1: 2011/02/15(火) 02:20:32.56 ID:htTczUOl0
先輩たちが卒業しちゃってから一ヶ月。

この一ヶ月は新歓ライブの準備で何かと忙しく、我を忘れて練習に打ち込んでたから忘れてたけど。

それもひと段落ついて、改めて先輩たちがいなくなった部室を見渡してみると・・・・

一人でいるわけでもないのに、何だか寂しさが込み上げてくるようで・・・・

5: 2011/02/15(火) 02:21:14.56 ID:htTczUOl0
純 「練習終わりーっと。さぁ梓。かえろぉ?」

梓 「うん・・・・」

憂 「どうしたの、梓ちゃん?」

梓 「ううん。なんでもないよ」

憂 「なんでもないって顔じゃないけれど・・・・ どうかしたの?」

純 「ははぁ、わかった!新歓も終わったのにまだ入部希望者が来ないもんだから、たそがれちゃったなぁ?」

梓 「違うよ。いや、ま。それもちょっとはあるけど・・・」

純 「んじゃ、どうしたってのさ」


言えないよなぁ。

先輩たちと会えなくって、超さみしいよー!なんて・・・

6: 2011/02/15(火) 02:22:07.07 ID:htTczUOl0
憂 「じゃ私こっちだから。また明日ね」

純 「あいよ、おつかれー」

梓 「純、おじさんみたい。じゃあね、憂」

憂 「あはは。ケンカしないでね?それじゃー」

梓 「行っちゃったね。さ、私たちも行こう」

純 「うん。ときに中野クン。君、今わたしに何と言ったね??」

梓 「純おじさん」

純 「にゃろー!」ぐりぐり

梓 「あきゃっ!痛い!ごめ、ごめんって!モップが!モップが髪にからまる!!」

7: 2011/02/15(火) 02:24:45.70 ID:htTczUOl0
純 「それで?」

梓 「え?」

純 「梓ちゃんは、なんで元気がなかったのかな?」

梓 「何のことだか、さっぱり分からない」

純 「とぼけっぷりが中途半端ですよ。つか、気づかないとでも思ってた?」

梓 「もしかして純って鋭かった?」

純 「まったく」

梓 「じゃあ、純の勘違いだよ」

純 「なわけないでしょ。ここ数日ずっとそんな感じだし。一緒にいりゃ気がつくって」

梓 「鈍い純の勘違いじゃない?そういえば”鈍”と”純”って字、なんだか似てるよね」

純 「お前のツインテールをモップにしてやろうか?」

8: 2011/02/15(火) 02:26:34.13 ID:htTczUOl0
純 「私だけじゃなく、憂も心配してたんだよ」

梓 「うん、ちょっとだけ元気がなかった」

純 「あっさり認めた!?」

梓 「憂に見破られていたなら、誤魔化しは効かないからね」

純 「なんだろう、この気持ち。寂しいような切ないような」

梓 「ごめんね」

純 「まぁ良いけど」

梓 「あっさりしてるね」

純 「そこが私のいいところ」

梓 「浅漬け並みのあっさりさだね」

純 「褒めてんの?けなしてんの?」

9: 2011/02/15(火) 02:27:49.97 ID:htTczUOl0
梓 「先輩たちがさ。いなくなっちゃって、今までは忙しくってセンチになってる暇なんてなかったんだけど」

純 「ふむ」

梓 「落ち着いたら、急に部室がガランとしてる気がして。おかしいよね。純や憂も来てくれてるのに」

純 「ふむふむ」

梓 「なんでだろ。練習はしないし人に変なあだ名つけるし。ずーっと頭を悩ませてきた先輩がね」

梓 「いざいなくなったらさ、物足りなくて。周りの景色まで殺風景に見えてきちゃって」

梓 「おかしいね」

純 「寂しいのか」

梓 「だね。認めたくはなかったけど」

純 「会いに行ったら?」

梓 「へ?」

純 「新歓終わってちょっとは余裕もできたんだし、先輩たちも入学からしばらく経って落ち着いたでしょ」

純 「会いに行ってきなよ。唯先輩に」 

10: 2011/02/15(火) 02:30:47.76 ID:htTczUOl0
梓 「え?な、なんで唯先輩?」

純 「え?」

梓 「え?」

純 「だって・・・ 唯先輩でしょ?」

梓 「もしかして純、鈍くない?」

純 (変なあだ名をつけてたの、唯先輩だけだったじゃん。自分で言っておいて・・・)

