続けてどうぞ
俺も良く知らねえやそれ

友人「聞いたことないけどなんだそれ？」

男「一言でいうなら、“外国に日本を攻めさせる”って犯罪だ」

男「刑法81条。これが適用されたら無期懲役すらなく氏刑確定だ。今までに適用された例はない」

友人「たしかに国そのものが危うくなるんだからな。これに比べりゃ殺人や放火ですら可愛いもんだ」

男「ああ、これをやった罪人になれば間違いなく歴史に残る！」

友人「だけどさ、どうやって実行するんだ？」

友人「例えばホワイトハウスに俺たちが行って『日本攻めて下さい』って頼んでやってくれると思う？」

男「だったら日本と関係がよろしくない国に頼めば……」

友人「そういう国でも俺らに踊らされるほどアホじゃないだろ。普通やらないだろ」

男「……」

大体の場合テロ幇助みたいなのになるのかね？

友人「やっぱり現実的じゃねえよ。外患誘致なんて」

男「いや、マイナーな国を探そう！」

友人「マイナーな国？」

男「世界は広い。探せば俺らのいうことを聞いてくれそうな国がきっとあるはず！」

友人「あるかなぁ」

男「というわけで、さっそく日本を攻めてくれそうな国探し開始だ！」

友人（こいつ、社会科の地図帳を取り出したぞ……）

ワロタ

鳩「速さが足りないッッ！！」

男「あったぞ！」

友人「え、あったの？」

男「名前は……≪ヤーヴァ国≫」

友人「名前からしてヤバそうな国だな。で、場所は？」

男「……ここだ」

友人「ちっさ！　こんな国に攻め込まれても日本ビクともしないだろ」

男「勝ち負けは問題じゃねえよ。ようするに外患を誘致できればいいんだから」

友人「それはそうだけどさ」

男「行くぞ！　史上初、外患誘致罪を適用された罪人になるために！」

ウキウキしすぎだろ

ヤーヴァ空港――

男「……着いた」

友人「この国の公用語である“ヤバ語”もしっかり勉強してきたし、バッチリだ！」

男「さて、ヤーヴァ国ってのはどんな国かな……」

友人「調べてもほとんど情報なかったからな」

男「さあ、記念すべき第一歩――」

男「――え」

市民A「ふぁぁ……眠い……」ｺﾞﾛｺﾞﾛ

市民B「メロンうめえ！」ｼｬｸｼｬｸ

市民C「ヒャッハーッ！」ﾄﾞｶﾞｼｬｰﾝｯ



男「なんだこれ……町中で寝たり、メロン食ったり、暴れたり……まともな奴が一人もいない」

友人「他はともかくメロンはいいだろ」

友人「とはいえ“国民総その日暮らし”って感じだな。ヤバすぎる……」

男「とりあえず、大統領の居場所を探るか」

友人「そうだな。いずれ会ってみたいし」

男「あのー、すみません」

通行人「はい？」

男「大統領ってどこにいるんですか？」

通行人「大統領？　あっちにいるよ」

男「ど、どうも」

友人「軽いなぁ……」

大統領府――

男「あっさり着いちゃった」

友人「ここからどうする？」

男「せっかくだし、会えるかどうかチャレンジしよう」

友人「門前払いされると思うけど……」

男「ダメ元だよ。あの竹槍持ってる兵士に話しかけてみよう」

友人「竹槍て……せめてピストル持てよ」

男「すみません、大統領に会いたいんですけど」

兵士「いいですよ！」

男「え」

兵士「さ、こちらへどうぞ！」

男「こんなあっさり会えちゃうのかよ……」

友人「ヤバすぎる……」

大統領「日本を攻めて欲しい？　いいですよ！」

男「え」

友人「え」

大統領「じゃ、さっそく攻めましょうか！　ワクワクしてきました！」

男「いや、いいんですか？　こんなにあっさり決めちゃって。戦争するんですよ？」

大統領「ええ、他にやることもないし」

男「そんな理由で……？」

友人「大統領もやっぱりヤバかった……」

大統領「それでは我が軍を紹介しましょう」

兵士「よろしくお願いします」ｻﾞｯ

男「あ、さっきの兵士さん……」

友人「彼の他には？」

大統領「彼一人です」

男「は？」

大統領「我がヤーヴァ国の軍隊は彼しかおらんのですよ。ハッハッハ！」

男「えええええ！？」

友人「ノーガードすぎてヤバイ」

日本滅亡待ったなしですわ

男「いや、待て……もしかしたらものすごく強いのかも」

友人「たしかに」

男「ちょっと俺と手合わせさせて下さい。あなたの実力を試したい」

兵士「フフフ……いいでしょう」ｻｯ

友人（む、構えはそれっぽい。これはマジで強いパターンあるか？）

兵士「せやぁっ！」ｼｭｯ

男「でやっ！」ﾊﾞｷｯ!

