1: 2012/06/21(木) 19:22:57.78 ID:sUzpsyFW0

ロラン「ディアナ様、おはようございます」

ディアナ「おはようロラン」

ロラン「朝食ができていますよ」

ディアナ「この匂いは…ミルクスープかしら?」

ロラン「はい。まだまだ朝は冷え込みますから温かいものをと」

ディアナ「ありがとう。いただくわ」

2: 2012/06/21(木) 19:26:11.95 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「ごちそうさま。少し辛かったけど、美味しかったわね」

ロラン「すいません…なにしろ不慣れなもので……」

ディアナ「いえ、気にしないで」

ロラン「ハイム家の使用人の時代は台所を任されたこと、有りませんでしたから……」

ディアナ「そうだったの」

ロラン「もっぱら機械専門でしたよ」

5: 2012/06/21(木) 19:29:45.44 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「ところで、今日は何をするつもりかしら?」

ロラン「今日は薪を拾おうかと思います」

ディアナ「……まき?」

ロラン「はい」

ディアナ「ああ。暖炉の薪ですね」

ロラン「そろそろ予備が無くなりそうですし。春は近いと言えどまだまだ寒いですからね」

8: 2012/06/21(木) 19:33:57.65 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「しかし、本当に地球の環境にはいつも驚かされます。月ではこんな寒さなかなかお目にかかれませんから」

ロラン「僕の生まれ故郷は一年中暖かったので、地球に来て始めての冬はすごく驚きましたよ」

ディアナ「月に住んでいる民にも早くこの地球の自然の素晴らしさを味わって貰いたいと思います」

ロラン「人として生きることの喜びってやつですか?」

ディアナ「はい。月の環境は恵まれていますから、生きれることを当たり前だと思ってしまう」

9: 2012/06/21(木) 19:36:53.00 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「だけど、地球に来たらその価値観は壊されるでしょう。私がそうであったように」

ロラン「地球の環境って月の様には上手く行きませんからね」

ディアナ「そうなのです。大変だからこそ生を実感できるのです」

ロラン「確かに暖をとる為にわざわざ薪を拾って汗をかくなんて月では考えられませんよね」

ディアナ「でしょう。私はそれが生きることだと思うのです」

10: 2012/06/21(木) 19:42:22.93 ID:sUzpsyFW0

ロラン「やはりディアナ様だ。さすがですね」

コホン

ディアナ「と、ところでロラン?」

ロラン「はい?」

ディアナ「そ、その、いつまでそうやって敬語を使うつもりなのでしょうか?」

13: 2012/06/21(木) 19:56:17.21 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「一緒に住んでるのですから、私達は最早家族同然だと思います。普通、家族同士で敬語なんか使わないでしょう?」

