1: 2020/11/27(金) 18:02:07.216
男「スマホに映像が送られてきたと思ったら……なんだこれは」

DQN『このお城がなんだか分かるゥ~?』

男「まさか……」

DQN『魔王城で~す!』

女『今まで隠しててすまない……我々二人はずっと魔王軍と戦い続けてきたのだ』

男「なんだってぇ!?」

DQN『せめて最後の戦いぐらい見てもらいたくて、リアルタイム映像を送ってま~す!』

男「なんてこった……!」

6: 2020/11/27(金) 18:05:26.753
男「なんで!? なんで二人が魔王軍と……!」

女『私の家系は実は勇者の一族でな……』

女『生まれながらにして、魔王と戦うことを運命づけられてきたのだ』

男「だからってなにも君が……!」

女『血には逆らえぬ。宿命とはそういうものだ』

男「……!」

DQN『お前が止めたい気持ちも分かる。だが、俺たちは止まるわけにはいかねえんだ!』

DQN『さあ、魔王城に入るぞ!』

8: 2020/11/27(金) 18:08:08.083
DQN『魔王城は薄暗いでぇ~す! あちこちに不気味な装飾がありまぁ~す!』

女『まったく悪趣味な……』

魔物A『おい……侵入者だぜぇ!』

魔物B『八つ裂きにしてやる!』

男「魔物がたくさんいるけど大丈夫か……?」

女『問題ない。はあああああっ!』

ザシュッ! ズバッ! ザンッ!

男「つ、強い!」

18: 2020/11/27(金) 18:11:27.579
デーモン『ガアアッ!』ズバッ!

女『でやっ!』ズバッ!

デーモン『グゥゥ……』ズシン…

女『傷を負ってしまったか……』

DQN『問題ない、すぐ治す! 癒やしの光よ……』パァァァ…

男「DQNヒーラーかよ!」

DQN『これでも聖職者の家系なんでな』

男「なんでグレたんだよ」

DQN『お前の彼女をキズモノにはさせねえぜ!』

男「上手いこといいやがって」

21: 2020/11/27(金) 18:14:04.561
女『だあっ!』ザンッ!

女『であっ!』ザシュッ!

DQN『癒やしの光よ……』パァァァ…

女『む、明らかに今までとは違う扉がある』

DQN『すげえ魔力を感じるぜ……』

男「気をつけろ! 強敵がいるはずだ!」

23: 2020/11/27(金) 18:17:11.807
≪土の四天王・ゴーレム≫

ゴーレム『来たか、勇者ども』

ゴーレム『捻り潰してくれるわァ!』

女『ふん、そうはいくか!』チャキッ

女『でやぁぁぁっ!』

ザンッ!

DQN『腕を斬り落としたぜ! これで勝負ありだ!』

男「いや……」

ゴーレム『グフフフ……』ズボッ

女『腕が生えてきただと!?』

25: 2020/11/27(金) 18:17:47.971
DQN系ヒーラーとは新しい

26: 2020/11/27(金) 18:20:08.356
ゴーレム『アースパンチ!』

ドゴォッ!

女『ぐっ!』

女『でやぁぁぁぁぁっ!』

ザシュッ! ズバッ! ザンッ!

女『ダメだ、いくら斬っても再生されてしまう!』

DQN『こんなのどう倒せばいいんだ!?』

男(おいおい、胸にこれ見よがしに点滅してるコアがあるじゃないか!)

29: 2020/11/27(金) 18:23:33.864
男「胸だ! 胸のコアを狙うんだ!」

女『そうか、胸か!』

女『たああああっ!』

ザシュッ!

ゴーレム『グオオッ! グゴオオオオオ……!』サラサラサラ…

DQN『ゴーレムが土に還っていく……』

女『ありがとう、助かった!』

男「いやぁ、どういたしまして」

32: 2020/11/27(金) 18:26:50.223
≪水の四天王・ウォータードラゴン≫

ドラゴン『よくぞここまでたどり着いた……』

ドラゴン『褒美に我が水のブレスを喰らうがよい!』

ブシュゥゥゥゥゥゥッ!!!

