1: 2014/06/07(土) 23:46:41 ID:.0w1GcyQ
男「姉のコネによって無理やり入学させられたこの学校」
男「地元だが、国内屈指の珍学校でもある」
男「だって入学が12月だし。そっからもうおかしいだろ」
男「その学校の名は――」
姉「インターナショナル"帰宅"学園高等部っ!」
男「なんてこったい」
男「地元だが、国内屈指の珍学校でもある」
男「だって入学が12月だし。そっからもうおかしいだろ」
男「その学校の名は――」
姉「インターナショナル"帰宅"学園高等部っ!」
男「なんてこったい」
4: 2014/06/07(土) 23:52:10 ID:.0w1GcyQ
男「数時間前」
姉「あんたの入学が決まったから転学届出してきたわ」
男「……えっ?」
姉「あなたは私と同じ高校に入るの。オッケー?」
男「マジかよ……」
男「受験勉強捨ててて正解だったわ」
姉「あんたの入学が決まったから転学届出してきたわ」
男「……えっ?」
姉「あなたは私と同じ高校に入るの。オッケー?」
男「マジかよ……」
男「受験勉強捨ててて正解だったわ」
5: 2014/06/07(土) 23:56:28 ID:.0w1GcyQ
男「でも、インターナショナル帰宅ってそもそも何?」
姉「行ったら分かるわ。インターナショナルな帰宅ね」
男「いやいや何にも修飾されてないからそれ!」
姉「うちには公的なワークスチームもあるのよ」
男「いやいや、帰宅のワークスチームって何さ」
姉「要は主賓に認められてる協力母体ね」
男「帰宅に必要なのか、それ――?」
姉「行ったら分かるわ。インターナショナルな帰宅ね」
男「いやいや何にも修飾されてないからそれ!」
姉「うちには公的なワークスチームもあるのよ」
男「いやいや、帰宅のワークスチームって何さ」
姉「要は主賓に認められてる協力母体ね」
男「帰宅に必要なのか、それ――?」
7: 2014/06/07(土) 23:59:43 ID:.0w1GcyQ
姉「何言ってるの? 帰宅は過酷なんだよ!?」
姉「世界には舗装されてない帰宅路だってあるんだよ!」
姉「雨あり雪ありのサバイバル・ゲームなんだよっ!!」
姉「それを個人でやろうだなんて、実に滑稽だよ?!」
男「……そうかもな」トオイメ
姉「オッケー。これは私の命令よ」
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」
姉「世界には舗装されてない帰宅路だってあるんだよ!」
姉「雨あり雪ありのサバイバル・ゲームなんだよっ!!」
姉「それを個人でやろうだなんて、実に滑稽だよ?!」
男「……そうかもな」トオイメ
姉「オッケー。これは私の命令よ」
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」
8: 2014/06/08(日) 00:02:49 ID:k1wRaZvA
姉「帰宅部何個かと無所属しか無いのに!?」
姉「こんだけ帰宅制度が充実してるのに無所属だなんて――」
姉「就学支援金受け取れないし、第一滑稽だよ!!」
男「分かった分かった。じゃあ入部ってことで」
姉「大いに歓迎するよ。第二帰宅部へようこそ」
男「……第二?」
姉「こんだけ帰宅制度が充実してるのに無所属だなんて――」
姉「就学支援金受け取れないし、第一滑稽だよ!!」
男「分かった分かった。じゃあ入部ってことで」
姉「大いに歓迎するよ。第二帰宅部へようこそ」
男「……第二?」
9: 2014/06/08(日) 00:04:23 ID:k1wRaZvA
姉「第一帰宅部は、方針がクズなんだよね……」
男「第一なのにクズなんだ……」
姉「確かにその方針のお蔭で全国有数の実力なのは否めないけどね」
男「ランキングとかあるんだ」
姉「グローバルランキングだよ! 履歴書に書けるよっ!」
男「帰宅部から一般職種を目指すの!?」
姉「いんや、それはもうたぶん帰宅で食っていけるね」
男「第一なのにクズなんだ……」
姉「確かにその方針のお蔭で全国有数の実力なのは否めないけどね」
男「ランキングとかあるんだ」
姉「グローバルランキングだよ! 履歴書に書けるよっ!」
男「帰宅部から一般職種を目指すの!?」
姉「いんや、それはもうたぶん帰宅で食っていけるね」
10: 2014/06/08(日) 00:04:59 ID:k1wRaZvA
男「帰宅ってそんなに世界的に認められてたんだ……」
姉「まぁ、世界大会だしね」
姉「ところで、第一帰宅部の方針は――」
姉「"実力の無い部員は即退部"だよ」
男「それ本当に帰宅部なの?!」
姉「信じられないでしょ。だから、あんたは第二ね」
姉「まぁ、世界大会だしね」
姉「ところで、第一帰宅部の方針は――」
姉「"実力の無い部員は即退部"だよ」
男「それ本当に帰宅部なの?!」
姉「信じられないでしょ。だから、あんたは第二ね」
11: 2014/06/08(日) 00:07:06 ID:k1wRaZvA
男「そういうことなら……了解かな」
男「でも、帰宅の技能とか特に具えてないよ? 大丈夫?」
姉「本来は具えてなきゃキツいけど、まぁ大丈夫かな」
姉「私達が、全力でサポートしてあげるから!」
男「帰宅部なのに……」
姉「じゃあ、明日入学式だから。起こされるのを待ってね」
男「でも、帰宅の技能とか特に具えてないよ? 大丈夫?」
姉「本来は具えてなきゃキツいけど、まぁ大丈夫かな」
姉「私達が、全力でサポートしてあげるから!」
男「帰宅部なのに……」
姉「じゃあ、明日入学式だから。起こされるのを待ってね」
12: 2014/06/08(日) 00:10:12 ID:k1wRaZvA
姉「翌朝のこと」
姉「おはよう、男!」
男「お、おはよう……」
姉「さぁ、登校するよっ! 早くっ!」
男「朝からはしゃぎすぎだろ……」
姉「登校は帰宅の準備だから!」キリッ
姉「おはよう、男!」
男「お、おはよう……」
姉「さぁ、登校するよっ! 早くっ!」
男「朝からはしゃぎすぎだろ……」
姉「登校は帰宅の準備だから!」キリッ
13: 2014/06/08(日) 00:13:20 ID:k1wRaZvA
姉「そして学校にて」
学園長「インターナショナル帰宅学園へ、ようこそ」
学園長「一月までは帰宅の練習に勤しむように。以上」
男「えっ」
学園長「インターナショナル帰宅学園へ、ようこそ」
学園長「一月までは帰宅の練習に勤しむように。以上」
男「えっ」
14: 2014/06/08(日) 00:16:04 ID:k1wRaZvA
姉「あの人が学園長だね。高等部含む学園の長」
男「偉いだけにスピーチもエライ短かさだったね」
姉「……さて、部室に行こうか。みんなが待ってる」
男「部長は忙しいもんね、そうだよね」
男「偉いだけにスピーチもエライ短かさだったね」
