1: 2013/02/12(火) 00:44:06.41 ID:1qHsCOQZ0

女武闘家「あの時の冒険…?」

商人「塞ぎこんでた私を連れ出してくれたのは武闘家だったよね」

武闘家「え?そーだったっけか…?」

商人「忘れたの?はぁ、人がせっかく思い出に浸ろうって時に」

武闘家「いつの頃のお話でしたっけねぇ……」ポケー

商人「ほら私達が10歳の時だよ~。冒険したじゃない?アリアハン大陸をさ」


武闘家「…ああー!はいはい。思い出した!」

武闘家「ありゃあ過酷な冒険の旅でしたなぁ~」


商人「(ホントに思い出したのやら……)」ジロ


 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360597446

2: 2013/02/12(火) 00:49:04.50 ID:1qHsCOQZ0

5: 2013/02/12(火) 09:29:39.66 ID:Vpg3PGOAO

それは商人がまだ10歳だったある日の事だった。

【アリアハン 商人の店】


商人父「ありがとうございました~!またどうぞ!」

商人「ありがとうございました。」ボソ

商人父「どうした~?元気ねえな。お客さんには大きな声で、が基本だぞ。」

商人「う、うん。わかった。」

商人父「よし!いいぞ。じゃあ俺は少し出てくるから少しの間、ここは頼むな。」

商人「は~い。いってらっしゃ~い。」ブンブン


商人「(……はぁ)」

6: 2013/02/12(火) 09:47:08.33 ID:Vpg3PGOAO


女「こんにちはー。あれ、商人ちゃんが今日はお店番なの?」

商人「いらっしゃいませー。少しの間だけだよ。えっと、何にしますか?」

女「薬草を3つと、カレーパン1つもらおうかな。」

商人「はい。少々お待ちくださいませ。」テキパキ



商人「お待たせしました。はいどうぞ。出来たてのラスクもおまけだよ。」ニコ

女「ありがとう~!これ私大好きなの。子供のおやつにもいいわね。」

女「商人ちゃんもお母さんを亡くして2年か、大変だと思うけど頑張ってね。」

商人「あ……はい、ありがとう。」


商人「(あ、元気に言うの忘れちゃった。)」

7: 2013/02/12(火) 09:59:20.99 ID:Vpg3PGOAO

【アリアハン 商店街】


商人父「よし、仕入れも終わったし帰るかな。」

女「あら、商人ちゃんのお父さん。」

商人父「ああ、これはいつもご贔屓に。」ペコ

女「ついさっきお店で買い物させてもらったのよ。娘さんもしっかりしてるわねぇ。」

商人父「お、そうでしたか。それはありがとうございます。」

女「旦那さんも奥さんを亡くしてから大変だけど、頑張ってね。」

商人父「お気づかい感謝します。またお願いしますねー!」



商人父「(ああ、そうか。もうそろそろ母さんが氏んで2年か。)」

商人父「(あの子が元気がないのはそのせいか……)」

8: 2013/02/12(火) 10:06:41.47 ID:Vpg3PGOAO

世の中は魔王バラモスの出現により、乱れはじめていた。


魔物も世界中で姿を見せはじめ、人々は少しずつ魔王の脅威を感じつつ生活していた。


アリアハンでも町の外では魔物の姿が確認され、
人々がなかなか外に出る事も叶わなくなってきた。


9: 2013/02/12(火) 10:21:07.59 ID:Vpg3PGOAO

【アリアハン 商人の家】


商人「ごちそうさまでした。美味しかったよお父さん。」

商人父「おうよ。ありがとな。そういえば今日は店番よくできたみたいだな。」

商人「そうかなぁ、昔からお父さんのしてる事を真似してるだけだよ。」

商人父「はは、そうか。じゃあお前も俺みたいな立派な商売人になるさ。」


商人父「…お母さんいなくて寂しいか?」

商人「え?あ、うん。大丈夫だよ。寂しくない。」

商人父「もう2年だもんな。お前も10になったし、少しは強くなったか?」

商人「強く、なったよ。10歳だもん。お母さんいなくても...」

商人「じゃ、お父さん。私部屋に行ってるね。ごちそうさま!」ニコ

商人父「ああ、わかった。」


商人父「(ふぅ、無理してやがるな。ホントはかなり寂しいだろうに。)」

10: 2013/02/12(火) 10:36:31.75 ID:Vpg3PGOAO
翌日

【アリアハン 商人の店】


武闘家「おじさん。こ~んにちはっ!」バッ

商人父「お!久々に威勢のいいのが来たな!いらっしゃい武闘家ちゃん。」

武闘家「えっへへー。威勢がいいのが来ちゃったよ!おじさん元気?」

商人父「元気元気。まあ武闘家ちゃんの元気にゃ負けるがな。はっはっは!」

商人「あ、武闘家ちゃん。」スッ

武闘家「商人!おはよー!あれぇ?なんか元気ないねぇ、どしたの?」

商人父「ん~。まあこの子の母親が氏んじまって2年くらい経つからな。」

商人父「去年もだったけど、この時期は元気がないんだと。な?」

武闘家「あ、そうか……ごめんね商人。」ペコ

商人「ち、違うよ。そんなんじゃないよ。ただまだ起きたばかりでボーっとしただけ!」

商人「武闘家ちゃんが気にしなくていいもん。」ムス


11: 2013/02/12(火) 10:50:33.07 ID:Vpg3PGOAO

武闘家「そっか、それなら良かった~。」パァ

商人「…………」

武闘家「…良くないの?」

商人「ううん。」ブンブン


商人父「(どうしたもんかな。)」

武闘家「………あ!そうだ!」ポン

武闘家「ねえ!そんな顔してないでさ、思いっきり遊びに行こうよ!」

商人「え?遊びに?」

武闘家「そうそう!気分も晴れるよ、絶対!決まり~!」

商人「だめだよ~私はお店のお手伝いがあるんだから。」

商人父「あ?いいぞ。武闘家ちゃんと一緒に遊びに行ってこいよ。」

武闘家「おじさん!いいの?」

商人父「ああ。たまには外に出て気持ちよ~く遊んできな。」

商人父「お前がいつまでもそんな寂しそうなツラしてちゃ、天国の母さんも心配だぜ。」


12: 2013/02/12(火) 11:09:27.72 ID:Vpg3PGOAO

商人「いいの?お父さん?」

商人父「俺だってお前がそんなツラしてるのを見るのはつらいからなぁ。」

商人「……そっか。心配かけちゃってごめんなさい。」ペコ

商人父「ま、ま。気にせず行ってきな。武闘家ちゃんがいるから大丈夫だよな?」チラ

武闘家「やったね、任せてよ。日々の修行の成果を見せちゃうから!」ビシッ

商人「あ~すごい。かっこいいね。キマってるよ!武闘家ちゃん。」


商人父「よし、そんならお前にもこれを持たせてやるよ、ほらよ。」ヒョイ

商人「わっ、と。これはナイフ?」ジッ

商人父「それは母さんが昔使っていた聖なるナイフってやつさ。」

商人父「いつも俺が手入れしてたんだ。そこそこ役に立つだろうさ。」

商人「お母さんの…ナイフかぁ。えへへ、やったね。」ニコ

武闘家「いいな~かっこい~。見せて見せて!」

商人「だ~め。私のだもん。」
武闘家「いいじゃんか~減るもんじゃないし。」

商人「だめー、武闘家ちゃんにはその爪があるでしょ?」


商人父「おいおい店先で喧嘩はやめてくれよ~。」

13: 2013/02/12(火) 11:27:37.04 ID:Vpg3PGOAO

商人父「あ、そういや。武闘家ちゃんはお母さんはいいのか?」

武闘家「だいじょーぶ。お母さんは今、勇者様達と旅に出てるから、自由だよ。」

商人父「そういやそうか。頑張ってんだな。さすがあの人の娘だな。武闘家ちゃんは。」

商人「おばちゃん、すんごく強いから、武闘家ちゃんはいつもしごかれてたもんね。」

武闘家「うるさいな~。強くなるためだもん、辛くないよ。」
商人「あ……」


商人「(強く……なる、かぁ)」

商人父「よ~し。ほら、駄賃だ。薬草5個持ってきな。」カサッ

商人「わぁ、お父さんありがとう~。」

武闘家「じゃあさ、早速行こうよ。私ワクワクしちゃうな。」

商人「うん、行こう。よろしく武闘家ちゃん。」スタスタ



商人父「(ありがとな武闘家ちゃん。無事で行ってこいよ。)」

14: 2013/02/12(火) 11:29:28.82 ID:Vpg3PGOAO
しばし中断します~。こんな出だしからですが、お願いします。

15: 2013/02/12(火) 12:53:37.09 ID:Vpg3PGOAO

【アリアハン 教会】


武闘家「え~と、なんで教会に来ちゃってるの?早く外に出ようよー。」

商人「だめだめ、外に出る前にここで自分達の無事を祈っていかなきゃね。」

武闘家「う~めんどくさいなぁ。そんなのしなくても大丈夫だって。」

商人「武闘家ちゃんはめんどくさがりだからなぁ。ほら行くよ。」グイッ

武闘家「首は引っ張らないでー。」ジタバタ

バシッ
ドシン

女の子「きゃ。いててて。」

武闘家「あっ。ごめん。手が当たっちゃった。怪我はない?」

女の子「あ。はい。大丈夫です。なんともありません。」ポンポン

商人「(私達より少し下なのかな、かわいい子だな~。)」

武闘家「よかった~。あなたは教会の子?その格好は…」

女の子「そうです。ここでお世話になってる僧侶見習いです。教会に何かご用ですか?」ニコ


16: 2013/02/12(火) 13:10:58.87 ID:Vpg3PGOAO

商人「あの、私達二人今から外に出るからその前に無事を祈ってからと思って。」

僧侶「へぇ。外に出られるんですかぁ?すごいです。
あ、お祈りは中で神父様が行ってくれるので私がご案内します。」ニコ

武闘家「あ、指から血が出てるよ。さっきのかな、ごめんね。ねぇ商人、薬草あるよね?」

商人「うん。僧侶さん、薬草どうぞ。傷が治るよ。」

僧侶「あ、すみません。気持ちだけいただきます。大丈夫ですから。」ブツブツ

商人「え、で、でも。そのままだと……」

僧侶「傷を癒せ『ホイミ』」パァー

小さな光が僧侶の指の傷を覆い、治して元通りになった。

商人「うわ!ホイミの魔法だ、すご~い。僧侶さん。」

武闘家「どうなってんの~?あなたすごいね。」

僧侶「えへ、まだ覚えたばかりなんですよ、魔法。上手くいってよかった~。」ホッ

商人「(私よりも小さな子なのに、すごいなぁ~)」

17: 2013/02/12(火) 13:26:49.11 ID:Vpg3PGOAO

【教会内 祭壇の前】


神父「おやおや、かわいいお客様ですね。どうしましたか?」

僧侶「お二人は今から町の外に出るみたいで、無事を祈りたい、と来られたみたいです。」

神父「ほう、町の外へ?お二人だけで大丈夫なのかな?最近は魔物も出ると聞くし。」

武闘家「大丈夫だよー。魔物は私がぎったんばったん倒しちゃうから!エッヘン。」

商人「わ、わたしも、武闘家ちゃんに負けないように頑張り
ますから、大丈夫、です。たぶん。」

神父「なるほど。自信があるのなら止めません。ただ無理はなさらずに。」

武闘家「わかった~!」

商人「はい。わかりました神父さま。」


神父「では、神に小さなお二人の小さな旅の無事を祈りましょう。アーメン。」ギュ

僧侶「アーメン。」ギュ

18: 2013/02/12(火) 13:45:28.03 ID:Vpg3PGOAO

商人「お祈りしてくれてありがとう、神父さま。」

武闘家「僧侶ちゃんも祈ってくれたのか~ありがとね。」

僧侶「いいえ。こうして会ったのも何かの縁だと思います。では無事を祈ってます。」ペコリ

神父「気を付けて行くんですよ~?がんばって。」

商人「は~い!行ってきます。僧侶さんもありがとう。」

武闘家「じゃあ、早く行くよ~。ウズウズしちゃって。」

商人「武闘家ちゃん、ウズウズしすぎだってば~。落ち着いて、ね。」

タッタッタ


僧侶「あのお二人、大丈夫でしょうか?神父さま。」

神父「まああの子達なら心配はないでしょうね。多少凸凹コンビみたいですが。」

僧侶「神父さまはご存知なのですか?お二人の事。」

神父「黒髪の子は今、勇者様と旅をしている武闘家の娘さん。あの年でもかなり強いはず。」

神父「赤髪の子はアリアハン一の道具屋の娘さん、あの年でとても賢い子だと聞きます。」

僧侶「す、すごいんですね。私なんてまだまだです。」

神父「あなたもその内、立派な僧侶になれます。私が保証しますよ!」ニコ

僧侶「え!そうですか!頑張ります、私も。」

19: 2013/02/12(火) 14:00:03.83 ID:Vpg3PGOAO

8つの時に母親を亡くし、去年今年とその時期になると寂しさ
からか気分が沈んでいまっていた商人。


しかし、幼なじみである武闘家のふとした思いつきで商人を元気付けようと
思いきって遊びに行く(武闘家的には「冒険に行く」と同義語)事になった。


教会で冒険の無事を祈ってもらい、10歳同士の商人と武闘家はそれぞれ
母の形見のナイフとお手製の鉄の爪を持ち、アリアハンを意気揚々と出て行った。



アリアハン大陸の中で繰り広げる小さな二人の小さな冒険の旅が始まる。

20: 2013/02/12(火) 14:51:25.02 ID:Vpg3PGOAO

【アリアハン大陸 フィールド】


武闘家「やったー!町の外に出たぞー。すっごい久しぶりだな~。」

商人「なんか、町を一歩出ちゃうと。急に殺風景だね、怖いよ少し。」

武闘家「さっぷーけー、って何?美味しいの?」ポケ

商人「何も面白みがなくてつまらない景色の事だよ。食べれないからね。」

武闘家「そういう事かー。たしかに見渡す限り緑だね。」

商人「ねえ武闘家ちゃん。どこに行くか予定はあるの?」

武闘家「とりあえず北の方に歩いていけばいいんじゃないの?」

商人「ええっ。それだけ?この大陸にはアリアハンの他に
レーベっていう村があるのは知ってる……よね?」

武闘家「ねーべ?何?もう町も村もないのぉ?」

商人「……何そのおばあちゃんの言葉みたいなの?レーベね、れーべむら!」

武闘家「ああ、うん。レーベ村ね。知ってるさーそれくらいは。」

商人「(武闘家ちゃん、力は強いけど、不安だなぁ…)」

武闘家「じゃあまず、その…なんとか村に行こうよ~!」

商人「武闘家ちゃん、そっちは南だよ。逆……海しかないよ。あとレーベね。」

武闘家「あ、あはははは!10歳の女の子には難しい話だね、こりゃ。」

21: 2013/02/12(火) 15:03:04.63 ID:Vpg3PGOAO

商人「じゃあ気を取り直して、北にあるレーベ村を目指して行こう?」

武闘家「そういうのは商人に任せるね。私じゃ迷っちゃってダメだぁ~。」

商人「任されましたー。じゃあ私達はお金もほとんど無いから
魔物と戦って落とすお金を拾うしかないよ。」

