1: 2013/03/05(火) 00:21:28.89 ID:2cVFbVwW0
???「鹿目まどか。あなたは、自分の人生が貴いと思う? 家族や友達を、大切にしてる?」

まどか「わ、私は・・大切、だよ。家族も、友達のみんなも。大好きで、とっても大事な人達だよ」

???「本当に?」

まどか「本当だよ。嘘なわけないよ」

???「そう。もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね。
 さもなければ、全てを失うことになる」

まどか「え?」

???「あなたは、鹿目まどかのままでいればいい。今までどおり、これからも」

 https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1362410488

2: 2013/03/05(火) 00:26:46.87 ID:2cVFbVwW0
―夕方 街中―

右京「おや、 『今夜は真っ直ぐ家に帰る』と、昼間言っていませんでしたか?」

カイト「あー、悦子の仕事でトラブルがあったみたいで、飯作る必要がなくなっちゃったんですよね」

右京「そうでしたか。キャビンアテンダントの仕事も大変なのでしょう」

   ~~~

カイト「あれ? 杉下さん、花の里はこっちですよ」

右京「……」

カイト「杉下さーん」

右京「静かにしてくれませんか。聞こえません」

カイト「聞こえない・・って、何が?」

右京「聞こえませんか? 『助けて、まどか』と訴える声が」

4: 2013/03/05(火) 00:33:58.29 ID:2cVFbVwW0
カイト「助けて? いや、全然聞こえませんけど。ていうか『まどか』って誰?」

右京「君の耳も案外大した事はありませんねぇ」

カイト「空耳じゃないんですか? だって杉下さん以外、誰も反応してませんよ」

右京「・・確かに。見て見ぬ振りをしているというわけでもなさそうです」

カイト「ね。きっと気のせいですよ……って何処行くんですか」

右京「決まっているじゃありませんか。『助けて』と言っている以上、警察官が放っておくわけにはいきません」

カイト「だからそれは気のせいって」

右京「ああ、君は無理についてこなくても構いませんよ。僕の気のせいかもしれないのですからね」

カイト「・・いや、暇ですし行きますよ」

5: 2013/03/05(火) 00:37:49.54 ID:2cVFbVwW0
―某所―

???「そいつから離れて」

まどか「ダ、ダメだよ! ひどいことしないで!」

???「あなたには関係無い」

まどか「だってこの子、私を呼んでた・・聞こえたんだもん! 『助けて』って」


   ブシュウウウウウウウウウウッ!!


まどか「さやかちゃん!」

さやか「まどか、こっち!」

6: 2013/03/05(火) 00:42:42.11 ID:2cVFbVwW0
右京「……声が途絶えました」

カイト「じゃあ早く出ましょう。立入禁止の看板踏み越えちゃってますし、見つかったら面倒な」


   ……タパタ


カイト「ん?」

   パタパタパタパタッ

カイト「足音? ・・あっ」

さやか「だ、誰!?」

まどか「!」ビクッ

右京「僕達は警察の者です。落ち着いてください」

さやか「け・・刑事さん? 刑事さんがどうしてここに?」

カイト「それはこっちの台詞だな。ここ、立入禁止の筈だよ?」

まどか「あの、それは、この子が……」

右京「もしや、貴女が腕に抱いている“それ”が原因ですか?」

カイト「それ? 杉下さん、また何言ってんですか?」

8: 2013/03/05(火) 00:49:51.05 ID:2cVFbVwW0
右京「ですから、ピンクの髪の彼女が抱いている“あれ”ですよ」

カイト「・・あの、まさか、今度は幻覚ですか?」

右京「! 君、あれが見えないのですか?」

カイト「見えませんよ。しいて言うなら『あの子何で腕組みしてんだろう?』ですね」

まどか「この子、見えないんですか? そんな・・ちゃんと抱きかかえてる感触あるのに……」

さやか「ちょっと・・マジで何なのよこれ……」

カイト「え? もしかして、見えてないの俺だけ?」


   「♪Das sind mir unbekannte Blumen.」


カイト「今・・何か、歌声が聞こえませんでした?」

右京「聞こえました。おそらくドイツ語でしょう」

   「♪Ja, sie sind mir auch unbekannt.」

まどか「やだっ、何かいる!」

アントニー「♪♪♪」ゾロゾロゾロゾロ……

カイト「何だこいつら!?」

右京「いつの間にか風景まで歪に……まるで写真を切り貼りして作ったコラージュ作品の様です」

9: 2013/03/05(火) 00:55:24.38 ID:2cVFbVwW0
アントニー「♪Schneiden wir sie ab.」

右京「この生命体が歌声の主ですか」

カイト「さっきから何歌ってんだよクソッ!」

右京「『この花々は私には分からない花々だ。
    そうだ、あの花々は私にも分からない物だ。
    じゃあ、切ってしまおう』と言っています」

さやか「分かるの!? てか何でそんなに冷静なのよ!」

アントニー「♪Die Rosen schenken wir unserer Konigin.」

まどか「い、今のは何て言ったんですか!?」

右京「『切って、女王にこの薔薇を捧げよう』」

カイト「あの・・薔薇なんて見当たりませんけど……」

右京「・・“彼ら”にとって得体の知れない僕達を指して『薔薇』と言っているのでしょう」

カイト「その流れでいくと・・“薔薇を切って捧げよう”っていうのは」

右京「『女王』とやらに、僕らの首を差し出す気なのでしょうね」

さやか「何よそれ・・一体何が、どうなってるよ……悪い夢なら覚めてよ!! 何なのよもうっ!!」


???「大丈夫。今から片付けちゃうから」

10: 2013/03/05(火) 01:00:35.45 ID:2cVFbVwW0
さやか「す、すごい・・全滅させた……」

???「・・とりあえず、一安心かしら」

右京「景色が元に戻りましたね」

???「・・魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい」

まどか「えっ? ・・あ」

さやか「転校生!」

転校生「……」

???「あら、あなた達の知り合い?」

まどか「同級生の・・暁美ほむらちゃん……」

???「暁美さん・・今回は、あなたに譲ってあげる」

ほむら「私が用があるのは」

???「見逃してあげるって言ってるの。お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

ほむら「……」スゥッ……

さやか「消えた……」ホッ

???「それじゃあ早速キュゥべえの手当てに移りましょうか」

11: 2013/03/05(火) 01:06:48.03 ID:2cVFbVwW0
QB「ありがとうマミ、助かったよ」

マミ「お礼はこの子たちに。私は通りかかっただけだから」

QB「どうもありがとう! 僕の名前はキュゥべえ」

まどか「あなたが、私を呼んだの?」

QB「そうだよ、鹿目まどか。それと美樹さやか」

さやか「何で、あたし達の名前を?」

QB「僕、君達にお願いがあって来たんだ」

まどか「お、お願い?」


QB「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」 


まどか「えっ」

さやか「えっ」

右京「はいぃっ?」

カイト(やべぇ付いていけねぇ・・何が見えてんだよこの人達……)

12: 2013/03/05(火) 01:11:49.40 ID:2cVFbVwW0
―マミ宅―

カイト「……ぬいぐるみ?」

QB「一応生き物だよ」

カイト「うわ喋った!?」

QB「せっかく君にも見えるようにしてあげたのに」

マミ「驚くのも無理ありません。それにしても、大人で見える方がいたことに驚きです」

右京「どうやら僕は、大変珍しいケースの様ですね」

QB「成人男性が僕を認識するなんてイレギュラーだよ。普通は魔法少女の素質のある少女にしか見えないんだ」

右京「キュゥべえと言いましたか・・不思議な生き物ですねぇ」

カイト(あれ? 何か、この前の幽霊騒動と同じくらい目が輝いてねぇ?)

右京「僕にも、魔法少女について詳しく教えていただけないでしょうか」

カイト(やっぱり首つっこんだ……)

16: 2013/03/05(火) 01:17:04.00 ID:2cVFbVwW0
さやか「魔女って何なの? 魔法少女とは違うの?」

QB「“願い”から生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は“呪い”から生まれた存在なんだ。
   魔法少女が“希望”を振りまくように、魔女は“絶望”を蒔き散らす」

QB「しかも、その姿は普通の人間には見えないからタチが悪い。
   不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ・・そういう災いの種を世界にもたらしているんだ」

マミ「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ」

右京「不審氏の陰に、そのようなものの存在があったとは」

カイト「にわかには信じがたいですけど・・というか、警察としては信じたくても信じられませんよ」

QB「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さない。だから普通の人間は気付かないんだ」

右京「結界? それは、先程のコラージュ作品のような空間のことでしょうか」

QB「そうだよ。あれに飲み込まれたら、普通は生きて帰れない。君達は本当に運が良かった」

まどか「マミさんは、そんな怖いものと戦っているんですか?」

マミ「そう、命懸けよ。だからあなた達も、願いを叶えるかどうかは慎重に選んだ方がいい」

18: 2013/03/05(火) 01:22:39.47 ID:2cVFbVwW0
右京「ひとつ、確認したいのですが」

マミ「何ですか?」

右京「その『あなた達』の中には、僕も含まれますか?」

マミ「えっ?」

カイト「……杉下さん、まさか、“魔法少女になりたい”って思ってます?」

右京「“キュゥべえが見える事”が素質の現れならば、僕にも素質があるという事ですから、念の為確認を」

カイト「杉下さん“少女”じゃないでしょ」

右京「だから『念の為』と前置きしたではありませんか」

QB「右京に素質があるのは紛れも無い事実だ。それも、ハッキリ言って規格外の素質を持っている」

マミ「キュゥべえの言う通り・・契約したなら、私を含めて大抵の魔法少女は足元にも及ばないでしょう」

QB「僕からまどかへのテレパシーをキャッチしたのは、強大な力の片鱗なのかもしれないね」

QB「けれど成人男性との契約は前例が無いし、魔法少女の責務を仕事の片手間にこなせるとは思えない」

カイト「あ、それについては問題なさすぎる。俺達、暇を持て余してますもんね」

右京「ええ。特命係は暇ですから」

19: 2013/03/05(火) 01:31:32.82 ID:2cVFbVwW0
さやか「さっきから気になってたんですけど・・“特命係”って何ですか? 聞いたことない」

右京「“頼まれれば何でもする”、それが特命係ですよ」

カイト「別名『警視庁の陸の孤島』、『人材の墓場』・・この人の下に付いた部下は悉く辞めるって噂なんだよ」

さやか「墓場って……じゃあ、甲斐さんも辞めちゃうの?」

カイト「俺は今のとこ辞める気無いかな。俺の前に特命にいたっていう二人も、長いこと勤めてたらしいし」

右京「前任の神戸君は3年ほど、その前の亀山君は10年近くいましたねぇ」

さやか「10年!? 全然『人材の墓場』じゃないじゃん」

カイト「まぁ、要は慣れだよ。よかったら今度遊びにおいでよ。きっと暇だから」

右京「君、いつの間に古参ぶるようになったのですか」

21: 2013/03/05(火) 01:36:20.46 ID:2cVFbVwW0
右京「失礼、話が脱線してしまいましたね。魔法少女について、もっと教えてくださいますか?」

マミ「魔法少女については大体お話ししましたし・・後は、実際にその目で見てもらう方がいいかと思います」

右京「巴さんの魔女退治に同行してもよい、ということでしょうか」

マミ「はい。鹿目さんと美樹さんも、魔女との戦いを目で見て確かめてみればいいわ。
   その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの」

カイト「まどかちゃん達ならともかく、俺達が付いて行っちゃって大丈夫?」

マミ「もちろん無理にとは言いません。ですが一応、杉下さんも素質を持つ人間ですから、知る分には構わないかと」

右京「カイト君。君、さり気なく『俺達』と言っていますが、付いてくる気ですね」

カイト「そりゃ行きますよ。だって気になるじゃないですか」

右京「幽霊にあれだけ怯えていた君がですか」

カイト「幽霊と魔女は違うでしょ。実体があるんなら殴ったりも出来るし、大丈夫ですよ」

マミ「あの、決して魔女を甘く見ないでくださいね。使い魔ですら普通の人には危険なんです」

カイト「大丈夫大丈夫。ホントに手を出したりはしないから」

マミ「そうですか? ならいいんですか……」

22: 2013/03/05(火) 01:40:40.09 ID:2cVFbVwW0
右京「では連絡手段として、僕の携帯番号を教えますね。巴さんの番号も教えていただけますか?」

マミ「はい。えっと、赤外線で送っていいですか?」

右京「構いませんよ」

さやか「あっ、あたしもマミさんのメルアド知りたい! 教えてもらえます?」

マミ「! もちろんよ。・・じゃあ、鹿目さんのアドレスも、聞いていい?」

まどか「はい!」

マミ(後輩とアドレス交換なんて、初めて……嬉しいな)

23: 2013/03/05(火) 01:47:13.53 ID:2cVFbVwW0
右京「ああ、鹿目さんにひとつ、伺いたいことがあるのですが」

まどか「はい、何ですか?」

右京「貴女の同級生で、魔法少女の暁美ほむらさんとは、どの様な方なのでしょう」

まどか「ほむらちゃんは心臓の病気で、ずっと学校をお休みしてたらしいんですけど、
    今日から私とさやかちゃんのクラスに入ったんです」

まどか「さっき、私がキュゥべえに呼ばれてあそこに行ったら・・
    ほむらちゃん、キュゥべえにひどいことをしようとしてたみたいなんです」

カイト「何があったの?」

まどか「・・ピストルで、キュゥべえを撃とうとしてたんです」

カイト「ピストルだって?」

まどか「やめてって言っても聞いてくれなくて・・
    一緒にいたさやかちゃんが消火器を見つけて、その煙で目隠しをしてくれて、その隙に逃げたんです」

右京「その直後に僕達と出会ったというわけですね」

さやか「あいつ、学校でもまどかに変なこと言ったんだよ。訳わかんない」

右京「差し支えなければ、どの様な事を言われたのか教えてくださいますか?」

まどか「えぇと・・“自分の人生が貴くて、家族や友達が大事だと思う?”とか、
    “今と違う自分になろうと思わないで、じゃないと全てを失うことになる”とかって、言われました」

26: 2013/03/05(火) 01:53:51.61 ID:2cVFbVwW0
右京「まるで、鹿目さんの未来が見えているかのようですねぇ」

カイト「編入初日にそれって・・その子、中二病とかいうやつじゃないよね?」

さやか「そう思いますよね! 変なこと言ってキャラ立てすぎだって、あたしも思ったんです。でも……」

マミ「少なくとも、キャラ立ての為のパフォーマンスなんかじゃないでしょうね。
   そんな理由で魔法少女がキュゥべえを襲うなんて考えられない」

まどか「ほむらちゃんはどうして、キュゥべえを襲ったりなんかしたんだろう」

QB「おそらく、新しい魔法少女の誕生を阻止しようとしたんじゃないかな」

さやか「え、何で? 同じ敵と戦うんなら、仲間が増えた方がいいんじゃないの?」

マミ「それがむしろ、競争になることの方が多いのよね。魔女を倒せば、それなりの見返りがあるから。
   だから時と場合によっては手柄の取り合いになって、ぶつかることもあるのよ」

カイト「シビアな面があるんだな」

さやか「つまりアイツは、キュゥべえがまどかに声かけるって最初から目星を付けてて、
    それで朝からあんなに絡んできたってわけ?」

マミ「多分、そういうことでしょうね」

右京「……」

27: 2013/03/05(火) 01:58:22.62 ID:2cVFbVwW0
―翌日 魔法少女体験コース一日目―

マミ「基本的に、魔女探しは足頼みよ。こうしてソウルジェムが捉える魔女の気配を辿っていくわけ」

カイト「その、ソウルジェムだっけ、さっきより光が強くなってない?」

マミ「魔女が発する魔力の波動が強くなっている証拠です。昨日の魔女が、きっと近くにいます」

右京「魔力で魔女を識別する事ができるのですか?」

マミ「魔力にも微妙な個体差があるんです」

右京「では、魔力から相手の力量を推し量るといった事も可能でしょうか?」

マミ「大体は。けれど魔法少女も魔女も、どんな能力を持っているか分かりませんから、それだけで断定はできません」

まどか「能力?」

QB「魔法少女は願いの内容によって、それぞれ固有の特殊能力を得るんだ。
   “病気を治したい”と願えば治癒能力を、“人に話を聞いて欲しい”と願えば、相手を惑わす幻覚能力って具合にね」

まどか「すごいなぁ。じゃあ、マミさんも特別な能力があるんですか?」

マミ「・・私の場合は、リボンかしら」

さやか「リボンですか? 何かかわいい」

QB「見た目はね。だけどそれは、マミが“命を繋ぎ止めたい”と強く願ったことの現われさ」

29: 2013/03/05(火) 02:04:57.42 ID:2cVFbVwW0
まどか「えっ・・命?」

マミ「・・昔、私と、私の両親が乗っていた車が事故を起こしてね。
   『私、氏んじゃうのかな』って思った時に、キュゥべえが目の前に現れたの」

右京(この歳で一人暮らしだったのは、そういう事情があったのですね)

さやか「あっ・・ごめんなさい、あたし、のん気に『かわいい』だなんて」

マミ「美樹さんは悪くないわ。悪いのはキュゥべえよ。言わなくたっていいのに喋っちゃうだなんて」

QB「詳しく説明した方がいいかと思ったんだけど、余計なお世話みたいだったね」

マミ「キュゥべえはそういうところでデリカシーに・・」

マミ「! 魔女の気配が更に強くなった・・間違いない、ここにいるわ」

30: 2013/03/05(火) 02:09:49.17 ID:2cVFbVwW0
カイト「廃ビルか。確かに何か出そうな雰囲気……えっ?」

さやか「ひ、人が!? まさか飛び降り」

女「……」フラッ

まどか「きゃっ!?」

マミ「任せて!」バッ!

   シュルルルル……ガシッ!!

さやか「やった! マミさんナイスキャッチ!」

マミ「・・魔女の口づけ。やっぱりね」

右京「魔女の口づけ?」

マミ「彼女の首筋を見てください。紋章のような物があるのが分かりますか?
   魔女に目をつけられた人間に刻まれ、その人を内側から蝕む、呪いの印です」

まどか「この人、大丈夫なんですか?」

マミ「気絶からさめない限りは大丈夫よ。早く先へ進んで、魔女を倒さないと」

31: 2013/03/05(火) 02:14:27.20 ID:2cVFbVwW0
―魔女ゲルトルートの結界 最深部―

カイト「あれが・・魔女? 想像してたのと、かすりもしないんだけど……」

QB「魔女というのはあくまで呼び名さ。魔法少女と対の存在だから、呼び名も似ているだけだ」

さやか「うわ、グロっ……」

まどか「あんなのと戦うんですか……?」

マミ「大丈夫。負けるもんですか」

   ~~~

