1: 2021/02/15(月) 20:21:41.845 ID:htCqv8WS0
店主「……」
子供「……」
店主「…美味しいか、とんかつ」
子供「…うん」
店主「そうか」
子供「……」
店主「どれくらい美味しい…?」
子供「すごく美味しい」
店主「そうか…良かった」
子供「……」
店主「…美味しいか、とんかつ」
子供「…うん」
店主「そうか」
子供「……」
店主「どれくらい美味しい…?」
子供「すごく美味しい」
店主「そうか…良かった」
5: 2021/02/15(月) 20:23:03.954 ID:htCqv8WS0
店主「……」
子供「……」
テレビ『そしたらおかんが言うたんや。そいつ逆立ちしたカッパみたいやなって』
テレビ『ワハハハハハ…』
店主「…なあ」
子供「ん?」
店主「今日、何時に学校終わったんだ?」
子供「…3時半くらい」
子供「……」
テレビ『そしたらおかんが言うたんや。そいつ逆立ちしたカッパみたいやなって』
テレビ『ワハハハハハ…』
店主「…なあ」
子供「ん?」
店主「今日、何時に学校終わったんだ?」
子供「…3時半くらい」
7: 2021/02/15(月) 20:24:07.111 ID:htCqv8WS0
店主「3時半ってことは…5時間近くも外にいたのかお前」
子供「6時までは自動館で遊んでた」
店主「ああ、そうか…」
店主「だとしても2時間くらい店の裏のベンチで座ってた訳だろ?寒かっただろ」
子供「…うん」
店主「気づいてやれなくて悪かったな。声を掛けて良かったよ」
子供「……」
店主「なあ、家に帰らなくていいのか?」
子供「6時までは自動館で遊んでた」
店主「ああ、そうか…」
店主「だとしても2時間くらい店の裏のベンチで座ってた訳だろ?寒かっただろ」
子供「…うん」
店主「気づいてやれなくて悪かったな。声を掛けて良かったよ」
子供「……」
店主「なあ、家に帰らなくていいのか?」
12: 2021/02/15(月) 20:25:11.863 ID:htCqv8WS0
店主「お母さんとお父さん、心配してない?」
子供「いや…それはないと思う」
店主「何でだよ」
子供「話したくない」
店主「…人に言えない事情があるのか」
子供「……」
店主「教えてくれ。おじさん、口は固いから誰にも言わないよ」
子供「…本当?」
店主「ああ、秘密は守る。だから言ってみ」
子供「いや…それはないと思う」
店主「何でだよ」
子供「話したくない」
店主「…人に言えない事情があるのか」
子供「……」
店主「教えてくれ。おじさん、口は固いから誰にも言わないよ」
子供「…本当?」
店主「ああ、秘密は守る。だから言ってみ」
18: 2021/02/15(月) 20:26:16.351 ID:htCqv8WS0
子供「…笑わずに聞いてほしいんだけど」
店主「……は?笑わ…?」
子供「家の鍵…家の中に忘れてきたんだ」
店主「……」
子供「……」
店主「何だ、そんな理由かいな…良かった」
子供「何がだよ」
店主「ああいやごめん、良くはないな…」
店主「……は?笑わ…?」
子供「家の鍵…家の中に忘れてきたんだ」
店主「……」
子供「……」
店主「何だ、そんな理由かいな…良かった」
子供「何がだよ」
店主「ああいやごめん、良くはないな…」
21: 2021/02/15(月) 20:27:36.746 ID:htCqv8WS0
店主「つまり、家が留守で鍵がかかってて、中に入れないから外にいたってことだな」
子供「うん」
店主「母さんは?」
子供「介護施設でパート。夜勤で朝まで帰ってこない」
店主「じゃあ、父さんは?」
子供「今日は残業で帰りが遅くなるって言ってた」
店主「残業の日はいつも何時に帰ってくるんだ?」
子供「夜の9時か10時くらい」
子供「うん」
店主「母さんは?」
子供「介護施設でパート。夜勤で朝まで帰ってこない」
店主「じゃあ、父さんは?」
子供「今日は残業で帰りが遅くなるって言ってた」
店主「残業の日はいつも何時に帰ってくるんだ?」
子供「夜の9時か10時くらい」
26: 2021/02/15(月) 20:29:43.467 ID:htCqv8WS0