武闘家「あ!戦いは私がリーダーね、いいでしょ?私は強いから。」

商人「うん、武闘家ちゃんにお願いね。私はフォローしかできないと思うけど。」

武闘家「でもその腰に下げたナイフ、戦いでも使えるよきっと。お母さんの形見なんでしょ?」

商人「うん。お母さんが長く使ってたんだって。お父さんがくれて嬉しかったな。」

武闘家「しっかり持ってなよ。無くしちゃだめだよ。」

商人「大丈夫!絶対無くさないよ。」グッ


22: 2013/02/12(火) 15:14:04.14 ID:Vpg3PGOAO

武闘家「あ、商人商人。あっちに見えてるのは何かな?高いよ~。」

商人「たしか…塔だと思ったけど。お父さんが言ってた『ナジミの塔』かなぁ?」

武闘家「あそこにも行ってみたいけどさ…無理だよね?」

商人「小さい島に建ってるから行きようがないよ。ほんと、どうやって行くのかな?」

武闘家「泳いでとか?」

商人「私、泳げないからなぁ。」

武闘家「外の世界って不思議なものばっかだね。へへへ。」

商人「ほんとだね。新鮮な感じがするなー。楽しいね♪」

商人「じゃ、とりあえず北に向かおう、橋が見えてくるはずだよ。」

武闘家「おー!」

23: 2013/02/12(火) 15:30:08.92 ID:Vpg3PGOAO

ぴょんぴょん
バサバサ

商人「ぶ、武闘家ちゃん何か前から来たよ!」

武闘家「あ、やっと魔物さん達が出てきたよ~!スライムとおおがらすだ。」

商人「スライムはかわいいけど、あのカラスおっき~いね!」アセアセ

スライムとおおがらすがあらわれた。

武闘家「よっし、商人はひとまず私の後ろにいてね。まずはあのからすを倒すよ!」

商人「う、うん。気を付けてね。なんかあのからす手に持ってるよ。」

武闘家「修行の成果を見せてやる、えやぁー!」バシュ

武闘家の攻撃
鉄の爪がうなる。
スライムにダメージ。
スライムをやっつけた。

商人「うわぁ、武闘家ちゃんすごい!あっという間にスライムを……」

武闘家「へっへー。いいスタートだね!」

おおがらすの攻撃
飛び上がり、固い骨を落としてくる。
しかし武闘家はよけた。

商人「(すごい!攻撃を避けた。)」

武闘家「のろいのろい!当たらないよ、そんなの。てぇい!」ブオ

武闘家の蹴りが命中。
おおがらすにダメージ。
おおがらすをやっつけた。

24: 2013/02/12(火) 15:48:40.45 ID:Vpg3PGOAO

武闘家「どんなもんだい!魔物なんか怖くないぞ。」ググ

武闘家「商人見ててくれた?私のかっこいい蹴りや突きを……あれ?」


商人「あー。おおがらす。ガイコツの骨の中にG余計に隠してる。もらっちゃえ~。」チャリン

商人「スライムも後ろにG隠してたなー、これももらっていいよね?」チャリン

武闘家「………」

武闘家「シカトだぁ。私のかっこいい姿をシカトした。」ムスッ


タタタタ

商人「ごめんね、武闘家ちゃん。お金の音がしたから、何かと見てみたら、ほらっ!」ジャラ

武闘家「商人は私の事より、お金がいいんだ~!ムシされたぁ~!」ポロポロ

商人「えっ?ああ、ごめんごめん。武闘家ちゃんも十分かっこ
よかったよ。あの回し蹴り凄かったね。」

武闘家「別に回し蹴りじゃなかったけどー。普通の蹴りだけど…」

武闘家「うわぁぁん~やっぱり見てなかったじゃんかー!」ポロポロ

商人「ま、まあまあ押さえてね。泣き止んでよぉ、武闘家ちゃん。」

商人「ほら、1Gあげるからさ。泣き止んで。」

武闘家「いらんわい。」

25: 2013/02/12(火) 16:06:37.63 ID:Vpg3PGOAO

商人「まあまあ武闘家ちゃん、そんなにムスッとしないでさ。ごめんね。」

武闘家「ふふん。いいよ、許す。商人も笑った顔になっててよかったー。」

商人「え?」

武闘家「さっきさ、お店にいる時の商人の顔は笑ってなかったけど、今は笑ってるもん。」

商人「あ、そういえば、そうだね。だって武闘家ちゃんとこんな事、楽しいもん。」ニコ

武闘家「私もだよ。なんか商人って頭がいいから、一緒にいると心強い気がするし。」

商人「ありがとね、武闘家ちゃん。」

武闘家「どーいたしまして、へへへへ。」ニヤニヤ



太陽がだいぶ傾き、暗くなりはじめてきた。


商人「う~ん、これは野宿かな今日は。」

武闘家「へ?もしかして泊まれないの?宿とかには。」

商人「だってレーベまでまだまだ全然だよ?それ覚悟なんでしょ?」

武闘家「……しまった。」

商人「(武闘家ちゃん…)」


26: 2013/02/12(火) 16:21:11.20 ID:Vpg3PGOAO

【アリアハン北の橋付近】


武闘家「しょうに~ん、魚捕れたよ~!」ピチピチ

商人「おーすごいね。こんなに捕れんたんだ?手掴みでしょ。」

武闘家「お母さんに教わったんだ~。ちっさい頃から得意なんだ。」

商人「漁師にもなれちゃうね武闘家ちゃんは。すごいや。」

武闘家「じゃあ早く焼いて食べようよ~。」

商人「火はちゃんと起こせたから大丈夫だよ。あったか~い。」パチパチ

武闘家「あなたのそのバッグはなんでも入ってるんだね~。マッチやら水筒やら。」

商人「商人の標準装備なんだってさ、いつどこでも困らないようにって。」

武闘家「ふ~ん。大変だね、商人さんも。」

商人「さて、お魚焼けるまで私はちょっと。」キラン

武闘家「あれ?ナイフで何するの?」

商人「美味しそうなお魚あったからお刺身にしようかなってね。」

武闘家「…料理人みたいだねぇ。」

27: 2013/02/12(火) 16:38:21.53 ID:Vpg3PGOAO

商人「お母さんが氏んじゃって、料理は私とお父さんが分担してるからね。」

商人「生きてた時もお母さんに料理を教わってたんだー。」

武闘家「いいな~私のお母さんたら強いけど料理しないもの。」

武闘家「今も10歳の娘を置いて、勇者様達と旅してるからなぁ。」

商人「豪快だもんね~武闘家ちゃんのお母さんて、ふふふ。」

武闘家「すごいんだからーいつもいつも。大騒ぎだからね~」ハァ


商人「よ~し、お刺身できた。」ズラッ

武闘家「うわーすごいね。いっただきまーす!」

商人「武闘家ちゃん、私の分も残しといてね……」

武闘家「おいひぃ~、10歳でこんな贅沢しちゃっていいのかなー?」バクバク

商人「あ、あ、私の分も……」ウル


こうしてはじめての二人での野宿は無事に終わるのだった。
ただ商人のお腹は少しだけ鳴っていたようだ。

32: 2013/02/13(水) 09:29:02.72 ID:SqvjQj+AO

翌朝


商人「……むずむず」

商人「……くしゅん!」

商人「は。な、なんだ、朝かぁ……寒いな」

商人「あれ?私自分でかけてた膝かけがないな。」キョロ

武闘家「すーすー、むにゃむにゃ」

商人「(武闘家ちゃんがかけてる…)」


武闘家「もう食べられないよぉ、しょうにんごめんねぇ…」

商人「あ、寝言言ってるー。昨日の事かな?謝ってる、かわいい~」

ぐぅぅ

商人「お腹鳴っちゃった。バッグに何か入ってないかな。」ゴソゴソ

商人「やった。ビスケットはっけ~ん!これ食べとこうっと。」モグモグ

商人「(今日でレーベに着けるといいけどなぁ)」

商人「(お父さん心配してるかな…)」

商人「少ししたら武闘家ちゃん起こして出発しよう。」

33: 2013/02/13(水) 09:43:54.79 ID:SqvjQj+AO

2日目
【アリアハン北の橋付近】


商人「武闘家ちゃーん、支度できた?もう行くよー。」

武闘家「ちょっと待ってて~。……よっし、バッチリ。じゃあしゅっぱーつ!」

商人「まったく武闘家ちゃんはお寝坊さんなんだから。全然起きないんだもん。」

武闘家「寝る子は育つ。これこれ。」ビシッ

商人「ふふ。ま、いいか~。」

商人「ともかく今日の目標はレーベ村到着だからね。頑張っていこ。」

武闘家「はいな!今日こそはちゃんとしたベッドで寝てやるぞ~。」

商人「目標がベッドになっちゃったけど……それもそうだね。」

武闘家「早くその…村に行ってみたいな。どんなとこだろうね?」

商人「こじんまりとして静かな村みたいよ。すっごく有名な魔法使いさんがいるんだって。」

34: 2013/02/13(水) 10:00:52.07 ID:SqvjQj+AO

武闘家「えー!魔法使いさんが?強いのかなぁ~手合わせしたいな私。」

商人「普通に戦うと武闘家ちゃん勝っちゃったりしてね。」

武闘家「やる気出てきたぞ~、目標はじゃあ魔法使いを倒す!だね。」

商人「また変わっちゃったね、目標……」


すたすた


商人「なかなか魔物って出て来ないね。」

武闘家「暇だな~、歩いてるだけじゃつまんないや。」

商人「この大陸にいる魔物はそんなに強くはないんでしょ?」

武闘家「お母さんがしきりに言ってたよ。他の大陸の魔物は凶暴で強い、って。」

武闘家「もしあなたが別の大陸に出るならもっと大きくなってからにしなさい、だって。」

商人「そうなんだ?世界は広いんだね。私もいつか世界を旅したいなぁ。」

武闘家「じゃあその時も一緒に行こう。二人とも大人になったらさ。」

商人「うん!」ニコ


ガサッ
ぴょんぴょん

35: 2013/02/13(水) 10:18:04.49 ID:SqvjQj+AO

武闘家「魔物か?」キッ

商人「あ~うさぎさんだよ。かわいいー!」

武闘家「そのうさぎは、一角うさぎだよ。ツノが鋭いから気をつけて。」

商人「ほ、ほんとだ。かわいいのにあんなに大きいツノがある。」

一角うさぎが3匹あらわれた

武闘家「数が多いから1匹、商人に任せるねー。」

商人「えっ?」

武闘家「大丈夫だって。よく動きを見てれば怖くないよ。じゃ1匹任せた!」バッ


商人「こ、怖いけど頑張ってみる。」

商人の前に一角うさぎが1匹立ち塞がった。

商人「よーし、武闘家ちゃんだって頑張ってるんだ、私だって!」ギュ

商人「うさぎさん、ごめんねー!ええーい!」タタタ

商人は一角うさぎ目掛けナイフを振りかざした。

ぴょん
スカッ

商人「あれっ?避けられた!」

攻撃は当たらない。
バランスを崩した商人に一角うさぎがツノを向けて突進してくる。

36: 2013/02/13(水) 10:47:12.09 ID:SqvjQj+AO

タッタッタッタ

商人「うわ!早い。避けなきゃ!」サッ

ビシュ

商人「痛ッ!か、かすっただけか、よかった。」


一角うさぎの突進攻撃を寸前でかわした商人だが、
ツノが腕をかすめてしまった。血が滲む。

なおも一角うさぎは方向転換し、再び商人に向かってくる。


商人「(ただ、あの子の攻撃はただ突進してくるだけみたい)」キョロキョロ

商人「あ、あった!よーしあそこに誘い込めば。」ダッ

商人は近くにある大きな木の元に走った。


商人「はあはあ。よし、うさぎさん、私はここだよ!」

タッタッタッタ

商人「(来た!怖いけどギリギリまで引き付けて…)」

一角うさぎはツノを商人に向けて低く跳躍した。

商人「(今だっ!)」サッ

ドスッ!


商人「ふぅー、危ない。でも上手くいったね!」

一角うさぎのツノは商人の後ろに立っていた木の幹に突き刺さった。
衝撃で一角うさぎは気絶してしまった。

商人「あ、ツノ抜いてあげないとかわいそうだね。…よいしょと。」ズボッ

37: 2013/02/13(水) 11:04:35.31 ID:SqvjQj+AO

武闘家「しょうに~ん、そっちは大丈夫~?」


商人「あ、武闘家ちゃんは…余裕だったっぽいね。すごいや。」

武闘家「まあね、すばしっこいから厄介だったけど、倒したよ。ん?どしたの?」

商人「ツノが勢いよく木に刺さって気絶しちゃったみたいなんだ、このうさぎさん。」

武闘家「へえ~商人も上手くやったみたいだね。凄いじゃん?」

商人「えへへ、武闘家ちゃんと逆で頭脳派だしね~。」

武闘家「どうせ、私はおバカさんですよ~だ。あははは。」

武闘家「ちなみに、そのうさぎどうするの?」

商人「そうだね、店で買いと……放してあげるよ。もちろん。」

武闘家「(…今、店で買い取ってもらうって言いかけたよね?)」

商人「何その目は?武闘家ちゃん。」

武闘家「ううん。べーつに。」

38: 2013/02/13(水) 11:21:33.78 ID:SqvjQj+AO

武闘家「あ、商人。腕から血が出てるよ。大丈夫?」

商人「これ?うさぎさんのツノがかすっちゃって。たいした事ないよ。」

武闘家「ダメダメ、傷口からバイキンとか入ったら大変だよ。
ほら腕出して、薬草塗ってあげるから。」グイ

商人「あ、ありがとう。武闘家ちゃん優しいね。」

武闘家「大切な幼なじみだもん。当たり前だって。」ヌリヌリ

商人「(武闘家ちゃん)」


武闘家「はい、これでいいよ。すぐに治るよ。じゃあ引き続き行こ行こ~!」

商人「うん。早くレーベに行きたいね!」

商人「ほら、あなたも仲間のところへお戻り。人を襲っちゃだめだよ~。」サッ

ぴょんぴょん

一角うさぎは嬉しそうに去っていった。するとそこに薬草が落ちていた。

商人「あれ?薬草だ、なんで?」

武闘家「腕に傷付けちゃったお詫びなんじゃない?よかったね。」

商人「律儀なうさぎさん。ありがとね。」

39: 2013/02/13(水) 11:31:48.37 ID:SqvjQj+AO

その後も二人は力を合わせ、あらわれる魔物達をなんとか倒してゆき、
落とすGやアイテムを得ながら、進んでいった。


道中、商人が武闘家に教わった投げナイフの技で木に止まる鳥などを捉え、
昼食にしたり、木の実などを食べるなどして腹を満たした。


夕刻、二人の眼前に村の建物らしき物がうっすら見えてきた。
レーベの村までわずかである。

40: 2013/02/13(水) 11:59:52.69 ID:SqvjQj+AO

商人「あ、あそこに建物が見えるよ、ほら!」ビッ

武闘家「ほんとだ!やった~まずはベッドで寝れるのかくて~い!」

商人「もう私は足が棒になりそうだよー、武闘家ちゃん。」

武闘家「あと少しだって、頑張って歩こう。」

商人「はーい。頑張ってみますー。」

てくてく
てくてく

武闘家「もう着くよ~。よかった~夜になる前で。」

商人「村っていっても案外大きいみたいだよ。教会の十字架も見えるし。」


カァー!
カァー!

武闘家「ん?商人!上からおおがらすがっ!」

商人「へぇ?どうしたの武闘家ちゃん?」

武闘家「危ない!」

商人「はい?……ひゃああ~!」

暗くなり始めた空からおおがらすが1匹、
フラフラ歩いている商人目掛けて急降下してきたのだ。


「燃えよ火球『メラ』!」

ボッ!

