1: 2021/02/17(水) 17:04:08.131 ID:mmh2/hSg0
男「ふんふ~ん」シャーッ
男(おっ、綺麗な髪した女発見! 顔を見たいな……)
男(なんだよ、髪が長いだけで男かよ! ――あっ!)ガッ
男(タイヤが――、段差に引っかかっ――、体ひっくり返――、やべっ、頭から――)
ゴッ!
…………
……
神「ワシは神じゃ」
男「神様……? なんで……?」
神「おぬし……氏んだぞ」
男「マジですか!?」
男(おっ、綺麗な髪した女発見! 顔を見たいな……)
男(なんだよ、髪が長いだけで男かよ! ――あっ!)ガッ
男(タイヤが――、段差に引っかかっ――、体ひっくり返――、やべっ、頭から――)
ゴッ!
…………
……
神「ワシは神じゃ」
男「神様……? なんで……?」
神「おぬし……氏んだぞ」
男「マジですか!?」
3: 2021/02/17(水) 17:05:56.827
アニメ化まだかよ
4: 2021/02/17(水) 17:08:14.728 ID:mmh2/hSg0
男「冗談でしょ!? だって自転車でコケただけですよ!?」
神「よほど打ちどころが悪かったのだろう」
男「そんなぁ……」
神「ワシも多くの人間を見てきたが、ここまで間抜けな氏に方をした人間はそうそうおらんぞ」
男「ううう……人生これからだったのに……」
神「そこでだ。あまりに惨めで哀れなので……おぬしを転生させてやることにした」
男「えっ、ホントですか!? 今流行りの!?」
神「よほど打ちどころが悪かったのだろう」
男「そんなぁ……」
神「ワシも多くの人間を見てきたが、ここまで間抜けな氏に方をした人間はそうそうおらんぞ」
男「ううう……人生これからだったのに……」
神「そこでだ。あまりに惨めで哀れなので……おぬしを転生させてやることにした」
男「えっ、ホントですか!? 今流行りの!?」
6: 2021/02/17(水) 17:11:12.978 ID:mmh2/hSg0
男「で、俺はどんな転生をするんですか?」
神「おぬしの経歴を調べたが、犯罪こそしとらんがなかなかのスケベ心の持ち主のようだ」
男「いや、そんなことは……」
神「隠さんでよい。ワシは全てお見通しじゃ」
男「えへへ……」
神「というわけで、おぬしは自転車事故で氏んだし、おぬしを美少女JKの自転車のサドルに転生させてやろう」
男「ありがとうございます!」
男(さすが神様、俺の好みを分かってやがる!)
神「おぬしの経歴を調べたが、犯罪こそしとらんがなかなかのスケベ心の持ち主のようだ」
男「いや、そんなことは……」
神「隠さんでよい。ワシは全てお見通しじゃ」
男「えへへ……」
神「というわけで、おぬしは自転車事故で氏んだし、おぬしを美少女JKの自転車のサドルに転生させてやろう」
男「ありがとうございます!」
男(さすが神様、俺の好みを分かってやがる!)
8: 2021/02/17(水) 17:14:58.257 ID:mmh2/hSg0
神「サドルになれば、当然美少女に座ってもらえるじゃろう」
男「最高っすよ!」
神「しかも、持ち主と絆が芽生えれば、意志疎通することも可能になるであろう」
男「ってことはサドルと人間の禁断の恋も夢じゃないってことですか!」
神「おぬしの努力次第でな。では、美少女JKのサドルとして復活するがよい!」
男「ワーイ!」
…………
……
サドル「…………」
サドル(マジだ、マジで自転車のサドルに生まれ変わってる! さて、持ち主は――)
JK「さて、と……」
サドル(可愛い! 俺好み! 文句なし! やった! 早く座ってくれ~!)
男「最高っすよ!」
神「しかも、持ち主と絆が芽生えれば、意志疎通することも可能になるであろう」
男「ってことはサドルと人間の禁断の恋も夢じゃないってことですか!」
神「おぬしの努力次第でな。では、美少女JKのサドルとして復活するがよい!」
男「ワーイ!」
…………
……
サドル「…………」
サドル(マジだ、マジで自転車のサドルに生まれ変わってる! さて、持ち主は――)
JK「さて、と……」
サドル(可愛い! 俺好み! 文句なし! やった! 早く座ってくれ~!)
12: 2021/02/17(水) 17:17:45.815 ID:mmh2/hSg0
JK「ちょっと名残惜しいけど、今日でお別れだね」
サドル「……へ? お別れ?」
サドルの声は人間には聞こえない。
JK「お父さん、すぐ飽きないでよね」
中年「ありがとう。たくさん乗って、しっかり痩せてみせるよ」
JK「頑張って! 少しでもたるんだお腹引き締めてよ!」
サドル「……は?」
中年「よろしくな、マイバイシクル!」
サドル「はぁぁぁぁ!?」
サドル「……へ? お別れ?」
サドルの声は人間には聞こえない。
JK「お父さん、すぐ飽きないでよね」
中年「ありがとう。たくさん乗って、しっかり痩せてみせるよ」
JK「頑張って! 少しでもたるんだお腹引き締めてよ!」
サドル「……は?」
中年「よろしくな、マイバイシクル!」
サドル「はぁぁぁぁ!?」
13: 2021/02/17(水) 17:18:15.746
娘の貰うなwww
15: 2021/02/17(水) 17:20:24.338 ID:mmh2/hSg0
サドル「おい、神! これはどういうことだ!?」
サドル「たしかに美少女JKの自転車のサドルになったけど……」
サドル「転生した直後、その自転車の持ち主はおっさんになっちまったじゃねえか!」
サドル「こんなの罠だ! インチキだぁ! 転生をやり直せぇ!」
シーン…
サドル「ううう……返事がない。ただのしかばね……いや氏んだのは俺か」
中年「明日から通勤で使わせてもらうかな」
サドル「使うんじゃねえ!」
サドル「たしかに美少女JKの自転車のサドルになったけど……」
サドル「転生した直後、その自転車の持ち主はおっさんになっちまったじゃねえか!」
サドル「こんなの罠だ! インチキだぁ! 転生をやり直せぇ!」
シーン…
サドル「ううう……返事がない。ただのしかばね……いや氏んだのは俺か」
中年「明日から通勤で使わせてもらうかな」
サドル「使うんじゃねえ!」
17: 2021/02/17(水) 17:23:33.302 ID:mmh2/hSg0
翌朝――
中年「さて、記念すべき初自転車出勤だ」
サドル「勘弁してくれ……」
中年「ちょっと緊張するなぁ」
サドル「乗るんじゃねえええええ!」
中年「よいしょ、と」ドスッ
サドル「うわああああああああああ!」
サドル(おっさんの尻が俺の上にぃぃぃぃぃ……)
JK「お父さん、立ち漕ぎは危ないからダメだよ」
中年「分かってるよ」
サドル「立って! 立って下さいお願いします!」
中年「さて、記念すべき初自転車出勤だ」
サドル「勘弁してくれ……」
中年「ちょっと緊張するなぁ」
サドル「乗るんじゃねえええええ!」
中年「よいしょ、と」ドスッ
サドル「うわああああああああああ!」
サドル(おっさんの尻が俺の上にぃぃぃぃぃ……)
JK「お父さん、立ち漕ぎは危ないからダメだよ」
中年「分かってるよ」
サドル「立って! 立って下さいお願いします!」
18: 2021/02/17(水) 17:26:20.919 ID:mmh2/hSg0
快調に自転車を漕ぐ。
キコキコキコ…
中年「うん、いい。調子がいい」
サドル(うげえ……走るごとにおっさんの尻の肉がうごめく……)
キコキコキコ…
中年「自転車乗るのは久しぶりだけど忘れないもんだなぁ」
サドル(おっさんのサドルに転生って……これなんて地獄……!?)