店主「兄弟とかはいるのか?」
子供「いや、僕ひとりだけ」
店主「へー。今いくつなんよ」
子供「10」
店主「そうか…大変だな」
子供「別に…」
店主「こういう日ってよくあるのか?」
子供「うん。いつもこんな感じ」
店主「夜飯とかいつもどうしてるんだ?」
子供「冷凍ご飯レンジで温めて…おかずは冷蔵庫にあるもので適当に」
子供「いや、僕ひとりだけ」
店主「へー。今いくつなんよ」
子供「10」
店主「そうか…大変だな」
子供「別に…」
店主「こういう日ってよくあるのか?」
子供「うん。いつもこんな感じ」
店主「夜飯とかいつもどうしてるんだ?」
子供「冷凍ご飯レンジで温めて…おかずは冷蔵庫にあるもので適当に」
30: 2021/02/15(月) 20:31:37.946 ID:htCqv8WS0
店主「辛くは…ないのか?」
子供「いや。全然平気だよ」
子供「クラスに母子家庭の女の子とかいるし…それに比べたら僕なんて」
店主「…ガキのくせに偉いなお前」
妻「ちょっとあんた」
店主「んー?」
妻「これ捨てた方が良い?長いことお客さんが使ってたせいでボロボロなんだけど」
店主「うん、いいよ捨てちゃって。どうせ明日から使わないんだし」
子供「……?」
子供「いや。全然平気だよ」
子供「クラスに母子家庭の女の子とかいるし…それに比べたら僕なんて」
店主「…ガキのくせに偉いなお前」
妻「ちょっとあんた」
店主「んー?」
妻「これ捨てた方が良い?長いことお客さんが使ってたせいでボロボロなんだけど」
店主「うん、いいよ捨てちゃって。どうせ明日から使わないんだし」
子供「……?」
34: 2021/02/15(月) 20:34:01.233 ID:htCqv8WS0
店主「後ろで掃除してる店員さん、あれ俺の妻だよ」
店主「今は2人で経営してるんだ。この店」
子供「…この店、何年くらい続いてるの?」
店主「んー、もう50年近くにもなるのかなぁ」
子供「けっこう長いんだね」
店主「親父が若い頃にこの店を開いたらしいからな。所々年季が入ってるだろ」
店主「ちょっと寂れた店だけど、ここに来るのは良いお客さんばかりでな。ずっとこの店を支えてきてくれたんだ」
店主「まだ俺産まれてないからわかんねえけど、新装開店の頃は大勢の客であふれかえるくらいだったって聞いてるぜ」
店主「今は2人で経営してるんだ。この店」
子供「…この店、何年くらい続いてるの?」
店主「んー、もう50年近くにもなるのかなぁ」
子供「けっこう長いんだね」
店主「親父が若い頃にこの店を開いたらしいからな。所々年季が入ってるだろ」
店主「ちょっと寂れた店だけど、ここに来るのは良いお客さんばかりでな。ずっとこの店を支えてきてくれたんだ」
店主「まだ俺産まれてないからわかんねえけど、新装開店の頃は大勢の客であふれかえるくらいだったって聞いてるぜ」
38: 2021/02/15(月) 20:35:57.253 ID:htCqv8WS0
子供「今日もいっぱい来てたじゃん。閉店間際も行列できるくらい並んでたけど」
店主「今日は……まあ特別な日だからな」
子供「……?」
店主「ふふ…振り返ってみると、本当にいろいろあったなぁ」
妻「……」
テレビ『では次のコーナーいってみましょう。続いてはこちらっ』
店主「…最近どうよ」
子供「え?」
店主「学校、楽しいか?」
店主「今日は……まあ特別な日だからな」
子供「……?」
店主「ふふ…振り返ってみると、本当にいろいろあったなぁ」
妻「……」
テレビ『では次のコーナーいってみましょう。続いてはこちらっ』
店主「…最近どうよ」
子供「え?」
店主「学校、楽しいか?」
39: 2021/02/15(月) 20:37:24.466 ID:htCqv8WS0
子供「……普通」
店主「そうか。友達とは普段何の話してるんだ?」
子供「ゲームの話とか…マンガの話とか…」
店主「今学校で何がはやってるんだ?」
子供「いろいろ…」
店主「いろいろねぇ」
店主「俺がガキの頃は仮面ライダーが男子の間で大人気だったんだけどね~」
店主「今でも仮面ライダーの話してる子とかいる?」
