1: 2021/01/29(金) 18:12:01.743 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「あ、軍手落ちてる」
女「ホントだ。たまに落ちてるよね」
男「なんで軍手って道路に落ちてるんだろう?」
女「多分、作業員の人が古い軍手ポイ捨てしたり、トラックから軍手が落ちたりしてるんじゃない?」
男「それで説明はつくけど、それにしては遭遇率が高い気がするんだよな」
女「ぽつんと軍手が落ちてるって印象的な光景だから、よく遭遇してると思っちゃうだけよ」
男「ポツンと一軒家ならぬポツンと軍手か」
女「ホントだ。たまに落ちてるよね」
男「なんで軍手って道路に落ちてるんだろう?」
女「多分、作業員の人が古い軍手ポイ捨てしたり、トラックから軍手が落ちたりしてるんじゃない?」
男「それで説明はつくけど、それにしては遭遇率が高い気がするんだよな」
女「ぽつんと軍手が落ちてるって印象的な光景だから、よく遭遇してると思っちゃうだけよ」
男「ポツンと一軒家ならぬポツンと軍手か」
8: 2021/01/29(金) 18:15:29.001 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「ネット上だと道路に軍手が落ちてるのは“軍手を落とすバイトがいるから”とかいうじゃん」
女「あー、駐車場の月極グループとか、刺身にタンポポを乗せるバイトみたいなノリね」
男「そうそう。ひょっとしたら、マジでそういうバイトあるんじゃないか?」
女「あるわけないでしょ、バカねー」
男「ないって根拠もないだろ」
女「そういうのを悪魔の証明っていうんだよ」
男「俺、ちょっとあの軍手拾ってみる。なにか手掛かりがあるかもしれないし」
女「やめなって! ばっちいよ!」
女「あー、駐車場の月極グループとか、刺身にタンポポを乗せるバイトみたいなノリね」
男「そうそう。ひょっとしたら、マジでそういうバイトあるんじゃないか?」
女「あるわけないでしょ、バカねー」
男「ないって根拠もないだろ」
女「そういうのを悪魔の証明っていうんだよ」
男「俺、ちょっとあの軍手拾ってみる。なにか手掛かりがあるかもしれないし」
女「やめなって! ばっちいよ!」
11: 2021/01/29(金) 18:16:30.204
いつから軍手だけだと思っていた、、、?
13: 2021/01/29(金) 18:18:08.186
靴も落ちてるよね
14: 2021/01/29(金) 18:18:15.744 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「……」ヒョイッ
男「なんの変哲もない軍手か……」
男「い゛っ!?」
ボトッ
男「いてて……」
女「大丈夫?」
男「あ、ああ……(なんだ、今の痺れるような痛みは……)」
男「なんの変哲もない軍手か……」
男「い゛っ!?」
ボトッ
男「いてて……」
女「大丈夫?」
男「あ、ああ……(なんだ、今の痺れるような痛みは……)」
18: 2021/01/29(金) 18:21:30.286 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「そういや、軍手ってどうやって作ってるんだろ?」
女「はぁ?」
男「いやだから、軍手をどこの誰がどうやって作ってるか知ってるか?」
女「そんなの……軍手メーカーに決まってるじゃん」
男「本当に?」
女「そこ疑ってどうするの。今すぐスマホで調べてあげるわよ」
男「……」
女「はぁ?」
男「いやだから、軍手をどこの誰がどうやって作ってるか知ってるか?」
女「そんなの……軍手メーカーに決まってるじゃん」
男「本当に?」
女「そこ疑ってどうするの。今すぐスマホで調べてあげるわよ」
男「……」
20: 2021/01/29(金) 18:24:26.638 ID:+gmrbvOb0NIKU
女「ほら、出てきた」
女「軍手工場のホームページに『軍手ができるまで』って工程が載ってるよ」
男「いや……そんなのいくらでも捏造できる」
女「はい?」
男「本当にその通りに軍手を作ってるとは限らないじゃないか!」
女「企業がウソつく意味が分からないんだけど」
男「とにかく、俺は自分の目で見なきゃ気が済まない。軍手工場に行ってみよう!」
女「軍手工場のホームページに『軍手ができるまで』って工程が載ってるよ」
男「いや……そんなのいくらでも捏造できる」
女「はい?」
男「本当にその通りに軍手を作ってるとは限らないじゃないか!」
女「企業がウソつく意味が分からないんだけど」
男「とにかく、俺は自分の目で見なきゃ気が済まない。軍手工場に行ってみよう!」
25: 2021/01/29(金) 18:27:23.435 ID:+gmrbvOb0NIKU
<軍手工場>