女『うわあああああっ……!』

DQN『すぐ回復するぜ!』パァァァ…

男(水で濡れた彼女もすげえ色っぽい……って俺はなに考えてんだ!)

33: 2020/11/27(金) 18:29:16.677
女『水のドラゴンなら話は早い!』

女『火属性攻撃で、蒸発させてやる!』

女『火炎斬!』ズバボワァッ!

ドラゴン『ぬ……』

女『火炎斬!』ズバボワァッ!

ドラゴン『勇者とは、この程度かァ!』ブシュゥゥゥゥゥッ!

女『なんだと!? あまり効き目がない!?』

男「そりゃ、水に火ってあまり効き目ないでしょ……」

37: 2020/11/27(金) 18:32:20.572
男「水に効くのはやっぱり雷だ! 雷で攻撃するんだ!」

女『おおっ、なるほど!』

女『雷鳴斬!』ズババリィッ!

ドラゴン『ぐおおっ!?』

女『トドメだ! 雷鳴斬!』ズババリィッ!

ドラゴン『ぐはぁっ……!』ズズン…

DQN『よっしゃ、四天王二人目も倒せたぜ!』

男「ふぅ……よかったよかった」

40: 2020/11/27(金) 18:35:48.366
≪風の四天王・トルネード≫

女『なんだこいつは……』

DQN『竜巻じゃねえか!』

トルネード『クゥ~ックックック!』ビュゴォォォォォッ

トルネード『オレは竜巻が魔物化した存在……切り裂いてくれるわ!』

ギュオオオオオオッ!!!

女『ぐあああっ!』

DQN『ぐおおおっ!』

男「なんていう切れ味だ!」

41: 2020/11/27(金) 18:41:26.638
女『だああああっ!』

バチンッ!

女『ぐああっ!?』

トルネード『クゥ~ックック! 剣など効くか!』

女『ダメだ! まとも斬りかかってもハネ飛ばされてしまう!』

DQN『こんなの勝てっこねえよ!』

男「……渦だ」

DQN『え?』

男「台風でいうところの“目”……渦の中心に飛び込むんだ!」

42: 2020/11/27(金) 18:43:19.790
女『よし……』ダッ

トルネード『トドメだ! まとめて切り刻んでやる!』ギュオオオオッ!

女『ハアッ!』バッ

女『竜巻の中心へ――』

トルネード『し、しまった中に飛び込まれた!』

女『内部から貴様を散らせてやる! 乱れ斬り! でやぁぁぁぁぁっ!』ズババババッ!

トルネード『ぐわああああっ……!』

DQN『よっしゃあ!』

男「……なんとかなったか」

43: 2020/11/27(金) 18:45:25.413
≪火の四天王・ダークフレイム≫

フレイム『……』

女『これが……最後の四天王?』

DQN『ただの黒い炎じゃねえか』

男「そいつの火力は凄まじいぞ! 甘く見るな!」

フレイム『……』ゴォワァァァァッ!

女『あづっ!』

DQN『なんだこりゃあっ!?』

45: 2020/11/27(金) 18:49:11.012
女『だが、炎なら水で攻撃すればいい! 水流斬!』ザバズバァッ!

フレイム『……』ゴォワァァァァッ!

女『なんという高熱! 水などとても通用しない!』

DQN『水がダメならどうやって倒せばいいんだよ!?』

男「火が燃えるには酸素が必要だ」

男「その部屋を密室にして、酸素を遮断してみるんだ!」

女『分かった! やってみる!』

女『たあっ! どりゃあっ!』ズバッ! ザンッ!

