1: 2013/02/07(木) 20:06:22.06 ID:AFEpeFbE0
勇者「ようやくたどり着いたぞ魔王よ」

魔王「待ちわびていたぞ勇者」

勇者「なんだとっ」

魔王「私が君を待っていたというのが不思議か?」

勇者「あ?当たり前だろう 勇者を待つ魔王など存在などしないはずだ」

魔王「君の価値観を押し付けないでくれ」

勇者「そんなことはどうでもいい!
世界を混沌に陥れた張本人よ、永遠に眠ってもらおう!」

魔王「なるほど 君たちの世界では私がこの争いばかりしているように変えた、と言われているのか」

勇者「なにを訳のわからないことをいっている?」

魔王「私が諸悪の根元ではない、と言えば話は聞いてくれるかな?」

 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1360235160

3: 2013/02/07(木) 20:09:22.71 ID:AFEpeFbE0
勇者「ね、寝ぼけたことをいうなっ
貴様ら魔族軍が人間を侵略してきたのだろう、これを原因と呼ばずして何と呼ぶのだ」

魔王「そこから話は違ってくるのだ勇者よ」

勇者「なんだとっ」

魔王「そもそも君達から戦は仕掛けられたのだ」

勇者「なにをバカなことを」

魔王「その言葉をそっくりそのままお返ししよう」

勇者「いらんっ」

魔王「我々からすると君の知っている歴史ですら間違っている可能性が高い」

勇者「違う民族なのだ。解釈や見解の違いがあるだけだろう」

魔王「いいや違う、もっと根本的な違いがあるのだ」

勇者「なんだそれは」

4: 2013/02/07(木) 20:14:17.56 ID:AFEpeFbE0
魔王「君は長く旅をしてきたはずだ」

勇者「そうだ」

魔王「何か疑問を感じなかったか?」

勇者「なにも思わなかったが」

魔王「では私が言おう 君はこの城に近づくにつれ平和になっていくのに疑問に思わなかったのか?」

勇者「それは貴様が侵略していないからだろう」

魔王「では言い方を変えよう勇者よ
なぜ我々からすると賊軍である貴様らを倒そうという輩がいなかったのか疑問に思わなかったのか?」

勇者「そういえばそうかもしれない」

魔王「簡単なことだ 彼らは君を敵だとは思ってないのだからな」

勇者「どういうことだ?」

魔王「話は変わるが」

勇者「おい聞けよっ」

5: 2013/02/07(木) 20:19:48.23 ID:AFEpeFbE0
魔王「君たちと我々で初めて戦争が行われたときはいつか知っているか?」

勇者「人間と魔族とのはじめての戦争、たしか500年前なはずだ」

魔王「そうか 我々の間では1000年前となっている」

勇者「なんだとっ」

魔王「これが解釈や見解の違いとでもいうのか?」

勇者「お、お前らが間違ってるんだろっ」

魔王「まあ解釈の違いとも読めなくはないが」

勇者「なんのことをいっている」

魔王「さて次はどの話にしようか」

勇者「話は終わってないだろうがっ」

6: 2013/02/07(木) 20:25:19.85 ID:AFEpeFbE0
魔王「君は魔法は使えるのか?」

勇者「勇者として最低限の魔法は使える」

魔王「君の仲間だった物たちは?」

勇者「魔法使いと賢者はいわずもがな戦士も少しは使えたな」

魔王「それはおかしいと思わないか?」

勇者「なにがいいたい?」

魔王「我らは君達に魔族と呼ばれているが一切魔法は使えないのだ」

勇者「なんだとっ」

魔王「対する君達は魔法を使えるという」

勇者「そんなはずはない
俺はお前らが魔法を使っているのを見た!」

魔王「いつのことだ?」

勇者「町を出た直後に魔王の配下と名乗った奴等は魔法を使っていた」

魔王「それは君達の民族の物じゃないかな?」

勇者「人間が勇者である私を襲うわけがないだろうがっ」

魔王「それは金で雇われてもか?」

勇者「金で魂を売る奴などいない!」

魔王「君は綺麗なところで生きてきたのだな」

7: 2013/02/07(木) 20:31:00.69 ID:AFEpeFbE0
勇者「そうだ!魔物、魔物は貴様らが放った生き物だろ
あいつらは例外なく魔法を使ってきたぞ」

魔王「魔物?……ああ、あれは君達が作った兵器だろう」

勇者「なにを言ってるんだお前は」

魔王「その話は後だ 次は散っていった君の戦友について話そう」

勇者「彼らは貴様たちに殺されたんだ!」

魔王「聞かせてくれ どうやって命を落としたのか」

8: 2013/02/07(木) 20:33:34.58 ID:AFEpeFbE0
勇者「まず氏んだのは魔法使いだ」

魔王「ほう 誰に屠られた?」

勇者「魔法使いは魔物にやられた」

魔王「それは君たち側の責任だ」

勇者「魔物はお前たちの生き物だっ」

魔王「君はあれを生き物と定義するのか」

勇者「次は戦士」

魔王「あの屈強そうな物か」

勇者「彼は魔族の四天王にやられた」

魔王「四天王?初めて聞いたな」

勇者「ふざけるなっ お前の部下だろうが」

魔王「生まれてこの方四天王というふざけた制度はとってない」

勇者「魔王、これほどまでに悪質だとは思わなかったぞ
自分の部下を知らないというなど王として恥ずべきことだ!」

魔王「君の見解などどうでもいい」

勇者「なっ」

魔王「で、賢者はどうやって葬られた?」

勇者「賢者は……病気だ」

魔王「ぶっ」

勇者「笑うなっ」

9: 2013/02/07(木) 20:39:28.42 ID:AFEpeFbE0
魔王「くくくっ まさかそんなまぬけなオチだとは思わなかったぞ勇者」

勇者「知るかっ だがお前のせいでもある
病弱な賢者を旅に加えなくてはいけなかったのは貴様のせいだ」

魔王「責任転嫁はよしてくれ」

勇者「黙れっ 全部魔族が悪いのだっ」

魔王「だいたい賢者じゃなくて他の物を使えばよかった話じゃないか」

勇者「勇者一行は決まったものしか入れないのだ
彼女だけが適正審査に受かったのだからしかたないだろう」

魔王「これだから下等生物は嫌になる」

勇者「なんだとっ」

魔王「話を変えようか」

勇者「おいくそ魔王野郎!話を聞け!」

魔王「育ちの悪さがにじみ出ているぞ勇者よ」

勇者「うるさいっ」

12: 2013/02/07(木) 20:48:58.84 ID:AFEpeFbE0

魔王「私は君が知能を持つ生き物として最大限に譲歩して話をしているのだ勇者よ」

勇者「俺には命乞いにしか見えないがな」

魔王「私は今すぐ君を頃すことができる」

勇者「戯れ言を」

魔王「君と話すのは疲れる」

勇者「なんだとっ」

魔王「IQがここまで違うと話が噛み合わないのは本当だったんだな」

勇者「なにをいっているんだ?」

魔王「君に真実を教えてやろうじゃないか」

勇者「真実ならお前が魔王であるということだけで十分だ」

魔王「私は魔王ではない」

勇者「なにをいっているんだ」

魔王「君の口癖はなにをいってるんだなんだな」

勇者「お前が訳のわからないことばかりいうからだろうがっ」

13: 2013/02/07(木) 20:56:58.07 ID:AFEpeFbE0
魔王「1000年以上前の話になる」

勇者「魔族の歴史でも教えてくれるのか?」

魔王「人間は人間に近い知能生命体を作り出した」

勇者「人間の話?」

魔王「知能生命体は'偽人'と名付けられた」

勇者「ぎじん……」

魔王「それは世界中で作られるようになりロボットに成り代わって人間の世話をする物となって普及した」

勇者「ろぼっと?」

魔王「しかしなまじ知能を持つとやっかいでね
人間の下で奴隷のように働くのが嫌になった偽人達は各地でストライキを起こした
これが我々と君達の始まりの戦いだ」

勇者「なにか難しい話をして誤魔化そうとしてないか?」

魔王「その後偽人達はアメ○カやロ○アに集結し人間と戦った」

勇者「意味がわからないぞ」

魔王「人間側の圧倒だった
知能を持ちはしていたが兵器もなく数も少ない偽人はすぐに降伏した」

勇者「俺にもわかるように説明しろっ」

魔王「偽人はまた人間に屈服しそれから500年がたった」

勇者「お前俺に分からせる気ないだろ」

14: 2013/02/07(木) 21:04:04.28 ID:AFEpeFbE0
魔王「時は来たれり その合図と共に偽人達は人間を隅に追いやった
当時偽人よりも少なくなっていた人間は為す術もなく負けた」

