1: 2018/07/29(日) 22:05:08.39
平塚「おお比企谷、どうだ、今日もラーメン行かないか?」でっぷーん

八幡(加齢による新陳代謝の低下は想像以上だった・・・)


2: 2018/07/29(日) 22:06:29.78
平塚「フーフー、ズルズル、クチャクチャ」

八幡「・・・ちょっと」

平塚「ハフハフ・・・なんだ?」

八幡「音立てるのやめてもらっていいっすか、不愉快なんで」

平塚「ああ、すまんすまん・・・ズルズルズルルルルルルル!!!!」

八幡(なんでクチャ音抑えたら啜り音アップ、ついでに汁が飛び散る仕様なんですかねぇ)

平塚「いやー今日も美味いな」クチャクチャ

八幡(もう元に戻ってるし・・・)


ブーン

平塚「はぁー満腹だ。ここらでちょっと風に当たろう」

比企谷「…」

ガチャ バタン

平塚「食後のコーヒーは最高だな…ほれ」

比企谷「…あざす」

平塚「最近どうかね、学校は」

比企谷「まぁ、ぼちぼちですかね」

3: 2018/07/29(日) 22:07:40.44
平塚「何か悩みがあるならなんでも言ってくれて構わない」

比企谷(一番の悩みは頻繁にラーメン誘ってどんどん食事のマナーが悪くなってる先生ですかね、なんて口が裂けても言えない)

比企谷「まぁ…なんかあったら話します」

平塚「ああ、遠慮するな。私はお前の先生なんだからな」ドン でぷん

比企谷「・・・」



比企谷(先生は変わった)




比企谷(度重なる合コン、婚活パーティーの日々、晩婚化が始まる昨今、所謂『優良物件』を求める女性達の競争率は激しさを増し、その度に先生は敗北し続けた)

比企谷(先生は変わった)

比企谷(ID登録された婚活者はID登録された名札を持ち、ID登録された婚活パーティーへ向かう)

比企谷(そこには恋愛結婚もベストマッチングもない)

比企谷(ただ互いを「結婚相手」として値踏みし、妥協点を見つけ付き合い、少しづつ相手を理解し理解されながら結婚への歩みを進める)

比企谷(しかしそれは昔から珍しくもない、ありふれた人との付き合い方だ)

比企谷(しかし先生はそれをしなかった。プロセスを間違えたのだ)

4: 2018/07/29(日) 22:09:29.14
比企谷(先生は変わった)




比企谷(婚活に失敗したある回数を超え始めてから、いつにも増して頻繁にラーメンを食べに行く様になった)

平塚「さて、明日はどこに行くかな」

比企谷「今さっき食べたばっかでもうそんな事言ってるんすか…」

平塚「あ、この間見かけた二郎系のインスパイアの店があったな…そこに行くとするか。なあ比企谷」

比企谷「流石に毎日ラーメンはキツイです。小町が晩飯作ってくれてますんで」

平塚「そうか・・・お前には暖かい家族がいるんだったな・・・」

比企谷(アンタも実家に帰れば家族いるだろが・・・)

平塚「私が実家に帰るとやれ結婚だのお見合いだのいい人はいないのかだの…もううんざりだ…冷め切っているよ我が家は…」

比企谷(しかもラーメンいけませんって話しただけでなんか俺が地雷踏んだみたいになってんじゃねーか・・・っべーわー・・・っべー)

5: 2018/07/29(日) 22:09:58.13
比企谷(先生は変わった)



比企谷(ラーメンを食べ続けた先生は太り続けた。体重は70を超え、スーツの前ボタンはもう留まる事を忘れてしまったかの様に開放されている。常時開放型だ。なにそれどこの斬魄刀?)

比企谷「っていうことがあったんだが」

雪ノ下「そう」

比企谷「どうにかしたいんだが」

雪ノ下「どうにかしたいと言われても…」

比企谷「そろそろマジできつい」

由比ヶ浜「そんなイヤなら無理して行かなくていいじゃん」

比企谷「・・・」

雪ノ下「というか貴方・・・なんだか最近」

6: 2018/07/29(日) 22:10:40.81
比企谷(由比ヶ浜の言うことも最もだ。だが、俺はあの人を拒む事が出来なかった)

比企谷(数多の戦場(婚活パーティー)で傷付き疲弊した先生の誘いだ、断れるわけがない)