純 「ま、まぁ・・・ 梓が思ってるほどには鈍くなかったってことだね」

梓 「すごいね、純。見直したよ。私の中での株が上がったよ」

純 「ずいぶん低かったんですね。今までの私の評価って」

11: 2011/02/15(火) 02:33:00.41 ID:htTczUOl0
梓 「とはいえ、忙しくないかなぁ。迷惑にならないかなぁ」

純 「迷ってる暇はないと思うけどなぁ」

梓 「なして?」

純 「なしてって、相手は花の女子大生だよ」

梓 「言い方がいちいちオジサンっぽい・・・」

純 「女子大生といえば、夢のキャンパスライフ!そこでの出会い!合コン!夜の街!ホテル街!ベッドの上!ぷはーっ、よかったぜ」

梓 「イメージが偏っていませんかね、純さん」

純 「まぁまぁ。新生活には誘惑がいっぱいって事だよ。早く連絡しないと、先輩が彼氏を作っちゃうかもよ」

純 「そうなったら、それこそもう梓をかまってる暇なんて無くなっちゃうんだから」

梓 「まさか、唯先輩に限って。それに先輩たちが入ったのは女子大だよ?女子高の三年間でも何もなかったのに・・・」

純 「だからさぁ、新しい環境は人を変えるんだって」

梓 「そんな・・・そんな・・・」

12: 2011/02/15(火) 02:35:36.87 ID:htTczUOl0
純 「それにさー。共学から進学してきた人とも当然しりあうじゃん?」

梓 「あ・・・」

純 「友達の横のつながりで、それ合コン!やれ交際!そく妊娠!なんて事も・・・」

梓 「あ・・・あ・・・」

純 「グズグズしてたら、次に来た連絡が”私たち結婚しました!”だったって事も・・・!!」

梓 「うえ・・・うえ・・・」

純 「お正月には赤ちゃんの写真入年賀状が送られてくるぞーー!」

梓 「い、やぁあーーー!」

純 (面白いやつだなぁー)

梓 「やだやだ。電話するー!」

純 「おう、ガンバレ」

15: 2011/02/15(火) 02:39:21.13 ID:htTczUOl0
梓 (携帯ピポパ)

ぷるるるぷるるる かちゃ

唯 「あ、あずにゃん!久しぶりぶりー」

梓 「乱れた私生活は許しませんからねぇえ!!!」

唯 「!?」   


・・
・・・
・・


かちゃっ つーつーつー

梓 「次の土曜日に会いにいってきます」

純 「うむ、よくやった」

16: 2011/02/15(火) 02:41:27.27 ID:htTczUOl0
梓 「じゃ、ここで」

純 「うん、また明日ね」

梓 「うん。あ、えっとさ、あの・・・純?」

純 「ほいさ?」

梓 「ありがとね、背中押してくれて」

純 「ウジウジじめじめな梓なんて、らしくないからさ。唯先輩から元気をチャージしてもらってきな」

梓 「チャージマン梓だね」

純 「そうだね」

梓 「流さないでよ」

純 「低予算アニメで止め絵ばっかだったけど、何気に一枚絵は良作画が多かったよね」

梓 「だからと言って、話を膨らませないで」

19: 2011/02/15(火) 02:47:50.37 ID:htTczUOl0
梓 「じゃ本当にここで。またね」

純 「うん、また」

純 「・・・・・」

純 「・・・・はぁ、私も人がいいなぁ」

純 「好きな人が側にいないのと、側にいても想いが通じないのと」

純 「どっちがましなんだろう。ね、梓・・・」

20: 2011/02/15(火) 02:49:54.85 ID:htTczUOl0
土曜日!!

唯の家の最寄り駅!!


梓 「ここで良いんだよね、降りるところ・・・あ」

唯 「うぉーい!あずにゃんーーーー!!!」

梓 「うぁ、大声で叫びながら、向こうで手を振ってるのは・・・///」

唯 「私はここだよーーーー!!!」

梓 「はうぅぅ・・・・ 唯先輩、恥ずかしいから大声は・・・あ、走ってきた」

21: 2011/02/15(火) 02:52:19.20 ID:htTczUOl0
唯 「あずにゃーーーーーーん!!!!」

がし!ぎゅうううううう!!

梓 「うぁぁぁぅ!急に抱き・・・ちょ、人目!人目がああ・・・・」

唯 「卒業してから初のあずにゃん分補充ーっ!」

梓 「離れ・・・ ちょ、離れっ!!」

唯 「満タンになるまで、ちょーっと待ってね。あずにゃん分タンクが今にも底を尽きそうなんだから!」

梓 「タンクって、何ですかそれ・・・ と、とにかくここでは離れてください!」

ぺちん

唯 「あふんっ! あぅ、あずにゃんのいけずぅ」

22: 2011/02/15(火) 02:56:32.59 ID:htTczUOl0
到着 唯の部屋!!


