1: 2021/03/28(日) 17:07:52.20 ID:yIJlieeC0
エヴァSS
テレビ版第23話「涙」からの分岐
もしもあの時、レイのつぶやきがマイクに拾われ皆に聞こえていたら
初出は某掲示板の某スレに投下したもの
まとめWikiが閉鎖されたので、こちらに再投下
シナリオ形式(セリフ+ト書き風)です
テレビ版の筋をある程度知ってる前提で主に差分を投下
残りは適当に補ってください
(都合よく設定が変わっているところがあります)
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1616918871
テレビ版第23話「涙」からの分岐
もしもあの時、レイのつぶやきがマイクに拾われ皆に聞こえていたら
初出は某掲示板の某スレに投下したもの
まとめWikiが閉鎖されたので、こちらに再投下
シナリオ形式(セリフ+ト書き風)です
テレビ版の筋をある程度知ってる前提で主に差分を投下
残りは適当に補ってください
(都合よく設定が変わっているところがあります)
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1616918871
2: 2021/03/28(日) 17:10:23.17 ID:yIJlieeC0
==== 大涌谷付近 零号機プラグ内 ====
使途に機体を浸食されている零号機
初号機に向かって白い蛇のように伸びていく使徒
先端部がレイの姿になる
そのようすを見やるレイ
目には涙
レイ「あれは――」
==== 初号機プラグ内 ====
レイ『私の心――』
シンジ「あ……綾波!?」
==== 発令所 ====
レイ『――碇くんと、いっしょになりたい――』
一同「えっ?」
ミサト「レイ……」
リツコ「……」
==== ケージ 弐号機プラグ内 ====
アスカ(ファーストのヤツ……)
:
:
使途に機体を浸食されている零号機
初号機に向かって白い蛇のように伸びていく使徒
先端部がレイの姿になる
そのようすを見やるレイ
目には涙
レイ「あれは――」
==== 初号機プラグ内 ====
レイ『私の心――』
シンジ「あ……綾波!?」
==== 発令所 ====
レイ『――碇くんと、いっしょになりたい――』
一同「えっ?」
ミサト「レイ……」
リツコ「……」
==== ケージ 弐号機プラグ内 ====
アスカ(ファーストのヤツ……)
:
:
3: 2021/03/28(日) 17:11:35.64 ID:yIJlieeC0
(中略)
==== 数日後 病院 ====
廊下 窓外を見ている検査着のレイ
頭部に包帯を巻かれ腕を吊っている
走ってくるシンジ、アスカ、ミサト
シンジ「綾波!」
レイ「……」
涙をぬぐうシンジ
シンジ「よかった……綾波が無事で……」グスッ
アスカ「ああもう! 泣くんじゃないわよ、男のくせに!」
シンジ「だって……」
レイ「……」
ミサト「泣きたくもなるわよねぇ。なんたって『一緒になりたい』って子が無事だったんだもんねー」
シンジ「ミ、ミサトさん!!」
アスカ「まったく……これでコイツが夜な夜なアンタの名前を呼びながらメソメソするのを聞かずに済むと思うとせいせいするわ!」
シンジ「や、やめてよ、アスカまで!」
レイ「……」
レイに向き直り、微笑むシンジ
==== 数日後 病院 ====
廊下 窓外を見ている検査着のレイ
頭部に包帯を巻かれ腕を吊っている
走ってくるシンジ、アスカ、ミサト
シンジ「綾波!」
レイ「……」
涙をぬぐうシンジ
シンジ「よかった……綾波が無事で……」グスッ
アスカ「ああもう! 泣くんじゃないわよ、男のくせに!」
シンジ「だって……」
レイ「……」
ミサト「泣きたくもなるわよねぇ。なんたって『一緒になりたい』って子が無事だったんだもんねー」
シンジ「ミ、ミサトさん!!」
アスカ「まったく……これでコイツが夜な夜なアンタの名前を呼びながらメソメソするのを聞かずに済むと思うとせいせいするわ!」
シンジ「や、やめてよ、アスカまで!」
レイ「……」
レイに向き直り、微笑むシンジ
4: 2021/03/28(日) 17:12:55.14 ID:yIJlieeC0
シンジ「ありがとう、助けてくれて」
レイ「……何が?」
言葉につまるシンジ
いぶかしむミサトとアスカ
シンジ「何がって……零号機を捨ててまで、助けてくれたじゃないか! 綾波が……」
レイ「そう、あなたを助けたの……」
シンジ「う、うん」
アスカ「あ……あんた、覚えてないの?」
レイ「いいえ……知らないの」
ミサト「……知らない?」
レイ「多分私は……三人目だと思うから」
:
:
(中略)
==== ネルフ本部 司令執務室 ====
冬月「――しかし、レイが生きているとわかれば、キール議長らがうるさいぞ」