マミ「惜しかったわね……
   ティロ・フィナーレ!!」

32: 2013/03/05(火) 02:23:47.90 ID:2cVFbVwW0
まどか「結界が消えた……あれ? 何か落ちてきた」

マミ「これはグリーフシード。魔女の卵よ」

さやか「た、卵? めちゃ危険なシロモノじゃないですか」

マミ「この状態なら危険は無いわ。これこそが、魔法少女にとっての見返りよ」

右京「これが見返りですか。一体、どの様にして使うのでしょう」

マミ「私のソウルジェム、昨日より少し濁ってますよね? そこに、こうして」

   カチリ……スゥゥゥッ

さやか「あっ、ソウルジェムがきれいになった」

マミ「これで消耗した私の魔力も元通り。グリーフシードはたまにしか手に入らない希少品だから、大事に使わないと」

マミ「あと一回は使えるはずだから・・あなたにあげるわ。暁美ほむらさん」

まどか「あっ」

ほむら「……それはあなたの獲物よ。あなただけの物にすればいい」

カイト「いつの間にこんな近くに……」

34: 2013/03/05(火) 02:29:36.15 ID:2cVFbVwW0
ほむら「あなた達、誰? たしか昨日もいたわね」

右京「警視庁特命係の杉下と申します」

カイト「同じく、甲斐だ」

ほむら「警察? 杉下に、甲斐……大の男二人が、どうして巴マミ達と行動を共にするのかしら」

右京「どうやら僕にも“魔法少女の素質”というのがあるらしいので、いち関係者として社会見学を」

ほむら「たしかに、尋常じゃない大きさの素質・・甲斐さんからは何も感じないけれど、どうして彼と一緒に?」

カイト「成り行きだよ」

ほむら「そう。けれど命が惜しければ、社会見学気分で首を突っ込むのはやめなさい」

カイト「でしゃばった挙句に俺達の首が飛んじゃったりしてね」

ほむら「ふざけないで」

カイト「俺、そうやって上から目線で話す奴は信用できないんだよ」

ほむら「上から目線? あなた達の身を案じて警告してるだけよ。
    魔法少女も、魔女も、甘く見ないで。あなた達もよ、鹿目まどか、美樹さやか」

右京「『身を案じて』ですか……それが、あなたが鹿目さんを“見守る”理由ですか?」

ほむら「!?」

35: 2013/03/05(火) 02:35:05.88 ID:2cVFbVwW0
さやか「見守る? アイツはキュゥべえを襲った挙句、このグリーフシードを横取りしようとしたんですよ?」

右京「彼女にグリーフシードを盗る意思は無かった筈です。現に先程『巴さんの獲物』と言っていました」

マミ「私は、彼女の強がりかと思いましたけれど」

右京「では仮に、彼女がグリーフシードを横取りしようとしていたとしましょう。
    巴さん。あなたは、暁美さんの能力について、どの程度分かりますか?」

マミ「分かることなんて殆どありません。会って間もないし、戦ったこともありませんから」

右京「やはり、巴さんには暁美さんの手の内が分からないということですね。
   それに加え、貴女は僕達の安全に気を配っている」

右京「失礼ながら今の貴女は、暁美さんから見れば、奇襲をかけるにはもってこいの状態です。
   僕達を傷つけるなり人質に取るなりして、グリーフシードを奪取すればいい。
   僕達のことなどどうでもいいと思っているなら、そうする筈です」

まどか「じゃあ・・ほむらちゃんは、私達のことを嫌ってるわけじゃないんだね?」

ほむら「……そう思うなら、そう思えばいい。どうせ私が何を言っても信じないでしょうから」

右京「“信じてもらえないような事”でもあるのでしょうか? そう言いたげな口振りですねぇ」

ほむら「!?」ハッ!

ほむら「……調子が狂う人だわ」クルッ

   スタスタスタ……

さやか「ちょっと、逃げる気!?」

まどか「・・行っちゃった」

36: 2013/03/05(火) 02:40:31.55 ID:2cVFbVwW0
カイト「立ち去る間際のあの子・・明らかに動揺してましたね」

マミ「まさか本当に、何かを知っているのかしら・・でも、一体何を……」

右京「流石にそこまでは見当もつきません」

カイト「じゃあそれは置いておくとして・・杉下さん、どうしてあの子は“見守ってる”んだと思ったんです?」

右京「昨日の暁美さんの言動です。巴さんに『魔女を仕留めたいなら追え』と言われた彼女は、こう言いかけました」

 ―私が用があるのは―

右京「この言い返しは、相手の指摘が的外れだった時に用いられる場合が多い。
   とすると、彼女は魔女に興味は無かった。用があったとすればキュゥべえか、鹿目さんのどちらかでしょう」

まどか「私?」

右京「“自分の人生が貴いか”、“今と違う自分になろうと思うな。全てを失うことになる”
   ・・貴女は彼女に、そのような事を言われたそうですね」

さやか「それは、まどかがキュゥべえに声かけられるって見越した上で、釘を刺そうとしたからですよ」

右京「そう考える事も出来ますが、キュゥべえの存在すら知らない人間への警告にしては回りくどくないでしょうか。
   現に貴女だって“転校生はキャラ立ての為に変なことを言った”と受け取ったのでしょう?」

さやか「あ・・そりゃあ、そうですけど」

右京「暁美さんの言葉の通り、彼女は鹿目さんの身を案じていると考える方が自然だと、僕は思うのです。
   ただ、“あまり多くを語れない”が故に、こうして付き纏うような格好になってしまった……
   というのはどうでしょう?」

さやか「ちょっと深読みしすぎなんじゃないかなぁ」

右京「・・『どうせ私が何を言っても信じないでしょうから』」

まどか「え?」

右京「暁美さんが去り際に残した言葉ですよ。何とも、意味深ですねぇ」

37: 2013/03/05(火) 02:46:38.10 ID:2cVFbVwW0
―翌日 病院―

伊丹「今日も駄目か」

芹沢「ガイシャが襲われて丸三日・・なかなか意識が戻りませんね」

三浦「ホシもとっ捕まえたし、後はガイシャの目撃証言がありゃあ片が付くんだがな」

芹沢「ま、医者の話だと峠は越えてますし、もう少しですよ」

伊丹「あの坊ちゃんの時みたいに記憶が飛んでなきゃいいけどな」

   ……パタパタパタ

   ドンッ!

さやか「ひゃっ!?」

伊丹(ぐおっ!? 衝撃が、腰に……)

伊丹「お・・おい、ここ病院だぞ。走るんじゃねぇ」

さやか「そ、そうだった・・ごめんなさい」

伊丹「次からは気をつけろよ」

さやか「はいっ」

   テクテクテクテク……

芹沢「お見舞いに来た子ですかね。CDショップの袋持ってましたよ」

伊丹「かもな・・しかし、最近のガキはスゲェ髪色してんだな。今のなんて真っ青だったじゃねぇかよ」

54: 2013/03/06(水) 19:53:56.51 ID:5ktHcIAL0
―夜 魔法少女体験コース二日目―

さやか「いやぁー、やっぱマミさんってカッコいいねぇ!」

マミ「もう、見世物じゃないのよ。危ないことしてるって意識は忘れないでおいてほしいわ」

まどか「あ、グリーフシード、落とさなかったね」

QB「今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね。グリーフシードは持ってないよ」

カイト「へぇ、そういうもんなんだ」

マミ「使い魔だって放っておけません。成長すれば、分裂元と同じ魔女になるんです」

カイト「で、魔女になったらグリーフシードを持つわけか。
    ・・てことは・・使い魔を倒さずにいれば、グリーフシードってもっと簡単に手に入っちゃうんじゃない?」

マミ「・・実際に、あえて使い魔を見逃して成長させる魔法少女はいます」

さやか「でもそんなことしたら、街の人が食べられちゃうじゃん!」

マミ「どこかの誰かより、グリーフシードを優先しているの。それくらいアレは貴重な物だし」

さやか「何それ・・自分の為なら他の人はどうなってもいいなんて……」

マミ「もちろん、魔法少女みんながそうしてるわけじゃないわよ」

さやか「分かってますって。現にマミさんは正義の味方ですもん!」

マミ「……そう言ってもらえると、嬉しいわ」

55: 2013/03/06(水) 19:58:32.17 ID:5ktHcIAL0
マミ「2人とも、何か願いごとは見つかった?」

まどさや「「うーん……」」

マミ「ふふ。でも悩むのはいいことよ。私としても、選択の余地のある子にはキチンと考えた上で決めてほしいもの」

さやか「・・ねぇ、マミさん・・願い事って、自分の為の事柄でなきゃ、ダメなのかな?」

さやか「例えば、例えばの話なんだけどさ・・私なんかより余程困っている人がいて、その人の為に願い事をするのは……」

まどか「それって、上条君のこと?」

右京「上条君?」

まどか「さやかちゃんの幼馴染で、バイオリンがすごく上手な子なんですけど」

さやか「まっ、まどか!? 例え話だって言ってるじゃん!!」

QB「別に契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例も無い訳じゃないし」

マミ「でも、あまり関心できた話じゃないわ。
   他人の願いを叶えるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておかないと」

マミ「美樹さん。あなたは、彼に夢を叶えてほしいの? それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」

さやか「そ、そんな言い方……」

マミ「きつい言い方でごめんね。でも、そこを履き違えたまま先に進んだら、あなたきっと後悔するから」

右京「巴さんの言う通り。手段は同じでも、後者は“してあげた”という思い上がりが絡みますからね」

さやか「……そうだね・・あたしの考えが甘かった。ごめんなさい」

56: 2013/03/06(水) 20:03:09.07 ID:5ktHcIAL0
―まどか宅―

まどか「魔法少女って、ただ“なりたい”ってだけじゃダメなのかな?」

QB「まどかは力そのものに憧れているのかい?」

まどか「いや、そんなんじゃなくって……うん・・そうなのかな。私ってどんくさいし、何の取り柄もないし・・
    けどマミさんは、街の人達の為にあんな危ない戦いを続けてて、とってもすごいなぁって思うの」

まどか「だから、マミさんみたいにカッコよくて、素敵な人になれたら、それだけで十分に幸せなんだけど」

QB「まどかが魔法少女になれば、マミよりずっと強くなれるよ」

まどか「え?」

QB「まどかの素質は歴代の魔法少女の中でトップと言える。
   願い事によっては、とてつもなく大きなソウルジェムを生み出すだろう」

まどか「何言ってるのよもう。嘘でしょ?」

QB「僕は嘘は吐かないよ」

まどか「じゃあ、杉下さんと私だったらどっちがすごいの?」

QB「『どちらが凄いか』なんて、君達にとっては無意味な議論だよ。
   2人の素質があれば、宇宙の法則を捻じ曲げるどころか、宇宙一つの創造から破壊まで出来るかもしれないんだから」

まどか「宇宙? あはは、そんな神様みたいなことできっこないよ」

57: 2013/03/06(水) 20:12:02.10 ID:5ktHcIAL0
―翌日 病院―

さやか「ごめんねまどか。せっかくお見舞いに付き合ってくれたのに、『今日は面会できない』だなんて」

まどか「仕方ないよ。今日は具合が悪かったのかもしれないし」

まどか「……あれっ?」

さやか「ん? どしたの……って、まさかあれ、グリーフシード!?」

QB「まずいよ、孵化しかかってる!」

まどか「大変・・はやくマミさんを呼ばなきゃ」


伊丹「おい、どうした?」

58: 2013/03/06(水) 20:18:49.99 ID:5ktHcIAL0
さやか「へっ!? ・・あ」

伊丹「お前、昨日の……ん? 何だその、壁にめり込んでるモンは」

まどか「さ、触っちゃダメです!!」

芹沢「もしかして、君達がこんな事したんじゃないよね?」

まどか「ちがいます! ちがいますけど、あ、危ない物なんです!!」

三浦「危ない? ちょっと、詳しく話を聞かせてもらえないかな?」

QB「早く逃げないと! もうすぐ結界が出来上がる!!」

さやか「おじさん達とにかく逃げて!!」

芹沢「心配要らないよ。“お兄さん”はこういう者」

   ピシッ

まどか「あっ」

   ゴオオォォォォォッ!!

伊丹「なぁぁぁっ!?!」

さやか「まどか逃げて!!」ドンッ!!

まどか「あっ!?」ドサッ!

   ズズズ……

まどか「い・・嫌・・さやかちゃん……おじさん達も、キュゥべえも、飲み込まれちゃった……」

59: 2013/03/06(水) 20:23:37.22 ID:5ktHcIAL0
―魔女シャルロッテ 結界内―

さやか「……ダメだ。ケータイの電波入んない」

QB「まどかがきっとマミを呼んでくれる。マミならここまで来れば、テレパシーで僕の位置が分かるよ」

芹沢「ねぇ、君……これ、一体どういうこと?」

さやか「ここは魔女の結界の中で・・って言ったら、信じてくれます?」

三浦「魔女? おいおい・・幽霊に続いて今度は魔女かよ」

QB「とにかく物陰に身を隠そう。使い魔に見つかったら厄介だ」

さやか「そうだね。おじさん達もそこに隠れて! ここはヤバイんだから!」

伊丹「・・お前、今、誰と喋ってた? 『そうだね』って言ってただろ……」

さやか「あっそうか、見えてないんだった・・キュゥべえ、甲斐さんの時と同じようにできる?」

QB「造作も無いよ」ババァーン!!