唯 「ここが私の部屋だよー。さ、入って入って」

梓 「お邪魔します・・・」

梓 「へー・・・・」

唯 「どうしたの?」

梓 「いえ、けっこう片付いてるなって思って」

梓 「先輩のことだから、もっと雑然としてるのかと思ってました」

梓 「足の踏み場がなかったり、汚部屋になっちゃってたり。ふふっ」

唯 「あずにゃんの中の私って、そんなイメージなのー?」

梓 「今日で少しだけしっかり者にレベルアップしたです」

唯 「もう、相変わらず辛口だなぁ。女の子は辛口より甘いのが好きなんだからね」

唯 「というわけで、あまーいお茶を煎れてくるよ。ちょっと待っててねー」

梓 「はい、すみません」

24: 2011/02/15(火) 03:00:02.89 ID:htTczUOl0
唯 「お待たせー♪ さ、二人きりだけど、久々のお茶会をしよう!ケーキもあるからね」

梓 (ピクン)「ケーキ!!」

唯 「イチゴのショート、好きだったよね。あと、紅茶はロシアンティーです」

梓 (ごくり・・・)

唯 「これまた甘いジャムを入れて飲むんだよ。今日は甘いもの祭りだ!」

梓 「唯先輩、いっつもこんな甘いものばかり食べてるんですか?」

唯 「うん。甘いのだーいすき♪」

梓 「もう、ダメですよ。いくら一人暮らしだからって、好きなものばっかり食べてちゃ病気になっちゃうです」

唯 「若いんだから平気だよー。食べた分は全部エネルギーになっちゃうもん」

梓 「甘い!アマアマですよ、唯先輩!認識まで甘党になっちゃダメじゃないですか、もう」

唯 「ケーキ頬張って幸せそうな笑顔で言われても、説得力はお留守だよー?」

梓 「あぅ・・・だって、美味しいんだもん!」

25: 2011/02/15(火) 03:03:11.37 ID:htTczUOl0
唯 「あずにゃんと食べるケーキはおいしいなぁー」

梓 「な、なに言ってるんですか、もう・・・」

梓 「・・・でも、ふふ」

唯 「なぁに??」

梓 「ちょっと安心しました。唯先輩、いつもの唯先輩だ」

唯 「んー?」

梓 「あのですね、純が変なことを言うから、それで心配になっちゃって」

唯 「純ちゃんはなんて?」

梓 「実は・・・」

26: 2011/02/15(火) 03:07:14.12 ID:htTczUOl0
唯 「あははは」

梓 「そんな笑わないでも。本当に心配しちゃったんですから」

唯 「ごめんね。でも、ありがと。くすくす」

梓 「別に・・・」

唯 「すねちゃった?」

梓 「知りません」

唯 「あのね、心配なんか要らないよ?」

梓 「私の心配なんて、よけいなお世話ですか?」

唯 「じゃなくてね。あのね、あずにゃんが嫌がることは私、絶対にしないから」

梓 「それって・・・」

28: 2011/02/15(火) 03:09:30.12 ID:htTczUOl0
ぎゅっ

梓 「あう。唯先輩・・・?」

唯 「さっきさせて貰えなかった、あずにゃん分の補給」

ぎゅうう

唯 「再開っ」

梓 どきどき

梓 (唯先輩、暖かい。それに顔がすごく近い)

梓 (先輩の吐息が・・・ ケーキの甘ったるい匂いが私の鼻先に・・・)

