1: 2012/08/21(火) 00:04:25.99 ID:Wa41tEag0
律(今日は私の誕生日)

律(せっかくなので有給をとってみたのはいいけど…)

律(澪…は仕事だろうし、唯やムギも仕事中のはず)

律(梓にでも連絡を入れてみようかな…)

ピンポーン

ヤマトの人「ヤマト便でーす」

律「あっ、はーい」ガチャッ

ヤマトの人「じゃあ、ここにサインしてもらえますか」

律「……はいっ」カキカキ

5: 2012/08/21(火) 00:07:33.75 ID:Wa41tEag0
ヤマトの人「あっ、どうも。じゃあ荷物ここに置いときますね」

ヤマトの人「物凄く重いので気をつけてください。では」バタン

律「でっかいダンボールだなぁ……お、重っ!」

律「送り主は…おっ、ムギだ」

律「これはズバリ」

律「誕生日プレゼントだろうなぁ」

律「うぅ…なんて友達想いのいい奴なんだ」

律「じゃあ、さっそく開けてみよう」バリバリ パカ

紬「……」

律「……」パタ

紬「だ、黙って蓋を閉めちゃ嫌っ!」

13: 2012/08/21(火) 00:17:00.92 ID:Wa41tEag0
律「だってなぁ…」

紬「えーっと。おはよう、りっちゃん」

律「えーっと…琴吹紬さん…?」

紬「もうっ…昔みたいにムギって呼んで」

律「……」

紬「……」

律「……」

紬「あのっ…」

律「なに?」

紬「おトイレ」

律「…使っていいよ」

紬「……そうじゃなくて」

律「……じゃあなに」

紬「一人じゃ出れないから、出るの手伝って欲しいの…」

16: 2012/08/21(火) 00:25:06.71 ID:Wa41tEag0
律(ムギの奴何しにきたんだ…)

律(私がプレゼントでーす! ってか…)

律(ないな……いや、ムギならありえる)

律(そういえばムギ、ん? …メイド服…?)

紬「わっ!!」

律「うおぁぁああああああああああああ!!!!」

紬「りっちゃんいいリアクションよ!」

律「ふぅ、心臓が止まるかと重ったぞ」

紬「ふふふ。驚かし甲斐があるわー」

律「それでムギ、今日はどうしたんだ。まさか『私がプレゼントなのー』ってことか?」

紬「りっちゃん……ひょっとしてエスパー?」

律「いやいやいやいや、本当にそうなのかよ」

紬「うん。今日はりっちゃんにご奉仕しようと思って。迷惑だったかな?」

律「いや……びっくりしたさ。でも…」

紬「でも?」

21: 2012/08/21(火) 00:36:25.32 ID:Wa41tEag0
律「嬉しいよ。きてくれてありがとう」

紬「じゃあさっそくご奉仕しなきゃ」

律「なぁ、その前に一つ聞いておきたいんだが」

紬「なぁに?」

律「私が家にいなかったらどうするつもりだったんだ?」

紬「りっちゃんなら自分の誕生日に有給取ると思ったの!」

律「エスパーかよ!」

紬「私、りっちゃんのことならなんでもわかるの」

律「え”っ」

紬「そんなことよりご奉仕しなきゃ。まずは紅茶をいれてあげるね」

律「……」

33: 2012/08/21(火) 00:44:18.04 ID:Wa41tEag0
律(ムギが紅茶をいれはじめてしまった)

律(あっ、なんだかこの光景懐かしいなぁ)

律(ムギのメイド服姿を見るのはいつ以来だろう)

律(いつもあんな風に楽しそうにお茶をいれてたな……)

律(……)

紬「はいっ、どうぞ」

律「あっ、ありがとー」ゴクゴク

律「ぷはっ、やっぱりムギの紅茶だなー」

紬「ふふっ、りっちゃんおやじくさーい」

律「な、なんだとー」

紬「じゃあ次はお部屋のお掃除してあげるね」

律「えっ、そんなの別にいいよ」

紬「でも結構汚れてるよ。高校時代は結構綺麗だったのにね」

律「あぁ、仕事から帰ってくると掃除する気力もなくてさー」

54: 2012/08/21(火) 00:52:30.53 ID:Wa41tEag0
紬「休みの日は休みの日で気力が沸かないんでしょ」

律「さすがムギ、よくわかっていらっしゃる」

紬「じゃあ掃除はじめー」

律(ムギのやつ本当に掃除をはじめちまった)

