1: 2009/08/10(月) 10:13:03.01 ID:DP2cm2ki0
唯「はぁ」

私はその日何度目かのため息をついた。
軽音部のみんなに無視されるようになってから、もう二週間か…

考えて、また憂鬱になる。
理由はわかっていた、そう、全て私が悪いのだ。

8: 2009/08/10(月) 10:16:52.30 ID:DP2cm2ki0
二週間前、文化祭本番の日、私はギターを家に忘れてしまうという、
ありえないミスをしてしまった。

必氏に走って、家まで取りに帰ったけど、ライブには間に合わなかった。

私は泣いて謝ったけど、三人は許してはくれなかった。

私のせいで初めてのライブを台無しにしてしまったのだ、
謝ったくらいで許してもらえないのも当然だった。

だけど…その日から三人は私を無視するようになった。
ムギちゃんは私にだけ紅茶もお菓子も出してくれなくなったし、
りっちゃんと澪ちゃんも、私が話しかけても返事すらしてくれないようになってしまった

12: 2009/08/10(月) 10:18:19.83 ID:DP2cm2ki0
私は何度も何度も謝ったけれど、みんなは聞いてくれなかった。

「もう絶対みんなに迷惑かけないようにするから!ギターももっとたくさん練習するから!
だからお願い、嫌いにならないで!」

どんなに謝っても、返事を返してはくれなかった。

唯「はぁ」

私は部室に行く元気もなく、公園のブランコに座って時間をつぶしていた。

14: 2009/08/10(月) 10:19:54.45 ID:DP2cm2ki0
いったいどうしたら、許してもらえるのかな。

またみんなとお茶を飲んだり、おしゃべりしたり、したいなぁ。

ふと顔をあげると、ギターを背負った中学生くらいの女の子が、
遠くからじっと私のほうを見ていた。

私と目が合うと、女の子は視線をそらして行ってしまった。

中学生でギターをやってるなんて、めずらしいな。
そんなことを思った。

16: 2009/08/10(月) 10:21:43.24 ID:DP2cm2ki0
そうだ、バンドができるのは、なにも軽音部だけではないのだ。
ライブハウスにいけば、ギターを募集しているバンドなんてたくさんあるだろう。

