1: 2009/02/01(日) 00:53:36.44 ID:9ekVnM6y0
僕の名前は男。

僕はどこにでもあるような平凡な家庭で生まれ育った。

恐らく他の人と大差ない人生を送ってきた、と言っていいと思う。

小学校3年生まで、であるが。

その頃から子供というのは優越感に浸る喜びを覚えるのだろうか、そのコミュニティ内で弱者を設定してその子を虐げるようになる。

そして、いつもそのターゲットは僕だった。

その理由と言うのが僕の顔、である。

僕は多に類を見ないほどの不細工なのだ。

5: 2009/02/01(日) 00:55:58.64 ID:9ekVnM6y0
それは自分でも自覚している。

やはり見た目というのは人間の印象の大きな割合を占めるファクターなのだろう。

僕を初めて目にする人はもちろん毎日会う人間ですらも僕に会うと顔をじろじろと見つめ、嘲笑し、侮蔑するのだ。

だから僕には友達はいなかったし、友達をつくろうとも思わなかった。

でも、僕はそれでもよかった。

家に帰ればやさしい父と母がいて、僕を大切にしてくれる。

それで満足だった。

でも、いつの日も破綻というのは突然やってくる。

6: 2009/02/01(日) 00:57:39.80 ID:9ekVnM6y0
父は無類のお人よしで、人望も厚かった。

それは僕にとって父を尊敬させるだけの十分な要素であったし、僕も常々そんな人間になりたい、そう思って生きてきた。

中学1年の夏だったかな。

父の友人の会社が倒産して莫大な借金が発生したそうだ。

普通であれば友人が返すべき借金、なのだが倒産の翌日友人は消息不明に。

保証人となっていた父に借金の返済が回ってきたのだ。

その額3000万円。

7: 2009/02/01(日) 00:59:21.10 ID:9ekVnM6y0
その事実を聞いた母は翌日、姿を消した。

僕は家庭をめちゃくちゃにした父の友人を恨んだ。

けれども父は友人も、そして母も責めることはなかった。

それから父は借金の返済のために馬車馬のように働いた。

僕も少しでも父の力になれるように新聞配達のバイトを始めた。

将来いい企業に入って父に楽をさせられるように昼夜勉学に励んだ。

友達がおらず時間を持て余していたしちょうどいい、そう自分を納得させて。

中学3年になるときには同学区では並ぶものがいないほどの成績となっていた。

学区トップの進学校に合格して父を喜ばせてやろう、そう思っていた矢先だった。

過労で父が倒れた。

8: 2009/02/01(日) 01:01:35.27 ID:9ekVnM6y0
人の命とは脆いものであっけなく父は逝ってしまった。

「人を信じる心を忘れるな」

父は最後にこう言い遺した。




僕は親戚(といっても久しく付き合いはなかったのだが)の家に預けられた。

親戚一家としては交誼のない親族ほど疎ましいものはなかったのだろう。

僕への風当たりはとても強いものであった。

不細工、化け物、キモい、氏ね・・・散々罵られたが、僕は特別な感情を抱かなかった。

人間とはある状況に長く浸ると慣れてくるものなのだろう。

なんの反応も示さない僕に、いびるのが飽きたのであろうか、親戚は僕に構うことはなくなった。

11: 2009/02/01(日) 01:06:33.79 ID:9ekVnM6y0