クケェェェ!……


パラパラ

武闘家「えっ?火の玉?」

商人「い、今のってメラの魔法?」

41: 2013/02/13(水) 12:12:26.89 ID:SqvjQj+AO

商人「一体誰が?」キョロキョロ

バササッ
スタッ

商人と武闘家が魔法を放った人物を探していると大木の上から一人の少女が降り立った。

少女「……危なかったわね」ボソ

武闘家「今の火の玉はあなたが?その格好は。」

商人「魔法使いさん?」

商人「(私達よりは上かな、大人っぽい子…)」

少女「………」タッタッタ

武闘家「あっ、ねえ待ってよー!魔法使いさ~ん!」

商人「行っちゃったね、助けてくれたお礼言いたかったのになぁ。」

武闘家「さっきの火の玉『メラ』っていうんだ?すっごいね~女の子なのに。」

商人「そうだよ。かっこいいよね。武闘家ちゃん、とりあえず村に入ってみよ。」

商人「さっきの子もこの村の子だと思うし。宿屋さんにも行かないとね。」

武闘家「あ!そうだベッドベッド。楽しみ~。」

商人「(そんなにベッドがいいんだな武闘家ちゃんて…」

43: 2013/02/13(水) 15:28:13.83 ID:SqvjQj+AO

【レーベ村】


商人「うわぁ、ここがレーベ村だよ、武闘家ちゃん。」

武闘家「なんかほのぼのした雰囲気があるねぇ、アリアハンとは違って。」


村娘「あら?かわいい旅人さんね。ここはレーベの村よ、いらっしゃい。」ニコ

商人「は、はじめまして。私達アリアハンから来たんです。」

村娘「アリアハンから?まさか二人だけで歩いてここまで来たのかしら?」

武闘家「うん、そうだよ~。昨日は野宿しちゃったけどね。たどり着いてよかったー。」

村娘「す、すごいのね。まだ小さいのに。よければ宿屋があるから案内しようか?」

商人「あ、ぜひお願いします。私もうへとへとで、えへへ。」

村娘「わかったわ。こっちよいらっしゃい。」

武闘家「はーい、お姉さんありがとう!行こう商人。」

商人「うん。」

44: 2013/02/13(水) 15:38:00.18 ID:SqvjQj+AO

【レーベ村 宿屋】


村娘「はい、ここが宿屋よ。Gは持ってる?」

武闘家「持ってるよ。魔物狩りしてこんなに貯まったよ。」ジャラ

村娘「ほんとにすごい子達ねぇ。」パチクリ

村娘「ちょっと宿屋の旦那さんに聞いてあげるわね。」タッ



村娘「お二人さん。部屋は空いてるみたいよ、よかったわね。」

商人「ほんとですか?よかった~。2日連続野宿は免れたね。」

武闘家「食事も宿屋のご飯楽しみだもんねー。」

村娘「じゃあ、私はここで。レーベでゆっくりしていってね。バイバイ!」

商人「優しいお姉さん、ありがとうございました~!」ペコリ

武闘家「じゃあね~!ばいばーい!」

45: 2013/02/13(水) 15:55:36.09 ID:SqvjQj+AO

【宿屋 ロビー】


宿屋の旦那「へえ~お嬢ちゃん達がお客さんかい?偉いもんだな、二人だけで。」

武闘家「おじさんが宿屋の人?よろしくです~。」

商人「お世話になります。」ペコ

宿屋の旦那「そうだ、俺はここの主人だ、よろしくな。お嬢ちゃん二人ならツインでいいか?」

商人「大丈夫です。あのう二人でおいくらですか?」

宿屋の旦那「ああ~!いいよお代は、大変な思いしてここまで来たんだろ。今日はタダな。」ニヤ

武闘家「えー?ほんとにいいの?やった~!」

商人「いいんですか?ちゃんとGはあるけど…」

宿屋の旦那「気にすんなって。疲れてんだろ?メシ食ってゆっくり休んでくれや。」

商人「…ありがとう!おじさん太っ腹だね!」ニッコリ

宿屋の旦那「へっへ~。カミさんにはナイショだぜ?」ヒソ

武闘家「ねえおじさん。食事も食べれるの?」

宿屋の旦那「もちろん。ここは山菜が絶品だからな、楽しみにしてなよ。」

商人「山菜料理かぁ、私初めてかも。美味しいんだろうな~。」

46: 2013/02/13(水) 16:10:55.86 ID:SqvjQj+AO

宿屋の旦那「ほらよ、これが部屋の鍵だ。寝るときはちゃんとかけるんだぞ。」ヒョイ

武闘家「部屋の鍵だ~すごいね、こんな形してるんだ?」

宿屋の旦那「そこの一番奥の突き当たりの部屋だ。
夕食はあと1時間くらいだな。ごゆっくりどうぞ。」


商人「武闘家ちゃん、早く部屋に行ってみよ!早く早く!」グイ

武闘家「だから首は引っ張らないでぇ~」ズルズル



宿屋の旦那「(大魔導師さんのお弟子さんと同じくらいの年か。)」

宿屋の旦那「(大きくなったらさぞかし名のある大物になるかもなぁ)」


47: 2013/02/13(水) 16:21:17.64 ID:SqvjQj+AO

暗くなる前にレーベ村に着いた二人は無事に宿屋にチェックインし、
宿屋自慢の山菜料理の夕食を満喫した。


宿屋の大きいお風呂にも入り、汚れと疲れを取ってリフレッシュ
できた二人は宿屋の主人と話をしようとロビーに向かった。


主人の話ではレーベには高名な魔法使いである、大魔導師がいるという。
二人は明日になったらその大魔導師の家を訪ねてみる事にした。

48: 2013/02/13(水) 16:35:53.85 ID:SqvjQj+AO

【宿屋 商人と武闘家の部屋】


商人「ふわぁ…おじさんとお話してたらすっかり眠くなっちゃったね。」ゴシゴシ

武闘家「もう寝よっかー。明日はその大…なんとかさんのお家に行ってみたいし。」

商人「そうだね、寝よう寝よう。ちなみに大魔導師さんだよ、武闘家ちゃん。」

武闘家「わかりました~、しっかり覚えました。大魔導師ね。」

商人「よろしい~。よく覚えておくのですよ。」ニコ

武闘家「う~ん、このベッドふかふかでやわらか~い。もう最高だよ。」

商人「大きいしね。一人でこんなベッド贅沢だな。うちもこういうベッド欲しいな…」



武闘家「じゃあ一日おつかれさま…しょうにん……」スー


商人「ぶとうかちゃんも…ありがとう…おやすみぃ……」クー



二人は疲れも手伝ってかすぐに深い眠りに落ちた。



……しかし翌朝、事態は急転する事になった……

49: 2013/02/13(水) 16:46:18.26 ID:SqvjQj+AO


翌朝


「………」

「……きて。……ちゃん。」

「起きてよー、武闘家ちゃん!」ユサユサ

武闘家「んん~?何どうしたの?」ムク

武闘家「あ、商人おはよー。」

商人「ノンキにおはよー、じゃないよ!大変だよ大変!」

武闘家「タイヘン?美味しいのそれ?」ポケー

商人「う~ん、この……違う違う!」

商人「どこにも無いんだよ!!」

武闘家「何が~?」

商人「私の聖なるナイフと、武闘家ちゃんの鉄の爪がどこにも無いの!!」

武闘家「………」


武闘家「え。」


武闘家「えぇぇぇー!うそ!?」ドタン



54: 2013/02/15(金) 14:06:09.44 ID:EmQoaOhAO


商人「お、おじさーん!」バタバタ

宿屋の旦那「ん?どうしたんだ、嬢ちゃん。朝っぱらから血相変えて。よく眠れたか?」


商人「はぁはぁ、あの、私と武闘家ちゃんの武器がどこにもないんです!」

宿屋の旦那「なにぃ?盗まれたってか!」

商人「わかんない。ただ朝、気が付いたら無かったんだよ!」

宿屋の旦那「参ったなそりゃ、正確にはいつから無かったか覚えてないのか?」

商人「昨日、食堂で夕食を食べた時は二人とも腰に着けてたんだけど…」

商人「よく考えたら、お風呂に行く時には部屋に置いていったんです。」

宿屋の旦那「風呂の時は鍵はしていったのか?」

商人「……私達、二人ともテンションが上がってて、つい鍵忘れちゃってたんです……」

宿屋の旦那「そうなのか?」

商人「お風呂上がってすぐにここでおじさんとお話して、
部屋に戻って眠くなってすぐ寝ちゃいました。」

宿屋の旦那「うーん。じゃあその風呂の間から寝る直前までの
間に誰かが部屋に入って盗んだってか。」


55: 2013/02/15(金) 14:26:24.33 ID:EmQoaOhAO


武闘家「おーい商人。」タッタッタ

商人「あ。武闘家ちゃんどうだった?」

武闘家「…だめ。どこにもないや。部屋の隅々まで捜したけど見当たらない。」

商人「そっか…どうしようお母さんの形見なのに……」

武闘家「商人…」

武闘家「ねえ、おじさん。昨日この宿屋に泊まってた人って?」

宿屋の旦那「もうチェックアウトしちまったよ。ええと…一人だな。男だったぞ。中年の。」

武闘家「じゃあその人が私達の武器を盗んだのかな?」

宿屋の旦那「特に怪しそうな素振りはしていなかったがな。」

商人「……私達も不注意だったけど、盗むなんて許せない。」

商人「絶対、見つけて取り返してやるんだからね。ね?武闘家ちゃん。」

武闘家「見てろ~、痛い目に遭わせてやるんだから。」

宿屋の旦那「たしか、その男。ナジミの搭はどこにあるか、聞いてきたぜ。」

56: 2013/02/15(金) 14:48:22.85 ID:EmQoaOhAO

商人「ナジミの搭?」

武闘家「あそこって小さい島に建ってるから行けないよね?」

宿屋の旦那「いんや。行けるぜ。ただし外からじゃなくて中からだけどな。」

商人「え?本当?どこからか入れるんですか、あの搭。」

宿屋の旦那「ああ、俺も詳しくは知らねぇが。
このレーベから少し南に行くと、森の中に古い階段があるらしいんだ。」

宿屋の旦那「その階段を降りて行くと、あのナジミの搭に繋がってるって話さ。」

武闘家「へぇ~そんな秘密基地みたいなのがあるんだ。ワクワクしてきたよ私。」

商人「武闘家ちゃん、ワクワクしてる場合じゃないよ~。とにかく私達も搭に行こう。」

宿屋の旦那「おいおい、行くなら。村の武器屋でなにか買って行った方がいいぞ。」

商人「あ、そうか。私達、武器がないんだもんね。」

武闘家「そうとわかれば武器屋に行こうよ~商人早く!」

宿屋の旦那「十分気をつけて行くんだぞ~、魔物もたくさん出るしな。」

商人「お世話になりました!とても楽しかったです、じゃあねおじさん!」

武闘家「ベッド気持ち良かったよ~!また来るね~!」バイバイ