ロラン「はい…仰るとおりですけど…」

ディアナ「だから、その、えっと……」

ロラン「?」

ディアナ「…ディアナでよいです」

ロラン「え?」

ディアナ「こ、これからはディアナと呼んで欲しいと言っているのです!」

17: 2012/06/21(木) 20:02:56.80 ID:sUzpsyFW0

ロラン「えぇっ!?」

ディアナ「さあ!ロラン!言うのです!今すぐ!」

ロラン「いやいや!無理ですよ!」

ディアナ「無理ではありません。ただ私の名前を呟くだけで良いのです」

ロラン「うぅ…」

ディアナ「さあ!潔く男らしい決断を!」

18: 2012/06/21(木) 20:06:48.90 ID:sUzpsyFW0

ロラン「わ、分かりましたよ…」

ディアナ「よろしい。さ、どうぞ?」

ロラン「ディ、ディアナ」

ディアナ「は、はい!」パァッ

ロラン「……様」

ディアナ「…随分と意気地が無いようですね。ロラン」

20: 2012/06/21(木) 20:10:54.80 ID:sUzpsyFW0

ロラン「やっぱり無理ですよ。僕ごときがディアナ様を呼び捨てにするなんて!」

ディアナ「すぐにそう呼べとは言いません。ただ、私がそう思っていることは覚えておいて」

ロラン「は、はい!」

ディアナ「ふふっ。よいお返事です」

ロラン「あ、もうこんな時間。そろそろ薪を拾ってきます。昼から雨が降るみたいですから」

ディアナ「私も手伝いたいので付いていきます」

22: 2012/06/21(木) 20:15:47.24 ID:sUzpsyFW0

ロラン「ダメですよ。外はまだ寒いんですから」

ディアナ「良いではないですか。厚着をすれば問題無いでしょう?」

ロラン「そうですけど……」

ディアナ「さぁさぁ、ボヤボヤしていても時間が経つだけですよ」

ロラン「もお…分かりましたよ……」

ディアナ「ありがとう、ロラン」フフフッ

ロラン「それじゃ行きますよ、ディアナ……様」

ディアナ「…意気地なし」

23: 2012/06/21(木) 20:24:43.99 ID:sUzpsyFW0

ー森ー

ディアナ「寒いですロラン……」ブルブル

ロラン「大丈夫ですよ。薪を拾っているうちに暖かくなってきますから」

ディアナ「なるほど…」

ロラン「雲行きがあやしくなってきましたね。ぱぱっと拾っちゃいましょう」

29: 2012/06/21(木) 20:37:58.97 ID:sUzpsyFW0

ロラン「ふぅ…ずいぶんと拾いましたね」

ディアナ「ロランの言った通り、身体は暖まりましたよ」

ロラン「あ、タオル使ってください。汗かいたままだと冷えますから」

ディアナ「ありがとう。それにしても何度見ても地球の自然は雄大で素晴らしいわね」

ロラン「冬が終わって、夏が来たらもっとすごいですよ」

ディアナ「もっと?それは楽しみですね」

ロラン「あっという間に夏は来ますよ」

36: 2012/06/21(木) 20:43:23.73 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「こんなに美しい自然でも地球の人はどんどん破壊していると聞きます」

ロラン「地球人にはこの自然は有って当り前のものですから、きっと大切さなんて分かりませんよ」

ディアナ「1度失ってみないと分からないのが人間ですからね。しかし、それでは悲しすぎる」

ロラン「大丈夫です。地球人の中にもこの自然の大切さに気づく人もきっと出てきますよ」

ディアナ「そうですね。そうやって信じることができるのも人間だわ」

39: 2012/06/21(木) 20:59:54.19 ID:sUzpsyFW0

ポツポツポツ……

サァー

ロラン「ついに雨が降ってきてしまいました…」

ディアナ「山の天気は変わりやすいというのも本当なのですね」

ロラン「感心してないで、ほら、濡れちゃいますよ!僕の上着着てください!」

ディアナ「ありがとう」

ロラン「そこの小屋で雨宿りしましょう!」

ガシッ

ディアナ「あっ……」

ロラン「走りますよ!」

ディアナ「(…ロランの手は大きいのですね)」フフフッ

40: 2012/06/21(木) 21:05:19.68 ID:sUzpsyFW0

ザァー…

ー山小屋ー

ロラン「ふぅ、参った参った。ディアナ様、お姿濡れていませんか?」

ディアナ「いえ、ロランのお陰で大丈夫」

ロラン「良かった…」

ディアナ「……………」

ロラン「どうかしましたか?」

ディアナ「その…手を握ったままなのですが……///」

42: 2012/06/21(木) 21:11:46.13 ID:sUzpsyFW0

ザァー……

ロラン「わわっ!すいません!」

パッ

ディアナ「あっ……」

ロラン「失礼しました…ディアナ様を濡らしたらいけないと必氏で……」

ディアナ「いいえ、ありがとうロラン」

ロラン「あうぅ……」

44: 2012/06/21(木) 21:17:04.37 ID:sUzpsyFW0

ザァー……

ディアナ「本当に気にしないで。それに、私はロランと手が繋げて嬉しかったですよ?」

ロラン「…えっ」

ディアナ「ロランは?ロランはどうでしたか?」

ロラン「ぼ、僕だって嬉しかったですよ。憧れのディアナ様と手を繋げたんですから…」

ディアナ「それは私が月の女王のディアナだからですか?それとも……」

ザァー… ゴロゴロ……

46: 2012/06/21(木) 21:24:13.34 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「私を一人の女として見てくれているからですか?」

ロラン「えっと……」

ディアナ「……ロラン?」

ロラン「僕は……」

ディアナ「どうなのですか?」

ロラン「僕は……へ、へ…」

ディアナ「へ?」

ヘクション!