子供「いや…いない」
店主「そうか。友達とは普段何の話してるんだ?」
子供「ゲームの話とか…マンガの話とか…」
店主「今学校で何がはやってるんだ?」
子供「いろいろ…」
店主「いろいろねぇ」
店主「俺がガキの頃は仮面ライダーが男子の間で大人気だったんだけどね~」
店主「今でも仮面ライダーの話してる子とかいる?」
子供「いや…いない」
41: 2021/02/15(月) 20:38:39.266 ID:htCqv8WS0
店主「そっか~。この辺の学校の子、仮面ライダー知ってる奴誰もいないんだよなぁ」
子供「たぶんどこの学校にもいないと思う…」
店主「…今日給食で何が出たんだ?」
子供「とんかつ」
店主「ああ…給食でも出てたのか」
店主「何か悪いな。被ったな」
子供「大丈夫だよこれくらい…」
店主「学校のとんかつとここのとんかつ、どっちが美味しい?」
子供「ここのとんかつが一番だよ」
子供「たぶんどこの学校にもいないと思う…」
店主「…今日給食で何が出たんだ?」
子供「とんかつ」
店主「ああ…給食でも出てたのか」
店主「何か悪いな。被ったな」
子供「大丈夫だよこれくらい…」
店主「学校のとんかつとここのとんかつ、どっちが美味しい?」
子供「ここのとんかつが一番だよ」
42: 2021/02/15(月) 20:40:01.296 ID:htCqv8WS0
店主「ふふ。そう言ってくれると嬉しいよ」
店主「このとんかつな、親父から作り方教わったんだ」
子供「へー」
店主「親父、10年くらい前に病気で入院しちゃったんだ。それで厨房に立てなくなっちゃってさ」
店主「それからは親父の代わりに毎日俺が料理作ってたんだ。初めと比べてだいぶ上手くなったとは思うんだけど、まだ親父の味には追いつけなくてさ…」
子供「充分おいしいよ、おじさんが作ったとんかつ」
店主「そうか。ありがとな」
店主「このとんかつな、親父から作り方教わったんだ」
子供「へー」
店主「親父、10年くらい前に病気で入院しちゃったんだ。それで厨房に立てなくなっちゃってさ」
店主「それからは親父の代わりに毎日俺が料理作ってたんだ。初めと比べてだいぶ上手くなったとは思うんだけど、まだ親父の味には追いつけなくてさ…」
子供「充分おいしいよ、おじさんが作ったとんかつ」
店主「そうか。ありがとな」
43: 2021/02/15(月) 20:41:03.833 ID:htCqv8WS0
子供「お水…」
店主「おう、おかわりか。待ってろ」
子供「…ここ、お水もおいしいね」
店主「そうか…普通の水だけどな」トクトク
子供「……」
店主「はい」トンッ
子供「…ありがと」
店主「一応カルピスとかオレンジジュースとかも置いてあるから、飲みたかったら言ってくれよ」
子供「いや、大丈夫。このお水がいい」
店主「おう、おかわりか。待ってろ」
子供「…ここ、お水もおいしいね」
店主「そうか…普通の水だけどな」トクトク
子供「……」
店主「はい」トンッ
子供「…ありがと」
店主「一応カルピスとかオレンジジュースとかも置いてあるから、飲みたかったら言ってくれよ」
子供「いや、大丈夫。このお水がいい」
44: 2021/02/15(月) 20:42:14.927 ID:htCqv8WS0
店主「今日、児童館で何して遊んだんだよ」
子供「ドッヂボール」
店主「お、ドッヂボールか。俺も小学生の頃やってたよそういうの」
店主「誰とやったんだ?友達?」
子供「うん、クラスの奴らに誘われたんだ。アキヒロとハルキと…あとナツヤ」
店主「で、勝ったのか?」
子供「いや。負けた」
店主「負けたか~。強いのかそいつら」
子供「中にひとりだけ野球やってる奴がいてさ。そいつボール投げるのめちゃくちゃ速くて、避けられなかったんだ」
子供「ドッヂボール」
店主「お、ドッヂボールか。俺も小学生の頃やってたよそういうの」
店主「誰とやったんだ?友達?」
子供「うん、クラスの奴らに誘われたんだ。アキヒロとハルキと…あとナツヤ」
店主「で、勝ったのか?」
子供「いや。負けた」
店主「負けたか~。強いのかそいつら」
