1: 2013/07/22(月) 20:32:21.14 ID:JcVVI1gV0
~ 神谷道場 ~

剣心「志々雄が京都で暗躍している……!?」

大久保「ああ、全身を焼かれながらも志々雄真実は生きていた」

大久保「そして京都を拠点に一大兵団を結成し」

大久保「この国にもう一度動乱を起こさんと画策しているのだ」

剣心「……なるほど」

剣心「あなたがここに来た理由が分かりました」

剣心「つまり俺──拙者に志々雄を暗頃しろ、と」

薫「えっ……!」

大久保「いや、緋村に動いてもらう必要はない」

大久保「志々雄を倒すのは、内務卿であるこの私だ!」

剣心「大久保さん!?」

2: 2013/07/22(月) 20:37:21.44 ID:JcVVI1gV0
剣心「いや……こういうことはきちんと戦闘訓練を積んだ人間に任せた方が──」

大久保「心配無用」

大久保「私も内務卿を務める傍ら、しっかり鍛錬は積んできた」

大久保「志々雄などに負けはしない」ニッ

大久保「我々はこれまで散々緋村に頼り、甘えてきた」

大久保「これ以上、君に修羅場に立って欲しくはないのだ」

大久保「これからは、君は君の幸せを追って欲しい」

剣心「だったらなぜ、拙者と斎藤を戦わせたんですか!?」

大久保「斎藤君──今は藤田君だが。彼から、君が弱体化していると報告を受けてな」

大久保「志々雄が君を脅威と判断し、狙う可能性は十分にある」

大久保「だからもしもの時のために、斎藤君と戦い実戦のカンを取り戻して欲しかった」

剣心「そうだったんですか……」

3: 2013/07/22(月) 20:38:57.86
政務の合間の鍛錬でししおを越えるとか・・・

4: 2013/07/22(月) 20:39:44.09
警察を使うんじゃないのかよ

7: 2013/07/22(月) 20:42:40.21 ID:JcVVI1gV0
大久保「……さて、そろそろ私は帰らせてもらおう」

大久保「仲間を大切にな、緋村」

剣心「……大久保さん」

剣心「十年前より随分やつれましたね」

剣心「やはり、新時代を作るというのは旧時代を壊すことより」

剣心「はるかに難しいということですか……?」

大久保「やつれたというより、引き締まったというべきかな」ニッ

大久保「私の肉体は幕末の頃よりも充実しているよ」

剣心「そ、そうでござるか……」

大久保は道場をあとにした。

8: 2013/07/22(月) 20:43:02.57
志々雄一派ってさ
兵糧攻めすればよくね?

9: 2013/07/22(月) 20:48:42.30 ID:JcVVI1gV0
薫「ねぇ、剣心……」

薫「私、やっぱり大久保卿だけじゃ無理だと思うわ」

薫「剣心も協力した方がいいんじゃ……」

左之助「俺もそう思うぜ」

左之助「志々雄ってのは、剣心の後釜を担うほどの剣客なんだろ?」

左之助「大久保一人で太刀打ちできる相手じゃねぇ」

弥彦「あのオッサン、とても戦えるようには見えねーしな」

恵「そうねえ、ほとんど自殺行為だわ」

剣心「うむ、拙者もそう思っていた」

剣心「元維新志士として、むざむざ大久保さんを氏なせるわけにはいかない」

剣心「かといって拙者も人斬りに戻るわけにはいかぬ」

剣心「さっそく明日にでも、大久保さんの護衛を買って出るでござるよ」

薫「うん……大久保卿をお願いね」

11: 2013/07/22(月) 20:52:26.93 ID:JcVVI1gV0
翌日──

~ 大久保邸 ~

大久保「ほう、私の護衛につきたいと?」

剣心「ええ、やはり不安なので……」

大久保「ありがとう、緋村」

大久保「私に護衛など必要ないが、かつての同志の頼みを無下に断ることもできない」

大久保「これからは、君に護衛してもらうとしよう」

剣心「ありがとうございます」

大久保「そして、“内務卿”の戦闘というものを、しっかり勉強することだ」ニッ

剣心(内務卿は戦闘をする職業じゃないでござるよ、大久保さん……)

13: 2013/07/22(月) 20:57:30.38 ID:JcVVI1gV0
明治十一年 五月十四日──

~ 紀尾井坂 ~

大久保と剣心は馬車に乗っていた。

ガラガラガラ……

剣心「大久保さん、京都へはいつ発つでござるか?」

大久保「今日の会議でひとまずの業務を皆に引き継いだ後──」

大久保「京都に向かおうと思う」

大久保「ゆえに今日の会議はかなり長引くだろう」

大久保「内務卿というのも、なかなか不便なものだよ」

剣心「分かりました」

大久保「私が動かねば、この国は滅びる」



「この国の行く末なんて、これから氏ぬ人には無用な心配ですよ」ガチャッ

14: 2013/07/22(月) 21:03:26.29 ID:JcVVI1gV0
宗次郎「大久保さん。あなたのお命、いただきます」ニコッ

剣心(走行中の馬車に乗り込んできただと!?)

剣心「大久保さん、拙者の後ろに──」バッ

大久保「曲者め!」

大久保「はっ!」シュッ

ドンッ!

宗次郎「うわぁっ!」ドザァッ

大久保の掌底が、宗次郎を馬車から叩き落とした。

剣心「お、大久保さん……おみごとでござる」

大久保「今のが大久保流格闘術だ、緋村」ニッ



宗次郎「いたたぁ……やれやれ失敗しちゃったなぁ」

宗次郎「これじゃ志々雄さんに怒られちゃうや」

15: 2013/07/22(月) 21:05:40.84
その時歴史が動いた

17: 2013/07/22(月) 21:08:38.85 ID:JcVVI1gV0
さらに──

大久保(前方に殺気!)ピクッ

大久保「とうっ!」バッ

剣心「大久保さん!?」

馬車から飛び降りる大久保。

大久保「おはよう、君は私の命を狙っていた石川県の島田一郎君だね?」スタッ

島田「うわっ!? お、大久保!?」チャキッ

大久保「ここに芸術家(あるていすと)に作らせた、私そっくりの人形がある」スッ

大久保「私はまだ氏ねない。これで勘弁してもらえないだろうか?」ニッ

島田「いいだろう……!」

大久保(これで私は氏んだことになり、自由に動ける……)



これが、明治十一年五月十四日「紀尾井坂の変」の真相である。

20: 2013/07/22(月) 21:14:18.65 ID:JcVVI1gV0
「号外! 号外!」

「大久保卿暗殺!」 「内務卿暗殺!」 「明治政府の頂点が暗殺!」

大久保「号外とは珍しいな」ピラッ

大久保「これは!?」

大久保「緋村、なんと私が暗殺されてしまったらしい!」

剣心「なにをいっているでござるか、大久保さん……」

大久保「“内務卿ジョーク”というやつだよ、緋村」

大久保「ちなみにジョークというのは英語で、日本語では冗談という意味だ」

剣心(イライラするでござる)

