1: 2021/02/09(火) 19:59:57.772 ID:keoZhfQQ0
警察「……」

子供「……」

ラジオ『時刻は午後8時。さあ今週も始まりました、楽しくワイワイはっぴーラジオのお時間です』

ラジオ『お相手は私、ジオーラがお送り致しま~す』

警察「……」

子供「……」

警察「…なあ」

子供「何」

警察「お前いつ帰るの?」

2: 2021/02/09(火) 20:02:39.240 ID:keoZhfQQ0
子供「んー…この宿題終わったら」

警察「ああ、そう」

子供「……」

警察「……」

ラジオ『いや~最近かなり寒くなってきましたね。東京の方では雪がちらつく所もあったみたいですが~』

子供「…ねえおまわりさん」

警察「何だよ」

子供「ジュースおかわり」

警察「ああ…」

5: 2021/02/09(火) 20:04:56.462 ID:keoZhfQQ0
警察「……」トクトク

子供「……」

警察「……」トンッ

子供「ん。ありがと」

ラジオ『皆さんの住む地域はどうでしょうか。東北の方なんか雪ですごいことになってるって聞きましたけど~』

子供「このカステラ美味しいね。どこかで貰ったの?」

警察「あのな…交番に茶菓子なんて普通置いてないからな。わかってる?」

子供「わかってるわかってる」

警察「本当にわかってんのかこいつ…」

6: 2021/02/09(火) 20:06:42.237 ID:keoZhfQQ0
子供「ねえおまわりさん」

警察「何だよ」

子供「今朝ね、地面が凍ってて滑ったの。おもいっきり」

警察「ふーん」

子供「そのとき手こすったんだけどさ、傷跡見たい?」

警察「別に」

子供「ほらここ。ちょっと赤くなってるでしょ」

警察「全然大したことないじゃねえかよ」

7: 2021/02/09(火) 20:08:37.256 ID:keoZhfQQ0
子供「滑ったとき本当に氏んだかと思ったよ。生きてて良かった」

警察「そう簡単に氏ぬかよ」

子供「朝の地面って何であんなに凍ってるんだろ」

警察「大人になればそのうちわかる」

子供「おまわりさんも転ばないように気をつけてね」

警察「余計なお世話だよ」

子供「頭打って氏んだらシャレにならないから」

警察「お前みたいにドジじゃねえんだよ俺は」

8: 2021/02/09(火) 20:10:12.066 ID:keoZhfQQ0
子供「ねえおまわりさん」

警察「何だよ」

子供「今日学校で男子から変な絵見せられたんだけどさ。そいつハルキって言うんだけど」

警察「へー…」

子供「2本足で羽がついてて、火を吹いた恐竜みたいなやつなんだけどさ」

子供「何だっけ。ウルトラリュウマン1号とか言ってたような…」

警察「それドラゴンじゃねえの」

子供「何それ」

警察「アレだよ。ゲームとかに出てくる架空の生き物」

9: 2021/02/09(火) 20:12:02.512 ID:keoZhfQQ0
子供「男子ってああいうのかっこいいとか思っちゃってるのかなぁ」

警察「……」

子供「ねえ?」

警察「知らねえよ俺に聞かれても」

ラジオ『それじゃあ早速お便りのコーナーにいきましょうか』

ラジオ『今日もリスナーの方々からいくつか届いてますね~。どれから読んでいきましょうか』

子供「…さっきから何書いてるの?」

警察「いろいろ」

子供「いろいろって?」

警察「仕事の記録とかだよ」

10: 2021/02/09(火) 20:15:37.271 ID:keoZhfQQ0
子供「おまわりさんって仕事してるの?」

警察「してるよ失礼な」

子供「日中何してるの?」

警察「事件がなければずっとここにいるが」

子供「今日何か事件あったの?」

警察「いや……特に」

子供「一日中座ってるだけ?暇じゃない…?」

警察「仕方ないだろ仕事なんだから」

11: 2021/02/09(火) 20:20:23.241 ID:keoZhfQQ0