勇者「わかったぞ!!お前たちはその偽人という奴なんだな」

魔王「なにを聞いていた 今の状況を見よ 能なき勇者よ」

勇者「今の状況?」

魔王「そうだ、どちらが人口が多い?」

勇者「人間だ」

魔王「隅にいるのはどちらだ?」

勇者「魔族……って、まさか……」

魔王「そうだ 君達こそ偽人 そして我らこそ人間なのだ」

勇者「なんだとっ」

15: 2013/02/07(木) 21:13:41.32 ID:AFEpeFbE0
魔王「偽人達は人間を隅に追いやってから自分達を'人間'、我らを'魔族'と呼び強いたげてきた」

勇者「俺たちが人間じゃないだと……?」

魔王「人間の真似をしてロボットを作ろうとしたが失敗して野生化してしまった
それを'魔物'と名付けいかにも我らが解き放ったようにみせた」

勇者「うそだ'……うそ……」

魔王「はぁ……こんなことで精神崩壊する勇者でどうする?
使いもんにならんだろうが」

勇者「ふざけたことをぬかすなっ お前らこそ魔族、お前らこそ悪なのだっ」

魔王「くだらないな、偽人よ。君達はあくまで我らの道具でしかないのだ
まあ道具に追いやられる我らの先祖も大概だがな」

16: 2013/02/07(木) 21:20:11.95 ID:AFEpeFbE0
勇者「くそっ お前たちが人間なはずはない」

魔王「君達の定義ではそうなのだろうね」

勇者「俺たちが作られた生命体だと?嘘をつくんだったらもっとましなことにしろ」

魔王「生命体というのはすべてにおいて作られたものだよ」

勇者「訳のわからない事を言ってごまかすつもりだろう 魔王!」

魔王「君に合わせて話をしたつもりだったのだが 頭がない物と話すのは疲れる」

勇者「何が目的だ?魔王」

魔王「だから魔王ではないといっているだろう」

勇者「こんな話を聞かせてお前は何がしたい?」

魔王「私の目的はただ一つである」

勇者「そうか 俺の目的も一つだけだ」

魔王「双方噛み合わないのだろうね」

勇者「だろうな」

魔王「ならば消えてもらおう勇者」

勇者「挑むところだ」

17: 2013/02/07(木) 21:22:31.45 ID:AFEpeFbE0
魔王「ところで勇者よ」

勇者「今度はなんだ?」

魔王「君はこの城に上がってくるときになにか疑問に思ったことは無かったか?」

勇者「またその質問か なにも……いや、ひとつだけあった」

魔王「なにかね?」

勇者「誰にも会わなかった
門番にも四天王にも兵士にも側近にも、だれにも」

魔王「そうだな 誰も配置していなかった」

勇者「なぜだっ」

魔王「簡単なことだよ勇者」

勇者(!殺気!?)

魔王「撃て」

バーン

18: 2013/02/07(木) 21:31:58.28 ID:AFEpeFbE0
勇者「んう……」

勇者(俺は気絶していたのか)

勇者(殺される気がしていたが一命は取り止めたようだな)

勇者(しかし魔族が人間を語るなど言語道断だ)

勇者(偽人?聞いたこともない。そんな嘘に騙される人間はいないだろう)

勇者(しかし、それがもし本当ならば……)

?「起きたか、勇者」

勇者「誰だっ」

19: 2013/02/07(木) 21:37:08.39 ID:AFEpeFbE0
執事「私はミスリル様の執事をしている」

勇者「ミスリル?」

執事「あのお方の名前だ」

勇者「魔王のか?」

執事「魔王などではない」

勇者「……なんで殺さなかったんだ」

執事「あのお方の考えていることは分からん」

勇者「……そうかよ」

執事「立て ミスリル様がお呼びだ」

20: 2013/02/07(木) 21:43:05.56 ID:AFEpeFbE0
勇者「この手枷なんとかならないか?」

執事「無理だな いつ襲ってくるか分からないし」

勇者「剣もないんだから襲いようがないだろ」

執事「私はそこまで戦闘力がないのだ」

勇者「そんなに弱くてよく執事なんてやってられるな」

執事「お前たちとは違い戦いに無縁なのでな」

勇者「魔族にくせに」

執事「私たちが人間だ」

21: 2013/02/07(木) 21:44:09.06 ID:AFEpeFbE0
執事「ここがミスリル様のお部屋だ」

勇者「お前は入らないのか?」

執事「貴様だけ入るよういい遣っている」

勇者「あっそ」

22: 2013/02/07(木) 21:51:01.39 ID:AFEpeFbE0
魔王「待っていたぞ勇者」

勇者「……誰だ?」

魔王「そういえば自己紹介していなかったな
私の名はミスリル、この国の王にして人間の最高指導者だ」

勇者「違うっ 魔王はじいさんだったじゃないかっ なぜ美少女が現れるんだ!」

魔王「あれは仮の姿だ」

勇者「仮!?あれが仮だとっ」

魔王「そうだ 貫禄ある姿だっただろう」

勇者「まあそうだけどさぁ……」

魔王「この姿は執事とメイド長しか知らん つまり君はこの国の最高秘密事項を聞いたことになる」

勇者「人間の俺に教えて良いことだったのか?」

魔王「人間ではなく偽人だよ、勇者」

勇者「違うっ」

魔王「認めよ」

勇者「認めてたまるものか」

魔王「……そうだな すぐには認められまい」

23: 2013/02/07(木) 21:57:25.95 ID:AFEpeFbE0
勇者「だいたいなんで俺を生かしたんだ」

魔王「簡単なことじゃないか 君にはまだ利用価値がある ただそれだけだ」

勇者「利用価値?」

魔王「そうだ 君を利用し人間の政権を取り戻す
我々が君たちを虐げる国家を復興させるのだ」

勇者「なっ そんなことさせるわけないだろう!」

魔王「では君は私に命を落とせと言いたいのか?」

勇者「そうではないが……」

魔王「私は君達に命を狙われる生活はこりごりだ」

勇者「ならば共存できる世界を作ろうじゃないか!」

魔王「何を言うか」

勇者「共存できる世界を作れば人間も魔族も平和に暮らせる」

魔王「魔族ではなく人間だ
我らこそ世界で一番知能が高い生き物なのだ 下等生物と同等の地位で満足する我々ではない」

勇者「でもっ」

魔王「君は犬や猫と同等に話せるかね?できないだろう どうしても自分より下だと思ってしまう
我々だってそうだ 君達を同等の生物だとは見えない 君の通ってきた道が証明している
だいたい偽人が人間と名乗る時点でやつらの下等性は目に見えているじゃないか
人間こそ頂点という思考を持っていることが露見している
……おい話を聞いているのか?」

勇者「すまない、さっぱり聞いていなかった」

魔王「下等生物が」

勇者(見下げられているのに何故か快感が……)

25: 2013/02/07(木) 22:07:12.55 ID:AFEpeFbE0
魔王「まあいい 君は私の言うことを聞いていればいいのだ」

勇者「なんだとっ」

魔王「君は今から私の駒になるのだ」

勇者「なぜそうなる」

魔王「君は私に負けたのだから配下に下るのは当然だ」

勇者「俺は負けてないぞっ」

魔王「銃で撃たれただろう」

勇者「それはそうだが、お前に撃たれてはいない よってお前に負けてはいない」

魔王「一理ある、が君は私の部下にやられたのだからすなわち私に負けたことになる」

勇者「なんだと?」

魔王「仮に私が君の仲間にやられたとしても君の勝ちになっていただろう?」

勇者「まあそうだが」

魔王「なにが不満なんだ」

勇者「勇者が魔王に下るんだぞ?これ以上の屈辱はない」

魔王「ならば今から君は勇者ではない、ということにすればいいだろう」

勇者「なにっ」

魔王「勇者は私にやられたのだ そして氏んでいった」

勇者「でも……」

26: 2013/02/07(木) 22:12:52.77 ID:AFEpeFbE0
魔王「仕方ない 私と対等に話す権利はやろう」

勇者「だが……」

魔王「これが最大限の譲歩だ 認めるな?」

勇者「……分かったよ お前の言うことを聞いてやる魔王」

魔王「契約成立だ あと魔王ではなくミスリルと呼べ」

勇者「分かった、ミスリル」

魔王「君の名を聞かせてくれ」

勇者「俺の名前はジークフリードだ」

魔王「ではよろしく、ジーク」

勇者(俺は奴等と俺達を共存させる道を選ぶ)

勇者(それにはミスリルの考え方を改めさせなければならない)

勇者(絶対にこいつの意識を変えてやる!)