ゲンドウ「ゼーレの老人たちには別の物を差し出してある。心配ない」
冬月「別の物?」
ゲンドウ「ああ。赤木博士に一任してある」
レイ「……何が?」
言葉につまるシンジ
いぶかしむミサトとアスカ
シンジ「何がって……零号機を捨ててまで、助けてくれたじゃないか! 綾波が……」
レイ「そう、あなたを助けたの……」
シンジ「う、うん」
アスカ「あ……あんた、覚えてないの?」
レイ「いいえ……知らないの」
ミサト「……知らない?」
レイ「多分私は……三人目だと思うから」
:
:
(中略)
==== ネルフ本部 司令執務室 ====
冬月「――しかし、レイが生きているとわかれば、キール議長らがうるさいぞ」
ゲンドウ「ゼーレの老人たちには別の物を差し出してある。心配ない」
冬月「別の物?」
ゲンドウ「ああ。赤木博士に一任してある」
5: 2021/03/28(日) 17:13:55.43 ID:yIJlieeC0
==== リツコの研究室 ====
リツコ「――資料はこれで全部よ。実物はA-4番の搬入口の特装車に乗せてある」
黒服の男「ご協力に感謝します。――おい、行くぞ」
去っていく黒服の男たち
マヤ「――大丈夫でしょうか?」
リツコ「問題ないわ。エントリープラグの耐爆仕様書と補強構造の設計図面一式。それにプラグの実物よ」
マヤ「でもセンパイ、あのエントリープラグは――」
リツコ「大丈夫よ。実際にプロトタイプの胴体に入れて耐爆試験に使ったものだし」
マヤ「――だといいんですけど……」
:
:
==== 夜 ミサトのマンション ====
ミサト「――リツコが?」
シンジ「はい……僕たちのガードを解いたから、来てくれって」
顔を見合わせるミサトとアスカ
(中略)
==== セントラルドグマ ====
オレンジ色の光に満たされた壁一面の水槽
リツコ「――資料はこれで全部よ。実物はA-4番の搬入口の特装車に乗せてある」
黒服の男「ご協力に感謝します。――おい、行くぞ」
去っていく黒服の男たち
マヤ「――大丈夫でしょうか?」
リツコ「問題ないわ。エントリープラグの耐爆仕様書と補強構造の設計図面一式。それにプラグの実物よ」
マヤ「でもセンパイ、あのエントリープラグは――」
リツコ「大丈夫よ。実際にプロトタイプの胴体に入れて耐爆試験に使ったものだし」
マヤ「――だといいんですけど……」
:
:
==== 夜 ミサトのマンション ====
ミサト「――リツコが?」
シンジ「はい……僕たちのガードを解いたから、来てくれって」
顔を見合わせるミサトとアスカ
(中略)
==== セントラルドグマ ====
オレンジ色の光に満たされた壁一面の水槽
6: 2021/03/28(日) 17:14:49.01 ID:yIJlieeC0
その中で浮き沈みする無数のレイの裸身
アスカ「ファ……ファースト!?」
ミサト「――これが、ダミープラグの元だというの!?」
リツコ「そうよ。ダミーシステムのコアとなるもの。その生産工場よ」
一同「……」
リツコ「ここにあるのはダミー……そして、レイのためのパーツ……魂の容れ物よ」
ミサト「えっ?」
リツコ「……魂の入った容れ物は、レイ1人だけなの。あの子にしか、魂は生まれなかったのよ」
シンジ「ちょっと待って! パーツって……1人だけって……」
リツコ「……」
シンジ「じゃあ……『三人目』って言うのは……」
背後で隔壁が閉じる音
振り返る一同
ゲンドウと制服姿のレイ(三人目)が立っている
ミサト「……司令!?」
シンジ「あ……綾波?」
ゲンドウ「揃ったな」
眼鏡を直すゲンドウ
アスカ「ファ……ファースト!?」
ミサト「――これが、ダミープラグの元だというの!?」
リツコ「そうよ。ダミーシステムのコアとなるもの。その生産工場よ」
一同「……」
リツコ「ここにあるのはダミー……そして、レイのためのパーツ……魂の容れ物よ」
ミサト「えっ?」
リツコ「……魂の入った容れ物は、レイ1人だけなの。あの子にしか、魂は生まれなかったのよ」
シンジ「ちょっと待って! パーツって……1人だけって……」
リツコ「……」
シンジ「じゃあ……『三人目』って言うのは……」
背後で隔壁が閉じる音
振り返る一同
ゲンドウと制服姿のレイ(三人目)が立っている
ミサト「……司令!?」
シンジ「あ……綾波?」
ゲンドウ「揃ったな」
眼鏡を直すゲンドウ
7: 2021/03/28(日) 17:15:47.53 ID:yIJlieeC0
眼鏡がオレンジ色の光を反射している
ゲンドウ「では、始めよう」
ミサト「何を……しようとしているの?」
リツコ「お葬式よ」
ミサト「お葬式?」
リツコ「レイの……二人目のレイの」
シンジ「えっ……」
リツコ「そう。ここは許可を受けた火葬施設なのよ。遺体を火葬し、改正墓埋法に適合したガラス固化体に焼成できる。――本来は地上の、ある葬祭場の中になければならないというだけ」