そして受験を迎えた。

僕は学区トップの進学校を受験した。

親戚の息子も僕と同じ学校を受験した。



結果は、僕は合格、親戚の息子は不合格、であった。

この結果に息子は憤慨し、僕を罵り捲くった。

馬の耳に念仏とはまさにこのことで僕には息子の罵倒の文言など耳に入っていなかった。

その態度にさらに息子は激怒し、こう言ったんだ。

「あー、バカに騙されて氏んだ親父の頭の悪さが頭じゃなくて顔に来たからか!」



気付いたら僕は息子に馬乗りになり、殴りつけていた。

怒りなどとうに捨て去った感情だと思っていた。

13: 2009/02/01(日) 01:10:01.87 ID:9ekVnM6y0
僕は息子が気を失ったのに気付くと少し考えをめぐらした。

こんなことをしてこのままここにいたのでは何をされるか分からない。

僕は箪笥をあさってそこにあった現金を鷲掴みにすると家を出た。




家を出るとすぐにアパートを探した。

安い物件を探すと僕はそこに入居することに決めた。

契約の際に年齢を詐称したがこの顔のおかげだろうか、疑われることはなかった。

安い、とはいえ中学時代の雀の涙ほどの貯金では生活していけるはずもない。

僕はすぐにバイトを探すことにした。

幸運なことに夜勤のビルの警備のバイトが見つかった。

夜6時から深夜2時まで、2時間ごとの定期的な見回りを行うことと、監視カメラに異常があったときにそこに出向けば、あとは事務室で何をしていてもいいのだという。

時給もそこそこよく、一応は自活の術を手に入れた、といってもいいだろう。

15: 2009/02/01(日) 01:13:44.82 ID:9ekVnM6y0


そして、高校生活が始まった。

高校になってもやはり僕への他人の反応はほぼ変わることはなかった。

物珍しそうに視線を向けるもの、数人と笑いあうもの、僕に聞こえるように罵詈雑言を放つもの。

唯一つ変わったのは、いじめ、だ。

中学時代は空気のような存在で誰にも相手にされなかった。

だが高校に入ってからはいじめを受けるようになった。

あからさまに僕を当て擦るもの、影で陰湿ないやがらせをするもの、様々だった。

もちろん助けてくれる者などいない。

僕は気を紛らわすために勉強と仕事に身を捧げた。

そのため成績はいつもトップだった。

警備のために体を鍛え始めて気付いたらムキムキになっていた。

けれども相変わらず顔は不細工だった。


―――――――――――――――――――――――

16: 2009/02/01(日) 01:19:47.84 ID:9ekVnM6y0


ピピピピピピピピピ

男「んっ、朝か…。はぁ、毎日のことだけど、学校…行きたくないなぁ…」

男「いや、勉強に遅れることはできないし行かないと!」





ガラガラ

♀1「来たわよ、男君。相変わらず究極に不細工よねーwww」
♀2「本当本当w毎日見てるのに飽きない不細工さwww」
♀3「キモいわよねーwww」


女の子達のひそひそ話が聞こえる。

長年ひそひそ話を聞いてきた僕の耳は異常に発達してしまった。

聞きたくないことも聞こえてしまう。

18: 2009/02/01(日) 01:22:03.27 ID:9ekVnM6y0

ドンッ

男(痛っ…)