伊芹三「「「うわーっ!?!」」」

ピョートル「!」

60: 2013/03/06(水) 20:28:45.86 ID:5ktHcIAL0
ほむら「孵化前に回収したかったけど、遅かったか」


   ……ギャーギャー!


ほむら「悲鳴?」

   イヤークンナァー!

   ナンスカアレェ!?

   シルカバカ!

   ヒデェコトシヤガル!

ほむら「えっ? 何この大人数」

さやか「あっ! 転校生!? ちょっと、えーと……助けて!!」

ほむら「えぇっ?」

61: 2013/03/06(水) 20:32:54.03 ID:5ktHcIAL0
ほむら「もう騒いだりしないことね。いくらでも集まってくるわよ」

さやか「騒いでたわけじゃ・・い、威嚇してたのよ」

芹沢「先輩、あの黒髪の子が持ってるの・・本物じゃないっすか?」ヒソヒソ

三浦「あの小せぇ化け物どもが弾け飛んだかと思いきや、あの子、いつの間にかチャカ握ってたぞ」ヒソヒソ

伊丹「どうなってんだよここは……」イライラ

ほむら「で、そこの三人は誰? どうしてここに?」

伊丹「・・警視庁捜査一課の伊丹だ」

三浦「三浦だ」

芹沢「芹沢です」

さやか「警視庁!? 杉下さん達とおんなじじゃん」

伊丹「『杉下』だと……?」

芹沢「・・そういやこの子、さっき『甲斐さん』って言ってましたよ」

62: 2013/03/06(水) 20:38:06.83 ID:5ktHcIAL0
三浦「使い魔に、魔法少女に、魔女・・で、キュゥべえってのがこの耳毛が妙に長い狐か」

QB「心外だなぁ」

伊丹「で、どういう訳か警部殿には魔法少女とやらの素質がありすぎて、首を突っ込んだと」

芹沢「どこまでハイスペックになれば気が済むんでしょうね、あの人」

ほむら「信じてくれる?」

芹沢「むしろ信じざるを得ないというか……」

三浦「カイト君はともかく、警部殿が絡んでちゃあなぁ……」

さやか「・・杉下さん、良いイメージ持たれてないっぽいな、これ」

伊丹「特命は面倒な事にしか首突っ込まねぇからな」

63: 2013/03/06(水) 20:44:46.36 ID:5ktHcIAL0
ほむら「キュゥべえが目障りだけど・・今はそうも言ってられないわね。
    私が魔女を倒すから、あなた達は私の傍を離れないで」

さやか「何でアンタが仕切るのよ」

ほむら「この中で魔女と戦えるだけの能力を持っているのは私だけ。私がいなくなれば、あなた達は使い魔の餌食よ」

さやか「いざとなったらあたしが」

ほむら「あなたの力量じゃ、ここの魔女は倒せないわ」

さやか「そんなのやってみなきゃわかんないじゃない」

ほむら「新米の力量なんて、たかが知れてる」

さやか「何だって?」

芹沢「いやいや・・二人共落ち着いて、ね? 今はどう見ても仲間内で争う時じゃないでしょ」

三浦「君の気持ちも分かるが、散り散りになるのは危険だ。ここはひとまず、このお嬢ちゃんの言う通りにしよう」

さやか「……わかったわよ」

64: 2013/03/06(水) 20:49:33.80 ID:5ktHcIAL0
―結界最深部―

ほむら「いたわ。あれがここの魔女よ」

芹沢「え、あれが? ぬいぐるみみたいでかわいいなぁ~」

ほむら「見た目に惑わされないことね」

マミ「・・何をしてるのかしら、暁美さん」

さやか「マミさん! まどか!」

ほむら「使い魔から彼らを守っていただけよ」

マミ「なら、感謝するわ。鹿目さんが言っていたのはこの人達のことね」

ほむら「ここの魔女は厄介よ。今回は私に預けてちょうだい」

マミ「どうして厄介だと断言できるのかしら。その根拠は?」

ほむら「統計よ」

マミ「……」

 ―“あまり多くを語れない”が故に、こうして付き纏うような格好になってしまった……というのはどうでしょう?―


   ジャキンッ!


まどか「ま、マミさん!? 何でほむらちゃんに銃を……!?」

65: 2013/03/06(水) 20:54:22.57 ID:5ktHcIAL0
伊丹「!? お、おいっ! 銃を下ろせ!」

マミ(一瞬たじろいたものの、すぐに身構えた・・この子、相当場数を踏んでるわね)

マミ(・・杉下さんの言葉、もしかしたら当たってるのかもしれないわ……)

マミ「今回はあなたの言う通りにしてみるわ。私は使い魔の相手に回る」

ほむら「・・どうも」

マミ「ただし、彼らを含め、私達に対して少しでも妙な行動を取れば、その時は容赦しないわよ」

ほむら「それでいい・・感謝するわ」

66: 2013/03/06(水) 20:59:40.99 ID:5ktHcIAL0
ほむら「あなた達は下がって。決してそこから出てはダメよ」ジャキンッ

   バン!バン!バン!バン!

伊丹「人形相手にやり過ぎだろ」

ほむら「いいえ。まだまだ」

シャルロッテ「……」ブクゥッ……

   ニュルルンッ!!

マミ「! あれが本体!?」

伊丹「うおぉ!? 何だありゃあ!?」

ほむら「こっちよ」フッ……スタッ

マミ(みんなから魔女を遠ざけてる・・それにしても、あの瞬間移動の様な動きは、一体……)

ほむら「……見つけた。鬼ごっこは、終わりよ」フミッ

シャルロッテ「!?」

   パァァァァァンッ!!

67: 2013/03/06(水) 21:04:46.11 ID:5ktHcIAL0
マミ「……それはあなたの獲物ね。あなたが使って」

ほむら「そうさせてもらうわ。・・まどかも、美樹さやかも、これでわかったでしょう?
    戦いにアクシデントはつきもの。いつも必ずヒロインが勝つアニメの世界とは違う」

ほむら「向こう側で氏ねば、氏体だって残らない。魔法少女って、そういうものよ」

   スタスタ……

まどか「ほむらちゃん……」

マミ「……鹿目さん、美樹さん・・魔法少女体験コース、これで終わりにしましょう」

さやか「えっ、何で急に!?」

マミ「今回の魔女・・私だけだったら、きっと負けてたわ。だって私、油断してたもの」

マミ「先輩としてしっかりしてるつもりが、後輩ができるかもしれないって、期待してた。
   よく考えて決めてほしいって言ったけど、『もうひとりぼっちじゃないんだ』って、浮かれてた」

マミ「こんな状態じゃ、あなた達を危険にさらしているのと同じだわ」

さやか「そんな……ついて行ってたのはあたし達の意思だよ。マミさんは悪くない」

マミ「……杉下さん達には、私から連絡しておくわ」

マミ「短い間だったけれど・・ありがとう」

QB「……」

68: 2013/03/06(水) 21:09:42.46 ID:5ktHcIAL0
―夜 花の里―

右京「そうですか。巴さんからの電話には、そんないきさつがあったのですね」

幸子「とても辛そう……子供の頃に憧れた魔法少女とは、全く違うんですね」

伊丹「こちらの情報は全部出しましたよ。そっちの情報も洗いざらい出して頂きましょうか」

カイト「伊丹さんの口から『魔法少女』って聞かされた時は何事かと思いましたけど、ホント災難でしたね」

芹沢「災難なんてもんじゃないって。こっちは化け物に食われかけたんだぞ」

三浦「しかもあの黒髪の子は、明らかに本物の銃火器を持ってた。何にも知らないままでいられるかよ」

右京「僕達もさして情報を持ってはいませんが、それでよければ全てお話しいたします」

69: 2013/03/06(水) 21:17:22.79 ID:5ktHcIAL0
伊丹「兎にも角にも・・暁美ほむらって奴が一番分からねぇな」

カイト「銃火器は魔法を使って手に入れたんでしょうけど、一体どんな魔法を使ったんすかねぇ」

芹沢「瞬間移動じゃない? 現にあの子、消えたかと思いきや別の所にしれっと現れるを繰り返してたし」

右京「彼女についてあれこれ断定するには情報が少な過ぎます。彼女に直接話を聞ければいいのですが」

幸子「・・マミちゃんって子は、大丈夫なのかしら」

右京「はい?」

幸子「その子、ご両親を亡くして、ずっと一人で過酷な戦いを続けてたんですよね?
   後輩が出来るってささやかな望みすら捨てないといけないなんて、可哀想で・・他人事とは思えません」