47: 2012/06/21(木) 21:27:41.35 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「大丈夫ですか?」

ロラン「すいません…ちょっと身体が冷えてしまって……」ガタガタガタ

ディアナ「可哀想に…そんなに震えて……ごめんなさい、私を庇ったせいで」シュン

ロラン「いえ、僕が好きでやったことですから」

ディアナ「ロラン、こっちへいらっしゃい」

48: 2012/06/21(木) 21:33:00.44 ID:sUzpsyFW0

ロラン「へ?」

ギュッ

ディアナ「ほら、こうしたら温かいでしょう?」

ロラン「わわっ!ダメですよディアナ様!濡れてしまいます!」

ディアナ「ダメではありません。それに、私にとってはロランが風邪を引く方がダメです」

ロラン「うぅ……」

ディアナ「ここは大人しく私の言うことをお聞きなさい」

ロラン「はい……」

50: 2012/06/21(木) 21:38:42.71 ID:sUzpsyFW0

ザァー……

ディアナ「とりあえず、座って雨があがるのを待ちましょうか」

ロラン「そうですね、薪拾いで疲れましたし」

スッ

ディアナ「………」

ロラン「………」

ザァー………

54: 2012/06/21(木) 21:41:30.34 ID:sUzpsyFW0

ザァー………

ディアナ「不思議ですね」

ロラン「何がですか?」

ディアナ「雨の音が聞こえるのに、とても静かに感じて心が休まる」

ロラン「確かに、雨の音以外聞こえないから逆に静かに感じますね」

ディアナ「思えば地球に降りてからこんなに心が落ち着くのは初めてかもしれません」

ロラン「ずっと戦ってばかりでしたから、しょうがないですよ」

ディアナ「でも今は、こんなにゆっくりとできています。みんなロランのお陰です」

56: 2012/06/21(木) 21:48:56.88 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「本当に私の今の状況はとても幸せよ。ありがとう」

ロラン「やめてください…畏れ多いです……」

ディアナ「ロランが私に付いてきてくれると返事してくれた時、私は天にも昇りそうな気持ちでした」

ロラン「僕だって、憧れのディアナ様に看取り役として選んでもらって嬉しかったですよ」

ディアナ「……私とロランの嬉しいとでは大きな違いがあると思います」

59: 2012/06/21(木) 21:53:50.20 ID:sUzpsyFW0

ロラン「え…ディアナ様、それはいったいどういう意味で……」

ディアナ「……雨があがったようですね」

ロラン「………」

ディアナ「また降りださないうちに早く帰りましょう、ロラン」

ロラン「はい……」

…………………

62: 2012/06/21(木) 21:59:40.54 ID:sUzpsyFW0

…………………

ミーンミーンミーン………

ロラン「おはようございます、ディアナ様。今日も暑いですね」

ディアナ「おはよう、ロラン。本当に参ってしまうような暑さね」

ロラン「今日は冷たいスープに挑戦してみました」

ディアナ「まあ、それは楽しみだわ」

64: 2012/06/21(木) 22:04:17.75 ID:sUzpsyFW0

ミーンミーンミーンミーン……

ディアナ「それにしてもすごい鳴き声」

ロラン「これが地球の夏の風物詩ですよ」

ディアナ「この音も彼らが生きている証なのだと考えると可愛く思えますね」フフフッ

ロラン「でも、今鳴いている蝉は8日以内に氏んでしまうそうです」

ディアナ「あら、そうなの……」

67: 2012/06/21(木) 22:08:34.02 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「こんなに元気に鳴いているのに命は短いなんて……」

ロラン「きっと短命な分、必氏で鳴いているんですよ」

ディアナ「……まるで私のようですね」

ロラン「え?」

ディアナ「長いこと土の中で眠っていて、やっとの思いで外に出れたのに、ほんの少ししか生きれない」

69: 2012/06/21(木) 22:09:43.50 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「これって私の人生とそっくりだと思いませんか?」