37: 2013/02/11(月) 10:59:47.04 ID:CYc0QbqF0
勇者(魔王、ミスリルの配下になってから三ヶ月が過ぎた)

勇者(人間界と魔界では勇者は倒れたと噂がたっている)

勇者(その噂を消すための俺はミスリルと旅に出ることになった)

勇者(といってもアイツの狙いは他にある)

勇者(勇者で国王を釣って一気に人間を叩くらしい)

勇者(結局俺の能力ではミスリルの気持ちを変えることが出来なかったわけだが
人間にとって最悪のことは避けなければならない)

勇者(それが俺の使命なのだから)

魔王「キース 行ってくるわ」

執事「いってらっしゃいませ」

勇者「キースクリフ 元気にしてろよ」

執事「貴様に言われるまでもない」

38: 2013/02/11(月) 11:10:38.34 ID:CYc0QbqF0
勇者「久しぶりに外に出た」

魔王「当たり前だろう 君を外に出したら厄介だったからな」

勇者「でも勇者の剣のない勇者ってどうだよ」

魔王「魔王と戦って壊れたことにしておくといい」

勇者「なあミスリル」

魔王「なんだジーク」

勇者「外見は美少女なんだからさもっとかわいくしゃべればどうだ?」

魔王「くだらんな 私は昔からこのしゃべり方なのだ」

勇者「でもキースクリフの前では女っぽいしゃべり方してるだろ」

魔王「執事はいいのだ 君に話すときはこっちの方がしっくり来る」

勇者「もしかしてキースクリフのことが好きだったりする?」

魔王「そ、そんなわけないだろうがっ」

勇者「声ひっくり返ってるぞ」

魔王「煩い!黙ってろ蝿!」

勇者「俺は蝿か」

39: 2013/02/11(月) 11:22:15.06 ID:CYc0QbqF0

勇者「俺たちはいまから何処にいくんだ?」

魔王「まず偽人の国に向かいロボットたちの討伐を行う」

勇者「人間界に行って魔物を倒すんだな」

魔王「違うと言っているだろう 三ヶ月間私の下で何を学んだ」

勇者「ミスリルへの愛の告白」

魔王「君は蝿に告白されて嬉しいのか?」

勇者「そんなに嫌ですか」

魔王「不快極まりない」

勇者(照れてもくれない)

40: 2013/02/11(月) 11:28:55.77 ID:CYc0QbqF0
魔王「いいか 私は君とこんなくだらない話をしに旅をしているのではない
人間の下へ政権を取り戻すために旅をしているのだ
その事をしっかり理解しろ いいな?」

勇者「では俺の告白を受け入れてください」

魔王「本当に君は性格が変わったな」

勇者「本来はこっちだ 勇者マニュアルに乗っ取って魔王と話をしていたに過ぎない」

魔王「くだらんことをするのだな 偽人は」

勇者「人間だって」

魔王「そこが偽物臭い所以なのだよ」

41: 2013/02/11(月) 11:46:06.49 ID:CYc0QbqF0
魔王「どうした 黙りこくって」

勇者「俺だって分かってるさ 本当は人間じゃないことくらい、本当は魔族じゃないってことくらいこの三ヶ月で嫌ほど分かった
でも俺自身が認めてしまったら俺たちの世界はどうなるんだよ
お前たちが支配する世界に居場所があるのか?」

魔王「………」

勇者「物扱いされてボロ雑巾のように捨てられる
そんな世界は誰も望んでなんかいない
俺は自分たちもお前たちも幸せに暮らせる世界がほしいんだよ」

魔王「………」

勇者「なあミスリル それじゃダメなのか?
人間、偽人を滅ぼすんじゃなくて共存できる世界を作ることはできないのか?」

魔王「……無理だ」

勇者「何でだよっ」

魔王「君達は我々に作られた物なのだ 下等生物なのだ
そんなものと仲良く暮らせるものか」

勇者「俺だってお前と三ヶ月間過ごせたじゃないか」

魔王「それは……」

勇者「城の皆も俺に優しく接してくれた
種族とか民族とか関係なく仲良くなれるはずだろ!」

魔王「確かに仲良くはなれるかもしれないな」

勇者「それじゃ――」

魔王「だが君の王はそう思うかな?」

勇者「なっ」

42: 2013/02/11(月) 11:52:09.35 ID:CYc0QbqF0
魔王「偽人の王達はそれは認めないだろうな
客観的に見たら今は偽人の方が優位に立っているのだ
そんな申し立て私の首と一緒に飛ばされるに決まっている」

勇者「国王だって納得してくださるはずだ」

魔王「無理だな」

勇者「なんだとっ」

魔王「トップは一番上でなくては気がすまないのだ
もし和解と言う道へ進むのなら偽人が一番ではなくなる
そういうことを許す物ではないだろう」

勇者「確かに国王は頑固だが」

魔王「それを自己中心というのだよ」

勇者「否定はしない」

魔王「それに人間の国王達も納得しないだろうしな」

勇者「そっか お前も苦労してるんだな」

魔王「別に君に心配されるほど苦労はしてない」

43: 2013/02/11(月) 11:59:51.29 ID:CYc0QbqF0
勇者「けっこう歩いたな」

魔王「君が転移魔法使えたらよかったのだがな」

勇者「悪かったな」

魔王「かまわん とりあえず宿を取ろう」

勇者「町なんて近くにあるのか?」

魔王「もう少し行けばカナンという町がある」

勇者「よし そこまでがんばるか」

44: 2013/02/11(月) 12:07:56.74 ID:CYc0QbqF0
魔王「ようやく宿がとれたな」

勇者「おい」

魔王「何だ 密室でしゃべると酸素が薄くなるんだが」

勇者「もう少しって一時間も歩いたぞっ」

魔王「細かいことを気にするな 雄だろう?」

勇者「男だ!動物扱いするなっ」

魔王「私からすれば動物も君たちも同じだよ」

45: 2013/02/11(月) 12:16:18.38 ID:CYc0QbqF0
勇者「カナン以前にも村があっただろう そこで宿をとればよかったじゃないか」

魔王「君には言っていなかったがここで待ち合わせをしている」

勇者「俺たち二人の旅じゃなかったのか?」

魔王「偽人の国まで先は長い 仲間を増やしておいて損はないだろう」

勇者「勇者と魔王のパーティーに入るって中々難しいぞ」

魔王「私は魔王ではないし君も勇者じゃないだろう」

勇者「どんな奴だ?その待ち合わせ相手は」

魔王「転移魔法の使える者だ」

46: 2013/02/11(月) 12:26:39.37 ID:CYc0QbqF0
魔王『君は邪魔だから町でも見学してきたらどうだ?』

勇者「って言われて町に来てみたものの何もないな」

勇者「第一俺がこのまま逃げたらどうするつもりなんだ」

勇者「第一俺が席を外さなければならない理由はなんなんだ」

勇者「俺が人間じゃないからなのか……」

勇者「ん?人だかりがある」

勇者「行ってみるか」

47: 2013/02/11(月) 12:32:40.13 ID:CYc0QbqF0
「きゃー英雄様ー」

「すてきー」

勇者「女たちに囲まれてるな」

勇者「俺も本来魔王を倒していればああなってたのになぁ」

勇者「女子に囲まれてウハウハしたかったなぁ」

勇者「賢者と魔法使いいい女だったのになぁ」

勇者「帰るか ないものねだりしても意味ないもんなぁ」

「失礼」

勇者「!」

48: 2013/02/11(月) 12:41:39.38 ID:CYc0QbqF0
英雄「ここらにグラークという宿があるのを知らないか?」

勇者「あ……えっと……」

勇者(これ英雄だよ さっき騒がれてた英雄だ)

英雄「少年?」

勇者「し、知ってますよ」

英雄「なら教えてくれるとありがたい 人と待ち合わせをしているんだ」

勇者「分かりました」

勇者(ってなに魔族の英雄に尻込みしてるんだ俺は)

勇者(ん?これはもしかして)

