1: 2012/10/04(木) 00:28:42.64 ID:NORmfl3o0
未来は樹枝のよう。
あっちこちに広がりそして終わりを向かえる。

その樹枝のような未来は結晶のように固まり、決して折れる事は無い。

私の未来はどんな未来?

それは楽しい未来?

そらともツラい未来?

そう、最初はそれが知りたかっただけ……。

5: 2012/10/04(木) 00:34:37.10 ID:NORmfl3o0
ある日、私は凄く大きな木を見付けた。

その木は枝をうんと伸ばし青々とした葉っぱが気持ち良さそうに風に揺られていて、その葉っぱのあいだからは青い空がチラチラと見えた。

触れてみたい。

動くことが出来ないこの木に私は強い生命力を感じた。

その生命力に触れてみたい。
手を伸ばして木に触れる。

瞬間、私は知らない場所にいた。

8: 2012/10/04(木) 00:40:20.02 ID:NORmfl3o0
菫「お嬢様?紬お嬢様?」

紬「こ、ここは?」

菫「どうされました?」

紬「あれ?私、さっきまであの大きな木の前にいたのに……」

菫「大きな木?」

まず疑ったのは今私は夢を見ているんじゃないと言うこと。

どうやら夢では無いらしい。

菫が私の手を握るこの感触。
とても、暖かい。夢ならこんなリアルに菫の手の感触を感じない。

10: 2012/10/04(木) 00:44:53.89 ID:NORmfl3o0
では、私は大きな木を見付けた夢を見ていたの?

確かめる術もないし、そう思うのが自然だった。

不思議な違和感。

この違和感は菫の手から感じる。
いや、手だけじゃない菫の顔、背丈、声、それにこの場所。

大きなキーボードが隅っこにある。

あれは私の大事なキーボード。
あれがあるって言うことはここは私の部屋?