♂1「わりいわりい、不細工すぎて気付かなかったwww」
♂2「何だよ不細工すぎてってwww」
♂3「不細工は事実だけどもwww」

クスクス… クスクス…

これがいつも通り。

だから僕は朝来るとすぐに教科書を広げて勉強に没頭するんだ。

そのほうが気が楽だから。

23: 2009/02/01(日) 01:25:49.71 ID:9ekVnM6y0


ガラガラ



先生「よーし、ホームルームを始めるぞー」

先生が声をかけるとざわついていた教室はすぐに静かになる。

みんな進学校に来るだけあって根は真面目なのだ。

僕の席は教室の一番後ろの左端。

右隣と前には席はあるけれども誰も座っていない。

まぁ、いじめの一つだ。

先生はこの状況に関してみて見ぬふりを決め込んでいる。

僕としても解決するつもりもないのに関与されるのは鬱陶しいし、それはそれでありがたい。

そんなことを思いながらホームルームの先生の話を聞き流していた。

25: 2009/02/01(日) 01:29:39.44 ID:9ekVnM6y0


先生「よし、じゃあ何か連絡はないか」

ホームルーム終了の決まり文句。

いつもはこれで終わりなのであるが今日は違った。

先生「よし、入ってきていいぞ」


ガラッ


見慣れない女の子。

転校生、というやつか。

静かだった教室が再びざわつき始めた。

30: 2009/02/01(日) 01:33:14.21 ID:9ekVnM6y0

先生「ほら、静かにしろ。えー、今日から新しくこのクラスの一員となった子だ。さあ、挨拶しろ」

転校生「え、えっと…今日からこの学校にお世話になることになりました。女、といいます。よろしくお願いします。」

♂1「かわいー!」

女「えっ、あっ…」

♀1「ちょっと♂1、怖がってるじゃないwwねぇねぇ女さん、どこからきたのー?」

先生「こらこら、質問は後にしろ。それで、だ。席なんだが…何しろ急な転校だったから用意してなくてな…」

男(マジかよ・・・)

36: 2009/02/01(日) 01:37:23.33 ID:9ekVnM6y0

先生「すまないが奥にいる男の隣に座ってもらえないか?本当に申し訳ない」

女「あ、はい。わかりました。」

先生「じゃあ授業は10分後だからそれまで女君にいろいろ教えてあげるんだぞ」




♀1「ねぇねぇ、女さん、どこから来たの?」
♀2「今はどこに住んでるの?」
♂1「かわいーよね!彼氏とかいるの?」
♂2「何か分からないことがあったら聞いてね!いつでも教えるから!」

女「えっ、あっ、あの…」

38: 2009/02/01(日) 01:40:14.71 ID:9ekVnM6y0

♀3「ちょっと、そんなにいっぺんに話しかけられて女さん困ってるじゃない!」

女「いえ、そうではなくて、こんなところに集まったら隣で勉強されてる方に迷惑じゃないかと…」

♂1「ぎゃははははwwwいいのいいのこんな不細工のことはwww」
♂2「いつも勉強しかしてない不細工勉強マシーンだからなwww」
♀1「てゆーか逆に男が邪魔なんだしwww 女さん、こんな奴のことは放っておいていろいろ話そうよ!」
♀2「そうそう!」