私はもうみんなから嫌われてしまったようだし、
別のバンドに入って、そこでギターを続けようかな…

そんな考えが頭をよぎる。

だけど、思い出してしまう、部室での楽しいティータイムを、
みんなとの楽しかった思い出を…

やっぱり私は、みんなと、軽音部のみんなと、ずっといっしょにやっていきたい。

17: 2009/08/10(月) 10:22:54.03 ID:DP2cm2ki0
翌日の放課後、私は音楽室の前まで来ていた。

みんなに許してもらえるまで、何度でも、何度でも謝ろう。
そう決意してここまで来たけれど、いざとなると手が震えてしまう…

またみんなに無視されてしまうんじゃないか…
そう思うと、ドアを開けることが、どうしてもできなかった。

そんな私の耳に、部室の中の話声が聞こえてきた…

18: 2009/08/10(月) 10:24:49.62 ID:DP2cm2ki0
紬「ごめんなさい、昔の癖で、今日はお菓子持ってきすぎちゃった」

律「おおー、たしかにすごい量だな、三人じゃ食べきれないな」

澪「でも、唯ならこのくらい、ぺろっと食べちゃいそうだな…」

律「おい!澪、やめろよ! 唯の話はするなって言っただろ!」

澪「あ…ご、ごめん…」

紬「しばらくは、唯ちゃんのことは話さないようにしようって、三人で約束したでしょ?」

澪「そうだった…ごめん、二人とも」


そんな…りっちゃん…ムギちゃんまで…

私はドアに背を向けて走りだしていた、目からは涙が溢れ出していた…

20: 2009/08/10(月) 10:26:54.40 ID:DP2cm2ki0
私はまた、公園のブランコに座って、泣き続けていた。

唯「うう…みんなぁ」

私はやっぱりみんなに嫌われてしまっていたのだ…
もう、以前のような関係にはもどれないのだとわかった。

唯「うう…そんなの…嫌だよぅ」

涙がとまらなかった。

女の子「どうして…泣いているんですか?」

声がして顔をあげると、昨日みかけた女の子が立っていた。

女の子「なにか…悲しいことでも、あったんですか?」

女の子は悲しそうな顔をして、語りかけてくる。

女の子「私でよければ…相談に、乗りますよ」

公園で泣いている、見ず知らずの人に話しかけるなんて、変わった子だな、と思った。
だけど…

唯「うう…うわあああぁん」

見ず知らずの人に抱きついて、声をあげて泣いている私のほうが、
よっぽど変わっているのかもしれない…
そう思った…

22: 2009/08/10(月) 10:28:55.21 ID:DP2cm2ki0
女の子「…落ち着きましたか?」

私が泣いている間、ずっとやさしく抱きしめてくれていた女の子が、
そう聞いてきた。

唯「うん、ありがとう、見ず知らずの私に、ここまでしてくれて…」

女の子「いえ、ただ…ほうっておけなかっただけです…」

女の子「それで…どうして、泣いていたんですか…?」

私はこの二週間の出来事を彼女に話した。
だれかに悩みをうちあけただけで、私の心はずいぶんと軽くなった。
だれかと話をすること自体、とてもひさしぶりのように感じた…

24: 2009/08/10(月) 10:30:13.02 ID:DP2cm2ki0
女の子「…そうだったんですか……」

話を聞き終えた彼女は、悲しそうに呟いた。

女の子「…ごめんなさい…私では、力になってあげられなくて…」

唯「ううん!話を聞いてもらえただけで、すごく気が楽になったよ、
本当にありがとう!」

女の子「そうですか…よかった…」

そう言って彼女は僅かに微笑んだ、とても綺麗な笑顔だった。

そのとき、彼女が昨日と同じようにギターを背負っていることに気づいた。

27: 2009/08/10(月) 10:31:46.82 ID:DP2cm2ki0
唯「あなたも、ギターをやってるの?」

彼女も私がギターを持っていることに気づいたようで、同じことを口にした。

女の子「あなたも、ギターをやってたんですか…?」

唯「うん、まだ初めて1年もたってないんだけどね、あなたはいつから?」

女の子「私は…小学四年生のときから…」

唯「へぇー、すごいね」

女の子「親がジャズバンドをやっていたので…」

唯「ねえ、もしよかったら、一緒に演奏してもらえないかな?」

女の子「え?ここでですか?」

唯「うん、もうずっと誰かと演奏してなかったから…だめかな?」

28: 2009/08/10(月) 10:33:10.49 ID:DP2cm2ki0
女の子「もちろん、いいですよ」

私は彼女の返事を聞く前にケースからギー太をとりだしていた。

女の子「いいギターですね」

唯「うん!これを買うために、みんなもバイトしてくれたんだ」

彼女もケースからギターを取り出した、ネックの細い、かわいいギターだった。

唯「それじゃあ、なにを弾こうか? 翼をください、とかどうかな?」

女の子「はい、それなら大丈夫です」

29: 2009/08/10(月) 10:34:28.69 ID:DP2cm2ki0
それから一時間ちかく、彼女と一緒にギターを弾いた。
それは、私にとって二週間ぶりの楽しい、充実した時間だった。


唯「今日はありがとう、とっても楽しかった」

女の子「私も、楽しかったです」

唯「あの…もしよかったら、明日もここで会えないかな…」

女の子「…ええ、いいですよ」

唯「ありがとう! あっ、名前、教えてもらってもいい?私は平沢唯!」

梓「中野…梓です」


それが、私と梓ちゃんとの出会いだった。

30: 2009/08/10(月) 10:35:54.22 ID:DP2cm2ki0
その日以来、学校が終わると、あの公園で梓ちゃんと会うのが日課になった。

学校では相変わらず、みんなからは無視されていたけど、
その寂しさを、苦しさを、梓ちゃんが癒してくれるような気がした。

毎日暗くなるまで一緒にギターを弾いたり、
色々なことを話したりして過ごした。

学校のこと、家のこと、音楽のことなど、たくさん語りあった。

31: 2009/08/10(月) 10:37:12.84 ID:DP2cm2ki0
唯「それでね、妹がいるんだけど、しっかりしてて、とってもかわいいんだ!
家事とかもすごく上手でね」

