらしちゃおうかな~。ね、お じ さ ん?」

主人「わ、わかったわかった!それだけは勘弁な?じゃあ思い
きってサービスしちゃうぜ。半額700Gでどうだっ!」

商人「買ったぁ~!!おじさんったら、やっるぅ~!!」バンザイ

主人「え?そうか?おじさんもやる時ゃやるからな。あーはっはっは!」



武闘家「(……えげつねぇ~)」

123: 2013/02/01(金) 11:24:50.31 ID:8G6i/pWAO

……………………


武闘家「遠くから見てて、異様な風景だったよ、さっきの。」ジロ

商人「やだな~あれは営業用なんだから、間に受けないでよ。だってほらこんなに安く買えたよ。」

武闘家「(道具屋のおじさん、ごめん。もうこいつ来させないから。)」

商人「さて、これで準備万端。お城に行こうか、武闘家。」

武闘家「はいはい。」



よろず屋、道具屋で買い物を済ませた二人はラダトーム城に向かった。

124: 2013/02/01(金) 11:40:52.84 ID:8G6i/pWAO

【ラダトーム城内 兵士休憩所】


商人「はいはーい。特別セールですよ~!」

兵士A「なんだ。今日はお仲間を探してるんじゃないのか?」

商人「いえ。もう一人が探しに出てるもんですからねー。」

商人「私はせっかく久々にラダトームに来たので頑張ってる兵士
のみなさんに日頃の感謝として役に立つお薬を安く提供しようと思いまして。」

兵士B「へえ~いくら勇者様の仲間とはいえ商売人なんだな、あんたは。」

兵士A「おーいみんな、来てみろ。なにやら商人様が俺らに感謝の品を提供してくれるみたいだぜ。」

兵士達「なんだなんだ。」

兵士達「何を売ってくれんだ?」


商人「(しめしめ、作戦成功。)」

125: 2013/02/01(金) 12:00:56.73 ID:8G6i/pWAO

商人「大魔王がいなくなったとはいえ、アレフガルドには魔物はまだまだいます。」

商人「些細な数ですが、傷を癒す薬草。解毒できる毒消し草。痺れを治す満月草。魔除けの聖水。」

商人「これら4つを1セットで提供します、お値段通常68Gのところ....34Gです!」ビシッ

兵士達「おお~!安いな、そりゃ。」

兵士達「半額じゃないか。」

兵士達「お得だ、道具屋行くの面倒だしな。よし買おう!」

商人「毎度!ありがとうございます~。」ニッコリ

武闘家「(…独壇場だな。)」

商人「ねぇ?あの時の兵士さんはこの中にいるの?」ヒソヒソ

武闘家(消え去り草使用中)「ちょっと待っててよ~。」ヒソヒソ

武闘家「これさ、効果切れたらマズイでしょ?」ヒソヒソ

商人「あ、まあ。危なくなったら言って。レムオルかけてあげるから。」ヒソヒソ


126: 2013/02/01(金) 12:35:46.22 ID:8G6i/pWAO

商人「はい、お釣り6Gでーす。ありがとうございます。」ニコ


商人「お仕事頑張ってくださいね~!応援してまーす。」ニコ

武闘家「あ!いたいた。左にいる、背の高くて、もみ上げが長いその人だよ!」ヒソヒソ

商人「いた。間違いない?」ヒソヒソ

武闘家「うん。間違いない。」ヒソヒソ

商人「(よし、カマかけて確認してみるか。)」


商人「あれぇ~?そこのもみ上げの長くてダンディな兵士さん?」

もみ上げの兵士「ダンディ?私か?」

商人「そう、ダンディなあなた!私の故郷アリアハンにいる知り合いにそっくり~!もしかしてご兄弟?」

もみ上げの兵士「アリアハン?いや、私は兄弟もいないし、行った事もないぞ。見間違いであろう。」

商人「!?」

商人「あ、そうですか~。じゃ私の見間違いかな。ごめんなさいね。」ペコリ

127: 2013/02/01(金) 12:54:04.21 ID:8G6i/pWAO

武闘家「え?この人なのは絶対間違いないよ。」ヒソヒソ

商人「ん……まさかとは思ったんだけど。」ヒソヒソ

武闘家「まさかって?」ヒソヒソ

商人「後で説明するよ。とにかくこれは売っちゃわないとね。怪しまれないように。」ヒソヒソ


商人「他人の空似っていうんですかね~!失礼しました。
時折私の目は節穴になったりするんですよね~、困ったもんです。」

兵士達「はっはっは~!」

兵士達「面白いぞー姉ちゃん。」

商人「じゃあ皆さん、残りわずか。買っていってくださいな。」

がやがや


………………………

突如始まった、商人の啖呵売りは大盛況のうちに終了した。だが、二人は少しながらの儲けと、疑問を同時に持ち帰る事になってしまった。


129: 2013/02/01(金) 15:23:26.48 ID:8G6i/pWAO

【ドムドーラ 宿屋】


商人「ふぅ。お疲れさま、武闘家。」ドサッ

武闘家「お疲れさま!ってか、なんでわざわざドムドーラに来たの?」


商人「じゃあ座って。説明するから、よく聞いてね。」

武闘家「わかった~。聞いてます。」トスッ


商人「まずは今朝のラダトームのお城でわかったことだけど。」

商人「武闘家がアリアハンで見た、あの兵士さんは偽者だってこと。」

武闘家「あの兵士はアリアハンに行った事はない、って言ったもんね。」

商人「うん。別に事前に質問をされる事を予期してるはずはないはずだから、あの反応は本物の反応ね。」

武闘家「その為だけのあの商人の演技だったってわけか~。リアルリアル。」


130: 2013/02/01(金) 15:40:32.23 ID:8G6i/pWAO

商人「リアルというか、商売モードの私はあんな感じだけどね。」

武闘家「あ、まあ、そうか。」

商人「そして、この事で私はある確信をした。」

武闘家「ある確信?」


商人「ラダトームのお城には絶対何か秘密がある。」

商人「あの兵士さんが偽者だったって事は別の誰かが化けているに違いないと思うの。」

商人「そんな事をした理由がわからないけど、この事実は変えられない。」

商人「偽装をしてまで隠したい何かがあると思っていいはず。」

武闘家「ね、ねえ。もしかして、勇者や僧侶がいなくなったのも、ラダトームの城に関係してるとか....」


商人「……考えたくはないけど、ね。」

131: 2013/02/01(金) 15:58:02.92 ID:8G6i/pWAO

商人「なんとなくだけど、私達がラダトームにいるのも
危ない気がしたから、ドムドーラに来たのよ。」

武闘家「そうだったんだ。じゃあ私の存在を消してたのも?」

商人「まあね。念には念を、かな。もし普通に二人して城内
に入って聞き込みをしたら警戒されかねない。」

商人「だから、お城の人間には『仲間より自分の商売を優先する奴』
っていうイメージを植え付けたかったのよ。」

武闘家「私達がいかにも仲間達を必氏に探してるぞ、って警戒されないためか~。」

商人「でもこれで、解らない事が増えちゃったなぁ。」ポリポリ

武闘家「ラダトームの城の秘密か。う~ん別な意味でワクワクするね~。」


132: 2013/02/01(金) 16:12:55.07 ID:8G6i/pWAO

商人「こら、そこ。ワクワクしない!」ビッ

武闘家「はい、不謹慎でした。」ペコ

商人「まったくも~。」


商人「明日は一度、魔法使いの所に戻ってみようか。何か新しい情報があるかもしれないし。」

武闘家「おー。そっかそっか。忘れてた。行ってみよー。困った時の大先生だ。」


商人「(魔法使いが何か掴んでいてくれると助かるけど...)」


商人「(まさか、単なる勇者の行方不明がこんな事にまで発展するだなんて。)」


武闘家「ね~商人、ご飯食べに行こうよ~。私お腹減っちゃったぁ。」


商人「あ、わかったー!今行くよー。」タッ


133: 2013/02/01(金) 16:28:28.34 ID:8G6i/pWAO

【ラダトーム城 隠し牢屋】


僧侶「(ここに閉じ込められて、おそらく2ヶ月ほど...)」

僧侶「(あの男は私を殺そうともせずに、何を考えてるんだろう。)」

僧侶「(実際、餓氏しないように最低限の食事はできる。)」

僧侶「(両手は使えるけどこの結界牢のせいで魔法の類いは使えない。)」


僧侶「(魔法か………魔法使い。旦那さんと仲良くやってるかな。)」

僧侶「(武闘家さん、商人さん、元気かな。)」

僧侶「(勇者様、あなたはどこにいるのですか?)」


僧侶「みんなに会いたいよぅ...」ポロポロ

134: 2013/02/01(金) 16:54:35.18 ID:8G6i/pWAO

ガチャ
ギィ~

僧侶「(賢者?)」


賢者「おや、僧侶さん。泣いていたのですか?」

僧侶「こ、これは違います。」キッ

賢者「どうやら貴方の仲間が来たようです。」

僧侶「えっ?」

賢者「勇者の行方を追ってね。王より貴方の行方もわからない
と知らされ、さらに動揺してたのが傑作でしたが。」ニヤッ

賢者「黒髪の威勢のいい小柄なお嬢さんと、凛とした表情をした赤い髪のお嬢さんが。」

僧侶「武闘家さんと商人さん。」


賢者「ただ。あまり切羽詰まった感じは受けませんでしたがねぇ。」

僧侶「(…………)」

賢者「今日は赤い髪のお嬢さんが城内で兵士相手に商売してましたよ。呑気なもんだ。」

賢者「黒髪のお嬢さんはいませんでしたが、彼女は別の町にでも行っていたのでしょう。」


僧侶「(違う。商人さんは相当頭がキレる人。城内の人間に真意を悟られないようにしてるんだ。)」ニッ

賢者「ん?その笑みは失望の笑みですか?あまり美しくない。」

135: 2013/02/01(金) 17:18:00.78 ID:8G6i/pWAO

僧侶「ここまで来てあなたは私を殺さないのですか?」

僧侶「あなたの考えてる事くらいわかる。ずっと考えていたわ。」

賢者「ほう。」ニヤ

僧侶「あなたは大魔王を倒した私達が邪魔なのでしょう?英雄視されている私達が。」


僧侶「王様は少し違う、勇者様をただ自分の国のシンボルとして留まらせたいと思ってる。権力のためでしょうけどね。」

僧侶「それだけ『勇者』という名前は強く重いもの。」

賢者「………………」

僧侶「ただあなたを含め、一部の人間は勇者の存在が邪魔に思ってる。頃してしまった方が...」


コツコツコツ

ドスッ!