唯 「あずにゃん・・・・」

梓 「はい・・・」

31: 2011/02/15(火) 03:14:34.62 ID:htTczUOl0

唯 「二人きりだね」

梓 「うわっ」


さささっ



30: 2011/02/15(火) 03:13:11.11 ID:htTczUOl0
唯 「えー、なんで離れちゃうのー?」

梓 「すみません。あまりにベタな事を言われたので、とっさに・・・」

唯 「むぅ」

唯 「まぁいいや。ケーキの続き食ぁべよーっと」

梓 「え?」

唯 「え?」

梓 「いや、やけにあっさり引き下がるなと」

唯 「一日はまだまだ長いからね」ニヤリ

梓 「ああ、そういうことですか」

33: 2011/02/15(火) 03:23:07.96 ID:htTczUOl0
気がつけば・・

もう、カラスが「お家に帰ろうよ」と、七つの子を呼び始める時刻になっていた。

西日が窓から差込み、部屋の中を赤く染める。

先輩と一緒に過ごす時間は、本当にあっという間。

思えば共に過ごした軽音部の二年間も、瞬く間に過ぎ去ったような気がする。

当然のように、ただ当たり前に過ごした二年間。

それがどんなに貴重な時間だったのか。

こうしてたまにしか会えない間柄になってはじめて気がつくなんて。

私は自分で思っている以上に、鈍感なのかもしれないな。

赤く染め上げられ、いつもより幾分大人っぽく見える先輩の横顔を眺めながら。

私はそんなことを考えていた。

34: 2011/02/15(火) 03:27:01.09 ID:htTczUOl0
唯 「まったりまったり」

梓 「ほけー」

唯 「いいね、こういうの」

梓 「そうですね。なすこともなく、ただ日がな一日まったりのんびり」

唯 「軽音部に戻ったみたい」

梓 「部活の時は、もっとまじめにやって欲しかったです」

唯 「ごめんね」

こんな軽口を叩けるというだけで、何でこんなに嬉しいんだろう。

満ち足りた気持ちになれるんだろう。

35: 2011/02/15(火) 03:34:33.60 ID:htTczUOl0
唯 「今の軽音部はどうかな?前みたいに暖かい場所になってる?」

梓 「はい。憂も純も良くしてくれるし。今も変わらず大切な場所です」

唯 「そっか。安心安心」

梓 「でも、二人には悪いけど・・・ちょっと物足りない」

唯 「んー?」

梓 「だって、唯先輩がいないんだも・・・ごにょごにょ」

唯 「え、なんて?ごめんね、聞こえなかったよ」

梓 「なんでもないです」

唯 「なんでそこでふくれるのー?」

梓 「知りません」

やっぱり言えなかった。

37: 2011/02/15(火) 03:38:01.54 ID:htTczUOl0
そして陽は完全に地平に姿を隠し・・・


梓 「あ・・・ もうこんな時間・・・」

唯 「本当だ。日も暮れちゃってるね」

梓 「・・・・・」

唯 「楽しい時間は、あっという間に過ぎちゃうねぇ」

梓 「光陰矢のごとし・・・ですね」

唯 「・・・・・・」

梓 「・・・・・・」

唯 「ごめん、今のなんて言ったの?」

梓 「沈黙の意味はそれですか」

38: 2011/02/15(火) 03:45:12.80 ID:htTczUOl0
唯 「あずにゃん」

梓 「はい」

唯 「泊まってく?」

梓 「え・・・」

唯 「明日は休みだし、久々に会ったんだし。まだまだ話したりないし」

梓 「唯先輩・・・」

唯 「あずにゃん分の補給もまだ充分じゃないし・・・」

梓 「むぅ・・・///」

唯 「あ、他意はないよ。何もしないよ?」

唯 「休むだけ。休むだけ」

梓 「その一言で一気に不安になりました」

40: 2011/02/15(火) 03:52:26.33 ID:htTczUOl0
梓 「でも、お言葉に甘えます。私も・・・」

唯 「うん」

梓 「もっと先輩とお話したい・・・」

唯 「えへへ。ありがと、あずにゃん」


唯 「じゃあ、今日は唯先輩じきじきに手料理でおもてなししてあげよう!」フンス

梓 「・・・・は?」

唯 「は・・・て、え?」

梓 「いやだって、え?先輩が料理?」

唯 「おかしい?」

梓 「ぶっちゃけおかしいです」

42: 2011/02/15(火) 03:58:52.38 ID:htTczUOl0
 「そいつは心外だ!」

梓 「だって先輩、料理は憂におんぶに抱っこだったじゃないですか」

唯 「そんな昔のことは忘れた!」

梓 「つい先月までの話ですが・・・ どれだけ記憶力が悪いんですか」

梓 「そんなに物忘れが激しくて、大学の勉強についていけてますか?単位とか大丈夫そうですか?」

唯 「そんな先のことは分からない!」

梓 「ガンマンか」

44: 2011/02/15(火) 04:04:13.24 ID:htTczUOl0
唯 「ガンマン関係ないし・・・」

梓 「いや、つい勢いで。すみません」

唯 「てことでさ。ほんと、晩御飯は私に任せて」

梓 「むぅ、先輩の手料理、興味はありますが・・・」

梓 「なにか手伝えること、ありませんか?」

唯 「へいきへいき。お客さんは、お客さんらしくドガチャンとかまえてくれてればいいよー」

梓 「そうですか・・・」

先輩と二人、厨房に立つのも悪くないかもって思ったんだけど・・・

そこまで言ってくれるなら、ここはお手並み拝見と行きましょう。

45: 2011/02/15(火) 04:07:26.52 ID:htTczUOl0
唯 「あ、そーそ」

梓 「なんです?」