勇者「もしかしてミスリルの知り合いとか?」

英雄「閣下を知っているのか」

勇者「まあ俺はあいつの配下(のようなもの)です」

英雄「そうか 君が噂の閣下が飼っている偽人か」

勇者「飼われてはいませんよ」

英雄「そうか それは失礼した」

49: 2013/02/11(月) 12:46:54.09 ID:CYc0QbqF0
英雄「私の名はユーリウス・ルードヴィッヒだ」

勇者「ジークフリード・ヘルです」

英雄「そうか よろしく」

勇者「よろしくお願いします」

英雄「まあ向こうにつけば嫌でも話さなければならないし先に進もうか」

勇者「そうですね」

英雄「時にヘル君 君は勇者らしいね」

勇者「もとですけどね」

英雄「元だとしても相当の腕を持っているのだろう?
よかったら手合わせ願えないだろうか」

勇者「とんでもないですルードヴィッヒ氏も英雄なんですからお強いんでしょう?」

英雄「剣はあまり得意ではないがね」

勇者「魔法をお使いになるんですか?」

英雄「魔法は人間には一切使えない代物だからね 私は使えない
まあ例外はいるがね」

勇者「じゃあ誰が転移魔法を使うんですか?」

英雄「私の妹だよ」

50: 2013/02/11(月) 12:55:01.22 ID:CYc0QbqF0
剣士「ミスリルさま お久しぶりです」

魔王「久しいな クドリャフカ 息災だったか?」

剣士「お陰さまで 家業を継ぎ剣士にもなれましたし」

魔王「君はほとんど剣を使えなかったのに大丈夫か?」

剣士「兄よりは使えるので一応形式だけでも乗っ取ろうと思いまして」

魔王「そういえばユーリはどうした?」

剣士「申し訳ありません はぐれてしまいまして」

魔王「ユーリは本当に方向音痴だからな」

剣士「ええ 全く同感です 我が兄ながら情けない」

魔王「英雄も妹にそういわれるとつらいな」

51: 2013/02/11(月) 13:09:23.49 ID:CYc0QbqF0
剣士「ときにミスリルさま 真翁さまは元気でいらっしゃいますか?」

魔王「ああ 元気にしている」

剣士「ご高齢ながら最高指導者の地位を担っていらっしゃる真翁さまも大変ですね」

魔王「そうだな 早く楽にさせてあげたいのだが」

剣士「そうなるとミスリルさまが継がれるのですか」

魔王「どうだろうな 失脚させられるかもしれないな」

剣士「ミスリルさまはいい王になれると思いますよ」

魔王「……だといいのだか」

52: 2013/02/11(月) 13:19:44.24 ID:CYc0QbqF0
剣士「……」キョロキョロ

魔王「どうかしたか?」

剣士「いえ ミスリルさまが偽人をお飼いになっていると聞きましたので」

魔王「偽人は席をはずしてもらっている」

剣士「大丈夫なのですか?その……放し飼いにしても」

魔王「見せ場で売っているような偽人ではないので大丈夫だ」

剣士「本当ですか?」

魔王「君の母上のようにはならんよ」

剣士「………」

53: 2013/02/11(月) 13:28:46.77 ID:CYc0QbqF0
魔王「さて 仕事の話でもしようか」

剣士「そうですね」

魔王「君は我々をベオグラードの地へ転移させてほしいのだ」

剣士「結構距離がありますね」

魔王「我々の地理で一番偽人の国に近い所だ」

剣士「本当に行かれるのですか?」

魔王「もう決まったことだ」

剣士「ですが危険です せめて兄かキースクリフさまをお連れになった方が安全かと思います
偽人と二人きりなど頃してくれと言わんばかりの行動だと思います」

魔王「ユーリは君の護衛だろう 執事は城を守ってくれている 彼等の手を借りるのは申し訳ない
それにジーク、偽人は私を頃したりはしないよ」

剣士「ミスリルさまがそうおっしゃるなら……」

魔王「それに国境付近までは君もユーリも来てくれるのだろう?」

剣士「はい!それはもちろんです 我が命に変えましても貴女さまをお守りいたします」

魔王「それは心強いよ」

54: 2013/02/11(月) 13:29:14.24 ID:CYc0QbqF0

魔王「ではゆっくり休め クド 明日は早めに出立する」

剣士「かしこまりました」

55: 2013/02/11(月) 13:37:35.68 ID:CYc0QbqF0
英雄「ほう そんなことがあったのか」

勇者「はい あのときはびっくりしましたよ 魔法使いがいなければどうなっていたやら」

英雄「ヘル君は面白い話をたくさん持っているね」

勇者「長く旅をしていますからね」

英雄「私にはてんでないな 仲間がいなかったからかもしれないが」

勇者「仲間がいればよくトラブルが起きますしね
のちのちに笑い話になるんですけど当時は焦りましたよ」

英雄「そうかい」

勇者「あ、ここです 宿」

英雄「予想より綺麗なところだね」

勇者「そうですか?」

英雄「収容所(グラーク)というからもっと汚いところだと思っていたよ」

勇者「?」

英雄「さあ 中に入ろうか」

56: 2013/02/11(月) 13:47:57.65 ID:CYc0QbqF0
英雄「どこかな?閣下のお部屋は」

勇者「三階の一番奥の部屋です」

英雄「うむ では急ごう 妹も着いているだろうしな」

剣士「ひぃぃぃぃぃ偽人がぁぁぁぁくぁwせdrftgyふじこlp」

勇者「な、なんだ!?」

英雄「すまない 妹だ」

57: 2013/02/11(月) 13:53:34.62 ID:CYc0QbqF0
英雄「妹のクドリャフカだ」

剣士「偽人だぁぁぁぁx 偽人がいるぅぅぅぅっ」

勇者「まともにしゃべれてないですけど」

英雄「偽人を見ると拒否反応をみせる」

剣士「あががががが」

勇者「壊れちゃってますけどっ」

58: 2013/02/11(月) 14:03:59.33 ID:CYc0QbqF0
魔王「騒がしいと思えばユーリとジークか」

英雄「お久しぶりでございます、閣下」

剣士「くぁwせdrftgyふじこlp」

魔王「久しいが今はそれどころではない
クドをどこか別のところに連れていってやってくれ」

英雄「畏まりました」

勇者「酷い人だな」

魔王「君が来てからああなった」

勇者「俺のせいかよっ」

魔王「まあ入れ 少し説明をしよう」

59: 2013/02/11(月) 14:16:31.93 ID:CYc0QbqF0
魔王「彼女はクドリャフカという女の子だ 歳は君と近いだろう」

勇者「凄いキチガイじみた反応したが」

魔王「偽人を見るとああいう反応をしてしまう」

勇者「でもなんで俺が偽人だってわかったんだ?見た目じゃ違いなんで分からないだろ?」

魔王「彼女は仙術使いでな、気を読むのが得意なのだ」

勇者「気?」

魔王「人間の発する気と偽人の発する気は違うらしい」

勇者「へえ」

60: 2013/02/11(月) 14:27:48.32 ID:CYc0QbqF0

魔王「昔彼女の家では見せ場で買った偽人の奴隷を飼っていたんだ」

勇者「見せ場って何だ?」

魔王「奴隷のオークションみたいな所だ」

勇者「そんなとこがあるのか」

魔王「偽人の間でも人間の奴隷を売り買いしていると聞いたことがあるが」

勇者「人間がそんなことするわけないだろ」

魔王「するのだよ 偽人も、人間も」

61: 2013/02/11(月) 14:35:17.78 ID:CYc0QbqF0
魔王「その奴隷がある日逃亡したんだ」

勇者「そりゃ逃げたくもなるわな」

魔王「君みたいにか?」

勇者「俺は人間を助ける使命があるから逃げられないんだ」

魔王「だから偽人と言っているだろう」

勇者「で、どうなったんだ?」

魔王「奴隷は周りの人間を次々に襲い遂には主人である彼女の母親まで頃したんだ」

勇者「………」

魔王「その時はユーリが事態を終息したらしいが何人もの人が殺されたらしい
しかし当時7歳の少女にとってはトラウマになるレベルだった」

62: 2013/02/11(月) 14:44:54.39 ID:CYc0QbqF0

魔王「それからクドは偽人に拒否反応を示すようになったらしい」

勇者「奴隷として飼ってた者にも非はあるだろう」

魔王「だな 母親は弁解の余地もないほど自業自得だろう」

勇者「なら」

魔王「だかわずか7歳の子供には母が悪いなどとは思えないのだよ ジーク
すべて偽人のせいなのだ 偽人こそ悪だと思えばすべてが善になる
君だってそうだっただろう?」

勇者「……確かにそうかもしれない」

魔王「クドみたいな民がいるから人間と和解ができない」

勇者「そのために彼女を利用したのか?」

魔王「いや 彼女にはただ転移魔法を使ってくれる者として依頼したにすぎない」

勇者「他にもいたんじゃないか? わざわざトラウマをほじくり出さない適任者」

魔王「居ただろうな だが彼女もそろそろ踏み出す時期だろうと思ってな」

勇者「何に踏み出すんだよ」

魔王「偽人を頃すか、手を組むかの選択だよ」

63: 2013/02/11(月) 14:49:39.31 ID:CYc0QbqF0
英雄「失礼します」

魔王「ユーリか 入れ」

英雄「お久しぶりでございます閣下」

魔王「方向音痴っぷりは健在だな」