57: 2013/02/15(金) 15:02:50.90 ID:EmQoaOhAO


宿屋を出た二人は大急ぎで村の武器屋に行き、商人は盗まれた
ナイフと似た形のナイフを買い、武闘家はこん棒を買い、装備した。


予定していた魔道士の家に立ち寄るのは諦め、宿屋の主人に
教わった通りに村の南の森を目指した。


58: 2013/02/15(金) 15:20:20.05 ID:EmQoaOhAO

【レーベ村 南の森】


商人「武闘家ちゃん、なんかうっそうとしてきたよ。太陽の光隠れちゃった。」

武闘家「ほんとだね。たっくさん木があってなにがなんだかわかんないな~。」ガサガサ

商人「おじさんが言ってた階段の下って、洞窟になってるのかな?」

武闘家「魔物もたくさん出るって言ってたよね?楽しみだ~。…ぐぅぅ」

商人「あ~、武闘家ちゃんお腹鳴ったよ~。……ぐぅぅ、あ!」カァ

武闘家「商人だってー。朝バタバタしたからちょっとお腹空いちゃったね。」

商人「はい。そんな空腹時にはじゃんじゃじゃ~ん!」バッ

武闘家「ナニコレ?ビスケット?」

商人「カンパンっていってね、保存食のお菓子なんだ。味はないけどお腹は膨れるよ。」スッ

武闘家「商人はなんでも持ってんだねー、用意がいいね!いただきます~。」ポリポリ

商人「どう?まあまあでしょ?」ポリポリ

武闘家「味あんまりないね…まあまあ。」

商人「ふふふ。文句言ったら、有料にしますよー。」ニヤ

武闘家「……おいしいれす」ポリポリ

59: 2013/02/15(金) 15:31:29.99 ID:EmQoaOhAO


武闘家「うん、お腹も少し膨れたよ。」

商人「そだね。……あれ?あそこ。」

武闘家「どうしたの?魔物?」

商人「違うよ、あそこだけ少し開けてるみたいだよ。ほらほら。」

武闘家「あ、ほんとだ~。あそこじゃない?行ってみよ商人!」ダッ


二人がそこに行くと大きい木はなく、太陽の光も差していた。

よく足元を見ながら捜していると、小さな木の陰に階段らしき物を発見した。


商人「あ!これが階段だよ。あったあった。」

武闘家「古そうな感じだね。よ~し、降りてみよう。」

商人「ちょ、ちょっと怖いけどね。行くしかないね。」

武闘家「うん。じゃあ降りるよ、足元に気を付けてね。」

商人「………」ドキドキ


ザッザッザ


69: 2013/02/18(月) 09:45:06.07 ID:Y5ukuikAO

【ナジミの搭 地下1階】


スタスタ

武闘家「へぇ、真っ暗だと思ったら灯りがついてるよ。」

商人「ほ、ほんとだ!ロウソクでもないのに、どういう仕組みになってるの?」

武闘家「ただ、この通路は狭いね。ひんやりしてるし。魔物も出そうな感じ……」

商人「魔物、出るよねぇ…この雰囲気って。武闘家ちゃん。」

武闘家「私は前、商人は後ろに注意しながら歩いてね。」

商人「わ、わかった…」ブル



武闘家「長い通路だね、ここ。なんにもなさそうだけど。」

商人「……ん?待って武闘家ちゃん。」

ピタ

武闘家「どうしたの?魔物?」キョロキョロ

商人「違うよ。耳をそばだててみて。水の音がかすかにしない?」

武闘家「水の音?………」

商人「水が揺れる音、かな。」


70: 2013/02/18(月) 10:02:21.61 ID:Y5ukuikAO

武闘家「……う、たしかにかすかにそんな音がするね~。」

商人「私達はレーベ南の森から地下に入って、南西に進んでるから……」

ザザザザ
ビョンビョン

武闘家「商人考えるのタンマ!魔物が来たよ!」グッ

商人「へ?ま、魔物?…ひゃあ!何あれ?でっかいカエルー!」

武闘家「フロッガーだよ、コイツは。ちょっと強いけど1匹なら大丈夫。」


フロッガーがあらわれた

武闘家「先手必勝!行くぞー!やあぁぁ~!」バシュ

武闘家の先制攻撃
こん棒をフロッガーに向け振りかざす

バキッ

フロッガーの脳天にこん棒が炸裂
フロッガーは倒れた

武闘家「へへん、どんなもんだい。戦いは速さがモノをいうってね~。」

商人「すっごーい!あっという間だね。戦い慣れてるね武闘家ちゃん。」

武闘家「それほどでも~。」ニヘラ

ぐ、ぐぐ

商人「あ?武闘家ちゃん!まだ生きてるよ!」

ビョン

71: 2013/02/18(月) 10:14:25.68 ID:Y5ukuikAO

フロッガーは武闘家に飛びかかる

武闘家「うわ!コイツまだ……あっ!」ガッ

ズテン

武闘家「(いてて。あ、ヤバい!)」

商人「武闘家ちゃん!」チャキ

商人「(当たれー!!)」シュ


グサッ!
ドサッ……

商人はとっさにナイフをフロッガーに向け投げた

ナイフはフロッガーの額に命中した
フロッガーをやっつけた


商人「はあ、はあ。あ、当たったぁ~。」ヘタ

武闘家「あ、ありがとう商人!すごいや、完璧に命中しちゃってるよ。」

商人「油断しちゃあ、駄目だよ。武闘家ちゃん。ふう…」ニコ


武闘家「な、投げナイフの達人さま……」

商人「え?何て?」


72: 2013/02/18(月) 10:27:16.32 ID:Y5ukuikAO

武闘家「これからは商人の事、投げナイフの達人さま、って呼ぶよ。」

商人「何それ?いやだよ~微妙に長いしその異名。」ブンブン

武闘家「じゃ、ナイフの達人、で!」

商人「物騒でイヤ。」キッパリ

武闘家「…はあ…ざんね~ん。」

商人「10歳でそんな異名は欲しくありません。」




武闘家「ねえ、ナイフさん。」

商人「誰がナイフさんよ。」

武闘家「あそこになんか、大きい柱が見えるよー。」

商人「柱?ほんとだ。何だろうあそこだけ広くなってるみたい。」

武闘家「何かあるかも、だね。行こう!ナイ、商人。」

商人「………」ジロ


タッタッタ


通路を抜け、ぶつかりに着くと。
柱が立ち、脇に上り階段をあるのを見つけた。

73: 2013/02/18(月) 10:41:08.18 ID:Y5ukuikAO

商人「こんなところに階段が。上に続いてるねー。あ、でも右も左も通路があるなぁ。」

武闘家「めんどくさいから、ここ登ってみよーよ。右も左も後でいいじゃん。ね?」

商人「まあ、そうだね。ん?……なんか風が階段から入ってくるよ。」

ぴゅう~

武闘家「潮の匂いがする!海に近いところかもよ!行こう商人!」

商人「うん。行こう!」


ザッザッザ



武闘家「あれ?ここって……」キョロキョロ

商人「搭?ナジミの搭だよここ!あーっ!」

武闘家「ん?なになに?」

商人「武闘家ちゃん。見て見て!あそこアリアハンだよ!」バッ

武闘家「うわ~!ホントだ~!あれアリアハンのお城じゃん。」

商人「レーベから地下で繋がってたなんて……」

74: 2013/02/18(月) 10:55:40.31 ID:Y5ukuikAO

【ナジミの搭 1階】


武闘家「ここがナジミの搭かぁ~広いんだね。」

商人「そうか。さっき聞こえた水の音って海の水だったんだー。」

武闘家「ううう……」

商人「あれ?武闘家ちゃんどうしたのへんな顔して。」

武闘家「な、なんかよく考えたら私達、海の中をとぼとぼ歩いてきたんでしょ?」

武闘家「そう考えたらゾッとしちゃって……ううコワイコワイ。」スリスリ

商人「(繊細なんだなぁ、武闘家ちゃんて案外)」


商人「(て、事はさっきの左に伸びてた通路って、もしかしてアリアハンに?)」

商人「(ま、まさかねぇ)」ブンブン

武闘家「商人、とにかくこの搭を探索してみようよ。あの男もいるかもしれないよ。」


商人「へ?あ、そうだね。私達はその男を追って来たんだもんね。見つけなきゃ!」


75: 2013/02/18(月) 11:09:22.10 ID:Y5ukuikAO

武闘家「広いからどこに行ったらいいのかなぁ~。」

商人「ともかく奥に行ってみようよ。階段とかあるかもしれないから。」

武闘家「そだね。じゃあナジミの搭探索&犯人捜し開始~!」ビシッ

商人「おー!」グッ

スタスタ



数分後


武闘家「おーい商人。そこに何故かテーブルとイスがあるんですけど……」

商人「こんな搭でまさか~、って…あるね。テーブルとイス。」ジッ

武闘家「ここで魔物が座って雑談とかするのかな?」

商人「『いや~最近どうです?景気は。』『んん~ぼちぼちですねぇ』みたいな?」

武闘家「…いや…なんでまた魔物達が商売の話をしてるわけ?」

商人「あはは。つ、つい癖で。」

武闘家「………」

76: 2013/02/18(月) 11:26:43.97 ID:Y5ukuikAO

商人「はい、おふざけはこのくらいにして。そこにある階段降りてみる?」

武闘家「なんだろうね?気になるから。行ってみよう。」

商人「よし、じゃあ行くよー。」

ザッザッザ


商人「下はなんだろな~」ソローリ

商人「あれ?なんか暖かいよ、ここ。暖房入ってる?」


「いらっしゃーい!」


商人「ひ。え?『いらっしゃーい!』って今……」キョロキョロ

武闘家「ん~?暖かいよ、どして?」

「小さいお客さんだね。ナジミの搭内宿屋にようこそ。」

商人「へっ?宿屋さん?ここが?」

宿屋の主人「そうです。れっきとした宿屋です、はい。」


武闘家「嘘でしょ~?そうやって私達を油断させて襲う魔物なんでしょ?」キッ

宿屋の主人「いえいえ。めっそうもない!
ここはずっと昔から私の家系が宿屋をしているんです。」

武闘家「あ、そうなんだ~。大変だね、搭の中で宿屋なんて。」

商人「(……ここ、どうやって黒字にしてるか気になるな~。)」

77: 2013/02/18(月) 11:40:32.31 ID:Y5ukuikAO

宿屋の主人「いやぁ~それにしても珍しい。こんな女の子二人が搭に。」

宿屋の主人「まさか二人だけで来たのかい?」

武闘家「うん、そうだよ。レーベ南の森の中の階段から入って。ここにたどり着いたよ。」

宿屋の主人「魔物もいたでしょうに……襲われなかったかい?」

武闘家「襲われたけど返り討ちにしてやったもんね~。へへへ~。」ニヤ

宿屋の主人「ほお~たいそう強いんだね。お嬢ちゃんは。」

武闘家「私もだけどこっちの子もなかなかやるんだよ。ね~、商人?」

商人「(こんなところで宿屋としてやっていくには何かよほど