ミサト「ちょっと待ってよ! それじゃあ――」
リツコ「守れなかったの……エントリープラグは……零号機の爆発から」
シンジを見るリツコ
リツコ「あのとき、あなたを守ったレイを……ね」
シンジ「!」
:
:
=== 霊安室 ====
照明を暗くした部屋の中央に置かれた棺
その頭の方にわずかな花が供えられている
ゲンドウ「では、始めよう」
ミサト「何を……しようとしているの?」
リツコ「お葬式よ」
ミサト「お葬式?」
リツコ「レイの……二人目のレイの」
シンジ「えっ……」
リツコ「そう。ここは許可を受けた火葬施設なのよ。遺体を火葬し、改正墓埋法に適合したガラス固化体に焼成できる。――本来は地上の、ある葬祭場の中になければならないというだけ」
ミサト「ちょっと待ってよ! それじゃあ――」
リツコ「守れなかったの……エントリープラグは……零号機の爆発から」
シンジを見るリツコ
リツコ「あのとき、あなたを守ったレイを……ね」
シンジ「!」
:
:
=== 霊安室 ====
照明を暗くした部屋の中央に置かれた棺
その頭の方にわずかな花が供えられている
8: 2021/03/28(日) 17:16:45.11 ID:yIJlieeC0
棺の蓋がずらされ、遺体と対面するシンジ
シンジ「!」
思わず顔をそむけるミサト、アスカ
シンジ「……そんな……」
一同「……」
シンジ「綾波……」
シンジの眼からあふれ出す涙
シンジ「ごめん……ごめん、綾波……」ポタポタ……
焼け爛れ頭髪を失ったレイの頬を指でなぞるシンジ
シンジ「熱かったよね……苦しかったよね……」ポタポタポタ……
ミサト「シンジくん……」
シンジ「なのに僕は……」
泣き崩れるシンジ その肩をそっと抱くミサト
その背後に立つゲンドウ、レイ(三人目)、アスカ、リツコ
:
:
=== 固化処理室 炉前ホール ===
居並ぶ一同
9: 2021/03/28(日) 17:17:46.96 ID:yIJlieeC0
一方の壁に棺が通るくらいの四角い穴
オレンジ色の光がその奥から漏れている
レイの棺が動き出し、炉に送り込まれていく
ハッとして追いすがるシンジ
シンジ「綾波!」
ミサト「シンジくん!」
シンジを背後から抱き留めるミサト
シンジ「嫌だ! 綾波!」
炉に吸い込まれる棺 閉じる炉のシャッター
:
:
==== 炉前ホールの外 ====
壁際にいくつかある長椅子に腰かけている一同
ミサト「――いつから……あるんですか?これは――」
ゲンドウ「一人目のレイが氏んだ少し後からだ」
ハッとするミサト
ミサト「一人目?」
リツコ「……」
10: 2021/03/28(日) 17:18:40.06 ID:yIJlieeC0
ゲンドウ「責任者だった赤木君のお母さんは自ら命を絶った。当時の彼女の部下だった、二人の研究者の些細なミスが偶然、重なったことが原因だとわかったのは、その半年後だった」
一同「……」
ゲンドウ「一人目のレイが息を引き取る間際の手の感触を今でもよく覚えている」
一同「……」
ゲンドウ「まだ幼かったが……二人目の……君たちが知るレイが目覚めたあと、物事は、我々が思っているほど単純ではないことに気付いた。そしてここを造った」
一同「……」
==== 固化処理室 炉前ホール ====
台の上に置かれた握りこぶし大の半透明のガラス質の円柱
シンジ「綾波……」
円柱にそっと触れる、目を泣き腫らしたシンジ
シンジ「こうなっちゃあ、おしまいだね……」
ミサト「これから……どうするんですか?」
ゲンドウ「当分、ここに――ドグマに安置することになる」
一同「……」
ゲンドウ「公式には、レイは生き続けている。だから彼女らを表だって葬ることはできない」
レイ「……」
11: 2021/03/28(日) 17:19:42.09 ID:yIJlieeC0
ゲンドウ「時が来れば、弔ってやることができるかも知れんが、それまではここに安置しておくしかない」
一同「……」
リツコ「あとは私たちがやるわ。あなたたちは帰りなさい」
シンジ「リツコさん」
リツコ「何?」
シンジ「ときどき……会いに来てもいいですか?」
ゲンドウの顔を伺うリツコ
頷くゲンドウ
リツコ「いいわ。しょっちゅうというわけにはいかないけれど……事前に言ってくれれば、適当な用務と、1回限りのパスコードを用意しておくから」
シンジ「ありがとうございます」
ミサト「さあ、行きましょう。アスカも」
レイだったガラス柱をときどき振りかえりながら退室するシンジ
付き添うミサトとアスカ
レイ「……」
一見感情のこもらない眼差しで三人を見送るレイ(三人目)
その様子を気遣わしげに見るリツコ
:
:
一同「……」
リツコ「あとは私たちがやるわ。あなたたちは帰りなさい」
シンジ「リツコさん」
リツコ「何?」
シンジ「ときどき……会いに来てもいいですか?」
ゲンドウの顔を伺うリツコ
頷くゲンドウ