そう思えば見覚えがある物があちこちにある。

家具や色んな物が変わりすぎて気が付かなかった。

12: 2012/10/04(木) 00:50:03.32 ID:NORmfl3o0
紬「菫……こんなに手大きかった?」

菫「え……?紬お嬢様には負けますが私も紬お嬢様のキーボードをよく触らせて貰ってましたから手だけが成長しちゃったかもしれませんね。フフフ」

紬「そう……」

菫「冗談ですよ!紬お嬢様の手は大きくないですよ!」

紬「落ち着いた声ね。それに綺麗になったわね。お化粧してるの?」

菫「あ、ありがとうございます」


14: 2012/10/04(木) 00:54:48.94 ID:NORmfl3o0
紬「私の部屋。いつの間に模様替えしたの?」

菫「えーと……はっきりと覚えていませんが確か三年前です。紬お嬢様が成人してすぐに模様替えしたのは覚えているんですが……」

紬「成人?三年前?私まだ成人してないわよ?」

菫「もう、今度は紬お嬢様の番ですか?その冗談面白いです」

紬「冗談とかじゃなくて……私まだ18歳よ?」


16: 2012/10/04(木) 00:59:46.24 ID:NORmfl3o0
私の言葉に菫は戸惑っている。
どちらが夢か分からなくなってきた。

菫に手鏡を持って来て貰って自分の顔を確かめる。

手鏡には少し大人びた顔をしている私がいた。

紬「どう言う事なの?」

普通に考えれば夢を見ている。

普通に考えなかったら、私は今未来にいる。

そう……夢じゃかったら私は未来にいる。

18: 2012/10/04(木) 01:04:13.20 ID:NORmfl3o0
紬「タイムスリップしちゃった……」

菫「は、はぁ……」

紬「私、タイムスリップしちゃった!」

菫「よ、よかったですね!」

元々、私はおとぎ話が大好きだ。
ガラスの靴や不思議の国のアリス。

ひょっとしてあの木の近くに穴があって私はその穴に落ちてタイムスリップしちゃったのかもしれない。


21: 2012/10/04(木) 01:09:43.50 ID:NORmfl3o0
タイムスリップしたなら、聞きたい事が沢山ある。

紬「みんなは?みんなが大人になった姿見たい!」

菫「みんな?」

紬「唯ちゃんや梓ちゃん!澪ちゃんにりっちゃん!」

菫「でも、会わなくなったって言ってませんでしたっけ?」

紬「え?」

菫「前に、言ってましたよね?自然と会わなくなったって……」

24: 2012/10/04(木) 01:17:56.87 ID:NORmfl3o0
紬「自然と会わなくなった?そんな事ない!だって私達仲良しだもの……」

段々と自分の声に力が弱まっていく事が分かった。

ここは未来の世界、いくら現時点で私達が仲良しでも環境が変われば交遊関係も変わる。

そうなれば、みんなとも会う機会が無くなり自然と会わなくなる。

そして残るのは、あぁこんな友人いたなぁ……元気にしてるかなぁ……と言う考え事だけ。

25: 2012/10/04(木) 01:23:28.96 ID:NORmfl3o0
それは多分、みんな経験している事。

いくら楽しい思い出を作っても、バンド活動してても、一緒に氏体を探しに行っても……環境が変われば全てが変わる。

紬「……嫌だ」

だけど、みんなは放課後ティータイムのみんなは……私の大切な親友。

ずっとみんな一緒にいる。
そんな関係がずっと続くと思っていた私は無意識にある言葉を口走っていた。

28: 2012/10/04(木) 01:26:38.98 ID:NORmfl3o0
紬「……嫌」

菫「はい?」

紬「こんな未来嫌よ!」

そう、こんな未来は私は望んでいない。

私が望んでいるのは、ずっとみんなと一緒にいる未来。

視界が白く染まり、暖かい日差しが降り注いだ。

気付くと私はあの木の前にいた。

30: 2012/10/04(木) 01:30:48.94 ID:NORmfl3o0
パキッと小さな音が聴こえた。

音がした方を見ると木の枝が落ちている。

きっと、あの木の枝が折れたのだろう。

……さっき私がみたのはなんだったんだろう?

確か……この木に触れた途端、私は違う場所にいた。

しかも、その場所は未来で、私はみんなと会わなくなった事にショックを受けていた。

32: 2012/10/04(木) 01:34:19.34 ID:NORmfl3o0
紬「ほんとになんだったのかなぁ……」

まさか、こんなとこで寝てたわけじゃ無いと思うし……。

もう一度木を見上げる。

なんか、変に疲れてしまったし、少し休もう。

木に背を預けると、私はまた知らない場所にいた。

33: 2012/10/04(木) 01:37:45.04 ID:NORmfl3o0
澪「なぁ……笑えないか……笑えるよな凄く」

紬「……まただ」

澪「なんでこんな事になってしまったんだよ!!!」

体が飛び上がった。

すぐ横には澪ちゃん。
凄い怒ってる。

35: 2012/10/04(木) 01:43:04.88 ID:NORmfl3o0
澪「望んでなかった……こんな事……」

紬「み、澪ちゃんどうしたの?」

こんなに怒った澪ちゃんは見たことなかった。

だからここはどこ?なんて聞けないし、今は西暦何年とも聞けなかった。

一つだけ分かった事は、私はまたタイムスリップした。

何でタイムスリップしたかは分からないけど、これだけは確かだ。

37: 2012/10/04(木) 01:48:47.76 ID:NORmfl3o0
律「おっまたせー!」

唯「ごめんごめん!この衣装着るの難しくって」

梓「早くしないとみんな待ってますよ!ほらムギ先輩、澪先輩そこの上に早く!」

慌ただしく三人がやってきて、りっちゃんから背中を押された。

律「ほら、ステージが上がるぞ!みんなポーズ!」

唯「がってん!」

私達五人が立ってる場所が上へと上がっていく、眩しい光。

凄く大きな歓声。
今更だけど私はフリフリの服を着ていた。

澪「みんなぁーおまたせ☆みおみおだよー!」

38: 2012/10/04(木) 01:53:19.43 ID:NORmfl3o0
紬「みおみお?」

澪「今日はみんな放課後ティータイムのライブに来てくれてありがとー☆」

唯「もーぅ唯みんなの事好きになっちゃいそー」

梓「みんなサイリウムは持ったー?」

律「今日は私達、放課後ティータイムの五周年ライブだぞー!」

紬「………………」

梓「ほら、次ムギ先輩の番ですよ!」

紬「…………え?」

41: 2012/10/04(木) 01:59:59.59 ID:NORmfl3o0
紬「わ、私の番?」

いきなりこんな場所に立たされて何が私の番なのか、いまいち分からない。

それに、凄い人の数。
うぉぉぉぉ!とかいぇぇぇぇい!そんな大声が響いている。

唯「ムギちゃん台詞忘れちゃったの?ほら……それじゃあ一曲目ふわふわ時間いっくよーだよ!」

紬「え?え?えぇーっ?」

澪「早く!みんな待ってるだろ!アイドルとして意識が足りてないぞ!」

紬「え……えっと。そ、それじゃあ一曲ふわふわ時間いっくよー……」

42: 2012/10/04(木) 02:04:38.74 ID:NORmfl3o0
始まった。

どうやらこの未来では私達はアイドルらしい。

唯ちゃんが歌ってる横で私は色々考えた。

多分、ここは……武道館。
私達は夢の武道館でライブをしている。

いや、ライブじゃない。
ただ、誰かが演奏してる中で私達は歌って踊っている。

誰も楽器を持っていない。
誰も……。

44: 2012/10/04(木) 02:13:16.53 ID:NORmfl3o0
何がどういった経緯で私達はアイドルになったのか知らないけど、私達はきっと妥協したんだろう。