英雄「申し訳ない けれど彼と会って助かりました」

魔王「ジークもたまには役に立つな」

勇者「たまにじゃなくていつもだろ」

魔王「どの口が言うか」

英雄「閣下はヘル君と仲がよろしいようで」

魔王「特に親しいというわけではない」

勇者「お前が好きなのはキースクリフだもんな」

魔王「君は黙っていろ」

64: 2013/02/11(月) 15:01:05.17 ID:CYc0QbqF0

英雄「ほう まだキースに恋心をお持ちだったか」

魔王「まだとはなんだ 別にキースのことなど――」

勇者「ルードヴィッヒ氏もキースクリフのことをご存じなんですか?」

英雄「あの城でお仕えしていたからね」

勇者「なんでお辞めになったんですか?」

魔王「おい人の話を――」

英雄「真翁様がお亡くなりになられてから城を出てね
それから町を救って英雄になったのだよ」

勇者「しんおうさま?」

英雄「ミスリル閣下の父君だよ 前の最高指導者様
……ってヘル君に言ってよかったですか?」

魔王「ジークには私が最高指導者と言ってあるから良い」

65: 2013/02/11(月) 15:11:40.99 ID:CYc0QbqF0
勇者「よくわからないのですが」

魔王「真翁、つまり私の父はお亡くなりになられた
しかしそれを公表してしまえば我々の国に政権はなくなり別の国の王が最高指導者となってしまう
だからそれを防ぐために私が父上の代わりに国王をやっているのだ」

勇者「あの爺みたいな格好でか?」

魔王「父を愚弄するなら頃すぞ」

勇者「ストレートな物言いだな」

66: 2013/02/11(月) 15:17:55.33 ID:CYc0QbqF0
勇者「でもその秘密を知っているのはキースとメイド長だけじゃなかったか?」

魔王「よく覚えているな 三ヶ月前のことなのに」

勇者「記憶力に定評ある勇者だからな」

魔王「ほう そうか」

勇者「まさかルードヴィッヒ氏がメイド長だとでも言うのか?」

魔王「だろうな――ってメイド長っ!?」

英雄「昔の話だがね」

67: 2013/02/11(月) 15:28:50.49 ID:CYc0QbqF0
勇者「メイド長ってあのでっかいおばさんじゃないのか」

魔王「あれはメイド管理長だ」

勇者「まじかよ……」

英雄「まだ私をメイドだと思ってくださり光栄です」

勇者「もしかして女だったっておちですか?」

英雄「今も昔も男だよ」

勇者「男のメイド?なしだろ」

魔王「女の執事もいるくらいなんだからいいだろう」

勇者「需要が違うよ」

68: 2013/02/11(月) 15:32:50.22 ID:CYc0QbqF0
魔王「もう部屋はとったか?」

英雄「僭越ながら隣の部屋をとらせていただきました」

魔王「ならば私がそちらを利用しよう 君はジークとここを使ってくれ」

勇者「ミスリルと同じ部屋じゃないのか」

魔王「君が氏にたいなら同じ部屋で寝ても構わないが」

勇者「腹上氏なら歓迎です」

魔王「いっそ蠅の餌にでもなるがよい」

69: 2013/02/11(月) 15:37:41.11 ID:CYc0QbqF0
英雄「閣下とため口など君くらいだろうね」

勇者「確かに城でもため口のやついなかったですからね
俺にはタメや上からが多かったですけど」

英雄「位が全然違うからね」

勇者「最高指導者の真翁さまが氏んだことって妹さんは知らないんですか?」

英雄「クドリャフカには伝えてない
こう軽々しく話しているが国家の秘密事項なことを忘れてはいけないよ」

勇者「そうなんですか 俺には進んで話してましたけど」

英雄「それだけ信頼しているということだろう」

勇者「そうは見えないんですが」

英雄「あ、手合わせをしていなかったね」

勇者「今日は疲れたのでまた明日で」

70: 2013/02/11(月) 15:41:30.06 ID:CYc0QbqF0
勇者「あれ?ミスリル」

魔王「なぜここにいる」

勇者「寝れなくてな」

魔王「私もだ」

勇者「疲れた顔してるぞお前」

魔王「君も人の事を言えた義理ではない」

勇者「ルードヴィッヒ氏が眠らしてくれないんだよ
自分が眠くなったら寝るくせに」

魔王「………ああそういうことか」

勇者「ん?」

71: 2013/02/11(月) 15:46:04.32 ID:CYc0QbqF0
魔王「ユーリは自分から喋ると止まらないからな」

勇者「おかげで眠気が収まった」

魔王「なあジーク」

勇者「なんだ?」

魔王「何故ユーリには敬語で私には敬語じゃないのだ?」

勇者「なんていうか……俺にも解らん」

魔王「は?」

勇者「気がついたら敬語でしゃべってた」

魔王「どんだけ小物なのだ君は」

勇者「小物って言うなっ」

72: 2013/02/11(月) 16:01:57.22 ID:CYc0QbqF0
魔王「だか私には小物すら平伏させることが出来ない」

勇者「は?」

魔王「昔の部下は出来るのに私は何故出来ないのだろうか」

勇者「何いってるんだよ」

魔王「クドと話しているときに私は良い王になれると言われたのだ」

勇者「それで?」

魔王「私は良い王なのだろうか?」

勇者「………」

魔王「国民を騙し、部下もろくに従わせられない、そんな王は良い王さまなのか?」

73: 2013/02/11(月) 16:07:24.51 ID:CYc0QbqF0
勇者「何バカみたいなこと言ってんだよ」

魔王「なんだと?」

勇者「良い王さまなんてこの世にはいない いるのは良い王になろうとしている王と良い王だと思い込んでる王しかいないんだ
お前は頑張って魔族が幸せになれる方法を探してるじゃないか
その努力は評価されるべきだと思うし良い王になろうとしてるってことじゃないか」

魔王「………」

勇者「だからもっと自信を持てミスリル 俺が保証してやる」

魔王「……そうか」

74: 2013/02/11(月) 16:14:00.00 ID:CYc0QbqF0
魔王「まさか君に慰められるとは思わなかった」

勇者「俺の評価低いなぁ」

魔王「君の評価を蠅から豚に昇格させてやろう」

勇者「上がったのか?それ」

75: 2013/02/11(月) 16:19:55.29 ID:CYc0QbqF0
魔王「では出立する」

勇者「早くないか?」

魔王「早いに越したことはない 行くぞ」

剣士「あの……偽人さん?」

勇者「俺の名前は偽人じゃないんだけど」

剣士「ひぃぃ す、すいません」

勇者(恐がってるしこっちから歩み寄った方がいいのか?)

勇者「俺のことはジークでいいよ」

剣士「じーくさん、ですか」

勇者「俺もクドっってよばせてもらうし」

剣士「は、はい」

77: 2013/02/11(月) 16:29:34.78 ID:CYc0QbqF0
勇者「あのさもう少し近づいて話さないか?」

剣士「これ以上近づいたら発作が出てしまうので無理です」

勇者「10mも離れてたら大声で話さなきゃいけないんだけど」

英雄「クドリャフカが偽人と話せている……感慨深いな」

魔王「君の兄バカも治らないのか」

剣士「すいません でも離れてても転移魔法は使えますから安心してください」

勇者「俺だけおいてけぼりとか泣くぞ?」

魔王「君は一度通ってきた道じゃないか」

勇者「だから嫌なんだよ」

剣士「では転移します」

魔王「よろしく頼む」

78: 2013/02/11(月) 16:34:30.66 ID:CYc0QbqF0
魔王「ここが人間界の最果てと言われるベオグラードか」

英雄「閣下は来られるのが初めてなのですか?」

魔王「何分田舎では縁がなくてな」

英雄「昔は首都だったんですが」

勇者「気分悪い……」

魔王「吐いてきてすっきりしたか?」

勇者「全然」

剣士「すいません 偽人を転移させたことはなかったので失敗しました」

魔王「五体満足で来れただけマシだろう」

勇者「もっかい吐いてくる」

79: 2013/02/11(月) 16:46:02.62 ID:CYc0QbqF0
魔王「このまま我々は偽人の領域に入るつもりだ」

英雄「では私たち兄妹も一緒にお供しましょう」

魔王「大丈夫だ このベオグラードまででよい」

英雄「しかし――」

魔王「君達まで危険をおかす必要はない それにあまりにも人間が居すぎると向こうにも感づかれるやも知れん」

英雄「そうですか ではここでお別れですか?」

魔王「ぎりぎりの所まで見送ってくれるとありがたい」

英雄「畏まりました 閣下」

80: 2013/02/11(月) 16:53:47.86 ID:CYc0QbqF0
勇者「気持ち悪い」

剣士「あの……」

勇者「あ?」

剣士「ひぃぃ」

勇者「クドか どうした?」

剣士「うぅ……怖い」

勇者「俺はなにもしねえよ」

剣士「でも」

勇者「昔知ってる偽人はどうだったか知らないけど俺は無闇に殺生はしない質だ」

剣士「そうなんですか」

勇者「人間だって人頃しするやつもいれば優しいやつだっているだろ?
それと同じだ 偽人にだって良いやつもいれば悪いやつもいる
要は一番大事なのは自分の目で見極めることなんじゃないか
見た目じゃなくて本質を見ることこそ大切なことだと思うぞ」