子供「ねえ暇わりさん」

警察「あ?」

子供「給食の時間にさ、男子が私の皿に自分のニンジン置いてくるんだけど。おすそわけっつって」

警察「…ハルキくんか?」

子供「うん」

警察「それが何だよ」

子供「お子様すぎない?11歳にもなってニンジンも食べられないってさぁ」

子供「給食にニンジン出てくる度いっつも私の皿に乗っけてくるんだよ。先生が見てない隙に」

12: 2021/02/09(火) 20:24:33.254 ID:keoZhfQQ0
警察「お前は嫌いな食べ物とかないのかよ」

子供「ないよ。野菜でも何でも食べるよ私は」

警察「ふーん…」

子供「すごい?」

警察「わーすごいすごい。うんうん」

ラジオ『埼玉県在住。ペンネーム、ハムハムさんからのお便りです』

ラジオ『ジオーラさんこんばんは。はいこんばんは~。いつも楽しくラジオを聞いていますと…』

子供「…ねえちょっと暑くない?ストーブ弱めていい?」カチカチ

警察「脱げよ上着…」

14: 2021/02/09(火) 20:26:59.099 ID:keoZhfQQ0
子供「暇わりさん」

警察「やめろ暇わりさんは」

子供「おまわりさん」

警察「何だよ」

子供「掃除の時間にふざけてる男子ってどう思う?」

警察「別に何とも…」

子供「掃除中に雑巾とホウキ使って野球してるんだよ?みんな真面目にやってるのに」

子供「特にハルキなんかさぁ」

警察「またハルキくんかよ」

16: 2021/02/09(火) 20:29:24.845 ID:keoZhfQQ0
警察「そのハルキって子何なんだよ。友達?仲良いのか?」

子供「まあね。ただの幼なじみだよ」

警察「…ハルキくんってあの坊主の子だろ」

子供「知ってるの?」

警察「裏の公園でよく素振りの練習してるからな。一応顔見知りだし、何なら会話したこともあるぞ」

警察「野球のこととか家族のこととか…あとお前のことについても喋ってたしな」

子供「え?何話してたのあいつ」

警察「うーん…内緒」

18: 2021/02/09(火) 20:31:32.184 ID:keoZhfQQ0
子供「何それ。教えてよ」

警察「無理」

子供「何でよ」

警察「男同士の秘密だ。お前にだけは絶対言えない」

ラジオ『いや~目玉焼きにめんつゆってどうなんでしょうかね。そんな派党聞いたことないんですが…』

ラジオ『僕は…そうですね、ミルメーク派ですかねぇ』

子供「…おまわりさんって何年おまわりさんやってるの?」

警察「まだ1年も経ってないが」

子供「おまわりさんって何で警察官になろうと思ったの?」

20: 2021/02/09(火) 20:34:10.247 ID:keoZhfQQ0
警察「警察官になった理由…か」

警察「純粋に人助けがしたかったからかな。子供の頃からの夢だったんだよ、おまわりさん」

子供「ふーん」

ラジオ『さて次のお便りにいきましょう。千葉県在住。ペンネーム、ごま塩マッチョさんからの』

子供「夢かぁ……私はそういうのないな」

警察「なりたい職業とかないのか?」

子供「働きたくないし…」

警察「あ~言うと思った」

21: 2021/02/09(火) 20:36:40.475 ID:keoZhfQQ0
子供「おまわりさん」

警察「何だよ」

子供「最近学校行くのしんどい」

警察「……何か嫌なことでもされたのか?」

子供「勉強だるい」

警察「何だそんな理由かよ…」

子供「授業を受けることに意味を感じないと言うかさ……小数のかけ算とかいつ使うのって話だよね」

警察「意味がなくても行かないといけないもんなんだよ学校ってのは。学べる環境があるだけありがたいと思え」

子供「むう」

23: 2021/02/09(火) 20:38:40.836 ID:keoZhfQQ0
子供「ねえおまわりさん」

警察「何だよ」

子供「交番の入口に赤いランプみたいなのついてるじゃん。上に」

警察「ああ」

子供「あれ何なの?」