女「えっ、そっ、その…」



キーンコーンカーンコーン

42: 2009/02/01(日) 01:44:11.60 ID:9ekVnM6y0

♂1「あ、授業始まっちまったよー」
♂2「男!お前のせいだからな!」


ドンッ


男「ご、ごめん…」

♂1「女さん、またあとでねー!」

次の休み時間、図書館にでも行こうかな…。

44: 2009/02/01(日) 01:47:47.52 ID:9ekVnM6y0

女「あの…男さんっていうんですか?」

男「あっ、えっ、う、うん…」

女「私のせいで、すみません…」

男「い、いいよ…。それより僕なんかと話さないほうがいいよ…」

女「なんでですか?」

男「…君もいじめられたら、申し訳ないから…」

女「…」



久しぶりに、他人と普通の会話をしたな…。

でもどうせ、この子もいずれは僕を罵るようになるんだろうなぁ。

45: 2009/02/01(日) 01:51:04.82 ID:9ekVnM6y0



授業が終わると僕は図書館へ行った。

今日は休み時間は図書館で過ごそう。



―放課後―
♀1「女さん、今日来たばかりで何も分からないでしょ?学校案内してあげるよ!」

♀2「私も一緒に行く!」

女「あっ、えっと、ごめんなさい…今日はちょっと用事が…」

♀1「なーんだ、残念ー」

♀2「じゃあまた明日案内してあげるね!」

女「ごっ、ごめんなさい…」

♀1「謝りすぎよーwww 気にしないで。じゃあまた明日ねー」
♀2「また明日ー」

47: 2009/02/01(日) 01:54:14.23 ID:9ekVnM6y0

私、何でいつもこうなんだろう。

みんなよくしてくれるのに、断っちゃう。

前の学校でも、その前の学校でもそうだった。

それでいじめられる。

この学校でも、いじめられるのかな…。

50: 2009/02/01(日) 01:59:20.31 ID:9ekVnM6y0
男「おっ、もう5時か…早く帰って仕事行かなきゃ」

女「あ、あれは男さん…。帰るのかな。話したいな。でも、あんなこと言われたら話しにくいな…」

女「どこに住んでるんだろう…ついていってみよう」


スタスタスタ

ガチャ

女「アパート?もしかして一人暮らしなのかな?でもこの歳で…」


ガチャ

女「うわっ、もう出てきた!隠れないと」


スタスタスタ


女「どこに行くんだろ、気になるなぁ」


スタスタスタ


女「ビル…?さすがに中に入るわけには行かないし…今日はもう帰ろうっと」

51: 2009/02/01(日) 02:01:03.53 ID:9ekVnM6y0


―次の日―

♂1「女さん、昨日は俺たちが質問してばっかりだったから女さんも俺たちに何でも聞いてくれよ!」
♂2「あ、先に行っておくけど俺、彼女はいないから!」
♂3「聞いてねーよwww」

女「あの…」

♂2「なになに?」

女「男さんって、どんな方なんでしょうか?」

♂2「なんだよ、男のことかー。どうなんだあいつ?」

♂1「さぁ?しらね。知りたくもねぇしwww」

53: 2009/02/01(日) 02:03:41.49 ID:9ekVnM6y0
♂3「あ、そういえば両親ともいないって聞いたな。あまりに不細工なんで捨てられたんじゃねぇのwww」

♂2「ありうるありうるwww」

女「そうなんですか…」

♂2「そういえばなんであんな奴のこと聞いたんだ?あいつがなんかちょっかい出してきたんならヤキいれてやるぞ!」

女「い、いえ!そうではないです!ただ、なんとなく…」

♂1「変わってんなー女さんはwww」

ガラガラ

♂2「噂をすればwww」

♂3「今日もキモいですねwww」

男「…」

54: 2009/02/01(日) 02:06:28.42 ID:9ekVnM6y0

♂1「不細工すぎて両親に見捨てられたかわいそうな男君ではないですかwww」

男「っ!黙れこの野郎!!」

♂1「なっ!て、てめぇ、男のくせに生意気な…」

♂2「ぶん殴るぞコラァ!!」

♂3「この不細工野郎が!!」


ガラガラ

先生「さーホームルーム始めるぞー。ん?どうした?」

♂1「チッ、ぜってぇぶっ頃してやる」

♂2「覚えとけよ…」

♂3「おい、放課後、シメてやろうぜ」

58: 2009/02/01(日) 02:11:00.65 ID:9ekVnM6y0
男「…」


―放課後―

♂1「おい、男。ちょっと面貸せや」

来たか…。

♂2「行くぞ、歩けや!」

僕は旧校舎の裏に連れて行かれた。

♂3「朝は男のくせによくも俺らに恥をかかせたな」

男「…」

♂2「なんか言えやコラ!」

男「…お前らが」

♂1「あん?」

男「お前らが、僕の父さんを馬鹿にしたからだ!」

♂3「ぎゃははははwwwファザコンかよwwww」

63: 2009/02/01(日) 02:15:32.65 ID:9ekVnM6y0

♂1「まぁなんであれ、これは罰を与えないとな」

♂2「だな。せーのっ」

バキィッ

男「…っ」

♂1「おい、ずりぃぞ。次は俺の番だからな」

ゴキィッ

♂3「さて、俺もっと」

ゴスッ

男「う…く…」

♂3「抵抗する気すら微塵も感じられねぇな。さすがヘタレwww」

♂2「お前の大好きなお父さんもさぞヘタレだったんだろうなwww」

男「!!っの野郎!!」

67: 2009/02/01(日) 02:20:52.47 ID:9ekVnM6y0


男(・・・!!なんでこんなときに、親戚の息子の顔が…)


♂2「かかってこいよ、相手になるぞ!」


男(痛かったろうな、ごめんな息子…。こいつらも、殴られたら痛いんだろうな…)