ザワザワ……

「オイ……あれ、大久保じゃね?」 「そっくりだ!」 「え、でも暗殺されたって」

大久保「おっと騒ぎになるとマズイ。そろそろ京都に向かおう」

剣心「はい……」

22: 2013/07/22(月) 21:19:45.69 ID:JcVVI1gV0
~ 東海道の森 ~

巻町操と遭遇した大久保と剣心。

操「ねえアンタたち、あたしは御庭番衆なんだけどさ」

操「蒼紫様のこと、知らない?」

大久保「少し待っていなさい。大久保流探索術ですぐに調べる」

大久保「むむむ……」カッ

大久保「四乃森蒼紫君は現在、樹海の奥深くで修業をしている」

大久保「君のような少女がたどり着ける場所ではない。君は我々と同行しなさい」

操「ふうん……ま、いいわ。蒼紫様の修業のジャマしたくないしね」

剣心「なんなんですか、大久保流探索術というのは?」

大久保「私の第六感で、人の居場所を探り当てるという技だ」

剣心「ようするに勘でござるか」

23: 2013/07/22(月) 21:23:49.66 ID:JcVVI1gV0
しばらく歩くと、一人の青年が倒れていた。

栄一郎「うぅ……」

剣心「!」

剣心「なにか……言い残すことはないでござるか……」スッ…

大久保「待ちたまえ、緋村。まだ助かる」

大久保「はっ!」ドンッ

三島栄一郎は回復した。

栄一郎「ありがとう、すっかり回復したよ!」

大久保「大久保流治癒術が役に立ったようだ」

操「すっごい……」

剣心「大久保さん……こんな術も使えたとは……」

栄一郎「そうだ! 頼みがある、志々雄の手から村と弟たちを助けてくれ!」

大久保「安心しなさい、志々雄は私が倒す!」

27: 2013/07/22(月) 21:28:45.44 ID:JcVVI1gV0
~ 新月村 ~

栄次「兄貴を助けてくれて、ありがとう!」

栄次「だけど頼む! 俺のお袋と親父も助けてやってくれ! このままじゃ尖角に!」

大久保「大丈夫だ。すでに二人は大久保流救出術で、救出してある」

栄次「本当か!?」

大久保「内務卿は嘘をつかんよ」

大久保「だが、君たち家族はもう新月村にはいない方がいいだろう」

大久保「君たちは斎藤君の妻である時尾さんのところへ行き、世話になるといい」

栄次「うん、分かった!」

剣心「大久保さん、斎藤に無許可でそんなことをしてもいいでござるか?」

大久保「内務卿の方が警部補より偉いから、問題あるまい」ニッ

大久保「それより緋村、湯治をしているという志々雄を倒しに行くぞ」

彼らを遠くから見ていた斎藤。

斎藤(まあ別にかまわんがな……時尾はできた女だ)

28: 2013/07/22(月) 21:33:30.37 ID:JcVVI1gV0
~ 志々雄の館 ~

大久保、剣心、斎藤の三人が乗り込む。

志々雄「嬉しいねぇ」

志々雄「わざわざ俺のために内務卿、人斬りの先輩、元新撰組組長が来てくれるとは」

大久保「無駄話をするつもりはない」

大久保「日本の未来のため、この明治政府内務卿がお前を倒す!」

志々雄「フッ……だったらまずはコイツを倒してみな」パチンッ

尖角「ヴァアアアアアッ!」グオオッ

大久保「!」

ズガァッ!

尖角の握り懐剣が、大久保を直撃した。

剣心「大久保さん!」

剣心(しまった! いつの間にか大久保さんなら大丈夫と思ってしまっていた!)

30: 2013/07/22(月) 21:37:39.08 ID:JcVVI1gV0
大久保「効かんな」

尖角「なにィ!?」

大久保「大久保流格闘術には、大きく分けて三つの流れがある」

大久保「己で技を作る『創業』、技で敵を討つ『発展』、自分の身を守る『守成』」

大久保「今は『守成』を使わせてもらった」

大久保「いくぞ!」

大久保「大久保流奥義──」

大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

尖角「ぐはァ!」ドサッ

斎藤「国民国家(ネイションステイト)……」

斎藤「御上が全てを決めるのではなく、国民が自分たちの道を選ぶという国家か」

斎藤「壮大すぎる“理想”だな」

剣心「素晴らしい理想でござるが、なにも技名にしなくても……」

32: 2013/07/22(月) 21:43:39.16 ID:JcVVI1gV0
志々雄「やるじゃねえか、さすがは内務卿といったところか」

大久保「次はお前だ」

志々雄「フ……」

志々雄「明治政府の頂点たる内務卿と、明治政府転覆を狙う修羅」

志々雄「二人がやり合う場として、ここは舞台として余りにも相応しくねぇ」

志々雄「悪いが、退散させてもらうぜ」スッ…

大久保「待て! 国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

大久保「逃がしたか……」

剣心「大久保さん、おそらく志々雄は京都に戻るはず」

剣心「京都にある操殿の家は料亭だというし、一度そこで作戦を立てましょう」

大久保「そうだな」

33: 2013/07/22(月) 21:47:37.35 ID:JcVVI1gV0
~ 葵屋 ~

操「じいや、ただいま!」

翁「ひょーっ、操! まったく心配をかけおって!」

翁「おや、そちらのお二人は──」

翁「もしや“明治政府内務卿”殿と“人斬り抜刀斎”殿ですかな?」

大久保「!」

剣心「!」

大久保「私は表向きは氏んだことになっているはずだが──」

翁「御庭番衆京都探索方“翁”、情報力はまだまだ健在ですぞ」

翁「かつてはあなたがた維新志士と敵対する立場だったとはいえ、この翁」

翁「打倒志々雄一派に喜んで協力しますぞ」ニッ

大久保「ありがとう、翁殿」

34: 2013/07/22(月) 21:50:58.74 ID:JcVVI1gV0
剣心「京都は……久しぶりですね」

剣心「日本全国流れましたが、もう京都に来ることはないと思っていました」

大久保「君にとっては、嫌な思い出も多い街だろう」

大久保「すまないな、こんなことに巻き込んでしまって」

剣心「いえ……ですが、せめてこの逆刃刀をくれた恩人には挨拶がしたい」

剣心「すでに翁殿の調査で、逆刃刀を作った赤空殿は亡くなられたと判明しましたが」

剣心「そのご子息である青空殿が京都で店を出していると聞いたので」

剣心「挨拶をして、墓参りだけでもさせてもらおうかと思っています」

大久保「緋村の恩人ということは私の恩人ということでもある」

大久保「是非、私も同行させてくれ」

剣心「ありがとうございます、大久保さん」

36: 2013/07/22(月) 21:54:22.94 ID:JcVVI1gV0
~ 青空宅 ~

バキィッ!

青空「ぐはァッ!」ドサッ

梓「あなた!」

張「ワイ、強情なヤツ見るとイラついてたまらんのや」

張「さっさと、赤空最後の一振りの在り処を吐けや」

張「でないとワイ、イライラついでにこの赤ん坊を斬っちまうかもしれへん」ニィッ

伊織「びえぇ~~~~~んっ!」

大久保「何をしている!」ザッ

剣心「赤ん坊から離れるでござる!」ザッ

張「なんや? 氏にとうなかったら、部外者は──」

張「!」

張(コイツらはもしや……大久保と抜刀斎!?)

39: 2013/07/22(月) 21:59:23.92 ID:JcVVI1gV0
張「ついとるで!」

張「内務卿と抜刀斎の首を手土産にすりゃ、志々雄様もお喜びになるやろ!」

大久保「お前は志々雄の手下か」

張「特攻部隊・十本刀“刀狩”の張や。どうせ氏ぬんやから、わざわざ覚えんでええで」

大久保「来るがいい。内務卿の力を思い知らせてやる」

張(大久保に武器はない……なら間合いの外から刻むんが得策やな)

シュバァッ!