姉「……さて、部室に行こうか。みんなが待ってる」
男「部長は忙しいもんね、そうだよね」
15: 2014/06/08(日) 00:19:36 ID:k1wRaZvA
姉「ここは第二帰宅部・部室」
男「殺風景だね。ディスカッションテーブルに椅子が4つしかない」
姉「本来ならあと二人は来るはずなんだけど……」
男「えっ、二人しか居ないの?」
姉「まぁ、うちの花形は第一帰宅部だからね……」
姉「少し事の経緯を話すよ」
男「殺風景だね。ディスカッションテーブルに椅子が4つしかない」
姉「本来ならあと二人は来るはずなんだけど……」
男「えっ、二人しか居ないの?」
姉「まぁ、うちの花形は第一帰宅部だからね……」
姉「少し事の経緯を話すよ」
16: 2014/06/08(日) 00:20:16 ID:k1wRaZvA
姉「まず第一に、無理やり入部させちゃってごめん」
男「退学と入学もだな」
姉「それは、1月までに部員が4人は必要だったからなの」
男「たしかに、俺が居たほうが確実だな」
姉「たぶん、誰も入部しないし」ボソッ
男「退学と入学もだな」
姉「それは、1月までに部員が4人は必要だったからなの」
男「たしかに、俺が居たほうが確実だな」
姉「たぶん、誰も入部しないし」ボソッ
17: 2014/06/08(日) 00:21:26 ID:k1wRaZvA
姉「そして、この部活にはあんまり予算が無い」
姉「これは、第一帰宅部の方針とうちが違うからだね」
姉「多少出してもらってるだえでも万々歳だよ」
男「なかなか辛い現実だな」
姉「ちなみに、うちには借金もあるしね」
男「おい」
姉「これは、第一帰宅部の方針とうちが違うからだね」
姉「多少出してもらってるだえでも万々歳だよ」
男「なかなか辛い現実だな」
姉「ちなみに、うちには借金もあるしね」
男「おい」
18: 2014/06/08(日) 00:24:20 ID:k1wRaZvA
姉「まぁこんなところね。あっ、誰か来たわ!」
先輩「お疲れっすー」
姉「お疲れっすー。彼は同じく3年生の会長よ」
会長「会長です。趣味はナンパです。よろしくです」
男「こんなのが会長で大丈夫か!?」
姉「まぁ、だからホームルームが遅かったってのは、あるよね」
先輩「お疲れっすー」
姉「お疲れっすー。彼は同じく3年生の会長よ」
会長「会長です。趣味はナンパです。よろしくです」
男「こんなのが会長で大丈夫か!?」
姉「まぁ、だからホームルームが遅かったってのは、あるよね」
19: 2014/06/08(日) 00:27:43 ID:k1wRaZvA
会長「まぁそう冷たくしないでくださいよ。君が噂の進入部員?」
男「はい。無理やり入部させられました男です」
会長「まぁ男性男子に興味は無いから心配なさるな」
男「えっ、誰かもう襲われたんですか!?」
会長「拉致なら一人」男「ないわー」
男「はい。無理やり入部させられました男です」
会長「まぁ男性男子に興味は無いから心配なさるな」
男「えっ、誰かもう襲われたんですか!?」
会長「拉致なら一人」男「ないわー」
20: 2014/06/08(日) 00:31:12 ID:k1wRaZvA
姉「ところで、会長含む私達はほとんど帰れないよ」
男「……世界大会、ですもんね。帰宅の」
会長「まぁ、世界紀行はなんだかんだ楽しいよ?」
姉「会長はどの言語でもナンパできるよね」
会長「Bien sûr! C'est un morceau de gâteau!」
姉「勿論!朝飯前だよ! だってさ」
男「誇っちゃうかそこ……」
男「……世界大会、ですもんね。帰宅の」
会長「まぁ、世界紀行はなんだかんだ楽しいよ?」
姉「会長はどの言語でもナンパできるよね」
会長「Bien sûr! C'est un morceau de gâteau!」
姉「勿論!朝飯前だよ! だってさ」
男「誇っちゃうかそこ……」
22: 2014/06/08(日) 00:34:51 ID:k1wRaZvA
男「ところで、あと一人が見当たらないね」
姉「んー、もうすぐ来ると思うけど――あっ」
少女「す、すみません……遅れました……っ」
会長「君のような可憐な華が、咲き遅れるなんてまた珍しい」
少女「……私、実は動物なんです」
姉「知ってた」
姉「んー、もうすぐ来ると思うけど――あっ」
少女「す、すみません……遅れました……っ」
会長「君のような可憐な華が、咲き遅れるなんてまた珍しい」
少女「……私、実は動物なんです」
姉「知ってた」
23: 2014/06/08(日) 00:36:26 ID:k1wRaZvA
姉「紹介しよう。彼女は2年生の先輩で、うちのマネージャー」
先輩「新入部員の――男、さんですよね。よろしくお願いします」
男「よろしくお願いします」
会長「一通りメンバーも揃ったし、練習しようぜっ!」
姉「練習いいね練習! 行こう!」
先輩「あ、じゃあ私、事務室から鍵とってきますね」タッタッ
先輩「新入部員の――男、さんですよね。よろしくお願いします」
男「よろしくお願いします」
会長「一通りメンバーも揃ったし、練習しようぜっ!」
姉「練習いいね練習! 行こう!」
先輩「あ、じゃあ私、事務室から鍵とってきますね」タッタッ
24: 2014/06/08(日) 00:37:00 ID:k1wRaZvA
男「見知らぬ倉庫の前にて」
男「ここは何の倉庫?」
姉「第二帰宅部の備品倉庫だね」
男「帰宅部なのに、備品とかあるんだ……」
姉「ちなみに、第一帰宅部の備品は多すぎてここにはないよ」
男「? じゃあどこにあるの?」
姉「学校の裏の敷地の南側半分」
男「ここは何の倉庫?」
姉「第二帰宅部の備品倉庫だね」
男「帰宅部なのに、備品とかあるんだ……」
姉「ちなみに、第一帰宅部の備品は多すぎてここにはないよ」
男「? じゃあどこにあるの?」
姉「学校の裏の敷地の南側半分」
25: 2014/06/08(日) 00:38:59 ID:k1wRaZvA
男「マジか……予算って大きいな」
姉「まぁ、予算の壁を覆すのが私達の仕事だよっ!」
会長「それに、現地人の手を借りるのも厭わないッ!!」
姉「いや、それはレギュレーションに抵触するからやめて」
会長「分かってますよ、そんなこと」
男「レギュレーションとかあるんか――」
姉「まぁ、予算の壁を覆すのが私達の仕事だよっ!」
会長「それに、現地人の手を借りるのも厭わないッ!!」
姉「いや、それはレギュレーションに抵触するからやめて」
会長「分かってますよ、そんなこと」
男「レギュレーションとかあるんか――」
26: 2014/06/08(日) 00:39:38 ID:k1wRaZvA
姉「あるね。実はFIAっていう世界の組織が定義してるよ」
男「へぇ……あっ、先輩さんが来た」
先輩「お待たせしました。カギ開けますね」
会長「待ってました! さすが君臨した救世主っ!」
先輩「開きましたっ」