唯 「あずにゃんさ、ご飯の支度してる間にシャワー浴びちゃいなよ」

梓 「・・・・・は」

唯 「ボディーソープやシャンプー、使ってくれて良いからね」

梓 「い、いやでも・・・」

唯 「さっぱりしてから、美味しく頂こうよ」

梓 「私を!?」

唯 「いや、ご飯を」

47: 2011/02/15(火) 04:11:32.74 ID:htTczUOl0
梓 「ですよねー・・・ じゃあ、お言葉に甘えて」

梓 「あ、でも・・・・」

唯 「どうかしたー??」チャカチャカジュウジュウ←料理中

梓 「よく考えたら私、着替えがありません。泊まりになるって思ってなかったし・・・」

唯 「あるよ」

梓 「へ?」

唯 「着替えならあるよ。私のパジャマ、使って。あと、下着も使ってくれちゃって構わないからー」

梓 「ええええええええ!?」

唯 「え?」

梓 「え?って・・・」

48: 2011/02/15(火) 04:17:44.56 ID:htTczUOl0
唯 「え?え?私、なにか変なこと言った?」

梓 「言った・・・」

唯 「すみません。まったく自覚がないのですが・・」

梓 「下着は普通、人には貸さないのではないでしょうか・・・」

唯 「でもでも・・・ せっかくシャワー浴びたのに、またお古の下着を履くのって、気分悪くない?」

梓 「それはそうかもですけど、でも・・・」

唯 「うう・・・私は良かれと思って、あずにゃんのために言ったんだけどなぁ・・・」

唯 「それともあずにゃん、私の下着なんか汚くって履く気になれない?」

梓 「え!?いや、そんな意味で言ったのではなく」

唯 「当然洗濯してるよ?」

梓 「いや、そんなボケは期待していませんから」

49: 2011/02/15(火) 04:24:51.67 ID:htTczUOl0
分かってない。

先輩は分かってないよ。

汚いとか綺麗とか、そんなの私には関係ないんだ。

洗ってるとか洗ってないとか。それ以前に・・・・

先輩の・・・その・・・それ・・・を・・・あれだ。その・・・

直に触れたものが、今度は私の・・・に触れるなんて・・・

考えられない考えられない。

そんなことになったら、まともでなんかいられなくなるよ!

梓 「下着はそのっ!出てくる直前に替えたので平気です!パジャマだけ借りますね!」

それだけ言うと、私は脱衣所に隠れるように飛び込んだ。

これ以上ないほどに上気した顔を見られるのが恥ずかしかったからだ。

51: 2011/02/15(火) 04:38:40.87 ID:htTczUOl0
蛇口をひねって、冷たい水を勢い良く頭から浴びる。

肌を叩きつける水流が体の火照りを洗い流し、私はやっと落ち着きを取り戻すことができた。

とはいえ、さっきの唯先輩。

いくら先輩が天然とはいえ、あれはない。あるわけない。

年頃の女の子が下着の貸し借りなんて、ありえるわけがないよ。

てことはこれ、もしかして誘われてる?

「はぁ・・・」

そんなわけないか。

先輩は元から、ああいう人だったんだ。私だって分かってたはずだ。

唯先輩は天然で底抜けにお人よしで。裏表がなくって。

だから、放った言葉にはそれ以上の意味もなくって。

52: 2011/02/15(火) 04:42:30.61 ID:htTczUOl0
はぁ・・・参った」

きっとこれは私のほうに、変な期待があるから。

だから、先輩の言葉を邪推してしまうんだ。

「やらしいな、私」


体を洗い終わって先輩が用意してくれたバスタオルで体をぬぐう。

ふんわりと唯先輩の匂いに包まれ、危うく再びいけない妄想世界の住人になりかけてしまう。

いけないいけない・・・

54: 2011/02/15(火) 04:45:44.54 ID:htTczUOl0
それから唯先輩とお話しながら夕飯を食べて。

(先輩の手料理。すごく美味しくてびっくりした。先輩いわく、一ヶ月の一人暮らしで鍛えられたのだとか)

その後は二人で、他愛ない話をしながら過ごしました。

そう、ほんの少し前まで音楽室でしていた日常のような時間。

そんな優しい時間に包まれながら話をしているうちに、気がつけば時計はすでに日付をまたいでいました。

55: 2011/02/15(火) 04:46:35.68 ID:htTczUOl0
梓 「あ・・・ふ。にゃあ・・・眠たくなってきちゃった・・・・」

唯 「ついつい夜更かししちゃったね。そろそろ寝よっか」

梓 「そうですね。なんかもう、あくびがとまら・・・にゃあ・・・」

唯 「あはは、あずにゃん本当の猫さんみたいだにゃあ。いい子いい子ー」

梓 「撫でないで下さいー・・・」

唯 「えへへ。じゃあお布団を・・・て。ああ、今大変なことを思い出した!!」

梓 「はへっ!?な、なんですか!?」

唯 「お客さん用のお布団、まだ準備してなかった・・・・」

56: 2011/02/15(火) 04:47:33.64 ID:htTczUOl0
梓 「なんだ。私は床でもだいじょうぶですよ?」

唯 「ダメだよ!あずにゃんはお客にゃんなんだから。それだったら私が床で寝る(ふんす)!」

梓 「それこそダメですよ。先輩を差し置いて私がベッドを使うなんて。やっぱりここは私が床で・・・」

唯 「いやいや私が!」

梓 「いいえ私が!」

唯 「・・・・・」

梓 「・・・・・」

唯 「一緒に寝ようかー」

梓 「ふふっ、そうしますか」

59: 2011/02/15(火) 04:52:55.58 ID:htTczUOl0
唯 「それじゃ、おいで子猫ちゃん」(ぽんぽん)