比企谷(最初はほんの些細な気紛れだった。しかし二度三度と付き合う内に……これは同情なのだろうか)

平塚「なあ・・・いいだろ?比企谷」

比企谷「せ、先生・・・ダメですよこんなところ・・・」

平塚「頼むよ・・・私はもうこれじゃないと・・・」

比企谷「・・・・っ」

平塚「口では色々言ってるが・・・身体は正直だな?」

平塚「ほら、私の身体も・・・」サス

比企谷「・・・」ゴクリ

平塚「今日もあいつらの事を忘れさせてくれ・・・」

比企谷「はい・・・」





二郎「ニンニク入れますか?」

平塚・比企谷「全マシで」

比企谷「ズルッズルッ!ハフハフ!」

平塚「ハフハフ!ジュルルル!!!ズゾゾゾ!クチャクチャ!」

平塚「ウメ・・・ウメッ・・・・」ハフハフ




比企谷「ふぅ・・・・」

平塚「あ~食った食った」サスサス

比企谷(自分でも理解していた。俺はもう、この地獄からは抜け出せないことを)

7: 2018/07/29(日) 22:11:37.28
雪ノ下「ねえ、デブヶ谷くん」

比企谷(・・・ついに来たか。いずれは呼ばれると思っていた)

比企谷「・・・流石に人の身体のことを言うのはイジメって言うんじゃねえのか?」

雪ノ下「あら、貴方には散々目つきの事とか目つきの事とか言ってきたつもりだけれど」

比企谷「俺が何も言わねえからって好き放題言っていいことにはならねーぞ」

比企谷(平塚先生のやけ食いラーメンに付き合い始めて3ヶ月)

比企谷(ただでさえ運動不足でカ口リーを持て余していた俺の身体は、ラーメンという更なる不摂生によって太り始めていた。一足早い生活習慣病だ)

比企谷(サラリーマンに多いと思っていたのだが、俺は高校生で既にその領域に足を踏み入れていたらしい。あれ、俺もう実質社会人じゃね?)

雪ノ下「・・・ともかく、その身体は目も当てられないわ。運動でもしたらどうかしら」

比企谷「散々引きこもり君とか言っておいてそれかよ。つーかまだ言うほど変わってないだろ」でっぷーん

雪ノ下「・・・」

雪ノ下(言えない。運動もせず化学調味料の塊を摂取し続けた彼の身体がどれだけの悪臭を放っているのかなんて)

雪ノ下(朝の梅雨明け満員電車で漂う汗と生乾きの臭い・・・)

8: 2018/07/29(日) 22:13:09.12
ザワザワ・・・ザワザワ・・・

比企谷(雪ノ下に注意されてから数日後。俺はクラスメイトから向けられる視線がより増えた事を感じていた)

ヒキタニクンクサクネ?ツーカフトリスギジャネ?

比企谷(薄々感じてはいたが、やはり俺の体は・・・)



戸部「つーかぁ、夏なんてあっという間にくるじゃん?海じゃん?水着じゃん?マジ腹とか腕とか胸とか不安だわー」

大岡「はは、大して変わんねーよ」

戸部「いやマジヤバいんだって!マジナニ谷くんって感じだわーっべーわー」

比企谷(このロン毛殴りたい・・・)

由比ヶ浜「やっぱ太ってきたよね・・・」

戸部「え!?やっぱ分かっちゃう!?女子から見て俺ヤバい感じ!?」

由比ヶ浜「え!?あ、ど、どうだろー」

三浦「戸部の腹事情とかマジどーでもいいんだけど」

葉山「ははは、部活の外周増やしてもいいんじゃないか」

戸部「それはキツイっしょー!」

ハハハ・・・・

比企谷(俺もあれぐらいネタに出来ていればいいんだが。あれは戸部だからこそ許されている感はある)

比企谷(普段自虐ネタ扱ってるやつが本当に悲惨な状況になったときは目も当てられないよな。せめて思い切り慰めてくれ)

