1: 2011/01/20(木) 09:46:07.69 ID:BGKlS4JU0
何気ない朝。

憂「お姉ちゃん起きて、ご飯できてるよ」

唯「うん。ありがとねういー」

憂「ううん、それより早くしないと遅刻しちゃうよ」

こうやって毎日が始まって、学校いって、部活して。
それで一日が終わる。
私はただそれだけの毎日が楽しかったし、ずっとこんな日が続くんだと思ってた。

憂「お姉ちゃん、学校いくよ」

唯「うん、今行くー」

そしてその日も憂と一緒に登校した。

2: 2011/01/20(木) 09:51:11.43 ID:BGKlS4JU0
がっこう!

唯「おっはよーみんな!」

律「お、今日は珍しく遅刻しなかったなー唯ぃ」

笑いながらそう言ってきたのは田井中律ちゃん。
私のクラスメイトで、そして軽音部の部長さん。

唯「失礼なりっちゃん!私めったに遅刻しないよ!?」

律「そっか、わりーわりー」

3: 2011/01/20(木) 09:53:57.06 ID:BGKlS4JU0
明るくて元気なのが取り得の律ちゃんには、幼馴染が居ます。

澪「唯おはよう」

唯「おはよう澪ちゃん」

この人は秋山澪ちゃん。
りっちゃんの幼馴染で軽音部のベース担当。
軽音部で一番しっかりしてる頼れるお姉さん・・・のはずなんだけど。

律「澪ー昨日幽霊がでてきてな・・・」

澪「ミエナイキコエナイ・・・」フルフル

澪ちゃんは大の怖がりさんです。

4: 2011/01/20(木) 09:59:20.24 ID:BGKlS4JU0
紬「あら唯ちゃんおはよう」ニコッ

唯「おはようムギちゃん!」

笑顔で挨拶してくれたのは琴吹紬ちゃん。
おっとりぽわぽわかわいい人です。

紬「そういえば今日はアメリカ大統領もお気に入りのマドレーヌを持ってきたから、放課後は楽しみにしておいてね♪」

ムギちゃんはすごいお嬢様です。
そんなムギちゃんが持ってくるお茶やお菓子をいただきながら談話するのが私達の部活です。
あれ、なんか違うような?

澪「ムギのマドレーヌも食べたいけど、練習もしないとな?」

そうだ、私達は軽音部だった。

6: 2011/01/20(木) 10:03:46.06 ID:BGKlS4JU0
そんなこんなでほうかご!

律「部活だー!」

唯「マドレーヌだー!」

澪「練習だろっ!」

紬「あらあら」ウフフ

ちなみに私達軽音部にはもう一人部員がいる。

ガチャリ

7: 2011/01/20(木) 10:06:58.94 ID:BGKlS4JU0
梓「遅れてすみません」

唯「あーずにゃん!」

だきっ

梓「ふえっ!?」

このかわいい子は中野梓ちゃん。
私達軽音部大事な大事な後輩。
私が付けたあだ名はあずにゃんで、いつもこうやって抱きついてスキンシップを取っている。

梓「ゆ、唯先輩苦しいです!」

唯「あっごめん!」パッ

8: 2011/01/20(木) 10:18:21.64 ID:BGKlS4JU0
律「でさー澪の奴がさー」

澪「わー!それは言わない約束だろ!」

唯「あはは、澪ちゃんおもしろーい」

澪「わ、笑うな!」

こんな毎日が私は大好きだ。
みんなでお話したりお茶のんだり練習したり、それだけできれば私は満足だった。

紬「はい、お茶よ」

唯「わーいありがとう!」

気のせいだろうか、カップに注がれた紅茶が微妙に振動している・・・
いや、気のせいじゃない。まさか!?

ゴゴゴゴゴゴゴ

すさまじい地鳴りと共に床が揺れ始める。
おそらく校舎全体が揺れてるのであろう、あちこちから悲鳴や怒号が聞こえる。

9: 2011/01/20(木) 10:26:41.27 ID:BGKlS4JU0
窓ガラスやティーカップが割れる音が響く。

途中で私は後頭部に激痛を感じて気を失ってしまった。

・・・

『生存者は聞こえたら返事してください!生存者は聞こえたら・・・』

あれからどれぐらいの時間が経ったのだろう。
目を覚ました時には体中が痛かった。
そして何より気になったのはこの状況だ。
私は今ガレキの山にうもれている。
コンクリートだろうか、特有の冷たさが不安を加速させる。

ガタン

顔の上のコンクリートが動いた。
ああ、これが落ちてきて私氏ぬのかな。
そんなことを考えていた。

10: 2011/01/20(木) 10:33:32.51 ID:BGKlS4JU0
『おい、人がいるぞ!』

動いたコンクリートがどかされ、そこから光が見えた。
薄暗い中に差し込む細い光が顔に当たり、少し目を細める。

『生存者だ!生存者がいるぞ!』

生存者・・・か、言い方からしてどうやら氏人も出てるらしい。

『大丈夫か!今助けるから、意識をしっかり持つんだぞ!』

若い男の人のものであろうその声は、私に希望を与えてくれた。

コンクリートがどかされ、助け出された私は何が起こったのかようやく理解した。
目の前に広がっているのはガレキの山。
ところどころ人の手や足が転がっている。
ああ、私氏ぬところだったのか。
生き残ったにも関わらず、私は妙な寂しさを感じた。

12: 2011/01/20(木) 10:40:45.62 ID:BGKlS4JU0
『・・・唯・・・』

誰かが私を呼んでいる。

律「おい、唯?」

気が付くとそこはいつもの音楽室で、みんなが私の事を心配そうな顔で見ている。

唯「あ、あれ。りっちゃん!?」

さっきまでの激しい痛みは消え、傷もすっかり癒えている。
夢・・・?いやそんなはずはない、あの痛みを私は覚えているし、ちゃんと思考も働いた。
あれは夢ではない、間違いなく現実だった。
だとしたら今この状況はなんだ?