梓 「どこのナンパ男さんですか。えっと、それじゃ。お邪魔しますー」

唯 「どぞどぞー。狭くない?」

梓 「ぜんぜん平気です」

唯 「そっか。へへ・・・ あったかあったか。だね」

梓 「はい」

唯 「あったかあったか・・・・ えへへ・・・・」

唯 「・・・・あずにゃん」

梓 「はい」

唯 「今日はあったかをどうもありがとね」

梓 「・・・はい///」

60: 2011/02/15(火) 04:56:12.92 ID:htTczUOl0
唯 「一緒の部屋に寝てると、修学旅行みたいだね」

梓 「そういえば今年は私の番だった・・・」

唯 「楽しみ?」

梓 「それはもちろ・・・ん?」

梓 「しゅ、修学旅行みたいって。旅行でみなさん、一緒の布団で寝たんですか?」

唯 「まさかー。4人もいたんだから、さすがにそれは無理だよ」

梓 「ですよね」

唯 「でもお布団ぎゅうぎゅうに敷き詰めてたから、一緒に寝たのとあんまり変わらないかな?」

梓 「・・・・・むぅ」

唯 「どうしたの」

梓 「なんでもないです」

唯 「わかった。焼きもちだ」

梓 「違いますから」

61: 2011/02/15(火) 04:57:59.45 ID:htTczUOl0
唯 「あずにゃんの焼きもち妬きー」

梓 「だって私の知らないところで皆さん一緒に寝るとか・・・・」

唯 「仕方ないじゃん。あずにゃんとは学年が違うんだもん」

梓 「それはそうですけど、でも」

唯 「にひひ。やっぱり妬いてんじゃん」

梓 「ずるい」

唯 「ごめんね」

梓 「知りません」

唯 「あずにゃんが同級生だったら、修学旅行でも一緒に寝てたよ?」

梓 「聞こえません」

唯 「むぅ。どうしたら機嫌なおしてくれるのかなぁ」

梓 「分かりません」

63: 2011/02/15(火) 05:02:16.31 ID:htTczUOl0
唯 「もう、仕方がないなぁ」

ぎゅっ

梓 「にゃっ!?」

唯 「いい子いい子・・・ 怒らないで」

梓 「せ・・・せせせ・・・先輩・・・」

唯 「旅行ではりっちゃんたちと同じ部屋で、体がぶつかっちゃいそうな距離で寝たけど・・・」

唯 「こんな風に一緒のお布団で寝たのは、あずにゃんだけだよ」

梓 「はううぅ・・・ このシチュでそんな風に抱きしめられると・・・私・・・」

唯 「あずにゃん、柔らかい」

梓 「セクハラです・・・ でも・・・」

梓 「唯先輩も柔らかい。そして、とっても暖かい」

65: 2011/02/15(火) 05:04:24.18 ID:htTczUOl0
どきどき

どきどき

梓 (し、しんぞぉが・・・ こんなにバクバクして・・・・)

梓 (ドキドキしてるの、唯先輩にばれちゃう)