兵士「がはっ……」ﾄﾞｻｯ…

男「え、気絶した」

友人「弱すぎる……」

男「こいつが日本に攻め込んだところで、小学生も倒せないだろ……」

男「まさか、この地球上にこんなヤバイ国があったなんて……」

友人「名は体を表すならぬ“名は国を表す”だな」

大統領「だけど、国連にはちゃんと国として認めてもらってますよ」

男「マジで！？」

友人「なに考えてんだ国連……」

男「きっと、たまたま基準が緩い時だったんじゃないかな」

友人「そんなたまたま景気よかったからいい会社入れたみたいな……」

あれ？これは外交問題になるのでは？

男「……」

友人「どうする？　帰る？　この国を誘致したところで、罪になるどころか笑い物になるぞ」

男「いや、こんなヤバイ国……ほっとけないだろ」

友人「ってことは……」

男「俺たちでもう少しヤバくない国にしてやろうじゃないか！」

友人「だな！」

男「大統領さん」

大統領「はい？」

男「俺を大統領にしてくんない？」

大統領「いいですよ！」

友人（流石にこのノリにも慣れてきた）

男「晴れて大統領に就任したわけだが……まず、どうしよう？」

友人「やっぱ金だろ。お金を稼がないと」

男「となると産業か……。この国ってなにか産業ないの？　名物とかさ」

元大統領「名物……うーん……名物……」

元大統領「ああ、メロンがありますよ。これです」ｻｯ

男「でかっ！」

元大統領「よく分かりましたね、デカメロンっていうんです」

友人「なんかどこかで聞いた響きだな……」

元大統領「カットしましたので、どうぞ食べてみて下さい」

男「こういう無駄にでかい食い物って大抵まずいんだよな……」

友人「ああ、でかい分薄味だったり大味だったり」

ｼｬｸｯ

男「……！　うまっ！」

友人「なにこれ、メチャクチャうめえ！　甘くて、歯ごたえもあって！」

元大統領「まあ、大した産業じゃありませんけど」

男「いやいやいや！　これもっと作れ！　輸出すれば絶対大儲けできる！」

男「他に……なにか資源とかない？」

元大統領「資源ってなんですか？」

男「そこからかよ……例えば、貴重な鉱石とか」

元大統領「ああ、ありますよ」

元大統領「首都の外れに≪レアメタ山≫って山があるんです。その名の通りレアメタルで出来てます」

男「えええええ！？」

友人「レアなのかレアじゃないのか分からなくなってきたな」

デカメロン食いたい

なぜ今まで侵略されなかったんだ…

ｷﾗｷﾗｷﾗ…

男「マジでレアメタルの宝庫じゃん……」

友人「こんなの他の国が放っておかないでしょ！　今までよく守り切れたな！」

元大統領「たしかに色んな国の使者や外交官が来ましたけど、この国を一目見るなりみんな帰ってしまって」

元大統領「こうやって真面目にヤーヴァ国の相手してくれてるの、あなたたちが初めてですよ」

男「そうだったのか……」

友人「たしかに“こんな国と関わりたくない”ってなる気持ちも分かる」

男「とりあえず、戦略は立った」

男「デカメロン輸出とレアメタ山の採掘で、外貨を稼ぐんだ！」

友人「おう！」

男「とりあえず、産業についてはお前に任せた」

友人「任せとけ！」

男「……ホントに大丈夫？」

友人「まあ、国を作るゲームやったことあるし……何とかやってみるわ」

男「ヤバイのはこの国だけじゃなく、俺らもそうだったのかも」

男「それと、議会も作った方がいいな。法律とか作るのに必要だし」

友人「お前の独裁にしないんだ？」

男「やっぱり国ってのはさ、みんなの力で盛り上げなきゃいけないと思うんだ！」

友人「おおっ！」

男「それに正直な話、あんまり責任負いたくないし。何かトラブった時はみんなのせいってことで」

友人「それが本音かよ」

元大統領「じゃあ私が議会を作りましょう。立派な議会を作ってみせますよ！」

男「あとは……軍備も整えよう」

友人「軍といったら……」ﾁﾗｯ

兵士「僕ですか！」

男「他にいないし、君に軍の全権を託す。頑張って強くしてくれ」

兵士「頑張りまーす！」

友人「大丈夫かなぁ、こいつで……」

男「やる気はありそうだし、何とかなるだろ」

友人「俺が産業、元大統領が議会、兵士君が軍事を担当して……じゃあお前は？」

男「俺は寝てる」

友人「ふざけんなッ！」

元大統領「こんなヤバイ大統領は許せません！」

兵士「刺しますよ」

男「わ、悪かった。真面目に働きます」

首都で大集会が行われた。

男「えー、このたびはこの私が大統領になりました」

男「この国はヤバイ、ヤバすぎる！　このままほっといたら確実に自滅する！」

男「みんなでこのヤバすぎる国を少しでもヤバくない国に立て直すんだ！」



オーッ！！！



友人（こんな中身のないスピーチで盛り上がるとは……さすがヤーヴァ国民）

友人（はてさて、どうなることやら……）

数年後――

ﾜｲﾜｲ…

市民A「今年はいいデカメロンが収穫できそうだな！」

市民B「ああ、デカデカメロンだ！」



子供A「学校行こうぜ！」ﾀﾀﾀｯ

子供B「うん！」ﾀﾀﾀｯ

子供C「勉強できるなんて夢みたいだ！」

男「……何とかなるもんだな」

友人「ああ、ようやく国としてまともに機能し出した」

男「まだまだ国としてはちっぽけで発展途上だけど……」

友人「このヤーヴァ国には平和がある。そして……未来も」

男「そうだな！」

元大統領「大統領、今日のご予定は？」

男「ある国の首相と会談がある」

友人「へえ、ってことは海外出張か。土産頼むわ」

男「いや、向こうから来てくれるそうだ。なにしろうちの資源は魅力的だからな」

友人「ついに首相が来るようになったか。で、どこの国だ？」

男「……俺らの故郷だよ」

友人「あ……！」

総理「初めまして」

男「初めまして」

総理「このたびはぜひ我が国と親密な関係を結んで頂きたく……」

男「こちらこそ願ってもない話ですよ」

総理「ところで、あなたはかつては日本人だったと伺いましたが、なぜヤーヴァ国に？」

男「そ、それは……」

男（本当の理由は……話せるわけないわな）





END

乙
実にヤバイSSだったぜ

乙
予想より平和的ＥＮＤでよかった