僧侶「ぐあぁっ....」グラッ

賢者「お仲間が来たと聞いて、饒舌になりましたか。」

136: 2013/02/01(金) 17:31:47.64 ID:8G6i/pWAO

賢者「あまり怒らせない方がいいですよ。私は今の貴方のような目をした女性は好きではない。」

僧侶「ごほっ。くっ...」ハァハァ

賢者「まあ、近いうちにはあの世に行ってもらわないといけなくなりそうですがね。」

僧侶「!!」ハァハァ

賢者「神に選ばれし賢者だった貴方も今やただの人。」

賢者「貴方は私と同じではなかったようですね。非常に残念だ。」

コツコツコツ
ガチャ



僧侶「痛っ!」

僧侶「(な、なんとかしないと。みんな...)」ハァハァ

137: 2013/02/01(金) 17:41:28.73 ID:8G6i/pWAO

ドムドーラから一度、魔法使いに会うため上世界の
レーベに戻る予定だった商人と武闘家の二人。


戻る前に、僧侶の住んでいる家に手掛かりが何かないか調べる
為にラダトームに再び行き、城下町外れにある僧侶の小さい一軒家に来ていた。


しかし、城の人間も捜索に来た後だったせいか、これといった
手掛かりもなく。諦めようとしていた。


138: 2013/02/01(金) 17:55:41.03 ID:8G6i/pWAO

【ラダトーム 僧侶の家】


ガチャガチャ

武闘家「う~ん、これといって手掛かりになりそうな物はないね。」

商人「そうねぇ。あの子らしいこじんまりとした可愛らしいお家だね。」

武闘家「定期的に掃除もしっかりしてるみたいだし、すごいね~。」

商人「尊敬しちゃう、僧侶の事。どうしたらこんなにキレイに掃除できるんだろう。」

武闘家「私もあなたも苦手だもんね掃除...」

商人「よし、とりあえずこの辺にしよ。すぐに魔法使いの所に行かないと。」

ガチャ


賢者「おや?お二人は?先日の...」ヒョイ

武闘家「あ~!お城の賢者さん!」パァ

商人「え?あ、賢者さん?」

商人「(どうして、ここに...?)」

賢者「こんにちは。武闘家さん、商人さん。」ニコッ

149: 2013/02/02(土) 23:03:16.23 ID:MALT+urR0

賢者「僧侶さんの行方の手掛かり探しですか?心中お察しいたします。」

武闘家「賢者さんは、どうしてここに来たのー?」

商人「(…武闘家いいタイミング!)」

賢者「私は時折、城下町の見回りを任されているもので。
    つい先ほどたまたまお二人を見かけまして...」

賢者「私も何か手伝う事はないかと思い、お邪魔しました。」ニコ

商人「そうだったんですか。それはありがとうございます!」ペコ


賢者「私もこの僧侶さんの家には、城の兵士さん達と以前来ましたが。」

賢者「僧侶さんの居場所に繋がるような手掛かりは見つからなかったです。」

武闘家「そっか~、困ったよねぇ。これじゃ私達が探しても何もないはずだよ。」


商人「…あの、賢者さん?僧侶の手帳はここに無かったですか?」

賢者「手帳ですか?いえ。前回の捜索時にはそのような物は無かったと記憶しています。」


150: 2013/02/02(土) 23:21:47.11 ID:MALT+urR0

商人「そう、ですか。……彼女、以前から思った事や、
      気が付いた事とか何でも手帳に書いているんです。」

賢者「手帳に?」ピクッ


商人「例えば『昨夜食べたご飯が美味しかった』とか
    『○○の王様が昨日より鼻声だった』とか。些細な事なんですけど。」

賢者「なるほど。好奇心旺盛なのですね。素晴らしい事です。」


商人「その手帳が無い、というのはおかしい気がして。
    まだどこかに隠してあるのかもしれないけど、私達にも隠し場所はわかりません。」

武闘家「へぇ~あの子そんな事してたんだ?さっすが司書さん!
     じゃあさ色んな秘密とかも書かれてたりしてねー。人には言えないようなさ。ヒヒヒ。」


賢者「………乙女の秘密を無闇に覗いてはいけませんよ、武闘家さん。」

商人「まったく、賢者さんの言う通りだよ。とにかく私達は次の場所に行かないとね。」


賢者「別の場所に探しに行かれるのですか?」

武闘家「うん、上の世界のね...もがっ!う~~」ジタバタ

商人「はいはい、無駄口はいいから次に行くわよ、武闘家。」

商人「それでは賢者さん、すみません。私達は行く所がありますのでこれでっ!」

151: 2013/02/02(土) 23:42:33.86 ID:MALT+urR0

賢者「そうですか。残念です、もう少しお二人とお話したかったのですが...」

武闘家「ぐぅ~~(口から手を離せ~~!)」

商人「はい。じゃあまた次の機会に~失礼しまぁす!」スタスタ




賢者「あ、最後に一つ...」

賢者「商人さん。『元賢者』、の貴方にお聞きしたいのですが……」

商人「!!??」ピクッ


賢者「何故、賢者を辞めて商人に戻られたのですか?神に選ばれし稀有で偉大な職だというのに。」


商人「(こ、この人...何を...?)」

商人「…………」

商人「私は根っからの商売人だからです。でも賢者だった事に悔いはありません。」


賢者「わかりました...余計な事をお聞きしました、忘れてください。」ペコ


商人「いえ。いいんです。それでは。」ペコリ


ガチャ
タッタッタ

152: 2013/02/03(日) 00:02:49.09 ID:h2htnqIP0

【ラダトーム 郊外 西の平原】


武闘家「も~~、思いっきり口押さえつけられて跡ができちゃったじゃん!」プンプン

商人「ああ、ごめんね武闘家。つい力入っちゃって。」

武闘家「なんでいきなりあんな事したのさ?」

商人「私達の行動を知られたくないから。」

武闘家「え?だってあの人は私達にも協力してくれようとしてる賢者さんだよ。」

商人「そうかもしれない。でもあの人もラダトーム城の人間だから。」

武闘家「疑いすぎだよ~商人ったら。あんな風に協力的なのにさ。」

商人「そうかなぁ。まあ思い過ごしならそれに越した事ないんだけどね。」



商人「(それにしても、あの人。『賢者』に異様に執着があるみたい。)」

商人「(『賢者』の事を語っていた時のあの一瞬の冷たい目、何か嫌な感じだった。)」


武闘家「商人、ほら早く~、レーベに行って魔法使いに会わないとさ。」ギュ

商人「あ、はいはい。分かったわよ。……『ルーラ』!」


二人は再びレーベに向かった。

155: 2013/02/03(日) 07:34:45.25 ID:XwF7q8wAO

【レーベ 魔法使いの家】


魔法使い「…そう。あの子まで行方知れずに...」

武闘家「魔法使い…ショックだよね。」

魔法使い「いいえ。なんとなくだけど感ずいていたわ、僧侶の事は。」

商人「ただ、ちょっと怪しいんだけどねぇ...」


魔法使い「ラダトームの城がでしょ?」

武闘家「えっ!わかるの?」

魔法使い「今、商人から聞いた話からもだけど。アレフガルドには大きい国ってラダトームしかないでしょ。」

魔法使い「それこそ『木の葉を隠すなら森の中』って言うからね。」

武闘家「木の葉~?なにそれ?」ポケー


商人「ことわざだよ。こ・と・わ・ざ。」

156: 2013/02/03(日) 07:59:45.43 ID:XwF7q8wAO

魔法使い「そう。一枚の木の葉を誰にも見つからないようにす
るなら、森の中に隠せばカモフラージュできるでしょ?」

武闘家「おお~。なるへそ!確かにそうだね。さすが大先生!」ポンッ

魔法使い「(大先生?私かな、それ。)」

商人「人を隠すなら人が少ない所に隠すより、多い所に隠す方が案外わからないもんね。」


魔法使い「僧侶は間違いなく、ラダトーム城内のどこかに監禁されてるわ。」キッパリ

武闘家「すごっ!言い切ったよ。」

商人「(魔法使いは確信したみたいね。それと...)」

商人「あと、偽物の兵士についてはどう思う?魔法使い。」


魔法使い「ああ。それは多分これね~。」ブツブツ

ボンッ

シュウウゥ

157: 2013/02/03(日) 08:21:08.17 ID:XwF7q8wAO

魔法使いが何やら唱えるとたちまち、魔法使いは武闘家そっくりの姿になっていた。


武闘家「うわぁ!それってまさか私?どうやったのー?」アセアセ

商人「まったく一緒の姿形だね!不気味なくらいクリソツ。たしかこれって?」


偽武闘家「高等魔法『モシャス』よ。かなりのセンスと観察力を要するわ。」


武闘家「もうなんでもアリだな~魔法使いは。私も使いたいから教えてよ。」

偽武闘家「絶対ダメ。あなたには危なくて教えられないもの。」

武闘家「ちぇ~、意地悪。じゃ商人に教わるもんね~!」ベッ

商人「丁重にお断りします。」バッ

商人「(てか私はモシャスなんて覚えたかもしれないけど一度も使ってないもん~。)」


武闘家「くぅ。そんなぁ…」ガクッ

158: 2013/02/03(日) 09:00:58.90 ID:XwF7q8wAO

偽武闘家「まあ、これが使える人間なんてこの世にそうはいないでしょうね。」

商人「………て事は。レベルが高い魔法使いや賢者とか?」

偽武闘家「そうね。」


武闘家「………んー」ジッ

偽武闘家「武闘家、どうかした?」

武闘家「え!いえいえ、お話続けてください。はっはっはー。」

武闘家「(私って、ぺしゃんこだなぁ...)」シュン

偽武闘家「?」

偽武闘家「あ、もう変身解くわね。」ブツブツ

ボンッ
シュウウゥ


魔法使いは変身を解いた。


159: 2013/02/03(日) 10:21:52.09 ID:h2htnqIP0


商人「あと、勇者にかけられている呪いについてなんだけど...」

魔法使い「それも出来る限り調べてみた。まあ...結論から言っちゃうけど。」

魔法使い「呪いっていうのは誰にでも簡単に作れてしまう物のようね。」

商人「え?誰でもって...誰でもなの?」パチクリ