剣士「………」トコトコ

剣士「い、今はこれくらいしか近づけませんが、頑張ってみます
偽人を恐がらずに済むように、頑張ります」

勇者「うん 頑張って」

剣士「それと、ごめんなさい 上手く転送できなくて」

勇者「良いよ こういうこと慣れっこだから」

81: 2013/02/11(月) 16:58:31.05 ID:CYc0QbqF0
英雄「大丈夫かいヘル君」

勇者「なんとか落ち着きました」

魔王「情けないな ジーク」

勇者「別に好きで吐いた訳じゃない」

魔王「どうでもいいから先に進むぞ」

勇者「なんか扱いひどくね?」

82: 2013/02/11(月) 17:08:24.50 ID:CYc0QbqF0
剣士「ここから気の流れが変わっています」

魔王「ではここから偽人の領域ということか」

剣士「そういうことです」

勇者「そんなことが分かるのか」

英雄「凄いだろう私の妹は」

勇者「そうですね」

83: 2013/02/11(月) 17:13:32.39 ID:CYc0QbqF0
魔王「ではここでお別れだ」

英雄「ご武運を 閣下」

剣士「いってらっしゃいませ ミスリル様」

魔王「うむ 行ってくる」

勇者(さすが王様 膝付かれて言われてるよ)

剣士「あの、じーくさん」

勇者「ん?お、結構近づけたな」

剣士「これ」バッ

勇者「これは、剣?」

剣士「差し上げます」

勇者「なっ」

84: 2013/02/11(月) 17:21:55.87 ID:CYc0QbqF0

剣士「剣士と言っても形だけですし それならじーくさんに使ってもらった方が剣も嬉しいと思いまして」

勇者「そっか さんきゅ クド」

剣士「は、はい」

勇者「良い剣だな」

剣士「バルムンクといいます」

勇者「全部が終わったら返しに来るよ」

剣士「待ってます、ずっと」

85: 2013/02/11(月) 17:29:03.76 ID:CYc0QbqF0
魔王「良い雰囲気だったな 君とクドは」

勇者「そうか?あ、もしかして嫉妬?」

魔王「全然違う」

勇者「でも話してくれるようになって嬉しいよ」

魔王「まさかクドと君があんなに話せるとは思わなかった
それに剣を預けるとは予想の斜め上だ」

勇者「人間嫌いも治ってくれるといいんだけどな」

魔王「偽人嫌いの間違いだろう」

86: 2013/02/11(月) 17:31:38.45 ID:CYc0QbqF0
魔王「これからは君の領分だ 君に任せるよ」

勇者「つまりリードしろと?」

魔王「偽人の領域だから案内してくれと言いたいのだが」

勇者「そういうことか」

魔王「それ以外何がある」

87: 2013/02/11(月) 17:39:42.49 ID:CYc0QbqF0

魔王「ここでは劣化ロボットを破壊しながら偽人で一番権威のある物のところを目指す」

勇者「ではハプスフルグだな」

魔王「では向かおう 行くぞ ジーク」

勇者「了解しました ミスリル様」

魔王「やはり君の敬語は気持ち悪いな」

勇者「それは俺でも傷付くぞ」

91: 2013/02/16(土) 08:22:40.54 ID:bqq7cI560
勇者(魔王の城を旅立ってから四ヶ月がたった)

勇者(俺たちは未だ人間の中心部であるハプスフルグへたどり着けていない)

勇者(というのも思った以上に魔物が多かったからだ)

勇者(これじゃいつ目的地に着くのかわからない)

魔王「おいジーク」

勇者「んー?今日の晩御飯はウサギ焼きだぞ」

魔王「そうではない 鷹便で手紙が届いた」

勇者「鷹?ってことは王家からか」

魔王「そうなのか」

勇者「って王様からっ!?」

92: 2013/02/16(土) 08:25:25.95 ID:bqq7cI560
勇者「どどどどれだよ!?」

魔王「動揺しすぎだ ド阿呆」

勇者「だって王様だぜ?王様っつったら雲の上の存在だぜ?」

魔王「私も王だ」

勇者「………そうでしたね」

魔王「偽人の言葉は読めんので読みあげろ」

勇者「喋れるのにか?」

魔王「話せるのと読むのは違うだろう」

勇者「ミスリルの弱点はっけーん」

魔王「こんなもの弱点でもなんでもない」

93: 2013/02/16(土) 08:30:19.12 ID:bqq7cI560
魔王「ほれ 読み上げろ」

勇者「うわぁ…王家の紋章入ってるぜ」

魔王「どうでもいいからさっさと読み上げろ」

勇者「はいはい」

勇者「勇者一行 全滅したと聞いていたが生きていると聞き真嬉しい限りである」

魔王「……」

勇者「今一度話を聞きたいので月始めに城に馳せ参じるよう命ず」

魔王「ひどく上からだな」

勇者「王様だからな」

魔王「私はそんなに上からではないが」

勇者「お前も十分上からだよ」

94: 2013/02/16(土) 08:35:26.66 ID:bqq7cI560
魔王「まあよい これで私の目的は果たせるのだからな」

勇者「王様を頃して終わり、なのか?」

魔王「そんなわけないだろう 今から人間と偽人の戦争が始まるのだ」

勇者「そんなことして魔族は勝てるのか?」

魔王「自分が人間ではなく偽人だと言われれば戦意は減退する 君のようにな
そこを叩けば我々側が勝利するのも難しい話ではない」

勇者「戦争になれば人はたくさん氏ぬんだぞ 俺らもおまえらも
そんなことお前は望んでなかったはずだろ?」

魔王「私の目的はたったひとつ
人間側に政権を戻すことだ それ以外の何物でもない」

勇者「じゃあなんで魔物退治を頑張ってたんだよ
魔物退治は俺たち側のためだろ」

魔王「ロボット退治は目的ではなく手段である」

勇者「手段?なら手っ取り早く城に乗り込めばよかっただろ 俺は勇者なんだからそれだけの利用価値はある
それをしなかったのは魔物に襲われた人間を助けたいと思ったからだ」

魔王「君の主観で語るのはやめろ 魔王にやられた勇者など少しの信用もなかろう
だから魔物退治のよって君の信頼を高めるためにやったのだ」

勇者「ならなんで村の人にお礼を言われて嬉しそうだったんだよ」

魔王「それこそ君の主観だ 私は嬉しそうにした覚えなどない」

勇者「俺にはそう見えた」

魔王「だから――」

勇者「俺は偽人と魔族は分かり合えると思う そう信じている」

魔王「……勝手にしろ」

95: 2013/02/16(土) 08:41:08.48 ID:bqq7cI560
魔王「ジーク起きろ 出立する」

勇者「……よく眠れなかった」

魔王「知らん 君の責任だ」

勇者「はいはい」

魔王「早くしろ 夜が明ける」

勇者「夜が明けちゃいけないのか?」

魔王「私はあまり日焼けしたくない」

勇者「やっぱ魔族じゃないか」

魔王「紫外線予防しているだけだ」

勇者「なんだそれ」

96: 2013/02/16(土) 08:46:15.97 ID:bqq7cI560
勇者「ミスリル」

魔王「なんだ」

勇者「お前は人間のことしか話してないから思ったんだけどさ
氏ぬつもりなの?」

魔王「氏ぬつもりは毛頭ない」

勇者「もし王様を頃したと仮定する」

魔王「仮定ではなく近いうちに実現することだ」

勇者「でもお前の周りは敵ばかりだ、つまりお前は狙われるだろ」

魔王「順序だてて話せ まあ意味はおおよそ分かった
たしかに王を運よく殺せても王の手下が私を殺そうとする、ということか」

勇者「そうだ」

魔王「愚問だな 君が守ってくれるだろう?」

勇者「なっ」

魔王「嘘だよ 君には期待していない」

勇者「なんだよそれっ」

97: 2013/02/16(土) 08:51:34.76 ID:bqq7cI560
魔王「逃げる宛はある 心配するな」

勇者「ほんとかよ」

魔王「だが君には教えない 敵に寝返る可能性があるからな」

勇者「俺はミスリルを助けるぞ」

魔王「戯言を 君は偽人を助けるのではないのか」

勇者「そうだよ 俺はお前も王様も人間もみんな幸せになる道に進むんだ
それ以外に選択肢なんてないだろ?」

魔王「誰もが幸せになる道なんてないのだよ 勇者」

勇者「俺が勇者じゃないって言ったのはどこの誰だっけ?」

魔王「くだらん もう私は引き下がれないのだ」

98: 2013/02/16(土) 08:57:12.25 ID:bqq7cI560
勇者(三日経ち俺たちはハプスフルグについた)