サドル(俺、なにか悪いことしましたっけ? たとえば前世で……)
サドル(いや前世は“俺”だったんだから、前々世がよほどの凶悪犯だったとか?)
サドル(だからって、こんな仕打ちはあんまりすぎる!)
サドル「助けてくれえええっ……!」
キコキコキコ…
中年「うん、いい。調子がいい」
サドル(うげえ……走るごとにおっさんの尻の肉がうごめく……)
キコキコキコ…
中年「自転車乗るのは久しぶりだけど忘れないもんだなぁ」
サドル(おっさんのサドルに転生って……これなんて地獄……!?)
サドル(俺、なにか悪いことしましたっけ? たとえば前世で……)
サドル(いや前世は“俺”だったんだから、前々世がよほどの凶悪犯だったとか?)
サドル(だからって、こんな仕打ちはあんまりすぎる!)
サドル「助けてくれえええっ……!」
19: 2021/02/17(水) 17:27:23.377
天国から地獄
21: 2021/02/17(水) 17:29:18.160 ID:mmh2/hSg0
―駐輪場―
キコキコキコ… キキッ
中年「ここに自転車を置くとしよう」
サドル(公営の駐輪場か? やっと解放された……)
中年「朝から自転車漕いだから、今日は調子がいいぞぉ!」
サドル(俺の調子は最悪だよ……)
キコキコキコ… キキッ
中年「ここに自転車を置くとしよう」
サドル(公営の駐輪場か? やっと解放された……)
中年「朝から自転車漕いだから、今日は調子がいいぞぉ!」
サドル(俺の調子は最悪だよ……)
22: 2021/02/17(水) 17:32:12.192 ID:mmh2/hSg0
サドル「…………」
サドル(自転車が止まってる間はこうして待ってなきゃいけないのか)
サドル(不思議なことに“退屈”は感じないな)
サドル(人間じゃなくサドルになったから、退屈を感じる感覚が鈍くなったんだろうか)
サドル(そうでなきゃ大変だもんな。止まったまま何時間も待ってるなんて)
サドル「…………」
サドル「……ん?」
サドル(自転車が止まってる間はこうして待ってなきゃいけないのか)
サドル(不思議なことに“退屈”は感じないな)
サドル(人間じゃなくサドルになったから、退屈を感じる感覚が鈍くなったんだろうか)
サドル(そうでなきゃ大変だもんな。止まったまま何時間も待ってるなんて)
サドル「…………」
サドル「……ん?」
24: 2021/02/17(水) 17:34:37.257 ID:mmh2/hSg0
ニット帽「…………」コソコソ
ニット帽をつけた男が、停めてある自転車に何やら細工をしている。
サドル(なにやってんだ、あいつ? 遠いからよく分からん)
サドル(まあいいか……)
サドル(俺はしがないサドル……人間が何をしようと気にしないのさ)
ニット帽をつけた男が、停めてある自転車に何やら細工をしている。
サドル(なにやってんだ、あいつ? 遠いからよく分からん)
サドル(まあいいか……)
サドル(俺はしがないサドル……人間が何をしようと気にしないのさ)
26: 2021/02/17(水) 17:38:12.614 ID:mmh2/hSg0
夜になり、中年が会社から帰ってくる。
中年「さ、帰るぞ。マイバイシクル!」
サドル「うげえ……」
キコキコキコ…
中年「ただいまー」
JK「お父さん、私の自転車どうだった?」
中年「乗り心地最高!」
サドル「乗られ心地最悪!」
中年「さ、帰るぞ。マイバイシクル!」
サドル「うげえ……」
キコキコキコ…
中年「ただいまー」
JK「お父さん、私の自転車どうだった?」
中年「乗り心地最高!」
サドル「乗られ心地最悪!」
27: 2021/02/17(水) 17:41:25.971 ID:mmh2/hSg0
次の日からも当然――
中年「行ってきまーす」
キコキコキコ…
サドル(はうう……おっさんの尻肉が俺にグイグイくる!)
サドル(これ……世界中のスパイ組織が取り入れるべきだと思う)
サドル(拷問として!)
中年「行ってきまーす」
キコキコキコ…
サドル(はうう……おっさんの尻肉が俺にグイグイくる!)
サドル(これ……世界中のスパイ組織が取り入れるべきだと思う)
サドル(拷問として!)
28: 2021/02/17(水) 17:42:16.419
パンツになりてぇとか言うけど実際拷問だよな
29: 2021/02/17(水) 17:44:12.765 ID:mmh2/hSg0
……
中年「今日も快調!」
キコキコキコ…
サドル(毎日毎日俺に座りやがって。マジいい加減にしろよ。このおっさん)
サドル(そうだ……ちょっと揺さぶってみるか!)グラグラ
中年「お?」
サドル「降りろ降りろ降りろぉ!」グラグラグラ
中年「なんだ、揺れてる?」
サドル「どうだ、気味悪いだろ! 降りろ! 自転車乗るのやめろ!」
中年「き、効くっ! これはお尻によさそうだ!」
サドル(逆効果だった!)
中年「今日も快調!」
キコキコキコ…
サドル(毎日毎日俺に座りやがって。マジいい加減にしろよ。このおっさん)
サドル(そうだ……ちょっと揺さぶってみるか!)グラグラ
中年「お?」
サドル「降りろ降りろ降りろぉ!」グラグラグラ
中年「なんだ、揺れてる?」
サドル「どうだ、気味悪いだろ! 降りろ! 自転車乗るのやめろ!」
中年「き、効くっ! これはお尻によさそうだ!」
サドル(逆効果だった!)
30: 2021/02/17(水) 17:47:22.959 ID:mmh2/hSg0
……
妻「あらお父さん、どうしたのそのカッコ? オシャレなジャージ着ちゃって」
中年「今日はたくさん自転車で走ろうと思ってな」
妻「すっかり自転車にハマっちゃったわね」
中年「そのうち、自転車で日本一周するのも悪くないかもしれん」
JK「お父さんかっこいい~!」
サドル「日本一周!? 冗談じゃねえぞ!」
中年「よしよし、今日はいっぱい走ろうな」ナデナデ
サドル「…………!」
サドル(なでるんじゃねえ、キメエ!)
妻「あらお父さん、どうしたのそのカッコ? オシャレなジャージ着ちゃって」
中年「今日はたくさん自転車で走ろうと思ってな」
妻「すっかり自転車にハマっちゃったわね」
中年「そのうち、自転車で日本一周するのも悪くないかもしれん」
JK「お父さんかっこいい~!」
サドル「日本一周!? 冗談じゃねえぞ!」
中年「よしよし、今日はいっぱい走ろうな」ナデナデ
サドル「…………!」
サドル(なでるんじゃねえ、キメエ!)
31: 2021/02/17(水) 17:50:30.765 ID:mmh2/hSg0
中年「さあ、今日はたっぷり漕ぐぞ~」
キコキコキコ…
中年「自転車に乗るようになってから、体の調子がよくてね」
中年「会社の女の子からもスリムになりましたねって褒められたんだよ」
サドル「あーそう、よかったね」
サドル(ったく自転車に話しかけるんじゃねえよ、おっさんが。植物じゃねえんだからさ)
サドル(女の子に褒められただと? 本当は……本当は俺だって……!)