男「おおーっ……!!」
男「へぇ……あっ、先輩さんが来た」
先輩「お待たせしました。カギ開けますね」
会長「待ってました! さすが君臨した救世主っ!」
先輩「開きましたっ」
男「おおーっ……!!」
27: 2014/06/08(日) 00:41:11 ID:k1wRaZvA
男「明らかに帰宅に使わないと思わしき自動車が2台」
男「それと、メモと落書きとノートが一杯……」
男「……って、どれが備品なの?」
会長「あなた、まさか、本気で言っているのですか?」
会長「このクルマですよォォっ!!!」
男「いや、こんなだらけの派手なのを、どうやって?」
男「それと、メモと落書きとノートが一杯……」
男「……って、どれが備品なの?」
会長「あなた、まさか、本気で言っているのですか?」
会長「このクルマですよォォっ!!!」
男「いや、こんなだらけの派手なのを、どうやって?」
28: 2014/06/08(日) 00:42:45 ID:k1wRaZvA
姉「ねぇ、男? 一般的に車ってどうやって使うと思う?」
男「乗る、とか」
姉「そう。じゃあ私達も乗らなきゃ滑稽だよ!!」
男「えっ、じゃあ、帰宅部って何?」
先輩「……あの、っ、実はですね――」
男「乗る、とか」
姉「そう。じゃあ私達も乗らなきゃ滑稽だよ!!」
男「えっ、じゃあ、帰宅部って何?」
先輩「……あの、っ、実はですね――」
29: 2014/06/08(日) 00:43:20 ID:k1wRaZvA
先輩「帰宅部世界大会では、帰宅の早さを競うんです」
先輩「昔は、そうじゃなかったらしいんですけど、今は」
先輩「もっぱら帰宅の早さを競います。そして、車はその道具です」
男「……なるほど、合点がいった」
男「レースかなんかだな?」
先輩「えっ……知らないで入部したんですか……?」
先輩「昔は、そうじゃなかったらしいんですけど、今は」
先輩「もっぱら帰宅の早さを競います。そして、車はその道具です」
男「……なるほど、合点がいった」
男「レースかなんかだな?」
先輩「えっ……知らないで入部したんですか……?」
30: 2014/06/08(日) 00:44:10 ID:k1wRaZvA
男「そうです……けど、何か問題でしょうか」
姉「いや? まぁ問題ないんじゃない? 実践あるのみだよ」
男「そういうもんなのか……でも、免許持ってないぞ?」
姉「生徒手帳は帰宅競技において免許として使えるよ」
男「マジかっ!?」
姉「その代わりといっちゃナンだけど、一切の補填は効かないよ」
姉「いや? まぁ問題ないんじゃない? 実践あるのみだよ」
男「そういうもんなのか……でも、免許持ってないぞ?」
姉「生徒手帳は帰宅競技において免許として使えるよ」
男「マジかっ!?」
姉「その代わりといっちゃナンだけど、一切の補填は効かないよ」
31: 2014/06/08(日) 00:48:04 ID:k1wRaZvA
男「補填?」
会長「まぁ、帰宅は極めると危険ですからねー。氏者も出る」
男「なんか怖いなぁ。それでも保険は降りないのかー」
会長「その代わり、警察にも基本は捕まらない」
姉「あっ、だから生徒手帳は大切に扱ってね!」
男「はーい」
会長「まぁ、帰宅は極めると危険ですからねー。氏者も出る」
男「なんか怖いなぁ。それでも保険は降りないのかー」
会長「その代わり、警察にも基本は捕まらない」
姉「あっ、だから生徒手帳は大切に扱ってね!」
男「はーい」
32: 2014/06/08(日) 00:51:14 ID:k1wRaZvA
姉「練習を始めよう! 私は男の同伴をするよ」
先輩「……よろしくお願いします、会長さん」
会長「そろそろ敬語は不要だよ?」
先輩「……行きましょう」
会長「なんか不憫だなー……もう一年来の付き合いなのに」
先輩「……よろしくお願いします、会長さん」
会長「そろそろ敬語は不要だよ?」
先輩「……行きましょう」
会長「なんか不憫だなー……もう一年来の付き合いなのに」
34: 2014/06/08(日) 00:54:43 ID:k1wRaZvA
姉「さぁ、男はとりあえず助手席に座って」
男「助手席……左側だよね」
姉「あぁ、ごめん。助手席は右側だよ」
男「……本当だ。じゃあ右に座るよ」
姉「じゃあ、シートベルトをやたらしっかり締めてね!」
男「なんかやたらしっかりしてるっ! 着け方が分からん!!」
姉「慣れるしかないね。6点式とか12点式とかが一般的だね」
男「助手席……左側だよね」
姉「あぁ、ごめん。助手席は右側だよ」
男「……本当だ。じゃあ右に座るよ」
姉「じゃあ、シートベルトをやたらしっかり締めてね!」
男「なんかやたらしっかりしてるっ! 着け方が分からん!!」
姉「慣れるしかないね。6点式とか12点式とかが一般的だね」
35: 2014/06/08(日) 00:58:11 ID:k1wRaZvA
男「やっぱり危ないのか?」
姉「やっぱりそこは切っても切れない縁だねー」
姉「森から野生動物! とかもザラだからね。仕方ない」
男「そこは『不運だった』で済ませられちゃうの?」
姉「そうだね。人為的じゃなかったら、大抵は」
男「人為的なのもあるんだね」
姉「やっぱりそこは切っても切れない縁だねー」
姉「森から野生動物! とかもザラだからね。仕方ない」
男「そこは『不運だった』で済ませられちゃうの?」
姉「そうだね。人為的じゃなかったら、大抵は」
男「人為的なのもあるんだね」
36: 2014/06/08(日) 01:00:24 ID:k1wRaZvA
姉「あんまり無いかな」
男「無いんだ」
姉「観客が飛び出して! なんかもあったらしいね」
姉「ちなみにその扱いは『天災』だよ」
男「そんな……」
男「無いんだ」
姉「観客が飛び出して! なんかもあったらしいね」
姉「ちなみにその扱いは『天災』だよ」
男「そんな……」
37: 2014/06/08(日) 01:01:51 ID:k1wRaZvA
男「数分後」
姉「♪」
男「無作為の運転だけど、上手いね」
姉「何をもって上手いとしてるの?」
男「曲がるのがスムーズだし、なにより酔いづらいし」
姉「あははっ! それは嬉しいね! ありがとっ」
姉「本番はきっと酔うから、覚悟しときなよ」
男「……承知しました」
姉「♪」
男「無作為の運転だけど、上手いね」
姉「何をもって上手いとしてるの?」
男「曲がるのがスムーズだし、なにより酔いづらいし」
姉「あははっ! それは嬉しいね! ありがとっ」
姉「本番はきっと酔うから、覚悟しときなよ」
男「……承知しました」
38: 2014/06/08(日) 01:02:56 ID:k1wRaZvA
男「さらに数分後」
姉「オッケー。今日の調子は悪くないね」
男「何をもってのオッケーなんだ?」
姉「特に何も無いけどね。パイロンジムカーナは」
男「……憧れるよ」
姉「やる?」