バンドとして武道館には立てない。
だけど、アイドルとしてなら……。

一曲目が終わると梓ちゃんに手を退かれ私はステージの端へと連れてかれた。

梓「もうどうしたんですかムギ先輩!ボーッとして……」

紬「ご、ごめんなさい……」

梓「みんなの夢、武道館でのライブなんですからしっかりしてください!じゃないと偉い人から嫌われますよ!」


45: 2012/10/04(木) 02:17:29.55 ID:NORmfl3o0
紬「偉い人?」

梓「プロデューサーですよ!折角、気に入られたのに……」

誰かから肩をポンッと叩かれた。

振り向くと、小太りのオジサンが笑顔で私を見ていた。

梓「プロデューサー!おざーっす!」

紬「おざーっす???」

プロデューサーは挨拶のつもりか梓ちゃんの肩に手を置いた。

そして、一言。
これが終わったら近くにホテルがある。
そこで待ってるよ。

ゾッとした。

48: 2012/10/04(木) 02:23:04.87 ID:NORmfl3o0
プロデューサーは去って行った。

梓ちゃんの顔からは笑顔がきえていた。

梓「酷いですよね。夢を見ている気分だったのに、一言で私達を現実に引き戻すんですもん。悔しいですよね。自分達で演奏出来るのにさせてもらえないなんて……」

観客の歓声が大きくなる。

梓「さぁ!二曲目ですよ!」

紬「…………」

さっきのプロデューサーと私達がどんな関係なのか分かった。

そしてどんな事をしてこの武道館でライブを行う事が出来たのかも……。

49: 2012/10/04(木) 02:27:12.56 ID:NORmfl3o0
紬「ねぇ……梓ちゃん」

梓「はい?」

紬「もし、私達がまだ高校生で今のこの未来を知ったとしたら。それは嫌な未来?嬉しい未来?」

梓「……嫌な未来です」

紬「えぇ……私もこんな未来嫌だわ」

いつの間にか私は大きな木の目の前にいた。

51: 2012/10/04(木) 02:35:54.35 ID:NORmfl3o0
紬「あ……戻ってきた」

二回も私は不思議な体験をしてしまった。

でも、なんで私は未来を見ることが出来るのか?

答えはすぐに分かった。

この木のおかげだ。

またパキッと音がして折れた枝が地面に落ちる。

二回ともこの木を触り二回も未来へ連れてってくれた。

52: 2012/10/04(木) 02:44:59.46 ID:NORmfl3o0
この木は不思議な魅力がある。

それは多分、未来を知らせてくれるから。

私は知りたい、どんな未来が私を待ってるのかそれは楽しい未来なのかツラい未来なのかどんな未来なのか知りたい。

もしその未来が気に入らなかったら、気に入らないと言ってしまえば、その未来は消え枝が落ちるだけ……。

そして新たな未来が私を待ってる。

そう、この無数に伸びた枝は未来。
様々な私の未来。

私は木に触れる。

82: 2012/10/04(木) 13:03:18.11 ID:HCemE3680
潮の匂い波の音。
私は海にいた。

律「潮を感じるか?」

紬「りっちゃん?」

隣にはりっちゃんだけ、唯ちゃん達はいない。

律「やっと付いたな……長かったなここまで」

何がやっとなのか何が長かったのか分からない。

一つだけ分かる事と言えば私はりっちゃんと海に行く約束をしていたんだろう。

83: 2012/10/04(木) 13:09:25.63 ID:HCemE3680
りっちゃんを見てみる。

表情はどこか寂れていて、とても病的だ。

律「なんだ?」

紬「あ、いいえ……何でもないわ」

一体、この未来では何が起こったのか……。

りっちゃんを見るとあまりいい未来だとは思えない。

85: 2012/10/04(木) 13:17:20.42 ID:HCemE3680
紬「りっちゃんあのね……唯ちゃん達は?」

律「唯?……みんな氏んだじゃないか、忘れたのか?」

紬「え?……し、氏んだ?」

みんな氏んだじゃないか。
その言葉が私の頭に突き刺さる。

律「本当に忘れたみたいだな。お前の病気にそう言う症状ってあったか?……まぁいいや、もう関係の無い事だ」

こんな未来嫌だ。
りっちゃん意外のみんなが氏んだ未来なんて……。

私がこの未来を否定しようとした時、りっちゃんは言った。

律「怖いか?」

88: 2012/10/04(木) 13:23:56.92 ID:HCemE3680
紬「こ、怖い……?」

りっちゃんから見て私の表情は怯えているのだろう。

りっちゃんは私の肩に手を置いてニッコリと微笑んだ。

律「大丈夫、私がいる」

そう言ってりっちゃんはタバコに火を付けて砂浜に向かった。

紬「あ、りっちゃん待って!」

私もりっちゃんの後を追いかけた。

89: 2012/10/04(木) 13:29:40.92 ID:HCemE3680
何だか胸が痛い。
この胸の痛みは何だろうか、そう言えばさっきりっちゃんはお前の病気にそう言う症状あったか?と言っていた。