大久保「くっ!」サッ

張「よう避けよった!」

青空「あれは、父が作った後期型殺人奇剣“薄刃乃太刀”!」

剣心「極限まで薄く鍛えられた刃が、変幻自在の太刀筋を生むでござるか……!」

シュルンッ! シュババァッ! ヒュバァッ!

張「ハハハ、手も足も出せへんとはまさにこのことやな!」

41: 2013/07/22(月) 22:03:41.86 ID:JcVVI1gV0
大久保「ならば──大久保流模倣術!」サッ

張「模倣? 薄刃乃太刀どころか刀すらないワレが、ワイのなにを真似るんや!?」

大久保「むろん──君の刀の動きだ」ウネウネ

張「は!?」

大久保「はあああああっ!」ウネウネウネウネ

剣心「大久保さんの体が、薄刃乃太刀のようにしなっているでござる!」

青空「うっ……人間技じゃない……!」

伊織「おひげ、うねうね~」キャッキャッ

張「なんや!? まるで別人やんけ! っていうか人間やないで、コレ!」

大久保「内務卿たる者、これぐらいはできねばな」ウネウネウネウネ

張「うわぁぁぁっ! こっち来んなやぁぁぁっ!」シュバッ

大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

張「ぐおァ……!」ドサッ

42: 2013/07/22(月) 22:04:09.33
クソワロタ

45: 2013/07/22(月) 22:10:00.13 ID:JcVVI1gV0
“刀狩”の張は、斎藤によって引き取られた。

青空「ありがとうございました……!」

伊織「うねうねおひげ~、あくすあくす」

大久保「よしよし」ギュッ…

青空「緋村さん、そういえば父から遺言を授かっていたのです」

青空「『十字傷の侍が来たら、最後の一振り“逆刃刀・真打”を託せ』と」

青空「どうぞ、お受け取り下さい」スッ

剣心「しかし……」

大久保「緋村、受け取りたまえ。内務卿命令だ」

剣心「……かたじけない」

剣心「赤空殿、“逆刃刀・真打”……ありがたく頂戴いたす」

大久保「よし」

大久保「しかし、十本刀ということは、あと九人も手練がいるということか……」

剣心「ええ、苦戦は免れないでしょう」

46: 2013/07/22(月) 22:15:06.45 ID:JcVVI1gV0
~ 葵屋 ~

薫「剣心!」

剣心「薫殿! それに弥彦も!」

弥彦「大久保のオッサンと京都に向かったっていうから、心配になって来ちまったぜ」

薫「大久保卿もご無事でなによりです。暗殺されたことになってますけど」

大久保「ありがとう」

大久保「しかし、志々雄一派はどうやら想像以上に手強いようだ」

大久保「今のままの戦力では、少々不安が残る……」

剣心「大久保さん」

剣心「拙者とともに、師匠のもとで修業をしませんか?」

大久保「緋村の師匠……つまり君に飛天御剣流を教えた……?」

剣心「ええ、実は翁殿に捜索をお願いしていて、先ほど見つかったでござる」

大久保「そうだな、ぜひお願いさせてもらおう」

49: 2013/07/22(月) 22:19:26.77 ID:JcVVI1gV0
~ 山小屋 ~

剣心「師匠、十五年前やり残した奥義の伝授──今こそお願いしたい!」バッ

大久保「明治政府内務卿であるこの私に──どうか稽古をつけていただきたい!」バッ

比古「バカ弟子は──とりあえず蹴っておくとして」ドゴッ

剣心「おろっ!?」ドサッ

比古「大久保、お前は自由の剣である飛天御剣流を、権力の武器として利用した」

大久保「……否定はしない」

比古「飛天の技を継ぐ者として、はっきりいって俺はお前を許せねェ」

比古「だが──俺も剣客であり陶芸家のはしくれ」

比古「“本物”を見分ける目はたしかなつもりだ」

比古「お前の目──国の未来を想う気持ちはまちがいなく本物だ」

比古「いいだろう大久保! お前にはこの俺が直々に稽古をつけてやる!」バサッ

大久保「ありがとう……!」

剣心「し、師匠! 拙者は!?」

比古「ああ、ついでにお前もな」

50: 2013/07/22(月) 22:23:24.09 ID:JcVVI1gV0
剣心「おおおおおっ!」ビュアッ

比古「お前は読みの迅さに頼りすぎだ!」シュッ

ドゴォッ!

剣心「ぐう……っ!」ドサッ

比古「まだまだこんなんじゃ、奥義を伝授するわけにはいかねェな」ニッ

剣心「もう一丁!」ザッ



大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

比古「よく分からんがすごい技だ……だがそれだけでは単調になる!」シュバッ

ガゴッ!

大久保「ぐあぁっ……!」ドサッ

大久保(さすが緋村の師匠だ……内務卿である私が子供扱いとは!)

51: 2013/07/22(月) 22:28:24.07 ID:JcVVI1gV0
一週間後──

まずは剣心が“天翔龍閃”を会得した。

大久保「大久保流治癒術!」ドンッ

比古「ふう……回復術を持っているとは、大したもんだ」ムクッ…

剣心「なにしろ、大久保さんは内務卿ですから……」

比古「さて次は大久保、お前だ」

比古「俺の“九頭龍閃”をどんな技でもいいから破ってみろ」

大久保「分かった」

比古「──いくぞ」

飛天御剣流“九頭龍閃”──

唐竹、袈裟斬り、逆袈裟、右薙、左薙、右切上、左切上、逆風、刺突!

大久保(氏)

大久保(私はまだ氏ねない! 明治政府内務卿として志々雄を倒すまで──)

大久保(否!)

大久保(一人の人間として!)

52: 2013/07/22(月) 22:33:30.63 ID:JcVVI1gV0
ガォンッ!

比古「そうだ……それでいい」

比古「内務卿という重責を担うお前は、すぐに自分の命を軽く考えようとする」

比古「だが、お前は内務卿である前に一人の人間だ」

比古「内務卿であることを誇りにし、気負うこと自体は悪いことではない」

比古「だが明治の世を背負う、などと大それたことは考えるな」

比古「あまりに巨大な使命感は、時としてお前の実力を封じてしまう」

比古「さすればお前は内務卿としての、真の実力を発揮できるだろ……う……」グラッ

ドサッ……!

剣心「師匠っ!」

大久保「大久保流治癒術!」ドンッ

比古「よし、さっさと山を下りな」ムクッ



大久保利通、“天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)”会得!