武闘家「じゃあ、私にもできるわけ?」ワクワク

魔法使い「誰でもよ。…『呪う』という行為自体。恐ろしく単純で強い。」

魔法使い「誰かを、何かを心底憎むというのは大きな力を産む。」


武闘家「…そっか…怖いんだね。」

商人「うん。」

魔法使い「今、『誰にでも』って言ったけど、言葉足らずだったね。」

商人「…どういう意味?」

魔法使い「その産まれた大きな力に、さらに強い魔力を送り込む事で
        『呪い』が形となって現れる。今の勇者のようにね。」

商人「…それって。誰かの強く呪いたい気持ちにさらに誰かが助け船を出したって事?」

魔法使い「もしくは、その強い魔力を持つ本人自身が、かもしれない。」


160: 2013/02/03(日) 10:59:51.78 ID:h2htnqIP0

…………………………


商人「とにかく、ここは先に僧侶を何としてでも捜し出して助けなきゃ!」グッ

武闘家「具体的にどうすればいいの?城に乗り込むの?」

商人「今夜、お城に忍び込む。上手くいけば私の仕掛けた罠にかかってくれるはず。」

魔法使い「罠?何かありそうね。久々に私も参加させてもらおうかしら。」

商人「え。魔法使いはここを離れても大丈夫なの?」

武闘家「愛する旦那さんを置いてってもいいのかなぁ。」ニタニタ

魔法使い「だ、大丈夫よ。わかってくれてるし。」カァ

商人「(あ、珍し。魔法使いが赤くなってるー可愛い~)」


魔法使い「そっ、それより。つい昨日、師匠から伝授された
            究極魔法が早速役に立つ時が来たわ!」

商人「きゅ、究極魔法?それはなんとも...いわくありげだね。」

魔法使い「可愛い妹とも久々に会いたいしね。無事だといいけど。」

武闘家「魔法使いが珍しくテンション上がってるよ。何か良からぬ事が...」

魔法使い「………」ブツ...

武闘家「起きませんよねぇ。」

161: 2013/02/03(日) 11:35:29.85 ID:h2htnqIP0

【ラダトーム城内 大臣執務室】


大臣「賢者。あの僧侶の娘はどうするのだ?」

賢者「今夜、始末しようと思っておりましたが、少し気になる事がありまして。」

大臣「気になる事?なんだそれは。」

賢者「いえ、私の個人的な事です。お気になさらず。」

賢者「ですので、明日中にはと考えております。」

大臣「うむ。くれぐれもしくじるなよ。」

賢者「はい。誰にも邪魔はされない場所ですのでね、ふふふ。」

大臣「任せたぞ。私は今日明日、出かけてくる。」


賢者「(あなたなどいなくても、何も問題はない。)」

賢者「(せいぜい、大きい顔をしていればいい...)」


167: 2013/02/04(月) 08:59:04.92 ID:DzXx0kaAO

深夜
【ラダトーム城内】

コツコツコツ

賢者「(さて頃合いか、あの女達が言っていた物を見つけねば。)」

賢者「(結局は家の中には何もなかった。とするとあの女の職場に...)」

………………………

スタスタ

見廻り兵士「賢者様?こんな深夜にどうかされましたか?」

賢者「(ん?見廻りか。)」

賢者「見廻りご苦労様。ただの夜の城内散歩ですよ。眠れなくてね。」ニコ

見廻り兵士「そうでありましたか、これは失礼しました。」ビシッ

賢者「気になさらず。では私はこれで。」ペコ

見廻り兵士「は!」ビシッ

スタスタ


賢者「(ふ、雑兵が。)」

コツコツコツ

168: 2013/02/04(月) 09:09:15.51 ID:DzXx0kaAO

【ラダトーム城内 図書館】

カタン
ガサガサ

賢者「(どこにある?)」


賢者「(ここにもないのか?)」


賢者「(あの女の事だ、何かしら書いてあってもおかしくはない。)」


賢者「(………机にも入っていない...)」


賢者「くそ。一体どこにある!」ドン


ガラ……


見廻り兵士「賢者様ですか?そこにいらっしゃるのは?」

賢者「!!」


169: 2013/02/04(月) 09:25:09.37 ID:DzXx0kaAO

スタスタ

見廻り兵士「あ、やはり賢者様でしたか。図書館で本探しですか?」

賢者「(驚かせるな。グズが。)」

賢者「はい。眠れないもので何か本を借りて自室で読もうかと思いまして。」

見廻り兵士「そうでしたか。いや、度々失礼しました!」ビシッ

見廻り兵士「ちなみに賢者様はどんなご本を読まれるのですか?」

賢者「ああ。もっぱら魔法や政治経済の類です。まだまだ勉強不足なのでね。」ニコ

見廻り兵士「おお。流石だ。私のような者にはサッパリです。」

賢者「(当たり前だ、私は貴様らとは違う。神に選ばれし者だからな。)」

賢者「はは。そんなに堅苦しい物じゃないですよ。」

見廻り兵士「そうですか。あ、お探しの所、失礼しました。私はこれで。」イソイソ

170: 2013/02/04(月) 09:35:24.68 ID:DzXx0kaAO

賢者「(さっさと出ていけ。ふん。)」


見廻り兵士「あ、あった。賢者様ありましたよ!」ガサ


賢者「は?何がです?」

賢者「(しつこい奴だ。魔法の本でも見つけたか。)」




見廻り兵士「僧侶の日記が。」スッ

賢者「!?」

賢者「(何、だと!?)」


賢者「だっ、誰ですか?貴方は?」

171: 2013/02/04(月) 09:57:24.35 ID:DzXx0kaAO

見廻り兵士「賢者様とあろうお方が上手く引っ掛かってくれて良かった。」ブツブツ

ボンッ

シュウウゥ


賢者「モシャスだと?まさか貴方は。」


商人「変身も完璧じゃないけど、暗いし、まあまあかな。」ポンポン


賢者「商人さん……なぜここに?」

商人「なぜ?あなたに聞きたい事があったのと、僧侶を助け出しに来たんです。」


賢者「僧侶さんですか。嫌だなぁ、しかも助けるって何ですか?」

賢者「まるで僧侶さんはこの城の中に監禁されてるかのような口ぶりですね。」

商人「そうなんでしょ?」キッ

賢者「な!」

賢者「(馬鹿な、あの目。確信の色に染まって...)」

商人「ちなみに、あなたがここで必氏に捜していた物はないよ。どこにもね。」

172: 2013/02/04(月) 10:16:41.80 ID:DzXx0kaAO

賢者「何?」

商人「僧侶の日記なんて、私のでっち上げの産物。だから存在するわけない。」


賢者「………ハメたのですか、この私を?」

商人「大方、僧侶の日記には、この城のまずい内情が書かれてるとでも思ったんでしょ?」

商人「まあ僧侶は日記は書かない子だけど。そういう好奇心
旺盛な性格だし、難しい事に興味を持つはず。」

商人「実際にこの城でそんな事があるかは、わからないけどね。」

賢者「カマをかけ、それを餌に私がまんまと貴方に釣られたと?」

賢者「許せない...この私を。神に選ばれたこの私を。」ブツブツ

商人「?」

173: 2013/02/04(月) 10:33:39.12 ID:DzXx0kaAO

賢者「この賢者様を騙すなど言語道断!許されない!」

賢者「今この場で夜のもくずとしてやります!」グッ

ギュウ!
グググ...

賢者「な!腕が、動かない。」ググ

『ムリムリ、私の力をなめてもらっちゃ困るよー。』


賢者「声が。だ、誰が後ろにいるのか?見えんぞ。」


スゥー


賢者「ぶ、武闘家だと...」

賢者「そうか、レムオルで姿を消して潜んでいたのか!」

武闘家「当たり~!よくも純粋な乙女をニコニコ顔で騙してくれたね。えぃ!」ギュウ

賢者「ぐああぁ!…チビの女の癖になんて力だ。」


商人「(上手く隠れてたね武闘家!)」

商人「(……それにしても、純粋な乙女ねぇ。)」ジー

174: 2013/02/04(月) 10:49:08.59 ID:DzXx0kaAO

商人「武闘家、ナイス!そのままね。手が使えなきゃ魔法も使えない。」

武闘家「えへへ~、やったね。作戦成功だぜ!」ブイ

商人「あっ、駄目!手を放しちゃ!」

武闘家「へ?あっ、ヤバッ」ガッ

賢者「馬鹿な女だ、油断しやがって!ふんっ!」ドゴォッ

武闘家「うわぁぁー!」


ふいに締め付けられた両腕が緩まり、賢者は身を翻し、武闘家に蹴りを見舞った。

武闘家は、本棚に勢いよくぶつかりながらも体制を立て直した。


商人「くそ。武闘家大丈夫?」

武闘家「うん、ごめんね。つい調子に乗っちゃった。」

賢者「いい作戦だったのに、無駄にしましたね。手が自由ならこちらのもの。」


175: 2013/02/04(月) 11:14:01.97 ID:DzXx0kaAO

商人「賢者さん!僧侶はここにいるんでしょ?どこに監禁したの!」

武闘家「そうだ!もうアンタは逃げられないよ!僧侶はどこにいる!」

賢者「しつこいですね。ここにはいないと何度も。」

商人「知らないの?あの子、普段は見せないけど、実は力も武闘家並みで足枷なんか壊して自力で出てくるわ!」

賢者「何?あの女が牢から出られる訳が……?」

商人「ふふ、また引っ掛かったわね。案外マヌケな賢者さんね。」


賢者「くっ。何度も何度もコケにしやがって!許さんぞ!」ブツブツ

賢者「くらえ~!『マヒャド』!」ピキキ


商人「まずい。こんな所でそんな魔法を!?」


賢者が唱えたマヒャドは二人の真上から巨大な氷塊となり落ち
てきた。二人は図書館の高い天井を見上げた。

176: 2013/02/04(月) 11:28:22.73 ID:DzXx0kaAO

賢者「氷に押し潰されぺしゃんこになってしまえー!はっはー!」

武闘家「プツン……商人!魔法を早くっ!」グッ

商人「(でかい!こんなマヒャド見たことない!じゃあ。)」

商人「わかった!」ブツブツ

武闘家「てえぇぇ~!」バッ

商人「『バイキルト』!」パァ


商人の唱えたバイキルトが、上から落ちてくる氷塊目掛けて飛び上がる武闘家に力を与えた。

武闘家「ぺしゃんこだなんて言うなぁ~!うりゃあああ~!」

商人「(へ?何て?ぺしゃんこ?)」


ドッゴーン!!