男「……とりあえず、さわりだけ」
姉「オッケー。今日の調子は悪くないね」
男「何をもってのオッケーなんだ?」
姉「特に何も無いけどね。パイロンジムカーナは」
男「……憧れるよ」
姉「やる?」
男「……とりあえず、さわりだけ」
39: 2014/06/08(日) 01:04:54 ID:k1wRaZvA
姉「さわりだけ教えるね。まず足元を見て」
姉「一番右はアクセル。踏むと加速してくれるよ」
姉「真ん中はブレーキ。こっちは踏むと減速するよ」
姉「最後に、左側はクラッチだけど……説明が難しいなぁ」
姉「次に、男の左にある棒のうち、奥の棒はギアボックス」
姉「これをいじるときには、クラッチを必ず踏んでね」
姉「ふふふ」
姉「一番右はアクセル。踏むと加速してくれるよ」
姉「真ん中はブレーキ。こっちは踏むと減速するよ」
姉「最後に、左側はクラッチだけど……説明が難しいなぁ」
姉「次に、男の左にある棒のうち、奥の棒はギアボックス」
姉「これをいじるときには、クラッチを必ず踏んでね」
姉「ふふふ」
40: 2014/06/08(日) 01:07:49 ID:k1wRaZvA
男「笑う要素あったか?」
姉「いいの。そして、手前にあるのはサイドブレーキね」
姉「曲げるためのブレーキだから、急旋回したいときに引くのよ」
姉「男の奥にあるのは計器類ね。中央にあるのはタコメーター」
姉「要は回転数を表示してるんだけど、赤ゾーンに入ったら」
姉「ギアボックスのギアをひとつ分上げてね。2なら3」
姉「いいの。そして、手前にあるのはサイドブレーキね」
姉「曲げるためのブレーキだから、急旋回したいときに引くのよ」
姉「男の奥にあるのは計器類ね。中央にあるのはタコメーター」
姉「要は回転数を表示してるんだけど、赤ゾーンに入ったら」
姉「ギアボックスのギアをひとつ分上げてね。2なら3」
41: 2014/06/08(日) 01:10:52 ID:k1wRaZvA
姉「ちなみに、この車はかなり回転力が強いわ。注意してね」
姉「右は速度。速さと同義かもね。いろいろ使えるわ」
姉「左はごちゃごちゃしてるけど……まぁ、いいや」
男「えっ」
姉「……まぁ、燃料計とかがあるわ。たぶん」
姉「ごめん。あんまりメカとか詳しくないんだ、えへへ……」
姉「右は速度。速さと同義かもね。いろいろ使えるわ」
姉「左はごちゃごちゃしてるけど……まぁ、いいや」
男「えっ」
姉「……まぁ、燃料計とかがあるわ。たぶん」
姉「ごめん。あんまりメカとか詳しくないんだ、えへへ……」
42: 2014/06/08(日) 01:14:01 ID:k1wRaZvA
男「……まぁ大事なのはきっと実践だね。大丈夫だよ」
姉「男……ありがとっ! 早速行こう!」
姉「数分後のこと」
男「……」フラフラ
姉「まぁ、慣れるまでの辛抱かな――」
姉「男……ありがとっ! 早速行こう!」
姉「数分後のこと」
男「……」フラフラ
姉「まぁ、慣れるまでの辛抱かな――」
45: 2014/06/08(日) 22:43:25 ID:k1wRaZvA
先輩「その数日後」
先輩「姉さんも、皆に続いて、真面目に練習しましょうよ」
姉「ねぇねぇ先輩ちゃん?」
先輩「はい、何でしょうか」
姉「先輩ちゃんって、なんだか猫っぽいよね」
先輩「猫……では、それは何故でしょうか?」
先輩「姉さんも、皆に続いて、真面目に練習しましょうよ」
姉「ねぇねぇ先輩ちゃん?」
先輩「はい、何でしょうか」
姉「先輩ちゃんって、なんだか猫っぽいよね」
先輩「猫……では、それは何故でしょうか?」
46: 2014/06/08(日) 22:47:03 ID:k1wRaZvA
姉「なんとなくだけどさ、ほら、雰囲気?」
先輩「あんまり自覚無いですが……どうなんでしょう」
姉「いや、猫ってよりは子猫って感じかなー」
先輩「子猫……ますます自覚無いです」
姉「ほら! 子猫って……そう! 可愛いじゃないっ!」
先輩「可愛い……って……」///
先輩「あんまり自覚無いですが……どうなんでしょう」
姉「いや、猫ってよりは子猫って感じかなー」
先輩「子猫……ますます自覚無いです」
姉「ほら! 子猫って……そう! 可愛いじゃないっ!」
先輩「可愛い……って……」///
47: 2014/06/08(日) 22:50:31 ID:k1wRaZvA
姉「じゃあ今から先輩ちゃんは子猫ちゃんだね!」
子猫「何でですかぁ……はっ」
姉「さては、自覚し始めたね?」
子猫「そ、そんなこと……さぁ、練習しましょう、練習!」
姉(やっぱり、子猫だなぁ……可愛いなぁ……)
子猫「何でですかぁ……はっ」
姉「さては、自覚し始めたね?」
子猫「そ、そんなこと……さぁ、練習しましょう、練習!」
姉(やっぱり、子猫だなぁ……可愛いなぁ……)
48: 2014/06/08(日) 22:59:18 ID:k1wRaZvA
姉「数十分後、車内にて」
姉「そういえば子猫ちゃん」
子猫「あ、やっぱりその呼び方なんですね……」
姉「そうだよ? 猫足のセッティングが上手いからね」
子猫「あぁ……なるほど。ようやく理解できました」
姉「そういえば子猫ちゃん」
子猫「あ、やっぱりその呼び方なんですね……」
姉「そうだよ? 猫足のセッティングが上手いからね」
子猫「あぁ……なるほど。ようやく理解できました」
49: 2014/06/08(日) 23:01:28 ID:k1wRaZvA
姉「本当に上手いよね……私は硬めのほうが好きだけど」
子猫「いえいえ姉さん。サスペンションは帰宅の"足"です」
子猫「それくらい大事なんですよっ」
姉「そりゃそうだ。足だもの」
子猫「……実は分かってないですよね?」
子猫「私が、しっかりと分からせてやります……!」
子猫「いえいえ姉さん。サスペンションは帰宅の"足"です」
子猫「それくらい大事なんですよっ」
姉「そりゃそうだ。足だもの」
子猫「……実は分かってないですよね?」
子猫「私が、しっかりと分からせてやります……!」
50: 2014/06/08(日) 23:11:17 ID:k1wRaZvA
子猫「先ず、サスペンションとはタイヤと車体をつなぐ部分です」
姉「あーあ、また始まっちゃった……終わらないよこれ」
子猫「もとはといえば姉さんが私のこと、こ、子猫だなんて!」
姉「いいじゃない」
子猫「でも、動機が不純なんですっ!」
姉「でも、子猫ちゃんの猫足セッティングには感謝してるよ?」
姉「あーあ、また始まっちゃった……終わらないよこれ」
子猫「もとはといえば姉さんが私のこと、こ、子猫だなんて!」
姉「いいじゃない」
子猫「でも、動機が不純なんですっ!」
姉「でも、子猫ちゃんの猫足セッティングには感謝してるよ?」
52: 2014/06/09(月) 00:05:40 ID:VTKmeyik
子猫「感謝は実績で示してください! 前年度だって――」