律「大丈夫か?唯」

澪「具合でも悪いのか?」

唯「いや・・・大丈夫、夢を見てた・・・怖い怖い夢・・・」

律「そうか・・・それは怖かったな・・・」

りっちゃんは何も聞かずに抱きしめてくれた。
澪ちゃんは「大丈夫か?」と慰めてくれた。
ムギちゃんは優しくハンカチを貸してくれた。

・・・あれ?あずにゃんは?

13: 2011/01/20(木) 10:46:31.66 ID:BGKlS4JU0
ガチャ

梓「遅れてすみません」

唯「あーずにゃん!」

だきっ

梓「ふえっ!?」

あずにゃんは急に抱きつかれて驚いている。
あれ、なんか前にもこんなことがあったような。これってデジャヴって言うんだっけ?

梓「ゆ、唯先輩苦しいです!」

唯「あっごめん!」パッ

やっぱりだ、この流れはさっきと同じ。
そして私の予想が正しければさっきの体験はおそらく予知能力の一種だろう。

唯「みんなわたし!私放送室に行かなきゃ、詳しい事は後で話すからとにかく校庭に逃げて!」

律「お、おい唯」

それだけ言うと私は1階の放送室へ走った。

澪「行っちゃった・・・」

14: 2011/01/20(木) 10:53:00.00 ID:BGKlS4JU0
唯「ハァ・・・ハァ・・・」

息を切らしながら階段を駆け下り、放送室に飛び込んだ。

放送部員「あら、平沢さんじゃない。」

唯「ちょっとマイクかして!」

私はそういうと、放送部員の「ちょっと・・・」という発言を無視してマイクを奪い取りスイッチを入れる。

唯『全校生徒のみなさん、今から数分後に大地震が来ます、今すぐ逃げてください!!』

私は力いっぱいに叫んだ。

放送部員「ちょっと平沢さん!」

唯「いいから!」

唯『早く逃げてください!これは本当です!お願い信じて!』

部活動中の生徒達が一気に騒がしくなる。

15: 2011/01/20(木) 10:58:26.17 ID:BGKlS4JU0
放送部員「ちょっと平沢さんあなた・・・」

唯「逃げるよ!」

放送部員の言う事を無視し、その子の手をつかんで玄関へと走る。
そして校舎の外に出た時、私は重大な事に気付いた。

軽音部のみんなが見当たらない。まだ中にいるんだ。

私はもう一度校舎の中に入って、階段を駆け上がった軽音部の部室である音楽室は3階。
ただでさえ日頃運動不足の私にはちょっとキツかった。
でもそんなの気にならないぐらい、みんなの事が大事だった。

教師A「あ、平沢さんちょっと待ちなさい!」

唯「ごめん先生、すぐ逃げて!」

そういうと教師Aを無視して真っ直ぐ音楽室へと向かう。
間に合え!間に合え!

17: 2011/01/20(木) 11:03:47.46 ID:BGKlS4JU0
ガチャ

律「お、おい唯。さっきの放送・・・」

唯「もう!逃げてっていったじゃん!」

その日私は珍しく怒った。
そして近かったあずにゃんとムギちゃんの手を取り、引っ張って走り出す。

梓「あ、ちょっと唯先輩!」

あずにゃんはコケそうになりながらなんとか体勢を立て直す。

紬「私、友達に手を引っ張られて走るのが夢だったのー♪」

ムギちゃんは相変わらずぽわぽわだ。
そして2人の手を取ったまま階段を駆け下りる。
もちろん体勢を崩したり転んだりしたがそんなの今は関係ない。とにかく走った。
後ろからりっちゃんと澪ちゃんの声がする、どうやら追っかけてきてくれてるようだ。

そして2人の手を握ったまま玄関から思いっきり外にでた。

梓「唯先輩!」

律「おい唯、一体どうしたって言うんだよ!」

りっちゃんと澪ちゃんも外にでてきた。

18: 2011/01/20(木) 11:11:44.61 ID:BGKlS4JU0
直後に激しい揺れが来て、校舎は倒壊した。
怒号に近い叫び声が聞こえる。
りっちゃんたちは何が起こったのかわからないみたいだ。

梓「え・・・え・・・?」

梓は驚いた様子でポケットから携帯を取り出し、誰かに電話を掛けている。
一度慌ててケータイを落としたが、すぐに拾って掛けなおす。

梓「純!純!無事?ねえ純!」

純『あ、梓。今地震すごかったねー、それでどしたの?そんな声出して』

梓「よかった・・・よかった・・・」グスン

あずにゃんは純ちゃんに電話してるみたい。そりゃ友達だから心配だよね。

梓「うん、じゃあね。」

あずにゃんの電話が終わる。

和「唯!無事?怪我はない?」

唯「のどかちゃん!私は無事だよ!のどかちゃんこそ大丈夫?」

和「ええ、私は大丈夫よ、それにしても酷いわね、この状況・・・」

19: 2011/01/20(木) 11:19:34.58 ID:BGKlS4JU0
唯「のどかちゃん・・・今生徒会の時間だよね?信じてくれたの!?」

和「あたりまえじゃない、唯が嘘言うわけないもの。それに唯があんなに必氏に何かを訴える事なんて滅多にないもの」

唯「よかった・・・よかったぁ・・・」グスッ

澪「ごめんな。私、最初は唯の言う事信じてなかった。」

律「私もだ、部長でありながら部員を信じられないなんて本当に情けない・・・」

紬「本当にごめんなさい・・・」

梓「唯先輩・・・すみませんでした!」

唯「いや、いいんだよ。結局こうやってみんな無事だったしね」

澪「唯のおかげだよ、本当にありがとう。」

唯「いやーそれほどでもー」テヘヘ

数分後に救急車や消防車が到着し、救助活動が行われた。
氏者5名負傷者17名。
私の放送が無かったらもっと氏傷者が出ていただろうと言われた。
全員は救えなかったけど、これでよかったのかな・・・

24: 2011/01/20(木) 11:52:08.64 ID:BGKlS4JU0
お通夜!