ロラン「ディアナ様の人生と蝉の生き方……」

ディアナ「はい。月で何千年と眠っていて、やっとの思いで地球に来たというのに、その命は……」

ロラン「やめてください!」

72: 2012/06/21(木) 22:14:08.41 ID:sUzpsyFW0

ロラン「冗談でもそんなことを言うのはやめてください…そんなの……悲しすぎます!」

ディアナ「ロラン……」

ロラン「もしディアナ様がいなくなったら僕は……」

ギュッ

ディアナ「優しい子ね…」

ロラン「………」

ディアナ「私は蝉じゃないもの。きっと長生きしてみせるわ。だから泣きやんで?」

73: 2012/06/21(木) 22:18:31.20 ID:sUzpsyFW0

ロラン「……約束ですよ」グスッ

ディアナ「誓います」

ロラン「へへへ…恥ずかしいところ見られちゃいましたね」

ディアナ「いいえ。格好悪くなんて無いわ。私なんかの為にロランが泣いてくれて嬉しかった」

ロラン「そんな…」

75: 2012/06/21(木) 22:23:00.52 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「こんな女の為に泣いてくれる子が側に居てくれる…とても幸せだわ」

ロラン「きっと泣くのは僕だけじゃないと思いますよ」

ディアナ「え?」

ロラン「ハリー大尉だって、キエルお嬢さんだって、ソシエお嬢さんだってきっと悲しみますよ」

ディアナ「ふふっ。ありがとう、ロラン」

77: 2012/06/21(木) 22:28:12.69 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「ところで今日は何をするつもりかしら?」

ロラン「今日はちょっと街の方に行ってきます」

ディアナ「あら、またですか?最近よく出掛けているような……」

ロラン「ちょ、ちょっと食物が無くなったんですよ!」

ディアナ「……食糧庫はいっぱいでしたが?」

ロラン「えぇ!?あー、えっとぉ……」

ディアナ「…ロラン?」ジトーッ

80: 2012/06/21(木) 22:32:44.20 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「……私も付いて行ってもよろしいですか?」

ロラン「ふえ!?だ、ダメです!」

ディアナ「何故ですか?」

ロラン「えっと…あっ!外は陽射しがキツイですからお身体に障ります!」

ディアナ「………」ジトーッ

ロラン「と、とりあえず行ってきますね!夕飯を作る時間には帰りますから!」

ガチャ!タッタッタッ……

ディアナ「もう。ロランったら……」

81: 2012/06/21(木) 22:37:36.48 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「……最近街に何をしに行ってるのかしら」

ディアナ「いつも何をしに行くか聞いてもはぐらかされるし……」

ディアナ「もしかして、街へ遊びに行っているのかも…」

ディアナ「そうよね、こんなつまらない女と一緒に居ても退屈よね…」

ディアナ「私はロランと一緒に居るだけで楽しいけど、ロランは違うのかしら…」

82: 2012/06/21(木) 22:41:23.55 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「いけない。そんな風に考えてはダメですよね」


ディアナ「ロランを信じないと」

ディアナ「……………」

ディアナ「も、もしかして街に行くというのは嘘で」

ディアナ「本当は……」

ディアナ「本当はソシエさんに会いに行ってるのかも……」

85: 2012/06/21(木) 22:47:35.85 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「そうですよね……」

ディアナ「ロランもソシエさんも互いに思い合っていたのに、私のわがままで二人の仲を引き裂いたようなものですし……」

ディアナ「文句を言える筋合い無いですよね」

ディアナ「もしロランがソシエさんのところに戻りたいなら別に私は……」

ディアナ「ああ!ディアナ・ソレル!あなたはどこまで卑しい女になれるのですか!」

ディアナ「心の底では優しいロランなら絶対に自分を捨てるわけないと思っている……」

ディアナ「うぅっ……」

ミーンミーンミーンミーン……

……………



87: 2012/06/21(木) 22:51:47.95 ID:sUzpsyFW0

リーリーリー…リーリーリー……

ロラン「遅くなってしまった。虫も鳴き始めている…」

ロラン「ただでさえ怪しまれてるのにこれ以上怪しまれたらマズイしな…」

ロラン「とにかく、急がないと!」

タッタッタッ……

89: 2012/06/21(木) 22:55:16.42 ID:sUzpsyFW0

リーリーリー…リーリーリー…

ロラン「ふぅー…やっと着いた……」ハァハァ

ロラン「すぅー。はー。」

ロラン「よし!」

ガチャ

ロラン「ただいま帰りましたー」

ロラン「ってあれ?真っ暗だぞ?」

90: 2012/06/21(木) 23:01:53.18 ID:sUzpsyFW0

ロラン「ディアナ様?いらっしゃるんですか?」

ロラン「いつものお散歩かな…こんなに暗いのに……」

ロラン「ん?なんだこの音…?虫の泣き声と……人の泣き声…?」

ロラン「も、もしかしてお化けぇ!?」ビクビク

ロラン「おーい…居るんですかー?お化けさーん?」

ディアナ「……お化けではありませんよ」

ロラン「うわあぁ!?」

92: 2012/06/21(木) 23:06:42.96 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「……お帰りなさい、ロラン」