55: 2013/07/22(月) 22:38:37.99 ID:JcVVI1gV0
~ 京都警察署 ~

剣心「京都大火!?」

斎藤「ああ、あの十本刀の張から入手した情報だ」

斎藤「決行は今夜十一時五十九分、これは間違いない」

剣心「……妙でござるな」

大久保「うむ、あの志々雄一派がこうもあっさり情報を流すとは考えにくい」

大久保「ならば、大久保流推理術で敵の一手を見破るしかあるまい」

斎藤「大久保卿、なんですかそれは」

大久保「私の第六感で、敵の作戦を当てるという技だよ」

剣心(大久保流探索術と、根っこは同じでござるな)

大久保「むむむ……」カッ

56: 2013/07/22(月) 22:42:54.44 ID:JcVVI1gV0
大久保「分かった! 志々雄の狙いは東京だ!」

大久保「京都大火はいわば布石、真の狙いは東京砲撃にある」

大久保「おそらく志々雄は、大阪湾から東京に向けて出航するつもりだ」

斎藤「なるほど……勘とはいえ的を射ていますね」

斎藤「危うく出し抜かれるところだったぜ……!」

剣心「戊辰戦争・鳥羽伏見の戦いの折の、徳川慶喜を思い起こさせる作戦にござるな」

剣心「海上に出られては、手の打ちようがなくなる! 急ぐでござる!」

大久保「ああ、内務卿の力で最高の馬車を手配しよう」

左之助「おおっと!」ザッ

左之助「下諏訪で新技を会得したこの俺も連れてってもらうぜ!」

斎藤「阿呆が……」

57: 2013/07/22(月) 22:47:16.43 ID:JcVVI1gV0
~ 大阪湾 ~

志々雄の甲鉄艦『煉獄』は出航間近であった。

剣心「甲鉄艦! あんなものを個人で手に入れたでござるか……!」

斎藤「やれやれ……これじゃどの道、明治政府も長くないな」

大久保「まったくだ」

左之助「いやアンタ、明治政府の内務卿だろうが」

大久保「“内務卿ジョーク”というやつだよ。相楽君」ニッ

左之助「剣心、コイツイラつくんだが」

剣心「同感でござる」



方治「バカな……ヤツらいったいなぜこの場所が!?」

志々雄「フッ……俺の船出でも見送りに来たか?」

志々雄「大久保利通!」

58: 2013/07/22(月) 22:51:26.99 ID:JcVVI1gV0
左之助「まだ船は出てねェ!」

左之助「コイツを喰らわせてやらァ!」ブオンッ

炸裂弾を投げつける左之助。

ドォンッ!

左之助「ちいっ、外装が壊れただけかよ!」

方治「ふん、手投げ式の炸裂弾などで、この煉獄が壊れるものか!」

大久保「ならば!」

大久保「この内務卿専用炸裂弾ならば、どうだ?」ブオンッ

剣心(大久保さんのようなヒゲがついた炸裂弾!)

炸裂弾を投げつける大久保。

ズドォォォンッ!!!

方治「ぐおっ……!」ドザァッ

由美「きゃあっ!」ドサァッ

59: 2013/07/22(月) 22:54:01.17 ID:JcVVI1gV0
方治「……くそ! 体勢を立て直す!」

方治「各部、今の被害状況を報告しろ!」

『機関部大破!』

『スクリューシャフトが完全に折れました!』

『あちこちで火災が発生し、浸水しています! 方治様、退艦のご命令を!』

方治「なんだとぉ……!」

方治「この私が計画し、自ら武器商人の間を駆け回って手に入れたこの“煉獄”が」

方治「まさか、あんな品も教養もある内務卿一人に……!」

方治「おのれッ!」ギリッ…

方治「おのれェェェェェッ!!!」

61: 2013/07/22(月) 22:59:16.64 ID:JcVVI1gV0
炎上する煉獄。

宗次郎「志々雄さん、ここで決着つけちゃいますか?」

志々雄「いや……場所は俺たちのアジトでだ」

志々雄「そこでなら、一切のジャマは入らんからな」

志々雄「もちろん、当方は十本刀で迎え撃つ」

志々雄「大久保、抜刀斎、斎藤、相楽……この先俺に隙は無い」

志々雄「心してかかってこい」

剣心「委細承知した」

斎藤「フン、回りくどい話になったもんだな。ま……初戦は俺たちの勝利だ」

左之助「決闘か、燃えてきたぜ!」

大久保(志々雄真実……)

大久保(日本の未来のために、必ずや内務卿である私がお前を倒す!)

63: 2013/07/22(月) 23:02:34.24 ID:JcVVI1gV0
剣心「ところで……京都大火の方は──」

ザァァァァ……!

斎藤「ほう、京都だけ豪雨に見舞われているな……」

斎藤「これではいくら火をつけようが、大火など絶対起こらんな」

左之助「これぞ天の恵みってヤツだな!」

左之助「なんだかんだいって、天は正しい方に味方するもんだぜ!」

大久保「いや、念のため事前にやっておいた大久保流祈祷術が効いたのだろう」

剣心「大久保さんは天候をも操れるでござるか……」

大久保「内務卿たる者、天ぐらい操れねばな」ニッ

64: 2013/07/22(月) 23:07:01.97 ID:JcVVI1gV0
~ 葵屋 ~

葵屋に戻った大久保はまず、蒼紫の手で半氏半生にされた翁を回復した。

翁「ありがとう、大久保卿」

大久保「いや、翁殿にはこれまで世話になったからな」

翁「ところで大久保卿、頼みを一つ聞いてはくれんか」

大久保「なんなりと」

翁「御庭番衆御頭、四乃森蒼紫は──もはや修羅道に落ちてしもうた」

剣心(蒼紫……)

翁「修羅を救う方法は、たった一つしかない……」

翁「そしてこれは“不殺(ころさず)”を誓う緋村君には頼めぬこと」

翁「頼む、大久保卿」

翁「あなたの手で、四乃森蒼紫を頃してくれ」

操「!」

65: 2013/07/22(月) 23:09:31.69 ID:JcVVI1gV0
ドクン……

操(大久保……蒼紫様を殴るの?)ドクン…

操(蒼紫様を頃すの? ……大久保)ドクン…



大久保「私は四乃森蒼紫という人物と、面識すらない」

大久保「会ったこともない人物を、殺害すると約束するわけにはいかない」

大久保「まずは話し合って、できればここに連れて帰りたい」

大久保「内務卿として」ニッ



操「うっ……」ポロッ…

薫「よかったね、操ちゃん」ギュ…

操「……うん!」

翁(ワシは危うく操を不幸にするところじゃった……)

剣心(大久保さん……みごとな判断でござる)

67: 2013/07/22(月) 23:12:00.51 ID:JcVVI1gV0
翌朝──

斎藤「大久保卿、抜刀斎、トリ頭」

斎藤「準備はいいな」

斎藤「いくぞ」

大久保「うむ」

剣心「ああ」

左之助「おうよ!」

薫「気をつけてね、剣心!」

大久保「君こそな、神谷君」ニッ

薫(なんで大久保卿が返事するのよ!)

69: 2013/07/22(月) 23:16:19.65 ID:JcVVI1gV0
~ 志々雄のアジト ~

由美「ようこそ、お待ちしておりました」

由美「これより先は駒形由美が案内いたします」

大久保(志々雄め、さては女性を使って我々を油断させるつもりか!)

左之助「女を使って油断を誘う……。よくある手だ、気をつけろよ」

斎藤「そんな手に引っ掛かるのは、せいぜいお前だけだ」ザッ

剣心「志々雄はそこまで姑息ではござらんよ」ザッ

大久保「…………」

大久保「相楽君、君はまだ未熟なようだな」ザッ

左之助「うぐっ……」ガクッ



由美「では一人目……どうぞ」

71: 2013/07/22(月) 23:20:22.66 ID:JcVVI1gV0
斎藤「ほう、十本刀に坊主がいるとはな」

左之助「ああ、アイツとは因縁がある。一番手は俺がもらうぜ」

大久保「いや、ここは内務卿である私に任せてもらおう」ザッ

左之助「オ、オイ!?」

大久保と安慈が向き合う。

安慈「明治政府内務卿……大久保利通か」

大久保「そうだ」

安慈「今、この明治の世には、救いがたき者があふれ過ぎている」

安慈「我が“救世”を完成させるため、おぬしには氏んでもらう」

大久保「来なさい」

安慈「ぬおおおおっ!」ブオンッ

大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

左之助(大久保の妙な技と、安慈の二重の極みがぶつかり合った!)