ズズゥン…

47: 2020/11/27(金) 18:52:26.958
女『出入り口を塞ぎ、完全に空気を遮断したが……』

フレイム『……』

フレイム『……』ジジ…

フレイム『……』ボボ…ボボボ…

フレイム『……』ジュゥゥゥ…

女『やった! 酸素がなくなったことで燃え尽きたようだ!』

男「作戦大成功!」

48: 2020/11/27(金) 18:54:29.377
男「ところで……酸素がなくなったのに平気なの?」

女『私は呼吸しなくても一時間は生きていける』

男「さすが勇者……」

DQN『……』ピクピク

男「だけどDQNはヤバイ! すぐ外に連れ出してくれ!」

女『しっかりしろ、DQN!』

DQN『うう……バイクの3ケツはいいけど、酸欠はゴメンだぜ……』

51: 2020/11/27(金) 18:57:12.225
女『ついに最深部に到着したな』

DQN『ああ、ここに魔王がいる!』

男「……」

女『今こそ魔王を倒し、宿命を断つ時だ!』

DQN『おう!』

男「……」

女『魔王覚悟ォ!!!』バァンッ!

53: 2020/11/27(金) 19:00:11.213
男「よく来たな」

女「あれ、なんで……?」

DQN「どうしてお前がここに……!?」

男「まだ分からんのか。勘が鈍い奴らだ……」

男「俺が魔王だからだよ!」

女「なんだってぇ!?」

DQN「信じらんねえ……!」

55: 2020/11/27(金) 19:05:08.931
男「お前らが勇者とその相棒ってことを俺に隠してたように、俺も自分が魔王ってことを隠してたってことだ」

DQN「ウソだ……!」

DQN「だってお前、スマホを通じて四天王を倒すのに協力してくれたじゃねえか!」

男「あんなもん、俺がお前らを倒す楽しみがなくなるからに決まってるだろうが」

男「さあ、行くぞ! 我が魔力を味わうがよい!」

ズガガガガァァァァンッ!!!

女「ぐあっ!」

DQN「くうっ!?」

56: 2020/11/27(金) 19:08:25.571
男「フハハハーッ! 俺を倒さなきゃ世界は闇に包まれるぞ!」

男「魔王はいくらでも魔族を生み出せるんだからな! 四天王だって蘇らせてやる!」

女「お前は大切な人だったが……魔王ということなら容赦はできない!」

女「覚悟ッ!」

ズバッ!

男「うぐっ……!」ヨロッ…

女「……!」

女「すまぬっ!!!」ダッ

男(これでいい……)

DQN「!」

57: 2020/11/27(金) 19:10:26.300
DQN「やめろ!」ガシッ

女「DQN、なぜ止める!?」

男「そうだ……戦いの邪魔をするな……」

DQN「俺は見たぜ……お前が一瞬微笑むのを」

男「う……」

DQN「お前、もしかして……倒されたがってるんじゃないのか?」

男「……!」

58: 2020/11/27(金) 19:13:59.229
DQN「いやもっというと、お前そのものは魔王じゃない」

DQN「上手くいえねえが、お前の中に魔王がいるんじゃ……?」

男「DQNのくせに鋭いじゃないか……。そう、その通りだよ」

男「この俺の中には魔王が巣食っているんだ」

女「どういうことだ?」

男「お前が勇者の血を引くように、どうやら俺も人でありながら、遠い遠い祖先が魔王らしくてな……」

男「大昔に氏んだ魔王が何十もの世代を経て、血を通じて力を蓄え、ついに俺の中で蘇りやがったんだ」

男「魔王は少しずつ少しずつ俺を侵食していき……魔族を復活させ、こんな城を生み出し……」

男「今だって自由意志があるように見えるが、実際にはかなり行動を制限されてる」

男「気づいた時には自頃すらできないありさまになってしまった」

男「俺を倒せるのは勇者だけ……だから、俺はずっと勇者を待ってたんだ」

男「まさか……お前たちが来るとは思わなかったけど」

59: 2020/11/27(金) 19:17:09.902
男「もし魔王が俺の中で完全に覚醒したら、もはやお前にも勝ち目はない!」

男「だから俺がまだ人であるうちに、頃すしかないんだ!」

男「お前がいったように人は血には逆らえない。宿命を断つにはこれしかないんだ!」

女「……!」

女(私の彼氏は魔王だった……とはいえ乗っ取られてるも同然の状態……)

女(頃したくはない……! しかし、やらねば……!)グッ

男(それでいい!)