右京「明日、彼女のお宅にお邪魔して、様子を見てきます」

70: 2013/03/06(水) 21:23:21.15 ID:5ktHcIAL0
―翌日 見滝原中学校職員室―

右京「早乙女先生ですね? 警視庁特命係の杉下と申します」

カイト「同じく、甲斐です」

和子「早乙女和子です。あの、警視庁の方が、どうして私に……?」

カイト「先生が担任をしているクラスに、暁美ほむらという子がいますよね?」

和子「はい。つい最近クラスに加わった子ですけれど」

右京「最近まで彼女が入院していたというのは本当でしょうか?」

和子「本当ですけれど・・どういった事情で、彼女についてお調べになるんですか?」

右京「我々は現在、ある事件の証拠固めを行っています。
   その関係で、この近辺で入院歴のある方について聞き込みをしているので、こうして伺った次第です」

和子「事件ですか? 一体どんな事件をお調べになっているんです?」ワクワク

右京「申し訳ありません。こちらの職務上、これ以上詳しく話す事は禁じられていますので」

和子「あっ、そうですよね。捜査ってこう、デリケートなものですしね」

右京「なるべく隠密に解決したいので、先生もこの件に関しては他言なさらぬよう、ご協力願います」

71: 2013/03/06(水) 21:36:28.75 ID:5ktHcIAL0
右京「お手数をかけてしまい、申し訳ありませんでした」

和子「いえいえ。あ、この事、暁美さんには話をした方がいいでしょうか?」

右京「いえ、彼女への事情聴取の必要性が生じたら、こちらから彼女の所へ出向きます」

右京「心臓の病気で長期入院してらしたということですし、心労に繋がりそうな事は極力避けたいですからねぇ」

   ~~~

カイト「杉下さん、息をするように嘘つきますよねぇ。『事件の証拠固め』なんて、俺らやってないし」

カイト「『心労に繋がりそうな事は極力避けたい』って気遣うふりして、あれ、先生の口止めでしょ」

右京「ですがお陰で、暁美さんに関する情報をいくつか入手できました」

右京「巴さんが帰宅するまで、まだ時間がありそうですね。どこかで一休みしますか」

90: 2013/03/09(土) 13:23:58.03 ID:eTFBv7Lj0
―病院―

恭介「……さやかは、僕をいじめてるのかい?」

さやか「え?」

恭介「何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?」

さやか「だって、恭介、音楽好きだから」

恭介「もう聴きたくなんかないんだよ! 自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて!」

   バキンッ!! グシャッ!!

さやか「きょ、恭介!? ダメだよ! そんなことしたら手が」

恭介「動かないんだ・・今だって、痛みさえ感じない。
   『もう演奏はあきらめろ』って、先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって」

恭介「奇跡か魔法でもない限り・・僕の手はもう、二度と動かないんだ」

さやか「……あるよ」

恭介「え?」

さやか「奇跡も、魔法も、あるんだよ」

91: 2013/03/09(土) 13:33:48.27 ID:eTFBv7Lj0
芹沢「いやー、ガイシャの意識戻って良かったですねぇ」

伊丹「だな。病院通いもやっと終わりだ」

三浦「これでようやく一件落着だな」

   ガラッ!
   タタタタッ……

三浦「ん? 今の、美樹さやかじゃねぇか?」

伊丹「あのやろ、走るなって言われたの忘れてやがるな。ドアも閉めずに」

芹沢「せ、先輩! 三浦さん! 中の患者さん、腕血まみれっすよ!?」

伊丹「何っ!? おい、何があった!?」

恭介「えっ、あ、あの、これは」

三浦「動かしちゃ駄目だ! おい芹沢、医者呼んで来い!」

恭介「あの、何でもないんで・・僕のせいだし……」

三浦「え?」

恭介「それより、さやかが……」

伊丹「・・三浦さん、後、頼めるか。俺はあのガキを探してくる」

92: 2013/03/09(土) 13:42:53.45 ID:eTFBv7Lj0
―病院屋上―

さやか「本当に、どんな願いでも叶うんだね?」

QB「大丈夫。君の祈りは間違いなく遂げられる。じゃあ、いいんだね?」


伊丹「おいコラ待て!」


さやか「!? あっ、おじさん……」

伊丹「屋上まで来やがって……」ゼーゼー

QB「伊丹刑事だね。どうして君が待ったをかけるんだい?」

伊丹「その契約ってやつは、命懸けなんだろ? 事情は知らねぇが、カッとなってやるもんじゃねぇ」

QB「これはさやか自身の問題だよ。さやかと何の関係も無い君に、そこまで介入する必要は無い筈だ」

伊丹「・・オメェ、ちょっと引っ込んでろ。癪に障る」

QB「君は随分と感情的な人間みたいだね」

伊丹「色んな奴を見てきたけどな、そうして上から物を言う輩に、碌な奴はいねぇんだよ」

QB「・・これじゃあ落ち着けないね。さやか、僕は少しだけ席を外すよ。契約したくなったらいつでも呼んでくれ」

93: 2013/03/09(土) 13:48:42.07 ID:eTFBv7Lj0
さやか「・・伊丹さん……勝手なこと、しないでくれる?」

伊丹「悪かったな。でもな、カッとなってやった事なんて大抵」

さやか「じゃああたしはどうすればいいのよ!!」

伊丹「!?」

さやか「あたしの指なんて、いくら動いてたって何の役にも立たないのに……不公平じゃん!
    恭介の指は、音楽なんてわかんなかったあたしでも感動する演奏ができるんだよ?」

さやか「本当に望みが必要なのは恭介なのに・・恵まれすぎてバカになってるあたしにできることなんて、これしかない」

伊丹「・・あのボウズの腕、治らねぇのか?」

さやか「お医者さんに、もうバイオリンはあきらめろって言われたって……恭介、絶望してた」

さやか「なのに、あたし・・お見舞い行くたびにクラシックのCD持ってってた。
    もう弾けもしない音楽聞かせてたなんて、最低だよね」

94: 2013/03/09(土) 13:55:42.11 ID:eTFBv7Lj0
伊丹「お前、あいつの彼女か?」

さやか「!? ちがっ……ただの幼馴染!」

伊丹「『ただの幼馴染』が、他人の腕を治す為に命を懸けるのか?」

さやか「それは……それより、『他人』なんて薄情な言い方しなくても」

伊丹「他人だろうが。たとえ親子だろうとそうだ。考え方も大事なもんも違う」

伊丹「第一、当事者はあのボウズだろ。辛そうだから背負ってやろうなんて、母親みてぇな事考えるな。
   そんな一方的な感情で動いて、結果的にいろんなもんを失くしちまった奴を、俺は腐るほど見てきた」

さやか「……じゃあ、どうすりゃいいってのよ」

伊丹「とにかく人の話を聞け。聞き込みしなけりゃ見つかるもんも見つからねぇ。捨て身は最終手段だ」

伊丹「あとな、幸せなら思い切り楽しんどけ。幸せなんてな、何にもしなくても案外簡単に無くなるもんなんだぞ?」

95: 2013/03/09(土) 14:04:49.40 ID:eTFBv7Lj0
恭介「あっ・・さやか……」

さやか「……腕、大丈夫?」

恭介「ちょっと切っただけだから・・この人達が、すぐに先生を呼んでくれたし」

さやか「そっか。芹沢さんと、三浦さんだよね・・本当にありがとうございました」

芹沢「いいっていいって」

三浦「上条君から事情は聞いたよ。ほら」

恭介「はい。・・さやか、さっきはごめん。いくら気が滅入ってたとはいえ、せっかく持って来てくれた物を壊すなんて」

さやか「あやまんなくていいよ。あたしこそ・・ごめんね。パニクって飛び出したのもだけど・・
    恭介の気持ちも考えずに、音楽ばっかり聞かせちゃって」

恭介「いいんだ。……やっぱり僕は、音楽が好きだからさ・・もっと、頑張ってみるよ」

さやか「え?」

恭介「今まではバイオリンがあるのが当たり前で、弾けないなら生きてたって仕方ないって思ってたけど・・
   あの事故で命まで失くしてたら、さやかが持って来てくれたレアCDを聞くこともなかったんだよね」

恭介「リハビリも、頑張ってみるよ。奇跡も魔法もあるんだって、証明したいからさ」

97: 2013/03/09(土) 14:14:57.87 ID:eTFBv7Lj0
さやか「……よかった」

   ポロポロポロ……

恭介「さやか!?」

さやか「きょうすげにひどいごどしぢゃって・・ぎょうすけぎずづけじゃったって・・うぅっ……」ホロホロホロ

恭介「ご、ごめん! さやかにそんなに心配させてたなんて、気付かなくって」

さやか「あやばんなっていっだでしょぉ」ポロポロポロ

恭介「ご・・あっ、ええと、どうしよ……」

さやか「どうしよってなによー!」ブワワッ!

芹沢「こういう時は、気が済むまで泣けばいいって。さ、先輩、行きましょう」

伊丹「へ? お、おう」

三浦「後は若い二人で頑張って。リハビリ、挫けるなよ」

恭介「あ、ありがとうございます・・でも、あの、ちょっと……」

   ガララ……ピシャリ

芹沢「・・女の子は泣き出すと何言っても逆効果ですからね」

三浦「同感だ」

伊丹「めんどくせぇな、ホントに」

98: 2013/03/09(土) 14:23:24.22 ID:eTFBv7Lj0
―街中―

右京「おや、鹿目さん」

まどか「あっ、杉下さん、甲斐さん」

カイト「一人で紙袋持ってぼんやりして・・どうしたの?」

まどか「マミさんのことが気になって・・さやかちゃんとお家に遊びに行こうかなとも思ったんですけど」

カイト「さやかちゃんは?」

まどか「上条君のお見舞いの後に追いつくからって言ってたけれど、来ないんです」

右京「待ちかねたので先に手土産の洋菓子を買ってきた、というところですか」

まどか「はい。電話してもつながらないから、きっとまだ病院にいると思うん・・あれ?」

右京「どうしました?」

まどか「仁美ちゃん、どうしてここにいるんだろ。今日はお稽古って言ってたのに」

100: 2013/03/09(土) 14:34:24.87 ID:eTFBv7Lj0
カイト「仁美ちゃんって、あの子? 友達?」

まどか「私とさやかちゃんの友達です。仁美ちゃーん!」

仁美「あら・・鹿目さん、ごきげんよう」

右京「! 鹿目さん、彼女の首筋を見てください」

まどか「え? ……あっ!? これって、あの人と同じ……!」

カイト「首筋が・・何ですって?」

右京「魔女の口づけです。彼女は今、魔女に命を狙われています」

まどか「ねぇ、仁美ちゃん、どこ行こうとしてたの?」

仁美「どこって・・それは、ここよりもずっといい場所、ですわ」

仁美「ああ、そうだ。鹿目さんもぜひご一緒に。他の方々もきっと歓迎してくださいますわ」

101: 2013/03/09(土) 14:40:52.78 ID:eTFBv7Lj0
右京「それは素晴らしい。よければそこまで案内していただけないでしょうか」

まどか「えっ、杉下さん?」

仁美「まぁ、またお友達が増えましたわ。よろこんで案内いたします。どうぞ、こちらへ」

カイト「杉下さん、どういうつもりですか」

右京「彼女は『他の方々も歓迎してくれる』と言いました。
   魔女が狙いをつけているのは一人では無い可能性があります」

右京「彼女達が何処かに引き寄せられているとしたら、僕達で自殺だけでも阻止しなくてはなりません。
   鹿目さん、今すぐ巴さんに電話をかけてください。もし仁美さんに見つかっても、僕が誤魔化します」

まどか「は、はい」

   プルルルル……

マミ『もしもし』

まどか「マミさん、私の友達に魔女の口づけが・・このままじゃ、魔女に殺されちゃいます!」

仁美「あら? 鹿目さんはどなたとお電話を?」

右京「彼女の友達にも声をかけているんですよ。僕達だけで楽しむのはもったいないかと思いましてね」

仁美「みんなで、一緒に……夢のようですわぁ」

102: 2013/03/09(土) 14:47:15.16 ID:eTFBv7Lj0
マミ『・・私でいいの? 鹿目さん』

まどか「えっ?」

マミ『無理してカッコつけて、そのくせすぐに舞い上がっちゃって、怖くても辛くても、一人ぼっちで泣いてばかり』

マミ『こんな頼りない私で・・』

まどか「頼りなくなんかないです!」

まどか「誰かを助ける為にあんな怖いのと戦えるマミさんに、憧れてるんです」

マミ『そんな、憧れるほどのものじゃないわよ、私』

まどか「そんなことないです。マミさんが戦ってる姿を見て、私、なりたいものを見つけられた気がしたんです」

まどか「何のとりえもない私でも、誰かを助ける為に戦えるなら、それはとっても嬉しいなって・・
    まだ魔法少女じゃないけれど、それでも、マミさんのそばでいろいろ教えてほしいんです」

マミ『……まいったなぁ』

まどか「マミさん?」

マミ『今すぐそっちに行くわ。場所を教えてくれる?』

まどか「はいっ!」

103: 2013/03/09(土) 14:54:42.58 ID:eTFBv7Lj0
―廃工場前―

仁美「この中ですわ」

右京「鹿目さん、ここから先は僕達二人で行きます。巴さんが来るまでここで待っていてください」

まどか「そんな、私も行きます」

右京「僕達は巴さんと違って、魔女から貴女を守れない。魔女にこれ以上近づけるわけにはいきません」

仁美「なにをぐずぐずしてらっしゃるの?」

右京「ああ申し訳ない。実は鹿目さんのお友達が遅れて来るようで、
   彼女にはここで彼らを待ってもらおうとお願いしていたのです。
   全員が中に入ってしまっては、後から来る彼らがここに気付かないかもしれませんから」

仁美「そうでしたの? では、私達だけで準備を整えましょう」

まどか「杉下さん、甲斐さん……!」

カイト「大丈夫。こう見えても俺、生き運強い方だからさ」

右京「いいですね。決して僕達の後を追ってはなりませんよ」

104: 2013/03/09(土) 15:07:55.69 ID:eTFBv7Lj0
―工場内―

右京「かなりの人数ですね・・全員に魔女の口づけが認められます」

カイト「!? おいアンタ、そのバケツと薬品をどうするつもりだ!?」

仁美「邪魔をしてはいけません。あれは、素晴らしい世界へ旅立つ為の、神聖な儀式ですのよ」

右京「有毒ガスでの集団自殺……カイト君!」

カイト「分かってますよ!!」ダッ!

   ポイッ!
   ガシャァァァンッ!!

仁美「何てことを……よくも・・よくも……」

   コロセ・・コロセ・・コロセ!!

カイト(全員目がいっちまってる! 後ろは壁だし、逃げ場が)


ダニエル&ジェニファー「♪♪♪」ワラワラワラ


右京「!?」

カイト「か、壁に引き込まれるっ・・何だよコレ……!?」

105: 2013/03/09(土) 15:24:13.20 ID:eTFBv7Lj0
―魔女エリーの結界内―

ダニエル&ジェニファー「♪♪♪」

カイト(こいつらが俺らを引きずり込んだのか!)

エリー「……」フワフワ

カイト(コイツだけ姿が違う・・きっとここの魔女だ)

カイト(杉下さんも完璧に捕まってる……これは流石に、ヤバイよな……)


???「あぁぁぁぁぁっ!!」


   ヒュンヒュンヒュン!!
   ズバババァンッ!!


カイト(!? 誰だ!?)

???「これで、終わりだよっ!」

106: 2013/03/09(土) 15:29:29.00 ID:eTFBv7Lj0
???「大丈夫か、オッサン達」

カイト「お……助かったよ。その格好、君も」

マミ「佐倉さん……!?」

佐倉「ん? 来たのかよ。キュゥべえの野郎、適当なこと言いやがって」

右京「巴さん。お知り合いですか?」

マミ「・・魔法少女の佐倉杏子さん。一時期、二人で魔女退治をしていたことがあるんです」

杏子「このオッサン達、マミの知り合いか? ずいぶん大きなお友達だな」

マミ「佐倉さん。あなたの縄張りは別にあるでしょう。どうしてこの街に?」

杏子「キュゥべえから『マミが戦意を喪失してる』って聞いたんで、縄張りを盗りに来たんだけど、無駄足だったわ」

マミ「キュゥべえがそんなことを……?」

まどか「マミさん! 杉下さ・・えっ? あの、この人は……?」

杏子「何だい、人の顔ジロジロみやがって。アンタこそ誰だよ」

マミ「彼女は私の後輩。そこにいる杉下さんと同じく、魔法少女の素質持ちよ」

杏子「……オッサンが、魔法少女?」

107: 2013/03/09(土) 15:33:52.07 ID:eTFBv7Lj0
杏子「テレパシーを盗聴とか、ンなことアタシでもできないよ」

右京「僕は盗聴する意思などありませんでしたし、この場合は“傍受”の方が正しいかと」

杏子(どう違うんだよ、うぜぇなぁ)

   カワシタヤークソクーワスレーナイヨ♪

まどか「私のケータイだ・・あ、さやかちゃん! もしもし……え? あ、いま一緒だけど……うん」

まどか「マミさん、さやかちゃんが『話したいことがあるから今から会えませんか?』って」

マミ「あら、どうしたのかしら。じゃあ、私の家に来るように伝えてくれる?」

杏子「ふーん、家に上げるお友達がいたとはねぇ」

マミ「・・電話してきた彼女も魔法少女候補生よ」

杏子「へぇー……アタシも久々にマミんちにお邪魔しようかな」

マミ「どういう心境の変化かしら」

杏子「そろそろ晩飯の時間だろ? おごれよ」

杏子(候補生とやらがフヌケの様なら、まどかって奴ともども契約前に潰しとくか)

108: 2013/03/09(土) 15:40:58.00 ID:eTFBv7Lj0
―マミ宅―

さやか「『とにかく人の話を聞け』って言われたし、もう一回マミさんの意見を聞こうかなぁ、と……」

マミ「大変だったわね、美樹さん・・でも、こうして相談に来てくれたのは嬉しいわ」

杏子「・・くっだらねぇー。たった一度の奇跡のチャンスを他人の為に使おうなんて」

さやか「な、何よ……」

杏子「魔法ってのはね、徹頭徹尾自分だけの望みをかなえる為のもんなんだよ。マミはそんなことも教えなかったのか?」

杏子「てかさぁ、アンタ、恭介ってのにほれてんだろ。じゃなきゃそこまでしようと思わないよね」

さやか「ほ・・仮にほれてるとして、それが何だってのよ」

杏子「手足を二度と使えないくらいに潰しちゃえば、ソイツはアンタの思いのままじゃん。
   何ならアタシがやってやろうか?」

118: 2013/03/09(土) 19:20:38.67 ID:eTFBv7Lj0
さやか「ふざけたこと言わないで!!」

右京「佐倉さん。今の発言は聞き捨てなりませんねぇ」

杏子「何、お説教? 言っとくけどアタシは説教には慣れてるよ」

右京「貴女の発言は“他者の身体を脅かす意思がある”と解釈できます。
   そして貴女には、生身の人間を傷付けるには十分過ぎるほどの力がある」

右京「傷害事件を未然に防ぐ為にも、考えを改めてはくれませんか?」

杏子「・・あぁ、そういや警視庁なんとか係って言ってたね。“正義の味方”ってわけだ」

杏子「正義の味方だ人助けだ・・そういうおちゃらけた冗談を魔法少女にあてはめんなよ。
   ボランティア精神で生きていけるほど簡単な世界じゃないんだ」

右京「『おちゃらけた冗談』ですか……」

119: 2013/03/09(土) 19:27:13.54 ID:eTFBv7Lj0
右京「貴女は、殉職というものをご存じですか?」

杏子「何だよ突然・・刑事が氏ぬことだろ?」

右京「特定の業務に従事する職員が職務・業務中の事故が原因で氏亡することを、殉職といいます。
   一般企業の社員から自衛官まで様々な職種で用いられる言葉ではありますが、
   貴女の想像したとおり警察官にも殉職者はいます」

右京「大衆のほんの一部分といえど、命を賭して人を助け、各々の正義に殉じる人々はいるのです。
   僕も様々な事件の真相を追う中で、そのような方々の生き様を見てきました」

杏子「それが何だってんだよ」

右京「貴女が『おちゃらけた冗談』と吐き捨てたものは、時に貴い人命を奪うほど、過酷だという事ですよ」

右京「それを貫くのも、やむなく苦汁を嘗めるのも、並大抵の事ではありません」

右京「自分の為だけに魔法を使うというのが貴女の考えならば、それはそれで結構。・・しかし、」

右京「貴女にどの様な事情があろうとも、他者の信念まで貶めていい権利など、ありはしませんよ!」

120: 2013/03/09(土) 19:31:34.43 ID:eTFBv7Lj0
杏子「……ちっ」

杏子「たしかに言い方は悪かった。けどな、アタシは間違ったこと言ったとは思わない」

杏子「アタシの事情がどうたら言ったね・・こんな人頃しの事情でよけりゃ教えてやるよ」

カイト「人頃し?」

マミ「あれは・・あなたのせいじゃない」

右京「……」

杏子「いいや・・アタシが頃したようなもんだ」

マミ「佐倉さん……」

杏子「・・ちょっとばかり、長い話になる」

121: 2013/03/09(土) 19:36:11.53 ID:eTFBv7Lj0
右京「神に仕える身でありながら、家族を手に掛けた・・
   数年前に世間を騒がせたあの無理心中事件の生き残りが、貴女だったとは」

杏子「あぁ、あの頃は偉そうな面したオバサンやらが、テレビで散々なこと言ってくれてたよ」

杏子「でも、その原因は……アタシの祈りが、家族を壊しちまったんだ」

杏子「他人の都合を知りもせず、勝手な願いごとをしたせいで、結局誰もが不幸になった」

さやか「……」

 ―さやかは、僕をいじめてるのかい? 何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ。嫌がらせのつもりなのか?―

 ―そんな一方的な感情で動いて、結果的にいろんなもんを失くしちまった奴を、俺は腐るほど見てきた―

杏子「その時心に誓ったんだよ。
   もう二度と他人の為に魔法を使ったりしない、この力は、全て自分の為だけに使い切るって」

杏子「自業自得とはいえさ、つくづく、くだらねぇ願いごとしちゃったもんさ」

まどか「・・くだらなくなんかないよ」

さやか「まどか?」

まどか「家族を大事に想うことがくだらないなんて・・そんなのあんまりだよ」

122: 2013/03/09(土) 19:41:41.30 ID:eTFBv7Lj0
杏子「……そりゃあ、幸せな奴だからこそ言える台詞だね」

まどか「う……」

さやか「まどかの言うこと、間違ってないよ」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「でも、アンタの言ってることも間違ってないって思うんだよね、今は」

さやか「大切なものを大切に思うのも・・一方的な感情で動いて傷つけるのも、どっちも経験したばっかだから」

杏子「どっちつかずかよ。ますます魔法少女に向いてないんじゃないの?」

マミ「迷いがあるなら、まずはじっくり考えるべきよ」

右京「・・人生の先輩として、ひとつだけ、よろしいでしょうか?」

杏子「なんだい」

右京「若い貴女方には、未来という未知との遭遇が待っています。
   ひとつの生き方に縛られるには、まだまだ早いと思いますよ?」

124: 2013/03/09(土) 19:45:57.84 ID:eTFBv7Lj0
カイト「有り体な言い方だけど、人生って何が起こるかわからないしね。
    俺が特命に飛ばされたのだって、マジで予想外だったから」チラッ

右京「……」

カイト「俺達でよければいつでも話聞くからさ、一人で抱え込んだりとかはしないでほしい」

右京「佐倉さんも、お暇な時は特命係へどうぞ。僕達はいつでも暇ですから」

右京「ではカイト君、僕達はそろそろお暇しましょう」

カイト「はい。じゃ、またね」

マミ「あ……」

   ガチャ……パタンッ

マミ「……」

杏子「……」

さやか「……」

まどか(みんな黙ってる・・どうしよう……あ)

まどか「あの……」

杏子「・・なんだい?」

まどか「お、お菓子、食べませんか?」つ紙袋

125: 2013/03/09(土) 19:51:27.15 ID:eTFBv7Lj0
さやか「あっ!? それアタシがキープしてたのに!」

杏子「こういうのは早い者勝ちだ」

マミ「まぁまぁ。お菓子なら今度何か作るわ」

まどか(お菓子をきっかけにお話できた・・買って来てよかったぁ)

   カワシタヤークソクーワスレーナイヨ♪

まどか「着信? ……えっ、もうこんな時間!? もしもし・・あ、パパ……」

さやか「まどパパからの帰りなさいコールかぁ」

マミ「美樹さんもそろそろ帰った方がいいわね」

杏子「・・アタシも」

マミ「佐倉さんはまだでしょう?」

杏子「へ?」

マミ「夕飯、まだおごってないわ」

126: 2013/03/09(土) 19:57:28.48 ID:eTFBv7Lj0
マミ「はい、どうぞ」つペペロンチーノ+サラダ

杏子「どういう風の吹き回しだよ」

マミ「おごれと言ったのはあなたじゃない」

杏子「そりゃそうだけど、アタシが言いたいのは、どうしてホントにおごる気になったんだってことだよ」

マミ「……久しぶりに、誰かと夕飯を食べたかったから」

マミ「それと・・さっき、ほんの少しだけだったけど、久々にあなたと普通にお話できたじゃない?」

杏子「なれ合おうってんならお断りだよ」

マミ「……そう。けれど、たまには、いっしょに夕飯を食べない?」

マミ「一人暮らしだとこういう機会じゃないと、野菜とらないのよ。あなたもそうでしょ? 健康の為にも」

杏子「魔法少女が健康とか、アホらし」

マミ「・・そうね……」

杏子「……まぁ、ただ飯もらえるのは悪くないから・・考えとくよ」

マミ「! ・・ええ、いつでもどうぞ」

127: 2013/03/09(土) 20:04:28.78 ID:eTFBv7Lj0
―ほむら宅―

ほむら「どうなっているの? この時間軸は……」

ほむら(廃工場に佐倉杏子の姿まであったから、後をつけて様子を見ていたけれど・・
    さやかと杏子が大きな揉め事を起こすこともなく、巴マミと杏子の関係性が悪化するそぶりもない)

ほむら(杉下に甲斐、そしてあの三人の刑事・・5人ものイレギュラーが発生している。
    なのに、事態の悪化を招くどころか、むしろ良い方へ進んでいる……)

ほむら(……彼らなら、頼っても……)

ほむら(……ダメよ。安易に信頼してはダメだわ。 また悲劇を繰り返すことになりかねない)

ほむら(じきにワルプルギスの夜が来る。戦力面を考えて、やはり杏子には接触すべきね)


???「……」

128: 2013/03/09(土) 20:13:48.29 ID:eTFBv7Lj0
―翌日 病院―

看護士「暁美さんは・・不思議な子、って言ったらいいのかしら」

カイト「不思議、ですか?」

看護士「心臓が弱くて入院生活が長かった所為か、少し前までは内気で、自分に自信の無い子だったんです」

看護士「だけどある日突然、人が変わったように目つきの鋭い子になったんです。
    その日を境に一気に体調も回復して、退院する日には病気の痕跡なんて綺麗に無くなってました」

右京「暁美さんの病気についてですが、回復前の病状はいかほどだったのでしょうか」

看護士「手術も成功して、術後の経過も良好でしたから、いずれは退院できるだろうって状態でした」

カイト「その手術っていうのは、難しいものだったんですか?」

看護士「心臓ですから油断できない箇所でしたけど、手術自体はそこまで難しいものではありませんでしたよ」

右京「『ある日突然』と仰いましたが、その日の前日に何か変わった事はありませんでしたか?」

看護士「いいえ、全く。彼女は病院の外に出てすらいなかったし、だからこそ不思議なんです」

右京「そうですか……」

129: 2013/03/09(土) 20:20:39.99 ID:eTFBv7Lj0
―特命係―

カイト「彼女の急激な回復は、きっと魔法によるものですね」

右京「ある日を境に一気に回復したのは、その『ある日』に契約をし、そこで初めて魔力を得たからでしょう」

右京「しかし、彼女が契約した動機が分かりません。
   せっかく長らえた命を懸けてまで叶えたい願いとは、一体何なのでしょうか」

カイト「“手術が成功しますように”・・ってのは無いか。手術はとっくに終わってて、しかも成功してたんだった」

カイト「分からないといえば、たった一日でいきなり性格が変わったっていうのも気になるな」

角田「よっ、暇か?」

カイト「暇じゃ・・あ、課長。人間の性格って、一日やそこらで変わっちゃうと思います?」

角田「何だよ突然。んー、でも、性格ねぇ……あ!
   うちのかみさんの話なんだけどね、最初の子供産んだ途端、急に俺の扱いが雑になったね!」

角田「女は出産すると体質まで変わっちまうってのは聞いてたけど、性格までとは・・ってビックリしたもんよ」

カイト「出産って……」

角田「まぁそれだけ命懸けなんだろうねぇ。人間、ショッキングな出来事があると人格変わっちゃうから」

カイト「こっちは出産と違って時間なんてかかってないし、参考になんないっすよ」

右京「……いえ、今の会話、とても参考になりました」

130: 2013/03/09(土) 20:26:52.07 ID:eTFBv7Lj0
―夕方 ゲームセンター―

ほむら「佐倉杏子。魔法少女として、あなたに頼みがあるわ」

杏子「何もんだ? 話の内容によっちゃ追っ払うよ」

ほむら「二週間後、この街にワルプルギスの夜が来る」

杏子「! なぜわかる」

ほむら「それは秘密。ともかく、私はソイツさえ倒せたらいい。だからその時だけ手を貸してほしい」

杏子「・・ここの縄張りの主はアタシじゃないんだよねぇ。そっちには話をつけてるのかい?」

ほむら「できるならそっちにも手助けを乞いたいけれど、今度も話を聞いてくれるかどうかわからないわね」

杏子「ふーん・・まぁ、話はゆっくり聞かせてもらうよ」

杏子「食うかい?」つロッキー

131: 2013/03/09(土) 20:31:39.38 ID:eTFBv7Lj0
―某所―

マミ「どうしたの? 『話がある』だなんて」

杏子「さっき、暁美ほむらっていう魔法少女に会った。アンタも会ったことあるんだってな」

マミ「ええ。ろくに話をしたこともないけど」

杏子「ソイツから『二週間後、この街にワルプルギスの夜が来る』って聞かされて、手助けを頼まれた」

マミ「ワルプルギスの夜ですって? そんな情報、どこから手に入れたのかしら」

杏子「アタシも不思議に思って尋ねたら、すました顔して『統計よ』だってさ」

マミ「統計……」

杏子「いまいち信用できないんで、顔見知りだっていうアンタの意見をいちおう聞いとこうかと思って」

マミ(・・やっぱり彼女とは、面と向かって話し合う必要があるわね)

132: 2013/03/09(土) 20:35:40.28 ID:eTFBv7Lj0
マミ「来てくれてありがとう」

ほむら「あなたから呼び出されるとは思わなかったわ。それで、用件は何?」

マミ「佐倉さんから聞いたわ。ワルプルギスの夜がやって来るというのは本当なの?」

ほむら「ええ。動かしようのない未来よ」

マミ「何でそんなことが分かるのかしら? 『統計』以外の具体的な答えを教えてほしいの」

ほむら「……」

マミ「話してくれないと、信じようにも信じられないわ」

ほむら「・・受け止められないに決まってる」ポツリ

マミ「え?」

ほむら「ワルプルギス出現は事実よ。誓ってもいい。そして私の目的は、今いる魔法少女達だけで、奴を倒すこと」

ほむら「それさえ済めば、私はこの街から去るわ。あなたの前にも、もう現れたりしない」

133: 2013/03/09(土) 20:41:03.41 ID:eTFBv7Lj0
―翌日 中学校―

マミ「今日の放課後、杉下さんの所にお邪魔しようかと思っているの。あなた達も一緒に行かない?」

さやか「警視庁に行くってことだよね? 行きます行きます!」

マミ「そこで・・杉下さんや、あなた達にとって、大事なことを話したいの」

まどか「大事なこと、ですか?」

   ~~~