律(実に楽しそうだ)

律(……)

律(よしっ)

律「私も手伝うよ」

紬「えっ、りっちゃんは休んでてくれればいいのに」

律「ムギが楽しそうにしてるのを見たら、私も一緒にやりたくなってんだ。ほら、道具を貸してよ」

紬「やっぱりりっちゃんは性格がイケメンさんね」

律「そ、そんなんじゃないって」

57: 2012/08/21(火) 00:53:09.05 ID:Wa41tEag0
紬「掃除終わりー」

律「随分きれいになったな」

紬「じゃあお昼ごはん作ってあげるね」

律「何を作るの?」

紬「オムライスを作ろうと思うんだけど、どうかな?」

律「おう」

紬「ふふーんふふふーん」

律(本当にメイドさんがいるみたいだ)

律(メイドさんと言えば)

律「ムギってメイド喫茶の経営をやってるんだよな」

紬「うん。女性客専用のメイド喫茶」

律「経営成り立ってんの?」

紬「うん。意外と需要あるのよー」

律「へぇ~、私にはわからない世界だな」

59: 2012/08/21(火) 00:53:42.07 ID:Wa41tEag0
紬「残念。りっちゃんが店員さんやってくれれば、りっちゃん目当てのお客さんが増えるのに」

律「私じゃ無理だよ…」

紬「そんなことないと思うけど…。りっちゃんのほうはどう?」

律「私か…私は……」

紬「うん」

律「毎日結構たいへんだよ」

律「最近やっと研修期間が終わったんだけどさ」

律「最初はなにやっても上手くいかなかったんだ」

紬「うん」

律「で、毎日毎日仕事の山に追われて夜遅くまで残業する日々が続いたよ」

律「でも、最近はちょっとだけ仕事になれてきたんだ」

紬「ふぅん。よかったね」

律「それがそうでもないんだ」

律「慣れてくると、今度は新たな業務をやらされるから、結局仕事の山からは解放されないわけ」

紬「大変ね」

63: 2012/08/21(火) 00:54:54.02 ID:Wa41tEag0
律「そういやムギはどうなんだ? 残業とか休みとか」

紬「私の場合、仕事は家に持って帰っちゃうから…」

律「それはそれで大変そうだな」

紬「そうでもないわ」

律「休みは?」

紬「げっきゅういちにちせい」

律「月給一日制?」

紬「ちがうちがう。月休一日制」

律「え”っ。でも定休日とか」

紬「納品があるから……改装とか店舗整備も必要だし」

律「うげぇっ、それはキツイ。私だったらもたないな」

紬「でも楽しいわよ。かわいい女の子に囲まれて働くのは」

律「わからねー」

紬「……できた!」

67: 2012/08/21(火) 00:55:44.44 ID:Wa41tEag0
律「うおっ、なんだこれ」

紬「ケチャップでりっちゃんの顔を描いてみたのー。お店でもやってるサービスよ」

律「…ちなみに幾ら?」

紬「タダ……と言いたいところだけど、料金はオムライスに含まれてるわ」

律「……ちなみにオムライスのお値段は?」

紬「1,200円」

律「…微妙な値段だ」

紬「さぁ、召し上がれ」

律「いただきまーす」パクッ

紬「どうかな?」

律「うん。普通に美味しいよ」パクッ

紬「そう? それはよかった」

律「……手料理を食べるのって久しぶりだなー」

72: 2012/08/21(火) 00:57:16.15 ID:Wa41tEag0
紬「作ってくれる人、いないんだ」

律「うん。…って私だって女だぞー。作ってあげる側だ!」

紬「自炊は?」

律「ごめんなさい。まったくしていません」

紬「そう…でも仕方ないよね」

律「うん。疲れて自炊する気になれないんだ」

紬「じゃあ今日は思う存分私の料理を食べて」

律「ああ」パクッ

紬「……」ニコニコ

74: 2012/08/21(火) 00:58:10.56 ID:Wa41tEag0
紬「じゃあ次は耳掃除してあげるね」

律「え”っ」

紬「お店でもやってるサービスなのよー」

律「ちなみにお値段は?」

紬「650円」

律「微妙だ」