工場長「これはこれは、ようこそいらっしゃいました」
男「こちらの工場では、良質な軍手を作られてるそうですね?」
工場長「はい、質・量ともに国内でも有数と自負しております」
男「ぜひ俺たちに、軍手が出来るところを見学させてもらえませんか?」
工場長「かまいませんよ。あちらに軍手製作の工程を説明したパネルがありますので……」
男「いや、そういうのじゃなく直接作ってるところを見たいんです」
工場長「……」
工場長「これはこれは、ようこそいらっしゃいました」
男「こちらの工場では、良質な軍手を作られてるそうですね?」
工場長「はい、質・量ともに国内でも有数と自負しております」
男「ぜひ俺たちに、軍手が出来るところを見学させてもらえませんか?」
工場長「かまいませんよ。あちらに軍手製作の工程を説明したパネルがありますので……」
男「いや、そういうのじゃなく直接作ってるところを見たいんです」
工場長「……」
26: 2021/01/29(金) 18:30:08.533 ID:+gmrbvOb0NIKU
工場長「それは……ダメです」
男「なぜですか」
工場長「社外秘の情報を漏らすことに繋がりますから」
男「別に材料だとか細かいところはどうでもいいですよ。作ってるところを見たいんです」
工場長「ダメです」
男「俺は他社のスパイなんかじゃありません。なんなら身分証明しましょうか?」
工場長「証明されてもダメです」
男「なんでですか!」
男「なぜですか」
工場長「社外秘の情報を漏らすことに繋がりますから」
男「別に材料だとか細かいところはどうでもいいですよ。作ってるところを見たいんです」
工場長「ダメです」
男「俺は他社のスパイなんかじゃありません。なんなら身分証明しましょうか?」
工場長「証明されてもダメです」
男「なんでですか!」
27: 2021/01/29(金) 18:33:19.911 ID:+gmrbvOb0NIKU
工場長「しつこいですね……ダメといったらダメなんですっ!」
男「……!」
女「もういいじゃない。ね、帰ろうよ」
男「何隠してるんですか。教えて下さいよ」
工場長「お引き取り下さいっ!」
男「分かりました……すみませんでした」
女「ありがとうございました! ほら、行こっ!」
男「……!」
女「もういいじゃない。ね、帰ろうよ」
男「何隠してるんですか。教えて下さいよ」
工場長「お引き取り下さいっ!」
男「分かりました……すみませんでした」
女「ありがとうございました! ほら、行こっ!」
28: 2021/01/29(金) 18:36:17.263 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「……」
男「お前も見たろ。あの態度はどう考えてもおかしいよ」
女「うーん、たしかにちょっと異常だったけど……」
女「でもちょっと見られただけでも真似されちゃうような工程なのかもしれないし……」
女「諦めようよ。今日はもう帰ろう」
男「ああ……分かった」
男「お前も見たろ。あの態度はどう考えてもおかしいよ」
女「うーん、たしかにちょっと異常だったけど……」
女「でもちょっと見られただけでも真似されちゃうような工程なのかもしれないし……」
女「諦めようよ。今日はもう帰ろう」
男「ああ……分かった」
31: 2021/01/29(金) 18:39:42.299 ID:+gmrbvOb0NIKU
男は一人、先ほどの軍手の場所に戻る。
男「……」
男(あの軍手を拾った時の痛み……まるで“噛まれた”ような感じだった)
男(きっとあの軍手には何かある!)
男(よし……今日はここに張り込んで、あの軍手を見張ってやるぞ!)
男(さっそくカ口リーメイトで腹ごしらえ……)モグッ
男「……」
男(あの軍手を拾った時の痛み……まるで“噛まれた”ような感じだった)
男(きっとあの軍手には何かある!)
男(よし……今日はここに張り込んで、あの軍手を見張ってやるぞ!)
男(さっそくカ口リーメイトで腹ごしらえ……)モグッ
33: 2021/01/29(金) 18:42:21.807 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「……」
男「……」
男「……」
男「……」
男(もう数時間は見張ってるけど、特に何も起こらないな)
男(考えすぎだったか……やっぱり帰るか――)
男「!?」
男「……」
男「……」
男「……」
男(もう数時間は見張ってるけど、特に何も起こらないな)
男(考えすぎだったか……やっぱり帰るか――)
男「!?」
35: 2021/01/29(金) 18:45:23.211 ID:+gmrbvOb0NIKU
軍手「……」モゾ…
男(軍手が……動いてる!?)
軍手「……」モゾモゾ…
男(今、風は吹いてない。間違いない、あの軍手は自分の力で動いてる!)