きっと私は病気なんだろう。

そして、りっちゃんのあの病気な表情を見る限り彼女もまた……。

りっちゃんは立ち止まり、海をジッと見ていた。

私もりっちゃんの側に近付いて、海を眺めていた。

91: 2012/10/04(木) 13:33:31.97 ID:HCemE3680
私達はただ海を眺めていた。

言葉を交わすことなく、この広い海を眺めていた。

ときおり、りっちゃんは手に持っていたお酒を私に渡す。

私はそれを受け取り、少しだけ飲んでまたりっちゃんに手渡す。

海は綺麗だ。
波の音は心が落ち着く、同じ事をりっちゃんも思っているのだろう。

紬「りっちゃん、綺麗ね海」

律「あぁ……」

92: 2012/10/04(木) 13:37:15.55 ID:HCemE3680
紬「風もとても気持ちいいわね」

律「そうだな……」

りっちゃんは砂浜にペタリと座り込む。

律「出来ればみんなと一緒に来たかった」

紬「そう……ね」

みんながどうして氏んだのか、なんで私達は海にいるのか。

私はそれを詳しくは聞かない事にした。

だって、今のこの雰囲気でそれを聞いたら、何かダメな気がする。

後で色々教えて貰おう。

94: 2012/10/04(木) 13:45:29.05 ID:HCemE3680
律「なぁ……」

紬「なぁに?」

律「綺麗だな。海ってこんなに綺麗だったか?」

紬「えぇ、元々からとても綺麗だったわよ」

律「そうか……」

紬「………………」

律「………………」

紬「あのね、りっちゃん?」

律「あぁ、なんだ?」

紬「お酒って意外と美味しいわね」

95: 2012/10/04(木) 13:55:27.17 ID:HCemE3680
律「そうだな……」

紬「……うん」

それから、私達はしばらく潮風に揺られていた。

りっちゃんは私に寄り掛かるようにして横になり。
私はりっちゃんの頭を撫でた。

涙が溢れる。
どんどん、弱っていく彼女を見ていると涙が溢れる。

紬「ねぇ、りっちゃん。もし私達がまだ高校生でこの未来を知っていたとしたらどそれは嫌な未来?楽しい未来?」

律「別にどっちでもいいさ、私は今とても幸せなんだ」

紬「…………そっか」

98: 2012/10/04(木) 14:01:30.92 ID:HCemE3680
りっちゃんにとってはこの未来は幸せな未来らしい。

私にとってはこの未来は嫌な未来だ。

多分、もうすぐりっちゃんは氏んでしまう。

氏んでしまったら、私は一人。

紬「一人になっちゃう……私一人になっちゃう」

りっちゃんは私の頭を撫で、そしてフッと手の力が抜けた。

紬「りっちゃん?りっちゃん?」

りっちゃんは……氏んだ。

紬「りっちゃん?りっちゃん?……りっちゃん!嫌だ氏なないでりっちゃん!嫌だ嫌だ私こんな未来は嫌だよ!」

気が付くと木の前にいた。

99: 2012/10/04(木) 14:09:04.96 ID:HCemE3680
溢れでる涙を拭い、木の枝が折れた事を確認した。

紬「りっちゃん……」

大丈夫、この世界ではりっちゃんは生きている。

でも、あの未来はりっちゃんにとって幸せな未来。
私がその未来を否定してしまった。

紬「ごめんなさい……りっちゃん。私、みんながいない未来なんて耐えられない」

そう、私が望むのはみんな幸せな未来。

また木に私は触れる。



103: 2012/10/04(木) 14:30:19.92 ID:HCemE3680
澪「ムギ!?ムギ!?聞こえてる?」

紬「あ、澪ちゃん……」

澪「もう、折角のデートなんだからボーッとしないでくれよ」

紬「えぇ?デート!?誰と誰が?」

澪「もう、ボケてるつもりか?私とムギがだよ」

紬「澪ちゃんと私がデート!?」

105: 2012/10/04(木) 14:37:38.18 ID:HCemE3680
澪「もう、もうボケるのはいいから早く行くぞほら手」

紬「手?えぇっー?」

澪ちゃんは手に指を絡ませてきた。

澪「最初は何処に行く?」

紬「えっ……えっと……」

澪「あ、楽器屋に行こう!そう言えばレフティーのフェアやってるんだった!」


106: 2012/10/04(木) 14:41:37.23 ID:HCemE3680
どうやらこの未来では私と澪ちゃんは恋人らしい。

本人が良ければ私は全然構わないと思ってたけど、いざそうなると心の準備が……。

澪「もう……ムギまたボーッとしてる。ほら行くぞ?」

澪ちゃんグイグイと手を引っ張って来る。

紬「わ、わかったわ澪ちゃん行きましょう」