紬「はいっ、ここに横になって」ポンポン

律「…まぁいいか」

紬「むむむ。りっちゃん意外と耳垢たまってますね」カキカキ

律「そうなのか?」

紬「うん。お店に来る人でもこんなにたまってる人は珍しいわ」カキカキ

律「…ちょっと傷ついた」

紬「りっちゃんは繊細ねー」カキカキ

律「よせやい」

78: 2012/08/21(火) 00:58:51.98 ID:Wa41tEag0
紬「じゃあ次は反対側を見てあげるね」

律「あぁ、頼む」ゴロン

紬「……」カキカキ

律「……」

紬「……」カキカキ

律「なぁ、ムギ」

紬「なぁに、りっちゃん」カキカキ

律「月休一日なんだろ?」

紬「うん」

律「月に一度しかない休みを私のために使ってよかったのか?」

紬「うん」

律「それは私がHTTの仲間だから?」

紬「うん。でも…それだけじゃないよ」

律「うん?」

81: 2012/08/21(火) 00:59:48.09 ID:Wa41tEag0
紬「ねぇ、りっちゃん」

律「な、なんだムギ、突然顔を近づけてきて」

紬「私ね…実は…」

律「……ムギ」

紬「ずっとまえからりっちゃんのことが好きだったの」チュ

律「……」

紬「……」

律「……」

紬「……ごめんね」

律「……」

律(私、ムギにキスされた?)

律(キス…私のファーストキス)

律(ムギに、奪われた……)


律「……いつからなんだ?」

83: 2012/08/21(火) 01:00:34.54 ID:Wa41tEag0
紬「最初から」

律「最初からって…」

紬「高校1年生の頃から」

律「え”っ」

紬「今年で八年目」

律「ずっと私のことを好きだったんだ…」

律「……なんでいままで黙ってたの?」

紬「私が告白しちゃったら、HTTの空気が壊れちゃうかと思ったの」

律「……」

紬「それに、付き合わなくても一緒にいられるだけで幸せだったから」

律「そうなんだ」

紬「……本当のことを言うと、今日はりっちゃんに告白するためにきたの」

律「……」

87: 2012/08/21(火) 01:01:46.21 ID:Wa41tEag0
紬「最近全然りっちゃんに会えなくて寂しくて」

紬「気づいたら、お店の子に頼んで、ヤマト便で送ってもらっちゃってた」

律「おいおいおい」

紬「ねぇ、りっちゃん。りっちゃんの気持ちを聞かせて」

律「……」

紬「……」

律「……ファーストキスだったんだぞ」

紬「えっ」

律「ファーストキスだったんだ」

紬「あっ、うん」

律「……」

紬「……」

律「わかれよ」

90: 2012/08/21(火) 01:02:41.11 ID:Wa41tEag0
紬「……どういうこと?」

律「責任とれってこと」チュ

紬「えっ、りっちゃん。それって」

律「正直、自分でもムギのことが好きなのかどうか分からないけど」

律「告白されて悪い気はしなかった」

紬「うん」

律「だから付き合ってもいいなーって思ったんだ」

紬「女の子同士だけどいいの?」

律「ムギがそれを言うか」

紬「……うれしい」

律「なぁ、ムギもファーストキスだったのか?」

紬「……」

律「……つむぎさん?」

紬「えーっと実は…」

100: 2012/08/21(火) 01:05:42.93 ID:Wa41tEag0


律「……飲み会で酔った女の子にキスされたと」

紬「職場の子なんだけどね。油断が過ぎたわ」

律「……なんかムカつく」

紬「嫉妬?」

律「そうかも」

紬「え”っ」

律「…? 何かおかしなこと言ったか?」

紬「……うん。だってりっちゃん私のことを好きかどうかわからないんでしょ」

律「それでもムカツクんだ」

紬「……そうなんだ。じゃあさ」

律「なに?」

紬「舌いれてキスしよ。それはやったことないから」

律「……うん」

107: 2012/08/21(火) 01:07:01.25 ID:Wa41tEag0
梓(今日は律先輩の誕生日)