リツコ「いいわ。しょっちゅうというわけにはいかないけれど……事前に言ってくれれば、適当な用務と、1回限りのパスコードを用意しておくから」
シンジ「ありがとうございます」
ミサト「さあ、行きましょう。アスカも」
レイだったガラス柱をときどき振りかえりながら退室するシンジ
付き添うミサトとアスカ
レイ「……」
一見感情のこもらない眼差しで三人を見送るレイ(三人目)
その様子を気遣わしげに見るリツコ
:
:
12: 2021/03/28(日) 17:20:41.30 ID:yIJlieeC0
==== 数日後 発令所 ====
制御卓で何か作業をしながら話し合っているシゲルとマコト
シゲル「――シンジ君と言えばさ、なんかあれからレイちゃんを避けてる感じ、しないか?」
マコト「そうだな……レイちゃんの世紀の大告白、結局、裏目に出ちゃったのかな」
シゲル「いや、でも、レイちゃんが助かったってわかるまでは、ほんとに落ち込んでたし……それに――」
声を落とすシゲル
シゲル「――この前、自販機コーナーで見かけたんだけど、神妙な顔して携帯でレイちゃんの写真見てたんだよ」
マコト「どうなってんだ? あの子たちの距離感、測りかねるよ――」
少し離れた席で何か作業をしているマヤ
二人の会話を聞きながら複雑な表情
:
:
=== 地上 零号機の爆発クレーター湖のほとり ===
リツコ「ひどい眺めね」ザッ……
ミサト「リツコ?」
リツコ「レイも、まさかこんな大きな穴が開くとは思っていなかったでしょうけど」
ミサト「……そうね」
リツコ「シンジくんは?」
制御卓で何か作業をしながら話し合っているシゲルとマコト
シゲル「――シンジ君と言えばさ、なんかあれからレイちゃんを避けてる感じ、しないか?」
マコト「そうだな……レイちゃんの世紀の大告白、結局、裏目に出ちゃったのかな」
シゲル「いや、でも、レイちゃんが助かったってわかるまでは、ほんとに落ち込んでたし……それに――」
声を落とすシゲル
シゲル「――この前、自販機コーナーで見かけたんだけど、神妙な顔して携帯でレイちゃんの写真見てたんだよ」
マコト「どうなってんだ? あの子たちの距離感、測りかねるよ――」
少し離れた席で何か作業をしているマヤ
二人の会話を聞きながら複雑な表情
:
:
=== 地上 零号機の爆発クレーター湖のほとり ===
リツコ「ひどい眺めね」ザッ……
ミサト「リツコ?」
リツコ「レイも、まさかこんな大きな穴が開くとは思っていなかったでしょうけど」
ミサト「……そうね」
リツコ「シンジくんは?」
13: 2021/03/28(日) 17:21:36.12 ID:yIJlieeC0
ミサト「あそこよ」
少し離れた場所 座って夕暮れの湖を眺めているシンジ
ミサト「レイ……ええと……あの子は?」
リツコ「最近は、一日中、繰り返し聞いている……あの時の音声記録をね」
ミサト「どうして?」
リツコ「あの子は受け継いでいる。氏んだ二人目の全てを」
ミサト「えっ?」
リツコ「彼女自身が望んだわけではないけど」
ミサト「ちょっと待ってよ。あの子はシンちゃんを助けたこと、『知らない』って――」
リツコ「確かに、あの戦いの前後の期間の記憶は、原理上持つことができない。でも、それ以外はちゃんと受け継いでいる。少なくとも、私たちはそういう処置をしている」
ミサト「じゃあ、なぜ……」
リツコ「筋道だった記憶として、想い起すことができないのかもしれない」
ミサト「……」
リツコ「だから、わからないんだわ。なぜ、シンジくんに避けられなければならないのか」
ミサト「……」
リツコ「避けられて――なぜ、いたたまれない気持ちになるのかを」
ミサト「……何とかしてやれないものかしらね……」
少し離れた場所 座って夕暮れの湖を眺めているシンジ
ミサト「レイ……ええと……あの子は?」
リツコ「最近は、一日中、繰り返し聞いている……あの時の音声記録をね」
ミサト「どうして?」
リツコ「あの子は受け継いでいる。氏んだ二人目の全てを」
ミサト「えっ?」
リツコ「彼女自身が望んだわけではないけど」
ミサト「ちょっと待ってよ。あの子はシンちゃんを助けたこと、『知らない』って――」
リツコ「確かに、あの戦いの前後の期間の記憶は、原理上持つことができない。でも、それ以外はちゃんと受け継いでいる。少なくとも、私たちはそういう処置をしている」
ミサト「じゃあ、なぜ……」
リツコ「筋道だった記憶として、想い起すことができないのかもしれない」
ミサト「……」
リツコ「だから、わからないんだわ。なぜ、シンジくんに避けられなければならないのか」
ミサト「……」
リツコ「避けられて――なぜ、いたたまれない気持ちになるのかを」
ミサト「……何とかしてやれないものかしらね……」
14: 2021/03/28(日) 17:22:45.73 ID:yIJlieeC0