名物とかサービスが良くないと…)」ブツブツ

武闘家「ああ、考えちゃってるなこりゃ……」


宿屋の主人「珍しい事に今日は二組目だよ、お客さんは。」

武闘家「え?そうなの?」

宿屋の主人「ほら、あそこにいる男の人だよ。つい数時間前にね。」サッ

78: 2013/02/18(月) 11:55:58.75 ID:Y5ukuikAO

宿屋の主人が指差す奥の方を武闘家が目をやると、まだ30代くらいの男が
ベッドに横になって今まさに寝ようとしていたところだった。


男の寝そべるベッドの横のテーブルには見覚えのある鉄の爪と
聖なるナイフが置かれているのを武闘家は見た。


それらはレーベの宿屋で無くなった武闘家と商人のものに間違いなかった。


79: 2013/02/18(月) 12:13:55.25 ID:Y5ukuikAO

武闘家「あ―――!!」

商人「へ?」

主人「へ?」

男「へぁ?」ポカン

武闘家「あんた!私達の大事な武器を盗んだだろ~?」


商人「え?あの人が?」ジー

商人「あっ!私のナイフだ!あなただったんだね。私達のもの盗んだのは。」


男「へ?……あ。お前らレーベにいたガキ二人!ど、どうしてここが?」アタフタ

武闘家「そんな事より、その爪とナイフ返してもらうよ!」

男「チッ、ずらからせてもら…」ダダッ

武闘家「逃がすもんかー!商人!狙って!」バッ

商人「お母さんの大事な形見を……許さないんだからー!えーい!」シャ

男「うお!なんだこのガキども。ち、ちくしょう。」タタタタ


シュー

ドン!

男「ぐげっ!な、なんだ?服にナイフが!動けねぇ!」

商人の投げたナイフが逃げようとする男の服に刺さり、
さらに壁に刺さり、身動きが取れなくなった。

80: 2013/02/18(月) 12:35:32.59 ID:Y5ukuikAO

武闘家「もらったぁ~!犯人か~くほ!」

男「ひいぃぃ~!お助けをー!」

ドゴ~ン!


男「す、すみましぇん……」ズル

武闘家の拳骨が男の頭に降り下ろされた。
男は頭に大きなたんこぶを作って観念した。



10分後

武闘家「じゃあ、爪とナイフは売ろうと思ったって事?」

男「は、はいそうです。金が無くてロマリアにでも行って売ればそこそこになるかな、と。」

商人「ナイフ、たしかに返してもらいました。人の物を盗んじゃだめですよ!」

男「ご、ごめんなさい。もうしません。」シュン

武闘家「反省してるし、私はまだ怒り収まらないけど商人に免じて許してあげるよ。」

男「あ、ありがたき幸せ!武闘家さま~。」ガバッ

商人「……なんか武闘家ちゃんの一撃がヘンに効いちゃったぽいね。」

武闘家「あ、や、やりすぎちゃったかな私。ははは。」


主人「さて、びっくりしましたが、落ち着いたところで。皆さん、お茶いかがですか?」

商人「あ、いただきます~。」

武闘家「私も~!」

81: 2013/02/18(月) 13:35:07.64 ID:Y5ukuikAO


商人「あの~おじさん。さっき泥棒さんが言ってたロマリアってどう行くんですか?」

主人「ロマリアですか…いや、私もよくわからないんですが。」

武闘家「行ってみたいよね。違う大陸にあるんでしょ?」

主人「ふむ。噂によると、レーベをずっと南東に行くと、
ロマリアに通じる洞窟があるようです。」

商人「そうなんですか?そんな洞窟があるんだね。」

主人「ただ、洞窟内に壁があってそこから先には進めないらしいですよ。」

武闘家「え~、そうなの?私の飛び蹴りじゃあ壊せないかな~?」

商人「どれだけ強いんだか武闘家ちゃんは……」

主人「まあ、無理して行かなくてもいいような気もするけど。」

武闘家「ううん。駄目元で行ってみようよ。商人も行ってみたいでしょ?」

商人「ここまで来たら、行けるところまで行ってみたいな。」


主人「そうですか。じゃあ今夜はここに泊まっていっては?疲れたでしょう?」

商人「はい。せっかくなのでお世話になっちゃいますね。」ニコ

武闘家「よしよし、泥棒も見つけたし。明日はその洞窟に行ってみよっか。」


82: 2013/02/18(月) 13:47:42.03 ID:Y5ukuikAO


結局、たまたま入った搭の宿屋で爪とナイフを盗んだ犯人の男を見つけて、
改心させた二人は主人の話をたよりにレーベの南東にあるという洞窟に向かうべく旅立つ。


犯人を宿屋の主人に任せ、搭内の探索を諦めて搭の出口より、主人の好意でもらったキメラの翼を使いレーベまで飛んでいった。


一方、宿屋の主人が少し目を離したスキに泥棒の男は姿を消してしまっていたのだった。

83: 2013/02/18(月) 14:04:00.11 ID:Y5ukuikAO

翌日
【レーベ村 東の平原】


商人「武闘家ちゃん。爪が戻ってきてよかったね~。」

武闘家「でしょー?やっぱり私はこん棒じゃなくてこの鉄の爪じゃないとね。」ジャキ

商人「私もお母さんのナイフが戻ってきて、ナイフ2本になっちゃったよ。」

武闘家「両腰にナイフなんて、商人はガンマンみたいだよね、かっこいいなぁ。」

商人「ナイフの扱いも武闘家ちゃんのおかげで慣れてきてちょっと自信がついたかな。」

武闘家「お。最初は『武闘家ちゃんの後ろにいるね』なんて言ってたのにさ。」

商人「う、うるさいな~。今は大丈夫ですよーだ。」

武闘家「あ~言ったな。じゃあ次に魔物出てきたら。商人に任せようかな。」

商人「い、いいよ。やってやる。」ゴク

武闘家「きーまり!商人の強さを見せてもらおっかな。」

商人「(ふんだ。武闘家ちゃんたら強いからってバカにして。私だってやってやるんだから。)」


84: 2013/02/18(月) 14:27:52.01 ID:Y5ukuikAO

武闘家「商人、もしロマリアに行けたらどうしようか?」

商人「え?どうする?って何を?」

武闘家「旅だよ旅。行けたとしてもそんなに長くは出てられないでしょ?」

商人「そうか。思いきって出て来ちゃったけど、帰らないとねお父さんも心配するし。」

武闘家「私もいくらお母さんが今はいなくても、家開けっぱなしはよくないし…」

商人「ロマリアに行けたらさ、そこで終わりにしよっか?」

武闘家「そうするか?キリがいいとこだしさ。じゃあそこまでがんばろ。」スッ

商人「あ、握手なんかいいよ。終わった時にしよう。」

武闘家「あ、そう?わかった~。」ニコ

商人「………」プイ



その後、スライムやおおがらすなどの魔物が頻繁に出てくる
ものの、商人の奮闘で次々にやっつけていった。


日も暮れてきたので、二人はこの旅、2度目の野宿をする事になった。

85: 2013/02/18(月) 14:42:11.73 ID:Y5ukuikAO





商人「鳥さんありがとう。ごちそうさま。」ペコリ

武闘家「鳥さんはかわいそうだけど、美味しく食べれてよかった~。」

商人「そうだよ。感謝しながら食べなきゃね、武闘家ちゃん。」

武闘家「わかってるよ。商人はいちいち細かいもんな~。感謝していただきました。」ペコ

商人「細かくて悪かったね。どうせ私は小うるさいよ。」プイ

武闘家「あ、怒らないでよ。ごめんね商人。」


商人「武闘家ちゃんは、おおざっぱすぎるんだよ。強いからっていばっちゃってさ。」

武闘家「む。何さ。せっかく元気がないあなたを連れ出してあげたってのに。」

商人「私は連れ出してくれなんて、言ってたないもん。武闘家ちゃんが勝手にしたんでしょ?」

武闘家「あ~、ひどい。私はあなたの事を考えて。気分を変えてみようかってさ。」

商人「余計なおせわだよ。私の事はほっといてよ!」


86: 2013/02/18(月) 14:51:06.80 ID:Y5ukuikAO

武闘家「う~。あったまきた!商人の事なんてもう知らない!」ダッ

タッタッタ

商人「あ……武闘家、ちゃん。」


商人「(いいもん。武闘家ちゃんなんか……)」

商人「(すぐに戻ってくるよね。)」



15分後

商人「(武闘家ちゃん……まだかな。いつまで拗ねてるんだろ。)」

商人「(もしかして、魔物に。でも武闘家ちゃんに限ってそれは。)」

商人「(私ちょっとした事で勝手に怒って……いけなかったな。)」

商人「(探しに行ってみよう。)」サッ


87: 2013/02/18(月) 15:01:59.63 ID:Y5ukuikAO

商人「武闘家ちゃーん!どこに行ったの~?」

商人「いないなぁ……」キョロキョロ

ガサガサッ


商人「武闘家ちゃん?」

商人「あ!武闘家ちゃん。魔物がたくさん!うさぎさんじゃない!」

商人「なんで苦戦してるんだろ?あれ、あのうさぎ、一角うさぎじゃない。」

商人「行かなきゃ!武闘家ちゃんが危ない!」




武闘家「はあ、はあ。よく見たらお前達、一角うさぎじゃないな。その色……」


商人「武闘家ちゃーん!はぁはぁ、大丈夫?」

武闘家「あ!商人来てくれたんだね。よかった。こいつらは一角うさぎに似てるけど。」

武闘家「アルミラージっていう強い種類だよ。私も爪置いてきちゃったから……」

商人「私も戦うよ。」

その時残った1匹のアルミラージはその場で不思議な動きをした。

ふわんふわん

88: 2013/02/18(月) 15:21:35.81 ID:Y5ukuikAO

武闘家「ん?なんだろこれ?なんか頭がボ~っとして、き、たよ…」

商人「あれ、眠くなって…」

商人「(これって睡眠魔法ラリホー?)」

商人「ま、ずい。眠ったら殺されちゃう。」

武闘家「わたし、もうだめぇ……」ドサッ

武闘家はその場で倒れ、眠ってしまった


商人「あ、ぶとうかちゃ、ん…」

アルミラージはその場で体勢を低くし、構えた。そして二人に向かって突進してきた。


商人「わ、たしが戦わなきゃ。眠気を覚まさないと……」

商人「(このくらい我慢しなきゃ!)」チャ

グサッ

商人「痛っ!!」

商人はナイフで自分の太ももを刺した。
激痛と共に血が流れるが、おかげで目が覚めた。


アルミラージはそれを見て、二人の目の前で一瞬ひるんだ様子で動きを止めた。


商人「ひるんだ?今だっ!」チャキ

商人「ええ~い!」グワ

ドスッ!