73: 2013/07/22(月) 23:24:21.98 ID:JcVVI1gV0
安慈「ぬぅ……!」ビリビリ…

大久保「ぐ……!」ビリビリ…

剣心「互角!」

大久保「なるほど、刹那の拍子で二連撃を与え、物体を粉砕する技か」

安慈(今の攻防で見切っただと!?)

大久保「大久保流模倣術! 二重の国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴゴォンッ!

安慈「ぐはァ!」

ドサァッ……!

由美「ま、まさか安慈和尚が……こんなにもあっさり……!」

左之助「すげェ……! 二重の極みを、自分の技に乗せやがった……!」

大久保(いや……まだだ)

75: 2013/07/22(月) 23:29:18.35 ID:JcVVI1gV0
安慈「ごふっ……! 私は……負けるわけには、いかん……」ヨロ…

安慈「明治政府の愚策で起こった……“廃仏毀釈”で……」

安慈「椿も、太助も……吾郎も……。みんな……殺された!」

安慈「あの子らが再び転生する時まで、“明王”の安慈は負けるわけにはいかぬのだ!」

安慈「おおおおおおおおおおっ!!!」

大久保「悠久山君!」

大久保「子供たちは、君が戦い傷つく姿など望んでいない!」

安慈「黙れぇっ!」ザクッ

ドォンッ!

安慈の遠当てをかわし、空中に逃れる大久保。

大久保「そうか……ならば生命の理(ことわり)に反する技ではあるが」

大久保「使うしかあるまい」

大久保「大久保流蘇生術!」カッ

78: 2013/07/22(月) 23:34:35.01 ID:JcVVI1gV0
安慈の目の前に現れたのは──

安慈「な……!? 椿……みんな!?」

椿「和尚様……お久しぶりです」

「和尚様!」 「すっげーでかくなったなァ!」 「和尚様だ!」

安慈「バカな……氏人が蘇るなど、こんなことはありえん! 不可能だ!」

大久保「内務卿に不可能はない!」

大久保「内務卿は時として、難しい交渉もこなさねばならない」

大久保「私自ら仏と交渉して、彼らを連れ戻してきたのだ。君のためにな」

大久保「一人につき、私の寿命を五十年は消費する大技だがね」

椿「和尚様……もう戦わないでいいんです。またみんなで一緒に……」

安慈「……しかし椿、今の私は心も体も血に染まりきっている……今さら──」

椿「いいえ。和尚様は何も変わってません」フルフル

椿「今でも、“優しい和尚様”のままですよ」ニコッ

安慈「お、おおお……」ガクッ

83: 2013/07/22(月) 23:40:39.89 ID:JcVVI1gV0
左之助「よかったな、安慈!」

安慈「ありがとう……」

左之助「ところで、これからどうするんでぇ」

安慈「あてはないが……また子供たちと一緒に暮らすことにするよ」

大久保「ならば、落ちつくまでは斎藤君の妻である時尾さんに世話になるといい」

大久保「そこでゆっくりと、今後の道を探ることだ」

安慈「かたじけない……」

安慈「みんな、今度こそ幸せになろう!」

椿「ええ、和尚様!」

ワイワイ…… キャッキャッ……

剣心「斎藤、勝手に決められているが、大丈夫でござるか?」

斎藤「時尾はできた女だ」

84: 2013/07/22(月) 23:43:24.09 ID:JcVVI1gV0
左之助「これで十本刀はあと八人か。先は長えな」

安慈「いや、ちがう。急いで引き返せ」

剣心「どういうことでござる?」

安慈「この先にいる十本刀は、宗次郎と宇水と方治のみ」

安慈「残りの者は、葵屋の者たちの抹殺に向かった」

剣心「!」

剣心「志々雄……!」

由美「勘違いしないでちょうだい! この作戦の発案者は方治よ!」

左之助「どっちだって同じだ! ちくしょう、このままじゃ嬢ちゃんや弥彦たちが!」

大久保「仕方あるまい」

大久保「ここは内務卿である私が何とかしよう」

大久保「大久保流呪術!」カッ

85: 2013/07/22(月) 23:47:50.86 ID:JcVVI1gV0
~ 葵屋 ~

鎌足「さあ、観念して出てらっしゃい! 全員この鎌で切り裂いて──」

鎌足「あら……? 急に目まいが──」ドサッ

蝙也「おい、どうした!?」

蝙也「うっ……い、意識が遠く──」ドサッ

夷腕坊「ぐふ?」

夷腕坊(外印)「な、なんだ……頭がくらくらと──」ドサッ

才槌「なにやっとるんじゃ!? まったく最近の若い衆はだらしないのう」

才槌「むうっ!? いきなり目の前が──」ドサッ

不二「うおおおぉぉぉ……」ドズゥン…

「十本刀が全員倒れた!」 「もうオシマイだ!」 「逃げろぉ!」

ドドドドド……!

弥彦「いったい何が起こったんだ!?」

薫「さぁ……私にもさっぱりだわ」

86: 2013/07/22(月) 23:51:32.82 ID:JcVVI1gV0
~ 志々雄のアジト ~

大久保「葵屋に攻め込んだ十本刀全員に、氏なない程度に呪いをかけた」

大久保「一週間はまともに動くことさえできないだろう」

左之助「内務卿ってのは呪いもアリなのかよ?」

大久保「なにしろ、内務卿だからね」ニッ

剣心「ところで今の技、志々雄たちに使うことはできないでござるか?」

大久保「あいにく、この技は一生に一度しか使えないのだ」

剣心「そうでござったか……」

由美「よく分からないけど、そろそろ次に行くわよ!」

由美「今度こそ覚悟するのね!」



由美「さぁ、着いたわ! 十本刀の二人目よ」

88: 2013/07/22(月) 23:55:17.42 ID:JcVVI1gV0
宇水「いらっしゃい」

宇水「ひいふうみいようの四人ね……」

宇水「安慈の奴では一人も殺せなかったようだな。いや結構結構」

宇水「さて、誰から来るかな?」

斎藤「フン、ここは俺が──」

大久保「いや、ここは内務卿である私が戦うべきだろう」ザッ

左之助「またかよ!」

大久保と宇水が向き合う。

宇水「ククク、お前が大久保利通か。ずいぶん高ぶっているな」

宇水「もしや……神戸で警官を五十人殺ったことを恨んでいるのか?」

大久保「いや、そんな事件は今初めて聞いた」

大久保「私が高ぶるのは“内・務・卿”という私自身の正義のためだけだ!」

宇水「面白い」

宇水「明治政府内務卿、大久保利通……相手にとって不足なし!」

90: 2013/07/22(月) 23:59:18.11 ID:JcVVI1gV0
大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ギュワッ!

宇水のティンベーが、大久保の“国民国家(ネイションステイト)”を捌いた。

大久保「!」

宇水「宝剣宝玉百花繚乱!!!」ビュババババッ

ズザザザザッ!

大久保「ぐぅっ……!」

宇水「ほう、傷三十個とはな──少しはかわせよ」

大久保「大久保流再生術!」メリメリ…

宇水(傷がふさがっただと……?)

斎藤「……回復はしたが、あの亀甲の盾を攻略せねば勝ちは難しいな」

左之助「鉄壁の防御ってやつか……。さすがは十本刀の二番手ってか!」

剣心(大久保さん……どうするでござるか!?)