♂3「ぎゃははwやっぱりヘタレだ!」

バキィッ

男「うぐぅ…」

ゴスッ

ドゴォッ

・・・

71: 2009/02/01(日) 02:23:56.68 ID:9ekVnM6y0
♂1「ハァハァ、こんなもんでいいだろ」

♂2「これに懲りて二度と俺らに逆らうんじゃねぇぞ!」

♂3「バーカ!」

男「…」

タッタッタッ

女「ごっ、ごめんなさい!」

男「…?」

女「本当にごめんなさい!!」

男「…見てたの?」

女「…ごめんなさい」

79: 2009/02/01(日) 02:31:29.54 ID:9ekVnM6y0


男「そっか…」

女「朝、男さんの親御さんの話になったのも私のせいなんです。私があの人たちに男さんのこと聞くから…」

男「いや、君のせいじゃないよ…僕が不細工なのが悪いんだ」

女「そんなこと…」

男「そんなことあるさ。君もそう思ってるんだろ?」

女「ちがっ」

男「いや、そうさ。長年いろんな人間の表情を見てきたからね。大体分かるんだ」

84: 2009/02/01(日) 02:34:48.17 ID:9ekVnM6y0
女「…」

男「僕になんかかまってると君もいじめられることになる。やめたほうがいいよ。じゃあね」

スタスタ

女「あっ…」




88: 2009/02/01(日) 02:37:06.77 ID:9ekVnM6y0

―ビル内事務室―

男「はぁ…効いたなぁ」

男「なんで…」

男「何でこんな不細工に生まれてきたんだろ」

男「ちくしょう…ちくしょう…」

気付いたら涙を流していた。

泣くのは父が逝って以来だな。

あの時涙は出し尽くしたと思ったのに…意外と出るもんなんだなぁ。

ひとしきり泣いたあと僕は頭を上げた。

90: 2009/02/01(日) 02:38:25.01 ID:9ekVnM6y0

そのときだった。

男「!?監視カメラに…誰か映ってる…」

男「誰もこのビルには入れないから…まさか泥棒…」

突然、後から声が聞こえてきた。

「私は神だ」

男「うわぁっっ!?」

思わず後ろにのけぞり、倒れてしまう。

監視カメラを確認すると先ほどの人影はもうない。

男「だ、誰だ!?」

神「私は神だ」

95: 2009/02/01(日) 02:40:32.90 ID:9ekVnM6y0

男「うわぁっっ!?」

思わず後ろにのけぞり、倒れてしまう。

監視カメラを確認すると先ほどの人影はもうない。

男「だ、誰だ!?」

神「私は神だ」

男「か、神?」

神「そうだ」

男「た、確かにあそこから一瞬でここまでくるのは人間には不可能…」

男「ということはオバケ!?ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

神「私は神だと言っている」

男「こわいよぉぉぉぉ!!!」

102: 2009/02/01(日) 02:42:29.50 ID:9ekVnM6y0

神「…では証拠を見せるとしよう」

神「全知全能の神よ地球上全ての生命よこの者に罰を…」

男「!?む、胸が、苦しいっ…」

神「ゼンチゼンノウノ…」

男「わ、分かりました信じます!信じますからやめてください!」

神「やっと信じたか」

男「で、その神様が僕に何を?」

神「君は誰よりも過酷な人生を送ってきた。誰よりも優しい心を持っている。だが報われない」

男「はぁ…」

104: 2009/02/01(日) 02:44:27.78 ID:9ekVnM6y0

神「そこで、どんな願いも3つだけかなえてやることにした。さぁ、何でも言いたまえ。提出期限は明日の夜12時までだ」

男「提出ってそんな課題みたいないい方しなくても」

神「何か望みはないのか?」

男「じゃ、じゃあ…僕をイケメンにしてください!」

神「お安い御用だ。」

男「できるんですか!?」

神「任せておけ。ではいくぞ。ゼンチゼンノウノ…」

男「うっ!?顔が、うわ、うわぁぁぁぁぁ!!!」

・・・



108: 2009/02/01(日) 02:47:12.56 ID:9ekVnM6y0
ピピピピピピピピピ

男「ん、朝か…。…昨日のは?なんだ、夢か…」

男「さて、準備準備…って、えぇ!?」

鏡には見知らぬ顔が映っていた。

男「誰こいつ!?え!?俺!?」

神(私は神だといったろう)