―午後 特命係―

さやか「ここが特命係かぁ」

まどか「さ、さやかちゃん・・入り口のとこから覗いてる人達がいるよ」

カイト「あぁーごめんごめん。直ぐに移動してもらうから」

米沢「失礼します。杉下警、部……」ピタリ

右京「どうされました?」

米沢「暫しお待ちを」グイグイ

カイト「ちょっ、何で俺を部屋の外へ連れ出すんすか」ズルズル

134: 2013/03/09(土) 20:47:48.71 ID:eTFBv7Lj0
米沢「JKだけでなくJCともお知り合いとはどういう事ですか!?」

カイト「じぇーしー?」

米沢「女子中学生の略です。JKに慕われ、CAを恋人に持ち、更にはJCとも交流があるとは・・何なんですか貴方!」

カイト「よく分かんないけど八つ当たりですかコレ」

米沢「合コンでぼっちという憂き目を見た私への当てつけですか!?」

カイト「あ、その……何か、すんません」

米沢「杉下警部と落語談義に興じようかと思っていましたが、もう帰ります。では」

   ~~~

右京「おや、米沢さんは?」

カイト「どうも米沢さんの心の傷を抉っちゃったみたいで・・ぷりぷり怒りながら帰っちゃいました」

右京「はいぃっ?」

カイト(・・ん? そういや米沢さん、何でこの子達が中学生って分かったんだ? 制服姿だから?)

   ~~~

―【ジロジロ見てない】地元のJCをひっそりと愛でるスレ33【見守ってるだけ】―

287 :ギター小僧 ◆boidhkjs1e [sage]:○○/◇◇/××(木)
知り合い(彼女持ちアラサー)がJKのみならずJCとも交流アリと知った・・・
リア充は何歳だろうとリア充なんだって痛感しましたとも

135: 2013/03/09(土) 20:55:23.19 ID:eTFBv7Lj0
右京「さて、巴さん。ご用件というのは?」

マミ「・・二週間後、この街にワルプルギスの夜という魔女が出現します」

カイト「ワルプルギス?」

右京「ワルプルギスの夜。4月30日か5月1日に中欧や北欧で広く行われる行事を指す名称です。
   古代ケルト人は5月1日の前後に魔女たちがサバトを開き跋扈するなどと考えたそうですが、
   同名の魔女が実在しようとは」

マミ「ワルプルギスの夜は他の魔女と違い、結界を持ちません。隠れる必要も無いほどの大きな力を持っているからです。
   今までに数回この世界に現れたそうですが、そのたびに何千人という犠牲が出たそうです」

マミ「昨日、暁美さんがそう教えてくれました」

まどか「ほむらちゃんが?」

マミ「・・私、彼女はこの事を知っていたから、鹿目さん達の契約を阻止しようとしたんじゃないかと思うんです。
   ワルプルギスを相手にするという事は、大災害をその身に受けるのと同じです。氏なない可能性のほうが低い」

マミ「魔法少女になれば、この戦いは避けられない・・
   彼女はこの危険を回避させる為に、キュゥべえの邪魔をしてたんじゃないでしょうか?」

136: 2013/03/09(土) 21:01:29.05 ID:eTFBv7Lj0
さやか「てことは・・アイツは本当に、まどかのことを心配してる?」

右京「しかし、腑に落ちない点があります」

右京「暁美さんは何故、最初から鹿目さんにこの事を伝えなかったのでしょう。
   付き纏うなどと迂遠な行動を取るより、『こういう危険があるから契約はやめておけ』と言えば
   済む話ではありませんか」

マミ「あ・・たしかに、そうだわ」

右京「それと、巴さんすら知らなかったこの情報を、彼女は何処から手に入れたのでしょう」

マミ「彼女は『統計』だとしか答えてくれませんでした」

右京「統計、ですか」

まどか「ほむらちゃん、どうやって調べたんだろう」

さやか「『統計』っていうのは嘘かもしれないでしょ。そんな化け物の話、今まで聞いたこともないのに、
    どうやってデータ集めようってのよ」

マミ「普通の人には無理ね。この魔女も魔法少女にしか見えないもの。
   それでも出現予測なんて、誰にでもできることじゃないわ」

右京「……」

137: 2013/03/09(土) 21:07:38.67 ID:eTFBv7Lj0
右京「・・成る程」

まどか「杉下さん?」

右京「暁美さんについて・・断片的にですが、見えてきました」

138: 2013/03/09(土) 21:16:30.35 ID:eTFBv7Lj0
―夕方 マミ宅―

ほむら「まどかがどうしてもというから来たのだけれど、あなた達までいるとは聞いてないわ」

右京「僕達まで居ると言えば警戒されるかと思いまして」

ほむら「それに、彼女まで」チラリ

杏子「アタシはマミに呼ばれたんだよ。あんたの正体が分かるかもって言われたからさ」

ほむら「私の正体ですって……?」

右京「あくまで僕の想像ですが、聞いてはいただけませんか?」

ほむら「・・あなたに、私の事がわかるはずがない」

カイト「そう思うんなら尚の事この人の話を聞いてったら? 間違った事をまどかちゃん達に吹き込まれない為にもさ」

ほむら「……そんなことされちゃかなわないから、聞くだけ聞いてあげるわ」

150: 2013/03/10(日) 00:55:00.46 ID:3V1rIoH40
右京「暁美さん。貴女について、少し調べさせてもらいました。
   心臓の病気で入院していたという貴女は、内気で、自分に自信の無い女の子だったそうですね」

さやか「自信のないって・・今と真逆じゃない」

右京「それが、ある日を境に人が変わったかの様に目付きが鋭くなり、病気の痕跡すら消え去ってしまったと。
   この突然の変化は、貴女が魔法少女となった事と関係しているのでしょう」

杏子「“心臓がよくなりますように”とでも願って契約すれば、一発で治るしね」

右京「いえ、彼女の願いは病気にまつわる事柄ではなさそうです。
   なぜなら当時の彼女は、無事に心臓の手術を終えた後で、退院を待つだけだったのですから。
   それに、たった一日で性格まで変わってしまった事実にも説明がつきません」

右京「性格は長い時間をかけて形成されるものですから、余程の事がない限りはそうそう変えられるものではありません。
   脳に何らかの障害を負って性格が一変した、という事例もありますが、
   怪我すら魔力で癒せる魔法少女の場合は考えにくいでしょう」

右京「ということは、暁美さんの“精神”に、性格すら変えてしまうほどの事件が起こったはずです」

ほむら「……」

151: 2013/03/10(日) 01:03:23.05 ID:3V1rIoH40
右京「彼女は“ある日”を境に性格が急変した。ということは、その日の前日に何かが起こった」

右京「しかし、その日も彼女はいつもと変わらず病院に居たと、看護士が証言しています。
   もちろん院内で事件など起こりもしていない」

右京「短い時間に何が起こったのか・・と、最初はそう考えていました」

右京「・・“時間”に着目した時、僕は鹿目さんの話を聞いた時のことを思い出しました」

 ―“自分の人生が貴くて、家族や友達が大事だと思う?”とか、
  “今と違う自分になろうと思わないで、じゃないと全てを失うことになる”とかって、言われました―

右京「この話を聞いた僕は、『まるで未来でも見たかのような口振りだ』と思いました」

右京「・・もしも、その直感が事実だとしたら、どうでしょう」

さやか「えっ、それって、つまり?」

右京「暁美さんは、本当に未来を見てきたということです」

ほむら「!」

右京「暁美さん。貴女の魔法少女としての能力とは、“時間を操ること”ではありませんか?」

152: 2013/03/10(日) 01:13:57.57 ID:3V1rIoH40
右京「予知能力かとも思ったのですが、時間そのものを操れると考えた方が、様々な事実の辻褄が合います。
   彼女の持つ銃火器の入手方法も、病院での魔女戦で見せたという瞬間移動の謎にも」

カイト「そっか・・時間を止めて、その隙に物を盗んだり移動したりすれば、誰にも気付かれない」

右京「“時間停止”。絵空事のような能力ですが、魔法少女ならば有り得なくはないはずです」

マミ「・・契約の際に、時間にまつわることを願えば、ありえますね」

右京「おそらくそうでしょう。そして手に入れた能力が時間停止、そして、タイムスリップ能力」

まどか「タイムスリップ……」

さやか「コイツがいっつも冷めた目してるのは・・未来がわかってるからだっての?」

右京「僕はそうではないかと思っています。もちろん、どんな未来なのかまでは分かりませんが」

右京「未来で何らかの“重大な事実”を知った貴女は今、必氏に未来を変えようとしている・・違いますか?」

ほむら(・・何てやつなの……)


QB「驚いたね。魔法も使えない君が、“僕と同じ予想”をしていたなんて」

153: 2013/03/10(日) 01:19:15.61 ID:3V1rIoH40
ほむら「! お前・・気付いていたのね……」

右京「魔法に精通している君と同意見という事は、僕の仮説は真とみて良いのですね?」

QB「間違ってないと思うよ」

QB「時間遡行者、暁美ほむら。君は」


   ババババババッ!!