=== 波打ち際 ===
爆発湖のほとりに立ち尽くすシンジ
シンジ「?」
聞こえてくるハミング
半壊し、半ば湖水に浸かった石造の上に腰掛け、「第九」を口ずさんでいる少年
:
:
(中略)
==== 数日後 発令所 ====
鳴り響く警報
マコト「エヴァ弐号機、起動!」
ミサト「そんなバカな!アスカは――」
アスカ『ちょっとミサト!』
点灯するモニタ
受話器をつかんで叫んでいるアスカ
アスカ『いったいどうなってんのよ!!』
15: 2021/03/28(日) 17:23:33.19 ID:yIJlieeC0
==== メインシャフト ====
降下していくカヲルとエヴァ弐号機
:
:
==== 発令所 ====
シゲル「――装甲隔壁は、エヴァ弐号機により突破されています!」
マコト「目標は第2コキュートスを通過!」
ゲンドウ「やむを得ん。エヴァ初号機に追撃させろ」
ミサト「はい!」
==== 初号機ケージ ====
息を切らせて走ってくるプラグスーツ姿のシンジ
シンジ「すみません!……お願いします!」ハッ…ハッ…
整備士「あれっ? シンジくん? なんで――」
シンジ「えっ?」
整備士「初号機には、もうレイちゃんが乗ってるけど――」
シンジ「えっ!?」
整備士「司令からの直接の命令だって……違うのか?」
==== 初号機プラグ内 ====
女性オペ『――LCL電化、A10神経接続、開始』
降下していくカヲルとエヴァ弐号機
:
:
==== 発令所 ====
シゲル「――装甲隔壁は、エヴァ弐号機により突破されています!」
マコト「目標は第2コキュートスを通過!」
ゲンドウ「やむを得ん。エヴァ初号機に追撃させろ」
ミサト「はい!」
==== 初号機ケージ ====
息を切らせて走ってくるプラグスーツ姿のシンジ
シンジ「すみません!……お願いします!」ハッ…ハッ…
整備士「あれっ? シンジくん? なんで――」
シンジ「えっ?」
整備士「初号機には、もうレイちゃんが乗ってるけど――」
シンジ「えっ!?」
整備士「司令からの直接の命令だって……違うのか?」
==== 初号機プラグ内 ====
女性オペ『――LCL電化、A10神経接続、開始』
16: 2021/03/28(日) 17:24:36.73 ID:yIJlieeC0
ゴボゴボ…
レイ「うっ……!?」
嘔吐感を覚え両手で口を押えるレイ
==== 初号機ケージ ====
鳴り響く警報音と切迫した無線の声
女性オペ『パルス逆流! 初号機、神経接続を拒絶!』
男性オペ『やっぱり駄目か……レイちゃん――』
レイ『いえ、お願いします! もう一度――』
シンジ「あっ……あの子……どうして!?」
整備士「あの子?」
==== 発令所 ====
リツコ「無茶よ! 初号機は、もう――」
無線のマイクをつかみ上げるミサト
ミサト「レイ! あんた何を勝手に――」
ゲンドウ「構わん」
ミサト「えっ?」
ゲンドウ「レイにやらせてみろ」
レイ「うっ……!?」
嘔吐感を覚え両手で口を押えるレイ
==== 初号機ケージ ====
鳴り響く警報音と切迫した無線の声
女性オペ『パルス逆流! 初号機、神経接続を拒絶!』
男性オペ『やっぱり駄目か……レイちゃん――』
レイ『いえ、お願いします! もう一度――』
シンジ「あっ……あの子……どうして!?」
整備士「あの子?」
==== 発令所 ====
リツコ「無茶よ! 初号機は、もう――」
無線のマイクをつかみ上げるミサト
ミサト「レイ! あんた何を勝手に――」
ゲンドウ「構わん」
ミサト「えっ?」
ゲンドウ「レイにやらせてみろ」
17: 2021/03/28(日) 17:25:25.29 ID:yIJlieeC0
ミサト「しかし、司令!」
==== 初号機プラグ内 ====
口を押えたまま目を瞑って耐えているレイ
レイ(お願い……私が行かなければ――)
初号機(……)
レイ(碇くんが……また悲しむことになるから……)
初号機(……)
レイ(お願い……)
初号機(……)
==== ケージ ====
女性オペ『コ……コンタクト、再開! 初号機、起動します!』
男性オペ『いいぞ!レイちゃん――』
レイ『はい』
シンジ「あ……!」
==== 発令所 ====
ミサト「やった……」
リツコ「まさか! ありえないわ」
ゲンドウ「……」
==== 初号機プラグ内 ====
口を押えたまま目を瞑って耐えているレイ
レイ(お願い……私が行かなければ――)
初号機(……)
レイ(碇くんが……また悲しむことになるから……)
初号機(……)
レイ(お願い……)
初号機(……)
==== ケージ ====
女性オペ『コ……コンタクト、再開! 初号機、起動します!』
男性オペ『いいぞ!レイちゃん――』
レイ『はい』
シンジ「あ……!」
==== 発令所 ====
ミサト「やった……」
リツコ「まさか! ありえないわ」