108: 2012/10/04(木) 14:48:22.77 ID:HCemE3680
・・・・・・・

澪「もう、ムギったらほら口」

澪ちゃんはそう言って、私の口元をハンカチで拭った。

澪「ソースが付いてぞ」

紬「あ、ありがとう澪ちゃん」

楽器屋でショッピングを楽しんだ後、私達は近くのレストランで食事をしていた。

しかも、お互いが向かい合わせに座ってるんじゃなく、私の横に澪ちゃんが座っている。

私達はこの未来ではらぶらぶらしい。


109: 2012/10/04(木) 14:51:46.81 ID:HCemE3680
何回か未来を見る中で始めて芽生えた感情が一つ。

この未来いいかもしれない。

横にピタリと座る澪ちゃんはとても可愛くて私は思わずにやけてしまう。

澪「なに笑ってるんだ?」

紬「ううん、澪ちゃん可愛いなぁ……と思って」

澪「もう……バカ!」

顔を赤くして澪ちゃんはそう言った。

111: 2012/10/04(木) 14:56:43.84 ID:HCemE3680
紬「ねぇ、他のみんなは何してるの?」

澪「他のみんな?」

紬「唯ちゃん達、元気なのかなぁ……って」

澪「みんな元気にしてるぞ、なんでいきなり?」

紬「ううん、ちょっと気になっただけ、そう幸せなら良かった」

澪「私達も幸せだけどな……」

澪ちゃんの対抗心なのかボソリと呟いた。

そんな澪ちゃんが愛らしくて抱き締めたかった。

115: 2012/10/04(木) 15:27:32.64 ID:HCemE3680
紬「ほんと澪ちゃん可愛いわね~」

澪「も、もう!褒めてもなにもでないぞ!」

紬「うふふ、ねぇこの後どうする?」

澪「どうする?って……どうしよっか」

紬「あ、私駄菓子屋行きたい!」

澪「駄菓子屋かぁーよし!次は駄菓子屋な」

紬「えぇ!」

何かおかしいと感じた。

117: 2012/10/04(木) 15:35:31.65 ID:HCemE3680
昼前なのにこのレストランお客さんや店員がいない。

なのに、料理だけはちゃんとテーブルの上にある。

外を見てみると通りには誰一人もいなくて、人の気配すらも感じない。

澪「なぁ……ムギ?」

澪ちゃんは私の手をギュッと握る。
誘うような目付き。
澪ちゃんは何かを求めている。

私の頬を両手で支え、キスをした。

あり得るだろうか?
あの恥ずかしがり屋さんの澪ちゃんがいくら人がいないレストランとはいえ、この公共の場でキスをするなんて、あり得るだろうか?

119: 2012/10/04(木) 15:40:52.85 ID:HCemE3680
いいや、いくら私達がらぶらぶでもそれはあり得えなかった。

まず私達は女の子同士で付き合ってる。

それだけでも、人の目を気にするのに公共の場でキスだなんて、澪ちゃんならまず気にする。
人の目を澪ちゃんならまず気にする。

直感的に感じた。

これは夢だ。
私は未来にタイムスリップしてその中で夢を見ている。

そう、私は今幸せな夢を見ている。

それが分かった瞬間、澪ちゃんやレストラン、景色が全て消えて、私は目が覚めた。

120: 2012/10/04(木) 15:46:07.80 ID:HCemE3680
生活感の欠片も感じない部屋に私はいた。
いや目が覚めた。

六畳の部屋に敷き詰められた布団。
そこに4人の女性が寝ている。

その四人の女性は私の全く知らない人で、さっきまで幸せな夢を見ていた私はもう一度その夢の続きを見ようとした時、部屋にベルがジリリと鳴った。

四人の女性がムクムクと気だるそうに起きて、私は軽く会釈する。

すると四人の女性の内一人が私に向かってこう言った。

こっちを見るな。
この人頃しと……。

122: 2012/10/04(木) 15:52:58.60 ID:HCemE3680
紬「ひ、人頃し?私が?」

さっきまで私が見ていた未来は夢……きっとこれが本当の未来。
それに、ここがどう言う場所か分かった。

ここは……刑務所だ。
さっきの人の言葉を聞く限りじゃ私は人を頃している。

紬「私が…………人を頃した?」

誰を?私は誰を頃したの?

分からない……だけど、人を頃した自分が恐ろしくて、私はすぐにこの場から逃げ出した。

紬「こんな未来……嫌だ!」

124: 2012/10/04(木) 15:59:29.83 ID:HCemE3680
木の前で私は大きく深呼吸した。

やっと……やっといい未来を見付けたと思ったのに……。

未来に行ってその中で夢を見るなんてアリなの?