憂「うう・・・」グスン

友達が氏んじゃったのか、憂はずっと泣いている。
私にとって軽音部のみんなが生き残った事と、先に帰った憂が無事だったことは不幸中の幸いだと思う。

あの状況で彼女達を救ってあげる事が出来たのは私だけだ。
そして一人でも氏者を出してしまった責任も私にある。

律「唯・・・」

こういう時のりっちゃんはすごくやさしい。
深い所まで探ってくるわけでもなく、ただ一緒にいてくれる。
私は何度もりっちゃんのそういう所に助けられた。澪ちゃんがりっちゃんを好きになった理由がちょっとだけわかったきがした。

澪「もしかして唯、責任を感じてるのか?」

こういう鋭いところは流石澪ちゃんと言ったところかな。
澪ちゃんには隠し事できないや。

紬「これは天災なの、唯ちゃんのせいじゃないわ、それに唯ちゃんは私達や和ちゃんを救った。それだけでも感謝されるべきよ。」

ムギちゃんの言う通りなのは分かってる。
でも、私はどうしても思ってしまう。
あの時本当に助けられなかったのか?って。

26: 2011/01/20(木) 11:56:27.02 ID:BGKlS4JU0
梓「私も唯先輩が責任を感じる必要は無いと思います。唯先輩の放送のお陰でジャズ研の人たちは無事だったんですし。」

唯「みんなぁ・・・ありがとう!」グスン

私は泣いてしまった。
みんなの前で泣いてしまった。
きっと遺族の方はもっともっと辛いはずなのに。
私は声を上げて泣いてしまった。

そして・・・

30: 2011/01/20(木) 12:05:20.78 ID:BGKlS4JU0
あの地震から数ヶ月

私立の学校だった桜高は、校舎倒壊の為休校中だ。

私は特にする事もなく、部屋でボーっとしていた。
そしてふとあずにゃんの友達の純ちゃんの顔が思い浮かんだ。
私と純ちゃんはあまり面識は無いのに、どうしてだろう。

そんな事を考えてた時、携帯電話が鳴った。
えっと・・・あずにゃんからメールだ。

『From:あずにゃん

 唯センパイ・・・ついさっき、純が事故で亡くなりました。』

メールの内容はそれだけだった。

33: 2011/01/20(木) 12:11:31.36 ID:BGKlS4JU0
正直私は驚いた。
つい今純ちゃんの事を考えてたら、その純ちゃんが氏んだ?
地震のときといい今回の件といいにわかに信じがたい事だ。
それに私はこれが偶然だとは思えなかった。

どうやら私は予知能力を手に入れたらしい。
それも人の氏ばかりを予知してしまう最悪の予知能力だ。

でもこの力をうまく使えれば人を助ける事ができるかもしれない。

そして次に私の頭に浮かんだ人物は・・・


あずにゃんだった。

35: 2011/01/20(木) 12:19:52.24 ID:BGKlS4JU0
あずにゃんが危ない!

そう思った私はあずにゃんの家まで走った。

距離はそう遠くない。

ピンポーン

インターホン越しに、聞きなれた声が聞こえた。

唯「あずにゃん!私だよ、唯だよ!」

梓「唯先輩!?今出ます!」

そうしてガチャリと開いたドアから涙目のあずにゃんが出てくる。
友達が亡くなったんだもんね、泣いてて当然か。

「上がってください」というあずにゃんの言葉に甘えてあずにゃんの家に入る。

37: 2011/01/20(木) 12:29:38.35 ID:BGKlS4JU0
梓「ところで唯先輩、どうしてうちに?」

唯「えっと・・・」

まさか、「次はあずにゃんが氏ぬから」なんて言えない。

梓「でも、うれしいです。」

え?

梓「一人でいるのが寂しくて寂しくて・・・唯先輩が来てくれてうれしいです!」

そういうとあずにゃんは涙目のまま私の胸に飛び込んできて、声を上げて泣いていた。

唯「あずにゃん・・・」

私はそっとあずにゃんの頭を撫でる。
あずにゃんは私がなんとしても守る、そう決心した。

39: 2011/01/20(木) 12:44:04.89 ID:BGKlS4JU0
とは思ってみたものの。実際いつどういう形で氏が襲い来るかは分からない。
私があずにゃんと一緒にいることで守れる?下手したら2人とも氏に兼ねない。

唯「あずにゃん、りっちゃん達も呼ぼう」

そして私はりっちゃんと澪ちゃんとムギちゃんにメールを発信する。
丁度3人共暇らしく、あずにゃんの家に集合する事になった。

梓「あの・・・唯先輩、何か私に隠し事してませんか?」

私はびっくりした。
あずにゃんにも隠し事はできないか。そう思いこれまでの事を全て話した。
あずにゃんは一瞬何かを考えていたようだけど、すぐ笑顔になって。
「大丈夫です、私が氏ぬわけないじゃないですか」と、これまでの泣き顔を忘れさせてしまうほどの笑顔で言った。

43: 2011/01/20(木) 14:35:15.93 ID:BGKlS4JU0
やがてりっちゃん達がやってきて、これまでの事を話した。
りっちゃん達は驚くほど飲み込みが早かった。
普通ならこんなのただの偶然で済まされるかもしれない。