魔王「で、何処だ魔王の城」

勇者「魔王はお前だ」

魔王「私からすればこっちの方が魔王の城だがな」

勇者「はいはい この商店街を抜ければ見えてくるはずだ」

魔王「そんなに大きいのか」

勇者「お前んちより大きいよ」

魔王「つまりは税金の無駄遣いってところか 良い王ではないらしいな」

勇者「あの城は前王が建てなさった城だ 今の王とは関係ない」

魔王「だからといって血族なのだろう?」

勇者「あの方は革命を起こしてなった方だから血縁関係はないよ」

魔王「ふうん」

勇者「それに若いしな 俺と10歳しか変わらない」

魔王「私も王だぞ」

勇者「お前は親父の代わりだろ」

魔王「否定はせん」

99: 2013/02/16(土) 09:01:19.94 ID:bqq7cI560
勇者「王様に会いたいのですが」

受付「少々お待ちください」

魔王「ここは何かの会社か?」

勇者「違うが」

魔王「ではなぜ受付などあるのだ」

勇者「ここには世界から狙われているお人が住んでるんだから当たり前だろ」

魔王「受付は関係なかろう」

受付「勇者様、こちらへどうぞ」

勇者「あ、はーい」

100: 2013/02/16(土) 09:04:40.61 ID:bqq7cI560
受付「王様は今日の夜にでも会いたいとおっしゃっています」

勇者「俺もいいですよ」

魔王「これは随分お早いのですね」

勇者(こいつの独語はいつ聞いても綺麗だな……)

受付「では王様に伝えておきます」

勇者「よろしくお願いします」

101: 2013/02/16(土) 09:10:31.12 ID:bqq7cI560
魔王「君たちの言葉で話すと疲れる」

勇者「そんなこと言ったってお前たちの言葉で喋っても伝わらないぞ」

魔王「君はなぜ話せる」

勇者「勇者のたしなみ、みたいなもんだよ」

魔王「君のところの王は英語を嗜んではいないのか」

勇者「一応は学んでるんじゃないか?王家の教育内容は知らないが」

魔王「では王と話すときは英語でいいな」

勇者「独語でいいだろ」

102: 2013/02/16(土) 09:16:50.25 ID:bqq7cI560
【夜】

国王「すまないな 仕事が立て込んでいたものでな 待たせたか?」

勇者「いえ」

国王「そうか ならよかったが」

魔王(確かに若い 私より少し上くらいか)

国王「部下は払っておいたのでくつろぐといい」

勇者「はっ」

国王「ところで出発したときと従者が違うようだが」

勇者「他のものは魔物に倒されました」

魔王(嘘をつけ)

勇者「彼女は私が魔王に傷を追わされたあと保護してもらった者です」

国王「名はなんと申す」

魔王「ミスリル、と申します」

国王「うむ 良い名だ」

魔王(言われるまでもない)

魔王「王様にそういわれるなど恐悦至極にございます」

103: 2013/02/16(土) 09:22:12.83 ID:bqq7cI560
国王「ところで勇者よ 次は何時になったら魔王を倒しにいくのだ?
最近は魔物退治で忙しいようだが」

勇者「目処はたっておりません」

国王「では明日目処をつけよ」

勇者「で、ですがそれでは魔物は――」

国王「魔物など魔王を倒してからでよい」

勇者「魔物は人間を苦しめています 人間を助けることこそ勇者だと私は思っています」

国王「その原因である魔王を倒せば幸せになれるだろう」

勇者「本当にそれで幸せになれるんですか?」

国王「なんだと?」

勇者「魔王を倒したからと言って私たちが幸せに、平和になれるとは思いません」

国王「……なにをいうか」

勇者「人間の平和は、世界の平和は魔王を倒したごときでは訪れません」

国王「………そうか では貴方は魔物退治をやるがいい」

魔王「気に食わんな」ボソッ

国王「なにかいったか」

魔王「いえなにも」

104: 2013/02/16(土) 09:27:25.08 ID:bqq7cI560
魔王「王様が任に着かれてどれくらいになられますか?」

国王「たしか三年だったか」

勇者「……?」

魔王「……!」

国王「どうかしたか?」

魔王「ロボットが多く出現したのも三年前だと聞いたが」

国王「?」

魔王「やはり、君は王の器ではない」

国王「何をいっているのだ」

魔王「気に食わんといったのだ偽物の王よ」

勇者「なっ」

105: 2013/02/16(土) 09:38:18.76 ID:bqq7cI560
国王「その言葉、魔族か」

魔王「だったらなんだ?」

国王「なぜ勇者と一緒にいる」

魔王「彼は私の従者だ」シュッ

勇者「おいっミスリル!」

国王「なんの真似だ」

魔王「見た通りレイピアを君の喉元に当てているのだよ」

国王「………ひけ」

魔王「引かん 愚かな人種よ」

勇者「やめろミスリル!」

106: 2013/02/16(土) 09:47:07.17 ID:bqq7cI560
魔王「君に聞きたいことがあるのだが」

国王「剣を引いてくれたら答えてもいい」

魔王「君は自分が人間でないとを知っているな?」

国王「なぜそう思うのかね」

魔王「三年前、劣化ロボットが多く出現し国内が荒れたと聞く」

国王「そうだな」

魔王「君が着任してからも三年だ これは偶然か?」

国王「偶然だろうな」

魔王「私が思うに革命時に使わなかったロボットを野生にしたのではないか?」

国王「何をいっているやら」

魔王「しらをきるつもりか」

国王「知らないことは答えられない」

魔王「ではなぜ君がロボットのことを知っているのか答えてもらおうか」

国王「……」

107: 2013/02/16(土) 09:56:45.76 ID:bqq7cI560
魔王「この世界ではロボットを魔物と呼ぶらしい
しかし君は私がロボットといったとき自然と受け入れた
これはどういうことだ? 偽物の王」

国王「……人払いしていて正解だったようだ」

魔王「なんだと?」

国王「私が若い頃、勇者と同じ年頃の時だった」

魔王「?」

国王「この世界に矛盾を感じた そもそも古代人は魔法など使えなかったのになぜ我々は使えないのか、何時の間に魔族などという生き物ができたのか」

勇者「……」

国王「私が成人になったとき魔族退治の部隊に配置され戦場に赴いた」

国王「しかしあっけなく部隊は全滅 私以外氏んでしまったわけだ」

国王「私も氏を覚悟した けれど魔族部隊に保護されて魔族と暮らすようになった」

魔王「その時に自分達が人間ではなく偽人だと知ったのか」

国王「そうだ 最初は信じられなかったが魔族の文献を読んで長年の矛盾が解決されたよ」

108: 2013/02/16(土) 10:03:45.17 ID:bqq7cI560
勇者「ってことは王様はその事を知った上で革命を起こしたんですか?」

国王「ああ そうだ」

魔王「なんのためにそんなことを」

国王「決まっている 魔族を滅ぼし本当の人間になるためだ」

勇者「そのためになんの罪もない魔族を殺そうっていうんですか!」

国王「魔族がいるだけで我々は''偽物''と呼ばれるのだ
人間の手下だっと時代など500年以上前だというのに!」

勇者「だからって――」

国王「魔族さえ全滅すれば偽人は本物になれる
勇者、君の望む世界もそこにあるんじゃないか?」

勇者「魔物が、ろぼっとが無くならない限り平和になる時代なんて来ないですよ」

国王「魔族さえいなくなればロボットを作る必要などなくなる」

勇者「そんなもの屁理屈だ」

国王「屁理屈でも理屈だ」

109: 2013/02/16(土) 10:13:16.43 ID:bqq7cI560
魔王「ジーク 彼と話したところでなんの価値がある?
人の話など耳にかけない物を説得しようとしたって無駄だ」