姉「あーはいはい。でもその話はしないって約束したでしょ?」
子猫「……っ、つい、熱くなってしまいました……」
姉「まぁ、実績で示せてないのはみんな同じだけどねぇ」
子猫「……私も、今年こそは――」
姉「その意気だよっ、子猫ちゃんっ!!」
姉「あーはいはい。でもその話はしないって約束したでしょ?」
子猫「……っ、つい、熱くなってしまいました……」
姉「まぁ、実績で示せてないのはみんな同じだけどねぇ」
子猫「……私も、今年こそは――」
姉「その意気だよっ、子猫ちゃんっ!!」
53: 2014/06/09(月) 00:10:57 ID:VTKmeyik
子猫「それで、足回りはおおよそ3つの部品から構成されています」
姉「そっちは続けるんだね」
子猫「アーム、ダンパー、そしてスプリングです」
姉「質問だけど、どこまで制約されてるの?」
子猫「……いえ、特には。でも懸架方式まで変えちゃうのは駄目かと」
姉「へぇ」
姉「そっちは続けるんだね」
子猫「アーム、ダンパー、そしてスプリングです」
姉「質問だけど、どこまで制約されてるの?」
子猫「……いえ、特には。でも懸架方式まで変えちゃうのは駄目かと」
姉「へぇ」
54: 2014/06/09(月) 00:11:34 ID:VTKmeyik
子猫「例えば、この車の前輪はストラット式なのでやや貧弱です」
子猫「ですが、これをより強固なマルチリンク式などに変更は出来ません」
姉「出来ればかなり楽なんだけどねぇ」
子猫「でも、FIAはレギュレーションオタクなので」
姉「酷い言われようだね、そりゃ」
子猫「ですが、そんなFIAルールにも例外はあります」
子猫「ですが、これをより強固なマルチリンク式などに変更は出来ません」
姉「出来ればかなり楽なんだけどねぇ」
子猫「でも、FIAはレギュレーションオタクなので」
姉「酷い言われようだね、そりゃ」
子猫「ですが、そんなFIAルールにも例外はあります」
55: 2014/06/09(月) 00:15:08 ID:VTKmeyik
子猫「確か……リアサスペンションを変更できたっけかな?」
姉「ずいぶん適当だね……私は何も言えないけどさ」
子猫「あの数百ページもある英文を記憶するって――無茶ですよ」
姉「やっぱりレギュレーションオタクで問題ないみたいだね」
子猫「毎年変更されてますし」
姉「ねー」
子猫「ねー」
姉「ずいぶん適当だね……私は何も言えないけどさ」
子猫「あの数百ページもある英文を記憶するって――無茶ですよ」
姉「やっぱりレギュレーションオタクで問題ないみたいだね」
子猫「毎年変更されてますし」
姉「ねー」
子猫「ねー」
56: 2014/06/09(月) 00:18:00 ID:VTKmeyik
子猫「ですが、形式以外は結構自由なわけです」
子猫「そこで、メカニックの腕の見せ所ですっ!」
子猫「タイヤの設置力に大きく影響するのは、3つの要素です」
子猫「空力、タイヤグリップ、足回りです」
子猫「ですが! そのうち空力は変更が効きづらいです!」
子猫「そこで、メカニックの腕の見せ所ですっ!」
子猫「タイヤの設置力に大きく影響するのは、3つの要素です」
子猫「空力、タイヤグリップ、足回りです」
子猫「ですが! そのうち空力は変更が効きづらいです!」
57: 2014/06/09(月) 00:18:35 ID:VTKmeyik
姉「効きそうなのに」
子猫「車体の全長・幅が制限されていますから、大掛かりなのは無理です」
子猫「そしてタイヤ選びですが、それはまた後日話します」
姉「話すんだね」
子猫「こちらもかなり重要な要素ですからね」
子猫「車体の全長・幅が制限されていますから、大掛かりなのは無理です」
子猫「そしてタイヤ選びですが、それはまた後日話します」
姉「話すんだね」
子猫「こちらもかなり重要な要素ですからね」
58: 2014/06/09(月) 00:19:27 ID:VTKmeyik
子猫「つまり、実質はサスペンションで走っているようなもの!」
姉「いや、それは言いすぎでしょ……」
子猫「……こほん、ニキ・ラウダさんは知っていますか?」
姉「馬鹿にしないでよ。元F1ドライバーでしょ?」
子猫「そうです。彼がフェラーリに移籍したときの、こんなエピソードがあります」
姉「いや、それは言いすぎでしょ……」
子猫「……こほん、ニキ・ラウダさんは知っていますか?」
姉「馬鹿にしないでよ。元F1ドライバーでしょ?」
子猫「そうです。彼がフェラーリに移籍したときの、こんなエピソードがあります」
59: 2014/06/09(月) 00:22:10 ID:VTKmeyik
子猫「当時、フェラーリF1ではマシンの批判が禁止されていました」
姉「ってことは、1970年代のことだね」
子猫「その際アレジは、フロントサスペンションに文句をつけました」
子猫「そして、"1秒以上速く走らないとクビ"と宣告されました」
姉「そりゃひどいね」
子猫「ちなみに、ちゃんと1秒以上速く走って一命を取りとめました」
姉「そんなに危険なの!?」
姉「ってことは、1970年代のことだね」
子猫「その際アレジは、フロントサスペンションに文句をつけました」
子猫「そして、"1秒以上速く走らないとクビ"と宣告されました」
姉「そりゃひどいね」
子猫「ちなみに、ちゃんと1秒以上速く走って一命を取りとめました」
姉「そんなに危険なの!?」
60: 2014/06/09(月) 00:24:25 ID:VTKmeyik
子猫「歴史人はいつだって偉大です。偉大だから歴史に残るんです」
子猫「それはさておき、サスペンションはそんな部品です」
子猫「柔らかくすると曲線で粘り、硬くすると直線で安定します」
子猫「あまり柔らかくすると速度が落ちます」
子猫「しかし反面、硬くしすぎると粗い路面で跳ねます」
子猫「それらを極めたバランスこそが、この猫足なのです!!」
子猫「それはさておき、サスペンションはそんな部品です」
子猫「柔らかくすると曲線で粘り、硬くすると直線で安定します」
子猫「あまり柔らかくすると速度が落ちます」
子猫「しかし反面、硬くしすぎると粗い路面で跳ねます」
子猫「それらを極めたバランスこそが、この猫足なのです!!」
61: 2014/06/09(月) 00:27:15 ID:VTKmeyik
子猫「ちなみに、アーム・スプリング・ダンパーは一緒に弄ります」
子猫「その際、車高やキャンバー角・トー角なども弄れます」
子猫「姉さんも、たまには弄ってみたらどうですか?」
姉「……」ウトウト
子猫「もう、知らないです」ボソッ
子猫「姉さん、日が暮れますよ、起きてくださいっ!」
子猫「その際、車高やキャンバー角・トー角なども弄れます」
子猫「姉さんも、たまには弄ってみたらどうですか?」
姉「……」ウトウト
子猫「もう、知らないです」ボソッ