ゲンドウ「……」
18: 2021/03/28(日) 17:26:33.21 ID:yIJlieeC0
==== 初号機プラグ内 ====
インダクションレバーを握って肩で息をしているレイ
レイ(ありがとう)ハァ……ハァ……
初号機(……)
レイ(ありがとう……)
:
:
==== メインシャフト ====
オペレータ『初号機、第4層に到達、目標と接触します!』
降下するカヲルと弐号機
カヲル「待っていたよ、シンジくん」
降下しながら、シャフトの上方を見上げるカヲル
眉をひそめる
カヲル「シンジくんじゃない?……君は――」
:
:
(中略)
==== ターミナルドグマ ====
カヲルを握り締めている初号機
カヲル「――さあ、僕を消してくれ。そうしなければ――」
19: 2021/03/28(日) 17:27:24.15 ID:yIJlieeC0
レイ『だめ』
カヲル「――えっ?」
レイ『あなたは……嫌い。私に似ているから』
カヲル「……」
レイ『でも、だめ』
カヲル「……なぜ?」
レイ『あなたが、碇くんの友達だから』
カヲル「!」
レイ『あなたが氏ねば、碇くんが悲しむから』
カヲル「……なるほどね……」
かぶりを振り、あきらめたように微笑むカヲル
(中略)
==== ケージ ====
アンビリカルブリッジの前に立つ初号機
握っていたカヲルをそっとブリッジにおろす
駆け寄る保安部隊の一団、ミサト、シンジ
シンジ「カヲルくん!」
カヲル「――えっ?」
レイ『あなたは……嫌い。私に似ているから』
カヲル「……」
レイ『でも、だめ』
カヲル「……なぜ?」
レイ『あなたが、碇くんの友達だから』
カヲル「!」
レイ『あなたが氏ねば、碇くんが悲しむから』
カヲル「……なるほどね……」
かぶりを振り、あきらめたように微笑むカヲル
(中略)
==== ケージ ====
アンビリカルブリッジの前に立つ初号機
握っていたカヲルをそっとブリッジにおろす
駆け寄る保安部隊の一団、ミサト、シンジ
シンジ「カヲルくん!」
20: 2021/03/28(日) 17:29:14.12 ID:yIJlieeC0
カヲル「やあ、シンジくん――」
銃を持った保安部隊に取り囲まれるカヲル
シンジ「ウソだ! カヲル君が使徒だったなんて……」
カヲル「事実さ」
シンジ「そんな……カヲル君――」
カヲル「シンジ君」
シンジ「――えっ?」
カヲル「僕は君に話さなければならないことが、たくさんある。でも――」
シンジ「……」
カヲル「いま君が話さなければならない相手は、僕じゃない」
シンジ「え?」
カヲル「……違うかい?」
シンジ「……!」ハッ
初号機を振り返るシンジ
イジェクトされている初号機のプラグ
傍らの人込みを見まわすシンジ
アンビリカルブリッジの人ごみの向こう シンジの目を避けるように歩み去るレイ
21: 2021/03/28(日) 17:32:10.09 ID:yIJlieeC0
シンジ「あ……!」
駆け出すシンジ
その様子を微笑しながら見送るカヲル
カヲルに油断なく銃を向けている保安部隊
ミサト「渚くん――」
カヲル「すみません、ミサトさん」
ミサト「いい? 渚くん。私たちにとって危険がないと判断できるまでは、当分隔離させてもらいます」
カヲル「わかってます。言うとおりにしますよ」
ミサト「悪いわね」
カヲル「……それが『思し召し』のようですから」
ミサト「思し召し?」
カヲル(リリスの欠けた心の……ね)
ゴンゴンゴン……
クレーンで引き揚げられてくる弐号機
その様子を見やるカヲルとミサト
カヲル「あっちも無事回収できたようですね――」
ミサト「そうね」
「無事じゃないわよっ!!」
駆け出すシンジ
その様子を微笑しながら見送るカヲル
カヲルに油断なく銃を向けている保安部隊
ミサト「渚くん――」
カヲル「すみません、ミサトさん」
ミサト「いい? 渚くん。私たちにとって危険がないと判断できるまでは、当分隔離させてもらいます」
カヲル「わかってます。言うとおりにしますよ」
ミサト「悪いわね」
カヲル「……それが『思し召し』のようですから」
ミサト「思し召し?」
カヲル(リリスの欠けた心の……ね)
ゴンゴンゴン……
クレーンで引き揚げられてくる弐号機
その様子を見やるカヲルとミサト
カヲル「あっちも無事回収できたようですね――」
ミサト「そうね」
「無事じゃないわよっ!!」
22: 2021/03/28(日) 17:33:37.86 ID:yIJlieeC0
ミサト、カヲル「えっ?」
声のほうを振り返るミサトとカヲル
足音も荒く、肩を怒らせて大股でこちらに歩いてくるアスカ
気圧されて道を開ける保安部隊
アスカ「どういうつもりよ!? あたしの弐号機を勝手に持ち出したあげくキズモノにして!」
カヲル「すまなかったね」
アスカ「すまないですんだら警察はいらないわよっ!」ブンッ!