キコキコキコ…
中年「自転車に乗るようになってから、体の調子がよくてね」
中年「会社の女の子からもスリムになりましたねって褒められたんだよ」
サドル「あーそう、よかったね」
サドル(ったく自転車に話しかけるんじゃねえよ、おっさんが。植物じゃねえんだからさ)
サドル(女の子に褒められただと? 本当は……本当は俺だって……!)
32: 2021/02/17(水) 17:53:08.986 ID:mmh2/hSg0
サドル「本当は俺だって女の子乗せて、チヤホヤされたかったよぉ!」
中年「!?」ビクッ
中年「な、なんだ?」キキッ
サドル「え……?」
中年「今の声、どこから……?」
サドル「おっさん……俺の声が聞こえたのか?」
中年「サドル……? サドルから声が……?」
サドル「……おう」
中年「サドルが喋った!」
中年「!?」ビクッ
中年「な、なんだ?」キキッ
サドル「え……?」
中年「今の声、どこから……?」
サドル「おっさん……俺の声が聞こえたのか?」
中年「サドル……? サドルから声が……?」
サドル「……おう」
中年「サドルが喋った!」
34: 2021/02/17(水) 17:56:43.253 ID:mmh2/hSg0
中年「なんで!? ホワイ!? なぜサドルが喋るんだ!?」
中年「なんでぇぇぇぇぇ!?」
サドル「うるせぇぇぇぇぇ!」
中年「ひっ!」
サドル「まさか、俺の声が届くようになっちまうとは……」
中年「君は……何者なんだ?」
サドル「全部話すよ……。俺が何者なのか、なんでこうなったのか……」
中年「私もこういう現象は初めてだし、分かりやすく頼むよ」
…………
……
中年「なんでぇぇぇぇぇ!?」
サドル「うるせぇぇぇぇぇ!」
中年「ひっ!」
サドル「まさか、俺の声が届くようになっちまうとは……」
中年「君は……何者なんだ?」
サドル「全部話すよ……。俺が何者なのか、なんでこうなったのか……」
中年「私もこういう現象は初めてだし、分かりやすく頼むよ」
…………
……
35: 2021/02/17(水) 18:00:42.869 ID:mmh2/hSg0
中年「……なるほど、君はサドルに生まれ変わってしまったわけか」
サドル「ああ、そうなんだ」
サドル「美少女のお尻を堪能できるはずだったのに……」
中年「すまん。私が娘から自転車をもらったばかりに……」
中年「――って、ちょっと待て!」
中年「そうじゃなかったら、今頃貴様は娘のお尻を堪能していたということか!」
サドル「そうだよぉ! 今すぐこの自転車娘に返せ!」
中年「絶対ダメだ!」
ギャーギャーッ!
サドル「ああ、そうなんだ」
サドル「美少女のお尻を堪能できるはずだったのに……」
中年「すまん。私が娘から自転車をもらったばかりに……」
中年「――って、ちょっと待て!」
中年「そうじゃなかったら、今頃貴様は娘のお尻を堪能していたということか!」
サドル「そうだよぉ! 今すぐこの自転車娘に返せ!」
中年「絶対ダメだ!」
ギャーギャーッ!
36: 2021/02/17(水) 18:03:31.314 ID:mmh2/hSg0
中年「ハァ、ハァ、ハァ……サドルとマジ喧嘩してしまった」
サドル「ハァ、ハァ、ハァ……おっさんとマジ喧嘩してしまった」
サドル「で、どうするよおっさん。こんな呪いのサドル、とっとと捨てちまうか?」
中年「……いや、それはしない」
サドル「なんだと?」
中年「君は一度氏んでしまって……今は第二の人生を歩んでるのだろう?」
サドル「人生っつーかサドル生だけどな」
中年「だとしたら、無下にはできんよ。私は持ち主として君を責任持って最後まで管理する」
サドル「ホントか! さっそく娘さんを俺に座らせ……」
中年「それはダメ!」
サドル「ハァ、ハァ、ハァ……おっさんとマジ喧嘩してしまった」
サドル「で、どうするよおっさん。こんな呪いのサドル、とっとと捨てちまうか?」
中年「……いや、それはしない」
サドル「なんだと?」
中年「君は一度氏んでしまって……今は第二の人生を歩んでるのだろう?」
サドル「人生っつーかサドル生だけどな」
中年「だとしたら、無下にはできんよ。私は持ち主として君を責任持って最後まで管理する」
サドル「ホントか! さっそく娘さんを俺に座らせ……」
中年「それはダメ!」
37: 2021/02/17(水) 18:06:05.291 ID:mmh2/hSg0
サドル「じゃあ持ち主に……せめて俺からもアドバイスだ」
中年「ん?」
サドル「おっさん、自転車乗る時はヘルメットつけた方がいい。俺は頭打って氏んだからな」
中年「…………」
中年「そうだな、そうさせてもらうよ」
サドル「これからもよろしくな、おっさん」
中年「よろしく」
中年「ん?」
サドル「おっさん、自転車乗る時はヘルメットつけた方がいい。俺は頭打って氏んだからな」
中年「…………」
中年「そうだな、そうさせてもらうよ」
サドル「これからもよろしくな、おっさん」
中年「よろしく」
40: 2021/02/17(水) 18:09:17.196 ID:mmh2/hSg0
中年「ただいまー」
妻「お帰りなさい。あら、どうしたのそのヘルメット?」
中年「自転車でこけた時危ないからな、買ってきたんだ」
妻「あらま、ずいぶん本格的ねえ」
中年「せっかくのアドバイス、聞かなきゃもったいないからな」
妻「アドバイス? 誰から?」
中年「サド……え、えーとあれだ。会社に自転車に詳しい同僚がいるんだよ」
妻「お帰りなさい。あら、どうしたのそのヘルメット?」
中年「自転車でこけた時危ないからな、買ってきたんだ」
妻「あらま、ずいぶん本格的ねえ」
中年「せっかくのアドバイス、聞かなきゃもったいないからな」
妻「アドバイス? 誰から?」
中年「サド……え、えーとあれだ。会社に自転車に詳しい同僚がいるんだよ」
41: 2021/02/17(水) 18:13:23.678 ID:mmh2/hSg0
―駐輪場―
いつものように通勤に自転車を使う。
中年「じゃ、行ってくるよ」
サドル「行ってらっしゃい」
サドル「…………」
サドル(まさかおっさんと会話できるようになるとは……)
サドル(ってことは俺、あのおっさんと絆が芽生えちゃったってことか!? 冗談じゃねえ!)
サドル(まあ、たしかに悪いおっさんではないけどさ……)
いつものように通勤に自転車を使う。
中年「じゃ、行ってくるよ」
サドル「行ってらっしゃい」
サドル「…………」
サドル(まさかおっさんと会話できるようになるとは……)
サドル(ってことは俺、あのおっさんと絆が芽生えちゃったってことか!? 冗談じゃねえ!)
サドル(まあ、たしかに悪いおっさんではないけどさ……)
42: 2021/02/17(水) 18:16:23.488 ID:mmh2/hSg0
ニット帽「…………」ヌッ
サドル「ん?」
サドル(この野郎、前もここに来てたような……)
ニット帽「今日はどれにしようかな……」
サドル(自転車を物色してる……? なにするつもりだ?)
ニット帽「今日はこいつでいいか」
ブスッ!
男はタイヤにアイスピックを突き刺した。
サドル(こいつ、自転車をパンクさせてやがるのか! なんて地味な……だけどえげつねえ!)