子供「中にひとりだけ野球やってる奴がいてさ。そいつボール投げるのめちゃくちゃ速くて、避けられなかったんだ」
47: 2021/02/15(月) 20:44:11.263 ID:htCqv8WS0
店主「ドッヂボールのコツは相手の投げるボールをよく見て、いかに素早く避けることができるかがポイントだからな」
店主「次は勝てるように頑張れよ」
子供「うん…」
テレビ『えぇー?これが元カレの写真ですか~?』
妻「…雑巾、ここ置いとくでな」
店主「おう。ありがとな」
妻「のれん奥にしまっとけばええよな」
店主「おう、裏口横の棚の上に置いといてくれ」
子供「……」
店主「次は勝てるように頑張れよ」
子供「うん…」
テレビ『えぇー?これが元カレの写真ですか~?』
妻「…雑巾、ここ置いとくでな」
店主「おう。ありがとな」
妻「のれん奥にしまっとけばええよな」
店主「おう、裏口横の棚の上に置いといてくれ」
子供「……」
48: 2021/02/15(月) 20:45:20.200 ID:htCqv8WS0
店主「今朝は家に誰かいたのか…?」
子供「うん…お母さんが寝てたから、家の鍵は開けたまま学校行こうと思ったの」
店主「家の鍵、何で家の中に忘れてきちゃったんだ?」
子供「昨日の日曜日、友達の家に遊びに行ったんだ。家の鍵持って」
子供「普段はランドセルの中に入れてあるんだけど…家の鍵、友達の家から帰ってきてから机の上に置きっぱなしだったんだ」
子供「そのままお母さんが家の鍵閉めて仕事行っちゃって…」
店主「それいつ気づいたんだ?」
子供「今日、学校で…」
店主「そうか…」
子供「うん…お母さんが寝てたから、家の鍵は開けたまま学校行こうと思ったの」
店主「家の鍵、何で家の中に忘れてきちゃったんだ?」
子供「昨日の日曜日、友達の家に遊びに行ったんだ。家の鍵持って」
子供「普段はランドセルの中に入れてあるんだけど…家の鍵、友達の家から帰ってきてから机の上に置きっぱなしだったんだ」
子供「そのままお母さんが家の鍵閉めて仕事行っちゃって…」
店主「それいつ気づいたんだ?」
子供「今日、学校で…」
店主「そうか…」
49: 2021/02/15(月) 20:46:56.260 ID:htCqv8WS0
店主「…友達の家で何して遊んだんだよ」
子供「スマブラとか…マリカとか」
店主「へー。その友達とはよく遊ぶのか?」
子供「昔からのゲーム仲間なんだ。そいつアキヒロって言うんだけど」
店主「ああ、あの子か」
子供「うん」
店主「はぁ…いいよなぁ、ガキの頃の青春してたあの感じ」
店主「……お前学校に好きな子とかいねえの?」
子供「ごふっぶっ!!」
子供「スマブラとか…マリカとか」
店主「へー。その友達とはよく遊ぶのか?」
子供「昔からのゲーム仲間なんだ。そいつアキヒロって言うんだけど」
店主「ああ、あの子か」
子供「うん」
店主「はぁ…いいよなぁ、ガキの頃の青春してたあの感じ」
店主「……お前学校に好きな子とかいねえの?」
子供「ごふっぶっ!!」
50: 2021/02/15(月) 20:48:13.938 ID:htCqv8WS0
子供「けほっ…げほっ……!」
店主「おう大丈夫か」
子供「い、いたら何だよ!」
店主「普通に気になるなと思って。誰なんだよその子」
子供「いや…言ってもわかんないでしょ」
店主「どんな子なんだよ?」
子供「…隣のクラスの…髪が長くて、おとなしい女の子」
店主「へー、そういう子タイプなんだ」
子供「そんなんじゃねえよ」
店主「おう大丈夫か」
子供「い、いたら何だよ!」
店主「普通に気になるなと思って。誰なんだよその子」
子供「いや…言ってもわかんないでしょ」
店主「どんな子なんだよ?」
子供「…隣のクラスの…髪が長くて、おとなしい女の子」
店主「へー、そういう子タイプなんだ」
子供「そんなんじゃねえよ」
51: 2021/02/15(月) 20:51:44.451 ID:htCqv8WS0
店主「本気なら早めに行動に移すことだぞ。その子がどっか行っちまう前によ」
妻「……」
店主「おじさんが今あの人と一緒に暮らせてるのはな、俺が勇気を出して想いを告げたからなんだ」