まどか「ひっ!?」

QB「」コロン……

マミ「キュゥべえ!」

さやか「い、一瞬で穴だらけに……」

ほむら「元はといえば・・お前のせいで……!!」

154: 2013/03/10(日) 01:24:45.90 ID:3V1rIoH40
さやか「いつの間に銃を……」

ほむら「・・さっきの話、聞いていなかったの?」

杏子「認めるんだな、アンタの能力の正体」

ほむら「もう、認めざるをえないじゃない」

マミ「時間を止めて、キュゥべえを撃ったのね……」

まどか「ひ、ひどいよ。何も殺さなくても」

ほむら「こいつ“ら”は頃したって氏にやしない」

カイト「何?」


QB「全く、酷いことをするなぁ」

155: 2013/03/10(日) 01:29:29.46 ID:3V1rIoH40
まどか「キュゥべえ!? 嘘、だってキュゥべえは」

QB「代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね」ムシャムシャキュップイ

杏子「うげ……コイツ、自分の氏体を食ってやがる」

QB「だって勿体無いじゃないか。新たな個体を作るにもエネルギーと物質が要るんだし」

カイト「新たな個体って・・お前、一体何だ?」

ほむら「こいつは“インキュベーター”。奇跡を売って歩いている、宇宙人よ」

マミ「宇宙人ですって?」

右京「インキュベーター・・それが君の本当の名ですか」

QB「僕に個体を識別する為の名前はないよ。それは僕の役割を指す呼称だ」

右京「“孵卵器”が役割とは、一体……」


右京「……っ!?」

156: 2013/03/10(日) 01:35:34.48 ID:3V1rIoH40
カイト「杉下さん? どうしたんですか?」

ほむら(顔色が変わった……まさか、ほんの一瞬で……)

右京「キュゥべえ・・君、何か隠してやいませんか?」

ほむら(! 間違いない・・彼は気付いている……!)

QB「隠しているつもりは無いよ。それに断っておくけど、嘘だって吐かない」

QB「聞かれないから言わないっていうのはあるけどね」

157: 2013/03/10(日) 01:39:47.45 ID:3V1rIoH40
ほむら「インキュベーター・・また蜂の巣になりたくなければ、今すぐこの部屋から去りなさい」

QB「随分と嫌われたものだね」

ほむら「無駄は嫌なんでしょう? ここから立ち去るまで、私はお前を潰し続けるわよ」

QB「やれやれ。浪費は非合理的だから、立ち去る事にするよ。じゃあね」スッ……

マミ「キュゥべえ……」

杏子「ほむら・・アンタの知ってること、全部話してもらおうか」

ほむら「いいわ。ただ・・その前に、杉下と二人で話がしたい」

さやか「どうして杉下さんと?」

ほむら「・・彼がどこまで気づいているのか、確かめたい」

右京「僕は構いませんよ。場所を移しましょうか?」

ほむら「ここでいいわ。まどか達にとっては一瞬で済むから」

158: 2013/03/10(日) 01:44:17.71 ID:3V1rIoH40
   カチッ
   ピタッ!!

右京「!? これは」

ほむら「動かないで。私の手を離れたら、あなたの時間まで止まってしまう」

右京「これが時間停止能力ですか。何とも、恐ろしい」

ほむら「・・あなた、気づいてしまったの? インキュベーターの目的に」

右京「・・あくまで推論です。それに、出来れば当たってほしくないのですが」

ほむら「残念ながら、はずれている気がしないわ」

168: 2013/03/10(日) 11:28:11.25 ID:3V1rIoH40
右京「インキュベーターには、卵を人工的に孵化させる保育器である“孵卵器”という意味があります。
   キュゥべえはこれを『自身の役割を指す呼称』だと言いました」

右京「魔法少女との契約を取り持つ彼の役割が“孵卵器”とは、どういうことか。
   “魔法少女”に、“卵”・・魔法少女にとって最も馴染み深い“アレ”は確か、“魔女の卵”でしたね?」

ほむら「グリーフシード……」

右京「キュゥべえに関係のある卵として、真っ先に思い浮かぶのがそれです。
   ですがそれでは、魔女の卵を孵化させるのがキュゥべえの役割という事になる」

右京「グリーフシード・・“嘆きの種”から生まれ、“絶望”を撒き散らす魔女を生み出して何になるのか。
   魔法少女の敵を生み出し、魔法少女を得る動機としているのかと考えましたが、それはおかしい。
   それではまるで魔法少女そのものを欲している様ではありませんか」

右京「・・ですが、それこそがキュゥべえの目的だとしたら……」

ほむら「……」

右京「そもそも現状でグリーフシードの取り合いが起きている有様だというのに、キュゥべえは鹿目さん達を勧誘しました。
   そこまでして契約を迫るのは、やはり魔法少女そのものを欲しているからではないでしょうか」

169: 2013/03/10(日) 11:41:30.51 ID:3V1rIoH40
右京「孵卵器は“卵”がなければ意味を成しません。
   そして孵化させるからには、キュゥべえにとっても何か得る物がある筈です」

右京「グリーフシード以外に卵となりうる物は何か」

右京「・・僕は、ソウルジェムが卵ではないかと考えました」

ほむら「……」

右京「更に言えば・・孵化したソウルジェムから生まれる副産物が、魔女なのではないでしょうか」

右京「キュゥべえは契約により“卵”となる魔法少女を生み出し、彼女達を魔女にする過程で何かを搾取している。
   或いは、魔女にすることで初めて何かが生み出されるのではないか」

 ―“願い”から生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は“呪い”から生まれた存在なんだ―

 ―魔女というのはあくまで呼び名さ。魔法少女と対の存在だから、呼び名も似ているだけだ―

右京「以前キュゥべえが口にしたこの言葉も、魔法少女と魔女は僕達の想像以上に
   一対かつ不可分の存在という前提があってのことではないでしょうか」

右京「現に先程彼は『聞かれないから言わない』と意味深な発言を残しています」

ほむら「・・あなた、すごいわね。怖いくらい」

右京「ということは」

ほむら「ええ・・真実よ」

170: 2013/03/10(日) 11:47:23.41 ID:3V1rIoH40
ほむら「私は未来で全てを知った。結末を変えたくて何度も同じ一ヶ月をくり返した」

ほむら「・・でも、うまくいかない。誰も未来を信じないし、誰も未来を受け止められない」

ほむら「さっきは『全て話す』なんて言ったけれど・・話したところで結果はみえてる」

右京「ですが、真実が隠されているならば、明るみに出さねばなりません」

ほむら「信じたくないような真実よ? それのせいで、過去に私達は仲間割れをおこしてる。
    特に巴マミ・・彼女はキュゥべえを信頼していたから、また自暴自棄になるかもしれない」

右京「過酷な真実でも、いずれは貴女方の身に降りかかる現実です。目を背け続けるわけにはいきません」

ほむら「……みんながあなたくらい強かったらいいのに」

右京「僕は、強くなどありませんよ」

171: 2013/03/10(日) 11:53:23.42 ID:3V1rIoH40
   カチッ

ほむら「終わったわ」

杏子「・・いつの間にやら時間止めてたな」

右京「実に不思議な体験でしたよ。皆さん、呼吸すら止まっていました」

カイト「あぁそうですか……そんなことより、杉下さんは何に気付いたっていうんです?」

右京「それについては、暁美さんから詳しく話していただきます」

ほむら「・・話を始める前に・・みんなに、約束してほしい」

まどか「約束?」

ほむら「私は全てを話す。それを聞いても・・どうか、自分を見失わないで」

172: 2013/03/10(日) 11:58:04.19 ID:3V1rIoH40
ほむら「……これが、私の身に起きた事と、魔法少女に隠された秘密の全てよ」

さやか「アンタ・・まどかの為に……」

まどか「私のせいで……」

ほむら「あなたのせいじゃない。私は私の願いの為にやっているの。あなたが気に病む必要なんてない」

杏子「キュゥべえの野郎・・だましやがって!」

右京「彼からすれば“知らずとも問題ないから言わなかった”という気持ちなのでしょう」

カイト「どっかのお偉方の屁理屈と一緒かよ」

マミ「……魔法少女は、みんな、魔女になっちゃうの?」

ほむら「!」ビクッ

マミ「魔法少女が魔女になるなら・・みんな氏ぬしかないじゃない!!」

174: 2013/03/10(日) 12:03:14.15 ID:3V1rIoH40
   ガシッ!!

右京「早まった真似はよしなさい!」

マミ「あうっ! す、杉下さん、離して!!」

右京「申し訳ありませんが、少しの間貴女のソウルジェムを没収させてもらいます」

マミ「あっ!」

右京「先程暁美さんと二人で話をした際、彼女が貴女の事を一番に気にかけていましたから、用心していたのですが」

ほむら「助かった……」

マミ「だって・・最後は人を頃してしまう存在になるのよ!? そうなる前に氏ぬしかない!」

カイト「……一人で氏んで、何が変わるっていうんだよ」

右京「カイト君・・」

カイト「氏んだらそこでおしまいだぞ!?」

175: 2013/03/10(日) 12:10:57.62 ID:3V1rIoH40
カイト「悔しくないのかよ。こんな目に合わされてそのまま氏んだら、キュゥべえの一人勝ちだぞ。
    されるがままじゃなくて、精一杯抵抗してやろうって思えよ……」

カイト「そんな風にして、実際氏なれたら・・周りの奴らがどんだけ悲しむか分かってんのか!?」

マミ「!?」ビクッ

右京「カイト君!」

カイト「……すいません・・ごめん。大人気なかった」

右京「激昂するのは君の悪い癖です。ですが・・気持ちは分かります」

右京「巴さん。どうか、命を粗末にする事だけはしないでください。今の貴女は、ひとりぼっちなどではないのです」

さやか「そ、そうですよ! あたしとまどかなんて、マミさん親衛隊って言っても過言じゃないんですから!
    キュゥべえだって、今度あったらぼっこぼこにしときます!」

まどか「マミさんが氏ぬなんて・・そんなのいやです!」

マミ「……」

杏子「・・先輩なら・・どしっと構えてろよ。バカヤロー」

マミ「……ごめんね・・ごめん……」ポロポロ

176: 2013/03/10(日) 12:15:42.71 ID:3V1rIoH40
―夜 花の里―

幸子「酷い話だわ・・人の心を弄んでいるとしか思えない」

右京「巴さんの様に、契約したからこそ今の暮らしがあるという場合もあるだけに、やりきれません」

カイト「こんなふざけたシステムなんてぶっ潰したいけど・・俺じゃ何にも出来ない」

右京「いつもよりペースが速いですね。明日に響きますよ」

カイト「分かってますよ。けど、腹が立って仕方ないんすよ」

幸子「・・そろそろお茶漬けにしますか?」

右京「お願いします」

カイト「もう一本だけ……」

177: 2013/03/10(日) 12:21:20.55 ID:3V1rIoH40
―ほむら宅―

   ピンポーン

ほむら「・・え、まどか……?」

まどか「ご、ごめんね突然」

ほむら「うちの住所、どうやって知ったの?」

まどか「ママから早乙女先生に聞いてもらったの。ママと先生、お友達だから」

ほむら「もう夜よ。家族が心配するわ」

まどか「パパとママには話してから出てきたの。あんまり遅くならないでって言われたけど」

ほむら「……とりあえず、上がってちょうだい」

まどか「……わ・・この写真、もしかして、ワルプルギスの夜?」

ほむら「そうよ」

まどか「ずっと、ここで準備してたのね」

ほむら「・・用件はそれ?」

まどか「ううん。・・本当は、『ありがとう』って言いに来たの」

178: 2013/03/10(日) 12:25:56.18 ID:3V1rIoH40
ほむら「・・何で、あなたがお礼を言うの? これは私が勝手にやってることなのに」

まどか「未来の私のせいで、ほむらちゃんが大変な思いをしてきたんだって聞いたけど・・そう思ったの」

ほむら「……」

まどか「あ・・やっぱり、迷惑だよね。口ばっかりで、やろうともしない私がこんなこと言うなんて」

ほむら「あなたは何もしなくていいの!!」


   ギュッ!


まどか(えっ、は、ハグ!?)