男「うわぁ、頭の中に直接声が!?」

神(さぁ、残りの願いは2つだ。よく考えて決めることだな)

男「そんなことより、学校に遅れる!?」

神「そんなことって…」

113: 2009/02/01(日) 02:52:06.23 ID:9ekVnM6y0



男「さて、学校に着いたわけだけど…そういえば急に顔が変わったんだよな…。なんて言われるか」

神(その点については問題ない。皆の記憶を改竄しておいた。お前が以前からイケメンであったとな)

男「あ、ありがとうございます!」

男「とはいえ…緊張するな…」

ガラガラ

♂1「おう!おはよう男!」

♂2「なんだよ今日は遅いじゃねぇか」

男「いや、寝坊しちゃって…」

♂3「お前がか、めずらしいなwww」

120: 2009/02/01(日) 02:55:20.69 ID:9ekVnM6y0


男(顔が違うと、こんなにも態度が変わるものなのか…)

ヒソヒソ
♀2「♀1、男君が来たわよ!いいの?」
♀1「でも、勇気が出ないよ…」
♀2「今日言わなくていつ言うの!じゃあ私が言ってあげるわよ」
♀1「ちょ、ちょっと!」

♀2「ねぇ男君、♀1がねぇ、話があるらしいよ」

男「えっ、なっ、何?」

♀1「あの…今日学校終わったら、空いてるかな…?」

男「えっ、えっ?」

♀1「ちょ、ちょっと付き合って欲しいなって思っただけ!無理ならいいよ」

男「あ、い、いいよ!うん!」

♀1「!じゃ、じゃあ6時に駅前で待ってるからね!」

男(イケメンって、すばらしい!)

124: 2009/02/01(日) 02:59:31.91 ID:9ekVnM6y0
ガラガラ

男「あ、女さん、おはよう!」

女「お、おはようございます」

女「あの、男さん、なんか雰囲気変わりました?」

男「!?き、気のせいじゃないかな?」

女「そうですか…。あ、あの…」

男「なんだい?」

女「今日、学校が終わったらこの町を案内していただけませんか?どうも分からないので…」

129: 2009/02/01(日) 03:01:57.26 ID:9ekVnM6y0
男(6時から♀1との約束があるけど多分長くならないだろ…)

男「いいよ。でも少し用事があるから夜の9時からでもいいかな?」

女「は、はい!ありがとうございます!」





133: 2009/02/01(日) 03:04:29.90 ID:9ekVnM6y0


男「予定時間の30分も早く着いてしまった…」

男「緊張するなぁ」

男「女の子と二人きりで遊ぶとか初めてだしなぁ」

男「どうしたらいいんだろう」

男「怖いよう…」

♀1「お待たせ!ごめんね遅くなって…」

男「う、ううん、全然待ってないよ」

♀1「じゃあいこっか!」


―――――――――――――

136: 2009/02/01(日) 03:06:49.34 ID:9ekVnM6y0


♀1「ごめんね、買い物に付き合ってもらっちゃって」

男「う、うん」

男(もう8時半か…楽しい時間ってこんなに早く過ぎるものなんだなぁ…)

♀1「あ、あの、男君…」

男「えっ、な、なに?」

♀1「カラオケ行かない?話したいこともあるし」

男(でも今カラオケなんか行ったら女さんとの約束が…。でもこのチャンスを逃したら僕は…)

男「い、いいよ」

♀1「ありがとう♪」

141: 2009/02/01(日) 03:11:32.52 ID:9ekVnM6y0


♀1「笑顔咲くー♪」

男(話ってなんだろう…)

♀1「はぁーすっきりした!ん?どうしたの男君、深刻な顔して」

男「あの、話って…」

♀1「え、あ、その…。わ、私、そのね、男君のことが…好きなの。付き合ってください!」

男(キタコレ!!)