ミサト「ちょっと、アス――」
バキッ
アスカ「……えっ?……」
ひるむアスカ
カヲルの頬に叩きつけたこぶしを少し引く
アスカ「なんで……」
カヲル「痛てて……君は乱暴だね……」
アスカ「なんで!? A.T.フィールドでも張ればいいじゃないの、さっきみたいに!」
カヲル「そんなことしたら、周りにいる君たちがケガをするだろう?」
アスカ「あ……あんた……」
23: 2021/03/28(日) 17:34:38.36 ID:yIJlieeC0
カヲルから目をそむけるアスカ
アスカ「使徒のくせに……生意気ね」
頬を腫らしながらも微笑むカヲル
==== ケージの外に通じる通路 ====
カツカツカツ……
足を速めて通路の角に消えるレイ
角を曲がり追いすがるシンジ
シンジ「ねえ!」
レイ「!」
肩をびくりと震わせて立ち止まるレイ
息を切らせ、その背後、少し離れた場所に立ち止まっているシンジ
シンジ「どうして……どうして、あんな無茶をしたんだよ」
レイ「……」
俯くシンジ
シンジ「僕は……僕には、君にこんなことをしてもらう価値なんてないんだ」
レイ「……」
シンジ「綾波を助けられなかった僕には……」
レイ「!」
アスカ「使徒のくせに……生意気ね」
頬を腫らしながらも微笑むカヲル
==== ケージの外に通じる通路 ====
カツカツカツ……
足を速めて通路の角に消えるレイ
角を曲がり追いすがるシンジ
シンジ「ねえ!」
レイ「!」
肩をびくりと震わせて立ち止まるレイ
息を切らせ、その背後、少し離れた場所に立ち止まっているシンジ
シンジ「どうして……どうして、あんな無茶をしたんだよ」
レイ「……」
俯くシンジ
シンジ「僕は……僕には、君にこんなことをしてもらう価値なんてないんだ」
レイ「……」
シンジ「綾波を助けられなかった僕には……」
レイ「!」
24: 2021/03/28(日) 17:35:31.73 ID:yIJlieeC0
シンジ「僕が綾波を助けてたら、君だって綾波になる必要なんてなかったんだ」
レイ「……」
シンジ「それなのに、僕は――」
レイ「――わからない」
シンジ「……」
レイ「わからない……でも、私には、これしかできなかったから」
シンジ「……」
レイ「私は『綾波』じゃないから」
シンジ「!」
ゆっくり振り返るレイ
レイ「あなたが知っている『綾波レイ』じゃないから――」
目を見開くシンジ
シンジ(そんな……)
俯くシンジ
レイ「?」
肩を震わせているシンジ
レイ「なぜ……泣いているの?」
25: 2021/03/28(日) 17:36:25.41 ID:yIJlieeC0
シンジ「わからない……でも――」グス…
レイ「……」
シンジ「ごめん……なんか、いろいろ……ごめん」ポロポロポロ
レイ「なぜ、謝るの?」
シンジ「わからない……ハハ……もう、よくわかんなくなっちゃったよ」グスッ
レイ「碇くん……」
ケージの方から走ってくるミサトとアスカ
ミサト「あー、いたいた」
アスカ「こんなとこで何やってんのよ!もう」
シンジ「アスカ……ミサトさん……」グスッ
シンジにハンカチを差し出すアスカ
アスカ「ほら、こんなとこでそろって泣いてんじゃないわよ」
シンジ「……え?」
驚いてレイを見るシンジ
唇を噛み黙って涙を流しているレイに気付く
アスカの背後からハンカチを渡すミサト
アスカ「ほら! アンタも」
ミサトから受け取ったハンカチをレイに手渡すアスカ
レイ「……」
シンジ「ごめん……なんか、いろいろ……ごめん」ポロポロポロ
レイ「なぜ、謝るの?」
シンジ「わからない……ハハ……もう、よくわかんなくなっちゃったよ」グスッ
レイ「碇くん……」
ケージの方から走ってくるミサトとアスカ
ミサト「あー、いたいた」
アスカ「こんなとこで何やってんのよ!もう」
シンジ「アスカ……ミサトさん……」グスッ
シンジにハンカチを差し出すアスカ
アスカ「ほら、こんなとこでそろって泣いてんじゃないわよ」
シンジ「……え?」
驚いてレイを見るシンジ
唇を噛み黙って涙を流しているレイに気付く
アスカの背後からハンカチを渡すミサト
アスカ「ほら! アンタも」
ミサトから受け取ったハンカチをレイに手渡すアスカ
26: 2021/03/28(日) 17:37:29.49 ID:yIJlieeC0
シンジ「……」
歩み寄るミサト
シンジとレイの肩に左右の手を添え微笑む
ミサト「向こうはなんとか片付いたわ。さあ、上で何か、あったかいものでも飲みましょ?」
シンジ「はい……」
レイ「……はい」グスッ
歩き出す一同
==== 一週間後 ネルフ本部 仮設記者会見場 ====
「人類補完計画」の実態を告発する冬月
居並ぶリツコ、マヤ
証言者としてA.T.フィールド展開を実演するカヲル
==== その数日後 ====
とある洋館
連行される委員たち
巨大な地下施設
押収される量産型エヴァ
27: 2021/03/28(日) 17:39:38.87 ID:yIJlieeC0
==== 1年後 共同墓地 ====
緩やかに起伏する大地に見渡す限り続く墓標の群れ
とある墓標の前から三々五々去っていく喪服の一団
残っているミサト、シンジ、レイ、アスカ
ミサト「――シンジくん」
シンジ「……はい」
シンジが見ている真新しい二つの墓標
一方には「REI AYANAMI -2010」
他方には「REI AYANAMI -2015」
ミサト「やっと……ちゃんとお別れができたわね」
シンジ「そうですね」
アスカ「これでアイツも浮かばれるわね」
レイ「……」
ミサト「さて――」
背を伸ばし周囲を見渡すミサト
ミサト「そろそろ行きましょうか」
シンジ「はい」
歩き出すミサト
緩やかに起伏する大地に見渡す限り続く墓標の群れ
とある墓標の前から三々五々去っていく喪服の一団
残っているミサト、シンジ、レイ、アスカ
ミサト「――シンジくん」
シンジ「……はい」
シンジが見ている真新しい二つの墓標
一方には「REI AYANAMI -2010」
他方には「REI AYANAMI -2015」
ミサト「やっと……ちゃんとお別れができたわね」
シンジ「そうですね」
アスカ「これでアイツも浮かばれるわね」
レイ「……」
ミサト「さて――」
背を伸ばし周囲を見渡すミサト
ミサト「そろそろ行きましょうか」
シンジ「はい」
歩き出すミサト
28: 2021/03/28(日) 17:40:50.03 ID:yIJlieeC0
続くアスカ
シンジ「……」
まだ墓標を見つめているシンジ
シンジ「――綾波」
レイ「……」
シンジ「綾波?」
隣を見るシンジ
墓標を見ているレイ
シンジの視線に気づく
レイ「……わたし?」
シンジ「そ、そうだけど……」ハッ!