91: 2013/07/23(火) 00:04:24.20 ID:VLPbreFH0
大久保(亀甲の盾を破るのは難しい。ならば心の盾を攻めるしかあるまい)

大久保「大久保流読心術!」カッ

左之助「大久保流読心術!? いったいどんな技なんでえ!」

剣心「おそらく、大久保さんが第六感で相手の心を読む技でござろう」

大久保「正解だ、緋村」

宇水「ほう……? “心眼”を持つこの私の心を読むだと? ──面白い!」

大久保「まず、君は志々雄に光を奪われたことを恨んでいるが、復讐は諦めている」

宇水「なっ……!」

大久保「しかし、周囲にそれを悟られたくないため、スキあらば志々雄を頃すと公言し」

大久保「時折、志々雄が本気にならない程度に攻撃を仕掛けるなどしている」

大久保「フフフ、どうかね? 当たっているかな?」

宇水「何が可笑しい!!!」

大久保「何も可笑しくない!!!」

宇水「!?」

93: 2013/07/23(火) 00:09:39.15 ID:VLPbreFH0
大久保「両目を失い、したい復讐もできぬ人生……誰が笑えるものか!」

宇水「ウソをつけ、内心ではバカにしておるくせに!」

大久保「ならば、“心眼”で私の心を読んでみよ!」

宇水(うっ……なんだ、この心拍は!?)

宇水(コイツは私の心の内を知ったにもかかわらず、全くバカにしていない!)

宇水(これが明治政府内務卿の器だというのか……!)ポロッ…

宇水「はっ……切り裂かれたはずの両目から、涙が!」ポロポロ…

大久保「さあ……眼帯を取ってみたまえ」

宇水「う、うむ」バッ

宇水「おお……見える! 見えるぞ! ──なんということだ!」

大久保「“心眼”と以前の視力を手に入れた君は、より強くなった」

大久保「これからはその力を正しく使いたまえ」

宇水「くぅ、私の完敗だ……!」

大久保「これこそ、大久保流慈愛術!」

94: 2013/07/23(火) 00:13:50.19 ID:VLPbreFH0
由美「まさか、安慈和尚の大切な子供たちを蘇らせて──」

由美「あの宇水に涙を流させるなんてね……」

由美「だけどこれまでよ!」

由美「なんたって、次の相手は十本刀最強の“天剣”の宗次郎なんだからね!」

由美「宗の坊やなら、アンタら四人まとめて片付けてくれるわ!」

大久保(紀尾井坂で馬車に乗り込んできた、あの青年か……)

大久保「だが、その前に私は一つの約束を果たさねばならない」

剣心「蒼紫をできれば連れ戻すという、あの約束でござるな?」

大久保「うむ」

大久保「駒形君、悪いが四乃森君のところに案内してもらおう」

由美「まったく、あんなの放っておけばいいのに……」

由美「明治政府内務卿ってのは不器用なのね」

95: 2013/07/23(火) 00:16:33.93 ID:VLPbreFH0
ギィィ……

蒼紫「来たか、抜刀斎」

蒼紫「再戦の約束を果たしてもらうぞ」チャキッ

剣心「いや、今日おぬしと戦うのは……大久保さんだ」

大久保「内務卿である私が、君を葵屋に連れ戻す」ザッ

蒼紫「ふざけるな!」

蒼紫「この期に及んで再戦の約束を破棄し」

蒼紫「挙げ句、かつての同志であろう大久保利通をぶつけてくるとは──」

蒼紫「臆したか、抜刀斎!」

大久保「臆しているのは君の方ではないのかね? 四乃森君」

蒼紫「なんだと……」

97: 2013/07/23(火) 00:21:20.94 ID:VLPbreFH0
大久保「君に何があったのかは、緋村からだいたい聞いた」

大久保「氏んだ部下のために、“最強”の華を手に入れようとするという気持ち」

大久保「たしかに理解できる」

大久保「しかし、翁殿をも無情に斬り伏せるような今の君がそれを口にしたところで」

大久保「しょせん現実逃避でしかない」

大久保「それに比べ、この私は“内務卿”として日々現実に立ち向かっている」

大久保「どうだ、君もこの私とともに現実に立ち向かってみないか!」

大久保「巻町君も翁殿も、葵屋の皆も、君たちの部下も──みんなが君を待っている!」

大久保「目覚める時は、今なのだ!!!」

蒼紫「…………」

蒼紫「それでも俺は、この闘いに決着をつけねば──」

蒼紫「前には進めぬ」

大久保「この闘いの決着をつけることに、私に異存はないよ」ニッ

99: 2013/07/23(火) 00:25:26.16 ID:VLPbreFH0
大久保利通と四乃森蒼紫──

全く因縁のない二人が、ついに決着の時を迎えた。

左之助「やべェぞ……さっきまでとは目がちがうぜ」ニッ

剣心「ああ、おそらくあれが真の四乃森蒼紫でござる」

斎藤「フン、修羅に落ちていたうちにカタをつけておけば楽だったものを……」

左之助(お互いに奥義で勝負に出るハズだ!)

剣心(大久保さんは、師匠のもとで会得したあの技を出すはず……)

斎藤(四乃森は、二刀小太刀から放たれる回天剣舞、といったところか)

シ~ン……

蒼紫(先手!)ギンッ

蒼紫(攻撃は右手!)

蒼紫(狙うのはヒゲが生えている、鼻の下!)

蒼紫(回天剣舞六連!!!)シュバッ

100: 2013/07/23(火) 00:30:23.15 ID:VLPbreFH0
大久保(氏闘という極限の狭間で)

大久保(内務卿であり一人の人間である私が、この奥義を放つ!)

大久保(あとは私の心一つ!)

大久保(恐れるものは何も無い!)

大久保(大久保流奥義──)

大久保「天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)!!!」



ズドゴォンッ!!!



蒼紫「こ、これが……」

ドザァッ!

大久保「……四乃森君、ヒゲ一重だったな」

蒼紫「ずいぶんとぶ厚い……ヒゲ一重だ」

102: 2013/07/23(火) 00:37:19.09 ID:VLPbreFH0
大久保一行は、ついに十本刀最強“天剣”の宗次郎と対峙する。

宗次郎「お久しぶりです、大久保さん」

宗次郎「ここまでご無事で何よりです」

宗次郎「なにしろ、ボクが標的を仕損じるなんて初めてでしたからね」

宗次郎「あなただけはボクの手で仕留めたかったんです」

大久保「私も馬車で移動中に斬りかかられるのは、初めての経験だったよ」

大久保「君との因縁……ここで決着をつけよう」

宗次郎「じゃあ行きますよ」トーントーン

ドドドドドッ!

目にも止まらぬ速さで走り始める宗次郎。

左之助「なんだァ!?」

剣心(速い……拙者よりも!)

斎藤「これは……おそらく“縮地”か」

大久保「…………」

103: 2013/07/23(火) 00:41:39.73 ID:VLPbreFH0
大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

宗次郎「な……!? ──くっ!」ザザッ

大久保「今のはわざと外した。瀬田君、君の力はこの程度か?」

宗次郎「……どうやらあなたを甘く見すぎていましたね」

宗次郎「なら、本当の“縮地”を出すまでです」

宗次郎「いっときますけど、絶対に反応できませんよ」

宗次郎「志々雄さんはボクの縮地を“目にも映らない速さ”といってくれましたから」

左之助「目にも映らねェ、だと!?」

剣心「先ほどの動きは、まだ縮地ではなかったのか……」

斎藤「さすがは志々雄の側近、といったところか」

由美「フフ……これで内務卿も終わりね」

宗次郎「行きます」

フォンッ!