商人はもう一本のナイフで力一杯、アルミラージを一刺しした。

アルミラージをやっつけた


89: 2013/02/18(月) 15:31:56.26 ID:Y5ukuikAO


武闘家「ん、んん。」モゾ

武闘家「う、ふわあ~。眠っちゃったのかな、わたし…」ムク


商人「武闘家ちゃん…起きたの?」

武闘家「しょうにん…あっ!」ガバッ

武闘家「アルミラージは?まだ残ってたでしょ?」キョロキョロ


商人「あ、うん。なんとか倒したよ。危なかったけどね。」

武闘家「商人が?……あ、その包帯どうしたの?血が滲んでるよ。」

商人「ほら。あのうさぎ、ラリホー使ってきたでしょ?眠気を覚ますために、ちょっと、ね。」

武闘家「自分で刺したの?…痛いでしょ?大丈夫?」

商人「だいじょーぶだいじょーぶ!すぐに止血して処置したからさ。気にしないで。」ニコ

武闘家「そっか。ならいいけど。」


90: 2013/02/18(月) 15:47:11.64 ID:Y5ukuikAO

商人「武闘家ちゃん!さっきは本当にごめんね。あんな風に言うつもりなかったのに…」

武闘家「私こそ。守ってくれてありがとう。さっきは私も言いすぎちゃった。」

商人「いつも武闘家ちゃんが私を守ってくれてたのに、なのにひどい事言っちゃった。」

武闘家「気にしてないよ。そんなの。幼なじみだもん?たまには喧嘩くらい、ね?」ニコ

商人「武闘家ちゃん……私ね。意地を張ってた。」

武闘家「………」

商人「いつも強い武闘家ちゃんに少しだけ嫉妬しちゃったんだ。」

商人「私も強くなりたくて、武闘家ちゃんに連れ出してもらった事、嬉しかった。」

商人「ただ、なんか焦っちゃったんだよね。お母さんがいなくて弱い自分に。」

武闘家「ううん。商人は強いよ!だってさっきは私を守って魔物を倒したじゃない。」

武闘家「強くなきゃ、そんな傷は付けられないよ。そうでしょ?」ニコ

商人「そうかな。なら嬉しいけど。」

武闘家「ほらほら、沈んでちゃせっかくのかわいい顔が台無しだぞ。笑って笑って。」

商人「ありがとう、武闘家ちゃん!」ニッコリ


91: 2013/02/18(月) 16:03:10.53 ID:Y5ukuikAO

武闘家「よろしい!じゃあ戻って温かいものでも飲みたいね。」

商人「ふふ、そうだね~。お茶があるよ。」

武闘家「足まだ痛いでしょ?肩貸してあげるよ、ほら。」ガシッ

商人「あ、ありがとう。」


武闘家「私もね、頭のいい商人の事ね、羨ましかったんだよ?」

商人「え?」

武闘家「だからさ、これでおあいこって事でいいよね~。…よく考えればさぁ。」

武闘家「私達、いいコンビだよね?肉体派と頭脳派、商人といるだけでやっぱり楽しい。」


商人「……泣けちゃうよ。そんな事言ったら……」ウル

武闘家「あ~!ダメダメ、泣いたら野宿してる所まで自力で歩いてね~。」

商人「……うう。がまんがまん。」ブツブツ

武闘家「えへへへ。そう、がまんがまん!」ニコニコ

92: 2013/02/18(月) 16:14:34.45 ID:Y5ukuikAO

野宿している場所に戻った二人は、商人の傷を再度、薬草でしっかり治療し、次の日のために早目に就寝した。


次の日の目標はロマリアに通じるという洞窟。二人の旅の終わりが近づいてきていた。



【野宿している場所から離れた木陰】


??「なるほどのぉ。なかなか見所のある嬢ちゃん達だ。」

??「弟子の言ってた事もあながち間違ってないようだのぉ。」

??「さて、『いざないの洞窟』で待つとするかぁ!わっはっは。」

??「まあ、ワシの老後の楽しみも増える事だし。ふむ。」ブツ

シュン

100: 2013/02/19(火) 15:56:02.94 ID:7C5fJs5AO

5日目
【レーベ 東の森】


武闘家「よ~し、軽く朝ごはんも食べた事だし、そろそろ行こうか。」

商人「うん。これで旅も5日目か~私、けっこう頑張れたかな。」

武闘家「商人頑張ったと思うよー。昨日とか特にね。足はどう?」

商人「さっきね、近くに落ちてた太い木の棒を削って杖みたくしたから、これで歩けるよ。」

武闘家「へぇ、器用にナイフも使うんだね。足、痛くなったらすぐに言うんだよ。」

商人「武闘家ちゃん、ありがと。」

商人「じゃあロマリアへの洞窟を目指して行こうか!」スク

武闘家「オーケイ!あと一踏ん張りだ!張り切って行くよ。」



二人はロマリアへ通じる洞窟へと向かい歩き出した。

101: 2013/02/19(火) 16:10:01.21 ID:7C5fJs5AO

武闘家「ロマリアか……お母さん達は今ごろはどこにいるんだろ。」

商人「きっと世界中を目まぐるしく回ってるんじゃない?魔王倒すために頑張ってるよ。」

武闘家「魔王バラモスだったっけ?できれば私が倒したかったよ~。」

商人「えっ!武闘家ちゃん、本気なの?世界で一番強いっていう魔王だよ。」

武闘家「もちろん本気さ。そのために強くなりたくて必氏に修行してるんだもん。」

武闘家「もう少し早く生まれたかったな~、なんてね。タイミング外れたね。」ニカ

商人「(やっぱり武闘家ちゃんは凄いなぁ。)」

商人「でもさ勇者さま達が魔王を倒してくれるといいね。」

武闘家「まあ、それに越した事はないもんね~。」




商人「なんか、道が険しくなってきたよ。かなり岩が凸凹してる。」

武闘家「この先にその洞窟があるんだね、きっと。」

商人「…うんしょ。岩山が沢山出てきちゃったな~。」

商人「(いつつ、けっこう足に負担がくるな……)」ハァハァ


102: 2013/02/19(火) 16:21:50.43 ID:7C5fJs5AO

武闘家「よっと。こんな険しい所があるなんてさ、知らなかったな。」ヒョイ

商人「そ、うだね。えへへ。頑張るぞ。」ダラダラ


商人「(…駄目だ。足が痛んでしびれてきた。あと少しがんば)」
ひょい

商人「う、うわあ。」ガシ

武闘家「あとは私に任せてよ!商人は背中で休んでいて。」

商人「武闘家ちゃん、いいの?私ならまだ。」

武闘家「な~に言ってるの?あぶら汗だらだら流して無理しちゃ駄目。」

商人「……でも…」

武闘家「でもじゃない!気にしないで、休む事いいね?」

商人「…はい。お願いします。」

武闘家「おおし!じゃあパワー全開でいっくぞー!!」ダン



足の傷が痛む商人を背負い、武闘家は岩山を軽々と飛び越えていく。
あっという間に岩山地帯を抜ける事ができた。

103: 2013/02/19(火) 16:33:14.79 ID:7C5fJs5AO

【岩山を抜けた平原】


武闘家「はぁ、どんなもんだい!」

商人「ありがとう~!本当に武闘家ちゃん人間?重力が武闘家ちゃんの回りだけ無いみたい。」

武闘家「ま。アスレチックスみたいな感じだね。いい運動になったよ。」

商人「はい、お水。水分補給しておいて。私は足休めて痛みが引いたから。」スッ

武闘家「ありがと、ゴクゴクゴクゴク。…ぷはぁ~!水、美味しいね。」

商人「お~武闘家ちゃん、いい飲みっぷり~!」パチパチ



ふわっ
スタ

武闘家「え?魔物?」

商人「え!どこに?」クルッ

商人「なにこいつ……」

武闘家「…あのローブ。まほうつかいだ!」


まほうつかいがあらわれた

104: 2013/02/19(火) 16:47:33.39 ID:7C5fJs5AO

武闘家「私が一番嫌なやつだよ。魔法を使ってくるんだ。おまけに素早い。」

商人「…今までにいなかった魔物ってわけだね。どうすれば。」

まほうつかいは両手を動かすと、手のなかに火の球が発生した。

まほうつかいはメラを唱えた

武闘家は迫る火球をギリギリで避けたが、武闘着が少し焦げた。

武闘家「あちちち!かすっただけでよかった~。」

商人「武闘家ちゃん、大丈夫?」

武闘家「大丈夫。こっちも行くよ!てやぁー!」バシュ

武闘家の攻撃
しかしまほうつかいはひらりとかわした

まほうつかいは商人に向けてメラを唱えた

商人「来た!避けれるか。」サッ

商人はメラをかろうじて避けた

まほうつかいは武闘家に向けてメラを唱えた

武闘家「くそぅ。連発されて近づけないぞ。うわ!あぶな!」ヒョイ

武闘家はメラを避けた


105: 2013/02/19(火) 17:03:26.34 ID:7C5fJs5AO

商人「キリないなぁ。ん~何かないかな。」ゴソゴソ

商人「あ、これ使える!」グッ


まほうつかいは商人に向けてメラを唱えた

商人「ひえ!危ないなー。でも次に私にメラを唱えたら終わりだよ。」ヒョイ

商人はメラを避けた


まほうつかいは武闘家に向けてメラを唱えた

武闘家「しつこいな~。火の球遊びしちゃあ危ないでしょー!」ヒョイ

武闘家はメラを避けた

武闘家「商人!またそっちに行くよ、気を付けてっ!」

武闘家「(ん?あのニヤけ顔。何か企んでるな。)」


まほうつかいは商人に向けてメラを唱えようと構えた

商人「今だ。これでも喰らえ~!」ブン

まほうつかいの手のひらからメラが放たれたと同時に、