レイ「……」
シンジ「そっか……ごめん」
レイ「……どうしたの?」
シンジ「僕、君のこと、ちゃんと呼んだことがなかった」
レイ「……」
シンジ「ごめん」
うつむくシンジ
シンジ「……」
まだ墓標を見つめているシンジ
シンジ「――綾波」
レイ「……」
シンジ「綾波?」
隣を見るシンジ
墓標を見ているレイ
シンジの視線に気づく
レイ「……わたし?」
シンジ「そ、そうだけど……」ハッ!
レイ「……」
シンジ「そっか……ごめん」
レイ「……どうしたの?」
シンジ「僕、君のこと、ちゃんと呼んだことがなかった」
レイ「……」
シンジ「ごめん」
うつむくシンジ
29: 2021/03/28(日) 17:41:54.00 ID:yIJlieeC0
シンジを見ているレイ
レイ「いいの。いま、呼んでくれたから」
シンジ「……それでも……ごめん」
レイ「……」
連なる墓標の群れを見はるかすシンジ
シンジ「ねえ綾波」
レイ「なに?」
シンジ「『魂』って、なんだろうね」
レイ「……」
シンジ「リツコさんは、魂が入ったのは一人だけだって言ってた」
レイ「……」
シンジ「もしそうなら……1つしかない『魂』が受け継がれていくものだったら、君も、一人目も二人目も同じ人ってことになるけど――」
レイ「……」
シンジ「君は自分のこと三人目だって言ったよね」
レイ「ええ」
シンジ「それだと、君は、氏んじゃった綾波とは、やっぱり別人のような気がする」
レイ「……」
30: 2021/03/28(日) 17:43:34.87 ID:yIJlieeC0
シンジ「どっちなんだろうね」
レイ「わからない。私にも」
シンジ「……」
レイ「でも、私が氏んでも、もう代わりはいないから」
シンジ「……そうだね」
シンジ回想
ゼーレ崩壊後のネルフ本部 セントラルドグマ
ゲンドウ、シンジ達が見守る中、スイッチを押すレイ
LCLの中、砕けていくレイのスペアたち
シンジ「君には、感謝してる」
レイ「――渚くんのこと?」
シンジ「それだけじゃなくて、父さんのこととか、いろいろ」
レイ「そう……」
シンジ「初めのころは、嫌な思いをさせちゃったし、これから、少しでも恩返しできるようにするから」
レイ「……ほんとう?」
シンジ「うん」
レイ「……」ジー…
31: 2021/03/28(日) 17:46:11.13 ID:yIJlieeC0
シンジ「な、なに?」
レイ「なら、触れてもいい?」
シンジ「えっ?」
レイ「――碇くんの……手」
シンジ「えっ……」
レイ「……」
レイの目を見るシンジ
シンジ「――いいよ」
ためらいがちに伸びるシンジとレイの手
結ばれる二つの掌
シンジ「……!」
ふとレイを見て息を呑むシンジ
結ばれた手を見て感慨深げに微笑んでいるレイ
その表情に、しばし見とれるシンジ
レイ「?」
視線に気づき、シンジを見るレイ
レイ「なに?」
シンジ「いっいや! な、なんでもないよ!」
レイ「なら、触れてもいい?」
シンジ「えっ?」
レイ「――碇くんの……手」
シンジ「えっ……」
レイ「……」
レイの目を見るシンジ
シンジ「――いいよ」
ためらいがちに伸びるシンジとレイの手
結ばれる二つの掌
シンジ「……!」
ふとレイを見て息を呑むシンジ
結ばれた手を見て感慨深げに微笑んでいるレイ
その表情に、しばし見とれるシンジ
レイ「?」
視線に気づき、シンジを見るレイ
レイ「なに?」
シンジ「いっいや! な、なんでもないよ!」
32: 2021/03/28(日) 17:49:22.45 ID:yIJlieeC0
レイ「……そう……」
アスカ「シンジー! レーイ!」
墓地の入口で手を振っているアスカ
振り返っているミサト
アスカ「バスが出るわよー!」
レイ「行きましょう。アスカ達が待ってる」
シンジ「うん」
手をつないだまま一同のもとへ歩き出すシンジとレイ
一同をのせ、走り去っていくバス
夕日に照らされた山並み
稜線の向こう、林立するクレーン、再建中の街並み
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終劇
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