大久保「大久保流移動術!」カッ

104: 2013/07/23(火) 00:45:16.69 ID:VLPbreFH0
高速移動を開始する宗次郎。

左之助「速すぎて、マジで見えねェ!」

剣心「この速度には、先読みも無意味でござるな」

斎藤「当てずっぽうに賭けるか、こちらに攻撃する一瞬を狙う、くらいしか手はないな」

由美「これがボウヤの真の力……」

高速移動を開始する大久保。

左之助「縮地ほどじゃねえが速ぇ! ──あと、口の中に旨味が広がってきた!」

剣心「たしかに! なんでござるか、この味は!?」

斎藤「大久保卿の生み出す衝撃波が、俺たちの舌に作用しているんだろう」

由美「ああもう、私ったら唾液が止まらないわ!」ジュル…

大久保(──そう)

大久保(瀬田君の縮地が“目に映らない速さ”であるなら、大久保流移動術は──)

大久保(“ほっぺたが落ちる速さ”!!!)

108: 2013/07/23(火) 00:49:32.65 ID:VLPbreFH0
大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

宗次郎「ぐあぁっ!」ドサッ

宗次郎「そんな……ボクの縮地が見切られた……!?」

大久保「君に比べれば、同じ十本刀の悠久山君や魚沼君の方がよほど難敵だった」

大久保「彼らは彼らなりの考えがあって、闘いに身を投じていたからな」

大久保「しかし、君は感情を封じて、志々雄のいわれるがままになっているだけ……」

大久保「さまざまな陰謀や策略と戦わねばならん内務卿にとって」

大久保「“自分で何も考えていない人間”など、いくら速かろうが敵ではない!」

宗次郎「ひどいいわれようだなぁ……ハハ……」

宗次郎(志々雄さんの正義“弱肉強食”……志々雄さんは絶対正しい)

宗次郎(デモ、ホントハボクハ──)

宗次郎「う……うわあああああああああっ!!! ──くっ!」

宗次郎「ハァ……ハァ……分かりました」

宗次郎「ならボクは──ボク自身の答えを出すためにあなたを頃す!」

109: 2013/07/23(火) 00:53:21.01 ID:VLPbreFH0
宗次郎「行きます──」キンッ

宗次郎(瞬天殺!!!)

大久保「ゆくぞ──」

大久保「天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)!!!」



ズドゴォンッ!!!



ドサッ……!

宗次郎「完敗です……。内務卿でありながらこんなに強いなんて、ちょっとずるいや」

大久保「いや、君も強かったよ。最後の抜刀術は、内務卿級の一撃だった」

大久保「君はまだ若い。やり直せる」

大久保「ひとまずは斎藤君の妻である時尾さんのところで、一休みしなさい」

宗次郎「……そうですね」

剣心「斎藤、時尾殿に連絡しておいた方が──」

斎藤「時尾はできた女だ」

113: 2013/07/23(火) 00:58:40.69 ID:VLPbreFH0
ついに、時来たる。

由美「これを開けたら──もう逃げ場はなくてよ」

ゴゴゴゴゴ……!

志々雄「待っていたぜ、大久保利通」

志々雄「安慈、宇水、四乃森、宗次郎と打ち破ったようだが、まだ力は残っているか?」

大久保「問題ない」

大久保「内務卿とは常に多忙なもの」

大久保「お前を倒すのは、内務卿であるこの私だ!」

志々雄「なら、遠慮は無用だな」ニッ

剣心(ついに始まるでござるな……大久保さん)

左之助(これで日本の運命が決まる……)

斎藤(明治政府の頂点が上か、はたまた炎から蘇った悪鬼が上か──)

方治(志々雄様は無敵! 負けるはずがない!)

最終戦、開始!

115: 2013/07/23(火) 01:04:34.75 ID:VLPbreFH0
大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

志々雄「壱の秘剣……焔霊!!!」

ズドォンッ!

大久保「ぐ……!」ガクッ

剣心(あの大久保さんが押し負けた!)

方治(さすがは志々雄様!)

志々雄「ッシャアアアアアッ!」ボッ…

ザシュッ! ザンッ! ズバッ!

大久保(い、いかん!)

大久保(斬ると焼くを同時に味わわせる志々雄の秘剣──)

大久保(我が大久保流再生術でも、再生が追いつかん!)

ガシィッ……!

志々雄が大久保を掴んだ。

117: 2013/07/23(火) 01:08:37.49 ID:VLPbreFH0
志々雄「仮にも一時代の頂点に君臨した男だ」

志々雄「次代に君臨する俺からの手向けとして、せめて華々しく散らせてやるぜ」

大久保(これは火薬の匂い……)

志々雄「弐の秘剣、紅蓮腕!!!」ボッ…

ドォォォンッ!!!

大久保「ぐぁ……っ!」ドサッ…

剣心「大久保さん!」

左之助「手甲が爆発しやがった……!」

斎藤(維新三傑最後の一人が……逝った、か)

志々雄「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ氏ぬ」

志々雄「大久保も所詮、俺の糧に過ぎなかったということだ」

志々雄「さて次は、誰が糧になる? 抜刀斎か? 斎藤か? 喧嘩屋か?」

119: 2013/07/23(火) 01:14:09.53 ID:VLPbreFH0
大久保「待て……志々雄……!」ググッ…

志々雄「ほう……内務卿ってのは頑丈なもんだな」

大久保「頑丈でなくば、内務省での激務は務まらんよ」

大久保「大久保流催眠術!」カッ

大久保「我! 大久保! 也!」ミキミキ…

大久保「我! 利通! 也!」ムキムキ…

大久保「我……内務卿なり」

シュウゥゥ……

由美「大久保の体が……大きくなったわ!」

剣心(かつて刃衛が使った術と、おそらく同種のものでござるな)

大久保(体にかなりの負担がかかる技だが、やむをえん……)

志々雄「最終戦第二局目、開始か」ニィ…

121: 2013/07/23(火) 01:17:29.49 ID:VLPbreFH0
志々雄「シャアアッ!」ボワァッ

ガキンッ!

志々雄「!?」

志々雄(大久保の腕に氷!?)

炎の斬撃を、大久保の体にまとわりついた氷が防いだ。

大久保「内務卿には冷静さが不可欠。その冷静さで汗を凍らせ、盾としたのだ」

大久保「これぞ大久保流凍結術!」

大久保「そして──」

124: 2013/07/23(火) 01:23:35.32 ID:VLPbreFH0
大久保「国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴォンッ!

大久保「二重の国民国家(ネイションステイト)!!!」

ドゴゴォンッ!

大久保「宝剣宝玉国民国家(ぽうけんぽうぎょくネイションステイト)!!!」

ズガァンッ!

大久保「回天剣舞国民国家(かいてんけんぶネイションステイト)!!!」

バゴォンッ!

大久保「瞬天国民国家(しゅんてんネイションステイト)!!!」

ガゴォンッ!