商人が投げた物がまほうつかいの眼前に届いた。

直後、突然メラに触れた物が爆発を起こした。

爆風が巻き起こり、商人と武闘家は身を伏せた。


まほうつかいをやっつけた


106: 2013/02/19(火) 17:33:27.26 ID:7C5fJs5AO


武闘家「びっくりしたー。もしもと思って伏せて正解だな。」

商人「上手くいった!武闘家ちゃんごめんね~突然。」

武闘家「商人の顔がな~にか企んでるようだったからさ。ちなみに投げたのは何?」

商人「さっきのはねランプで使ってた油の缶だよ。まだ残ってたから使っちゃえ、ってね。」

武闘家「油をね~。とっさの判断、お見事!さっすが商人、あったまいい~!」

商人「ううん。たまたま油があったから思いついただけだよ。」

武闘家「え、じゃあ油なかったら他に策は?」


商人「…そうだなぁ。あいつ視界悪そうだからとにかくナイフ投げておくとか…」


商人「1体だけだったから二人で囲んで、同時に攻撃してもよかったのかもね。」

武闘家「へぇ~、すっごいんだね。私は作戦とかないから対魔法の時に困るんだよねぇ。」

商人「でもさ、さっきは私を見て、何かあるって察知してくれたんでしょ?」

武闘家「あ。そうだった。知らない間にコンビプレイしてたんだね、私達。」ニコ

商人「そうなるね。凸凹コンビかもよ~。」

武闘家「じゃあ私が凸で商人が凹なのかな?」

商人「…いや、そういう意味じゃないと思うけど…」

107: 2013/02/19(火) 17:46:33.13 ID:7C5fJs5AO

商人「ともかく無事に魔物を倒せてよかったね~。武闘家ちゃん、疲れはどう?」

武闘家「だいじょーぶ。すぐに行けるよ。あなたの足は?」

商人「私も問題ないよ、杖あればあとは平地っぽいし。頑張るよ!」

武闘家「その意気その意気。もうちょい気合い入れて行こう!」

商人「わかった!」グッ

武闘家「いざ~!洞窟へ!」ザッ


ぐきゅるる~~


武闘家「あ……」カァ

商人「あ。」チラ

商人「その前に何か少しお腹に入れよっか。えへへ。はい!」スッ


武闘家「カンパン?」

商人「カンパン。」


武闘家「…しょうがないか。」ポリポリ

109: 2013/02/19(火) 21:12:51.24 ID:8Mt1KiiW0

まほうつかいを倒した二人は、またしばらく歩いていた。
太陽が少しずつ西に傾き出す頃に、急に開けた場所に出た。


商人「あれぇ?ここだけ不思議と開けたね。なんでだろ?」

武闘家「なんかこの前のレーベ南のところみたいな感じじゃん。」

商人「階段か何かあるのかな?」キョロキョロ

武闘家「水辺もあるから人が使っていた場所なのかも…」

商人「(この辺一帯、草や木の枝が踏まれた跡がある…誰かが通った?)」

武闘家「なんか気配がしたような気もするし、怪しいなぁここ。」


商人「あ、あそこ!武闘家ちゃん!階段かな、あったよー。」

武闘家「へ?どこどこ?…うへぇ、ずいぶんとまた古い階段だな。」

商人「レーベのところより古い感じがするね。ただここに間違いないよ。」

武闘家「よ、よし。下に降りてみよう。」ドキドキ


110: 2013/02/19(火) 21:23:31.91 ID:8Mt1KiiW0

【いざないの洞窟】


ザッザッザ


武闘家「洞窟、みたいだね。ここがきっとロマリアへ続く洞窟なんだよ。」

商人「奥に通路が続いてるね。行ってみようよ武闘家ちゃん。」

武闘家「わかった。ここまで来たら行けるとこまで行くさ!」



すたすた


商人「ねえ武闘家ちゃん。奥が明るいよ。誰かいるのかな?」

武闘家「どうなんだろう?あ、誰かがいるみたい!」

商人「おじいさん?かな。」

武闘家「みたいだね。一体どういう人なのかな。」


洞窟を奥に進んでいくと、広くなっている場所があり、
そこに60歳を越えたであろう老人が杖をつき立っていた。
商人は声をかけてみることにした。


商人「あのう…こんにちはぁ。」ドキドキ

老人「む。何じゃお前さん達は?どうしてここに?」

老人「…それによく見ればまだ年端もいかぬ子供じゃないか。」

武闘家「二人とも10歳の女の子でっす!こんにちは。」

老人「おうおう、元気な女子じゃて。しかし何故にこの『いざないの洞窟』に?」

商人「『いざないの洞窟』?この洞窟の名前ですか?」

老人「それも知らんと来たのか?」


111: 2013/02/19(火) 21:36:14.79 ID:8Mt1KiiW0

武闘家「知らないねそういえば名前はさ…」

老人「そうか。ならば教えてやろう。ここは旅人を別の地へといざなうための洞窟なのじゃ。」

商人「それで、『いざないの洞窟』なんですね?ロマリアに通じるという。」

老人「何?その事を知っておるのか?という事はお前さん達はロマリアへ行きたいのか?」

武闘家「ううん、私達はこのアリアハン大陸を冒険してたんだ。その途中でここの事を聞いてさ。」

商人「で、ここを最終地点にしようかなって。」

商人「ロマリアにも行けるなら、少しだけ見てみたいなと思って、来ました。」


老人「ほう。そういう事じゃったか。しかしお前さん達のような子供がよくここまで無事に。」

武闘家「私達は強いもん。そこらへんの子供とはワケが違うんだよ~エッヘン!」

商人「こら、武闘家ちゃん。調子に乗らない。」

老人「(ふむ…たしかに並みの子供じゃなさそうじゃ。だが…)」

老人「しかしなぁ、この先を通す事はできんのじゃ。すまぬがな。」

武闘家「えっー!だめなの?」

老人「だめじゃ。」キッパリ

商人「……壁ですか?おじいさん。」

老人「当たりじゃ。ふぉっふぉっふぉ。」


112: 2013/02/19(火) 21:54:30.93 ID:8Mt1KiiW0

老人「二人とも、そこの壁を見てみぃ。」スッ


老人が指さす場所に、部厚い壁がそびえたっている。
かなりな厚さで並みの事ではびくともしそうにない。
武闘家も跳び蹴りの構えを見せたものの、さすがに諦めた様子だ。


商人「武闘家ちゃん、これはさすがに無理でしょう?」

武闘家「びくともしないと思うなぁ、これじゃ。」ハァ

老人「ま、この壁はな。普通に壊そうとしても壊せないように細工されとる。」

老人「特殊な球でなければ壊せないのじゃ。」

商人「特殊な球?それっていうのは…どこに?」

老人「レーベにいる大魔道士が唯一作れるのじゃよ。」

武闘家「え!レーベの大魔道士って私達が会う予定だった人じゃん。」

商人「そうだったね~でもあの時はそれどころじゃなかったし…」



その時、三人の背後から声がした。


男「ありゃー!これはあの時の武闘家さま、商人さんのお二人じゃないですかー?」


商人「え?あ、あれ。あなたはたしか。泥棒さん!」

武闘家「びっくりしたな~!ど、どうして泥棒がここにいるわけ?」

男「あれ?言いませんでしたっけ?私もロマリアに行きたいって。」


113: 2013/02/19(火) 22:10:49.84 ID:8Mt1KiiW0

商人「(この人、突然あらわれたみたいだったけど…)」

武闘家「あ、そういえば言ってたよねぇ。反省したの?
しかも宿屋のおじさんの目を盗んで抜け出してきたんでしょ。」

男「はい、それはもう。真人間ですからね、僕は。」


商人「あの、今どうやってここに来たんですか?」

男「へ?どういう意味ですか?商人さん。」

商人「何かフッと現れた感じがしたので…」

男「いやだなぁ、僕はマジシャンじゃないんですから~。」



老人「ふう。相変わらず悪趣味なやつじゃな。嫌われるぞい。」

商人「? おじいさんどういう事なの?」

武闘家「へ?なになに?何の話?」ポケ-

老人「こいつは普通の男なんかじゃない。こいつの正体は…」


男?「はい、そこまでよ!ワシのかっこいい所を取らんでもらえんかのう、じいさん。」


武闘家「こ、声が違う!?」

商人「誰なの?あなたは?」


114: 2013/02/19(火) 22:41:43.94 ID:8Mt1KiiW0

男?「わっはっは~!バレちまったら仕方ねえの!ワシこそがレーベが誇る、大天才!」

男?「大魔道士様だぁ~~ぜ!!姿を見せてやろう!解!」

ボワン!
シュウゥゥ…

商人「えっ?大魔道士さま?変身魔法だったの?」

武闘家「あれれ!泥棒じゃなかったの?う、うわぁあ、デッカーイ!!」


大魔道士「よぉく目に焼き付けておくんだなぁ!これがワシの本当の姿だ!わっはっはー!」


商人と武闘家は目の前で起きていることにあっけに取られていた。
泥棒だと思ってた男が変身を解いて、自分は大魔道士だと名乗って
いること。そしてそのあまりにも豪快な登場に魅了されていた。


180cm以上はあろうかと思われる身長。ガタイもよく、まだ10歳の子供から
見たら山のような大男。派手な笑い顔、白色のボサボサ髪、真っ黒なローブに
真っ赤なマント、真っ青なブーツ、仰々しい装飾のされた杖、
それはまるでおかしなドラキュラのようないでたちのその男は高らかに笑って、
商人と武闘家を見下ろしていたのだった。