しかも、私が人を頃してるだなんて……信じられない。
この未来だけは否定しなきゃならない。

パキッ。
枝が折れ地面に落ちる。

またこの木に触れなければならない。

私はもう夢中になっていた。

125: 2012/10/04(木) 16:03:14.79 ID:HCemE3680
映画を見るみたいに未来を見る。

その映画が面白くなければまた別の面白い映画を探せばいい。

この無数の枝からいい未来を見付ければいい。

ただそれだけ。
神様のような力を持った私はもう誰にも止められなかった。

木に触れる。

また未来を見る。

127: 2012/10/04(木) 16:15:22.67 ID:HCemE3680
唯「ねぇ、ムギちゃん」

唯ちゃんの声が聞こえた。
なんでだろう、うまく体が動かせない。

唯「今日はとてもいい天気だよ。ポカポカで猫が日向ぼっこしてた」

それに、声も出せない。

唯「その猫、あずにゃんみたいで可愛かった」

視界も真っ暗だ。

唯「ムギちゃん……早く目を覚まして……」



130: 2012/10/04(木) 16:21:48.93 ID:HCemE3680
早く目を覚まして?
目は覚めてるのだけど、目蓋がすごく重い 。

体も動かないし、何も見えない、声も出せないんじゃここが何処なのか特定できないし、私の身になにが起こったのかも知ることも出来ない。

唯「覚えてるムギちゃん、みんなで始めてライブをした時」

唯「あの時凄く楽しかったね」

唯「ムギちゃん聞こえてる?」

唯「私の名前を呼んで?一緒に家に帰ろ?ねぇ?」

131: 2012/10/04(木) 16:27:35.13 ID:HCemE3680
唯「ムギちゃん……」

唯ちゃんの柔らかな手の感触。
湿った声が私を悲しい気持ちにさせる。

私の身に何が起こったのか分からないけど、きっととんでもない事が起きたのだろう。

唯「ねぇ……ムギちゃんってば……」

ごめんなさい唯ちゃん。
声が出ないの。

唯「ムギちゃん言ってたよね。ずっと一緒だって……」

唯「ずっと一緒だって約束したよね」

133: 2012/10/04(木) 16:35:05.72 ID:HCemE3680
私は唯ちゃんをあまり悲しませたく無い。

だから、もうこの未来は私にとっての嫌な未来だ。

心の中で強く祈った。

こんな未来は嫌だと……私は望んでいないと。

今まで言葉に出して未来を否定してきたから、あの木の前に戻れるか不安だったけど、気が付くと私はあの木の前にいた。


134: 2012/10/04(木) 16:39:18.14 ID:HCemE3680
体は動く、目も見えるようになった。

紬「声も出せる」

なんで、なんで私が見る未来は嫌な未来ばっかりなのか……。

私が望んでる未来とは全く逆の未来ばかり……神は私を嫌ってるの?

また木に触れる。

未来へタイムスリップする。

未来を否定する。

また木に触れる。

未来へタイムスリップする。

未来を否定する。

135: 2012/10/04(木) 16:42:07.86 ID:HCemE3680
ある未来では梓ちゃんが通り魔に殺された。

ある未来では唯ちゃんがトラックに轢かれて氏んだ。

ある未来では私のお父様とお母様が氏んだ。

ある未来では菫は……ある未来では澪ちゃんとりっちゃんが……ある未来ではある未来ではある未来ではある未来ではある未来では……。

137: 2012/10/04(木) 16:51:04.62 ID:HCemE3680
一つ未来を否定するとさらに嫌な未来が私を待っている。

思えば、最初に見た未来。

あれが、人生の中で一番の自然な未来なのかもしれない。

私はそれを否定してしまったから、良いな未来は訪れずに、嫌な未来ばかりが訪れる。

私は見上げた。
この不自然な大きな木。

この木は未来を見る事の出来る不思議な木。

樹枝のように広がった未来は今はたった一つだけ、そしてこの未来も私が否定すれば結晶のように固まった未来もすぐに折れる。

139: 2012/10/04(木) 16:56:34.85 ID:HCemE3680
今度こそ私に楽しい未来を、私が望んだ未来をみんなが幸せな未来をお願い。

紬「お願い……」

両手を木に強く押し当てた。

しかし、木に触っても何も起きない。

紬「な、なんでなの?」

もう私は未来を見る事が出来ないの?