サドル「ん?」
サドル(この野郎、前もここに来てたような……)
ニット帽「今日はどれにしようかな……」
サドル(自転車を物色してる……? なにするつもりだ?)
ニット帽「今日はこいつでいいか」
ブスッ!
男はタイヤにアイスピックを突き刺した。
サドル(こいつ、自転車をパンクさせてやがるのか! なんて地味な……だけどえげつねえ!)
43: 2021/02/17(水) 18:18:37.806 ID:mmh2/hSg0
ニット帽「もう一台やろう、ヒヒヒ……」
サドル(この駐輪場、カメラないしな……こいつのやりたい放題だ!)
ニット帽「…………」キョロキョロ
サドル(なんとか退治してやりたいが……サドルの俺にゃこいつに声かけることも通報もできねえ)
ニット帽「どれにしようかな……」
サドル(よぉし……)ガタガタガタ
サドルが揺れる。
ニット帽「……ん?」
サドル(この駐輪場、カメラないしな……こいつのやりたい放題だ!)
ニット帽「…………」キョロキョロ
サドル(なんとか退治してやりたいが……サドルの俺にゃこいつに声かけることも通報もできねえ)
ニット帽「どれにしようかな……」
サドル(よぉし……)ガタガタガタ
サドルが揺れる。
ニット帽「……ん?」
44: 2021/02/17(水) 18:20:33.476 ID:mmh2/hSg0
ニット帽「なんだぁ?」
サドル「俺に乗れ……俺に乗れ……」ガタガタ
ニット帽「このサドル、勝手に動いたぞ?」
サドル「俺に乗れ!」ガタガタ
ニット帽「今はこういう自転車もあるのか。面白そうだ、ちょっと乗ってみるか」
サドル「かかった!」
サドル「せーのっ!」
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…
サドルのフルパワー振動。
ニット帽「お゛っ!?」
サドル「俺に乗れ……俺に乗れ……」ガタガタ
ニット帽「このサドル、勝手に動いたぞ?」
サドル「俺に乗れ!」ガタガタ
ニット帽「今はこういう自転車もあるのか。面白そうだ、ちょっと乗ってみるか」
サドル「かかった!」
サドル「せーのっ!」
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…
サドルのフルパワー振動。
ニット帽「お゛っ!?」
45: 2021/02/17(水) 18:22:09.651 ID:mmh2/hSg0
ガタガタガタガタガタ…
ニット帽「おおおおおおおっ!?」
サドル「トドメだッ!」ガタンッ!
ニット帽「おふうっ!」
ニット帽「…………」ドサッ…
ニット帽「あへ……あへあへ……」
サドル「俺に座ったのが……運の尽きだ」
ニット帽「おおおおおおおっ!?」
サドル「トドメだッ!」ガタンッ!
ニット帽「おふうっ!」
ニット帽「…………」ドサッ…
ニット帽「あへ……あへあへ……」
サドル「俺に座ったのが……運の尽きだ」
47: 2021/02/17(水) 18:25:19.000 ID:mmh2/hSg0
サドル「ふん、ざまあみやがれ」
『アリガトウ……』
『ヨクヤッタ……』
『スゴイ……』
サドル「!」
サドル(この声は……もしかして他のサドルの声?)
サドル(そうか……流石に俺みたいに元人間ってことはないだろうが)
サドル(サドルにも意志みたいなもんはあるんだな。で、こういう声を聞くこともできるってことか)
ちなみにこの犯人、アイスピック片手に倒れてるところを通報され、警察に逮捕された。
『アリガトウ……』
『ヨクヤッタ……』
『スゴイ……』
サドル「!」
サドル(この声は……もしかして他のサドルの声?)
サドル(そうか……流石に俺みたいに元人間ってことはないだろうが)
サドル(サドルにも意志みたいなもんはあるんだな。で、こういう声を聞くこともできるってことか)
ちなみにこの犯人、アイスピック片手に倒れてるところを通報され、警察に逮捕された。
49: 2021/02/17(水) 18:28:24.325 ID:mmh2/hSg0
中年「ん、今日はやけに嬉しそうじゃないか」
中年「私に乗られるのがそんなに嬉しいのかね?」
サドル「んなわけあるか!」
サドル「ただ……今日は人助けならぬチャリ助けをできたからな」
中年「いいことじゃないか。情けは人のためならず、というからな」
中年「今日体験したことがいつか役立つかもしれないぞ」
サドル「だといいけどな」
シャーッ…
サドルも少しずつ、自分の境遇に生きがいを感じるようになっていった。
中年「私に乗られるのがそんなに嬉しいのかね?」
サドル「んなわけあるか!」
サドル「ただ……今日は人助けならぬチャリ助けをできたからな」
中年「いいことじゃないか。情けは人のためならず、というからな」
中年「今日体験したことがいつか役立つかもしれないぞ」
サドル「だといいけどな」
シャーッ…
サドルも少しずつ、自分の境遇に生きがいを感じるようになっていった。
52: 2021/02/17(水) 18:31:21.445 ID:mmh2/hSg0
休みの日、中年は自転車を走らせる。
シャーッ
中年「今日みたいな天気は絶好の自転車日和だね」
サドル「ああ、サドルの俺も気持ちいいや」
中年「たまにはいつも行かない方へ行ってみようか」
サドル「そりゃいいな!」
シャーッ
中年「今日みたいな天気は絶好の自転車日和だね」
サドル「ああ、サドルの俺も気持ちいいや」
中年「たまにはいつも行かない方へ行ってみようか」
サドル「そりゃいいな!」
53: 2021/02/17(水) 18:34:45.899 ID:mmh2/hSg0
キコキコ…
中年「ふぅ、ふぅ……」
サドル「大丈夫か? ここら辺は坂が多くて、バイクや競技用の自転車じゃないとキツイだろ」
中年「しかし、これもいい経験になるさ」
中年「ん?」
ギャハハハ… ハハハ…
サドル「ほら見ろ、あの店。バイク乗りの溜まり場になってる」
中年「それもどうやらちょっと悪そうな連中だねえ」
中年「ふぅ、ふぅ……」
サドル「大丈夫か? ここら辺は坂が多くて、バイクや競技用の自転車じゃないとキツイだろ」
中年「しかし、これもいい経験になるさ」
中年「ん?」
ギャハハハ… ハハハ…
サドル「ほら見ろ、あの店。バイク乗りの溜まり場になってる」
中年「それもどうやらちょっと悪そうな連中だねえ」
54: 2021/02/17(水) 18:37:25.130 ID:mmh2/hSg0
DQN「あ? なに見てんだ、おっさん!」
中年「!」ビクッ
サドル「!」ギクッ
中年「い、行こう!」
サドル「早く! 早く漕いで!」
キコキコキコキコキコ…
サドル「暴走族……ってわけでもないだろうがチンピラの集まりだな」