梓(澪先輩とムギ先輩が企画立案した誕生パーティーが行われる予定です)

梓(私は今、律先輩がちゃんと家にいるか確認するために、律先輩のアパート前にいます)

梓(……あれっ、鍵が空いてる。無用心ですね…)

梓(入ってみよ)

梓(あっ、律先輩いたいた。横にいるのはムギ先輩?)

梓(……えっ)

くちゅ、ちゅぱっ、ちゅっ、くちゅっ…

梓(……)

梓(……)

梓(……)

梓(なんでふたりがディープキスしてるの~~!)

紬「あっ、梓ちゃん」

律「え”っ」

112: 2012/08/21(火) 01:09:34.80 ID:Wa41tEag0

律(それから色々あった)

律(梓が唯や澪にキスの件を触れ回ったせいで、随分と追求された)

律(恩那組やわかばのメンバーも集まり、狭い部屋でパーティーは盛大に催された)

律(皿や食材はムギの店が提供してくれたそうだ)

律(持ってきてくれたのは直だ。今はムギの店で働いているらしい)

律(沢山の酒が振舞われ、数時間後にはみなダウンしてしまった)

律(素面のナオがムギ以外の全員を送り届け、最後にムギだけが残った)


紬「直ちゃんいい子でしょ。私のところで働いてくれてるのよ」

律「なぁ、ムギ?」

紬「なぁに、りっちゃん?」

律「ひょっとして、寄ってムギにキスしたのって直のやつか?」

紬「……」

律「おいっ」

紬「きっと菫と間違えたのよ。ほら、同じ金髪だし」

115: 2012/08/21(火) 01:11:08.92 ID:Wa41tEag0
律「あの二人付き合ってるの?」

紬「そうじゃないけど……」

律「なぁ、ムギ。ちょっと考えてることがあるんだ」

紬「なぁに?」

律「さっき言ってたじゃん。私が働けば客が増えるって」

紬「うん。言ったわ」

律「パーティーの間中考えてたんだ」

律「私達さ……付き合ったとしても、ほとんど逢う時間がないわけじゃん」

律「それならさ、いっそムギの店で働かせてもらうのも悪くないかなって」

律「それにさ、今日のムギを見てて私、気づいたんだ」

律「働いてるムギを見るのが自分は好きなんだって」

紬「…」

118: 2012/08/21(火) 01:11:56.61 ID:Wa41tEag0
律「…ムギ?」

紬「それは…やめたほうがいいと思う」

律「なんでだ?」

紬「さっき仕事がきついって言ってたりっちゃん、楽しそうな顔してたから」

律「そんな顔してたか?」

紬「仕事が大変だ―大変だ―って言ってるお父さんの顔、してたよ」

律「どんな顔だよ!」

紬「とってもいい顔」

127: 2012/08/21(火) 01:15:23.94 ID:Wa41tEag0
律「……そうだな。今の仕事から逃げるのは私も嫌だし。でもそれだとムギと――」

紬「ねぇ、この近くにいいアパートがあるの」

紬「私とりっちゃんの職場の中間あたりにあるアパートなんだけどね」

紬「一人で住むにはちょっとだけ高いの」

律「いくらだ?」

紬「月13万円」

律「微妙だ」

紬「でね」

律「言わなくてもわかってるよ」

紬「もうっ、大好き」

律「それもわかってる」

紬「りっちゃん」

律「なんだ?」

紬「生まれてきてくれてありがとう」

おしまいっ!

130: 2012/08/21(火) 01:16:10.78

適度に読みやすかった

133: 2012/08/21(火) 01:16:45.11
おつおつ
りっちゃんおめ

135: 2012/08/21(火) 01:17:13.59

よかった

引用元: 律「ダンボールからムギ」