由比ヶ浜「・・・」

9: 2018/07/29(日) 22:16:13.68
昼休み

由比ヶ浜「へへ、ゆきのんのお弁当楽しみ・・・」

雪ノ下「そんな大したものじゃないわ・・・」

パカッ

由比ヶ浜「わぁ・・・!唐揚げだぁ~!もらっていい!?」

雪ノ下「どうぞ。昨日の残り物よ。そんな大したものではないわ」

由比ヶ浜「そんなことないよ~!ん~おいひ~!ゆきのんありがと!」

雪ノ下「由比ヶ浜さん、あなた自分のお弁当が・・・」

由比ヶ浜「あ、そうだった!どうしよ~カ口リーが・・・て」

雪ノ下「どうしたのかしら」

由比ヶ浜「いや・・・その・・・・」

由比ヶ浜「・・・ヒッキーさ、最近ちょっとあれだよね・・・・その」

雪ノ下「太ってきたわね」

由比ヶ浜「ハッキリ言っちゃった!」

雪ノ下「由々しき事態だわ」

由比ヶ浜「そ、そうだよね!折角カッコ良かったのに・・・」

雪ノ下「あんな悪臭には耐えられないし、あんなのが奉仕部にいると知れたらそれこそ誰も依頼をかけなくなるでしょう」

由比ヶ浜「あ、そっちか・・・」

雪ノ下「依頼をこなさなければいつまでも比企谷君との決着はつけられないもの」

由比ヶ浜「そういえばあったねーそんな話」

雪ノ下「早急に対処する必要があるわね」

13: 2018/07/29(日) 22:39:56.59
~~~~~~~~~~~~~~~~~

雪ノ下「そういうことで奉仕部でボランティア活動に参加します」

比企谷「内容は?」

雪ノ下「町で行われる筋肉同好会主催のイベント運営スタッフよ」



比企谷「帰る」

雪ノ下「待ちなさい」

比企谷「あのな、どこから突っ込めばいいのかわからんが、明らかに俺じゃ役不足だ、色々と」

雪ノ下「問題ないわ、あくまでも運営スタッフよ」

由比ヶ浜「今回はね、総武高のサッカー部が参加することになってるの。この間の試合で「チームの筋力アップが課題だ」ってことになって・・・」

比企谷「それと俺たちの参加がどう関わってくるんだ」

雪ノ下「イベント参加にあたり、各団体5人以上のボランティアスタッフが必要なの。総武高のサッカー部マネージャーからは一人しか参加出来ないから、私たちと先生に参加を依頼されたのよ」

比企谷(つーか筋肉同好会ってなんだよ)

14: 2018/07/29(日) 22:44:14.89
平塚「まぁそういうことだ」パッツンパッツン

比企谷(釈然としない、何かの思惑を感じる・・・)

比企谷「先生、いい加減新しいワイシャツ買ったらどうですか」

平塚「オラァッ!」

比企谷「ぐふっ!」

平塚「比企谷、今のはセクハラと見なして構わんか?」

比企谷「新しいワイシャツって言っただけでここまで反応するってことはそのサイズのワイシャツじゃもう限界ですよーって自分で言ってるようなもんじゃ」

平塚「比企谷・・・世の中には正しくても言っていいことと悪いことがある」

比企谷(正しいって言っちゃったよ。もうごめんなさいしか言えねえ)

比企谷(というかなんでサッカー部の野郎なんかのために俺が無償奉仕なんぞしなきゃならんのだ)

比企谷(そもそもボランティアって響きが俺は嫌いだ。無償で人様の手伝いをしたら偉いのか?なんで見返りを求めちゃいけないんだ)

比企谷(ただ金を払いたくない奴の口車に乗せられて「偉い」「立派」なんて言われる為だけに活動するなんてまっぴらごめんだ)

比企谷(そしてこういう時に「見返りがないんで嫌です」みたいな事をいうと決まって嫌な顔をされるのだ。なんで俺が悪者扱いされなきゃいけないんだ)

比企谷(花壇の移動終えた後半分冗談でアイス欲しいですって言っただけで睨んできた小3の担任許さねえ)

15: 2018/07/29(日) 22:45:45.34
雪ノ下「ちなみにこの依頼主は・・・」

比企谷(・・・待てよ?サッカー部のマネージャーってことは・・・)

いろは「せんぱ~い!」ガララ

比企谷「げ」



いろは「・・・なにやってるんですか」

比企谷「いや、先生からの強烈なボディブローがだな」