中年「触らぬ神に祟りなしだね」
中年「!」ビクッ
サドル「!」ギクッ
中年「い、行こう!」
サドル「早く! 早く漕いで!」
キコキコキコキコキコ…
サドル「暴走族……ってわけでもないだろうがチンピラの集まりだな」
中年「触らぬ神に祟りなしだね」
55: 2021/02/17(水) 18:40:49.852 ID:mmh2/hSg0
中年「ただいまー」
サドル「今日はちょっとハラハラしたよ」
JK「あ、お父さんお帰り!」
中年「どうだ? このヘルメット」
JK「いいじゃんいいじゃん、競輪選手みたい!」
中年「ありがとう」
サドル(マジこの子可愛いよなぁ、妹とは大違いだ)
サドル「今日はちょっとハラハラしたよ」
JK「あ、お父さんお帰り!」
中年「どうだ? このヘルメット」
JK「いいじゃんいいじゃん、競輪選手みたい!」
中年「ありがとう」
サドル(マジこの子可愛いよなぁ、妹とは大違いだ)
56: 2021/02/17(水) 18:43:30.619 ID:mmh2/hSg0
JK「私はもう新しい自転車買っちゃったけど……」
JK「たまにはそっちにまた乗ってみたいなーなんて」
中年「!」
中年「ダメだぞ、ダメダメ! この自転車に乗ることは許さん!」
JK「相当気に入っちゃったんだね」
サドル「おっさぁん……」
中年「フッ、そう簡単に娘の尻は渡さんぞ!」
サドル「くそう……いつか味わってやるからな!」
サドル(だけど、おっさんとつるんでるのも悪くないと思うようになってしまった)
JK「たまにはそっちにまた乗ってみたいなーなんて」
中年「!」
中年「ダメだぞ、ダメダメ! この自転車に乗ることは許さん!」
JK「相当気に入っちゃったんだね」
サドル「おっさぁん……」
中年「フッ、そう簡単に娘の尻は渡さんぞ!」
サドル「くそう……いつか味わってやるからな!」
サドル(だけど、おっさんとつるんでるのも悪くないと思うようになってしまった)
57: 2021/02/17(水) 18:46:24.713 ID:mmh2/hSg0
ある日――
中年「フフフ、コンビニでチキンを買ってしまったよ」モグモグ
サドル「おっさん、買い食いしたらせっかく痩せたのにリバウンドしちゃうぞ」
中年「固いこというなって。ところでサドルは食欲ってないのか?」
サドル「全くないな。ていうかあっても食う方法ないし」
中年「私もサドルになれば、太る太らないを気にせず済むのにな」
サドル「間抜けな氏に方すればなれるかもしれないぞ」
キコキコ…
中年「ただいまー」
妻「あなた……」
中年「どうした?」
中年「フフフ、コンビニでチキンを買ってしまったよ」モグモグ
サドル「おっさん、買い食いしたらせっかく痩せたのにリバウンドしちゃうぞ」
中年「固いこというなって。ところでサドルは食欲ってないのか?」
サドル「全くないな。ていうかあっても食う方法ないし」
中年「私もサドルになれば、太る太らないを気にせず済むのにな」
サドル「間抜けな氏に方すればなれるかもしれないぞ」
キコキコ…
中年「ただいまー」
妻「あなた……」
中年「どうした?」
58: 2021/02/17(水) 18:49:05.946 ID:mmh2/hSg0
妻「あの子が……まだ帰ってきてないの」
中年「えっ! 今日は予備校じゃないのか?」
妻「今日は予備校の日じゃないわ」
中年「電話はかけたのか?」
妻「繋がらないの」
中年「だとしたら、友達と遊んでるとか……」
妻「心当たりはあたったけど、いないっていうの」
妻「あの子、遅くなる時はいつもちゃんと連絡するし、心配で……」
中年「えっ! 今日は予備校じゃないのか?」
妻「今日は予備校の日じゃないわ」
中年「電話はかけたのか?」
妻「繋がらないの」
中年「だとしたら、友達と遊んでるとか……」
妻「心当たりはあたったけど、いないっていうの」
妻「あの子、遅くなる時はいつもちゃんと連絡するし、心配で……」
60: 2021/02/17(水) 18:52:11.582 ID:mmh2/hSg0
中年「分かった、ちょっと二人で捜索してくるよ」
妻「二人?」
中年「い、いや、一人の間違いだった。母さんは……念のため警察に連絡してくれ」
妻「分かったわ」
中年「何事もなければいいんだが……」
中年「話は聞いてたかね?」
サドル「おう。とりあえず、あの子の高校周辺を走り回ってみるか」
娘の捜索を開始する。
妻「二人?」
中年「い、いや、一人の間違いだった。母さんは……念のため警察に連絡してくれ」
妻「分かったわ」
中年「何事もなければいいんだが……」
中年「話は聞いてたかね?」
サドル「おう。とりあえず、あの子の高校周辺を走り回ってみるか」
娘の捜索を開始する。
61: 2021/02/17(水) 18:55:38.330 ID:mmh2/hSg0
キコキコキコ…
中年「うーん……やはりどこを捜してもいない……」
中年「まさか、事故にでもあったんじゃ……」
サドル「あんなしっかりした子なんだ。俺みたいなことにはそうそうならないって!」
中年「君がいてくれて心強いよ」
サドル「だけど、手掛かりがないのはな……」
中年「例えば、あそこの乗り捨てられた自転車……」
中年「何かを目撃したりしてないだろうか……発想がメルヘンすぎるか」
サドル「!」ハッ
中年「うーん……やはりどこを捜してもいない……」
中年「まさか、事故にでもあったんじゃ……」
サドル「あんなしっかりした子なんだ。俺みたいなことにはそうそうならないって!」
中年「君がいてくれて心強いよ」
サドル「だけど、手掛かりがないのはな……」
中年「例えば、あそこの乗り捨てられた自転車……」
中年「何かを目撃したりしてないだろうか……発想がメルヘンすぎるか」
サドル「!」ハッ
62: 2021/02/17(水) 18:58:27.520 ID:mmh2/hSg0
サドル「おっさん、ナぁイス!」
中年「え?」
サドル「ちょっと……聞いてみる。あのサドルに」
中年「そんなことできるのかね?」
サドル「一度サドルの声を聞いたことがあるんだ。もしかしたら、やれるかも!」
サドル(そこのサドル……サドル……)
サドル(女の子……見てないか!? ほんのちょっとこのおっさんの面影がある可愛い女子高生を……!)
『…………』
中年「え?」
サドル「ちょっと……聞いてみる。あのサドルに」
中年「そんなことできるのかね?」
サドル「一度サドルの声を聞いたことがあるんだ。もしかしたら、やれるかも!」
サドル(そこのサドル……サドル……)
サドル(女の子……見てないか!? ほんのちょっとこのおっさんの面影がある可愛い女子高生を……!)