軍手「……」モゾモゾ…
男(人や車がいると、動かない性質なのかもしれない……)
男(かなりゆっくりめのスピードだが、絶対最後までついてってやるぞ!)
男(軍手が……動いてる!?)
軍手「……」モゾモゾ…
男(今、風は吹いてない。間違いない、あの軍手は自分の力で動いてる!)
軍手「……」モゾモゾ…
男(人や車がいると、動かない性質なのかもしれない……)
男(かなりゆっくりめのスピードだが、絶対最後までついてってやるぞ!)
36: 2021/01/29(金) 18:47:49.519 ID:+gmrbvOb0NIKU
軍手「……」モゾモゾ…
モゾモゾ… モゾモゾ…
男「……」
男(あの軍手が向かってるのは……さっきの軍手工場だ!)
男(やっぱりあの工場は何かを隠していたんだ! 真相を突き止めてやる!)
モゾモゾ… モゾモゾ…
男「……」
男(あの軍手が向かってるのは……さっきの軍手工場だ!)
男(やっぱりあの工場は何かを隠していたんだ! 真相を突き止めてやる!)
37: 2021/01/29(金) 18:51:05.389 ID:+gmrbvOb0NIKU
<軍手工場>
工場長「おお、よしよし。戻ってきたか」ナデナデ
軍手「……」モゾモゾ
工場長「さあこっちにおいで」
軍手「……」モゾモゾ
男(軍手を動物でも扱うように……。いったい何する気だ!?)コソッ
工場長「おお、よしよし。戻ってきたか」ナデナデ
軍手「……」モゾモゾ
工場長「さあこっちにおいで」
軍手「……」モゾモゾ
男(軍手を動物でも扱うように……。いったい何する気だ!?)コソッ
38: 2021/01/29(金) 18:54:20.819 ID:+gmrbvOb0NIKU
工場長「さあ、思う存分産んでくれ」
軍手「……」プリッ
プリッ プリッ プリッ プリッ プリッ … …
男「!?」
男(軍手が……軍手を産んでる!? これはどういうことなんだ!?)
警備員「何をしている」
男「!」ハッ
軍手「……」プリッ
プリッ プリッ プリッ プリッ プリッ … …
男「!?」
男(軍手が……軍手を産んでる!? これはどういうことなんだ!?)
警備員「何をしている」
男「!」ハッ
39: 2021/01/29(金) 18:57:46.832 ID:+gmrbvOb0NIKU
警備員「工場長、侵入者がいました」
男「うう……」
工場長「あなたは昼間の……」
男「す、すみません!」
男「俺、どうしても気になって……道路に落ちてる軍手を見張ってたら、勝手に動き出して……」
警備員「どうしましょう?」
工場長「……」
工場長「ここまで軍手に興味を持ってくれる人などそういませんからね」
工場長「いいでしょう、あなたには全てを教えましょう」
男「うう……」
工場長「あなたは昼間の……」
男「す、すみません!」
男「俺、どうしても気になって……道路に落ちてる軍手を見張ってたら、勝手に動き出して……」
警備員「どうしましょう?」
工場長「……」
工場長「ここまで軍手に興味を持ってくれる人などそういませんからね」
工場長「いいでしょう、あなたには全てを教えましょう」
40: 2021/01/29(金) 19:00:17.418 ID:+gmrbvOb0NIKU
工場長「まず最初に……軍手は生き物なんです」
男「へ?」
工場長「蜘蛛の糸を人の手で再現するのは非常に難しい、という話をご存知ですか?」
男「聞いたことあります。あの細さと強度を兼ね備えた糸はなかなか再現できないとか……」
工場長「軍手もまさにああいう代物なのです」
工場長「あの伸縮性、あの丈夫さ、あの軽量……21世紀現在未だ軍手を人工的に作れた企業はありません」
男「ホントですか……!」
男「へ?」
工場長「蜘蛛の糸を人の手で再現するのは非常に難しい、という話をご存知ですか?」
男「聞いたことあります。あの細さと強度を兼ね備えた糸はなかなか再現できないとか……」
工場長「軍手もまさにああいう代物なのです」
工場長「あの伸縮性、あの丈夫さ、あの軽量……21世紀現在未だ軍手を人工的に作れた企業はありません」
男「ホントですか……!」
43: 2021/01/29(金) 19:03:38.179 ID:+gmrbvOb0NIKU
工場長「しかし、軍手を“養殖”する術は確立されたのです」
男「どうやって? 水槽の中で飼うとか? あ、まさか――」
工場長「そう、道路に放置することで、軍手は道路と“交尾”し、商品となる軍手を産むのです」
工場長「軍手同士で交わらせると、軍手は“生きた軍手”を産むのですが……これは商品になりません」
工場長「ところが道路と交尾した軍手は、“軍手の抜け殻”を産み、これはすぐ商品として出荷できるのです」