国王「貴女もそうだろう」

魔王「黙れ」

勇者「ミスリル 話し合おう 俺たちに共通することは話が出来ることだ
いったん剣を下ろそう、な?」

魔王「彼が英語で話せば応じてやらんこともない」

国王「彼女が独語で話せば取り合わないことはない」

勇者「王って総じて面倒だな」

国王「なにかいったか?」

勇者「いえ なにも」

魔王「もういいさ 彼とはもう話すことなどなにもない」

勇者「やめろっ」

110: 2013/02/16(土) 10:19:01.19 ID:bqq7cI560
勇者のバルムンクで魔王のレイピアが弾かれた

勇者「頃す必要なんてないだろ」

魔王「………裏切り者が」

勇者「俺は裏切っちゃいない 俺は偽人で、お前は魔族なんだ
王さまの味方をするのは当たり前だし王さまが危険にさらされていたら助けるのは当たり前だろ」

国王「勇者、そいつはなんなんだ ただの魔族ではないだろう」

勇者「俺たちが魔王と呼ぶ魔族の長です」

魔王「ジーク、それは最重要秘密項だといっただろう」

勇者「王さまだって薄々気づいてたさ」

国王「上の者だとは思っていたがまさか魔王だとはな」

魔王「最高指導者だ」

国王「よろしい ならばそいつを殺せ 勇者よ」

勇者「なっ」

111: 2013/02/16(土) 10:25:21.05 ID:bqq7cI560
国王「なんだ できないのか?」

勇者「出来る出来ないの問題じゃありません 俺は人間と魔族が手を取り合って生きていくという未来を目指しているんです
ミスリルを頃すということはその望みも――」

国王「君の意見など聞いていない 魔王は我々にとって最大害だ そいつを頃すことはつまり我々が本物になれるという」

勇者「だれもそんな未来を望んでなんていない!」

国王「二つが手を組むことこそ誰も望んでいない」

国王「君は自分が人間ではないと聞いてどう思った
私は自分のアイデンティティがなくなるようで恐かった
自分が敵に作られたなど屈辱の極みでしかない
だから…''本物''になるためには本物を全部なくならなければならないのだ!」

勇者「確かに、俺もそう思った時期はありました」

勇者「でもあいつの城で過ごすうちに魔族も人間も変わらないものだと思いました
俺たちは共存できる、するべきだと思った」

勇者「どっちが上だとか下だとか関係なく手を取り合って生きることの出来る存在だと知った! 王さまはそうは思いませんでしたか!」

国王「それは……」

勇者「だから俺は誰に無理だと思われようとも実行させるって決めたんだ!」

魔王「そこまでだ」

112: 2013/02/16(土) 10:43:12.22 ID:bqq7cI560
魔王「君の御託に付き合っている暇などない」

勇者(銃を持っていたのか!!)

魔王「偽物の国王よ、氏んでもらう」

勇者「やめろ!」

魔王「どけジーク」

勇者「銃を下ろしたら考える」

魔王「君はどうしてその屑を助けようとする」

勇者「俺は勇者だ!王様を守る義務がある」

魔王「君は私の邪魔をするのか?」

勇者「邪魔じゃない 王様を頃したってなんの解決にもならないんだ」

魔王「それは君の思い込みだ 彼が氏ねば人間復活の礎となろう」

勇者「思い込みじゃない!!お前が幸せになれないじゃないか!」

魔王「くだらん 私の幸せとは人間が政権を戻すことだ」

勇者「違う お前の幸せは二つの種族が共存することだ」

魔王「そんな時代は一生来ない」

勇者「来る 俺が来させてみせる」

魔王「どうやってだ?」

勇者「お前に俺は撃てない」

魔王「は?」

113: 2013/02/16(土) 11:00:52.48 ID:bqq7cI560
勇者「お前は俺を撃てない 断言してやる」

魔王「自分を過信するなよ 君の価値は私の野望より小さい」

勇者「じゃあ俺を撃てなかったら共存の道を歩いてくれるか?」

魔王「……よかろう 君くらいなら易々と撃てる」

勇者「王さま、それでもいいですか?」

国王「……私が承諾すると思っているのか」

勇者「承諾しなければ俺諸とも氏ぬだけです」

国王「……分かった 許可する」

勇者「これで賭けは成立だ」

魔王「愚かな賭けに出たものだ いくら七ヶ月一緒にいたからといって殺せないわけはないだろう」

勇者「……愛する人に殺されるなら本望だ」

魔王「戯れ言だな」

魔王「さようならジーク 君のことは嫌いではなかったよ」

114: 2013/02/16(土) 11:09:48.57 ID:bqq7cI560
カチカチ
魔王「……?」

勇者「撃たないのか?ミスリル」

魔王「……まさか」

勇者「いや、撃てないよなミスリル」

魔王(弾が入ってないだと?)

勇者「昨日俺があらかじめ弾を抜いておいた」

魔王「ジーク!」

勇者「まさかミスリル様は一度した約束を破る訳じゃないですよね?」

魔王「……はぁ」

魔王「してやられたか」

115: 2013/02/16(土) 11:42:00.61 ID:bqq7cI560
勇者(それから半年がたった)

勇者(王さまとミスリルは和平という形で同盟を組むことになった)

勇者(人間と魔族のトップが同盟を組むと聞いて世界は驚愕した)

勇者(しかしそれに追い討ちをかけるように人間は偽人という魔族に作られた生き物だということを公開した)

勇者(世界は混乱し度々紛争が起こるようになった)

勇者(けれど次第に収まっていき半年たった今では時々起こる程度)

勇者(普通の人たちは意外に早く立ち直り魔族側と同盟をむすんでいった)

勇者(魔族側もそれを受け入れていき危惧していたよりも早く平和に近づいた)

勇者(それを見届けてから王さまとミスリルは王の座を退くこととなった)

116: 2013/02/16(土) 11:49:10.11 ID:bqq7cI560
勇者「これからどうするんだ?」

魔王「これからは各地を旅して扮装を止めにいくつもりだ」

勇者「そっか」

魔王「私が起こしたような紛争だからな 私が納めなければならんだろう」

勇者「一人でいくのか?」

魔王「そのつもりだ キースは王の仕事で忙しいしユーリも他のことで忙しい」

勇者「一介の執事が国の最高権力者か 人生どうなるかわからないな」

魔王「ところでクドとはその後どうなった?」

勇者「どうもなってないよ まだ剣を預かってるだけだ」

魔王「告白されたんじゃないのか」

勇者「よく知ってるな」

魔王「ユーリが泣いて報告してきた」

勇者「お前こそキースクリフとはどうなんだよ」

魔王「どうもならん 片や王、片や一般人だ」

勇者「そんなもんなのか」

魔王「彼にはもっと遠くへ飛んでほしいんだ」

117: 2013/02/16(土) 11:54:24.15 ID:bqq7cI560
魔王「ジークよ」

勇者「なんでしょう?」

魔王「今から暇か?」

勇者「俺は会合とか忙しいのよ」

魔王「じゃあいい」

勇者「諦めんなよっ」

魔王「面倒なやつだな」

勇者「悪かったな で、何だ?」

魔王「今から旅に出ないか?」

勇者「………」

魔王「世界一周して魔族と偽人を共存させないか?」

勇者「……俺でいいのか?」

魔王「お前でなくてはいけないんだ」

勇者「俺はお前のことが好きなんだぜ?」

魔王「知っている」

勇者「隙あらば抱きついたりするぜ?」

魔王「そのときは斬る」

勇者「お前がキースクリフのことを好きだろうと知ったこっちゃないぜ?」

魔王「今までそうだっただろう」

118: 2013/02/16(土) 12:08:40.00 ID:bqq7cI560
勇者「本当に俺でいいんだな?」

魔王「しつこい男は嫌われるぞ」

勇者「……よっしゃぁ!」

魔王「五月蝿い」

勇者「悪い悪い」

魔王「ではよろしく、ジーク」

勇者「まかせとけ、ミスリル」


おわり

119: 2013/02/16(土) 22:17:47.65
おつ!

122: 2013/02/18(月) 14:27:45.36

最後が駆け足っぽかったけど、楽しく読めた。

引用元: 勇者「ようやくたどり着いたぞ魔王よ」魔王「私は魔王ではない」