『…………』
63: 2021/02/17(水) 19:01:29.691 ID:mmh2/hSg0
『オンナノコ……カラマレタ……』
サドル「!」
『オレタチトコイ……オドサレテ……』
『コトワッタケド……ツレテカレテ……』
サドル「…………!」
サドル「ありがとぉぉぉぉぉ!!!」
中年「ど、どうしたんだね!?」
サドル「おっさん! もしかしたら、あの子はさらわれたのかもしれない!」
中年「なんだって!?」
サドル「!」
『オレタチトコイ……オドサレテ……』
『コトワッタケド……ツレテカレテ……』
サドル「…………!」
サドル「ありがとぉぉぉぉぉ!!!」
中年「ど、どうしたんだね!?」
サドル「おっさん! もしかしたら、あの子はさらわれたのかもしれない!」
中年「なんだって!?」
64: 2021/02/17(水) 19:04:12.585 ID:mmh2/hSg0
中年「どんな奴だ!?」
サドル「どんな奴だった!?」
『バイクノッテル……ワルソウ……』
サドル「バイク乗ってる、悪そう……」
中年「…………」
中年「ひょっとして……彼らでは?」
サドル「行ってみる価値はありそうだな!」
サドル「ありがとよ!」
『ヤクニタテテ……ウレシイ……』
サドル「どんな奴だった!?」
『バイクノッテル……ワルソウ……』
サドル「バイク乗ってる、悪そう……」
中年「…………」
中年「ひょっとして……彼らでは?」
サドル「行ってみる価値はありそうだな!」
サドル「ありがとよ!」
『ヤクニタテテ……ウレシイ……』
65: 2021/02/17(水) 19:07:18.107 ID:mmh2/hSg0
―溜まり場―
数台のバイク。数人の非行少年。そして――
JK「お願い……帰して……」
DQN「つれないこというなよ。夜は長いんだ」
不良「今夜はたっぷり楽しもうぜ~?」
金髪「もうちょい夜が更けたらマジで人通りなくなるから……そしたら“お楽しみ”だな」
ヒヒヒ… ハハハ…
JK「そんな……」
数台のバイク。数人の非行少年。そして――
JK「お願い……帰して……」
DQN「つれないこというなよ。夜は長いんだ」
不良「今夜はたっぷり楽しもうぜ~?」
金髪「もうちょい夜が更けたらマジで人通りなくなるから……そしたら“お楽しみ”だな」
ヒヒヒ… ハハハ…
JK「そんな……」
66: 2021/02/17(水) 19:09:35.830 ID:mmh2/hSg0
必氏に自転車を走らせる。
シャーッ
中年「はぁ、はぁ、はぁ……」
サドル「おっさん、あいつらまた溜まってるぜ!」
中年「ひぃ、ひぃ、ひぃ……」
サドル「頑張れ!」
中年「ああ、分かってる。コレステロールパワーを見せてやる!」
サドル「その意気だぁ!」
シャーッ
中年「はぁ、はぁ、はぁ……」
サドル「おっさん、あいつらまた溜まってるぜ!」
中年「ひぃ、ひぃ、ひぃ……」
サドル「頑張れ!」
中年「ああ、分かってる。コレステロールパワーを見せてやる!」
サドル「その意気だぁ!」
68: 2021/02/17(水) 19:12:08.469 ID:mmh2/hSg0
キキッ
中年「ちょっと待ったぁ!」
DQN「あ?」
JK「お、お父さん……!」
中年「娘を……放しなさい!」
DQN「お父さん……? マジか、オヤジ来ちゃったよ」
金髪「よく居所が分かったな。親の愛ってヤツかぁ?」
中年「なんでもいい。娘を返したまえ!」
中年「ちょっと待ったぁ!」
DQN「あ?」
JK「お、お父さん……!」
中年「娘を……放しなさい!」
DQN「お父さん……? マジか、オヤジ来ちゃったよ」
金髪「よく居所が分かったな。親の愛ってヤツかぁ?」
中年「なんでもいい。娘を返したまえ!」
69: 2021/02/17(水) 19:14:18.716 ID:mmh2/hSg0
DQN「うるせえなぁ、すっこんでろ!」
バキィッ!
中年「ぎゃっ!」
金髪「ぎゃっ、だってよ。ダッセェ~」
ハハハハ… ヒャハハハ…
サドル「おっさん!」
JK「お父さぁん!」
バキィッ!
中年「ぎゃっ!」
金髪「ぎゃっ、だってよ。ダッセェ~」
ハハハハ… ヒャハハハ…
サドル「おっさん!」
JK「お父さぁん!」
72: 2021/02/17(水) 19:17:09.951 ID:mmh2/hSg0
中年「う、うぐっ……!」
サドル「おっさん!」
中年「!」
サドル「俺を使え!」
中年「使うって……?」
サドル「サドルは……取り外せるだろ?」
中年「そうか!」
サドルを自転車から外す。
DQN「おいおい、んなもんでどうしようってんだ?」
ヒャハハハ…
サドル「おっさん!」
中年「!」
サドル「俺を使え!」
中年「使うって……?」
サドル「サドルは……取り外せるだろ?」
中年「そうか!」
サドルを自転車から外す。
DQN「おいおい、んなもんでどうしようってんだ?」
ヒャハハハ…
74: 2021/02/17(水) 19:20:23.022 ID:mmh2/hSg0
サドル「俺を投げろ!」
中年「分かった!」
ブンッ!
ギュルルルルルルルッ!
投げつけられたサドルは――
バキッ! ドカッ! ガッ!
「ぐあっ!」 「いでぇっ!」 「ぐえっ!」
ブーメランのように敵を打ちのめす。
DQN「なんだとォ!?」
中年「分かった!」
ブンッ!
ギュルルルルルルルッ!
投げつけられたサドルは――
バキッ! ドカッ! ガッ!
「ぐあっ!」 「いでぇっ!」 「ぐえっ!」
ブーメランのように敵を打ちのめす。
DQN「なんだとォ!?」
75: 2021/02/17(水) 19:23:19.786 ID:mmh2/hSg0
中年「私はただのおっさんではない……」
DQN「え……!?」
中年「正義の味方“サドルマスター”だ!」
DQN「サドルマスター……!」
中年「もいっちょ!」ブンッ
ギュルルルルルルッ!
DQN「うわぁっ!」
サドル「世の中色んなマスターがあるけど、かなりしょぼい部類だと思うぞ」
中年「なぁに、どんな分野でもマスターってのはすごいものさ」
DQN「え……!?」
中年「正義の味方“サドルマスター”だ!」
DQN「サドルマスター……!」
中年「もいっちょ!」ブンッ
ギュルルルルルルッ!
DQN「うわぁっ!」
サドル「世の中色んなマスターがあるけど、かなりしょぼい部類だと思うぞ」
中年「なぁに、どんな分野でもマスターってのはすごいものさ」
76: 2021/02/17(水) 19:26:05.410 ID:mmh2/hSg0
中年「逃げるぞ!」
JK「うん!」
キコキコキコキコキコ…
二人乗りで逃げる。
中年「ひぃ、ひぃ、ひぃ」
サドル「頑張れおっさん!」
DQN「ク、クソが……! チャリで逃げれると思うなよォ!」
JK「うん!」
キコキコキコキコキコ…
二人乗りで逃げる。
中年「ひぃ、ひぃ、ひぃ」
サドル「頑張れおっさん!」
DQN「ク、クソが……! チャリで逃げれると思うなよォ!」
78: 2021/02/17(水) 19:29:07.352 ID:mmh2/hSg0
逃げる自転車、追うバイク。
中年「ひい、ひい、ひい!」
キコキコキコ…
DQN「待ちやがれぇぇぇぇぇ!」
ブオオオオオッ!
中年「ダ、ダメだ、追いつかれる!」
サドル「おっさん俺を投げろ! あのバイクこけさしてやる!」
中年「とても走りながらじゃ……!」
DQN「もう追いつくぞぉぉぉぉぉ! 蹴り倒してやる!」
ブオオオオオッ!
中年「ひい、ひい、ひい!」
キコキコキコ…
DQN「待ちやがれぇぇぇぇぇ!」
ブオオオオオッ!
中年「ダ、ダメだ、追いつかれる!」
サドル「おっさん俺を投げろ! あのバイクこけさしてやる!」
中年「とても走りながらじゃ……!」
DQN「もう追いつくぞぉぉぉぉぉ! 蹴り倒してやる!」
ブオオオオオッ!