武闘家の怒りの鉄拳は氷塊を粉々に砕いた。

177: 2013/02/04(月) 11:52:40.92 ID:DzXx0kaAO

賢者「何ぃ?私のマヒャドを、粉々に?流石は大魔王を倒した
だけはある。ならば」スッ


商人「冷たっ!相変わらず凄いね、武闘家は。大丈夫?」

武闘家「うん、なんとも。久々でうずいちゃったよ、へへ。」ニカッ

賢者「……」ゴクゴク

商人「あと何、さっき叫んでたのは?ぺしゃんこだとか何とかって?」

武闘家「へ?…ああ、気にしない気にしない!気合いの一つだよ。」アセアセ


賢者「おしゃべりはそこまでだ!」ブツブツ

賢者「『バギクロス』!」ヒュオ


賢者の両手より放たれたバギクロスの竜巻が二人目掛けて向かっていく。

図書館内はすでに無数の本が竜巻に巻き込まれている。
窓も窓ガラスもすべて割れてしまった。

178: 2013/02/04(月) 12:07:13.67 ID:DzXx0kaAO

商人「危ない!武闘家、私の後ろに来て!魔法で...」ブツブツ

武闘家「わかった。」

商人「『マヒャド』!」ピキピキ
ピキーン!

商人の唱えたマヒャドは氷で自らの周囲に分厚い壁を作り出した。


賢者「ほう。そんな使い方をするとは、考えたものだ。だが!」

商人「あ、竜巻の力が強い!氷が砕かれる!く、くそ!」ベキベキ

武闘家「う、うわあぁぁー!!」

商人「きゃあ~!!」


竜巻は氷の壁を砕き、商人と武闘家を外に弾き飛ばした。

ガラスが割れる音が響く中、図書館のあらゆるものが吹き飛ばされ、半壊状態だ。

179: 2013/02/04(月) 12:21:26.81 ID:DzXx0kaAO

武闘家「危なかったー。ねえ、商人大丈夫?」ググ

商人「う、うん。あんな威力のバギクロスなんて、どうして。」


タッ


賢者「魔力の強さの差ですね。貴方は今はただの商人だ。賢者の魔力とは違う。」

商人「そうか、同じ魔法でも威力に差が...あとさっき飲んでいた薬。」

賢者「…抜け目がないですね、これは私が少し改良した魔法の聖水。」

賢者「飲めば一時的に術者の魔力を増幅させる。」

武闘家「ずるいじゃんか!そんなの卑怯だぞ!」

賢者「なんとでも言えばいい。これだけの騒ぎだ、じきに城の人間も目を覚ます。」

賢者「その前に貴方達を跡形なく消します。散々コケにしてくれたお礼です。」


武闘家「『ベホイミ』!」

商人「『ベホマ』!」


180: 2013/02/04(月) 12:35:20.72 ID:DzXx0kaAO

武闘家「あれ?唱えられない!くそ。『ベホイミ』!」シーン

商人「(しまった、やられた!)」

賢者「魔法封じさせてもらいましたよ、マホトーンでね。これで回復もできない。いい様だ。」


賢者「最初はどうなる事かと思ったが、結果オーライですかね。」

賢者「僧侶さんより先に貴方達を消し去ってあげましょう!神の裁きだ。」スッ


商人「あ、あの構えは!」


賢者が両手を広げ、詠唱しながら魔力を込めると、両手から炎が現れた。

その炎が次第に大きくなりながら、賢者のすぐ頭上で繋がりアーチ状になった。

賢者「冥土の土産にお見せしましょう!」

賢者「これが最強の『ベギラゴン』だ!」


武闘家「…あれってさ、相当ヤバいよね、商人。」

181: 2013/02/04(月) 12:46:44.96 ID:DzXx0kaAO

商人「当たり前でしょ。あんなのマトモに食らったりしたら...」

商人「(あの時、私が放ったヤツの比じゃない!)」

武闘家「なんとか避けるくらいはしないと、氏んじゃうよ。」
商人「(避けようにも封じられてピオリムさえ使えない!まずい。)」



賢者「神を馬鹿にした罰だ。祈っても無駄です、何せ私自身が神だからなぁ!」

賢者「灰となれ!『ベギラゴン』!!」ゴォォオ


賢者の合わせた両手から放たれた無慈悲な炎が、二人を目掛け襲いかかった。


182: 2013/02/04(月) 12:58:06.67 ID:DzXx0kaAO


商人「(もうダメ!間に合わなかったの?)」

商人「(勇者、僧侶、ごめん。商人もごめんね。)」


武闘家「(私がヘマしたせいで...)」

武闘家「(商人ごめん!)」ガバッ

商人「(青年くん....もう一度会いたいよ。)」グッ





「二人とも遅くなってごめん。」ブツ


『マヒャド』ボソ


ピキ ピキ ピキ

パキンパキーン!!!

183: 2013/02/04(月) 13:14:48.58 ID:DzXx0kaAO

賢者「はっはっは!終わりだ。やはり神には敵わない。」




賢者「…………な?」

賢者「これは...どうなってるんだ!」


賢者はベギラゴンの炎が商人と武闘家の二人を捉え、直撃したと思ったが、その直後。

その炎そのものが逆に全て凍らされているのを目の当たりにした。
二人とも氷の、いわば衣のようなもので覆われていた。



『そんなチャチな炎、私には効かないわ。』


賢者「だ!誰だッ!?」キョロキョロ
賢者「ん………」キッ

賢者「貴方は...」


賢者が目をやると図書館だった場所の瓦礫の中から僧侶に肩を貸した魔法使いがあらわれた。


魔法使い「魔法使いよ。…初めまして、賢者さん。」スッ



189: 2013/02/04(月) 14:22:45.58 ID:DzXx0kaAO

賢者「貴方が魔法使いでしたか?」

賢者「流石は攻撃魔法のスペシャリストだ。………ん?」


賢者「どういう事だ。なぜ貴方の横に、僧侶がいるんだ?」


僧侶「……賢者。あなたは運が悪いですね。」ゲホゲホ

魔法使い「僧侶、あまりしゃべっちゃだめよ。」

僧侶「魔法使いの逆鱗に触れてしまった...」


賢者「な、何を。あの牢屋は絶対に、見つからないはずなのに...」


魔法使い「そうだ、二人を助けなきゃね。」ブツブツ


パキーン!