いろは「そうやってさりげなく私のスカートの中でも覗こうっていうんですか?まじきもいです」

比企谷「んなの興味あるか、バカ」スクッ

いろは「な・・・!焦ったように立ち上がっておいてその台詞はないんじゃ無いですか!?」

比企谷「あ、焦ってねーしゅ」

雪ノ下「・・・ごほん!」

いろは「あ・・・そ、そういえばお話は聞きましたかぁ?」

比企谷「筋肉なんちゃらって奴か?」

いろは「そうなんですよぉ~・・・ボランティアの人数だけ集まらなくて困ってるんです」

比企谷「数合わせじゃねーか」

いろは「だってほかのマネージャーの子達は筋肉達磨なんか興味ないって言っ・・・忙しいみたいで~!」

比企谷(ああ、そう・・・)

いろは「ダメ・・・ですかぁ・・・?」

比企谷「ダメだ」

いろは「えぇ~!」

16: 2018/07/29(日) 22:47:01.37
雪ノ下「これは部長命令よ」

比企谷「知るか、ただの無償の労働提供じゃねえか」

比企谷「大体こういうボランティア必須ってしてる時点でイベント運営の金が無いですって言ってるようなものだ」

由比ヶ浜「しょ、しょうがないじゃん!無いものはないんだから!」

比企谷「イベントはしたいのに金は無いから無償で手伝ってくださいっていうのはおかしいだろ。それで俺たちみたいに何の得もしない奴らが駆り出されるのなら猶更だ」

由比ヶ浜「そ、そうかもしれないけどさ・・・」

比企谷「筋トレしたい奴らなら勝手にそこらのジムですればいい、やるなら他人を巻き込まず迷惑かけない場所でやればいい。俺たちにメリットはない」

由比ヶ浜「あ、あるもん!」

比企谷「あ?」

由比ヶ浜「メリットはあるって言ってるの!」

比企谷「どういう意味だ」

由比ヶ浜「そ、それは・・・ないしょ」

比企谷(なんだそれ・・・話にならん)

いろは「先輩、女の子にそういう事聞くのってマジサイテーです」

比企谷(なんで俺が責められなくちゃいけないんだよ)

17: 2018/07/29(日) 22:48:33.74
いろは「元々交流会やこういうイベントの参加は前々から要望が強かったんです。でも『生徒会で』中々参加できなくて・・・」

比企谷「・・・」

いろは「一応どっちも続けてるので、サッカー部に参加できる時には参加したいし、葉山先ぱ・・・皆さんのお役に立ちたいなって・・・」

比企谷「・・・・考えさせてくれ」

いろは「むぅ、曖昧な返事ですねぇ」

比企谷「とりあえず今日は帰る」ガララ





由比ヶ浜「ヒッキー大丈夫かな・・・」

いろは「・・・ここまで言わせたんです、必ず来てくれますよ」

由比ヶ浜「・・・」

雪ノ下「・・・」

42: 2018/07/30(月) 22:21:50.36
由比ヶ浜母「結衣ー!お風呂空いたわよー」

由比ヶ浜「はーい・・・」

いろは『・・・ここまで言わせたんです、必ず来てくれます』

由比ヶ浜(必ず来てくれます、か・・・)


由比ヶ浜「・・・いいなぁ」




小町「おにいちゃーん、ご飯できたよー」

比企谷「おう」

サラダ・豆腐ハンバーグ「やあ」

比企谷「・・・これだけ?」

小町「うん」



ご飯「・・・」ツヤツヤ

比企谷(なんで俺の分だけ炭水化物先輩がいないんだよ)



比企谷(まぁいいか・・・マヨネーズマヨネーズ)スッ


小町「」シュバッ


比企谷「・・・」

小町「・・・」

比企谷(ソースでいいか)スッ


小町「」シュババ


比企谷「・・・・小町ちゃん?」

小町「なに?」

比企谷「調味料取ってくれない?」

小町「いいよ、はい」

ゴトッ

比企谷(酢て・・・)

小町「お兄ちゃんは自分を律する必要があると思うんだよねー」

比企谷「・・・」

小町「お兄ちゃんは最近ちょっと、いやぶっちゃけて言うと・・・結構太ってきてるじゃん?」

比企谷「・・・」

小町「運動しないお兄ちゃんのダイエット方法は食生活の改善が一番だと思うのですよ」

比企谷「こんなんじゃ生きていけねーよ」

43: 2018/07/30(月) 22:27:47.00