でも、あの地震を経験した私やりっちゃん達にとって、これは偶然だとは思えないのでした。

そこで私達は、なんでもよく知っているトミおばあちゃんに聞きに行く事にした。
トミおばあちゃんは若い頃占い師をやっていたらしく、何か収穫が得られるかもしれない。
そんな気がしたからだ。

あずにゃんと澪ちゃんにはあずにゃんの家で留守番をしてもらって。私とりっちゃんとムギちゃんだけで行く事になった。
今危険な状態のあずにゃんを連れ出すわけにはいかないもんね。

そうしてあずにゃんの家を後にした。

45: 2011/01/20(木) 14:43:02.27 ID:BGKlS4JU0
ピンポーン

インターホンのチャイムが鳴り、優しそうなお婆さんの声が聞こえる。
私の声を聞くなり「唯ちゃんかい、ちょっとまってね。」とお婆さん。
それからすぐに玄関の戸が開きトミお婆ちゃんが出てくる。

唯「こんにちはトミお婆ちゃん、今日はトミお婆ちゃんに相談があって・・・」

私は地震の事、純ちゃんの事、そして今あずにゃんが危ないであろうという事を伝えた。
するとトミさんは「その梓って子の写真はあるかい?」と聞いてきたので私は携帯の写メのあずにゃんをトミさんに見せた。
トミさんは「うーむ・・・」としばらく何かを考えている顔をし、それから私に伝えた。

トミ「この子には死神が付いてるねえ・・・」

46: 2011/01/20(木) 14:50:47.31 ID:BGKlS4JU0
死神・・・?
漫画やゲームでよくみるあの死神?だとしたらあずにゃんは鎌で首を・・・
いや、流石にそんなことはないよね。

その後トミさんから死神について説明を受けた。
死神というのは簡単に言えば意志を持つ運命らしい。
元々震災で氏ぬはずだったあずにゃん達を予定通りに氏なせるため、強引に氏を呼び寄せてるんだとか。
ちなみにりっちゃんとムギちゃんにもその死神は憑いていて、でもその死神は今は活動してないらしいという事も。

そして最後にトミさんはこういった。
「氏から逃れる方法がある」と。

47: 2011/01/20(木) 14:59:30.09 ID:BGKlS4JU0
唯「氏から逃れる方法・・・」

トミさんが言うには、死神は一定の期間内に標的を殺せなかった場合、次の標的を頃しに行くらしい。
その場合元々標的だった人は死神の標的から外され、この理不尽な"氏"の運命から逃れることができるらしい。
ただその期間というのは人それぞれで、それはいつになるかわからないらしい。
でもトミさんは期間が過ぎた事が分かるらしい。だからちょくちょく会いに来なさいとトミさんは言った。
ちなみにあずにゃんの死神は現在絶賛お仕事中で、どんどん氏を招き入れてる最中だという。
他の人がいる限り巻き込むような事はないと言うけど、それでもやっぱり心配だ。
すぐにあずにゃんの家に戻る事にした。
戻る直前に「唯ちゃん、これも持っておいき」といってなにやら数珠のようなものを渡された。
これがどんな効力を持っているのかは分からないけど、どうやらお守りのようなものらしい。

そして私は急いであずにゃんの家へと戻った。

48: 2011/01/20(木) 15:25:35.92 ID:BGKlS4JU0
あずにゃんの家!

トミさんに聞いた事をあずにゃんと澪ちゃんに伝えた。
「私、助かるんですか?」と言ったあずにゃんの曇った表情が笑顔に変わる。
こんな先輩でごめんねあずにゃん、期間が過ぎるまで絶対守ってあげるからね。

昼ごはんはみんなでMバーガーに食べに行く事になった。

その時私は何か悪い予感がしたが、気のせいだと言う事にした。
せっかく解決策も見つかったのに、こんなこと言ったらまた暗くなっちゃうもんね。

しかし案の定予感は的中してしまう結果となった。

51: 2011/01/20(木) 15:38:55.16 ID:BGKlS4JU0
律「唯あぶない!」

唯「え?」

よくわからず振り返ると大型のトラックがもう目の前まで迫っていた。
咄嗟に逃げ出そうとしたが・・・だめだ、腰が抜けて動けないや。
私このまま氏ぬのかな。
私は怖くなって目を閉じた。
直後私の体は何かに突き飛ばされ尻餅を付いた。

ってあれ?尻餅?

目を開けた瞬間トラックが私の目の前すれすれを通過した。
直後トラックは石垣に突っ込み大破する。

唯「え・・・?あ・・・」

あまりの恐怖に私は声がでなかった。

律「唯!大丈夫か!」

トラックが通った道を挟んで向こう側には。
私に向かって叫んでるりっちゃんと、余程ショックだったのか立ったまま失神してる澪ちゃん、そして今にも泣きそうなムギちゃんがいた。

・・・あれ、あずにゃんは?

52: 2011/01/20(木) 15:47:52.43 ID:BGKlS4JU0
りっちゃんが駆け寄ってくる。

律「大丈夫か?怪我はないか?」

捻挫ぐらいはしたけど、こんなの怪我のうちに入らない。

唯「ねえ、あずにゃんは・・・?さっきまで一緒にいたよね?」

律「梓は・・・」

そういってりっちゃんは大破したトラックの方を見る。
え、嘘でしょ。あずにゃんが轢かれた・・・?