梓「へぇ、なんだか意外ですね、唯さんの妹さんなら、もっとぐーたらしてそうな
イメージがありました」

唯「もー、梓ちゃんまでそんなこと言うの! みんなも、妹にいいところ全部
吸い取られたんじゃないか、なんて言うんだよ」

梓「ふふ、唯さんには、妹さんとは違ったいいところが、たくさんあると思いますよ」

唯「え?そうかなー、えへへ、そんなこと言われたの初めてだよ」

梓「そうですよ」

32: 2009/08/10(月) 10:39:03.95 ID:DP2cm2ki0
もうそんな日々が、二週間ちかく続いていた。

私は今日も放課後、一目散に公園へとやってきた。

唯「梓ちゃんは…まだきてないのか…」

いつものようにブランコに腰掛けて、梓ちゃんが来るのを待った。
梓ちゃんといると楽しくて忘れてしまうけれど、一人になると、色々と思い出してしまう。
軽音部での楽しかった日々を、それを失ってしまった悲しみを。

私は昔の自分を恨んだ、どうしてあんな大事な日にギターを忘れてしまったんだろう。
それさえなければ、いまごろは……
そんなことを考えていると、もう枯れてしまったと思っていた涙が、また溢れてきた。

34: 2009/08/10(月) 10:40:23.14 ID:DP2cm2ki0
唯「うう、みんなぁ、またみんなと…演奏…したいよぅ」

一度流れ始めた涙は止められなかった…

梓「…唯さん……また、泣いているんですね…」

唯「うぅ…梓ちゃん…」

梓「…また軽音部の人たちと…一緒に演奏…したいんですね…?」

唯「うん……だけどもう私は、みんなに嫌われちゃったから…」

私がそう言うと、梓ちゃんが意外なことを言い出した。

35: 2009/08/10(月) 10:44:16.83 ID:DP2cm2ki0
梓「明日は土曜日ですけど、部活はあるんですか?」

唯「え? うん、土曜日は毎週やってたけど、私はもう…」

梓「じゃあ、明日私と一緒に、部活に行きましょう」

唯「ええっ? 梓ちゃんと?」

梓「はい、私がなんとかしてあげます」

唯「で…でも……」

梓「それじゃあ、明日の朝、またこの公園で、今日はこれで失礼します」

唯「えっ…ちょっ、ちょっと」


梓ちゃんはそう言うと走って行ってしまった。

梓「明日、必ず来てくださいね」

そういい残して……

36: 2009/08/10(月) 10:45:46.47 ID:DP2cm2ki0
…………


私は唯さんと別れたあと、ある場所まで来ていた。

以前聞いた、唯さんの家の前まで…

ピンポーーン


ガチャ

憂「はい…」

インターホンを押すと、唯さんそっくりの女の子が出てきた、
きっとこの子が、唯さんの言っていた妹さんなのだろう。

憂「…どちらさまですか…?」

私は用件だけを伝えることにした。

梓「あの……実は………

39: 2009/08/10(月) 10:47:58.09 ID:DP2cm2ki0
翌日、公園へ行くと、すでに唯さんは来ていた。ちゃんとギターも背負っていた。

梓「お待たせしました、それじゃあ行きましょう」

唯「…うん…ほ、ほんとに行くの…?」

梓「はい、ほんとに行きます」

唯「だ、だけど……」

梓「大丈夫ですよ、私がついてますから」

唯「うう…」

唯さんはまだ不安なようだった、一ヶ月も無視されていたんだから、
当然かもしれない。

42: 2009/08/10(月) 10:52:33.23 ID:DP2cm2ki0
唯「あれっ? 梓ちゃん、ギターケースいつもとちがうね、
いつものムスタングじゃないの?」

梓「はい、今日はこのギターじゃないとだめなんです」

唯「? ふーん?」

そんな話をしているうちに、桜高に到着した。

まずは受付に向かって、軽音部の人に忘れ物を届けに来たと言って、
来客のプレートを受け取った。
嘘をついてしまったが、不審者として通報されるよりはましだろう。
それに、あながち嘘ともいえないかもしれない。
そんなことを考えて、私は小さく笑った。