小町「大丈夫、炭水化物ダイエットってこの間雑誌で見たから!」

比企谷(その情報源はどうかと思うが)

小町「小町的には、今のデブいちゃんより昔のスラっとしたカッコイイお兄ちゃんに戻ってきてほしいなーって・・・あ、今の小町的にポイント高い!」

比企谷(デブいちゃんって最早原型留めてねえじゃねえか。つか発音しづれぇな、どこぞの大統領夫人になっちまうぞ)

比企谷「残念だったな。もう俺はそんな食事程度で治るような段階じゃない」

小町「うわ、開き直ってるし・・・じゃあ運動とか何かするとかさー」

比企谷「めんどくさい」

小町「はぁ・・・あんまり言いたくないけど、小町お兄ちゃんの事目は腐ってるけどカッコイイって学校の友達に言ってるんだよ?」

比企谷「お前何勝手に人の事言いふらしちゃってんの?」

小町「まぁ嘘だけど」

比企谷(嘘なのかよ、実の妹にカッコイイとか言われてちょっと嬉しくなっちゃったじゃねえか)

小町「でも正直、今のお兄ちゃんは友達に合わせたくないなー・・・って」

比企谷「・・・」

小町「お友達とか家に連れて行くのもちょっと遠慮しちゃうかも・・・」

比企谷(口ではこう言ってるが、恐らく俺がこれからどうなろうが、こいつが外で俺に対する態度を変えることはしないだろう)

比企谷(その時俺は勿論、小町もあらぬ中傷を受けることになるかもしれない。以前ですらあまり良いとは言えなかった状況だ)

比企谷(それでもきっと家族だから、いつまでも俺の味方でいてくれるのだろう。俺がそうであるように)

比企谷(だからこれは、こいつなりの忠告なんだろう)

比企谷「・・・・なんとかする」

小町「うん、頑張ってねー」



比企谷「・・・せめてケチャップだけでも」

小町「えー」

比企谷(豆腐ハンバーグ味無しは流石にきついんだが・・・)

44: 2018/07/30(月) 22:29:19.62
比企谷「・・・もしもし?」

雪ノ下「あら、珍しいわね」

比企谷「今日はすまんかった」

雪ノ下「今更よ。貴方の屁理屈は今に始まったことじゃないわ」

比企谷「今日話したボランティアの件だが・・・」

雪ノ下「・・・そう、分かったわ」

比企谷「ああ、宜しく頼む」

ツーツー


由比ヶ浜「はぁ・・・」

アザレアヲーサカーセーテー

由比ヶ浜「ゆきのんからメールだ・・・ん」

雪ノ下:比企谷くん、参加するそうよ

由比ヶ浜「こういう時に言うのはゆきのんかぁ・・・そうだよね」

由比ヶ浜「でも・・・ちょっとはあたしに話してくれてもいいのに」

45: 2018/07/30(月) 22:37:20.50
当日

比企谷「うす」

いろは「先輩おっそーい!もう!」

比企谷「お前が早すぎるんだろ」

いろは「私はサッカー部の人たちと来たからボランティア組より早いんですー!」

比企谷「その一緒に来たサッカー部はどうした」

いろは「今着替えとかで準備してます」

比企谷(そう言う一色は既にスポーツウェアに着替えていた)

比企谷(肩にさりげないフリルのついたピンク色のあざといシャツは一色らしさがよく出ている。つーかシャツの丈妙に長くない?短パンちょっとしか見えてなくてなんか工口い感じになってるんだけど)

いろは「あれ?先輩そんなにこの恰好気に入ったんですか?」

比企谷「いや・・・」

いろは「この緩い感じが私にピッタリですよね~」

比企谷「お、おう」

いろは「は!もしかして服装褒めて好感度上げとか狙ってるんですか?ごめんなさいそういうの嬉しくなくはないですけどあざといので無理です」

比企谷(相槌しか打ってないのにフラれたんだが)



由比ヶ浜「やっはろー」

雪ノ下「こんにちは」

いろは「おはようございまーす、今日はよろしくでーす」

平塚「さて、集まったな」でぷーん

比企谷(ジャージがピチピチだ・・・なんて惨い・・・いかん涙が)

平塚「設営等はすでに終わっている。君たちにやってもらうのは給水スペースのドリンクの補充や参加者のマッサージ等だ。よろしく頼む」