左之助「五連撃!」

由美「ああっ……!」

志々雄「…………」ヨロッ…

志々雄「終の秘剣、火産霊神(カグヅチ)」

127: 2013/07/23(火) 01:29:32.92 ID:VLPbreFH0
方治「終の秘剣……これがおそらく志々雄様最強の奥の手!」

斎藤「──となると、大久保卿が出す技はあれしかあるまい」

剣心「天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)……!」

大久保と志々雄が、最大奥義の構えを取る。

志々雄「忠告しとくが、この技は凍結術なんかじゃ防げねェ」

志々雄「発動したが最後、全てを焼き尽くす」

大久保「ならば、発動前にこちらが技を当てるまで!」ダッ

大久保「天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)!!!」

志々雄「シャアッ!」ボワァッ

炎を目くらましにして、わずかに速度の鈍った天翔国民国家をかわす志々雄。

志々雄「終の秘剣、火産霊神(カグヅチ)!!!」ギャリッ…

ゴゥワァァァッ!

129: 2013/07/23(火) 01:34:27.66 ID:VLPbreFH0
しかし──

志々雄(なんだ!?)ズル…

志々雄(俺の体が大久保に──いや、前方の空間に吸い寄せられる!)ズズ…

大久保「天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)!!!」

一回転した大久保が、もう一度奥義を放つ。

志々雄「シャアアアアッ!」ボワァァァッ

大久保(しまった! 秘剣の火力を全て防御に回して、技を防ぐとは!)

志々雄「無限刃の発火能力を使いきっちまったが──これで終いだ!」

大久保(──まだだッ! 私自慢のこのヒゲで奥義を放つ!)

大久保「天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)!!!」



ドゴォォォンッ!!!



大久保流、天翔国民国家(あまかけるネイションステイト)は、隙を生じぬ三段構え!

133: 2013/07/23(火) 01:40:05.82 ID:VLPbreFH0
時代は大久保利通を選んだ。

由美「大丈夫ですか、志々雄様!」

方治「志々雄様!」

志々雄「完敗だ」

志々雄「剣客や兵隊相手ならいざ知らず、まさか政治家に正面から敗れるとはな……」

大久保「どうだ、志々雄」

大久保「その手腕、これからはこの内務卿のもとで振るってみんか」

大久保「ひとまずは斎藤君の妻である時尾さんのもとで傷を癒やし」

大久保「いずれ、この私に会いにくるといい」

志々雄「フン……いいだろう。誘いに乗ってやる」

志々雄「ただし、俺より弱いと判断したら容赦なく糧にさせてもらうぜ」

大久保「かまわんよ」ニッ

左之助「やっと終わったんだな……剣心」

剣心「ああ、大久保さんが終わらせてくれた。ところで斎藤──」

斎藤「時尾はできた女だ」

138: 2013/07/23(火) 01:45:03.75 ID:VLPbreFH0
すると──

ゴゴゴゴゴ……! ドォンッ!

方治「なんだ!?」

由美「闘場が爆発を始めたわ!」

志々雄「……チッ」

斎藤「大久保卿と志々雄の激しい闘いに、耐えられなかったようだな」

左之助「やべえ、このままじゃみんなお陀仏だ!」

剣心「大久保さん、早く逃げましょう!」

大久保「いや、ただ走ったのではとても間に合わない」

大久保「私は内務卿だ。君たち全員を生還させる義務がある」

大久保「たとえ我が身を犠牲にしようとな」

剣心「大久保さん……なにをいってるでござるか?」

140: 2013/07/23(火) 01:50:37.26 ID:VLPbreFH0
ドォンッ! ズガァンッ!

左之助「ざけんな大久保! いったいなに考えてやがる!」

大久保「君たちとはくぐった修羅場の数がちがうのだよ」ニッ

大久保「この技で、私以外の皆をアジトの外に脱出させる」

剣心「大久保さん、やめろ! 皆で走れば間に合う!」

大久保「緋村……神谷君を幸せにしてやるのだぞ」

大久保「大久保流転送術!」カッ

剣心「大久保さ──」



ドォォォォンッ……



……………
………

143: 2013/07/23(火) 01:56:36.00 ID:VLPbreFH0
<アジトの外>

宗次郎「大久保さんは……氏んだんですか」

安慈「惜しい人間を亡くした……。御仏は残酷なことをなされる……」グッ…

椿「和尚様……」

宇水「まさかあの大久保が……我が恩人が……!」

方治「くっ……! まさか明治政府の人間に命を助けられるとは……!」

由美「バカね……。マリア=ルーズ号の件で受けた屈辱……チャラにしてあげるわ……」

蒼紫「アジトにいた全員がここへ飛ばされたのは、大久保の力か」

斎藤(大久保卿、あなたもまた自らの正義を貫いた、か)

左之助「ちくしょう! あのヤロウ、最後の最後でくたばりやがって!」

剣心「大久保さん……!」

志々雄「いや、大久保は氏んじゃいねェよ」

剣心「志々雄?」

志々雄「俺を倒した男があれしきでくたばるはずがねェ……」

志々雄「いずれ大久保の首を取るのは、この俺だ!」

146: 2013/07/23(火) 02:01:36.78 ID:VLPbreFH0
内務卿・大久保利通の奮闘により、志々雄一派は壊滅した。



志々雄真実を始めとした一派の主力は行方をくらまし、

捕縛された面々も明治政府によって才能を買われ、新たな人生を歩むことになった。

再び彼らが日本に対し牙をむくことは、恐らく無いであろう。



一方、斎藤一は警部補としての任務に戻り、

四乃森蒼紫は葵屋に腰を落ち着けることを約束した。

剣心たちもまた、神谷道場のある東京へ戻ることになった。



しかし──

彼らが京都を発つその日まで、ついに大久保利通の安否が判明することはなかった。

150: 2013/07/23(火) 02:08:03.82 ID:VLPbreFH0
~ 神谷道場 ~

剣心たちの帰りを待っていた三人。

妙「あ、帰ってきたわァ!」

大久保「待っていたよ、緋村」

燕「道場の中に、赤べこの料理を用意してありますよ!」



左之助「よっしゃ、久々の東京の味だぜ!」

弥彦「関西の薄味もいいけど、やっぱり牛鍋は東京だよな!」タタタッ

恵「やっといつも通りの生活に戻るのね……」

薫「一緒に京都から帰ってきてなんだけど……剣心、お帰りなさい!」

剣心「ただいまでござる」

剣心「──って、おろ!? どうして大久保さんがここにいるでござるか!?」

152: 2013/07/23(火) 02:15:29.88 ID:VLPbreFH0
左之助「マジじゃねーか! オメーは氏んだはずだろうが!」

大久保「内務卿は氏なんよ」ニッ

弥彦「なに赤べこの二人に溶け込んでんだよ!」

恵「爆発に巻き込まれたと聞いたけど……特に外傷はないようね」

大久保「ところで、神谷君」

大久保「私は氏んだことになっているので、しばらくここで厄介になってもいいかね?」

大久保「川路君には復帰してくれと頼まれたが、今さら戻ると内政を混乱させかねん」

薫「そりゃあ……かまいませんけど。剣心の大恩人ですし……」

剣心「大久保さん、無事でなによりでござった」

剣心「……そうだ、薫殿。せっかくだから大久保さんにも──」

薫「そうね! ──大久保卿、お帰りなさい!」



大久保「ただいま」



                 < 『せいじか利通 明治内務卿浪漫譚』 完 >

153: 2013/07/23(火) 02:15:57.55 ID:VLPbreFH0
この大久保利通はフィクションです
ありがとうございました

154: 2013/07/23(火) 02:16:58.63
おつ

156: 2013/07/23(火) 02:21:38.08
乙でござる

引用元: 大久保利通「志々雄を倒すのは、内務卿であるこの私だ!」