ロラン「どうなさったんですかディアナ様!?」

ディアナ「別にどうもしませんよ」

ロラン「こんなに暗いのに灯りもつけないで……今、灯りつけますね」

ディアナ「灯りをつけてはなりません」

ロラン「え?どうしてですか?」

ディアナ「……虫の鳴き声を聴きたいのです」

ロラン「ああ。確かにそういうことなら月の光も有りますし、灯りは要らないですね」

94: 2012/06/21(木) 23:13:01.65 ID:sUzpsyFW0

リーリーリー…リーリーリー……

ロラン「それにしてもビックリしましたよ…何か泣き声も聞こえましたし……」

ディアナ「幻聴ではないですか?」

ロラン「そうかもしれませんね。夏ですし」

ディアナ「ふふふ……」

ロラン「どうかしましたか?」

ディアナ「前にもこんな風に暗い中で耳を傾けていたことがありましたね」

95: 2012/06/21(木) 23:17:47.84 ID:sUzpsyFW0

ロラン「山へ行って急に雨が降って来た時ですね」

ディアナ「この前は雨の音でしたが、今日は虫の音のリサイタルですね」

ロラン「色んな虫の音が重なり合って、オーケストラのように聞こえます」

ディアナ「こんな素晴らしいものを独占できるなんて、私達は幸せ者ですね」

ロラン「月のみんなにも聞かせてあげたいなぁ」

97: 2012/06/21(木) 23:22:10.33 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「……こんなに静かだと、世界に私とロランしか居ないように感じますね」

ロラン「僕とディアナ様だけ?」

ディアナ「ええ。この時間がすごく愛おしいです。できることならこのまま……」

ロラン「時が止まればいいのに」

ディアナ「はい。その通りです」

98: 2012/06/21(木) 23:26:30.71 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「ロランは……」ボソッ

ロラン「はい?」

ディアナ「……ロランは隣に居るのが私で良かったのですか?」

ロラン「どうしたんです?急に…」

ディアナ「本当は…、ソシエさんに居て欲しかったのでは無いですか?」

100: 2012/06/21(木) 23:32:01.58 ID:sUzpsyFW0

ロラン「本当にどうしたんですか?さっきからおかしいですよ」

ディアナ「ロラン、少し私の話を聞いてください」

ロラン「はい…もちろん聞きますけど……」

ディアナ「その……ロランがもしハイム家に戻りたいのなら、私のことは気にせずに……」

ロラン「な、何を言ってるんですかディアナ様!」

101: 2012/06/21(木) 23:35:58.33 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「ロランは私のことを聖人のように扱いますけど、本当の私はそんなに綺麗な人間ではありません」

ロラン「そんなこと……」

ディアナ「こんな話はロランに嫌われるだろうからしたくなかったんですけど、あえてさせてもらいます」

ロラン「………」

ディアナ「私、知っていたんです」

ロラン「…知っていた?何をですか?」

103: 2012/06/21(木) 23:39:12.94 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「ロランがソシエさんのことが好きで、同様にソシエさんもロランが好きだって……私は知っていたんです」

ロラン「………」

ディアナ「でも、私はどうしてもロランをソシエさんに取られたくなかった」

ディアナ「そう考えていたら、悪魔が耳元で囁いたのです」

ディアナ「『ロランを看取り人に選べばいい』と。『優しいロランなら断るはずない』と」

ディアナ「私は、私は本当に狡猾な女なのです」

ディアナ「ロランの傍に居る資格なんて無い……」

105: 2012/06/21(木) 23:43:27.31 ID:sUzpsyFW0

ロラン「……ディアナ様。どうかもうそれくらいにしてください」

ディアナ「本当にごめんなさい…私のわがままで二人の幸せを……」

ロラン「たしかに僕はソシエお嬢さんのことが好きでした」

ディアナ「はい…」

ロラン「でも、僕はやっぱりディアナ様は素晴らしい方だと思います」

106: 2012/06/21(木) 23:45:27.73 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「そんなことありません…私は自分の欲も抑えられないただのディアナ・ソレルです……」