46: 2018/07/30(月) 22:42:05.47
比企谷(先日は予算がないだのなんだの憶測で滅茶苦茶言ったが、思ったよりしっかりしたイベントだった)

マッチョマン「飲み物良いかな?」

比企谷「どぞ」

マッチョマン「ありがとう!」

比企谷「・・・ッス」

比企谷(子供からお年寄りまで参加する地域一体型の運動会みたいなものだ)

比企谷(このイベント自体、どうやら地域住民との交流を目的としたものらしい。御託はいいから金をくれ)

いろは「葉山先輩すっごーい!」

ドヨドヨ

葉山「フッ・・・!フッ・・・!」ガッシャガッシャ

戸部「隼人くんスゲー!これはベンチ90も余裕っしょー!」

マッチョマン「中々有望じゃないか・・・」

マッチョウーマン「貴方こそ、その筋肉・・・今度の大会狙ってますね?」

マッチョマン「君は・・・北区に出来たヨガジムの・・・噂は聞いてるよ」

比企谷(市区にあるスポーツセンターからトレーニング器具も借り、見事に地域のマッチョマン達の交流の場になっている。字にすると気持ち悪いな)

雪ノ下「はい、これで終わりです」

マッチョマン「ありがとう、君マッサージ上手いんだね、どこかのマネージャー?」

雪ノ下「いいえ。次の方」

マッチョマン「そうか・・・」トボトボ

比企谷(奉仕部女子がやってるストレッチ・マッサージのブースは見事に人だかりができている)

由比ヶ浜「んしょ・・・!んしょ・・・!」

マッチョマン「あ^~・・・いい・・・」

由比ヶ浜「身体柔らかいですね~」

マッチョマン「柔らかくしないと血流が悪くなるからね。代謝の良い体を作ってこそ良い筋肉は出来上がるんだ。全てにおいて大事なのは筋肉に快適な環境を提供することさ」

由比ヶ浜「そ、そうなんですねー!」
?

47: 2018/07/30(月) 22:45:41.55
比企谷「おつかれさん」スッ

由比ヶ浜「あ、ありがとー」

比企谷「大盛況だったな」

由比ヶ浜「あたしの番になった瞬間にみんなこっち来たから・・・タイミング悪くて大変だったよー」

比企谷(多分タイミングの問題じゃないと思うぞ)

由比ヶ浜「いやー、運動するっていいねー」

比企谷「そうか?」

由比ヶ浜「うん、最初はめんどくさいって思ってたけど・・・終わってみると意外と気持ちいいっていうか・・・」

比企谷「ほーん」

由比ヶ浜「さっきもね、二の腕を引き締めるストレッチをヨガジムの人に教えてもらってたんだけど・・・」

由比ヶ浜「ほらみて、んっ・・・」

比企谷(そういって由比ヶ浜は両腕を左右に広げて身体を捩じり始めた。なにやってだこいつ)

比企谷「い、いきなり何してんだよ」

由比ヶ浜「えー?こうやってやるんだよって教えてもらったから、ヒッキーもどうかなって」

比企谷「・・・」

比企谷(身体を捩じるたびに胸が形を変え、捩じることで由比ヶ浜の肺から漏れ出た空気がなんだか切なげな吐息を作り出している)

比企谷「わ、わかった、わかったからもういい」

由比ヶ浜「そう?ならいいんだけど・・・」

比企谷「多分だが、あまりそれは人前でやらないほうがいいぞ・・・ビッチっぽいし」

由比ヶ浜「な!?ヒッキーマジキモイんだけど!どこみてたの!?」

ギャーギャー

48: 2018/07/30(月) 22:52:49.28
いろは「せんぱーい」

比企谷「あん?なんだよ」

いろは「先輩もやってみてくださいよーこれ」

筋トレマシン「・・・」

比企谷「断る」

いろは「えー!?なんでですかー!?」

比企谷「周りのレベルが高すぎるんだよ。こんなところで恥かきたくねえ」

いろは「そんなことないですよー!ほら!中学生とかも軽い奴で挑戦してますよー!」

材木座「フッ・・・フッ・・・」ガッシャガッシャ

比企谷「あれは運動部だろう。完全引きこもりの俺には無理だ」

いろは「ぶー!」

材木座「フッ・・・フッ・・・」ガッシャガッシャ

比企谷(あんなのちょっと上げてみろ。翌日の筋肉痛がやばいにきまってる。しかも俺みたいな普段運動しないニート(しかもデブ)みたいな俺がやった時なんてもっとやばい)