ほむら「・・あなたは、優しすぎるのよ・・いつもいつも他人の心配ばかりして……」

ほむら「何のとりえもなかった私にも優しくて……そんなあなたを、見捨てられるはずない」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「・・気持ち悪かったわよね。ごめんなさい」スッ

ほむら「あなたは何も心配しなくていい。契約さえしなければ、それでいいの」

まどか「……」

180: 2013/03/10(日) 12:33:16.82 ID:3V1rIoH40
―まどか宅―

詢子「おー、おかえりまどか」

和久「おかえり。すぐにまどかの分のご飯温め直すね」

まどか「ありがとうパパ。……ねぇ。パパとママに、聞きたいことがあるんだけど」

詢子「どした?」

まどか「もしもなんだけど・・友達が私の為にがんばってくれてて、
    私には友達を助けてあげられる力があるなら、私はその子を助けるべきだよね?」

詢子「・・それって、いじめとかじゃないだろうね?」

まどか「ちがうよ! ただ、その子がもうがんばらなくてもいいように・・
    私が引き受けられることなら、全部引き受けてあげたいの」

和久「力っていうのがどういうのか分からないけど・・まどかは、その友達を本当に助けたいと思ってるってことだね?」

詢子「そうだとしてもねぇ、助け方にもよるんだよ」

まどか「助け方?」

181: 2013/03/10(日) 12:38:42.62 ID:3V1rIoH40
詢子「まどかの気持ちを否定するわけじゃないよ。いつだって正しくあろうとして頑張ってるからね。
   けど、どこまで引き受けて良いかを見極めるのは難しいんだ」

和久「大事に思うからこそ、たくさん引き受けてあげたくなるって事もあるしね」

詢子「こればっかは“やらないで後悔するよりやって後悔しろ”って言えないなぁ。自分一人の問題じゃないからさ」

和久「僕は、いろんな人に相談してみるのも手だと思う。
   ひょっとしたら、パパ達じゃ思いつかなかった方法が見つかるかもしれない」

まどか「相談かぁ……」

詢子「あ、相談する相手は選びなよ? 世の中には他人の弱味につけ込む悪ーい奴らがいるからね」

和久「まどかの場合は心配要らないよ。まどかの友達はみんな良い子だ」

まどか「ありがとう、パパ、ママ」

182: 2013/03/10(日) 12:42:49.11 ID:3V1rIoH40
―翌朝 特命係―

角田「おはよ。あれ、お坊ちゃんはまだ来てないの?」

右京「二日酔いで起き上がれないそうなので、休むよう勧めました」

角田「二日酔いで休みなんてまだまだ青いねぇ。けど、俺も二日酔いってことで休みたいよ」

右京「そこのテーブルに突っ伏して、よくお休みになっているではありませんか」

   プルルルル(内線着信)

角田「はい特命係。……あぁはい、了解」

角田「特命係にお客さん。この前の女の子だってよ」

   ~~~

右京「鹿目さん。今日は学校はお休みですか?」

まどか「い、いいえ……」

右京「おやおや・・ですが貴女の事です。そうまでして一人で来られるのには、何か理由があるのですね?」

まどか「・・私・・魔法少女になろうかと、思うんです」

右京「はい?」

183: 2013/03/10(日) 12:47:12.39 ID:3V1rIoH40
まどか「前にキュゥべえが、私にはすごい素質があるって言ったんです。
    杉下さんの素質も合わせれば、宇宙の法則をねじ曲げるどころか、宇宙をつくることも壊すこともできるって」

右京「宇宙創造とは、尋常ではありませんね」

まどか「あの時は冗談だと思ったけど、もし本当なら、私でもほむらちゃんを・・
    ううん、みんなを救えるかもしれないんです」

右京「巴さん達を、普通の女の子に戻してあげたいのですか?」

まどか「・・それも考えました。でも、私は、できるだけたくさんの子を救いたいんです」

まどか「今日まで魔女と戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、私は泣かせたくない……」

まどか「なら、そのルールを変えちゃえばいいんじゃないかと思うんです」

まどか「過去と未来の全ての魔女を、生まれる前に消し去れれば・・せめて最後まで、笑っていてほしいから」

右京「・・過去も未来も、ですか・・一体何人の人生を引き受けることになるか」

右京「そもそも一つの個体が全ての歴史に干渉するなど、それはもはや神の所業です。人が踏み込むべき領域では無い」

右京「過ぎ去った者まで救おうなど、そんな重圧を背負う必要はありませんよ」

184: 2013/03/10(日) 12:51:24.62 ID:3V1rIoH40
―放課後 某所―

さやか「あ、杏子」

杏子「ん? 偶然だね。あのまどかって奴は一緒じゃないのか?」

さやか「学校サボったっぽい。ケータイにかけても出てくれないし・・心配だよ」

杏子「心配性はアンタもだろ。その手土産持って、今から病院にお見舞いに行くつもり?」

さやか「これは・・マミさんに渡すやつ」

さやか「美味しいもの食べながらさ、愚痴でもいいから話をすれば、ちょっとは気がまぎれるかなーって……」

杏子「してやりたきゃやりなよ」

さやか「・・アンタも、マミさんち行かない?」

杏子「行く所があるからね、今日は行かない」

さやか「そ。じゃあこれ、はい」つお菓子

杏子「は? これマミんだろ。いいよおこぼれなんて」

さやか「おこぼれって。みんなの分もちゃんと買ってあんのよ」

杏子「……何か、悪いな」

185: 2013/03/10(日) 12:58:33.52 ID:3V1rIoH40
―廃教会―

杏子「チョコレートに・・クッキー」

   パクッ モグモグ

杏子「うめぇ」

杏子(あ、そろそろリンゴ食いきらねぇと)

   ガブッ シャリシャリ

杏子(……甘くねぇ・・っていうか、なんか胸がムカついて、うまくねぇ)

杏子「……」

杏子「……神様・・いるんなら聞いてくれよ」

杏子「さっきまでさ・・開き直って、今まで以上に自分勝手に生きてやろうって決めてたんだよね」

杏子「・・でもさぁ、それ、破っちゃうかも」

杏子「親父に似ちゃったのかな、アタシ」

186: 2013/03/10(日) 13:03:55.59 ID:3V1rIoH40
―マミ宅―

マミ「・・昨日はごめんなさい。情けない所を見せちゃったわね」

さやか「あ、いや……」

さやか「マミさん・・マミさんは、戦うんですか?」

マミ「ええ、私も戦うわ」

さやか「とてつもない化け物なんだよね? あの、あたしにも、何か力に」

マミ「あなたが心配するべき人は、他にいるでしょう?」

マミ「強がりに聞こえるかもしれないけど・・私は、あなた達を守る為にも戦いたいの。それが私の誇りになるから」

さやか「……やっぱマミさんは正義の味方だ」

マミ「もう。そんなのじゃないわ」

さやか「誰がなんと言おうと正義の味方です! だから・・正義の味方は絶対勝つ!!」

マミ「……ふふっ。そうだったわね」

187: 2013/03/10(日) 13:07:37.84 ID:3V1rIoH40
―翌日 中学校―

和子「今日のお休みは暁美さん一人ね。最近は季節に関わらず色んな病気が流行ってるから、皆も気をつけるように」

和子「そしてホームルームの最後に、大事なお話があります」

和子「もしも皆さんが、職場でちょっとよさげな異性と出合ったとしたら・・
   それは偶然でしょうか運命でしょうか!? はい中沢君!」

中沢「えぇっ? う、運命の方がうれしいですけど」

和子「その通り! ピンと来た出会い、それ即ち運命であってほしいと願うのが普通!」

和子「年下で、笑顔が可愛く愛想もよく、チャラそうと思いきや手堅い業種に就いているとあらば・・するならば尚の事!」

和子「女子の皆さんは、気になった相手の連絡先を必ずかつさりげなくゲットする術を身につけること!
   そして男子の皆さんは、ハイスペックになるように!」

さやか「先生こないだ別れたってのに、もう気になってる人ができてんだね」

仁美「手堅い職業というのは、公務員ということでしょうか?」

さやか「かもねー。ん? でも“チャラそうな公務員”ってどういうことだ?」



―同時刻 特命係―

角田「どーした? 突然キョロキョロしちゃって」

カイト「今、悪寒が・・また幽霊じゃないだろうな……」

188: 2013/03/10(日) 13:13:59.79 ID:3V1rIoH40
―警視庁―

右京「お忙しい中すみません。少々確認したい事がありまして」

大河内「また何か事件を追っておられるんですか?」

右京「事件ではありません。数日後に来る大災害をです」

大河内「は?」

右京「確認したい事ですが・・この一ヶ月間に警察内部で、原因不明の銃器紛失事件など起きてやいませんか?」

大河内「! ・・何処から、それを」

右京「やはりここからも盗んでいましたか」

大河内「・・貴方って人は……。しかし、その口振り・・犯人をご存知なのではないでしょうね?」

右京「今からここへ来てもらいます。電話をかけてもよろしいですか? あと、扉を少し開けても?」

大河内「? ・・どうぞお好きに」

右京「どうもありがとう。……ああ、僕です。11階にいらしてください。半開きのドアの部屋です」

ほむら「待たせたわね」スタッ

大河内「!?」

189: 2013/03/10(日) 13:19:24.36 ID:3V1rIoH40
右京「紛失事件のからくりと原因、信じていただけましたか?」

大河内「瞬きする間もなく現れたかと思いきや、私の目の前に一瞬で銃器を並べたてて、
    おまけに“時間の止まった世界”まで見せられては・・信じない方が無理ですよ」

大河内「時間を止めて移動し、盗みを働くとは……映像すら残っていないはずだ」

右京「どうやら証拠は何も残っていない様ですね」

大河内「・・もしも証拠が残っているようなら、私を使って揉み消すつもりでしたか」

右京「いいえ。その時は暁美さんに罪を償ってもらうつもりでした」

ほむら「!」

右京「警察官としては、罪を見逃すわけにはいきません。
   ですが、彼女を連行したところで、冤罪を主張されればそれまでです。何せ、状況証拠すら無いのですから」

右京「それ以前に・・法律に魔法が裁けるでしょうか?」

190: 2013/03/10(日) 13:23:55.97 ID:3V1rIoH40
大河内「法が魔法の存在を認め、証明しない限りは無理ですね。そんな日はやって来ないでしょうが」

右京「ええ。僕達に、彼女は裁けない」

右京「・・ですから警察官としてではなく、杉下右京個人として行動します」

右京「大河内さん、今回の彼女の行為については」

大河内「追及を止めろと仰りたいんですね」

右京「……」ニッコリ

大河内「・・分かりました。この件については私の方で何とかしましょう」

大河内「ですが、もうこれ以上ここの物を持って行くのは止めていただきたい。頭が痛くなる」

   ~~~

ほむら「あなたも十分怖いけど、知り合いの人もかなりね。薬を噛み砕いてたわ」

右京「あれは薬ではありませんから、お気になさらず」

192: 2013/03/10(日) 13:35:01.69 ID:3V1rIoH40
―数日後 ワルプルギスの夜襲来当日―

広報車『突発的異常気象に伴い、避難指示が発令されました。
    付近にお住いの皆さんは、速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。
    なお、異常気象の影響により、電車・バス等の運休、道路交通規制が行われておりますので……』