商人「………へ?あれ!生きてる?」サワサワ

武闘家「………冷たいなー!って、あれ?私はどうして。」キョロキョロ

スタスタ

魔法使い「良かった。無事に生きててくれたようね。」ニコッ


190: 2013/02/04(月) 14:36:58.22 ID:DzXx0kaAO

商人「あ!魔法使い!よかった~間に合ったんだね。あなたが助けてくれたの?」

魔法使い「ギリギリセーフだったけど。冷や汗かいたわよ。」

武闘家「大先生さっすがー!来てくれると信じてたよ!」キラッ


僧侶「ふふふ。」


商人「僧侶!無事でよかった。生きててくれたのね。あ、あまり無事じゃなさそうか。」

僧侶「商人さん、武闘家さん、来てくれてありがとうございます。」フラッ

武闘家「おおっと。危ない!」ガバッ

僧侶「信じていました、お二人が助けに来てくれるって。」ポロポロ

僧侶「怖かったよぉ。痛かったよぉ。寂しかったよぉ。」ポロポロ

武闘家「よかった。今は沢山泣きなよ、そしてゆっくり休みな。」

商人「そうだよ、お姉さんが仇を取ってくれる!きっとね。」

魔法使い「ええ、まかせて。あの男、許せない。」

魔法使い「僧侶の事頼むわね、二人とも。」ザッ


191: 2013/02/04(月) 14:54:27.63 ID:DzXx0kaAO

賢者「うう。一体どうやった?どうやって牢を見つけた?」

魔法使い「そんなのアンタが倒れた後で嫌ってほど聞かせてあげる。」

賢者「く、なめるなよ。あの程度の魔法を防いだくらいで調子に乗るなぁ!」

魔法使い「あら?それにしては動揺してるようね。神に仕えし賢者様。」


賢者「だから私を、神を馬鹿にするなー!」ブツブツ

賢者「『マヒャド』!」


魔法使い「『メラゾーマ』!」

賢者の巨大氷塊のマヒャドが魔法使いに襲いかかるが、魔法使
いの唱えたメラゾーマの巨大火球がそれを一瞬で溶かしてしまった。


賢者「ば、馬鹿な!一瞬であの氷を...嘘だ。」フルフル


賢者「嘘だあー!」ブツブツ

賢者「『ドラゴラム』!」


魔法使い「竜になって全員焼き付くすつもりね。」

192: 2013/02/04(月) 15:10:34.31 ID:DzXx0kaAO

竜になった賢者「ぐおおおぉ!がああぁぁ~!!」ゴォォ

ドラゴラムで巨大竜になった賢者はこの場にいる全員を焼きつ
くしてしまおうと、灼熱の炎を吐いた。


魔法使い「だからそんな炎なんて私には届かない!」ブツブツ

魔法使いは左手に風を宿し、右手に氷を宿した。


魔法使い「炎ごとアンタを貫いてやる!かわいい妹の痛みを思い知れ!」


魔法使い「『バギクロス』『マヒャド』」


マヒャドの猛吹雪にバギクロスの大突風が合わさり、無数の氷の刃は嵐となり、竜の吐いた炎を一瞬で消し去り、そして竜をも貫いた。


竜「ぐぎゃああああ~!!」

193: 2013/02/04(月) 15:22:37.65 ID:DzXx0kaAO

魔法使いの魔法を食らい、竜はその姿は元の賢者へと戻った。

賢者「…………う。うう。」


魔法使い「流石は賢者ね、魔力で守られて氏ぬまではいかなかったようね。」ハァハァ

魔法使い「私も一気に魔法を使いすぎちゃったみたい...だけど久々に暴れてすっきりしたわ。」

魔法使い「さて。コイツにはまだ聞くことがある。」

魔法使い「ねえ~!商人こっち来て~!」


商人「わ、わかった~!今行くよ。」

商人「(なんて、恐ろしい人になったんだろ~魔法使い。)」ブル

タッタッタ

194: 2013/02/04(月) 15:33:09.90 ID:DzXx0kaAO

商人「どうしたの?魔法使い?」

魔法使い「その男を回復させてあげてくれる?聞きたい事が残ってるから。」ハァハァ

商人「魔力大丈夫?」

魔法使い「場合によれば、もう一度あの魔法を使わないといけないでしょうからね。温存しないと。」

商人「わかった、魔法使いはしばらく休んでいて。私はまだ大丈夫だから。」

魔法使い「ありがとう。何せ城の人間が起きて来ないよう、
城全体に強めにラリホーも使ったから。」ハァハァ

商人「もうなんでもありね、魔法使いって、ふふふ。」

魔法使い「魔法は私の十八番だもの。」ニコッ



商人「『ベホマ』!」パァー

ベホマにより賢者は回復した。

195: 2013/02/04(月) 15:46:38.27 ID:DzXx0kaAO

………………………


賢者「私をなぜ殺さない?」

武闘家「頃したって仕方ないでしょ?後味悪いし。」

商人「私達は人間は殺せない。たとえあなたみたいな奴でもね。」

魔法使い「まあ、さっきはほんの紙一重でアンタ生きてたけどさ。」ニヤ

賢者「う、やめてくれ。」

僧侶「私にした事はもうどうでもいいんです。だから教えてください。」

賢者「何の事だ?」ビク


武闘家「隠してもダメ。」

商人「勇者はどこにいるの?言いなさい!」

賢者「知らないなぁ。私は。」

魔法使い「そう。ねえ、素敵な言葉を教えてあげようか?」

賢者「なんだ?」

魔法使い「ザキ。氏の言葉よ。」ヒソッ

196: 2013/02/04(月) 16:07:13.34 ID:DzXx0kaAO

賢者「ひっ!よせ!ヤメロ!」

魔法使い「ザキが嫌なら、ね?」

賢者「勇者は...ここより北西にある洞窟にいる。」

武闘家「洞窟ぅ?」

商人「ラダトームの北にあるあの洞窟の事?」

賢者「そうだ。」

僧侶「よかった。これで勇者様にも会えますね。」

賢者「ただ....まだ生きていればだがな。」

武闘家「なんだと!?」

商人「『呪い』の事ね?」


賢者「な?その事までわかってるのか?なんて奴らだ。」

魔法使い「アンタが掛けたの?その呪いは?」

賢者「あ、ああ。」

僧侶「呪い、なんて恐ろしい...勇者様が無事でなければ許しません!」キッ

197: 2013/02/04(月) 16:22:22.56 ID:DzXx0kaAO

魔法使い「落ち着いて僧侶。」

魔法使い「とにかく行かなきゃわからないわね。みんなすぐに行こう!」

商人「だけどあそこは特別な結界があるからかわからないけど、ルーラじゃ行けないよ。」

僧侶「ふふふ、商人さん。安心して。そのために魔法使いがいるんですよ。」ニコ

商人「あ!まさか。それが。」

武闘家「え~何だろう?昼に魔法使いが言ってた?」

魔法使い「そうよ。アンタも連れてくわ。私が牢屋を見つけられた方法見せてあげる。」

賢者「ち、わかったよ。何だってんだ。」

魔法使い「みんな目を閉じて、静かにしていて。かなり集中しないといけないから。」

商人「わ、わかった。」グッ


魔法使い「(この人数を一緒にはキツいけど、なんとかなるわ。)」ブツブツブツ


魔法使い「(勇者......捉えた!)」

魔法使い「我らを仲間の元に導け『リリルーラ』!」

パッ!

198: 2013/02/04(月) 16:38:12.40 ID:DzXx0kaAO

【ラダトーム北の洞窟 最深部】


パッ!

ダダッ

武闘家「うわっ、洞窟の中だ!すげ~!」キョロキョロ

商人「ホント。あの時の洞窟だ。瞬間移動みたい。」

賢者「これがあの隠し牢屋を見つけた魔法。」

魔法使い「この魔法はルーラと違い、場所を到達点にしない。」

魔法使い「人物を思い浮かべて、その人物のいる場所に一瞬で移動する禁術魔法。」ハァハァ

魔法使い「だから、魔力の消費がとんでもなく多いの、よ。」バタッ

僧侶「魔法使い!大丈夫?たった数時間で魔力使いすぎよ。」

魔法使い「後はまかせるわね、みんな...」スー


商人「うん!任せて。」

199: 2013/02/04(月) 16:48:42.86 ID:DzXx0kaAO

武闘家「魔法使いのためにも早く勇者を捜すよ。」

僧侶「あれ?武闘家さん、後ろの祭壇に横になってるのって...」

商人「ゆ、勇者だ!」バッ

武闘家「え!」クルッ


洞窟最深部にある祭壇の上に、その姿はあった。
全員が捜していたかつてのパーティーのリーダーである勇者だ。

祭壇に仰向けになり、目を閉じている勇者を見て、
商人、武闘家、僧侶は一斉に駆け寄った。

ただ、声をかけても、体を揺すっても、顔を軽く叩いても全く反応がない。


まるで静かに氏んでいるように。


200: 2013/02/04(月) 17:02:05.79 ID:DzXx0kaAO

武闘家「嘘だ。勇者、起きてよ!起きてよ!」ユサユサ

商人「早く蘇生をしないと!僧侶!」

僧侶「しょ、商人さん。この洞窟の中は魔法が使えないんです。」

商人「あっ、そうか!じゃあ一体どうしたら。」

武闘家「だったら、早くここから勇者を出して教会に行かないと!」アセアセ



賢者「く、くっくっく。無駄だよ。私の掛けた呪いは蘇生魔法など効かない。」

武闘家「何!だったらお前がなんとかして勇者を生き返らせろ!」グイッ

賢者「ぐうっ。無理だと言ってるだろう?蘇生魔法は効かないと。」

賢者「呪いが体中に行き渡り、氏んでしまったみたいだな。こりゃあ傑作だ。」ケラケラ

武闘家「こんの野郎!」グワッ


商人「武闘家、ちょっと待って!」

武闘家「何で止めるの、商人!」


201: 2013/02/04(月) 17:18:32.77 ID:DzXx0kaAO

商人「あんたが勇者を呪ったのは何故なの?」


賢者「今さらそんな事を知ってどうする?それで勇者が生き返るとでも?」

商人「うるさい!黙って私の質問に答えろ!」チャキ

商人「この勇者に貰った剣であんたを刺してもいいんだから!」

僧侶「商人さん....」

武闘家「商人。」

賢者「ふん。勇者が、勇者さえいなければ、私はラダトームの全てを手にしていた。」

商人「……………」

賢者「あの大魔王を勇者達が倒した事により、私がそれまで練っていた計画が瓦解した。」

賢者「頼りない王。それを蹴落とそうとする大臣。
私がその大臣に取り入り、王を失脚させた後、大臣が王になる。」

賢者「そして、その大臣には黒い噂が付きまとっていた。
私はそのスキャンダルを指摘し大臣をも失脚させる。」

賢者「と、いうシナリオが出来上がっていたが、
そこに勇者達が大魔王を倒したという話が舞い込んだ。」

商人「…………」

202: 2013/02/04(月) 17:35:35.30 ID:DzXx0kaAO

賢者「当然、国は大騒ぎだ。王はアレフガルド全土に『勇者にロトの称号』を与えた事を知らせる。」

賢者「するとどうだ。人民は『あの王は素晴らしい』と持ち上げる。これでは失脚どころではない。」

賢者「計画は一時、凍結せざるを得なかった。時間を掛けて練った計画を邪魔されたんだ。」

僧侶「それであなたは賢者になったのね?勇者を殺せる力を得るために。」

賢者「その通り!賢者は神に選ばれし特殊な職だ。そうなれば何でもできるとね。」

武闘家「バカな事をしたもんね。賢者をそんな風に利用するなんてさ。」

賢者「私は氏に物狂いで賢者になった。そうしていく中で、勇者パーティーの中にも賢者がいる事を知った。お二人の事ですよ。」

僧侶「私と商人さん、というわけね?私をさらった理由は?」

賢者「ふ。単に同じ賢者として思想を共有したかっただけですよ。しかし貴方も商人も簡単な理由で賢者を辞めている。」

賢者「自分達を選んでくれた神への冒涜以外の何者でもない!」

商人「…………」ギリ


204: 2013/02/04(月) 17:47:47.82 ID:DzXx0kaAO

賢者「勇者には私の計画を壊してくれた恨みと憎しみを最大限まで増幅させ、
そこに魔力をミックスさせた『呪い』をかけた。徐々に体が動かなくなるようにね。」

賢者「勇者はあろう事か、ロトの称号を得ながらも、ラダトーム
に腰を据えようともせずに城を飛び出した。」

賢者「自由気ままに世界を遊び歩いていたのがどうして許せなかった。」

武闘家「それだけの理由で?」

賢者「私にとっては十分すぎる理由だ。」

賢者「勇者には魔法の使えないこの洞窟に上手く誘い込み。
そこで呪いを増幅させ、身動きを取れないようにした。」

僧侶「それが半年前って事なのね?通りで...長く勇者様を苦しめたのですね。」



賢者「しかし、長きに渡ったこの復讐もどうやら、完結を迎えたようだな。勇者の氏でな。」

216: 2013/02/05(火) 10:07:02.48 ID:HqWN9cRAO

武闘家「ちくしょう!ふざけんな!賢者だったらなんとかしろ!」

僧侶「武闘家さん...あの、なんとかできないのですか!」

賢者「無理です。そもそも何故、私が頃したくて頃した勇者を生き返さなければならない?」

商人「……………」


武闘家「許せない!私があんたを頃してやる!」バッ

僧侶「ぶ、武闘家さん!」

賢者「人は殺さないんじゃないんですか?お嬢さん。」ニヤ

武闘家「あんたは人でも神でもない!ただの悪魔だ!だから頃したって構わない!」ジャキ

僧侶「駄目です!武闘家さん!」

武闘家「僧侶、ごめん。コイツだけは許せないんだ。」

武闘家「でやぁぁぁー!」バシュ

賢者「な!?くっ!」グッ


217: 2013/02/05(火) 10:23:02.22 ID:HqWN9cRAO


ガキンッ!


武闘家の爪が賢者に届く寸前。それを止めたのは鋼鉄の剣だった。

武闘家「しょ、商人。なんで止めるの?」

武闘家「コイツだけは絶対許せないんだ!私達の大切な仲間を頃したんだぞ!だったら...」

パンッ!