唯 「・・・・・・あずにゃん」

梓 「は・・はい・・・」

唯 「お」

梓 「お?」

唯 「おや・・・す・・・み」ふにゃー

梓 「おやすみなさい・・・て、ええー!?」

唯 「すーすー」

梓 「のび太か・・・」

68: 2011/02/15(火) 05:07:39.38 ID:htTczUOl0
>>66

みんなの納得がいく終わりにできるかどうかはともかく、バッドエンドはないから安心してくれ。

基本大好きなキャラを不幸にはしたくないんだよ。

69: 2011/02/15(火) 05:08:29.09 ID:htTczUOl0
梓 「先輩、本当に寝ちゃったんですか?」

唯 「むにゃむにゃ」

梓 「寝ちゃってる。人をドキドキさせといて・・・」

梓 「なんか悔しいな・・・ えい、つねってやるです」

むにっ

梓 「えいえいっ」

ふにふに

唯 「あう~ むにゃむにゃ」

梓 「これで起きないなんて、恐ろしい子・・・っ」

70: 2011/02/15(火) 05:11:11.10 ID:htTczUOl0
梓 「・・・・目、冴えちゃった」

梓 「先輩にぎゅってされてドキドキして、眠気なんか吹っ飛んじゃったよ」

梓 「でも、それは私だけだったみたいで・・・」

梓 「先輩は先にさっさと眠っちゃって・・・」

梓 「私・・・バカみたい」

ふにふに

梓 「先輩・・・」

ふにふに

梓 「起きてくださいよ・・・」

ふにふに

梓 「・・・起きないんだったら、キスしちゃいますよ」

唯 「・・・・・」

71: 2011/02/15(火) 05:16:08.69 ID:htTczUOl0
どきどき

梓 「冗談なんかじゃないんですからね。本当にしちゃうんですからね」

どきどき

梓 「う~~・・・やってやるです!」

どっきんどっきん

梓 「ん~~~~・・・・・」

ぐぐっ

先輩の吐息が鼻先をかすめる。

下着のときの葛藤もなにもかも、頭から吹っ飛んでしまった。

目の前の無防備に開かれた先輩の唇。

それを自分だけのものにしたいという欲求が、とめどなく腹の底から湧き出してくる。

とめどなく、抑えがたく。

73: 2011/02/15(火) 05:24:09.03 ID:htTczUOl0

梓 「ゆ、唯・・・」

名前で呼ぶ。

目の前の彼女を先輩ではなく、ただ一人の女性として、その名で呼んでみる。

梓 「唯・・・ 大好き・・・」

寝ているから、聞こえないからこそ言えた言葉には違いない。

でも。それは。

ずっと言いたかった、彼女に聞いてもらいたかった本当の気持ち。

偽らざる、私の本心だった。

梓 「唯、好き。大好き・・・・」

んーーーーー・・・(>3<)
 