いろは「先輩そのままで本当にいいと思ってるんですかー?」

比企谷(文化部にも課すあの謎のマラソン大会やスポーツ大会とかの学校行事をやった翌日くらいにはやばい)

いろは「ちょっと聞いてますかー?」

比企谷(つかあれやった後運動部の奴でもたまに筋肉痛やべーとか言ってる奴いるよね?そんなに辛いものなら猶更文化部の人間にやらせるもんじゃねえよ。体育祭・・・恐ろしい子・・・!)

材木座「フッ・・・フッ・・・」ガッシャガッシャ




比企谷「・・・・・何やってんの?」

材木座「フッ・・・!1セット終わった・・・ふん、他愛もない」

比企谷「・・・」

材木座「おや!?八幡ではないかぁ!奇遇だなこんなところで」

比企谷「ほんとにね」

材木座「いや、我のような普段運動しないニートまがい(しかもデブ)の人間がやるなんて絶対筋肉痛やばいと思っていたのだが、戸塚氏に『運動も健康に良いよ』と言われてな・・・たまにはこういうのも悪くはないかなと・・・」

比企谷(誰も聞いてねえよ。つーか戸塚に気遣われてるってどういうことだ。このデブ・・・あ、俺もだった)

いろは「ほらーこの人もやってるんですし、ちょっと先輩もやりましょーよ!ちょうどその腕のお肉、落とせるかもですよ!」

比企谷「ぐ・・・」

比企谷(本来であれば周りのトレーニング方法を参考にしてちょっと軽い運動を目立たないところでひっそりやろうかな~くらいに思っていたのだが・・・)

比企谷(なんでわざわざ知り合いの前でやるんだよ、もうただの羞恥プレイだろ)

材木座「問題ないぞ八幡。我と一緒に復唱だ。デブは意外と力持ち、さんはい」

比企谷(秋葉原のスーパーハッカーに謝れ)

49: 2018/07/30(月) 22:54:30.50
由比ヶ浜「わ!戸部っちすごーい」

戸部「マジ!?俺ってばイケてる感じ!?」ガシャガシャ

葉山「戸部、集中しろー」

由比ヶ浜「なんか男の子の筋肉ってカッコイイかもー」

戸部「・・・結衣」

由比ヶ浜「ん?」

戸部「・・・海老名さんも・・・好きかな?」

由比ヶ浜「んー・・・あ!でもこの間姫名が持ってた本は細マッチョな男の人が沢山出てたような・・・」

戸部「マジで!?うおおおおおおおおお!!!!やるしかないっしょー!!!!」ガシャガシャガシャガシャ

葉山「戸部、もう少しペース落とせって!もたないぞ!」

ワイワイ



比企谷「・・・」

いろは「先輩?」

比企谷「いや・・・」

比企谷(本当に馬鹿だな、俺は)

筋トレマシン「おっ」

いろは「あ」

比企谷「この器具の使い方・・・教えてくれ」

いろは「・・・はいっ」



平塚「うおおおおおおおおおお」ガシャガシャガシャガシャ

50: 2018/07/30(月) 22:56:58.27
・・・・・・・・・・・・・・・


平塚「そんなわけでラーメンを食べるのは暫く禁止した」

比企谷「はぁ」

比企谷(あのイベントがきっかけでジムトレーナーとも知り合った平塚先生はジムに通い詰め瞬く間に体重を減らし、元のプロポーションを取り戻すことに成功した)

比企谷(俺自身もそれから毎日ちょっとした運動を心掛けることにした)

比企谷(そしてトレーニングにハマった先生はそのままラーメンの食事制限を始めた。3日坊主にならずに済んだようだ)

比企谷(必然的に俺もラーメンを食べる回数が減っていき、まだ元の状態とは言えないが、少しづつ体重は戻ってきている)

平塚「それじゃ、私はジムに行ってくるから」

比企谷「わざわざそんなことを言いに部室まで来たんすか」

平塚「お前をラーメン中毒に引きずり込んだのは私だからな。すまなかった」

比企谷「気にしなくていいっすよ。俺がしたくてやったことなんで」

平塚「ふふ・・・そうだ。雪ノ下に礼は言ったか?」

比企谷「いえ・・・なんでまた?」

平塚「む?そうか・・・ははは、君たちは本当に不器用だな」

比企谷(そう言って笑った先生の顔は、ドキリとするほど優しい笑顔だった)