子供「…おじさんの方からアプローチしたの?」
店主「ああ。昔の職場で知り合ったんだが、みるみるうちに心酔していって…一目惚れって言うのかなぁ」
店主「もしあのとき怯んで諦めてたら、今のこの幸せもなかっただろうな」
子供「……ふーん…」
妻「……」
店主「おじさんが今あの人と一緒に暮らせてるのはな、俺が勇気を出して想いを告げたからなんだ」
子供「…おじさんの方からアプローチしたの?」
店主「ああ。昔の職場で知り合ったんだが、みるみるうちに心酔していって…一目惚れって言うのかなぁ」
店主「もしあのとき怯んで諦めてたら、今のこの幸せもなかっただろうな」
子供「……ふーん…」
53: 2021/02/15(月) 20:55:26.124 ID:htCqv8WS0
テレビ『果たして5人は宝箱の在り処を示す長老のメモを解読できるのか』
テレビ『ヒグヒグ大冒険2、9時。このあとすぐ』
店主「食べ終わったら食器そこに置いたままでいいからな」
子供「うん」
店主「……」
子供「……」
店主「…宿題はもう終わったのか?」
子供「まだ。帰ってからやる」
店主「今日は宿題どこ出てるんだ?」
子供「計算ドリル……の41ページ」
テレビ『ヒグヒグ大冒険2、9時。このあとすぐ』
店主「食べ終わったら食器そこに置いたままでいいからな」
子供「うん」
店主「……」
子供「……」
店主「…宿題はもう終わったのか?」
子供「まだ。帰ってからやる」
店主「今日は宿題どこ出てるんだ?」
子供「計算ドリル……の41ページ」
54: 2021/02/15(月) 20:57:29.962 ID:htCqv8WS0
店主「算数か。今授業どこまで進んでるんだ?」
子供「小数のかけ算が終わった所」
店主「小数か…あれ難しいよなぁ。筆算とか」
子供「……」
テレビ『ウソピョンは嘘つきで~コダイは大げさで~マギラワシは紛らわし~』
テレビ『で彼らを見つけたら~』
子供「…ご馳走様」
店主「おう。ありがとな、キレイに食べてくれて」
子供「ああ…うん…」
子供「小数のかけ算が終わった所」
店主「小数か…あれ難しいよなぁ。筆算とか」
子供「……」
テレビ『ウソピョンは嘘つきで~コダイは大げさで~マギラワシは紛らわし~』
テレビ『で彼らを見つけたら~』
子供「…ご馳走様」
店主「おう。ありがとな、キレイに食べてくれて」
子供「ああ…うん…」
55: 2021/02/15(月) 20:58:54.843 ID:htCqv8WS0
店主「ほらよ、ランドセル」
子供「あ…ありがとう…」
店主「じゃあな。もう辺り暗くなってるから、気をつけて帰れよ」
子供「……」
妻「あなた、リモコン取って」
店主「はい」
子供「……あ、あの」
店主「ん?」
子供「また…食べに来ていい?」
子供「あ…ありがとう…」
店主「じゃあな。もう辺り暗くなってるから、気をつけて帰れよ」
子供「……」
妻「あなた、リモコン取って」
店主「はい」
子供「……あ、あの」
店主「ん?」
子供「また…食べに来ていい?」
57: 2021/02/15(月) 21:00:39.987 ID:htCqv8WS0
店主「……」
子供「18日、僕の誕生日なんだ。誕生日の夜は毎年、お父さんもお母さんも仕事の時間合わせて、どこかに外食に連れてってくれるの」
子供「だから今週の木曜日、今度は家族連れて皆でとんかつ食べに」
店主「今日で…」
子供「え?」
店主「……………今日で、閉店なんだ」
妻「……」ピッ
テレビ『プツッ────』
子供「……」
店主「……」
子供「18日、僕の誕生日なんだ。誕生日の夜は毎年、お父さんもお母さんも仕事の時間合わせて、どこかに外食に連れてってくれるの」
子供「だから今週の木曜日、今度は家族連れて皆でとんかつ食べに」
店主「今日で…」
子供「え?」
店主「……………今日で、閉店なんだ」
妻「……」ピッ
テレビ『プツッ────』
子供「……」
店主「……」
58: 2021/02/15(月) 21:03:01.984 ID:htCqv8WS0
子供「何で…?」
店主「別に大した理由じゃねえよ。客足が減って経営が苦しくなってきたから、店を閉じるしかなくなっただけだ」