大魔道士「驚かせてすまんのお~!!お前らが泥棒だと思ってた男は実はワシ!」

大魔道士「作戦成功じゃの~!!ひゃっひゃっひゃ!!まだまだやれるなワシ。」

商人「…………」ポカーン

武闘家「…………」ポカーン

大魔道士「おお?感動のあまり、体が硬直しちまっとるようだの。まあ仕方ないわな。」


老人「お前にただびっくりして、固まってるだけじゃ。かわいそうにの。」


118: 2013/02/20(水) 09:09:57.81 ID:crhgWEOAO

………………

…………

……

商人「はっ!わ、私はどうして!ドラキュラに襲われそうに。」

武闘家「だは!目の前にヘンなドラキュラが。」


大魔道士「…………」グスン

老人「ほれ見てみぃ。そのとんでもない格好見れば子供ならトラウマものじゃ。」

大魔道士「た、多少やりすぎたかの?つい調子に乗りすぎたの。」

大魔道士「お、おい。お嬢ちゃんお二人さん?」


商人「え?…うわ。ってあなたは大魔道士さまなんですよね?」

武闘家「ど、ドラキュラだ。でかいドラキュラだぁ。」

大魔道士「頼むからドラキュラはナシで。へこんじゃうからワシ。」シュン

武闘家「あ、じゃあ。吸血鬼だぁ。血ぃ吸われるよぉー。」

大魔道士「同じだの……」ズーン

商人「武闘家ちゃん、駄目だよ。大魔道士さま、落ち込んじゃってるよ!」

武闘家「あ、やりすぎちゃった。あはははは。」


119: 2013/02/20(水) 09:40:08.18 ID:crhgWEOAO

商人「あの。大魔道士さま?どうして私達の事を?」

武闘家「そうだよ~。じゃあレーベにいた時から私達騙されてたって事でしょ?」

大魔道士「おお!聞いてくれるか?いやな、ワシはの。世界中の情報を常に集めとる。」

大魔道士「もちろん、アリアハンもだ。まあ特にあそこには知り合いが多くいてな。」

大魔道士「お前ら、レーベに入る直前に誰かと会わんかったかの?」

商人「レーベに入る前に?……あ、もしかして。」

武闘家「あの時の魔法使いの子だ!商人を助けてくれた、無愛想な。」

大魔道士「がっはっは!そいつはワシの弟子じゃ!ま、まあ無愛想なのは謝るがの。」

商人「あの子、お弟子さんだったんですね。凄かったです、メラで私を助けてくれました。」

大魔道士「そうかそうか!まだ子供だから魔法はあまり教えてないが、魔力の質はピカ一だ。」

大魔道士「あの子がたまたま向こうにいた時に幼なじみの僧侶見習いに二人の事を聞いたらしくての。」

商人「(あ、それ。教会にいたあのかわいい僧侶さんか。)」

大魔道士「帰ってきたあいつが、面白そうな二人組が来る、って言ってたからワシも。」

武闘家「いたずらしてやろう~って事なの?ひどいや~。」

大魔道士「すまんの~!こんなににワクワクした事はなかったわい。」

商人「じゃあ私達をずっとどこかで監視してたんですか?」

大魔道士「いやいや!そこまではしとらん。ただ、子供だて
らになかなかやる奴らだと思ってな。」


大魔道士「そうだ。商人よ。母親の形見のナイフ、
盗んでしまって悪かったな。すまんの。」ペコリ

120: 2013/02/20(水) 10:04:06.56 ID:crhgWEOAO

商人「あ、ああ、いいですよ~。無事に手元に返してもらったし。気にしないで大魔道士さま。」

大魔道士「すまんの。武闘家も鉄の爪を悪かった。悪気は無かったんだ。」

武闘家「ああ~私のはいいのに。あんなのまた自分で作れるからさ。」

大魔道士「重ねてすまなかった。」

商人「頭を上げてよ、大魔道士さま。私は逆に感謝してます。」

大魔道士「感謝とな?ワシにか?」

商人「お母さんが氏んでから、弱くなっていた私が武闘家ちゃんに連れられて旅に出た。」

商人「戦い方もロクに知らない私でも魔物や泥棒さんのおかげで自分でも戦えるようになれた。」

商人「お母さんの形見のナイフが無くなった時に、絶対何があっても取り返す!って強く思えた。」

武闘家「商人……」

商人「この5日間で私は吹っ切る事ができた。落ち込んでばかりじゃいけないって。」

商人「だから大魔道士さまには感謝してるんですよ。ありがとうございます。」ニコ

大魔道士「…お。…おおお!」

武闘家「あれ?おじちゃんどうしたの?」


大魔道士「おおおお!このワシ、こんなに感謝されたのは初めてだの~!
ただいたずらしただけなのにぃ~!」ボロボロ

大魔道士「弟子からはいつも冷たくされてたというのに!
こんなかわいいおなごに、ううう」ボロボロ


老人「せわしいやつじゃな、相変わらず……」

老人「二人ともすまんなぁ。こういう変わった男なんじゃよ、ふぉっふぉっふぉ。」

商人「は、はい。あんなに大泣きしちゃって……」

商人「(変わってるけど、すごく暖かくて優しい人だなぁ。)」

121: 2013/02/20(水) 10:20:19.53 ID:crhgWEOAO


老人「ほれほれ。ええ加減に泣くのはやめい!50の大人がみっともないわい。」

大魔道士「お、おう。つい感極まっての。いやいやすまんな二人とも。」

武闘家「10分も泣いてたよー。この泣き虫ドラキュラ~!」

大魔道士「ドラキュラやめい。」




大魔道士「そういえば、お前達はここを抜けてロマリアに行きたいと言ってたな。」

商人「は、はい。少しだけでも新しい場所を見たくて。」

大魔道士「なるほどの。その好奇心と探求心は素晴らしいが、はっきり言う、やめておけ。」

武闘家「ど、どうして?」

大魔道士「さっきじいさんが言ってた通り、ワシが作った球でしかこの壁は壊せん。」

大魔道士「今、その球がないからの~。まあそれだけじゃあない。」

商人「……魔物の事?大魔道士さま。」

大魔道士「その通り。正直お前達は強いが、それはここアリアハン大陸の中だけでの事。」

大魔道士「ロマリアや他の大陸の魔物は比べ物にならんほどだの。」

大魔道士「まあ、ワシなら強すぎるからどこへでも行けるがの、がっはっはー!」

武闘家「自信たっぷりだな~。うーんなんか悔しい!」

122: 2013/02/20(水) 10:40:29.69 ID:crhgWEOAO

大魔道士「だから、まだ早い。もっと体がこうな、丸っこくな大人になってな。」

老人「手つきがいやらしいぞ、相手は子供じゃぞ。この変態が。」

大魔道士「ぬおお!しまった!いつもの癖が……ん?」


商人「え、何?」

武闘家「どしたのーおじいちゃん?」


大魔道士「(ほっ。まだギリギリわからん歳か。
弟子にはいっつも蹴られとるからの~危ない危ない)」


大魔道士「あ~ゴホン!とにかくもっと大人になってからを薦める。」

商人「……わかりました。大魔道士さまがそう言うなら私達も大人になるまで我慢する。」

商人「ね?そうしよ、武闘家ちゃん?」

武闘家「い・や・だ~。だってまだこのおじちゃんの強さを見てないから説得力ないもん。」

商人「え?だってこの人は大魔道士さまなんだよ。言う事間違いないよ~。」

武闘家「変身魔法を見ただけじゃあねぇ?そうでしょ商人?」

商人「ま、まあたしかに見たのはモシャスだけだし……」

武闘家「ほら~!でしょ。おじちゃんが本当に大魔道士さまってとこを見なきゃ諦めない。」

商人「な、なら私も。大魔道士さまの力を見せてください。」キッ


大魔道士「……」

大魔道士「ふふふふ。が~はっはっはっは~!よく言ったなお前達。」

123: 2013/02/20(水) 10:53:32.48 ID:crhgWEOAO

大魔道士「では本日は特別大サービスだの!お前達に目にものを見せてやろう。」ニヤリ

老人「また始まったわい。大概にしておくんじゃぞい。」

武闘家「見せてもらおうか~。魔道士のおじちゃん!」ビシッ

商人「み、見せてください!大魔道士さまの力を!」ドキドキ


大魔道士「では、二人の大事な物を盗んだお詫びも兼ねてな、
少しだけロマリアの地を見せてやろうの。」

武闘家「え!ほんと?やったー!」

商人「いいんですか?」

大魔道士「気にするな。お詫びのつもりだ。じゃあ二人とも、ワシの手を取れ。」スッ

商人「は、はい!」ニギッ

武闘家「これでいい?」ギュ


大魔道士「よし。ではロマリアに行くぞ。」ブツブツ

商人「あれ?ここでルーラを使ったら…あぶな、」

大魔道士「ノンノン!」ニヤリ


大魔道士「行くぞぉ!『リリルーラァ』!」

パッ!


3人の姿が消えた

124: 2013/02/20(水) 11:13:14.34 ID:crhgWEOAO


パッ

大魔道士「もう一つ行くぞ!『トベルーラ』!」ギュン


ふわああ

商人「何これ~!いきなり消えたと思ったら、今度は浮き上がったよ~!」

武闘家「空飛んでるの?これって。」


大魔道士「ぶわっはっは~!驚いたろ!瞬間移動魔法と飛翔魔法のダブルパンチよの~!」

商人「そんな魔法聞いた事ありませんけど。でも、すごいよ~。」

大魔道士「そりゃ聞いた事なくて当然だの。ずいぶん昔に禁じられた魔法だしの、これ。」

武闘家「ていうか何でもありだね、このおじちゃん。ははは。」

商人「大魔道士さま、ここがロマリアですか?お城が見えます。」

大魔道士「そうだ。あれがロマリアだの。アリアハンよりずっと広いだろ、の?」

武闘家「めちゃくちゃ広いね~。見渡す限り大地だなー。」

大魔道士「楽しいぞ~。新しい大地は。お前達も早く大人になって世界を見て回るといい。」

商人「(これが、ロマリア。新しい大地かぁ。)」

大魔道士「んじゃ、これでワシの事を認めてくれるかの?お嬢ちゃん達。」

武闘家「大魔法使いさま!」

大魔道士「いや、魔道士ね。覚えといてほしいのぉ。」

商人「素晴らしいです。大魔道士さま!ありがとう。」


125: 2013/02/20(水) 11:30:40.16 ID:crhgWEOAO


【いざないの洞窟 外】


商人「大魔道士さま。すごい体験しちゃいました!体がまだザワザワします。」

武闘家「私も~。瞬間移動して空飛んだら、体がマヒしてるもの~。」

大魔道士「そうかそうか!いやよかったの~!
大天才に魔法を見せてもらっての。はっはっは~!」

武闘家「旅の最後にいい思い出になったよ、ありがとう、ええと大魔道士のおじちゃん!」ニコ

大魔道士「覚えてくれたか~よかったよかった!うん。」

商人「これからは頑張って行ける自信がつきました。」ペコ

大魔道士「それはワシじゃなく、隣の相棒に言う事だのぉ。」

商人「え?」

大魔道士「お前をここまで支えてくれたのは武闘家のおかげだろう。」

商人「武闘家ちゃん。」ウル

武闘家「商人。よくやったね。」グッ

商人「ぶとうかぢゃん…ありがとう~!!」ガバッ

武闘家「おーよしよし。泣かない泣かない。大魔道士のおじちゃんみたいになるよ。」

大魔道士「あ、あの事は忘れてもらってもいいかの?武闘家ぢゃん。」


商人「ありがとね、武闘家ちゃん。いつもいつも。」ギュウ

武闘家「私だって、商人に何度も助けられたから頑張れたんだもん。こちらこそありがとね。」

商人「凸凹コンビだもんね、私達。えへへへ。」ニコ


126: 2013/02/20(水) 11:42:57.66 ID:crhgWEOAO

商人「じゃあ、アリアハンに帰ろっか。旅も終わった事だし。」

武闘家「そうだね~。家に帰って、もいないか。商人の家に泊まろうかな。」

商人「いいよ~。じゃあさ晩ごはんはお父さんと3人で食べようよ!」


大魔道士「(ふむ、商人の足、治しておいてやるかの。『ベホマ』)」パア

商人の足の傷が完全に癒えた

商人「ん?あれぇ、急に足の痛みが消えたな。」シュルシュル

商人「あ、傷が完全に治ってる!なんで?」

武闘家「…まさか!おじちゃんが、」クルッ

商人「いないよ。あれ?大魔道士さま~!」キョロキョロ


二人が振り向くとそこに大魔道士の姿はなく、忽然といなくなっていたのだ。

ただ、地面にキメラの翼とメモが添えられていた。

商人「紙だ。大魔道士さまだねきっと。」ヒョイ


127: 2013/02/20(水) 11:52:17.01 ID:crhgWEOAO

『ベホマとキメラの翼はサービスしておいた。お前達が大人になったら会えるのを楽しみにしとるの。』

『あと、ワシが大泣きしたのは他言無用で頼みます。いや本当に頼みます。お願いします。』

『レーベの大天才 大魔道士さまより』



商人「どんだけ秘密にしたいんだろこの人……」

武闘家「いいよ。言いふらしちゃえばさ~!」ニタニタ



商人「(足を治してくれてありがとう、大魔道士さま。また会いましょうね。)」

128: 2013/02/20(水) 12:08:31.23 ID:crhgWEOAO

【アリアハン城下町 入口】


商人「武闘家ちゃん。5日間本当にありがとう。楽しかったよとっても。」ニコ

武闘家「私もじゅうぶん楽しめたな~。あ、そういえばさ商人。」

商人「何?どうかした武闘家ちゃん?」


武闘家「そのさ、『武闘家ちゃん』っていうのはくすぐったくて。
商人の方が先に年上になるんだからさ。」

武闘家「あと、私達は今回の事で幼なじみの友達で、さらに『仲間』になったじゃん。」

武闘家「あの、だからさ……ええと、その。」モジモジ


商人「…わかったよ。じゃあ私達、幼なじみ友達であると同時に、仲間でもあるもんね。」

武闘家「そうだよ、そう。商人ともっと仲間になりたいよ私。」

商人「じゃあ、この前しなかったから握手をしようかー!」

武闘家「あ、そうそう。しようしよう!ほらっ」スッ


商人「えへへ、ありがとう。じゃあこれからもよろしくね。武闘家。」ガシッ



夕焼けに照らされた商人と武闘家は固く握手を交わした。



129: 2013/02/20(水) 12:28:53.76 ID:crhgWEOAO

時は戻り、現在……


商人「っていう事があったでしょー?覚えてないの武闘家は?」

武闘家「あ~まあ、そこそこに、うろ覚えです。」シレッ

商人「は~あ。せっかく昔の頃の思い出をさ、熱く語りたかったのに。」

武闘家「でもさ、今思うと、僧侶にも魔法使いにも私達一度会ってるんだよね~。」

商人「あ!たしかに。何年かして勇者PTを組んだ時はお互いに忘れてるんだもん。」

武闘家「無愛想だったねー魔法使いったら。『危なかったわね…』だけだもん。」

武闘家「あんなに無愛想だったとはね~笑えちゃうよね。危なかったわね、って。」ケタケタ

商人「そんなに笑ったらだめだよ~、…………あ!」ピタ

武闘家「だってさ、まだ11歳くらいの女の子がさ、危なかったわね、だもん~。」


『悪かったわね無愛想で。「危ないわよ~」武闘家さん?』


武闘家「えっ?!まさか…」

魔法使い「……………」ゴゴゴゴゴ

武闘家「あ、いや。あの、これはね魔法使いさん。しょ、商人?」

商人「バーイ!私は逃っげる~!」ババッ


武闘家「ごめんなさーい!お許しをー!」


商人「ああ、あれは簡単には収まらないね~。武闘家ご愁傷さま」ナム


商人「(ふう~。まあ、あの時の事があって今があるなら、いいよね。)」

商人「さて、私は僧侶がいる図書館にでも行こう~っと。」



おしまい

130: 2013/02/20(水) 12:31:10.85 ID:crhgWEOAO
無事に終われました。
今回もありがとうございましたm(_ _)m
また夜に来ますー。

132: 2013/02/20(水) 12:39:09.77
おつおつ!適度なボリュームで楽しめました!

133: 2013/02/20(水) 16:57:35.27
乙乙
ほのぼのしていて良かった

引用元: 女商人「あの時の冒険は忘れられないなぁ・・・」