81: 2021/02/17(水) 19:32:21.536 ID:mmh2/hSg0
ウーウー… ウーウー…
DQN「……え?」
中年「パ、パトカー!」
パトカー「そこの二人乗りの自転車と、ノーヘルのバイク、止まりなさい!」
DQN「や、やばっ……!」
中年「どうしてパトカーが……?」
サドル「きっと奥さんの通報で、パトカーが見回りに出てくれたんだ!」
中年「助かったぁ……!」
…………
……
DQN「……え?」
中年「パ、パトカー!」
パトカー「そこの二人乗りの自転車と、ノーヘルのバイク、止まりなさい!」
DQN「や、やばっ……!」
中年「どうしてパトカーが……?」
サドル「きっと奥さんの通報で、パトカーが見回りに出てくれたんだ!」
中年「助かったぁ……!」
…………
……
82: 2021/02/17(水) 19:36:10.659 ID:mmh2/hSg0
非行集団は警察に捕まり、自転車二人乗りについてはお咎め無しとなった。
JK「さっきのお父さん……かっこよかったよ」
中年「いやいや」デレッ
JK「それとさっきのサドル、まるで生き物みたいだったね」
中年「え、いや、まあね」
JK「サドルもありがとう! ……なーんて」
サドル「いやいや」デレッ
中年「鼻の下伸びてるぞ」
サドル「俺に鼻はないっての」
中年「いーや、絶対伸びてる」
サドル「うん、きっと伸びてる」
JK「さっきのお父さん……かっこよかったよ」
中年「いやいや」デレッ
JK「それとさっきのサドル、まるで生き物みたいだったね」
中年「え、いや、まあね」
JK「サドルもありがとう! ……なーんて」
サドル「いやいや」デレッ
中年「鼻の下伸びてるぞ」
サドル「俺に鼻はないっての」
中年「いーや、絶対伸びてる」
サドル「うん、きっと伸びてる」
83: 2021/02/17(水) 19:40:20.211 ID:mmh2/hSg0
……
……
事件から二週間後、中年は遠出をしていた。
キコキコキコ…
中年「ふんふ~ん」
中年「これだけ長時間漕いでるのに、全く苦じゃないよ。私も成長したもんだ」
サドル「…………」
中年「どうした?」
サドル「あ、いや、懐かしいなって思って……」
中年「懐かしい? もしかして、この辺りは――」
サドル「ああ、俺、この辺りに住んでたんだ……」
中年「! そうだったのか……」
……
事件から二週間後、中年は遠出をしていた。
キコキコキコ…
中年「ふんふ~ん」
中年「これだけ長時間漕いでるのに、全く苦じゃないよ。私も成長したもんだ」
サドル「…………」
中年「どうした?」
サドル「あ、いや、懐かしいなって思って……」
中年「懐かしい? もしかして、この辺りは――」
サドル「ああ、俺、この辺りに住んでたんだ……」
中年「! そうだったのか……」
85: 2021/02/17(水) 19:43:56.623 ID:mmh2/hSg0
事故現場には花が置かれていた。
中年「…………」
サドル「手を合わせてくれてありがとよ、おっさん」
中年「当然のことさ」
サドル「こういうの見ると、改めて俺は氏んじゃったんだなって感じるよ」
中年「……なぁ」
サドル「え?」
中年「君の家族のところに……行ってみないか」
サドル「!」
中年「…………」
サドル「手を合わせてくれてありがとよ、おっさん」
中年「当然のことさ」
サドル「こういうの見ると、改めて俺は氏んじゃったんだなって感じるよ」
中年「……なぁ」
サドル「え?」
中年「君の家族のところに……行ってみないか」
サドル「!」
88: 2021/02/17(水) 19:50:43.341 ID:mmh2/hSg0
キコキコキコ…
中年「あの家かね?」
サドル「うん……あそこに住んでた。俺と両親と妹の四人暮らしで」
中年「…………」
サドル「一目見たらなんだかスッキリしたし帰ろ――」
中年「よし、寄ってみよう!」
サドル「ハァ? 寄ってみるって、おっさん俺の家族と接点ないだろ!」
中年「理由なんかどうにでもなるさ」
中年「あの家かね?」
サドル「うん……あそこに住んでた。俺と両親と妹の四人暮らしで」
中年「…………」
サドル「一目見たらなんだかスッキリしたし帰ろ――」
中年「よし、寄ってみよう!」
サドル「ハァ? 寄ってみるって、おっさん俺の家族と接点ないだろ!」
中年「理由なんかどうにでもなるさ」
89: 2021/02/17(水) 19:53:06.178 ID:mmh2/hSg0
―男の実家―
サドル「母さんだ……!」
中年「行こう」
サドル「まだ心の準備が……」
中年「あの、すみません」
母「……はい? どちら様ですか?」
中年「初めまして。私、息子さんと交流をしていた者で……」
中年「このたび亡くなられたと聞いて、線香を上げさせてもらえないかと……」
母「まあ……中へどうぞ」
サドル(母さん……やつれたなぁ)
中年(もちろん、サドルも持って行かないとな)
サドル「母さんだ……!」
中年「行こう」
サドル「まだ心の準備が……」
中年「あの、すみません」
母「……はい? どちら様ですか?」
中年「初めまして。私、息子さんと交流をしていた者で……」
中年「このたび亡くなられたと聞いて、線香を上げさせてもらえないかと……」
母「まあ……中へどうぞ」
サドル(母さん……やつれたなぁ)
中年(もちろん、サドルも持って行かないとな)
90: 2021/02/17(水) 19:55:07.515 ID:mmh2/hSg0
妹「どなた?」
母「お兄ちゃんと縁がある人だって」
妹「兄さんと……」
中年「どうも、初めまして」
中年「おいおい、君の妹、なかなか可愛いじゃないか」ボソッ
サドル「どこがだよ。ただのガリ勉女だよ」
中年「たしかに君と違って真面目そうだ」
サドル「ほっといてくれ」
母「お兄ちゃんと縁がある人だって」
妹「兄さんと……」
中年「どうも、初めまして」
中年「おいおい、君の妹、なかなか可愛いじゃないか」ボソッ
サドル「どこがだよ。ただのガリ勉女だよ」
中年「たしかに君と違って真面目そうだ」
サドル「ほっといてくれ」
91: 2021/02/17(水) 19:58:11.502 ID:mmh2/hSg0
父「息子は……事故で亡くなりました。自転車で転倒して……」
父「近くにいた男性がすぐ救急車を呼んでくれたんですが……残念ながら」
母「…………」
中年「そうでしたか……」
サドル(俺が間違えて見とれたあの人、救急車呼んでくれたんだな。なぜかちょっと嬉しい)
父「ところで、息子とはどのような?」
中年「私が自転車を故障させて困っていたら、息子さんがたまたま通りがかって……」
中年「このサドルをくれたんです。その時、ちょっとした知り合いのような感じになって……」
全くのデタラメだったが、疑われることはなかった。
父「近くにいた男性がすぐ救急車を呼んでくれたんですが……残念ながら」
母「…………」
中年「そうでしたか……」
サドル(俺が間違えて見とれたあの人、救急車呼んでくれたんだな。なぜかちょっと嬉しい)
父「ところで、息子とはどのような?」
中年「私が自転車を故障させて困っていたら、息子さんがたまたま通りがかって……」
中年「このサドルをくれたんです。その時、ちょっとした知り合いのような感じになって……」
全くのデタラメだったが、疑われることはなかった。
93: 2021/02/17(水) 20:00:50.344 ID:mmh2/hSg0
父「息子は学生で、交友関係もよく知らなかったのですが……」
父「そんな人助けをしていたと知って、嬉しいです」
中年「息子さんは本当にいい青年でした。私のようなおっさんとも気さくに話してくれて」