唯「救急車!救急車を呼ばなきゃ!いやっ、あずにゃん!あずにゃああああああん!!」

私は叫んでトラックの方に走ろうとしたが、りっちゃんが「危ないから止せ」と言って私を止める。
確かに危ないかもしれない、でもあずにゃんはもっと危ない状態なんだ。
りっちゃんを振り切り、トラックの方へと走った。
そしてそこにあったのは。

もはや原型を留めてない元あずにゃんがいた。

53: 2011/01/20(木) 15:54:58.84 ID:BGKlS4JU0
唯「あ・・・あ・・・」ポロポロ

気がつくと私は涙を流して泣いていた。
人目のある路上で泣いていた。

やがて救急車が到着するが、すでに手遅れだと判断された。即氏だったらしい。
私のせいだ。
私があんなところを歩いてたから。
私がもたもたしてたから。
最低の先輩だ、守るって決めたものも守れないなんて。

その日以来、私は部屋に引きこもった。

54: 2011/01/20(木) 16:06:32.32 ID:BGKlS4JU0
私はいつも誰かに迷惑を掛けている。
姉なのに妹に世話をされて、後輩に命を救ってもらって。
そのせいで私は大切な大切な後輩を失ってしまった。
どこかで聞いた歌の事を思い出した。

唯「失ってしまった代償は、とてつもなく大きすぎて。取り戻そうと必氏に手を伸ばしてもがくけれど。」

気がつくとその歌を口ずさんでいた。
失ってしまったものは二度と戻らない。どれだけもがいても、どれだけ頑張っても。
するりと風のようにすり抜けて行く。その度に私は涙を流す。

その時、澪ちゃんとりっちゃんの顔が思い浮かんだ。

2人が危ない!!

55: 2011/01/20(木) 16:18:33.69 ID:BGKlS4JU0
私は急いでりっちゃんと澪ちゃんにメールを送る。2人とも返事はない。
澪ちゃんに電話だ・・・

『現在、電話に出ることが出来ませn』

繋がらない。
りっちゃんにも!

もちろん繋がらない。

なんとかして伝えなくてはいけない、私はその時そう思ってました。
そして家を飛び出し、りっちゃんの家へ向かったのでした。

57: 2011/01/20(木) 16:35:52.96 ID:BGKlS4JU0
りっちゃんの家に付いた私はぞっとした。
なぜならりっちゃんの家の周りには数台の消防車が止まっていて、何よりりっちゃんの家は黒焦げだったから。

またか・・・
私は諦めた。
澪ちゃんも電話にでないということはたぶん澪ちゃんも一緒だったのだろう。

「唯ぃ!!!」

誰かが私を呼んでいる。
振り返るとそこには、りっちゃんと澪ちゃんがいた。

唯「2人とも・・・幽霊?」

律「だーっ、そんなわけないだろー。私達は見ての通り無事だよ。」

唯「で、でも澪ちゃんとりっちゃんに電話しても繋がらなかったし・・・」

澪「それで心配してくれたのか、ありがとな唯。」

その後りっちゃん達からいろいろ聞いた。
どうやら出火の原因は放火らしい。
目撃証言が無いせいで犯人特定は難しいそうだ。
電話に出られなかったのは携帯が燃えてしまったかららしい。
でも二人が無事で本当に良かった・・・

58: 2011/01/20(木) 16:49:19.89 ID:BGKlS4JU0
現場処理は消防員と警察に任せるて、私達は公園に向かった。

公園でベンチに腰掛ける。
私、澪ちゃん、りっちゃんの順番で座っている。

りっちゃんは自分の家が燃えたのにどうしてあまり落ち込んだ様子じゃないんだろう。

律「あのさ、唯。聞いてくれるか?」

唯「なに?りっちゃん」

律「澪にはもう言ったけどさ。私、本当は辛いんだよ・・・」

意外だった。いや当然といえば当然なのだと思う。
でも平然としてたからそうでもないのかとばかり思ってた。

律「梓の時だってそうだけど、私だって泣きたかった。
  でも・・・私が泣いたらだめだなって・・・部長だからしっかりしなきゃって・・・
  ずっとそればかり考えてた」

唯「りっちゃんは強い人間だね」

律「ははは、澪と同じ事言うんだなぁ唯。でも私は全然強くない、本当は・・・」

唯「本当は?」

律「あ、ごめん唯。やっぱ今の聞かなかった事にして」

59: 2011/01/20(木) 17:15:42.05 ID:BGKlS4JU0
ちょっと前までの私だったら「気になるよー」とか「隠し事はダメだよ!りっちゃん!」とか言ってたんだろうな。
でも今の私はそんな事は言えない。
はぁ。あの頃にはもう戻れないのかな。

そんなことを思いながらその日はりっちゃんたちと別れて家に帰った。

そういえばりっちゃんは澪ちゃんの家に泊まる予定らしい。
本当に2人は仲良しだなぁ。

家に帰ったら憂が「お姉ちゃんどこいってたの!?急にいなくなるから心配したんだよ!」と涙目で言ってきた。
「えへへごめんごめん~」と言って憂に謝った。心配させてごめんね、憂。

65: 2011/01/20(木) 18:09:19.84 ID:BGKlS4JU0
つぎのひ!

学校はまだ休校らしい。毎日が退屈だ。
全てが狂い始めたのはあの地震の時からだ。
私の大切だった楽しい毎日は一瞬にして崩壊した。
そして代わりに訪れたのは深い悲しみと後悔だけ。
この悲しみの先には一体何があるのだろうか。

チャララーン

携帯電話がなった、ムギちゃんから電話だ。

唯「もしもしムギちゃん?」

紬『大変なの唯ちゃん!!落ち着いて聞いて、りっちゃんと澪ちゃんが通り魔にやられたって!』

ムギちゃんが泣いているのは電話越しでも分かる。
そんな、りっちゃんと澪ちゃんが?