51: 2018/07/30(月) 23:02:03.70
ガララララララララララ


雪ノ下「あら、早いわね」

比企谷「先生に開けてもらった」

雪ノ下「そう」

比企谷「・・・」

雪ノ下「何かしら」

比企谷「いや」

比企谷(なんだかんだこいつのお陰でこうして今の俺がいるわけで)

比企谷(元々こういうことを言うのは得意ではないんだが、何故かこいつにこの言葉を言う時が一番緊張する)




小町『やっぱお兄ちゃんは痩せてるほうが一番だよー』

比企谷『以前の目も当てられない体型よりはマシだろうな』

小町『またそんなこといっちゃってー、本当は嬉しいんでしょ』

比企谷『うるせ』

小町『あ、運動ってー』

比企谷『あん?』

小町『自信をつける効果があるらしいよ、よくわかんないけど』

比企谷『なんだそりゃ』

小町『お兄ちゃんも自信、ついてきたんじゃない?』

比企谷『何に対してだよ。つーかこんなんでつくくらいなら俺はこんな腐った目になってないし、そもそも」

小町『・・・要はね、小町が何を言いたいのかっていうとー』

比企谷『・・・なんだよ』

小町『お礼言うんだよ?ってこと』

比企谷『・・・分かってる』



比企谷(小町と話した内容が脳をよぎった)

比企谷(こうして今俺がそれを言葉に出そうと思ったのは、もしかしたらその自信とやらのせいかもしれない)

比企谷(自分を信じるということは、それだけ生きてきた自分を認めるということだ)

比企谷(俺は今までもこれからも、どんなに辛い目にあったとしても絶対に後悔しない。そう考えて生きてきたつもりだ。自分が自身を認めてあげずに、誰が認めてくれるというのだろう)

比企谷(だからこれは決して付け焼刃なものなんかじゃない。これは元々俺の根底にある考え方だ。決して俺が変わったわけではない)

比企谷(だが、もしそれを改めて気付かせてくれたのであれば猶更、俺は彼女に言わなければならない)

52: 2018/07/30(月) 23:12:51.49
比企谷「・・・ありがとな」

雪ノ下「何のことかしら、いきなりお礼だなんて気持ち悪い」

比企谷「わからないならいい」

雪ノ下「そう」



由比ヶ浜「やっはろー」

雪ノ下「こんにちは」

由比ヶ浜「・・・ヒッキーやっぱり痩せたねぇ」

比企谷「・・・」

雪ノ下「ナル谷くん、ニヤニヤするのは気持ち悪いからやめてもらっていいかしら」

比企谷「う、うるせえな」

比企谷(そら人が毎日少なからず頑張ってんだ、報われる言葉が嬉しいのは何もおかしいことじゃない、だからニヤけるのも仕方がない)

比企谷(たまに電車でスマホ見ながらニヤニヤしてる学生とかおっさんとかも何かを毎日頑張ってスマホの中の美少女に褒めて貰ってるんだろう。やっぱソシャゲってすげえわ)

由比ヶ浜「うん・・・やっぱ、カッコいいなぁ・・・」

比企谷「・・・・」

雪ノ下「・・・・」

由比ヶ浜「・・・あれ?今私、声に出てた?」

比企谷「・・・」

雪ノ下「・・・ええ」

由比ヶ浜「ああわわわわ忘れてっ!ああ~~・・・」

比企谷(由比ヶ浜が頭を抱えてしゃがみ込み、部室には気まずい空気が漂う)

比企谷(部室内をなんとも言えない静寂が包み込むと、窓の外から1週間しか寿命がないと言われる男たちの叫び声が聞こえてきた)

雪ノ下「夏ね」

比企谷「夏だな」

由比ヶ浜「露骨に誤魔化されるとそれはそれで嫌なんだけど!?」

比企谷(ふと、戸塚に海に誘われていた事を思い出した)

比企谷(それまでにもう少し運動を頑張ろうかなーと一瞬思ってしまった自分がいた、が、それを全力で殴り倒し)

比企谷(これから始まる夏休みを冷房の効いた快適な自室でどう自由に過ごそうか考えながら、この退屈で悪くない時間を過ごす事にした)

53: 2018/07/30(月) 23:15:44.73
おわりですhtml依頼だしてきます

56: 2018/07/31(火) 00:12:43.08
綺麗に終わったな
おつおつ

引用元: 八幡「平塚先生とラーメンを食べ続けた結果」