中年「どこに出しても恥ずかしくない、立派な若者だったと思います」
サドル「褒めすぎだって、おっさん!」
中年「早くに亡くなったのが本当に惜しい……そう断言できます」
父「そうおっしゃって頂けると、私たちも救われます」
母「だけど……だけど生きてて欲しかった……。生きて……」
父「母さん……」
サドル「…………!」
サドル「バカな氏に方しちゃって……ごめんよぉ……!」
サドル「うっ、ううっ、うっ……!」
父「そんな人助けをしていたと知って、嬉しいです」
中年「息子さんは本当にいい青年でした。私のようなおっさんとも気さくに話してくれて」
中年「どこに出しても恥ずかしくない、立派な若者だったと思います」
サドル「褒めすぎだって、おっさん!」
中年「早くに亡くなったのが本当に惜しい……そう断言できます」
父「そうおっしゃって頂けると、私たちも救われます」
母「だけど……だけど生きてて欲しかった……。生きて……」
父「母さん……」
サドル「…………!」
サドル「バカな氏に方しちゃって……ごめんよぉ……!」
サドル「うっ、ううっ、うっ……!」
94: 2021/02/17(水) 20:03:53.941 ID:mmh2/hSg0
中年「――あの」
父「はい?」
中年「実は先日、私の夢の中に……息子さんが現れたんです」
父「え……?」
中年「息子さんは、私の口を通じてご家族にお伝えしたいことがあるというのです」
中年「何をバカなことをと思うかもしれません。ですが聞いて頂けないでしょうか?」
サドル「お、おっさん!」
中年「いいから。伝えたいことがあるなら……」
サドル「……分かったよ」
父「はい?」
中年「実は先日、私の夢の中に……息子さんが現れたんです」
父「え……?」
中年「息子さんは、私の口を通じてご家族にお伝えしたいことがあるというのです」
中年「何をバカなことをと思うかもしれません。ですが聞いて頂けないでしょうか?」
サドル「お、おっさん!」
中年「いいから。伝えたいことがあるなら……」
サドル「……分かったよ」
97: 2021/02/17(水) 20:06:33.714 ID:mmh2/hSg0
中年「父さん母さん、バカな氏に方しちゃってゴメン」
中年「だけど今は楽しく暮らしてる。毎日が楽しいよ」
中年「だから心配しないで……元気出して。そういってました」
父「そう……ですか」
母「ありがとう……ございます」
中年「それと妹さんにも」
妹「え?」
中年「勉強もいいけど、たまにはパーッと遊べよ」
中年「だけど、お前は俺よりしっかりしてるから安心できる。……と」
妹「なんだか、本当に兄さんみたい……」
家族は一切否定せず、このメッセージを受け取った。
中年「だけど今は楽しく暮らしてる。毎日が楽しいよ」
中年「だから心配しないで……元気出して。そういってました」
父「そう……ですか」
母「ありがとう……ございます」
中年「それと妹さんにも」
妹「え?」
中年「勉強もいいけど、たまにはパーッと遊べよ」
中年「だけど、お前は俺よりしっかりしてるから安心できる。……と」
妹「なんだか、本当に兄さんみたい……」
家族は一切否定せず、このメッセージを受け取った。
98: 2021/02/17(水) 20:09:18.751 ID:mmh2/hSg0
帰り際――
中年「…………」
中年「あ、あのっ!」
父「なんでしょう」
中年「実は……実はこのサドルにはあなた方の――」
サドル「おっさん!」
中年「!」
サドル「それは……やめてくれ」
サドル「三人とももう、俺の氏を乗り越えてる。それに俺はもう氏んだ人間だ」
サドル「ここで正体バラしちゃうのは、なんていうか、いびつな事だと思うから……」
中年「分かった……そうしよう」
中年「…………」
中年「あ、あのっ!」
父「なんでしょう」
中年「実は……実はこのサドルにはあなた方の――」
サドル「おっさん!」
中年「!」
サドル「それは……やめてくれ」
サドル「三人とももう、俺の氏を乗り越えてる。それに俺はもう氏んだ人間だ」
サドル「ここで正体バラしちゃうのは、なんていうか、いびつな事だと思うから……」
中年「分かった……そうしよう」
100: 2021/02/17(水) 20:11:21.097 ID:mmh2/hSg0
父「サドルが何か?」
中年「えぇと、最後にこのサドルに……触ってもらえませんか?」
父「え?」
中年「お願いします」
父「分かりました」
母「息子が人助けした証のサドルですもんね」
妹「兄さん……」
家族の手の温もりを感じ――
サドル(おっさん……ありがとう)
中年「えぇと、最後にこのサドルに……触ってもらえませんか?」
父「え?」
中年「お願いします」
父「分かりました」
母「息子が人助けした証のサドルですもんね」
妹「兄さん……」
家族の手の温もりを感じ――
サドル(おっさん……ありがとう)
101: 2021/02/17(水) 20:14:19.009 ID:mmh2/hSg0
中年「またこちらの家に来てもいいですか?」
父「ええ、ぜひ」
母「そのサドルも一緒に。なんだか他人の気がしなくて……」
中年「もちろんです」
妹「もしまた兄さんが夢に出てきたら伝えて下さい。絶対いい大学入ってやるからって!」
中年「必ず伝えます」
サドル(お前なら絶対合格できる! 俺みたいにこけることはないさ!)
中年「では、今日はこれで失礼します」
父「ええ、ぜひ」
母「そのサドルも一緒に。なんだか他人の気がしなくて……」
中年「もちろんです」
妹「もしまた兄さんが夢に出てきたら伝えて下さい。絶対いい大学入ってやるからって!」
中年「必ず伝えます」
サドル(お前なら絶対合格できる! 俺みたいにこけることはないさ!)
中年「では、今日はこれで失礼します」
102: 2021/02/17(水) 20:17:20.844 ID:mmh2/hSg0
キコキコキコキコキコ…
中年「どうだった? 久々の実家は」
サドル「やっぱり親が泣いてるのを見るのはつらいな」
中年「すまなかった」
サドル「謝ることないって。むしろ感謝してる」
中年「今日は特別に娘を座らせてあげてもいいぞ?」
サドル「いやいやいや、このムードで『ぜひお願いします!』とはいえんでしょ」
中年「それが分かってるから聞いたんだよ」ニヤッ
サドル「ったく……。楽しみは後にとっとくわ」
中年「どうだった? 久々の実家は」
サドル「やっぱり親が泣いてるのを見るのはつらいな」
中年「すまなかった」
サドル「謝ることないって。むしろ感謝してる」
中年「今日は特別に娘を座らせてあげてもいいぞ?」
サドル「いやいやいや、このムードで『ぜひお願いします!』とはいえんでしょ」
中年「それが分かってるから聞いたんだよ」ニヤッ
サドル「ったく……。楽しみは後にとっとくわ」
104: 2021/02/17(水) 20:20:22.125 ID:mmh2/hSg0
サドル「おっさん、これからも良きパートナーでいてくれよ」
中年「こっちこそ」
サドル「そのうち、二人で日本一周するのもいいかもな!」
中年「定年後の楽しみが一つ増えたよ」
シャーッ
―おわり―
中年「こっちこそ」
サドル「そのうち、二人で日本一周するのもいいかもな!」
中年「定年後の楽しみが一つ増えたよ」
シャーッ
―おわり―
105: 2021/02/17(水) 20:22:06.362
乙
泣いた
泣いた
106: 2021/02/17(水) 20:23:48.458
乙
良かっとよ
良かっとよ
107: 2021/02/17(水) 20:26:14.781
( ;∀;)イイハナシダナー
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