77: 2011/02/15(火) 05:29:51.20 ID:htTczUOl0

唯 「あのね、あずにゃん!」

梓 「んぎゃあああああっ!?」

梓 「お・・おきっ!?おきててて!?」

梓 「おきてたんdねうsか!?」

唯 「あずにゃんしっかり。ふじこっちゃってるよ」

梓 「狸寝入りですかずっと起きてたんですか私の恥ずかしい行為を見てたんですか!?!?」

唯 「いやまぁ、落ち着いて」

梓 「これが落ち着いていられるかです!」

唯 「ごめんね」


79: 2011/02/15(火) 05:39:53.36 ID:htTczUOl0

梓 「じゃ・・・全部、聞いてたんですよね・・・ 今の・・・」

唯 「聞いてたよ。バカの不注意で聞かれなくてもいい所にまで聞かれたみたいだけど、それは置いといて聞いてたよ」

梓 「うう・・・ な、なんで寝たふりなんて・・・先輩、サイテーです」

唯 「そうだよね。でもね、あずにゃんをギュッとしてたらね・・・・」

唯 「なんだかドキドキして、変な気持ちになっちゃってね・・・」

梓 「え・・・?」

唯 「どうして良いかわからなくなっちゃって、それで思わず寝たふりをしちゃいました」

唯 「そのままでいたら、なにしちゃうか自分でも分からなくなっちゃって・・・ごめんね」


81: 2011/02/15(火) 05:43:29.27 ID:htTczUOl0
唯 「だけどね。あずにゃんが私のことを・・・その・・・」

唯 「ね?そう言ってくれたから、もう目を瞑ってちゃダメだって思って。きちんと答えなきゃって」

唯 「だからn
梓 「忘れてください!」

唯 「・・・・・・」

梓 「・・・・・・」

唯 「あずにゃん?」

83: 2011/02/15(火) 05:48:41.24 ID:htTczUOl0
梓 「あれは違うんです!ついドキドキして、くちばしたって言うか・・・」

唯 「え・・・」

梓 「だからあの言葉は違うんです。お願いです、忘れて下さい!」

唯 「違うって・・・ じゃあ、あずにゃん。あれって、本心じゃなかったの・・・?」

梓 「あ・・・」

唯 「勢いだけの、でまかせだったの・・・?」

梓 「え、違う・・・」

梓 「違う、そうじゃないです!」

梓 「メチャクチャ本心です!でも・・・違うんです!」

85: 2011/02/15(火) 05:56:00.27 ID:htTczUOl0

梓 「さっきのはつい、先輩があんまり・・・その・・・か、可愛くて・・・」

梓 「夕方の下着の件もあったし、おんなじ布団だし、私も舞い上がっちゃって・・・」

梓 「それで寝ている先輩の顔を見ていたら、言葉と心を抑えることができなくなってしまって・・・」

唯 「あずにゃん」

梓 「でも私の気持ちは、本当の本気の気持ちだから、先輩に知られる時には先輩の目を見て、真正面から伝えないとダメなんです」

梓 「そういった意味で、さっきのは違うんです。あの・・・予行演習と言いましょうか・・」



87: 2011/02/15(火) 06:04:22.74 ID:htTczUOl0
梓 「だからお願いです!今のはなかったことに!」

唯 「えー・・・ そんなこと言われても、見ちゃったものをなかったことにはできないよ」

梓 「うう・・・」

唯 「だからね。今この場で言ってみない?」

梓 「ええっ!?」

唯 「そうすればさっきのはタイムラグといいましょうか、多少のフライングだったって事で丸く収まるような♪」

梓 「あ・・・え?そんないきなり?え・・・あの・・・・・   ええ!?」

唯 「さ、あずにゃん!私はジーっとみてるよ。さぁあずにゃんも私の目を見て、さぁ!」

唯 「言ってみよう!」

梓 「~~~~~~~!!!!」

88: 2011/02/15(火) 06:13:19.27 ID:htTczUOl0
がばっ!!

梓 「おやすみなさい!!」

唯 「えーーーー!」

梓 「ああ眠い!超ねむいなぁー!ああ、、もうダメかもー!ふぁ~~~あ。かくん!ぐーぐー」

唯 「期待させておいて、それはないよ。あずにゃん、ねぇ、本当は起きてるんでしょ!?」

唯 「あずにゃん~~~」

梓 「きこえなーい。ぐーぐー」

こうして今度は私が狸寝入り。このまま朝まで誤魔化してやろうっと。

でも・・・

いつか必ず近いうちに、また先輩のうちに遊びに来よう。

そしてそのときには必ず。

先輩の正面に陣取って、先輩の目を見つめながら、先輩への気持ちを伝えるんだ。


その為にも・・・


89: 2011/02/15(火) 06:14:08.96 ID:htTczUOl0
翌日!


梓 「それじゃお邪魔しました」

唯 「うん、あずにゃん。昨日は本当にありがとうねー」

唯 「あずにゃん分タンクは超満タン!これでしばらくはがんばっていけそうだよー」

梓 「そうですか。・・・・あの、その・・・」

唯 「んー?」

梓 「その、あずにゃん分ってどのくらいもつんですかね!?」

唯 「???」

梓 「補給に来ないと、また空になっちゃうんじゃないかなって・・・・」

唯 「あずにゃん・・・・」

梓 「あ、あの・・・ね。また来週・・・ もし良かったらあずにゃん分を補給に来ても良いですよ?」


90: 2011/02/15(火) 06:16:59.03 ID:htTczUOl0
唯 「あ、あずにゃん!!!」(ぱぁーっ)

梓 (あ・・・・まぶしい位の良い笑顔だ)きゅんっ

唯 「来週といわず、毎週でも来てよ!」

唯 「もうーーー、ダイ!ダイ!ダイ!ダイ!ダイ!大歓迎するよ!!!」

梓 「あはは、そんなにですか」

唯 「そんなにだよ!」

梓 「分かりました。じゃ、また来週。メールで連絡しますね。それじゃ!」

唯 「うん、ばいばーい!」

梓 「あんなに喜んでくれて・・・ 言ってみてよかった!」

よし、まずは心の準備だ。

そして次には言葉の準備。慌てずあせらない様に、気持ちを伝えるための言葉を準備しておかなくちゃ。

先輩と後輩の枠組みに終止符を打ち、新たな一歩を踏む出すための、鍵となる言葉を。

91: 2011/02/15(火) 06:17:47.01 ID:htTczUOl0
月曜 教室!!


梓 「てことがあってね」

純 「ふーん」

梓 「また来週ね、唯先輩に会ってくるよ」

梓 「純のおかげ」

純 「そ」

梓 「気のない返事」

純 「いやね、自分に呆れちゃってさ」

梓 「なんでまた」

純 (自分でけしかけておいて、その結果に焼きもち妬くなんて)

純 (我ながらアホだ)

92: 2011/02/15(火) 06:18:41.62 ID:htTczUOl0
梓 「ねぇ、なんでさ?」

純 「だまれ鈍感」

梓 「ひどっ!?」

梓 「ねぇ、本当になんなの?」

純 (落ち着けわたし。辛いけど。悲しいけど)

純 (大好きな梓が嬉しそうにしてる。その代償と思えば安いものじゃない)

純 (大人にならなきゃ。笑ってなきゃね、梓の前では)

梓 「ね・・・ねぇ、純ってば・・・」

純 「触るなゴキブリ!!!」

梓 「!!??」


おわり!

100: 2011/02/15(火) 12:30:33.46
おつ

引用元: 梓「あずにゃん分を補給してやるです!」