DQN「やめろぉ!!!」

61: 2020/11/27(金) 19:20:27.225
DQN「やめてくれぇ……」

DQN「俺は見てるゥ! 今までずっとお前らがデートしたり、愛し合ってた姿を!」

DQN「そんなお前らが頃し合うなんて……俺には耐えられねえよ……」グスッ

男「DQN……」

女「DQN……」

女「そうだな、私にはお前を頃すなど考えられぬ」

女「もしお前が魔王となってしまい、世界が滅ぶとしても、頃すことなどできぬ……」

女「私はとてつもない過ちを犯すところだった……」

63: 2020/11/27(金) 19:23:45.526
男「しかし……!」

女「これでいいんだ」

女「お前が完全に魔王になってしまったら、そうしたら必ず私が倒す」

女「無理だったとしても、私に後悔はない……」

女「私は勇者失格だ。だが、これこそが一人の女としての私の決断だ……」

男「ううっ……俺だって……俺だって……」

男「本当は氏にたくなかったよ……。少しでも長くお前と生きたい……」

64: 2020/11/27(金) 19:26:28.332
男『グオオオオオオオオオオッ!?』

女「!?」

男『ク、クルシイ……! ナンダコノ波動ハァ……!』モクモクモク…

モワモワモワモワモワ…

魔王『ハァ、ハァ、ハァ……』

女「なんだこいつは!?」

男「邪悪を具現化したような……」

DQN「そうか……勇者と魔王という宿命を超えた二人の愛が! 愛の波動がッ!」

DQN「魔王を体内から追い出しやがったんだ!」

65: 2020/11/27(金) 19:29:05.058
魔王『グ……くそっ! こんなことになるとは――』

男「よくも人の体を乗っ取ってくれたな! このヤドカリ野郎!」

女「覚悟しろ!」チャキッ

魔王『ほざけ! たとえ実体がなくとも貴様ら如きィ!』グワッ

ドゴォォォォォォンッ!!!

シュゥゥゥゥゥ…

魔王『フハハハハ! 終わりだ! まとめて消し飛びおったわ!』

66: 2020/11/27(金) 19:32:42.911
男「ありがとう、DQN!」

女「魔王の攻撃が当たった瞬間、回復してくれたとはな!」

DQN「へっ、タイミングバッチリだぜ!」

魔王『なにい!?』

女「さあ、お前もこの剣を持て」

男「うん」ガシッ

魔王『よせ……やめろ!』

女「お前は勇者と魔王……二つの力によって滅ぶのだ!」

男「家賃は……お前の命で払ってもらう!」



ザンッ!!!



魔王『ウギャァァァァ……!』

魔王(実体のない状態で……倒されたら……復活でき、な……い……)ボシュゥゥゥゥゥ…

68: 2020/11/27(金) 19:36:02.531
女「……やったな!」

男「ああ!」

女「……」ウルッ

男「どうしたの?」

女「お前を頃すことにならなくて……本当によかった……」

女「よかったよぉ……生きてるよぉ……!」ギュッ

男「コラコラ、勇者に涙は似合わないぞ」

女「もう……勇者じゃないもん……」

ギュッ…

69: 2020/11/27(金) 19:38:40.742
DQN「……」

DQN「おっとこれ以上見てるわけにはいかねえな!」

DQN「俺は一人でお城の外に出るぜ」ザッ…








― 完 ―

70: 2020/11/27(金) 19:42:55.850

面白かったよ

引用元: DQN「イェ~イ見てるゥ~? 今からお前の彼女と一緒にこのお城に入りま~すw」