子猫「姉さん、日が暮れますよ、起きてくださいっ!」
67: 2014/06/10(火) 22:49:02 ID:p/Mn79DI
会長「時は少しだけ遡り、放課後が始まって間もない」
会長「姉と猫耳が乗っていない方・カーナンバー#2にて」
会長「さて男くん。昨日、操作方法は教わったんだっけ?」
男「忘れてなければ、大丈夫です」ドアカチャッ
会長「それでもまぁ、助手席に乗るんだね」ドアガチャッ
男「お姉ちゃんの運転は乗りましたけど……まぁ」
会長「イマイチ信用できないって? まぁ信用されるのもキャラじゃない」
会長「姉と猫耳が乗っていない方・カーナンバー#2にて」
会長「さて男くん。昨日、操作方法は教わったんだっけ?」
男「忘れてなければ、大丈夫です」ドアカチャッ
会長「それでもまぁ、助手席に乗るんだね」ドアガチャッ
男「お姉ちゃんの運転は乗りましたけど……まぁ」
会長「イマイチ信用できないって? まぁ信用されるのもキャラじゃない」
68: 2014/06/10(火) 22:53:09 ID:p/Mn79DI
男「ごめんなさい。でもビビリは治せないです」
会長「何事も諦めちゃ駄目さ……まぁ、練習を始めようか」
会長「ペースノートを、読んでくれないか?」
男「……ペースノートって、何でしょうか?」
会長「……」ハァ
男「?」
会長「じゃあ、ちょっと説明を入れつつ、やることにしようかね」
会長「何事も諦めちゃ駄目さ……まぁ、練習を始めようか」
会長「ペースノートを、読んでくれないか?」
男「……ペースノートって、何でしょうか?」
会長「……」ハァ
男「?」
会長「じゃあ、ちょっと説明を入れつつ、やることにしようかね」
69: 2014/06/10(火) 23:01:15 ID:p/Mn79DI
会長「では第一問。われわれ帰宅部は1月から、何をする予定でしょうか?」
(2013・センター試験・改/配点1)
男「……帰宅、です。カーレースの一種だと思われます」
会長「まぁあらかたオッケーだが、センターは4択だから取れないぞ――」
男「センターって、大学入試センター試験ですよね!? そんな問題出ませんよ!」
会長「いや、いいんだ。何でもない。忘れてくれ」
男「そうですか……」ハァ
会長「帰宅やレースってのは慣例名だな。一般的には"ラリー"と呼ばれている」
(2013・センター試験・改/配点1)
男「……帰宅、です。カーレースの一種だと思われます」
会長「まぁあらかたオッケーだが、センターは4択だから取れないぞ――」
男「センターって、大学入試センター試験ですよね!? そんな問題出ませんよ!」
会長「いや、いいんだ。何でもない。忘れてくれ」
男「そうですか……」ハァ
会長「帰宅やレースってのは慣例名だな。一般的には"ラリー"と呼ばれている」
70: 2014/06/10(火) 23:07:12 ID:p/Mn79DI
男「……聞いたことしかないな。聞いたことはあるが」
会長「人はそれを"知らない"って言うんだ。冷酷だよな」
会長「ラリーは英語で書くとR,A,L,L,Y、R-Al-Lyを原型としている。英語は得意か?」
男「まぁ、人並みには。でもリスニングは無理ですね」
会長「将来困るかもだな。まぁ英語は俺に任しとけっ!」
男「あ、ナンパとかしないんで大丈夫ですよ」
会長「ちゃうわ、ドアホ」
会長「人はそれを"知らない"って言うんだ。冷酷だよな」
会長「ラリーは英語で書くとR,A,L,L,Y、R-Al-Lyを原型としている。英語は得意か?」
男「まぁ、人並みには。でもリスニングは無理ですね」
会長「将来困るかもだな。まぁ英語は俺に任しとけっ!」
男「あ、ナンパとかしないんで大丈夫ですよ」
会長「ちゃうわ、ドアホ」
71: 2014/06/10(火) 23:11:25 ID:p/Mn79DI
会長「意味としては"再び此処へ集う"だな。すなわち"帰宅"だ」
男「なるほど、だから帰宅部なんですね」
会長「その通り。でも、昔は今と違ってスピード勝負じゃなかったんだ」
男「では、何勝負だったんですか?」
会長「たぶん、体力勝負だな。それか、機転とか計算力とか」
会長「とにかく、そこまでスピードは重要じゃ無かったんだ」
会長「まぁ、坂は全速力じゃなきゃ登れなかったぐらい昔の話ではある」
男「なるほど、だから帰宅部なんですね」
会長「その通り。でも、昔は今と違ってスピード勝負じゃなかったんだ」
男「では、何勝負だったんですか?」
会長「たぶん、体力勝負だな。それか、機転とか計算力とか」
会長「とにかく、そこまでスピードは重要じゃ無かったんだ」
会長「まぁ、坂は全速力じゃなきゃ登れなかったぐらい昔の話ではある」
72: 2014/06/11(水) 00:03:06 ID:opwexppw
男「だいたい何年前くらいなんですか?」
会長「……記憶が正しければ、だがな。1911年――だいたい100年前だ」
男「マジか……まだ明治時代ですかね」
会長「まぁ、その頃は5日くらいの競技で、競争ではなかったらしい」
会長「でも規定平均時速はあったから、計算機片手にやってたそうな」
男「なかなか複雑ですね」
会長「その"現在のペースをメモするノート"が、今のペースノートの原型だ」
会長「……記憶が正しければ、だがな。1911年――だいたい100年前だ」
男「マジか……まだ明治時代ですかね」
会長「まぁ、その頃は5日くらいの競技で、競争ではなかったらしい」
会長「でも規定平均時速はあったから、計算機片手にやってたそうな」
男「なかなか複雑ですね」
会長「その"現在のペースをメモするノート"が、今のペースノートの原型だ」
73: 2014/06/11(水) 00:07:15 ID:opwexppw
会長「そして、当時のラリーストたちは皆モンテカルロを目指していた」
会長「再び集まる、とはこの事だな」
会長「って、歴史の授業で習った」
男「……授業あるんだ、この学校」
会長「安心してくれ。英語以外まともな授業はないっ!」
会長「ちなみに、英語もリスニングとかが主になるがな――」
会長「ま、ペースノートは現代ではもっぱらルートやコツなどが書いてあるな」
会長「再び集まる、とはこの事だな」
会長「って、歴史の授業で習った」
男「……授業あるんだ、この学校」
会長「安心してくれ。英語以外まともな授業はないっ!」
会長「ちなみに、英語もリスニングとかが主になるがな――」
会長「ま、ペースノートは現代ではもっぱらルートやコツなどが書いてあるな」
74: 2014/06/11(水) 00:13:01 ID:opwexppw
男「それで、どこにあるんですか?」
会長「ああ、目の前の段……ダッシュボードの上にあるぞ」
男「本当だ……綺麗な字で色々書いてあります」
会長「ああ、それを書いたのは後輩ちゃんだ」
男「後輩さん、ですか……綺麗な字ですね」