子供「……じゃあ…もうあのとんかつは二度と…」
店主「悪いな。黙ってて」
子供「……」
子供「そっか…そうなんだ」
店主「とんかつとキャベツ、ちょうど一人前だけ余っちゃってな。残るかと思ったけど、お前が食べてくれて助かったよ」
店主「最後の最後に最高のとんかつを作ることができた…お前のおかげだよ」
店主「別に大した理由じゃねえよ。客足が減って経営が苦しくなってきたから、店を閉じるしかなくなっただけだ」
子供「……じゃあ…もうあのとんかつは二度と…」
店主「悪いな。黙ってて」
子供「……」
子供「そっか…そうなんだ」
店主「とんかつとキャベツ、ちょうど一人前だけ余っちゃってな。残るかと思ったけど、お前が食べてくれて助かったよ」
店主「最後の最後に最高のとんかつを作ることができた…お前のおかげだよ」
59: 2021/02/15(月) 21:04:40.897 ID:htCqv8WS0
店主「これで心置き無く店を閉じることができる。親父もきっと嬉しがってるはずだ」
店主「お前が美味しそうにとんかつ食べてる姿を見て……安心したよ」
子供「……とんかつ、いくら?」
店主「いいよいいよ金なんて」
子供「いや払うよ。食べさせてもらってタダで帰るなんて…」
店主「どうせ今日で閉店なんだから構わねえよ。ほら、帰れ帰れ」
子供「嫌だ。お願いだから払わせて」
店主「しかし…」
妻「あなた」
店主「お前が美味しそうにとんかつ食べてる姿を見て……安心したよ」
子供「……とんかつ、いくら?」
店主「いいよいいよ金なんて」
子供「いや払うよ。食べさせてもらってタダで帰るなんて…」
店主「どうせ今日で閉店なんだから構わねえよ。ほら、帰れ帰れ」
子供「嫌だ。お願いだから払わせて」
店主「しかし…」
妻「あなた」
60: 2021/02/15(月) 21:05:49.015 ID:htCqv8WS0
妻「受け取ってやりなさい。この子の気持ち」
店主「……」
子供「……」
店主「…530円だよ」
子供「5ひゃく…足りるかな……」
チャリチャリン…
店主「ひい…ふう…みい……」
子供「……483円しかない」
店主「いいよ、これだけあれば十分だ」
子供「ま、待って!奥の方にまだ小銭が…!」
チャリン
店主「……」
子供「……」
店主「…530円だよ」
子供「5ひゃく…足りるかな……」
チャリチャリン…
店主「ひい…ふう…みい……」
子供「……483円しかない」
店主「いいよ、これだけあれば十分だ」
子供「ま、待って!奥の方にまだ小銭が…!」
チャリン
61: 2021/02/15(月) 21:07:39.054 ID:htCqv8WS0
店主「……488円、お預かりします」
子供「……」
店主「気にすんな。残ってたの小さいとんかつだったから530円分もねえよ」
店主「毎度あり。最後のお客さん」
子供「おじさん…」
子供「……ありがとう。さよなら」
店主「さよなら」
妻「さようなら」
子供「……」
店主「気にすんな。残ってたの小さいとんかつだったから530円分もねえよ」
店主「毎度あり。最後のお客さん」
子供「おじさん…」
子供「……ありがとう。さよなら」
店主「さよなら」
妻「さようなら」
62: 2021/02/15(月) 21:09:34.707 ID:htCqv8WS0
ガラガラ…パタン
店主「……親父の自慢のとんかつ、作ってやって良かった…」
店主「あいつ…俺が作ったとんかつをあんなに美味しそうに……グス…」
妻「…片付けましょう。あなた」
店主「……ああ」
-おわり-
店主「……親父の自慢のとんかつ、作ってやって良かった…」
店主「あいつ…俺が作ったとんかつをあんなに美味しそうに……グス…」
妻「…片付けましょう。あなた」
店主「……ああ」
-おわり-
66: 2021/02/15(月) 21:21:30.146
とりあえず定食屋のトンカツは食べたくなった
68: 2021/02/15(月) 21:38:19.326
飯テロ
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