男「いいy・・・


146: 2009/02/01(日) 03:13:58.03 ID:9ekVnM6y0




♀1『来たわよ、男君。相変わらず究極に不細工よねーwww』

男(!!?)

♀1『てゆーか逆に男が邪魔なんだしwww 女さん、こんな奴のことは放っておいていろいろ話そうよ!』

男(そ、そうだった…)





150: 2009/02/01(日) 03:18:49.83 ID:9ekVnM6y0


男「ねぇ、♀1さん、僕のどこが好きなの?」

♀1「えっ、どこって…優しいし、頼りがいがあるし…」

男「でも、僕そんなに女さんと接してないのに何でそんなことが分かるの?」

♀1「そ、それは…」

男「じゃあ僕のどこが好きなの?」

♀1「か、カッコイイし…」

男「…顔、か。所詮顔なんだよな…クソッ!!」

ダッ!

♀1「お、男君っ!」

153: 2009/02/01(日) 03:21:07.36 ID:9ekVnM6y0


僕は走った。

僕の頭は、空っぽだ。

ただ、走った。



女『あの、男さん、なんか雰囲気変わりました?』

男(・・・そっか、女さん、気付いていたんだね…)

男(女さんだけが、本当の僕を見ていてくれたんだ。なのに僕はあなたを裏切ってしまった)

男(あなたを信じられなかった。これじゃあ、親父に顔を合わせられないよ…)



僕はビルの事務室に駆け込んでいた。

165: 2009/02/01(日) 03:28:12.20 ID:9ekVnM6y0


男「神様!いますか!!」

神「私は神だ」

男「わかってます!もう一つの願いをかなえてください!」

神「分かった。申してみよ」

男「僕の顔を、元に戻してください!」

神「ほう、せっかくイケメンになったというのにか」

男「早くお願いします!」

神「むぅ…仕方ない。ゼンチゼンノウノ…ハッ!!」

男「うわっ!?もっ、戻った…ありがとうございます!」


ダッ!