会長「俺としては"情報が少ねぇ!"って言いたいがなぁ」
男「いや、かなり色々書いてありますけど……っ」
会長「ああ、目の前の段……ダッシュボードの上にあるぞ」
男「本当だ……綺麗な字で色々書いてあります」
会長「ああ、それを書いたのは後輩ちゃんだ」
男「後輩さん、ですか……綺麗な字ですね」
会長「俺としては"情報が少ねぇ!"って言いたいがなぁ」
男「いや、かなり色々書いてありますけど……っ」
75: 2014/06/11(水) 00:21:31 ID:opwexppw
会長「ほれ、これ俺のペースノート。モンテカルロのコルデ・ブロースのだな」
男「……これ、情報多すぎてどれを読めばいいのか分からないです」
会長「そこはドライバーによるな……姉とかには、ほとんど必要ないぞ」
会長「姉には、太陽の向きとコーナーの路面状態だけ読めばいい」
会長「あいつは、そういうとこノリでできちゃうんだよな……憧れるさ」
男「会長さんは、どれくらい必要ですか?」
会長「んー……向きと進入速度、それから留意点くらいかな。俺は」
男「……これ、情報多すぎてどれを読めばいいのか分からないです」
会長「そこはドライバーによるな……姉とかには、ほとんど必要ないぞ」
会長「姉には、太陽の向きとコーナーの路面状態だけ読めばいい」
会長「あいつは、そういうとこノリでできちゃうんだよな……憧れるさ」
男「会長さんは、どれくらい必要ですか?」
会長「んー……向きと進入速度、それから留意点くらいかな。俺は」
76: 2014/06/11(水) 00:28:24 ID:opwexppw
会長「じゃあ、実際に読んでみてくれ。"ホーム"ってやつな」
男「分かりました――100m,右,約90度,40km/s,ショートです!」
会長「敬語はいらんぞ! 逆に怖い!」ブロロロロキィィ
男「はい! 27m,右,30度,20-30km/s,出口重視でs」
会長「もう少し、早口にできるか?」キィッ ブロロロ
男「はいっ! ――」
会長「いやー、実に危なっかしいね……!」
男「分かりました――100m,右,約90度,40km/s,ショートです!」
会長「敬語はいらんぞ! 逆に怖い!」ブロロロロキィィ
男「はい! 27m,右,30度,20-30km/s,出口重視でs」
会長「もう少し、早口にできるか?」キィッ ブロロロ
男「はいっ! ――」
会長「いやー、実に危なっかしいね……!」
77: 2014/06/11(水) 00:32:05 ID:opwexppw
男「ごめんなさい! 俺、まだまだ未熟で――」
会長「第二帰宅部でやる限り、ドライバーとコ・ドライバーは両方できる必要がある」
会長「あ、コ・ドライバーってのは今の男みたいな。別名ナビゲーター」
会長「ルール的にはその両者が入れ替わるのは問題ない」
会長「だが、人数が足りないともしもの時に困るからな」
会長「……せめて、全員が無事に帰ってくるためには、必要なんだよ」
会長「第二帰宅部でやる限り、ドライバーとコ・ドライバーは両方できる必要がある」
会長「あ、コ・ドライバーってのは今の男みたいな。別名ナビゲーター」
会長「ルール的にはその両者が入れ替わるのは問題ない」
会長「だが、人数が足りないともしもの時に困るからな」
会長「……せめて、全員が無事に帰ってくるためには、必要なんだよ」
78: 2014/06/11(水) 00:37:26 ID:opwexppw
男「えっ……?」
会長「――っと、口が滑ったな……まぁ忘れてくれたまえ」
男「? はい、分かりました」
会長「ちなみに、コ・ドライバーはレッキっていうのも行うな」
会長「これはコースの下見のことで、レッキをもとにペースノートを作るわけ」
会長「こうやって色々あるけど、俺はコ・ドライバーの方が好きだな」
男「それはまた、どうしてでしょうか?」
会長「――っと、口が滑ったな……まぁ忘れてくれたまえ」
男「? はい、分かりました」
会長「ちなみに、コ・ドライバーはレッキっていうのも行うな」
会長「これはコースの下見のことで、レッキをもとにペースノートを作るわけ」
会長「こうやって色々あるけど、俺はコ・ドライバーの方が好きだな」
男「それはまた、どうしてでしょうか?」
79: 2014/06/11(水) 00:42:02 ID:opwexppw
会長「そもそも俺、コ・ドライバー志望で第一帰宅部に入ってたんだ」
会長「でもその方針を、俺は心底懼れていたんだ」
会長「一年生のときには、とりあえず修行を積んだね」
会長「おかげでこうして、初対面でナンパできるくらい口が回るようになった」
男「逆じゃなかったんですね」
会長「……さぁな? まぁどうあれ男には興味ないから安心しろ」
男「……」ハァ
会長「でもその方針を、俺は心底懼れていたんだ」
会長「一年生のときには、とりあえず修行を積んだね」
会長「おかげでこうして、初対面でナンパできるくらい口が回るようになった」
男「逆じゃなかったんですね」
会長「……さぁな? まぁどうあれ男には興味ないから安心しろ」
男「……」ハァ
80: 2014/06/11(水) 00:46:55 ID:opwexppw
会長「でも2年になったとき、俺は見ちまったんだよ……」
会長「ドライバー志望の1年生の女の子が、部長に脅されてたんだ」
会長「『お前は、ドライバーには向いてない!』ってな」
男「……っ、それは……どうなんでしょう」
会長「正直、憤りを覚えたね、あの時だけは――」
会長「だが終わりじゃない。その女の子は反抗してたんだ」
会長「『才能によって努力が摘まれるのは、おかしい……ッ!』って」
会長「ドライバー志望の1年生の女の子が、部長に脅されてたんだ」
会長「『お前は、ドライバーには向いてない!』ってな」
男「……っ、それは……どうなんでしょう」
会長「正直、憤りを覚えたね、あの時だけは――」
会長「だが終わりじゃない。その女の子は反抗してたんだ」
会長「『才能によって努力が摘まれるのは、おかしい……ッ!』って」
81: 2014/06/11(水) 00:51:38 ID:opwexppw
会長「そこで一度部長に殴られてからは、泥沼だったね」
会長「それでもその女の子は、諦めず、殴り返さなかった」
会長「そして、最後の一発が彼女に下されたとき、彼女は気絶した」
男「そんな……」
会長「部長はまんざらでも無さそうな面してやがったよ……忘れやしないね」
会長「思わず、衝動的に、俺は退部を宣言してたよ」
会長「その女の子を、保健室に拉致するために、な」
会長「それでもその女の子は、諦めず、殴り返さなかった」
会長「そして、最後の一発が彼女に下されたとき、彼女は気絶した」
男「そんな……」
会長「部長はまんざらでも無さそうな面してやがったよ……忘れやしないね」
会長「思わず、衝動的に、俺は退部を宣言してたよ」
会長「その女の子を、保健室に拉致するために、な」