ロラン「欲に忠実なんて人間なんだから当たり前ですよ!」

ディアナ「………」

ロラン「普通の人間は欲のまま動くことに何の反省もしません」

ロラン「でも、ディアナ様はその欲を悔いることができるお方だ」

ロラン「僕はそんなディアナ様と添い遂げられることが幸せでたまりません」

108: 2012/06/21(木) 23:48:55.12 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「ありがとうロラン…私も、すごく幸せです……」

ロラン「あの、ディアナ様…。いや、ディ、ディアナ!」

ディアナ「は、はい!」

ロラン「僕と…、僕と……結婚してください!!!」

ディアナ「!」

110: 2012/06/21(木) 23:51:01.43 ID:sUzpsyFW0

ロラン「こ、これ、け、結婚指輪です」

ディアナ「すごく綺麗なシルバーリング……」

ロラン「実は、街で一番の職人さんに作ってもらっていたんです」

ディアナ「あら?でも、リングが一つしか無いみたいだけど……」

ロラン「恥ずかしい話なんですけど、僕の分を作るにはお金が足りなくて……」

ディアナ「まあ…」

ロラン「とりあえず、ディアナ様の分だけ作ってもらいました」

113: 2012/06/21(木) 23:55:44.58 ID:sUzpsyFW0

ロラン「あの、返事を聞いても良いですか?」

ディアナ「……ロラン・セアックに問います」

ロラン「は、はい!」

ディアナ「ずっと私と一緒に居てくれますか?」

ロラン「ディアナ様と離れることなんて考えたこと有りません」

ディアナ「では、私が氏んでしまった後もあなたは私を愛してくれますか?」

ロラン「はい、ずっとずっとディアナ様と過ごした時間や思い出全てを愛し続けます」

ディアナ「ふふっ。ありがとう、ロラン」

114: 2012/06/21(木) 23:57:56.50 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「では、最後に一つ。指輪を…、はめてくれますか?」

ロラン「! そ、それじゃあ!」

ディアナ「はい。至らないところばかりですが、よろしくお願いします」

ロラン「ユニヴァース!!!!!」

ギュッ

ディアナ「ロ、ロラン、苦しいです」

ロラン「やった!やったぞ!ユニヴァース!ユニヴァース!」

ディアナ「もう、ロランったら…」

116: 2012/06/22(金) 00:01:11.06 ID:loj0rlHx0

リーリーリー…リーリーリー……

ディアナ「ねえ、ロラン」

ロラン「なんですか?」

ディアナ「どうして私はロランのことを好きになったのだと思いますか?」

ロラン「うーん…すいません、分からないです……」

ディアナ「きっと、私の本当の初恋の相手がロランに似た人だったからだと思うんです」

ロラン「本当の初恋の相手……」

118: 2012/06/22(金) 00:03:06.48 ID:sUzpsyFW0

ディアナ「人間などというものは、そんなものなのだろうと思いますか?」

ディアナ「それは、つまらないことなのでしょうか?」

ディアナ「私はそうではないと、みんなに伝えたい」

ディアナ「そしてこれからも、もっといっぱい色んなものを感じていきたい」

ディアナ「ロランとずっと一緒に……」

リーリーリー…リーリーリー……

・・・・・・・・・

119: 2012/06/22(金) 00:05:01.36 ID:sUzpsyFW0

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・


ディアナ「フフフ…」


ロラン「あっ、そこにいらっしゃったんですか。今日のスープは美味しいですよ」


ディアナ「ありがとう、ロラン」



121: 2012/06/22(金) 00:05:52.24 ID:loj0rlHx0



ディアナ「美味しかったわね」


ロラン「ありがとうございます」



124: 2012/06/22(金) 00:07:18.77 ID:loj0rlHx0



ロラン「ディアナ様、また明日……」


キィー…パタン……


おわり



126: 2012/06/22(金) 00:09:12.09
感動した

127: 2012/06/22(金) 00:09:17.70
ディアナ様……
乙!ユニヴァース!

引用元: ロラン「ディアナ様、また明日……」