紬『重体らしいわ、現在手術中らしいの・・・桜ヶ丘中央総合病院、唯ちゃんも来て一緒に祈ってあげて?』

もちろんそのつもりだ。
私はそそくさと仕度を済ませ桜ヶ丘中央総合病院へ向かう。

66: 2011/01/20(木) 18:23:32.58 ID:BGKlS4JU0
総合病院に着いた私は手術室前へと急いだ。

・・・

手術室の前には泣きじゃくるムギちゃんと、申し訳なさそうに頭を下げる医者の姿があった。
どうやら遅かったみたいだ。

紬「唯ちゃん・・・りっちゃんも澪ちゃんも手遅れだって・・・」グスン

それだけいうとまたムギちゃんは声を上げて泣き始めた。

紬「唯ちゃん・・・私も・・・氏んじゃうのかな?」

ムギちゃんは泣きながら私に聞く。

そんなの・・・

唯「ムギちゃん、よく聞いて」

そんなの・・・

唯「ムギちゃんは・・・」

私に分かるわけないよ!

唯「ムギちゃんは氏んじゃだめ、だから生きよう。みんなの分まで精一杯!絶対に何があっても氏んじゃダメだから!」

67: 2011/01/20(木) 18:32:45.62 ID:BGKlS4JU0
病院でムギちゃんと別れた後、私はすぐには家に帰らずにあずにゃんのお墓に寄った。

唯「ねえあずにゃん」

私は天国のあずにゃんに話しかける。
と言っても一方的に話すだけなのだけれど・・・

唯「りっちゃんと澪ちゃんも、亡くなっちゃったよ」

唯「私今ね、悲しいんだよ」

唯「あずにゃんがいなくなって、りっちゃんも澪ちゃんも」

唯「もう・・・あの頃には戻れないんだね・・・」

生暖かい涙が私の頬を伝う。

73: 2011/01/20(木) 18:55:17.37 ID:BGKlS4JU0
変だよね、後輩のお墓で泣きじゃくる先輩なんて。

その時後ろにふと人の気配を感じて振り向く。
憂「お姉ちゃん!」

唯「憂・・・」

憂「お姉ちゃんも梓ちゃんのお墓参り?」

唯「うん・・・そしたらなんか寂しくなっちゃってね、もうあの頃の戻れないんだろうなあって・・・」

憂「お姉ちゃん、梓ちゃんはお姉ちゃんを庇って亡くなったんだよね?」

唯「うん、私のせいで・・・」

憂「ちがーう!私が言いたいのは、梓ちゃんが命を賭けて守ったお姉ちゃんの悲しんでる姿を見て喜ぶと思う?」

唯「分からないよ・・・あずにゃんはもういないんだから・・・」

憂「そうだね、でも私は梓ちゃんはお姉ちゃんがくよくよしてる事なんて望んでないと思うな」

唯「憂・・・」

憂「律さんや澪さんだってきっとそのはずだよ、だから泣いちゃだめ。寂しくなっても私がいるから!」
そういって憂は優しく抱き締めてくれた。
やっぱり憂は温かい・・・

その時、私の脳内にある人の事が浮かんだ。
次は和ちゃんだ・・・

74: 2011/01/20(木) 19:05:43.47 ID:BGKlS4JU0
和ちゃんに電話を掛ける。
そういえば和ちゃんはまだこの事知らないんだっけ。

唯「もしもし和ちゃん!いますぐ伝えなきゃいけない事があるの!」

和『どうしたの唯?そんなに慌てて。』

私はこれまでの事を全て話した。
あずにゃんの友達の純ちゃんの事。あずにゃんの事。トミさんの事。りっちゃんの事、澪ちゃんの事。

そして、次の順番が和ちゃんである事を・・・

和ちゃんは「そう・・・」と落ち着いた声で言った。

唯「怖くないの・・・?」

和『怖いに決まってるじゃない!』

即答だった。
当たり前だよね、自分が氏ぬって分かってて。
100%じゃいにしろ氏ぬって言われて怖くない人なんていないよね。
私はこの質問を酷く後悔した。

和『だって・・・どうしようも無いじゃない・・・』

その後和ちゃんがすすり泣く声が電話越しに聞こえてくる。

75: 2011/01/20(木) 19:14:46.87 ID:BGKlS4JU0
唯「ごめん・・・」

和「いいわ、唯のせいじゃないもの・・・」

・・・

正直かなり気まずい。
でも私は和ちゃんを氏なせたくないから・・・

和『唯、1つだけお願いがあるの』

唯「何?和ちゃん」

和『明日一日、私と一緒に居てほしいの』

唯「当たり前だよ!むしろ期間が終わるまでずっと一緒に居てもいいんだよ」

和『ありがとう唯、でもそれはいいわ。明日一日だけで十分よ』

唯「でも和ちゃんは・・・」

和『大丈夫、私は氏なないから。それに唯だってずっと私と居たら迷惑でしょ?』

唯「そんな事ないよ!だって和ちゃんは親友だから・・・」

和『親友・・・ありがとう唯。でも明日だけ、お願いするわ』

唯「わかった。また明日ね、和ちゃん」

こうして会話は終了した。

79: 2011/01/20(木) 19:46:29.50 ID:BGKlS4JU0
つぎのひ!

私は和ちゃんに頼まれた通り和ちゃんの家に向かった。
和ちゃんの家は私の家のすぐ近くだ。

ピンポーン

ドアが開いて和ちゃんが出てくる。
「あがって」と言う和ちゃんは、昨日の電話なんかなかったと思えるぐらい普段通りだった。

唯「・・・」

和「・・・」

和ちゃんの部屋に来たのはいいが無言の時間が続く。
その沈黙を破ったのは和ちゃんだった。

和「ねぇ唯」

唯「なぁに?和ちゃん」

和「その・・・いつも中野さんや憂にやってたみたいにぎゅーってしてくれない?//」

唯「いいよ、和ちゃん」

だきっ

和「唯・・・ありがとう・・・」

そう呟いた和ちゃんの体は、ふるふると震えていました。

80: 2011/01/20(木) 20:00:51.68 ID:BGKlS4JU0
その日、たくさんお話しました。
昨日あったテレビ番組の話、最近ハマってるゲームの話、冬にも食べれるアイスの話。
そんなこんなで楽しい時間はあっという間に過ぎて行き・・・