手の平を強く木に押し付けた。

木が大きく揺れる。

140: 2012/10/04(木) 17:00:38.84 ID:HCemE3680
唯「わぁームギちゃんすごーい」

紬「……唯ちゃん?」

梓「あんな大きな木を揺らすなんてドンだけ力持ちなんですか」

紬「梓ちゃんも!」

律「私と澪もいるぞー」

澪「ごめんな。ちょっと遅くなって」

紬「りっちゃんと澪ちゃん!」

唯「じゃあさっそくピクニックしよっかー」

141: 2012/10/04(木) 17:06:13.98 ID:HCemE3680
紬「ピクニック?」

律「もー忘れたのか~みんなで20歳のお祝いにピクニックしようって言ったじゃん」

紬「20歳?」

すぐにハッとした。
私はもうタイムスリップしていた。

場所が変わらないからタイムスリップしていないと思い込んでたけど、もうしていたんだ。

紬「そ、そうだったわね。ね、早くピクニックしよ?ね?」

143: 2012/10/04(木) 17:12:37.25 ID:HCemE3680
・・・・・・・・

澪「このサンドウィッチうまいなー誰が作ったんだ?」

律「わったしー!」

澪「なんだ律が作ったのか」

律「なんだとはなんだー!」

紬「うふふ、澪ちゃんとりっちゃん仲良しね~」

澪&律「どこが!」

唯「あはは息ピッタリー!」

梓「モグモグモグモグモグモグ」

紬「たい焼き美味しい?」

梓「ひぁい!モグモグモグモグモグモグ」

144: 2012/10/04(木) 17:17:24.90 ID:HCemE3680
律「それより、本当にこの木はでっかいよなー」

紬「えぇ、そうね~」

唯「でも枝が一本しかないよ?」

澪「ちょっと淋しいな……」

梓「はい、私達色々この木にお世話になりましたからねー」

紬「えっ?」

唯「ほんとだよー」

澪「ムギから聞いた時、最初は半信半疑だったけどな。未来が見れる木なんて」


146: 2012/10/04(木) 17:23:54.66 ID:HCemE3680
紬「澪ちゃんどうしてその事知ってるの?」

澪「とうしてってさっきも言ったじゃないか、ムギから教えて貰ったって」

紬「私から?」

律「なんだームギまた忘れたのかー?」

梓「モグモグモグモグモグモグ」

唯「もうあずにゃん私のたい焼きも残しといてねー」

律「しっかしーみんな殆ど同じ未来だったよなー」

148: 2012/10/04(木) 17:30:34.21 ID:HCemE3680
唯「一つ目の未来は私達がみんな自然と会わなくなるって未来だったよねぇー」

梓「モグモグモグモグモグモグ」

澪「まぁ一番マシな未来だし、一番自然な未来だよな」

律「二番目の未来は私達がアイドルになった未来だったよな。一番花があるけど実は……って奴」

紬「ちょっと待ってちょっと待って、ほんとに私が見た未来と同じ未来。なんで知ってるの?」

澪「だから言ったじゃないか、みんな殆ど同じ未来を見てたって」

紬「みんな同じ未来を見ていた?……じゃあ三番目の未来は?」

150: 2012/10/04(木) 17:35:37.79 ID:HCemE3680
律「私はムギと一緒に海に行く未来」

紬「一緒だ……でも他のみんなは?確か氏んだって……」

唯「うん、私や澪ちゃんあずにゃんは五人で海に行こうって約束するけど病気で氏んじゃう未来だよ」

梓「モグモグモグモグモグモグ」

澪「みんな病気だなんてビックリしたよな」

紬「じゃあ次の未来は?」

梓「ごくんっ、それちょっと複雑なんですよねー」

151: 2012/10/04(木) 17:40:56.51 ID:HCemE3680
紬「複雑?」

律「ムギが人を頃すけどその頃した人が澪を頃した人なんだ」

梓「復讐って奴です」

唯「私達は証拠隠滅を手伝うけど、結局は警察にバレて違う刑務所にそれぞれ入れられるんだぁ」

紬「そ、そう……じゃあ次の夢は……」

澪「ムギが植物人間になっちゃうんだ……」

律「そのムギをみんなで看病するって未来だよ」

153: 2012/10/04(木) 17:46:39.84 ID:HCemE3680
紬「みんな……みんな同じ未来。いや、澪ちゃんりっちゃん梓ちゃん唯ちゃん、私達が見た未来はどこかでみんなと繋がっている……」