43: 2009/08/10(月) 10:54:34.90 ID:DP2cm2ki0
音楽室の前に到着し、私はドアに手をかけた。
となりの唯さんを見ると、小さく震えていた。
きっとまた無視されてしまうのではないかと、怯えているのだろう。

大丈夫ですよ、あなたは、嫌われてしまったわけじゃないんですから…

だけど、私がこれから突きつける真実は、それよりもはるかにつらいことかもしれない…
それを考えると、心が痛んだ。

ガチャ

ドアを開けて、私と唯さんは音楽室へと入った。

梓「こんにちは」

44: 2009/08/10(月) 10:56:20.68 ID:DP2cm2ki0
私があいさつをすると、中にいた三人がこちらを見た。
唯さんに色々と聞いていたので、誰が誰なのかすぐにわかった。
長い黒髪の人が、秋山澪さんで、カチューシャをつけた人が、田井中律さん、
紅茶を入れているのが、琴吹紬さんだろう。

紬「えっと、どちらさまでしょうか?」

律「その制服、近所の中学のだろ? 中学生がなんの用事だ?」


梓「えっと、私は中野梓という者です、平沢唯さんの友人で、今日は伝えたいことがあって来ました」

私がそう言うと、三人は少し驚いた顔をした。

47: 2009/08/10(月) 10:57:52.29 ID:DP2cm2ki0
澪「唯の昔の友達か…」

秋山さんは「昔の」と言った、そう考えるのも当然だ、だけど…

梓「いえ、唯さんと知り合ったのは、つい最近なんです」

律「? なにわけわかんないこといってんだ、だって唯は…」

紬「そのギター…」

琴吹さんが、私の背負っていたギターに気づいた。

48: 2009/08/10(月) 10:59:16.88 ID:DP2cm2ki0
梓「はい」

私はギターをケースから取り出した、唯さんのギターを…

唯「えっ? それ、私のギター? え?でも私は今ちゃんと持って…私のギターが、2つ…?」

律「! おまえ、唯の遺品をかってに持ち出して! どういうつもりだよ!?」

唯「…遺……品…?」


となりでは、唯さんがひどく驚いた顔をしていた。
やっぱり、唯さんは気づいてなかったんですね……

52: 2009/08/10(月) 11:01:24.85 ID:DP2cm2ki0
梓「勝手にではありません、ちゃんと妹さんに許可をもらって、借りてきたんです」

紬「だけど…なんのために…」

梓「少し、聞きたいことがあるんです、唯さんが亡くなったのは、いつごろでしょうか?」

律「一ヶ月くらい…前だ…」

梓「どういった理由で?」

澪「文化祭の日、ギターを取りに帰る途中、交通事故で…」


梓「唯さん…思い出しましたか…?」

唯「…私は、私は……そんな、私は……氏んでいたの……?」


唯さんは頭をかかえてうずくまっていた、その姿を見ているのはつらかった。

梓「つらいことを思い出させてしまってごめんなさい、だけどこうしないと、
あなたはずっと、さまようことになってしまうから…」

55: 2009/08/10(月) 11:04:21.92 ID:DP2cm2ki0
律「おい! さっきから何のまねだよ! そこに唯の幽霊でもいるっていうのか!」