時計はちょうど10時を指していた。

172: 2009/02/01(日) 03:34:39.28 ID:9ekVnM6y0


走れば15分で着く…。

待っていて、くれないよな…女さん…。



男「はぁ、はぁ、はぁ、やっぱり、いないか…」

男「クソッ、ちくしょう、うわぁぁぁぁぁぁぁ」

僕は人目もはばからず、泣いた。

ヒソヒソ… キモーイ… ナイテルヨ… アノカオデ… オトコサン…

179: 2009/02/01(日) 03:39:17.19 ID:9ekVnM6y0

男「…?」

女「男さん!?」

男「お、女さん、なんで…」

女「ご、ごめんなさい、ちょっとトイレに行ってました…」

男「そうじゃなくて、なんでこんな時間まで…」

女「え、だって用事がおありだったんですよね?ですからお待ちしてました」

僕は、僕はなんて馬鹿でクズで最低な人間なんだ。

こんな純粋な心をもった人を裏切るだなんて…。

僕は昨日から今日にかけてあったことを女さんに洗いざらい話した。

信じがたい話だろうけど、女さんは信じてくれた。

そして、僕に優しく、語りかけるように話してくれた。

182: 2009/02/01(日) 03:42:11.94 ID:9ekVnM6y0

女「私、前の学校でもその前の学校でもいじめられてたんです。暗いし、他人とまともに話せないし」

女「それに転校ばっかりで友達もまともにできなくて…」

女「だめなんですよね。私。他人の心の中が少しだけ分かっちゃうんです。」

女「昔から両親に虐待されてきて、両親の顔色ばかり伺ってたらこうなっちゃいました」

女「他人の心の中なんて、知らないほうがいいことのほうが多いのに、分かっちゃうんですよね…」

男「虐待って、今も?」

女「いえ、今は違います。今は親戚のご夫婦によくしてもらっています。ただ、転勤が多いので私も転校せざるを得ないんです」

男「そう、なんだ…」

女「それで、人間不信になっちゃってるんです。だめだって分かっているんですけどね…」

185: 2009/02/01(日) 03:43:51.20 ID:9ekVnM6y0

男「でも、俺とは…」

女「男さんは、今まで感じたこともないような綺麗な心をしています。だから、今日こうして勇気を出してお願いしてみたんです」

男「でも、僕は君を裏切った、最低な男だ…。綺麗な心なんて持っていやしないよ…」

女「それは違います!もし男さんの心が汚かったら…男さんはここにはいないでしょう?」

男「女さん…」

女「私、友達が欲しくって。男さんとどうしても友達になりたくって」

男「ぼ、僕でよければ…いや、僕も友達になりたい。お願いします!友達になってください!」

女「…ごめんなさい。私、やっぱり男さんの友達にはなれそうにもありません」

192: 2009/02/01(日) 03:49:02.18 ID:9ekVnM6y0
男「…そう、だよね。一度裏切ったら、裏切られた人間の心には深い傷が残る。それは僕がよくわかってる」

女「いえ、そうではなくて…あの、その…」

男「えっ?」

女「私、男さんのこと、好きになっちゃったみたいです…」

男「お、俺のことを…?」

女「はい…。で、ですから、その…私とお付き合いしていただけませんか!?」

男「お、俺でなんかで…いいの?」

女「…はい///」

男「うぅ…ありがとう。ありがとう…」

201: 2009/02/01(日) 03:52:26.50 ID:9ekVnM6y0

女「ご、ごめんなさい、泣かないでください!ごめんなさい!」

男「な、なんで女さんが謝るんだよ。謝るのは僕のほうだよ」

女「つ、つい癖で…」

男「…はっ、ははははは」

女「あ、笑った顔、素敵ですよ」

男「ありがとう…。一生、大切にするからね…」

女「こちらこそ、よろしく願いします」



――――――――――――――

204: 2009/02/01(日) 03:54:29.43 ID:9ekVnM6y0



神「ふむ、願いが一つ残っている」

神「仕方あるまい」

神「全知全能の神よ地球上の全ての生命よ。彼らに永遠の愛と絆を与えたまえ…」

207: 2009/02/01(日) 03:55:42.12 ID:9ekVnM6y0
神2「私は神だ」

神「お前か。見ていたのだな」

神2「見ていたのだよ。お前は相変わらず、おせっかいが好きなのだな」

神「おせっかいなどではない。ただ単に暇を持て余していただけだ」

神2「隠す必要はない。全て分かっている。私は神だ」

神「全て分かっているのか。なら仕方がない」

211: 2009/02/01(日) 03:56:56.19 ID:9ekVnM6y0
神2「お前がこうしてきっかけを作ってやらねばあの男は真の愛を知ることなく、あの女は真の優しさを知ることなく人生を終えたであろう」

神2「じつにお前は世話を焼くのが好きな神なのだな」

神「かくいうお前も、私と同じ立場であれば同じことをしたのであろう?」

神2「…暇を持て余しているからな」

神「ああ、暇を持て余しているからな」

神2「暇を持て余した」

神「神々の」

神々「遊び」

                                 ―完―

216: 2009/02/01(日) 03:57:49.93

222: 2009/02/01(日) 03:59:13.69 ID:9ekVnM6y0
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
拙い文章と内容でしたが私にはこれが精一杯です。
皆さんの暇つぶし程度になればと思って書きました。
ではお疲れ様でした!

240: 2009/02/01(日) 04:21:04.08 ID:9ekVnM6y0
>>239
ぜひ書いてくださいw

245: 2009/02/01(日) 04:34:13.77 ID:9ekVnM6y0
あれ?そういえば俺テスト勉強してたはずなのになぁ・・・ あばば

引用元: 男「何でこんなに不細工に生まれてきたんだろ・・・」