武闘家「え?」


商人「私だって大好きな勇者を殺されて、この男の事は許せないよ。」

商人「だったらお返しに殺せば満足なの?それじゃこの男と同じだよ!」

商人「私はそんな武闘家は嫌いだ。もう顔も見たくなくなっちゃうよ...」ポロ

武闘家「あ....」

武闘家「……熱くなりすぎちゃったよ。」

僧侶「武闘家さん…よかった。」ホッ

武闘家「商人、僧侶ごめんね。」


商人「ふふ。わかればよろしい!」ニコッ

218: 2013/02/05(火) 10:36:41.09 ID:HqWN9cRAO

賢者「よかったですね、人頃しを寸でのところで止めてもらって。」

武闘家「………くそ。」

商人「ずいぶんと嬉しそうね、賢者さん。身動きが取れないのにさ。」

賢者「ええ、私は勇者が氏んでくれさえすればいいのですから。」

商人「………」クルッ

スタスタスタ

武闘家「商人?」

僧侶「商人さん、何を?」

賢者「勇者は氏んでる。ここでは魔法も使えない、そもそも蘇生魔法は効きませんよ。」

賢者「私が勇者自身も魔法を使えないように呪いもかけた、何をしても....?」

賢者「何をしている?」


219: 2013/02/05(火) 11:18:14.93 ID:HqWN9cRAO

商人は再び祭壇に歩み寄り、横たわる勇者を前に座り込んだ。

おもむろに肩掛けバッグから何か道具を取り出した。


武闘家「何をしてるの商人?勇者氏んじゃってるんだよ。そんな道具じゃ...もがっ」

僧侶「武闘家さん。しー。」

武闘家「んぐぐ。(また口閉じられた~)」

僧侶「(あれ、はもしかしたら....)」

賢者「それは、薬草か何かですか?勇者の氏で頭がおかしくなったようだ。」

賢者「かわいそうな方だ、はっはっは!」


商人は取り出した一枚の葉を小さいすりこぎですり潰して、
それを勇者の口に少しずつ注いでいった。


商人「ふう。これでよし、と。」

賢者「そんな物を飲ませたところで、何になる?」

賢者「はっはっは!愚かな。それでも貴方は元賢者か?情けない。」



ぴくっ

220: 2013/02/05(火) 11:37:52.57 ID:HqWN9cRAO

ぴくっ


賢者「なっ!何だと!」


もぞもぞ
ぱちっ

勇者「ん、んん。うう~ん..」

勇者「あ~よーく寝たなぁ~。ふわぁ~。」ゴシゴシ

勇者「あれぇ?そういえば、ここは。私は何で...」キョロ

勇者「ん?商人?どーしたの?」


商人「えへへ~。勇者、おはよう!」ニコッ


武闘家「あ、ああ。ゆ、えぐっ」ポロポロ

武闘家「ゆうしゃぁ~~~!!」ガバッ

僧侶「勇者様ぁ~~!!」ダダダッ

勇者「へっ?う、うわぁ!」ガタン

勇者「武闘家と僧侶も?どうしたの~?大泣きしちゃって?」

商人「ふふ。何でだろうねー?」ウル

武闘家「バカ勇者!もう二度と会えないと思ったぞ。」

僧侶「私もですー!心配したんですから。うわぁ~ん!」

勇者「はて?」キョトン

221: 2013/02/05(火) 12:01:43.97 ID:HqWN9cRAO

賢者「そんな、馬鹿な...」ワナワナ

賢者「完全に私の呪いが効いて、氏んだはずなのに、どうしてだ。」ワナワナ

商人「『世界樹の葉』だよ。」

賢者「!?」

賢者「世界樹の葉、だと?」

商人「不慮の事態で氏んでしまった者を完全に生き返せる事ができる。」

賢者「そ、そんな物が。しかし蘇生は不可能のはずだ!」

商人「蘇生"魔法"では、でしょ?おそらく。あなたは魔法にこだわりすぎた。」

商人「ただ、この葉は、世界に一枚あるかないかの希少な物よ。普通なら知り得ない。」

商人「私や僧侶は賢者になってから修行の中、同時に色々と勉強もした。」

商人「必氏に古い文献や書物から知識を得た。その時にこの世界樹の葉の事を知ったの。」

賢者「く、私は知らなかった。そんな知識や物には興味すら無かった。」

商人「あなたの方がよっぽど賢者失格じゃないの?神に選ばれた、とばかりで。何も得ていない。」



賢者「く、くそぉ....こんなはずじゃ。」ヘタ


222: 2013/02/05(火) 12:18:09.71 ID:HqWN9cRAO

勇者「ねえ、商人。」タタタ

商人「勇者どうしたの?」

勇者「そこの男の人は?縛られててうなだれちゃってるけど。」

商人「え。ああ、まあ。後でゆっくりさ、説明するよ。」

商人「とにかく、今はここを出よう。どっぷり疲れが...わっ!」

勇者「商人!ごめんね。ありがとう。」ガバッ


商人「勇者……」


商人「おかえり勇者。生きててよかった。」ニコッ






魔法使い「………なんの音かしら?」

魔法使い「んー。よく寝たわねぇ。魔法を使いすぎてダルいし。」ポリポリ

魔法使い「……」キョロキョロ

魔法使い「あ!」キッ

勇者「あ!」

商・武・僧「あ!」


224: 2013/02/05(火) 14:07:00.24 ID:HqWN9cRAO

それから1週間後
【アリアハン 酒場】


『かんぱーい!』

ガチャン

武闘家「んぐんぐ。ぷはー!いやぁ、仕事の後の一杯は染みますなー!」

商人「それどこのおじさんなのよ。」

魔法使い「あ~このお酒美味しいわね~。どこのお酒なの?商人。」

商人「これはね、ジパングで昔から作ってる『にほんしゅ』っていうお酒だよ。けっこう強いよ。」

魔法使い「へえ。気に入っちゃった。商人の店じゃ入れてないの?」

商人「はいはい、好評なら早速仕入れに入りますよ?」

僧侶「私、お酒苦手で。わざわざゼロ%の物を用意してくれてありがとうございます。」ペコ

商人「いいのいいの!私も全然お酒駄目だし、普通ので楽しもうよ、ね?」ニコ

武闘家「あ~れぇ?僧侶ちゃんと商人ちゃんは飲めないんでしたっけぇ?」ヒック

商人「酔うの早っ!」

武闘家「ほれほれー遠慮せずに飲みなされ!さもなくば...」スッ

僧侶「ひゃあ!武闘家さん!いきなり触らないでくださいよ。」

武闘家「おおー、触り心地がええじゃないかー。って....」

商人「こらっ!って.....あれ?しょげちゃったよ、この子。」


武闘家「はーあ、やだやだ。」ブンブン

魔法使い「(久々ね、こういうノリ。)」ポー

225: 2013/02/05(火) 14:20:18.12 ID:HqWN9cRAO


僧侶「それにしても、勇者様は遅いですね。お城でお話が長くなってるのでしょうか?」

魔法使い「まあ、かなり久々だろうから積もる話も積もりまくりなんじゃないの?」

商人「う~、勇者ってやっぱり大変みたいだね。ね、武闘家?」チラッ

武闘家「むにゃむにゃ...そうりょのは...きいな...くう。」

商人「寝るのも早っ!」

魔法使い「弱いんだから無理して飲むからよ。ふふふ。」

僧侶「かわいい寝顔ですねー。くす。」



商人「そういえば、勇者の呪いってさ、大丈夫だったの?」

魔法使い「ああ。まったく心配ないわよ。何せ、一度氏んじゃってるから。」

僧侶「ん、どういう事なの?」

商人「氏んじゃってまずくなかったの?」

226: 2013/02/05(火) 14:30:10.99 ID:HqWN9cRAO

魔法使い「ううん。あの男が掛けた呪いは、勇者が氏ぬことを目的にしていた。」

魔法使い「だから勇者が氏んだ時点で呪いの役目は終わって浄化されたのね。」


商人「ああ~そうなんだ?呪いが消えた後に生き返ったから、今はもうピンピンって事か。」


僧侶「すごい仕組みなんですねー、呪いって。」


魔法使い「……二人とも元賢者なのに、その辺は全然なのねぇ。」ハア


商・僧「返す言葉もございません……」シュン


武闘家「くかーくかー」スヤスヤ

227: 2013/02/05(火) 14:54:52.61 ID:HqWN9cRAO

魔法使い「あの賢者はどうなったの?捕まったって聞いたけど?」

僧侶「うん。捕まって今は牢屋の中よ。自分が作った隠し牢屋に入れられたみたい。」

商人「え。それって僧侶が監禁されてた牢屋?」

僧侶「はい。ざまみろって感じですよー。まあ、だいぶ反省はしてるみたいですが。」

魔法使い「ふん。気に食わないわ。
またリリルーラで押し掛けて拷問でもしてやろうかしらねぇ。」ヒック

商人「(ひぃ~目が本気だ。)」ゾク

僧侶「大臣もかなりな不正行為を働いていたようで、
今回の事で明るみに出て、罪に問われているみたいだし....」

僧侶「ラダトームは今、大忙しです。王様もだいぶこたえていたみたいですし。」

商人「大変だね、それは。図書館も全壊しちゃったもんね。」

僧侶「はい、働くトコがなくなっちゃいました。」ガクッ

僧侶「今は、例の事があったし、お暇をもらってますけど。」

商人「いい機会だし、ゆっくり、のんびりしたら?私の所に遊びに来てもいいし。」

僧侶「あ!ホントですかぁ?また商人さんの手作り料理食べたいなー。」キラキラ

商人「お安いご用だよ!」グッ

228: 2013/02/05(火) 15:08:57.04 ID:HqWN9cRAO

魔法使い「りりるーら....つぎは....べたん...まほかとーる」スースー

商人「あれ?魔法使いも寝てたんだ?」

僧侶「なんか、知らない魔法の名前を言ってましたね....」

商人「(あとまだ何を覚えちゃうんだろ....)」


僧侶「商人さん。そういえばあの時、世界樹の葉を使ってましたけど。...どこで?」

商人「ん?あれね。あれはね……」


ガチャ
ドッシャーン!