   ~~~

―避難所―

詢子「おー、さやかちゃん! 無事避難できたんだね。よかったよかった」

さやか「おばさん達も無事でよかった。・・あれ、まどかは?」

詢子「いま『トイレに行く』って出て行ったよ」

さやか「そうですか……」

193: 2013/03/10(日) 13:41:28.58 ID:3V1rIoH40
―ワルプルギスの夜 出現予想地点―

杏子「あんだけのミサイル、一体どこから持ってきたんだよ」

ほむら「ちょっと、フェンスの向こうから」

マミ「・・もしかして、自衛隊?」

ほむら「まぁ、そこもあるわ」

杏子「アンタ、逮捕されちまうんじゃないの?」

ほむら「大丈夫でしょう。警察では大丈夫だったし」

マミ「えっ?」


   ⑤


ほむら「! ・・来る」


   ④

   ③

   ②

   ①

195: 2013/03/10(日) 13:47:18.80 ID:3V1rIoH40
―避難所―

QB「じゃあ、行こうか」

まどか「うん」

さやか「どこ行くの、まどか」

まどか「あっ……」

さやか「キュゥべえ、アンタ、まどかをワルプルギスんとこまで連れ出す気!?」

QB「連れ出すわけじゃない。行くのは“彼女達”の意思だ」

さやか「『達』? ・・あ」

右京「どうも」

さやか「杉下さんもって・・どういうこと?」

QB「二人とも、契約してくれる気になったみたいだよ」

197: 2013/03/10(日) 13:52:55.90 ID:3V1rIoH40
さやか「え……?」

QB「右京まで乗り気だとは意外だったけれど、これでこの星は救われたも同然だ」

さやか「待ってよ、意味わかんない。『命を粗末にするな』って言ったのは杉下さんでしょ!?」

まどか「粗末になんてしないよ。ただ、これは、私達にしかできないことなの」

さやか「『私達にしか』?……まどか、アンタ何か隠してんの?」

まどか「・・私達の魔法少女としての素質があればね、宇宙の法則だってねじ曲げられるんだって」

さやか「宇宙? ちょっと・・こんなときまで冗談やめてよ」

QB「冗談じゃない。“ほむらが育ててくれた”まどかの素質は、神になれる可能性だって秘めている」

さやか「ほむらが、育てた?」

QB「魔法少女の素質は背負い込んだ因果の量で決まる。ほむらはまどかの為だけを思って幾つもの時間軸を渡り歩いたけど、
   同じ理由と目的で何度も時間を遡るうちに、彼女の知らない間に幾つもの並行世界が螺旋状に集まった」

QB「結果、平行世界の全ての因果線が今のまどかに連結し、途方も無い魔力を秘める存在となったんだ」

まどか「この力は、やっぱり使わないとダメなの。じゃなきゃ・・ほむらちゃん達を救えない」

198: 2013/03/10(日) 14:02:26.87 ID:3V1rIoH40
QB「ワルプルギスの夜は最悪の魔女だ。ベテランといえど3人だけで勝てるかどうか怪しい」

さやか「うるさい! まどか、アンタこいつにだまされてんのよ!」

まどか「さやかちゃん・・私が契約しようって決めたのはね、杉下さんがいたからこそなの」

さやか「杉下さんが?」

さやか「・・アンタ……あたしの友達をどうしようっての!?」

右京「彼女一人でも、僕一人でも壊せない壁を、壊しに行きます」

さやか「壁……?」

右京「どうか、僕達を行かせてください」

199: 2013/03/10(日) 14:06:33.69 ID:3V1rIoH40
   ……ゥーウゥーッ!!


さやか「パトカーのサイレン?」

右京「・・おやおや」

伊丹「特命係の杉下警部殿~・・お迎えに来てさしあげましたよ」

200: 2013/03/10(日) 14:10:13.85 ID:3V1rIoH40
芹沢「置いてきぼり食らったカイトから聞きましたよ。行くんですってね、この嵐の真ん中に」

三浦「もうどこもかしこも規制されてるし、緊急車両じゃないと行けませんよ」

伊丹「お坊ちゃんが頼み込むから仕方なく車を出したんです。有難く思ってほしいもんだ」

右京「カイト君が……。助かります」

さやか「伊丹さん達まで……何で止めないの? 契約しちゃったら、杉下さんもまどかも」

伊丹「聞いてるよ。このスカした面した狐の作ったシステムのことも、全部」

伊丹「それをぶち壊せるのがコイツ等しか居ないなら・・悔しいが、やってもらうしかねぇだろ」

さやか「え・・壊すって・・まさか『壁』って、キュゥべえのこと?」

QB「君達、そんな腹積もりだったのかい?」

右京「君に聞かれませんでしたから、知らないままでも不都合はないかと」

201: 2013/03/10(日) 14:17:27.38 ID:3V1rIoH40
―数日前 特命係―

右京「過ぎ去った者まで救おうなど、そんな重圧を背負う必要はありませんよ」

まどか「でも、このままでいるなんて・・私でも役に立てるんなら、やりたいんです」

右京「・・貴女方は、思いのほか頑固ですねぇ」

右京「全てを救うことは出来ませんが・・何とかしたいと思っているのは僕も同じですよ」

まどか「え?」

右京「僕と二人なら、宇宙すら壊せるのですね? ならば“僕達”で、キュゥべえの作り上げたシステムを壊すのです」

まどか「でも・・契約したら杉下さんまで人じゃなくなっちゃう!」

右京「僕に考えがあります。ですが確証を得る為にも、一度キュゥべえに詳しく話を聞く必要があります。
   『嘘は吐かない』と言う彼ですし、こちらから質問さえすれば、包み隠さず話してくれるでしょう」

まどか「考え?」

右京「ですが、彼の語る内容は、貴女にとってはショックが大きいかもしれません」

右京「それを受け止める覚悟があるなら、貴女の力を僕に委ねてほしいのです」

まどか「……」

まどか「……杉下さんなら……私、協力します!」

202: 2013/03/10(日) 14:26:48.97 ID:3V1rIoH40
さやか「……本当に・・杉下さんのこと、信じていいの?」

伊丹「勝手が過ぎる警部殿だがな、そこだけは間違いねぇよ」

さやか「・・まどか・・無事に、帰ってくるよね?」

まどか「うん」

さやか「……早く帰ってきなよ」

まどか「・・ありがとう」

右京「では行きますよ、鹿目さん」

まどか「はい!」

203: 2013/03/10(日) 14:33:26.83 ID:3V1rIoH40
―ワルプルギスの夜戦 中心地―

杏子「ほらほら! ちゃらちゃら踊ってんじゃねぇよ!」ズバンッ!!

使い魔「♪♪♪」ゾロゾロゾロ……

杏子「数にものいわせる気かい? ふん・・それなら」

   ズララララララッ!!

マミ(! あれは、ロッソ・ファンタズマ……)

杏子「「「「「どれが本物か当ててみな!!」」」」」バッ!!

   ズババババッ!!

使い魔「☆▲×~!」シュゥゥゥ……

マミ「佐倉さん、その技」

杏子「何だよ、意外そうな面して。使っちゃ悪かったか?」

マミ「いいえ。何だかうれしくって」

209: 2013/03/10(日) 17:48:56.97 ID:3V1rIoH40
>>208
あくまで台詞だけですが、それをちょっと意識してます

210: 2013/03/10(日) 17:50:44.08 ID:3V1rIoH40
ほむら「マミ、もう一度集中砲火よ!」

マミ「わかったわ!」

   カチッ
   ピタッ!!

ほむら(まずは私がありったけのミサイルを放ち……)

ほむら(よし・・そしてマミに触れて時間停止を解く)ギュッ

ほむら「頼んだわ」

マミ「任せてちょうだい」シュルッ

   ジャキンッ!!

ほむら「三つ数えたら停止を解除する。準備は?」

マミ「いつでもいいわ」

ほむら「3・・」

マミ(狙うは頭・・)

ほむら「2・・」

マミ(これで終わらせる!)

ほむら「1!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

211: 2013/03/10(日) 17:54:33.11 ID:3V1rIoH40
ワルプルギス「キャハッ!」ボロボロッ

杏子「おっしゃぁ!」

ワルプルギス「……」ギギギ……

マミ「・・様子が変だわ」


   グルゥッ……


マミ「え?」

杏子「ぼろぼろの頭が、上に」


   ゴォォォォッ!!


ほむら「うっ!?」

ほむら(この風圧! 魔力もはね上がった!?)

212: 2013/03/10(日) 17:58:54.56 ID:3V1rIoH40
杏子「くっそ・・調子に乗ってんじゃねぇ!!」バッ!

マミ「!? 佐倉さん右っ!!」

杏子(な、ビルが飛んで)

   ドガッ!!

杏子「ぐうっ!!」ドサッ!!

マミ(いけない! すぐに治癒魔法)

使い魔「キャハハハハ!!」バババッ!

マミ(しまった後ろを)

   ザクッ!!

マミ「うっ!!」ガクッ

ほむら「杏子! マミ!」

213: 2013/03/10(日) 18:04:22.11 ID:3V1rIoH40
ほむら「……あんなの、未来になかった・・あと、一歩だったのに……」

ほむら「どうして・・どうしてなのっ!? 何度やっても・・アイツに勝てないっ……!!」


まどか「もういい・・もういいんだよ、ほむらちゃん」

214: 2013/03/10(日) 18:09:12.45 ID:3V1rIoH40
ほむら「な……あなた達、どうしてここに」

まどか「マミさん、杏子ちゃん、ほむらちゃん・・後は、私達に任せて」

まどか「ほむらちゃんのがんばりを無駄にしない為にも・・この力を使うね」

ほむら「や、やめて!それじゃ私は、何の為に……!」

右京「安心してください。彼女を魔女にさせはしません」

ほむら「え・・あなた、何を言っているの?」

QB「鹿目まどか、杉下右京。その魂を対価にして、君達は何を願う?」

ほむら「!? 杉下、バカなまねは」

三浦「お嬢ちゃん。心配するこたぁない」

ほむら「のん気なことを言わないで! 彼は命を捨てようとしてるのよ!?」

伊丹「んな訳あるか。奴にとって、命は何よりも重てぇんだ」

芹沢「そんな人が命を懸けるっていうんだからさ、もう信じるしかないよ」

215: 2013/03/10(日) 18:18:52.33 ID:3V1rIoH40
QB「さぁ、まどか」

まどか「・・私の願いは、ほむらちゃん達魔法少女が、最後まで希望を持てるようになること。
    “希望と絶望の相転移”なんてシステムがある限り、それが叶わないなら・・壊してみせる」

まどか「“相転移”じゃない、“魔法少女の素質”そのものをエネルギー化できるようにしたい」

QB「僕達の技術の否定・・君達人類で言うところの“意趣返し”というやつかな?」

QB「確かにそれなら絶望する必要は無くなる。君の莫大な素質そのものがエネルギーとして差し出されるなら、
   僕達からしてもデメリットは無い」

QB「でも、それだけだ。契約と引き換えに得た力を使い果たした時、君達は魔女になる・・」

QB「!! ・・なるほどね。杉下右京、それが君の願いかい?」

右京「流石、物分かりが良いですね」

右京「魔女になるのではなく、ソウルジェムを元の魂に戻して肉体に還すよう、システムの改善をする。それが僕の願い」

右京「ここへきて『不可能だ』とは言わせませんよ!」

216: 2013/03/10(日) 18:23:13.33 ID:3V1rIoH40
QB「不可能だなんて。君達の素質なら、不可能こそが有り得ないよ。
   だけど、既に数多の魔法少女達が消え去っているというのに、今更システムを変える必要があるのかな」

右京「・・地球の歴史と共に在る君にとっては、その程度の感覚でしょうねぇ」

右京「ですが“この一瞬”で、未来永劫に渡り少女達の希望が守られるのなら、無価値ではない筈です」

QB「君達がその願いで契約すれば、この星での回収ノルマに簡単に達する。そうすれば僕達はこの星を出ていくよ。
  絶望する少女達は生まれなくなるけれど、世界中に現存する魔女達はどうするんだい? 中には強力な個体だって」

右京「おや、君ともあろう者が、そんな事も分からないとは」

右京「僕が彼女達を倒します。もう誰も恨まないよう、安らかに眠れるように」

QB「世界中の魔女を、君一人が?」

右京「鹿目さんが『手伝います』と言ってきかないので、多少はお手伝いをお願いするつもりです」

右京「ああ、“そんな余裕があるのか”という疑問は不要ですよ。特命係は暇ですから」

まどか「これが私達の願い・・さぁ、かなえてよ! インキュベーター!!」

217: 2013/03/10(日) 18:31:33.88 ID:3V1rIoH40
ほむら(まどかの叫びの直後、二人の体が目もくらむほどの光に包まれ・・思わず目をつぶった。

    そして、目を開けると、そこには契約を果たした二人が立っていた。

    幾度となく目にしたピンクのドレスをまとい、弓を手にするまどか。
    まどかの横には・・まるで法王のような、純白の衣装をまとう杉下がいた。

    杉下が、手にしていた杖で地面をトンと突くと、彼の目の前に光り輝く“何か”が現れた。

    馬にまたがった騎士。

    騎士は馬を走らせ、あっという間にマミ達を取り囲んでいた使い魔達との距離をつめる。
    騎士が右手を振り上げると同時に、その右手に一振りの剣が現れて、そのまま使い魔達をなぎ払った。

    使い魔は次々とわいて出るものの、騎士に指一本触れることも出来ずに倒されていく。
    ワルプルギスと同じく、使い魔の魔力も上がっているはずなのに、騎士は物ともしない。
    ・・圧倒的な力の差だ)

220: 2013/03/10(日) 18:36:26.88 ID:3V1rIoH40
まどか「・・もう、いいんだよ」

ほむら(呆然としていた中、耳に届いたまどかの声にハッとした。
    まどかはワルプルギスの夜を見上げ、優しく語りかける)

まどか「もう誰も、恨まなくていいの。誰も、呪わなくていいんだよ」

ほむら(まどかは、少し悲しそうな顔をした)

まどか「あなたがそうなってしまう前に助けられなくて・・ごめんなさい」

ほむら(まどかが弓を構える。ピンク色に輝く魔力の矢をめいっぱい引いて、ワルプルギスを狙う)

まどか「……おやすみ」

ほむら(放たれた矢が、ワルプルギスに触れ……あまりにまぶしくて、私はまた目をつぶった)

223: 2013/03/10(日) 18:41:38.67 ID:3V1rIoH40
芹沢「す・・すげぇ……」

杏子「……神様かよ」

ほむら(・・青空が……終わったの……?)

右京「・・これが、ワルプルギスの夜のグリーフシードですか」

三浦「こりゃ・・病院で見たのとは比べ物にならねぇ。何て大きさだ」

まどか「これも、誰かの魂なのね……」ソッ

   スゥゥゥゥッ……

伊丹「何だ? 手にした途端、消えた……」

QB「・・本当に、君達には驚かされる」

224: 2013/03/10(日) 18:47:30.21 ID:3V1rIoH40
QB「まどかと杉下は共に“救済”を願って契約をした。どうやらそれはグリーフシードにも適用されるみたいだね。
   まどかが触れたことで、グリーフシードに溜まっていた負の感情が浄化され、消滅したんだ」

まどか「・・よかった」

   スゥゥ……

ほむら「! 私のソウルジェムが……!」

マミ「紫の光が・・暁美さんの体に入った……」

ほむら「……変身できない……本当に・・本当に、普通の人間に戻ったの?」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒して……本当に、終わったの?」

まどか「そうだよ。みんなの戦いも、ほむらちゃんの戦いも、全部終わったんだよ」

ほむら「・・まどかも・・魔女になったりしないのね? ずっと、これからも・・ここに……」

まどか「これからもずっと一緒にいるよ」

まどか「ほむらちゃんは、私の最高の友達だもん」

ほむら「!! ・・ぅ、うう……まどかぁ……」ボロボロボロ……

225: 2013/03/10(日) 18:57:30.82 ID:3V1rIoH40
ほむら(杉下の回復魔法によって、杏子とマミの怪我も癒えた。
    まどかに手を引かれ、私は彼らと共に、さやかが待っているという避難所へ向かった。

    避難所の外で落ち着きなくうろうろするさやかが目についた。
    さやかは私達を見るなりかけ寄ってきて、目に涙を浮かべながら喜んでくれた。

    みんなが、笑っている。
    さやかも、マミさんも、杏子も、まどかも・・それに、私も。
    夢みたい。

    ……つい自分の頬をつねってみた。
    痛い・・夢じゃなかった。

    悪夢は、終わったんだ)

226: 2013/03/10(日) 19:02:19.60 ID:3V1rIoH40
―数日後 特命係―

角田「アンタ、また長期休暇取るんだってね。今回もヨーロッパか?」

右京「今度は世界中を回ろうかと。途中サルウィンに寄って、久しぶりに亀山君の顔を見ようかと思っています」

角田「そうなの? じゃあ『ボランティア頑張れよ』って伝えといてよ」

右京「分かりました」

角田「アンタは海外行くとして、カイトはどうすんの?」

右京「彼はここで暇を満喫するそうですよ」

角田「いいご身分だねぇホント。今度のうちの手伝い、バシバシしてもらおうかな。あ、コーヒー貰ってくね」

右京「どうぞ」

カイト「杉下さん、連れてきましたよ」

ほむら「……」ペコリ

右京「ようこそ、特命係へ」

227: 2013/03/10(日) 19:07:14.19 ID:3V1rIoH40
角田「ん? その制服、こないだの子達と同じ見滝原中のだね。もしかして友達?」

ほむら「えっ? あぁ、多分、友達の子だと思います」

角田「そうかぁ。しっかし、こないだの子達といい、最近の子は美人が多いんだねぇ~。
   俺の息子も俺に似てなけりゃ、ビジュアルバンドでもやってけたかもしれないけど・・」

カイト「課長。ちょっと込み入った話になるんで仕事に戻ってください。覗きも禁止っすよ」

角田「人聞きの悪いこと言うなって・・分かったよ、戻りますよ」

右京「暁美さん、いま紅茶を入れますので、お掛けになってお待ちください」

ほむら「・・あなた、ソウルジェムはどこに?」

右京「ネックレス状にして服の下に忍ばせています。指輪だと、あらぬ誤解を招くやもしれませんから」

ほむら「あぁ、なるほど。……あの、何でそんなに高さをつけて紅茶を注いでいるの?」

右京「僕の癖ですから、お気になさらず」

228: 2013/03/10(日) 19:13:31.25 ID:3V1rIoH40
ほむら「まどかから聞いたわ。来週から魔女退治にでかけるのね」

右京「ええ。そちらも次の休みに遠方まで魔女退治に行くと聞きましたが」

ほむら「友達とのプチ旅行って建前でね。さやかやマミなんか妙にはしゃいじゃってるし」

カイト「みんな元気にしてる?」

ほむら「変わりないわ。杏子も施設になじめたって。
    まどか達と施設にお邪魔したんだけど、祐芽ちゃんって子を妹みたいにかわいがってるみたい」

右京「ゆめちゃん・・もしや、その子には祐太君というお兄さんがいませんか?」

ほむら「そういえば、お兄さんがいるって言ってたわね」

カイト「知り合いの子なんですか?」

右京「君の前任の神戸君と共に関わった事件で、ちょっとした知り合いになりました」

ほむら「神戸? ・・その人、見るからに高そうな車に乗ってて、ちょっとキザな言い方をする人じゃない?」

右京「おや、神戸君をご存知で?」

ほむら「祐芽ちゃんに会いに、施設に来てたわ」

右京「そうですか」

230: 2013/03/10(日) 19:18:24.42 ID:3V1rIoH40
ほむら「……あなた達には、感謝してもしたりないわ。
    こんな奇跡のような結末、夢にだって見たことなかったもの」

右京「貴女の過去の努力があってのものです。僕は只、力添えをしたに過ぎません」

ほむら「・・出発の日、みんなで空港まで見送りに行っていいかしら」

右京「それは有難い。嬉しい限りです」

ほむら「必ず行くわ。それじゃあ、紅茶ごちそうさまでした」

ほむら「またね……杉下さん、甲斐さん」クルッ スタスタ……

カイト「・・甲斐“さん”、か」

231: 2013/03/10(日) 19:25:02.93 ID:3V1rIoH40
カイト「……『奇跡』ねぇ」

右京「どうしました?」

カイト「いや・・この結末自体は俺も“よかった”って思えるんですけど・・
    どんなに奇跡を望んでいる子が居たとしても、もう、それを叶える魔法はないんだなぁって思って」

右京「キュゥべえの契約は、若者の無限の可能性と引き換えに只一つの願望を叶えるものでした。
   生きていれば、キュゥべえに頼らずとも道が拓ける可能性は十分考えられます」

カイト「・・そうですね。つーか、そう考えるべきっすね」

カイト「あ、でも・・さやかちゃんの幼馴染って子の怪我とか、マミちゃんや杏子ちゃんの将来とか、
    不安要素で一杯だな……」

右京「彼女達に関してなら、ひとつだけ、確かな事があります」

カイト「確かな事?」

232: 2013/03/10(日) 19:27:23.71 ID:3V1rIoH40
右京「大きな壁を越えた彼女達なら、もう何があっても挫けない、ということですよ」




234: 2013/03/10(日) 19:29:40.79
右京さんの魔法はチェスか

235: 2013/03/10(日) 19:35:41.66

面白かったよ!
またどっかで書いてくれたら嬉しいなって

237: 2013/03/10(日) 19:44:59.88 ID:3V1rIoH40
右京さんの魔法については>>234のご指摘通りです。
右京さんの衣装はキングがいいかとも思いましたが、絶対的で潔白なイメージなら
法王の方がいいかと思ってこっちにしました。

スレ立て自体初めてで緊張しっぱなしでしたが、楽しんで頂けてよかったです

243: 2013/03/10(日) 20:05:39.69 ID:3V1rIoH40
突っ込みどころはご都合主義で流してやってください・・・

それでは依頼スレにお願い出してきます。
皆さん、ありがとうございました。


杉下右京「ひぐらしのなく頃に」

引用元: QB「僕と契約して(ry)」 杉下右京「はいぃっ?」