警察「知らん」

子供「おまわりさんなのに知らないの?」

警察「聞いたことないし気になったこともない」

24: 2021/02/09(火) 20:40:57.345 ID:keoZhfQQ0
子供「ねえおまわりさん」

警察「何だよ」

子供「…私と初めて会ったときのこと覚えてる?」

警察「あー…去年の秋だっけ」

子供「そうそう。夜、公園のベンチにひとりで座ってた所におまわりさんが声をかけてくれてさ」

子供「寒いからって交番まで連れてってくれて、そこで温かいコーヒー飲ませてくれて……3個くらい砂糖入れてくれたよね」

警察「そこまで覚えてねえよ」

子供「……おまわりさん」

警察「何だよ」

子供「…えっと…おまわりさんってさ……」

25: 2021/02/09(火) 20:42:35.968 ID:keoZhfQQ0
子供「……いや、やっぱいい。後で聞く」

警察「何だよ…」

ラジオ『ジオーラさんの飼っているワンちゃん、とても素敵ですね。ジオーラさんは猫よりも犬の方がお好きなんですか?』

ラジオ『両方好きですよ~。昔は猫も飼ってましたし、それに~』

子供「…おまわりさんは犬派?猫派?」

警察「……猫」

子供「何で?」

警察「可愛いから」

27: 2021/02/09(火) 20:45:07.312 ID:keoZhfQQ0
子供「犬の方が可愛くない?真ん丸な目とかキュートだと思うんだけど」

警察「猫も真ん丸だろ」

子供「ハルキん家、タロウっていう柴犬飼ってるんだけどさ、それがもうめっちゃ激カワでさ~」

子供「身体中のあのモフモフ……まるで天使みたいだったよ。見てるだけでつらいこと全部忘れられるもん」

警察「……」

ラジオ『雪合戦のコツねぇ、まず相手の玉をよく見てしっかり避けることが~』

子供「ふぁ~あ…眠くなってきた…」

警察「寝るなよここで」

子供「わかってる…わかって…ゆ……」ガクッ

警察「何もわかってないだろ寝るなっておい」ユサユサ

29: 2021/02/09(火) 20:47:26.512 ID:keoZhfQQ0
子供「あ~…ダメだやっぱ寝ちゃいそう…もう今晩ここに泊まろうかな」

警察「やめてくれよ鍵閉められないだろ」

子供「冗談だよ」

ラジオ『僕も中高アイスホッケー部だったんですよ。実家が北海道にあってですね、冬場なんかは~』

子供「…しりとり。りんご」

警察「ゴマすり」

子供「り…りす」

警察「すずり」

子供「り……………り……リボン…」

警察「もうちょい粘れよ…」

31: 2021/02/09(火) 20:48:59.541 ID:keoZhfQQ0
ヒュゥゥゥゥゥ……カタカタカタ…


子供「…今日風強いね」

警察「…ああ」

子供「……」

警察「……」

子供「…ボールペン回しのやり方教えて」

警察「お前もう帰れよ」

32: 2021/02/09(火) 20:50:44.180 ID:keoZhfQQ0
警察「そろそろ母さん仕事から帰ってくる頃だろ。お前ももう家に戻れ」

子供「まだ終わってないもん宿題」

警察「じゃあ喋ってないで早くやれよ」

子供「計算がわからなくて…」

警察「貸してみろ教えてやるから。どこがわからないんだよ」

警察「……ほとんどできてるじゃねえか」

子供「あと最後の問題だけなんだよね~」

警察「はぁ……よく見てろ。まず文章題からわかってる数字抜きだして…」

33: 2021/02/09(火) 20:52:29.483 ID:keoZhfQQ0
ラジオ『リスナーの皆さんも雪道を運転する際は気をつけてくださいね』

ラジオ『さて、そろそろラジオ終了のお時間となってしまいましたが~』

警察「だから答えは?」

子供「6.5L」

警察「何だ、普通にできるじゃねえか」

子供「えへへ。おまわりさん教え方上手だね」

警察「これで終わりだな。じゃあ荷物まとめて…」

子供「おまわりさん」

警察「何だよ」

34: 2021/02/09(火) 20:56:09.705 ID:keoZhfQQ0