「あ~あ、姉ちゃん。全部こぼしちゃったじゃねーか。どうしてくれんの?」

「あ!ゴメンナサイ!急いでたから、弁償しますから!すみませんすみません!」ペコペコ



商人「来たみたいね....」

僧侶「勇者様ぁ~。おっちょこちょいは変わらないですね。」ニコ

229: 2013/02/05(火) 15:20:54.22 ID:HqWN9cRAO


勇者「いやぁ~またしてもお恥ずかしいところを。」テレ

商人「まったく、天性のおっちょこちょいだもんね勇者は。」

僧侶「ケガなどしてませんか?すごい音がしましたけど?」

勇者「あ。へーきへーき!足引っ掛かっただけだし、ありがとう僧侶。」

僧侶「いえ。勇者様がまた元気に私達とお話ができるならなんでもないです!」

商人「駄目だよ~勇者。僧侶は心配性なんだからさ。」


勇者「でも本当に今回はみんなにご迷惑をかけちゃったよね?ごめんなさい。」ペコリ

勇者「ありゃ?武闘家と魔法使いは寝ちゃってんの?」

商人「二人ともお酒飲んで、気持ち良さそうに、寝に入ったよ。」

僧侶「起こしましょうか?」

勇者「あ、いいよ。かわいそうだし。二人とはまた話せるからね。」


230: 2013/02/05(火) 15:29:45.61 ID:HqWN9cRAO

僧侶「そうだ、さっきは商人さんが勇者様を助けた時の事を話していたんですよ。」

勇者「ああー、私を生き返らせてくれたって話?聞きたいな、本人としては。」ワクワク

商人「世界樹の葉の事ね。そうだその事なんだけど。」

商人「あれを私が持ってたのは、勇者にもらったんだよ。覚えて...」

勇者「は?.....」ボケッ

商人「...ないかぁ。やっぱり。」ガクッ



僧侶「勇者様が商人さんに差し上げた物だったんですか?」

商人「そう。もう2年以上前かな。いつもの通り、勇者が店に顔を出しに来てくれて....」

231: 2013/02/05(火) 15:44:06.15 ID:HqWN9cRAO
~~~~~~~

2年前
【ホープバーク 商人の店】


勇者「じゃあこれ、頼まれてた道具一式ね。
袋に入れてあるから、後で確認しといてね~!」

商人「いつもありがとう!助かります。また次の時にお礼するね。」

勇者「じゃあね~ばいばーい!」ブンブン



商人「ええと、道具道具、と。」ガサガサ

商人「すごろく券だー、貴重な物だよね。しかも5枚も。これはいい値で売れるぞ~。」ニタニタ

商人「あと不思議な木の実と命の木の実か~、これも売れるね。」

ヒラッ

商人「ん?何これ?葉っぱ?なんでこんな物入ってんだろ?」

商人「………あれ。どこかで見た事ある形だけど。どこでだっけな~。」ブツブツ


商人「あ!あの時の文献!たしか、これって氏者を生き返らせる事ができる...」

232: 2013/02/05(火) 15:53:38.11 ID:HqWN9cRAO

商人「『世界樹の葉』だ!」ガタン

商人「勇者ってば、こんな貴重な物を私なんかに....ありがと!」ウルウル



商人「さて、いくらで売りに出そうかなー」ブツブツ



