1: 2015/07/16(木) 04:13:41.508 ID:T9JlQAI50
女の子「明日、休みになっちゃうかな?」

女の子「…なんで、って?……だって、あたしは……ううん、なんでもない」

女の子「このまま雨が降り続けて、何もかも全て流されてしまえばいいのに」

女の子「嫌なこととか、苦しいこととか、全部消えてしまえばいいのに」

女の子「……そしたら、これからもずぅっと、キミといられるのかな?」

5: 2015/07/16(木) 04:17:07.061 ID:T9JlQAI50
女の子「キミと一緒に暮らしていることが、すごく不思議な感覚なの」

女の子「あたしは……ママのことも、パパのことも、本当に好きだった」

女の子「愛してた」

女の子「……でも、もういない」

女の子「キミだけなんだよ。あたしのそばにいて、支えてくれるのは」

女の子「……もう寝ちゃった?」

7: 2015/07/16(木) 04:19:30.432 ID:T9JlQAI50
女の子「あっ、今まぶたがぴくってした」

女の子「寝てるふりしてるんでしょ。ふふ、それでもいいけど」

女の子「あたしの話、聞いててくれる?」

女の子「……あのね、あたしね」

女の子「昔からずっと、キミと仲が良かったでしょ?でも、あたしって昔は男っぽくて、髪も短くて、がさつで」

女の子「キミと一緒にいるときは、男の子みたいになれて嬉しかったんだ」

9: 2015/07/16(木) 04:21:37.874 ID:T9JlQAI50
女の子「周りの子たちは、みんな女の子っぽくて、仲良くなれなくて」

女の子「虫取りも、かけっこも、探検も、みんなそんなことはしてなかった」

女の子「でもね、わたしは好きだったの。七色に輝く宝石よりも、木の上にいる鳥たちや、虫たちのほうが好きだった」

女の子「きっと、キミがいてくれたからひとりぼっちにならなかったんだよ」

女の子「……本当に、ありがとう」

10: 2015/07/16(木) 04:24:51.253 ID:T9JlQAI50
女の子「あたしが小学校に入学したとき、キミはあたしがスカートを履いている姿を見てすごく笑ってたよね」

女の子「なんだよそれ、って」

女の子「あたしだってそう思ってたよ。でも、ちょっとこう……やっぱり」

女の子「あたしだって頑張って女の子になろうとしてるのに、なんで笑うんだー!って思って、むすーっとしてた」

女の子「…あはは、懐かしいね」

女の子「あの頃のキミは、今と比べ物にならないくらい背が低かったね」

女の子「ずいぶんと伸びたね?」

11: 2015/07/16(木) 04:27:50.209 ID:T9JlQAI50
女の子「小学校に入学してしばらく経ったとき、あたしはもう男の子の遊びをやめてたよね」

女の子「キミが不満げだったのを今も覚えてる」

女の子「……さみしかった?おぉ?」

女の子「なんてね。冗談だよ」

女の子「周りの子たちと一緒じゃない自分が、恥ずかしかったの」

女の子「みんなと同じじゃないとやっていけないって、そう思ったんだ」

女の子「……でも、うまくいかなかった」

13: 2015/07/16(木) 04:31:40.221 ID:T9JlQAI50
女の子「しばらくして、あたしは……あたしは、いじめられるようになった」

女の子「やっぱり、どうしてもみんなと馴染めなかった。同じになれなかった」

女の子「机の上に落書きされたり、教科書がなくなってたり、担任の先生にあたしが悪いことしてたって言われたり」

女の子「すごくつらかったな」

女の子「あのときキミが言ってくれたこと、ずっと頭から離れないよ」

女の子「たまに思い出してるの。そしたら、すぅっと気が楽になるの」

女の子「不思議だよね。まるで魔法の呪文みたい」

女の子「……キミって、魔法使いなの?」

女の子「そんなわけないか」

女の子「みんなと同じじゃなくてもいいよ、そのままのあたしのことが好きって」

女の子「そう言ってくれたこと、絶対に忘れないよ」

16: 2015/07/16(木) 04:35:52.283 ID:T9JlQAI50
女の子「6年生になったとき、休み時間に教室で言ってくれたこと、覚えてる?」