子供「…今学校で何はやってると思う?」

警察「…鬼滅だろどうせ」

子供「そうそう。今日学校でハルキがそれ全巻持ってるんだぜとか皆に自慢しててさ~」

警察「会話始めようとすんな帰れって」

子供「……は~い」

警察「ほらランドセル。忘れ物ないな?」

子供「………ねえ、おまわりさん」

警察「何だよ」

子供「…あのさ……おまわりさんって……」

子供「……彼女さんとか、いるの?」

35: 2021/02/09(火) 21:00:00.554 ID:keoZhfQQ0
警察「え……」

子供「……」

警察「……………いるけど」

ラジオ『9時になりました。ニュースをお送りします』

ラジオ『明日は広い寒波の影響で日本海側を中心に』

子供「…へー……そっか。いるんだ」

警察「ああ」

子供「……じゃあ私行くね」

警察「…おう」

37: 2021/02/09(火) 21:03:16.251 ID:keoZhfQQ0
ガラガラ…

子供「う…寒……」

警察「外はやっぱり冷え込むな…」

少年「…あっ」

子供「あ」

警察「あれ?ハルキくん?」

子供「どうしたのこんな時間に…」

少年「こ、こっちのセリフだよ!俺は練習の帰りだよ」

38: 2021/02/09(火) 21:05:36.882 ID:keoZhfQQ0
少年「またおまわりさんとこで宿題してたのかお前…」

子供「だって家だとお母さん帰ってくるまでずっと1人だもん。児童館や図書館は早くに閉まっちゃうし」

少年「おまわりさん迷惑してないか…?毎晩毎晩…」

子供「大丈夫、暇わりさんだから」

警察「暇じゃないっての…」

子供「え~暇じゃん。ずっとイスの上でぼーっとしてて退屈じゃないの?」

警察「それは…えっと……」

少年「……」

40: 2021/02/09(火) 21:08:11.994 ID:keoZhfQQ0
少年「なあ…もし行く宛がないんだったら俺ん家来るか?」

子供「え?」

少年「俺ん家マンガとかゲーム機とかいろいろあるからよ。ここにいるより幾分かマシだろ」

少年「それにほら、ここより俺ん家の方がお前の住んでるアパートも近いしさ」

子供「でも…」

少年「母ちゃんと父ちゃんもお前の家庭の事情くらい把握してるだろうし。話せばきっと歓迎してくれるよ」

子供「んー…」

警察「うん、それがいいよ。せっかくハルキくんが誘ってくれてるんだからさ」

警察「明日からはハルキくんの家にいさせてもらえ。な?」

41: 2021/02/09(火) 21:10:07.839 ID:keoZhfQQ0
子供「……わかった。そうする」

警察「そうか。じゃあ決まりだな」

少年「明日からよろしくな。今日はもう遅いから家まで送ってくよ」

子供「ほんと?ありがとうハルキくん」

少年「い…いや別に……」

警察「まだ車通りもあるからな。もう辺り暗くなってるし、手繋ぎながら帰りなさい」

子供「うん」

少年「へ!?」

45: 2021/02/09(火) 21:13:23.314 ID:keoZhfQQ0
子供「行こ。ハルキくん」ギュッ

少年「あ…あっ…!」

子供「さよならおまわりさん。ありがとう」

警察「ああ。さよなら」

少年「さ…寒いからっ…早く帰ろう…!」グイッ

子供「顔赤いよ?大丈夫…?」

少年「なってねーし!!何言ってんの!?」

子供「赤くなってるじゃん。え?もしかして照れてる~?」

スタスタ…アハハ……

………


警察「……」

47: 2021/02/09(火) 21:14:26.348 ID:keoZhfQQ0
警察「……ごめんな」

警察「本当は…彼女なんていないんだ」

ラジオ『以上、全国各地のお天気でした。続きまして』

警察「……俺も帰ろ」










-おわり-

52: 2021/02/09(火) 22:00:13.370
おつ

引用元: 子供「おまわりさんって彼女さんとかいるの?」警察「いるけど」