和「こんな時間までごめんね唯、憂も心配してるだろうから早く帰りなさい」

唯「うん、楽しかったよ!"またね"!」

和「そうね、また・・・ね」

久しぶりに和ちゃんといっぱいお話しました。
最後に和ちゃんの表情が一瞬曇ったのを、私は見逃しませんでした。

83: 2011/01/20(木) 20:21:03.09 ID:BGKlS4JU0
トミお婆ちゃんは言った、期間内に氏なずに生き残ることができれば氏の運命から逃れられると。
でも一体どうやって生き残ればいいの?誰かが一緒にいても無意味だってことはあずにゃんの時に証明された。
もちろんバラバラになってもダメだってことはりっちゃんや澪ちゃんのときに・・・

唯「わかんないよ・・・」

今度こそは助けたい、私の唯一の幼馴染で親友の真鍋和を。
その為にはどうすればいい。和ちゃんに家からでないように言う?
ううん、家から出なくてもりっちゃんの家が燃やされたみたいに危険はあるし・・・
だったらどっかの秘密組織にでもかくまってもらう!?
・・・できるわけないか。

そんなこんな考えてるうちに眠りに付いてしまうのでした。

84: 2011/01/20(木) 20:34:07.07 ID:BGKlS4JU0
憂「お姉ちゃんご飯できたよー」

唯「うんー、今いくよ。」

普段通りご飯を食べて、ごろごろする。
それが私の日課なのだけれど、最近はみんなの事ばかり考えてしまう。

亡くなってしまった大切な友達と後輩、そして今氏の危険に晒されている親友の事。

私には何もできないのか?私は自分の無力さを悔やんだ。
唇を強く噛みすぎて血が滲んだ。

和ちゃん、絶対氏なないで。

85: 2011/01/20(木) 20:46:07.79 ID:BGKlS4JU0
今日はりっちゃんと澪ちゃんのお葬式だった。
変わり果てた2人の姿を見て私は泣いた。
私の隣でムギちゃんも泣いていた。

和ちゃんは・・・泣いているというより落ち込んでいるだね・・・

地震の時予知したあれが正しければ、私は氏なずに生き残ってしまう。

それでも私は生きれる限り生きて、氏んでいったみんなの分までしっかり生きようと誓うのでした。

果たしてこの惨劇に終わりはあるのだろうか・・・

87: 2011/01/20(木) 21:00:27.67 ID:BGKlS4JU0
次の日、朝起きると同時にまたあの感覚が訪れました。

頭の中に人が浮かんでくる。

今度はあまり面識のない他クラスの人でした。
伝えてあげたい気持ちは山々だけど、名前も連絡先もしらないし・・・
申し訳ないけど、今回は諦めよう・・・

ん・・・次の標的に移ったって事は和ちゃんは!?

慌てて携帯を取り出して和ちゃんに電話を掛ける。

プルルルル・・・プルルルル・・・

おねがい繋がって!和ちゃん、電話に出て!

90: 2011/01/20(木) 21:14:49.15 ID:BGKlS4JU0
・・・

『ただいま電話に出ることができません』

私は絶望した。
どうして・・・

私は和ちゃんの家へと走った。

唯「ハァ・・・ハァ・・・」

お願い、出てきて!

ピンポーン

祈りながらインターホンを押した。

94: 2011/01/20(木) 21:56:45.59 ID:BGKlS4JU0
・・・

ガチャリという音を立ててドアを開けて出てきたのは。

唯「和ちゃん!」

和「唯、どうしたの?そんなに慌てて」


よかった・・・和ちゃんは無事だった・・・
でもさっき浮かんだ子は・・・
本当にごめんなさい。でも私にはどうしようもないし・・・

・・・って、和ちゃんはもしかして標的から外された!?

唯「和ちゃん、ちょっときて!」

私は和ちゃんを強引にトミお婆ちゃんの家まで引っ張って行く

97: 2011/01/20(木) 22:17:21.56 ID:BGKlS4JU0
トミ「あら、唯ちゃんどうしたんだい?」

そしてこれまでの事を話した。

トミお婆ちゃんは和ちゃんにはもう死神が付いてないと言うことを教えてくれた。
私は嬉しくて和ちゃんに抱きついた。
和ちゃんは「離れなさい」と言いながらも少し嬉しそうに照れている。

氏の運命にあった人を一人救えたんだ!

98: 2011/01/20(木) 22:23:06.03 ID:BGKlS4JU0
だけどその夜からは地獄だった。

一日に4~5人が私の頭に浮かぶ。
連絡が取れる人には伝えたけれど、結局その後一人も救えなかった。

毎日毎日誰かが氏ぬのを救えずにただ黙って待ってるだけ。
もうどうにかなりそうだった。

そしてあの時が訪れる。

その日もいつものように頭の中に何人もの人が浮かんでくる。

そして、私の頭に浮かんだのは、ムギちゃんだった。

100: 2011/01/20(木) 22:32:31.49 ID:BGKlS4JU0
ムギちゃんに電話をした。
ここ最近頭に浮かんでから氏までの感覚が急激に短くなってきている。
急がないと手遅れになり兼ねない。

唯「もしもし、ムギちゃん!」

紬『どうしたの唯ちゃん・・・もしかして・・・』

唯「ムギちゃん、言いにくいけど・・・次、ムギちゃんなんだ」

「そう・・・」ととても残念そうな声でムギちゃんは呟く。
その声を聞くだけでもう心臓が張り裂けそうだった。

でもまだムギちゃんは助かるかも知れない、和ちゃんの時みたいに・・・

101: 2011/01/20(木) 22:40:22.59 ID:BGKlS4JU0
でも和ちゃんはどうして助かったの?
特に危機を回避するような事をした訳でもないし・・・
あーもう考えても仕方ないや。