女の子「あのときクラスのみんなは校庭に遊びに行っていて、体調が悪かったあたしと、なぜか残ってたキミの2人だった」

女の子「先生は、いたんだっけ?」

女の子「あぁ、そっか。最初はいたけど、後で職員室に行ってたんだっけ」

女の子「思い出すと本当に懐かしいよ」

17: 2015/07/16(木) 04:38:19.607 ID:T9JlQAI50
女の子「あのときね、キミがね」

女の子「あたしは窓側の席だったから、1人で窓の外をぼぉっと眺めてたの」

女の子「どうしてあたしはみんなと馴染めないんだろうとか、でもそんなこと考えなくてもいいよとか」

女の子「キミがくれた言葉を思い出しながら、答えのない自問自答をしてた」

女の子「そしたら急に、キミが来てね」

女の子「髪、伸びたなって言ったの」

女の子「なんだか唐突すぎて笑っちゃったよ」

18: 2015/07/16(木) 04:40:40.274 ID:T9JlQAI50
女の子「……ねえ、聞いてる?」

女の子「もしかして本当に寝てるの?」

女の子「それでもいいよ、あたしももうすぐ寝るから」

女の子「……キミの隣、入ってもいい?」

女の子「お、お邪魔します……」そろり

女の子「ほわっ……!!き、キミがこんなに近くで見えるなんて…レアだ…!」

女の子「……じゃなくて、えっと、何を言おうとしてたんだっけ?」

女の子「忘れちゃった」

20: 2015/07/16(木) 04:42:37.554 ID:T9JlQAI50
女の子「……そいっ」ぎゅっ

女の子「えへへ、あったかい」

女の子「キミの体って、こんなに温かかったんだ。ずっと、ずっとこうしたかった」

女の子「……ねえ、寝てるよね?」むに

女の子「あはは、面白い顔になった」

女の子「うぅ……さみしいよ」ぎゅぅ

21: 2015/07/16(木) 04:45:05.129 ID:T9JlQAI50
女の子「あたしのママね、ずっとキミのこと気にしてたんだよ」

女の子「最近はどうしてるんだーとか、また遊びに来るように伝えてーとか、なんかうるさかったの」

女の子「そんなに素直に誘えるわけないじゃん、言えるわけないじゃん」

女の子「ママはそういうとこ積極的だったからあたしとは違うんだよねぇ」

女の子「パパのほうが控えめだったし」

女の子「……でも、幸せそうだった。すごく、すごく。幸せそうだった」

女の子「あたし、ママとパパのように…でもいつか、あんなふうに」

女の子「……ううん、なんでもないよ」

22: 2015/07/16(木) 04:46:57.032 ID:T9JlQAI50
女の子「ママとパパは氏んじゃったのに、どうしてあたしだけ生きてるの?」

女の子「ねえ、どうして」

女の子「やだよ、さみしいよ……」

女の子「今すぐにでも会いたいよ」

女の子「うぅ……ん、えっ?」

女の子「キミ、今…ぎゅーってしてくれた?」

女の子「……気のせい?」ぎゅっ

24: 2015/07/16(木) 04:48:35.329 ID:T9JlQAI50
女の子「キミの体、おっきいねぇ」

女の子「……昔はあたしのほうが背が高かったのに、こんにゃろう」ぐりぐり

女の子「……むぅ」

女の子「いいもん、あたしだっていつかはキミの10倍ぐらい高くなってみせるもん」

女の子「だから、そのときまで」

女の子「あぅ……」

25: 2015/07/16(木) 04:50:43.672 ID:T9JlQAI50
女の子「もう、寝ようかな……」

女の子「キミって、寝てるときがいちばんかわいいかも。無防備だし」

女の子「あたしのこと、助けてくれて、手を差し伸べてくれて、ありがとう」

女の子「もし明日が休みになったら、そのときは……そのときは、あたしの気持ちを伝えてもいいですか?」

女の子「……きっと、すぐに晴れるよ」

女の子「おやすみなさい……」

おわり

引用元: 女の子「雨、強いね…台風が近づいてきたのかな」