~~~~~~~~~~


商人「と、いうワケだったんだよね、これがさ。」

僧侶「売ろうとはしたんですね....一旦は。」

商人「あ、ま、まあ最初だけね。」アセ

僧侶「(さすが商売人ですね。)」

商人「でもとんでもなく貴重だからってずっと自分でバッグに入れてたんだ。」

僧侶「じゃあ勇者様は自分で自分を助けちゃったみたいな感じですね!」

勇者「えっ!なるほど、そういう事だよね。私って偉いねー。ははは。」


233: 2013/02/05(火) 16:14:00.64 ID:HqWN9cRAO

勇者「ていうか、世界樹の葉っぱだったんだ?その時の葉っぱって。」


商・僧「は?」



勇者「いやー。あの時、ホープバークに行く直前にさ。」

勇者「ラーミアに乗ってて、ガルナの搭近くを飛んでたら、北の方に目立つ木があったのさ。」

勇者「たまたま行ってみたら、珍しい形の葉っぱだったから拾っただけなんだよねー。」


商人「………て事は、あなたは単に珍しい葉っぱだから私の所に持って来た、と。」

勇者「商人は何でも売っちゃうから、いくらで売れるのかなぁって。えへへへ~。」テレ


勇者「まいったね、こりゃ。…あ、……ひぃぃー!!」

商人「…………」ゴゴゴゴゴゴ



勇者は商人からのキツいお仕置きの後で、目を覚ました武闘家
と魔法使いにさらにお説教を食らうのでした。


そして、夜は更け。



さらに1ヶ月が経った。

243: 2013/02/06(水) 09:32:23.95 ID:+YyjNfVAO

《エピローグ 魔法使い編》

ある日の早朝
【ホープバーク 町外れの公園】


商人「ねえ~、なんでこんな朝早くに起こされなきゃいけないの~。」


魔法使い「まあいいじゃない。私は朝早し、それにほら健康的でしょ?」


商人「今日はお店お休みだからだら~っと寝ていたかったのにさ。」ブツブツ


魔法使い「はいはい、愚痴は後で聞くから、ほら気合い入れて!そこの砂場に立って。」


商人「まったく、新しい魔法か何か知らないけど見てほしいって押し掛けてきてさ。」ブツブツ


魔法使い「よし。準備オッケーね!じゃあ、いくわよー!」ウズウズ


商人「はぁ~い。」

244: 2013/02/06(水) 09:47:47.40 ID:+YyjNfVAO

魔法使い「大地に眠る精霊達よ…今こそ我の声に耳を傾けたまえ。」ブツブツ


魔法使い「『ベタン』!」グググ


商人「ふわぁああ~。う~目がショボショボする...ん?」ズン


商人「ちょ、ちょっと何?体が...わあぁぁ~!!」ズンズン


魔法使い「きゃー!やった成功よ~!師匠やりました!」ピョンピョン


魔法使い「(ベタン、やっとモノにしたわ!次は僧侶のとこに行って実験よ。)」


商人「…うう、重いよぉ~。助けてぇ…」


魔法使い「ん?…あ。商人ごめ~ん!今魔法解くから。」アセアセ


商人「(ううう、酷い目にあったなぁ。ぐすん...)」

245: 2013/02/06(水) 10:08:41.43 ID:+YyjNfVAO

【ホープバーク 商人の店】


商人「……はい、ご注文の『にほんしゅ』です。二箱で宜しかったですかね?」ドン


魔法使い「あ、いやねぇ。怒ってるの?だから謝ってるじゃない。ごめんなさい。」ペコ


商人「………」ジロ


魔法使い「わ、わかったわよー、じゃあ、あと二箱追加で。ね?」


商人「………」ニコッ

商人「ありがとーございまーす!魔法使いさん太っ腹!」


魔法使い「ふう。あなたには負けたわ。でも朝からいきなりごめんなさい。」


商人「痛かったけど…いいの。新しい魔法が使えるようになってよかったね!」


魔法使い「まだまだ私は極めないと気が済まないもの。
いつか世界一の魔法使いになるわ。」グッ


商人「うん!応援してるよ、頑張ってね。」

商人「(でもすでに世界一なんじゃ.....)」


魔法使いは大量の酒と共にルーラで飛び去っていった。

246: 2013/02/06(水) 10:40:52.13 ID:+YyjNfVAO

《エピローグ 僧侶編》

その日の夜
【ホープバーク 商人の家】


僧侶「美味しかった~!商人さん、ごちそうさまでした!」


商人「いえいえ。こちらこそ、たっぷり食べてもらって。腕を振るった甲斐があったよ~。」


僧侶「いつ来ても、商人さんの美味しい食事を頂けて私は幸せ者ですよ。」ニッコリ


商人「照れるなぁ。えへへ。」

商人「あ、ねえ。そういえば家は決めたの?」


僧侶「はい!町外れですけど、静かそうでいいかなって。でもわざわざ私の為に。」


商人「私は何もしてないよ。おじいちゃんに言ってあげてね。町長様だし。」


僧侶「わかりました。ん~、新しい図書館が出来るのすごく楽しみですー。」


商人「おじいちゃんにお願いしてみたら、『喜んで建てる!』なんて言ってくれたもの。」


僧侶「まさか自分がホープバークに住むなんて思わなかったから、
商人さんに誘われた時はビックリしたし、嬉しかったです。」

247: 2013/02/06(水) 10:59:43.72 ID:+YyjNfVAO

商人「そういうサポートも仕事の一つなんですよ。ってね。」ニコ


僧侶「私も図書館が出来たら司書として一生懸命がんばります!」グッ


商人「私もたまには遊びに行くからさ。期待してるよ~かわいい司書さん。」ツン

僧侶「えへへ~。」ニヤニヤ


商人「あ、そうそう。昨日ねポルトガから新しいチョコがね届いんだ。食べてみる?」トン


僧侶「あ~!私の大好物だ~。食べたい!食べたい!」ワクワク


商人「はい、どうぞ。私も食べてみようっと。」モグ

商人「(ん?めちゃ美味しいけどこの風味...)」ポー


僧侶「う~ん!新作はさらに甘くてコクがあって美味しぃ~!」

僧侶「…ありゃ?なんかヘンな感じですぅ....頭がポーっとするな。」ポー


商人「このチョコはお酒入りね。そんなに強くないけど。大丈夫?そうりょ.....ん?」


僧侶「……」キョロキョロ

僧侶「魔法使いはどこ?」


商人「はい?(目が座ってますけど?)」

248: 2013/02/06(水) 11:19:00.72 ID:+YyjNfVAO

僧侶「ねぇー、商人さーん。あの馬鹿魔法使いはどこにいるのー?」


商人「(もしかして、僧侶って酒乱?)」アセ

商人「あの、僧侶ちゃん?」


僧侶「あの女、昼にいきなり来て、私にベタンとかいう魔法を
かけてすぐに帰っちゃったのよー!許せないわ!」

僧侶「引っ張りだして来て、ザキでもメラでもお返ししてやるわー!」ガー


商人「ひぃぃ~!やめてー!家が壊れるー!」アタフタ


僧侶「年上だからっていつまでも子供扱いしてんじゃないわよ~!出てこーい!!」ウガー


商人「こうなったら、ごめんね僧侶。『ラリホー』!」パァ


僧侶「うー、ん。急に眠く...なっちゃった。」トスッ

僧侶「しょうにんさぁん....ごめんなさぁい....むにゃむにゃ」スー


商人「ふう~危ない。てか魔法使い、酷っ!」ガクッ


僧侶はそのまま眠りについた。商人は後片付けを渋々やる羽目になったのだった。

249: 2013/02/06(水) 11:36:43.62 ID:+YyjNfVAO

《エピローグ 武闘家編》

明くる日の昼過ぎ
【ホープバーク 商人の店】


武闘家「商人いる~?」ヒョイ


商人「いるよ~。」ボー


武闘家「ありゃ?どしたのさー?らしくない顔して。」


商人「昨日はまあいろいろあったから疲れちゃってね。今日は何の用?」


武闘家「イヤだな~せっかく幼馴染みが遊びに来たっていうのにさ。」


商人「あのねぇ。私は今仕事中なんだよ。見てわかると思うけど。」


武闘家「見てもただぼーっとしてるだけじゃんか。その格好だと。」


商人「う。ま、まあとにかく今は忙しいから、あなたと遊んでる暇なんてな...い..」チラ

商人「あれ?あの、あなたの後ろにいるのはどちらさま?」


武闘家「ん~?どちらさまって、もしかして~この人?」ニヤニヤ


商人「そう。その男の人。武闘家の知り合い?」


250: 2013/02/06(水) 11:52:20.72 ID:+YyjNfVAO

背の高い男「あ、あの初めまして。商人さんですか?」ペコリ


商人「あ、はい。はじめまして。この店の主の商人と申します!」ペコッ


背の高い男「いつも妻から聞いてます。仲のよい幼なじみで頼りになる姉さんみたいだと。」


商人「ああ。そうなんですか!頼りになるだなんて、そんな事ないです……よ」

商人「あれ?今なんて言いました?『つま』?ってどういう意味だっけ?」ポカン


武闘家「『つま』は『妻』でしょー?そんな言葉も知らないの~?」


商人「いや、知ってるけど。なんでこの状況でその言葉が出てくるわけ?」


武闘家「ふっふっふっふ」ニタニタ


商人「え!ま、まさか…武闘家……」


武闘家「私、ケッコンしました~~!!」バーン


商人「………」

商人「……」ピカ

商人「ええええぇぇぇ~~!!」バタン

251: 2013/02/06(水) 12:07:34.53 ID:+YyjNfVAO

数分後~


商人「いやいや、まさかあなたが結婚しちゃうだなんて。嵐が来るんじゃないの?」


武闘家「こら、失礼な事を言うな。新婚ホヤホヤさんに向かって~。」


商人「あの旦那さん。この子とはどこで?」


武闘家の夫「アリアハンの道場で。俺が道場に通ってて、師範の妻に一目惚れしたんです。」


商人「はあー。どこが好きになったんですか?」


武闘家の夫「とにかく必氏に教えている凛々しい表情と姿に痺れました!」


武闘家「て、照れるからヤメテ。」カァ


商人「(あ~あ。顔真っ赤っかにしちゃって。)」


商人「武闘家。カッコイイ旦那様ね。おめでとう!!」


武闘家「あ、ありがとう。」


武闘家「じゃあ、たっぷり私達の馴れそめやエピソードを聞かせてあげちゃおっかな~。」


商人「あ。それはいいです。仕事あるんで。」キッパリ


武闘家は幸せを手に入れた。
商人は仕事に戻った。

253: 2013/02/06(水) 13:12:10.49 ID:+YyjNfVAO

《エピローグ 勇者編》

その日の夕方
【ホープバーク 商人の店】


商人「ありがとうございましたー。またどうぞ。」


商人「早いな、もう夕方になっちゃったよ。さて、帳簿帳簿と。」ガシャン

商人「おっと。この剣も手入れいてあげないといけないね。よいしょ。」チャキ

商人「(勇者にもらったこの鋼鉄の剣、ずいぶんお世話になったなぁ。)」

商人「(あの頃を思い出しちゃう。)」


ちょんちょん

商人「!誰?」クルッ


勇者「やっほー!商人おひさー!」ニカッ


商人「勇者!はぁ~、びっくりしたー。おどかさないでよ。」


勇者「ごめん。あまりに商人が真剣な顔してたからさ。その剣、手入れしてくれてたんだ。」


商人「うん。ちょっと勇者達と旅をしてた時の事思い出しててさ。」


勇者「大変だったよね~。よく生きて帰れたよ本当に。みんなのおかげだよ。」


商人「勇者も一番末っ子だけど、立派なリーダーだったじゃない。
個性がバラバラなみんなをよく纏めて。」


254: 2013/02/06(水) 13:31:21.99 ID:+YyjNfVAO

勇者「うん、大変だった。」シレッ


商人「こいつぅ~。」

商人「でも私は勇者とこの剣のおかげで、本当に大切な時間を過ごせた。」

商人「今、私がこうしていられるのもそうなんだよ。」

商人「あの時、私がパーティーに入らなかったら。今は何してたのかなぁって、ね。」

商人「私を仲間にしてくれてありがとね。勇者。」


勇者「どういたしまして。」ニコッ


商人「そういえば、今日はどうしたの?すごい久々よね、あの酒場以来でしょ?」


勇者「うん。私もしばらく休もうかなって。アリアハンに帰る途中だったんだ。」


商人「そうなの?世界を飛び回ったりしないの。」


勇者「しばらくはね。今回の事で自分の幼さを知ったし、
じっくりこれから自分で何が出来るか考えてみたいんだ。」


商人「(そっか、勇者とはいえまだ、18の女の子だもんね。今までが過酷すぎかな。)」


勇者「いつになるかわからないけど、答えが出たら、ラダトームにまた行こうと思う。」

勇者「私はやっぱり勇者だし。王様からロトの称号ももらってるしね。」


255: 2013/02/06(水) 13:54:18.73 ID:+YyjNfVAO

商人「かっこいいじゃん、勇者。やっぱり私達のリーダーだね!」


勇者「かっこいいかな~、いやいや。まあそんな事で商人に挨拶に来たのさ。」


商人「わざわざありがとう。だったらアリアハンに帰ったら武闘家に宜しくね。」


勇者「え、武闘家がどうかしたの?悪い事でもしちゃった?」


商人「ううん、とっても良い事だよ~。絶対びっくりするぞ。(悪い事って何だろ?)」


勇者「ふ~ん、何だろね楽しみだなぁ。」ワクワク

勇者「じゃあ私は行くね。その剣、大切にしてくれて嬉しかったよ。」バイバイ


商人「こちらこそ、ありがとう!また遊びに来てね~!」バイバイ


商人「(強い子だな、勇者は。私ももっと頑張らないとね。)」


勇者はアリアハンに戻り、しばらくはゆっくりするという。
勇者ともまた会えるとわかった商人の表情はとても晴れやかだった。


256: 2013/02/06(水) 14:09:29.21 ID:+YyjNfVAO

《エピローグ 商人編》

その日の夜
【ホープバーク 商人の家】


商人「これで良し、と。あ~美味しそうだな。お腹ぺこぺこだもんな~。」ジュルリ

商人「青年くんはまだかな、そろそろだと思うけど....」

商人「(青年くんが食事に来るのは久しぶりだもんね。美味しいって言ってくれるかな?)」


トントン
ガチャ


青年「商人ちゃん、遅くなってごめんよ~。待った?」


商人「あ、来た来た。いらっしゃい!ちょうど今ね晩ごはん出来たんだよ。
青年くんもお腹空いたでしょ?早速食べよ食べよ!」


青年「うっひゃ~!すごい豪勢だな~。これ君が全部一人で?」


商人「そうだよ。料理好きだもん。朝飯前ってやつだよ。」


青年「これは晩飯前だけど、ってね!……あれ?」


商人「ぷ、くく、あはははは!青年くん面白いねー。ひーお腹がよじれる~。」チクチク


青年「(よかった、受けた。)」ホッ


257: 2013/02/06(水) 14:36:39.63 ID:+YyjNfVAO

夕食後


青年「うまかった~!お腹一杯。商人ちゃんごちそうさま。」


商人「ほんと?美味しかった?よかった。」


青年「なあ、商人ちゃん。」グッ


商人「ど、どうしたの?真面目な顔して。」ドキ


青年「ずっと前に、君が言ってくれたよね?『ご飯なんていつでも作ってあげるよ』って。」

青年「でもあの時のは違う意味だったと思うんだ。」

青年「だから僕は今、君にお願いしたいんだ。」


商人「は、はい!」


青年「僕に『毎日』ご飯を作ってください!!」


商人「え!そ、それって...プロ」ドキドキ


青年「商人ちゃん、僕と結婚して欲しい!一生君を守るから。だから傍にいてくれ。」


商人「い、いいの?こんなにがめつくて可愛げのない女なのに!」


青年「君と付き合いはじめてからずっと一緒になる事を考えてた。
どんなに楽しくて幸せだろうって。」


商人「(そうか、そうだったんだ....)」


商人「青年くん。私ね、この前の事件の時に氏ぬかもって時があったんだ。」

商人「結果的に魔法使いが助けてくれたんだけど、
直前にふと青年くんに会いたい!って思ったの。」

商人「その時に、私は青年くんの事が大好きで必要な人なんだってはっきりとわかった。」

258: 2013/02/06(水) 14:57:45.89 ID:+YyjNfVAO

商人「私も青年くんに毎日ご飯作ってあげたい!」


青年「商人ちゃん。」バッ


商人「!?青年くん。」


青年は商人を抱きしめた。


青年「君の事、愛してる。」


商人「(暖かい...青年くん。)」

商人「ありがとう。嬉しいよ、とても。えぐ、ひっぐ」ポロポロ


青年「これ、かっこつけすぎかなぁ。」


商人「……かもね。えへへ。」ニコ

商人「(でもいいんだ。私も、愛してるよ、青年くん。)」


青年「ん?どうしたの?」


商人「なんでもないよー。」


商人も幸せを手に入れた。
青年と商人はめでたく夫婦になったのだった。

しかし商人の目標はまだまだ先にある。青年と共に歩んでいくこれからを思い描いていた。


翌日

259: 2013/02/06(水) 15:08:29.21 ID:+YyjNfVAO




結婚しても商人はこれからも腕を磨いて、自分の店をもっと大きくし、
みんなから認められる世界一の商人を目指すのだろう。

仲間達への思い、愛する人への思い、すべてを心に秘めて彼女
はいつものあの元気な声を張り上げる。



『いらっしゃいませー!!』



今日もホープバークの町に商人の声が響いていた。




おしまい

260: 2013/02/06(水) 15:10:13.58 ID:+YyjNfVAO
完結です。ありがとうございました。

また夜にでもふらっと来ます~

261: 2013/02/06(水) 15:19:19.29
乙乙!たのしませてもらったよ!

自作にも期待。

第1作
女商人「やっと私の出番ね」ルイーダ「あ、登録しただけよ」女商人「えっ?」

引用元: 女商人「勇者が行方不明に?」女武闘家「じゃあ探しに行こ~」ワクワク