唯「ムギちゃん・・・できるだけ安全な場所で、生き延びてね?」

紬『・・・』

ムギちゃんは少し黙っていたが「ええ」と言ってくれた。
後はムギちゃんの家の執事さんに任せたほうがいいよね。

私にできる精一杯の事。

それはただ祈ることだった。

104: 2011/01/20(木) 23:02:43.40 ID:BGKlS4JU0
次の日私が朝一に受けた知らせは残酷なものだった。

新聞の大見出しを見て、私は一瞬目を疑った。

『琴吹財閥の社長令嬢、自殺か!?』

記事を読んでいくと、どうやら睡眠薬の大量摂取による自殺。
どうしてムギちゃんが自殺なんか・・・
ムギちゃんの気持ちは分からない事もない、でもこんな事って・・・

その日から私は頭に誰かを浮かべる事がなくなった。

これは惨劇の終了を意味するのだろうか。

次の日、私と憂と和ちゃんで久しぶりに出かける事にした。

107: 2011/01/20(木) 23:17:15.62 ID:BGKlS4JU0
憂「お姉ちゃん起きてー、今日は和ちゃんとおでかけするんでしょ?」

唯「そうでした!」

ベッドから飛び起き、階段を降りる。
憂の用意してくれたご飯を食べて。仕度をする。

丁度仕度を済ませたところでインターホンのチャイムがなる。

私が玄関に行った時には憂が和ちゃんを出迎えてくれていた。

和「おはよう唯、憂。」

唯「おはよう和ちゃ~ん」

憂「和ちゃんおはよう」

今日は天気のいい絶好の出かけ日和だ。
これまでの出来事なんか全て忘れさせてくれるぐらいに・・・

和「じゃあ、行きましょうか」

110: 2011/01/20(木) 23:29:20.85 ID:BGKlS4JU0
久々に町に出て買い物を楽しんだ。
かわいい人形を見つけて喜ぶ私。
気に入った服を試着して顔を赤らめる和ちゃん。
ストラップをじーっと見つめて買うか買わないか迷ってる憂。

ああ、今私は本当に幸せだ。
平凡な日々がどれだけ幸せだったかを私は改めて痛感した。

昼ご飯は近くのファミレスで済ませた。

そして・・・

唯「はぁ~久しぶりにたくさん遊んだね、和ちゃん、ういー」

和「そうね、私も久しぶりだわ」

憂「うん、とってもたのしかったね!」

本当に楽し時間は短く感じるものだ。

そんなことを思っていた時だった。

111: 2011/01/20(木) 23:32:35.00 ID:BGKlS4JU0
またあの感覚が私を襲う。

あずにゃんを、りっちゃんを、澪ちゃんを、ムギちゃんの、みんなの氏を予知したあの感覚。

今回浮かんだのは。

唯「そんな・・・なんで・・・」

私の妹、憂だった。

そんな、憂はあの時学校にはいなかったはず、なのにどうして!?

唯「ねえ憂」

憂「なあに?お姉ちゃん」

唯「憂さ。あの地震の時、何かなかった?」

和「ちょっと唯、それってまさか・・・」

唯「うん、まさかだよ」

憂「・・・そんな」

112: 2011/01/20(木) 23:49:52.57 ID:BGKlS4JU0
憂「今まで黙っててごめん、本当は・・・」

憂の話によると、あの日の下校中憂は純ちゃんに呼び止められて振り返ったらしい。
そしてその瞬間地震がきて、憂のがさっきのまま歩き続けてたら通っていたであろう所にあった電柱が倒れた。
つまり純ちゃんに呼び止められなかったらそのまま電柱の下敷きになる所だったらしい。

なるほど、私が甘かった。
普通に考えたら分かる事だった、あれだけの地震で学校しか被害を受けないはずがないではないか。
つまり、私の放送で助かった純ちゃんは憂を助けた。
憂か間接的な関係者になってしまっていたのだ。

ふと気が付くと。落ち込んでいる憂の後ろから、大型のトラックが走ってきている。
それに速度も普通じゃない。なんであんな速度で一般道を!?

唯「憂あぶない!!」

叫ぶと同時に飛び込んだ私は、憂を道路脇に突き飛ばしていた。

直後、私は宙に浮いていた。
たぶんほんの一瞬の出来事だったんだと思う。

だけど私はその一瞬の間に、精一杯の笑顔を作った。

私はブロック塀に叩きつけられた。

叩きつけられた私にトドメを刺すように、さっきのトラックがそのまま直進してくる。

うい。これまでありがとね。

115: 2011/01/20(木) 23:54:27.56 ID:BGKlS4JU0
――――――――――――――――――――


唯「っていう感じで新歓ビテオを作ろうと思うんだけど皆どう思う?」

律「なんでそんなに内容がエグいんだよ!」

梓「全くです、先輩は純をなんだと思ってるんですか。」

唯「いやぁーごめんごめん」

紬「でも先輩を庇う後輩、妹を庇う姉。素敵だわ~♪」

澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ」ガクガク

梓「はぁ、こんなんで大丈夫なんでしょうか。これからの軽音部・・・」

おしまい!

116: 2011/01/20(木) 23:55:06.48
おい

121: 2011/01/20(木) 23:56:31.61 ID:BGKlS4JU0
最後かなり駆け足になっちゃってごめんなさい。

地震の後の氏亡ラッシュは『本来氏ぬ定めだった人を予定通り氏なせるため』です。

122: 2011/01/20(木) 23:57:33.49
え?

130: 2011/01/21(金) 00:05:34.24

引用元: 唯「死から逃れる方法・・・」