田井中さんが怒ったように叫んだ。

梓「はい、その通りです」

律「いいかげんにしろっ! 怒るぞ!」

もう怒ってるじゃないですか、とは言えなかった。

梓「私には、見えてしまうんです」

だから私は事実だけを伝えた。

律「っ!! いいかげんにしろ!」

田井中さんはそういって私につかみかかって来た。

56: 2009/08/10(月) 11:06:35.48 ID:DP2cm2ki0
…………


律「っ!! いいかげんにしろ!」


私はそう言って、そいつにつかみかかった。

そいつがこれ以上ばかなことを言うのが我慢できなかった。

唯の氏をばかにされたようで、許せなかった。

澪「律、やめろっ!」

紬「りっちゃん! 落ち着いて」

そう言って二人が私を引き離した

57: 2009/08/10(月) 11:08:29.57 ID:DP2cm2ki0
本当の理由は違ったのかもしれない、あの日以来、私はずっと後悔していた。

律『唯、走れ! 絶対に間に合わせろよ!』

唯『わかった! まかせて、りっちゃん』

そう言って唯は走り出した、もしもあのとき私があんなことを言わなければ、
唯が事故に合うことはなかったかもしれない…

私は自分を呪った、そんな行き場をなくしていた感情を、こいつにぶつけていただけなのかもしれない。

58: 2009/08/10(月) 11:10:06.43 ID:DP2cm2ki0
梓「見えてしまうんだから、どうしようもないんです…」


だけどそいつは、こんなことには慣れているといったように、淡々と言った。


梓「唯さん、落ち着いてください、いくら叫んでもあなたの声は、私以外には聞こえないんです」


そいつはなおも誰もいない空間に向かって話しかけている。

60: 2009/08/10(月) 11:11:56.58 ID:DP2cm2ki0
梓「なにか、唯さんたちしか知らないようなことを、教えてください、軽音部の四人しか知らないようなことを…」

梓「ゆっくりでいいんです、思いだしてください、四人だけの思い出を…」

梓「え? それをギターで弾くんですか? はい、わかりました…」


そう言うとそいつは、それを弾き始めた

61: 2009/08/10(月) 11:13:22.28 ID:DP2cm2ki0
チャラリーーララーーチャラリラリラーー


チャルメラだった、思わずずっこけそうになるのを思いとどまると、
私の中に思い出が蘇ってきた…

みんなでバイトして買った唯のギターで、唯が始めて弾いた曲、
たしかにそれは、私たち四人しか知らない、四人だけの思い出だった。

63: 2009/08/10(月) 11:15:03.65 ID:DP2cm2ki0
梓「唯さんは、これを弾けば、みんなわかってくれるはずだと言っています…」


澪「ほ、ほんとに唯なのか、そこにいるのか?唯?」

紬「唯ちゃんなの? ほんとうに」

律「唯、ずっと、ずっと会いたかったんだよ…」


梓「…唯さんも、ずっとみんなと話したかったと言っています、それから、ずっと謝りたかったと…」

律「唯、謝るって何をだよ、謝らなきゃいけないのは、私のほうだよ…」

64: 2009/08/10(月) 11:16:23.18 ID:DP2cm2ki0
梓「唯さんの願いは、もう一度、みなさんと演奏したい、というものです」

梓「だから、それが叶えばきっと、唯さんは成仏することができると思います」

澪「だけど、いったいどうやって…」

澪の疑問はもっともだった、いったいどうやって、幽霊になってしまった唯と、
一緒に演奏すればいいのだろうか…

梓「そのために、私が来たんです」

そう言うとそいつは手を広げた。

67: 2009/08/10(月) 11:21:46.84 ID:EQLkGhU20
梓「私の体を、唯さんに貸してあげます、後ろから重なるように、私の体に入ってください、
ちがいます、逆です、そう、そっち向きです」