82: 2014/06/11(水) 00:56:16 ID:opwexppw
会長「……っと、そいつが今の先輩ちゃんってわけだ」
男「」ウルウル
会長「まったく……涙もろいのって、血なのかな……ははは」
会長「泣き止んだか? だったら、ドライバーズシートにつくがよい」
男「あっ、こんどは俺がやるんですね、分かりました」
男「準備オッケーです、会長さん」
会長「この会長の本気、見せてあげようではありませんかっ!!」
男「」ウルウル
会長「まったく……涙もろいのって、血なのかな……ははは」
会長「泣き止んだか? だったら、ドライバーズシートにつくがよい」
男「あっ、こんどは俺がやるんですね、分かりました」
男「準備オッケーです、会長さん」
会長「この会長の本気、見せてあげようではありませんかっ!!」
83: 2014/06/11(水) 01:04:33 ID:opwexppw
会長「――ワンハンドレッド,ミディアムライト,スピード:フォーティー,ショート」ペラペラ
男「凄い……情報が的確に、すばやく認識されてる気がするっ!」
会長「サーティー,タイト・ライト,アクセラレーションッッ」スラスラ
男「なんだか、必要な情報以外がうまくカットされてる気がする――」
会長「そこもウデだね。 フィフティー,ルーズレフト,――」
男「つ、疲れました……よっ……」
会長「……なんと! 姉には及ばないが、現・最速記録だ!!」
男「凄い……情報が的確に、すばやく認識されてる気がするっ!」
会長「サーティー,タイト・ライト,アクセラレーションッッ」スラスラ
男「なんだか、必要な情報以外がうまくカットされてる気がする――」
会長「そこもウデだね。 フィフティー,ルーズレフト,――」
男「つ、疲れました……よっ……」
会長「……なんと! 姉には及ばないが、現・最速記録だ!!」
84: 2014/06/11(水) 01:09:07 ID:opwexppw
男「……嘘だぁ」
会長「ホント。会長は嘘付かないからね」
男「本当だ……お姉ちゃんは3秒以上速いけど……」
会長「まぁ姉は、ターマック(舗装路)の天才だからな。血、かもな」
男「初めてなのに……実感ないです」
会長「でも、やれば、もっと縮むと思う。こっから頑張ろうぜ、男っ!」
男「はいっ!!」
会長「ホント。会長は嘘付かないからね」
男「本当だ……お姉ちゃんは3秒以上速いけど……」
会長「まぁ姉は、ターマック(舗装路)の天才だからな。血、かもな」
男「初めてなのに……実感ないです」
会長「でも、やれば、もっと縮むと思う。こっから頑張ろうぜ、男っ!」
男「はいっ!!」
89: 2014/06/11(水) 20:09:02 ID:opwexppw
姉「練習後」
姉「――ということで彼女の名前は子猫ちゃんになりましたっ!」
会長「確かに猫らしくて繊細だな……賛成するよ」
男「……本人の意思は確認したの?」
姉「したよ! 許可はもらったー」
子猫「……」コクリ
男「じゃあ、今後もよろしくお願いします、子猫さん」
姉「――ということで彼女の名前は子猫ちゃんになりましたっ!」
会長「確かに猫らしくて繊細だな……賛成するよ」
男「……本人の意思は確認したの?」
姉「したよ! 許可はもらったー」
子猫「……」コクリ
男「じゃあ、今後もよろしくお願いします、子猫さん」
90: 2014/06/11(水) 21:06:52 ID:opwexppw
子猫「男さんはサスペンションについて、なにかご存知ですか?」
男「いえ、まったく……」
子猫「……それはそうと、今週末、みんなでどこかに集まりませんか?」
姉「本当!? ご飯おごってもらえるのはうれしいな!」
会長「じゃあ、今後の日程とかもついでに話しましょうか」
姉「それ、週末である必要ある?」
会長「まぁいい機会だしさ。親睦会って事で」
姉「オッケー! じゃあ、今日は解散!」
男「いえ、まったく……」
子猫「……それはそうと、今週末、みんなでどこかに集まりませんか?」
姉「本当!? ご飯おごってもらえるのはうれしいな!」
会長「じゃあ、今後の日程とかもついでに話しましょうか」
姉「それ、週末である必要ある?」
会長「まぁいい機会だしさ。親睦会って事で」
姉「オッケー! じゃあ、今日は解散!」
92: 2014/06/11(水) 22:13:32 ID:opwexppw
強引な姉の行動。
会長の意味深な言葉。
先輩の過去。
そして、それらに翻弄される男は、
必氏に、
されども楽しそうに、
辛く厳しい現実の中を、生きてゆく。
悠久の"帰宅"がいま、始まろうとしていた――
会長の意味深な言葉。
先輩の過去。
そして、それらに翻弄される男は、
必氏に、
されども楽しそうに、
辛く厳しい現実の中を、生きてゆく。
悠久の"帰宅"がいま、始まろうとしていた――
94: 2014/06/11(水) 22:19:11 ID:opwexppw
姉「……」
姉「はい! 体験版なのでここまで!」
姉「本当は、ここからが本番なんだけどね……まだ帰宅してないし」
姉「ってことだから、私は製品版で待ってるからね!」
姉「あんたの購入が決まったから、予約特典先に貰っといたわ」
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」 完
◆GYD5w6gAss先生の次回作にご期待下さい!
姉「はい! 体験版なのでここまで!」
姉「本当は、ここからが本番なんだけどね……まだ帰宅してないし」
姉「ってことだから、私は製品版で待ってるからね!」
姉「あんたの購入が決まったから、予約特典先に貰っといたわ」
姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」 完
◆GYD5w6gAss先生の次回作にご期待下さい!
95: 2014/06/11(水) 22:24:53 ID:opwexppw
また連投しちゃいましたね。ほんと、機械は実に苦手です。
重大なミスに気が付きつつ、書き溜めの重要さに気が付きつつ……略
今度はしっかり、製品版として書き溜めてから上げるのですよ。
それではしばし、そして少しの間、皆さんさようならです。
とりあえず、書いてる身としては、やはりチョコレートでしたよ!
チョコレートでした! ◆GYD5w6gAss
重大なミスに気が付きつつ、書き溜めの重要さに気が付きつつ……略
今度はしっかり、製品版として書き溜めてから上げるのですよ。
それではしばし、そして少しの間、皆さんさようならです。
とりあえず、書いてる身としては、やはりチョコレートでしたよ!
チョコレートでした! ◆GYD5w6gAss
引用元: 姉「帰宅部に入部せよ」男「えっ」
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