澪「いや、一つだけ繋がってない未来があるぞ」

紬「一つだけ……あ!」

梓「最初の未来です。最初の未来だけ、みんな繋がってない」

唯「きっとあの未来を見た後、みんな同じ事を強く願ったんだよ」

紬「ずっとみんなと仲良くいたい……」

梓「そう、みんなが強くそう思ってしまったから私達が見続けた未来はどこかでみんなと繋がっている未来になったと……私はそう考えてます」


155: 2012/10/04(木) 17:58:44.30 ID:HCemE3680
今までみた未来は私の私だけの未来じゃない……。

最初の未来除いて全て私達五人の未来。

私にとっては、今も未来だけど……。
この未来はきっと、私がみんなにこの不思議な木を教えてみんなタイムスリップを経験しちゃった未来。

20歳になってもみんなでピクニックするぐらい仲良しな未来。

きっと、これから先もみんなと一緒にいるだろう。

何故だか分からないけど、それだけは確信が持てた。

紬「みんなもう時間も時間だし帰りましょっか!」

156: 2012/10/04(木) 18:04:31.76 ID:HCemE3680
・・・・・・・・

私達はバスに揺られている。

みんな楽しそうにお喋りをしている。

私はこの未来を大切にして行こうと思う。

これからもずっとみんなと仲良く出来れば私は何も望まない。

未来は樹枝のように広がり結晶のように固まり結して折れる事がない。

今まで私は様々な未来を折って来たけど、この未来だけはこの未来だけは結して折ってはいけない。

これからもみんなと楽しい未来を築いて行こう。

そう、ずっとみんなと……一緒。

159: 2012/10/04(木) 18:18:17.29 ID:HCemE3680
私の意識はどこかに行った。

大きな衝撃。

私や唯ちゃん達はガラスの破片を被った。

そのガラスの破片は梓ちゃんの喉を引き裂き辺りに鮮血が飛び散る。

私の目は、はっきりとそれを捕らえた。

また衝撃。

今度はバスが大きく回転する。

ぐるりぐるりと回転し止まる。

唯ちゃんや澪ちゃんは頭から血を流して倒れている。

りっちゃんは窓から外へ投げ出されバスの下敷きになっている。

160: 2012/10/04(木) 18:21:47.22 ID:HCemE3680
嘘だ……。

さっきまで、楽しくお喋りをしていたのに、やっと悲惨な未来から開放されたのにこんなのあんまりだ。

みんなが……みんなが氏んでしまった。

紬「嘘よ……こんなの嘘よ!!!」

叫んだ。

紬「こんな未来嘘よ!!!嫌だみんな……嘘よこんな未来嫌だ!!!」

気が付くと私はあの木があった場所に立っていた。

162: 2012/10/04(木) 18:24:21.44 ID:HCemE3680
紬「はぁはぁはぁ……」

額からは脂汗。
背中も汗でグッショリと濡れている。

まるで悪い夢を見ていたみたいだ。

しかし、これは夢なんかじゃない。

私の……いや、私達の未来。

あの大きな木はいつの間にか無くなっており、私は未来を知る術を失ってしまった。

164: 2012/10/04(木) 18:28:06.90 ID:HCemE3680
私は恐ろしい考えが浮かんだ。
浮かんでしまった。

この木は私に未来を知らせてくれる。

そう未来を知らせてくれる。

その未来を知らせてくれる木が無くなった。

私は自ら自分の未来を消してしまった。

最後の枝を折ってしまった。

私には未来が無くなった。

つまり……もう私には未来が無い。

165: 2012/10/04(木) 18:30:54.96 ID:HCemE3680
未来を失う。

それはつまり……氏ぬ。

私は自分で自分を頃していた。

徐々に頃していたんだ。

様々な可能性を自分から潰していたんだ。

未来を否定するたびに私は自分で自分の首を絞めていた。

ゆっくりと力を込めながら……。

167: 2012/10/04(木) 18:37:47.91 ID:HCemE3680
それから、私は逃げた。

一刻も早くこの場から逃げたしたかった。

氏神が未来が無い私を殺そうと追いかけてる。

そんな気がしてならなかった。

助けて、誰か……助けて。

願いは虚しく最後に聞こえたのは車のクラクションの音だった。

170: 2012/10/04(木) 18:45:12.40 ID:HCemE3680
・・・・・・・・

律「なぁ……聞こえてるかムギ」

唯「きっと聞こえてる筈だよ」

梓「これお供え物のたい焼きです。良かったらどうぞ」

澪「今まで楽しかったよなムギ。お前がいない放課後ティータイムはティーの部分が抜けて放課後タイムになってるよ」

173: 2012/10/04(木) 18:49:10.24 ID:HCemE3680
律「あぁ、ずっと時が止まったままだよ」

澪「…………私達五人ずっと仲良しだったよな」

唯「うん!思えばムギちゃんがいたからずっと仲良しだったんだと思う」

梓「ですね……」

澪「そっちは楽しいか?元気にやってるか?私達ももうすぐ逝くかもな」

律「だってもう60歳になるもんな……」

174: 2012/10/04(木) 18:53:37.67 ID:HCemE3680
唯「でもムギちゃんやみんなと一緒に入れて楽しい人生だった。未だにムギちゃんが氏んで一年目経つなんて信じられないよ……」

梓「私、たまにムギ先輩が紅茶持って来そうな気がしてワクワクします」

律「そう言えばムギ?お前が言っていた未来が見える木だっけっか?今年は綺麗な桜を咲かせてるぞ」

澪「あぁ、みんなでお花見もしたよ。ほらここからでも見えるだろ。ムギ」


178: 2012/10/04(木) 19:03:46.74 ID:HCemE3680
唯「そう言えばあの時、ムギちゃんは言ってたよね。自分で自分の未来を消してしまったって、だからもうすぐ氏ぬかも知れないって」

梓「あぁ……車に轢かれた時ですか随分と懐かしい話しますね」

律「でもムギの家の人達は異常だったよなーかすり傷で入院させるだなんて」

澪「そんぐらい心配だったんだろ」

唯「ムギちゃんが車に轢かれた時ぐらいだっけ、あそこの木が急激に成長し始めたのって」

律「最初はあっこ何にも無かったのになーいきなり木が生えてくるんだもん。ビックリしたよ」

180: 2012/10/04(木) 19:08:55.14 ID:HCemE3680
唯「ムギちゃんその木を見た時、凄く喜んでたよね。私の未来はまだ終わっていなかったって、これから私自信で幸せな未来を作っていくんだって」

律「あ、あぁ……そー言えばそんな事言ってたなぁ」

澪「それから、大学卒業して就活で……みんなが忙しくてもムギだけは何とか私達に知らせてくれたよな。梓が浪人したから励ましに行こうとか」

梓「そんなこともありましたねぇー」

181: 2012/10/04(木) 19:14:15.27 ID:HCemE3680
律「今思えば、私達が40年間こうしてずっと仲良くいれるのもムギのおかげだよ」

梓「ムギ先輩ありがとうございます!」

唯「ありがとうムギちゃん」

澪「ありがとなムギ」

唯「それじゃ私達そろそろ行くね。また来るよ」

澪「うん、じゃあなムギ」

梓「さよならです」

律「じゃーなームギ!」

184: 2012/10/04(木) 19:22:36.02 ID:HCemE3680
あの大きな木には不思議な力があった。

人に未来を見せ人に未来を選択させる力があった。

私はその木の力を使ったけど、未来を選ぶ事は出来なかった。

あの日、木が無くなったと思ったらまた生えて来た時、私は新しい未来への可能性を見た。

未来は選択するんじゃなくて作る物。

未来は樹枝のように広がり様々な可能性を秘めている。

その未来は結晶のように固まり結して折れない。

もう終わってしまったけど私のこの人生は誰にも折れることができない素晴らしい人生だった。



END

185: 2012/10/04(木) 19:24:58.24
乙!
遠回り?したけど幸せになれてよかった

186: 2012/10/04(木) 19:25:00.03

色々ひやひやした

188: 2012/10/04(木) 19:27:37.96
おつー

引用元: 紬「Dendrite」