梓「だけど、貸してあげられる時間は、10分が限界です、だから気をつけてく だ  さ  」

ドサッ

突然そいつは、床に倒れこんでしまった。


律「おっ、おい!大丈夫か?」

私は慌ててそいつを抱き起こした。

70: 2009/08/10(月) 11:23:45.28 ID:EQLkGhU20
梓(唯)「うーん……りっちゃん…?」

律「唯…?」

梓(唯)「りっちゃん、みんな…私のこと、嫌いになってない…?」

律「何ばかなこと言ってんだよ、私たちが、唯のこと嫌いになるわけないだろ」

梓(唯)「えへへ…よかったぁ…」


姿も、声も、唯のものではなかったけど、このしゃべり方は、この雰囲気は間違いなく、
私たちがずっと会いたかった唯だった。

72: 2009/08/10(月) 11:25:01.24 ID:EQLkGhU20
澪「唯!」

紬「唯ちゃん!」

律「うわっ」


澪とムギが唯に抱きついてきた

澪「唯、会いたかったよ」

紬「唯ちゃん、もうどこへもいかないで!」

梓(唯)「みんな、ありがとう、話したいことがたくさん、たくさんあるけど、だけどもう、
時間がないから…」

梓(唯)「だから、最後にみんなで演奏しよう! あの日できなかった、あの曲を」

87: 2009/08/10(月) 11:40:51.84 ID:EQLkGhU20

律「唯…そうだな! やろう、みんな!」

澪「ああ!」

紬「はい!」

律「いくぞー、ワン、ツー、スリー、フォー!」


そうして私たちは演奏した、あの日できなかったあの曲、ふわふわタイムを。

私たちは唯との最後の時間を惜しむようにゆっくりと、丁寧に、その曲を演奏した。

最後のサビはみんなで歌った、それは私たちの願いを表しているようだった…

「ああ神様おねがい、一度だけの、ミラクルタイム下さい」

76: 2009/08/10(月) 11:29:02.97 ID:EQLkGhU20
ジャーーーン

演奏が終わり、音楽室に静寂がながれた。

律「今までで最高の演奏だったよ! 唯」

梓(唯)「ありがとう、みんなとずっとこうしていたいけど、だけどもう時間みたい…」

澪「そんな、唯!」

紬「唯ちゃん、いかないで!」

律「唯、私たちは絶対、おまえのこと忘れないからな」


最後くらいかっこよく決めようと思ったのに、気がつくと私は涙を流していた…


梓(唯)「ありがとうみんな、大好きだよ…私もみんなのこと、絶対忘れない か  ら  …」

ドサッ

そう言うと唯はまた床に倒れこんでしまった…………





fin

83: 2009/08/10(月) 11:35:02.42
イイハナシイイハナシ

85: 2009/08/10(月) 11:36:49.49

89: 2009/08/10(月) 11:43:40.20 ID:EQLkGhU20
最後の最後でとんでもないミスをしてしまいました。
ほんとうに、なんて謝ったらいいか…

あとちょっとだけエピローグがあります

92: 2009/08/10(月) 11:45:42.65 ID:EQLkGhU20
エピローグ


あれから6ヵ月後 桜高合格発表の日


梓「…あった」

憂「梓ちゃんも! 私もあったよ!」

梓「おめでとう、憂」

憂「おめでとう、梓ちゃん」

梓「ありがとうございます、憂にも、おめでとうだって」

憂「ありがとう!お姉ちゃん!」

96: 2009/08/10(月) 11:47:25.27 ID:EQLkGhU20
律「おーーーい」


憂「あ、みなさん、こんにちは」

律「梓、憂ちゃん、どうだった?」

梓「はい、二人とも受かってました」

澪「よかった、おめでとう、二人とも」

憂「ありがとうございます」


梓「何言ってるんですか、唯さんが教えてくれたところはほとんど間違ってたじゃないですか、
私の実力で受かったんですよ、ちょ、急に抱きつかないで下さい!」

律「相変わらず仲いいなーおまえら、見えないけど」

紬「最近きこえなくても唯ちゃんが何を言ってるのかだいたいわかるようになってきたわ」

梓「そうだよ、私とあずにゃんは一心同体なんだよりっちゃん って言ってます」

律「そういうのは取り付いてるっていうんじゃないのか?」

98: 2009/08/10(月) 11:49:05.09 ID:EQLkGhU20
澪「とにかく、また今日から5人で、軽音部再結成だな」


梓「それにしても、どうしてあのとき成仏できなかったんですか?」

梓「またそんな適当なことを……武道館だなんて気が早いです、だいたい、いまさら成仏されても困ります」

梓「…だから、唯さんにいなくなられたら困るって言ったんです!恥ずかしいこと言わせないで下さいっ」










唯「うん!ずっと一緒だよ、あずにゃん!」


おわり

105: 2009/08/10(月) 11:55:53.79 ID:EQLkGhU20
以上です
読んでくださった方、ありがとうございました
一番大事なところでありえないミスをしてしまって本当にすいません
唯じゃなくて私が氏ぬべきですね

参考にしたのはもちろん映画、シックスセンスです

引用元: 唯「ずっと一緒だよ」