工場長「ニワトリの無精卵のようなもの、といえば分かりやすいでしょうか」
男「はー……」
男(交尾してたのか……それを邪魔したら噛みつかれてもしょうがないな)
工場長「この工場は、道路に放置して戻ってきた軍手が産んだ軍手を、梱包・出荷するための施設なのです」
男「まるで鮭みたいですね」
男「どうやって? 水槽の中で飼うとか? あ、まさか――」
工場長「そう、道路に放置することで、軍手は道路と“交尾”し、商品となる軍手を産むのです」
工場長「軍手同士で交わらせると、軍手は“生きた軍手”を産むのですが……これは商品になりません」
工場長「ところが道路と交尾した軍手は、“軍手の抜け殻”を産み、これはすぐ商品として出荷できるのです」
工場長「ニワトリの無精卵のようなもの、といえば分かりやすいでしょうか」
男「はー……」
男(交尾してたのか……それを邪魔したら噛みつかれてもしょうがないな)
工場長「この工場は、道路に放置して戻ってきた軍手が産んだ軍手を、梱包・出荷するための施設なのです」
男「まるで鮭みたいですね」
45: 2021/01/29(金) 19:06:32.272 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「まとめると、道路に落ちてる軍手は生き物で、交尾の真っ最中であり」
男「日頃、店で売られてる軍手はその軍手が産んだ抜け殻的存在であるということですか」
工場長「おっしゃる通りです」
男「しかし、なぜその辺の道路に放置するんです?」
男「例えば工場の敷地内の道路に放置した方が色々と都合がいいんじゃ……」
工場長「それが、そうした道路ですと、軍手が交尾しなかったり、あるいは質の悪い軍手が産まれてしまうんです」
工場長「この辺りのメカニズムはまだまだ謎が多く、解明されておりません」
男(フグの卵巣のぬか漬けで毒が抜ける仕組みが未だに謎って話を思い出すな……)
男「日頃、店で売られてる軍手はその軍手が産んだ抜け殻的存在であるということですか」
工場長「おっしゃる通りです」
男「しかし、なぜその辺の道路に放置するんです?」
男「例えば工場の敷地内の道路に放置した方が色々と都合がいいんじゃ……」
工場長「それが、そうした道路ですと、軍手が交尾しなかったり、あるいは質の悪い軍手が産まれてしまうんです」
工場長「この辺りのメカニズムはまだまだ謎が多く、解明されておりません」
男(フグの卵巣のぬか漬けで毒が抜ける仕組みが未だに謎って話を思い出すな……)
47: 2021/01/29(金) 19:09:23.994 ID:+gmrbvOb0NIKU
男「ありがとうございました。知りたいことを全て知ることができました」
工場長「それで……お願いなのですが、くれぐれもこの事は……」
男「分かってます。誰にも喋りませんよ。喋っても誰も信じないと思いますし」
工場長「ありがとうございます」
工場長「軍手が生き物だなんて知られたら、世間のショックも大きいでしょうから」
男「これからも軍手作り、頑張って下さい!」
工場長「はい、今後とも我が社の軍手をよろしくお願いします」
工場長「それで……お願いなのですが、くれぐれもこの事は……」
男「分かってます。誰にも喋りませんよ。喋っても誰も信じないと思いますし」
工場長「ありがとうございます」
工場長「軍手が生き物だなんて知られたら、世間のショックも大きいでしょうから」
男「これからも軍手作り、頑張って下さい!」
工場長「はい、今後とも我が社の軍手をよろしくお願いします」
49: 2021/01/29(金) 19:12:17.140 ID:+gmrbvOb0NIKU
……
女「あ、あそこに軍手落ちてる」
男「ふーん」
女「あれ? 前まで興味津津だったのにどうしたの?」
男「別に……もう興味なくなったってだけさ」
男「……」
女「やだ、どうしたの? 温かい目で見守るみたいな感じで軍手を見つめちゃって」
男(頑張っていい軍手を産めよ……)
― 終 ―
女「あ、あそこに軍手落ちてる」
男「ふーん」
女「あれ? 前まで興味津津だったのにどうしたの?」
男「別に……もう興味なくなったってだけさ」
男「……」
女「やだ、どうしたの? 温かい目で見守るみたいな感じで軍手を見つめちゃって」
男(頑張っていい軍手を産めよ……)
― 終 ―
50: 2021/01/29(金) 19:15:51.863
イイハナシダナー
51: 2021/01/29(金) 19:18:46.226
軍手見る目が変わりそう
乙
乙
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります