1: 2011/11/20(日) 02:46:06.96 ID:gEG/4M300
さわ子「はい、じゃあみんな立ってね」

さわ子「まずは発声練習から」

さわ子「あ、あ、あ、あ、あ~」

生徒「あ、あ、あ、あ、あ~」

さわ子「あ、あ、あ……うっ!?」

生徒「あ、あ、あ、う?」

さわ子「ち、ちょっとごめん!」ダッ!!

梓「せ、先生!? 急にどうしたんですか!?」

   ガチャ バタン

純「あ、先生行っちゃった……」

憂「いったいどうしちゃったんだろ?」

純「なんか口押さえて慌てて行っちゃったね」

梓「もしかして……つわり……?」

4: 2011/11/20(日) 02:48:53.83 ID:gEG/4M300
純「も~梓のエOチ~」

梓「な、なんでそうなるのよ!」

純「もしかしたら、あくびが出そうになって口を押さえてただけかもじゃん
  それをすぐつわりって判断するなんて
  普段からそういうことを考えてるとしか思えない!」

梓「あくびにしてはあまりにも大袈裟でしょ!」

純「わかってるって、冗談だよ冗談」

憂「でも本当につわりだとしたら」

純「先生ってまだ独身だよね」

梓「そのはずだけど……」

純「いや~なんか一波乱ありそうな予感!」

憂「もう、純ちゃんったら」

6: 2011/11/20(日) 02:52:15.62 ID:gEG/4M300
 ・ ・ ・ ・ ・

紬「♪~♪~」

さわ子「……ええ、そうなのよ」

紬(ん? さわ子先生、なんだかコソコソしてあんな隅っこで誰かと電話してる?)

さわ子「ちょっと油断してね、やっぱり……生はヤバかったのかしら……」

紬(生?)

さわ子「それにちょっと最近遅れ気味かなって思っててね。覚悟は出来てたんだけど……。
     実際自分がそうなっちゃうとなんだか……ね……。
     ほら、教師って世間では良いイメージがあるじゃない。だから……」

紬(遅れ気味?)

さわ子「はぁ……やっぱり堕ろすしかないのかしら」

紬(お、堕ろす!?)

9: 2011/11/20(日) 02:55:40.89 ID:gEG/4M300
 ・ ・ ・ ・ ・

梓「そういえば、今日音楽の授業があったんですけどね」

唯「あずにゃんのクラスの音楽担当ってさわちゃんだったっけ?」

梓「はい、そのときにちょっと変わったことがありまして」

律「変わったこと?」

梓「発声練習中に急に口を押さえて教室を出て行ったんですよ」

唯「あずにゃんが?」

梓「だとしたら私、発声練習拒否し過ぎでしょ」

梓「じゃなくて、さわ子先生がですよ」

律「発声練習中に教室を飛び出すなんて教師としてあるまじき行為だな!」

唯「存在自体があるまじき教師な感じだけどね!」

澪「さわ子先生もすごい言われようだな」

11: 2011/11/20(日) 02:58:48.38 ID:gEG/4M300
律「だいたい学生時代メタラーだったのに
  お淑やかな音楽教師になっちゃうってもの、そこからして間違ってるよな」

唯「なんか音楽の授業中もさわちゃんの過去を知ってると笑っちゃうよね
  ピアノ弾いてる姿なんて本物の音楽教師みたいだもん」

澪「正真正銘本物だろ」

梓「あの、すみません。私の言いたいことの意図が全く伝わってないんですけど」

唯「あずにゃんが伝えたいこと?」

梓「さっきの私の話の中でなにか気づいたこと、ありません?」

律「梓は音痴だ」

梓「律先輩は頭だけじゃなくって耳まで馬鹿になっちゃったんですね」

唯「音痴とウンチは似ている」

梓「ここって小学校でしたっけ?」

澪「さわ子先生が妊娠してるかもしれないってこと?」

梓「さすが澪先輩です!」

12: 2011/11/20(日) 03:02:49.28 ID:gEG/4M300
律「おいおい! さっきの梓の話のどこにそれを察知できる要素があったんだよ!」

澪「いや、急に口を押さえて教室を出て行ったってとこ」

律「口を押さえて教室から出てったら赤ちゃんが出来るって
  人類の生殖方法突然変異し過ぎだろ!」

唯「うっかり口を押さえて教室から出られないね!」

澪「なんでそのまま受け止めちゃうかな……」

唯「あ、でもりっちゃん。その場合お父さんは誰になるのかな?」

律「きっとその時の教室によって違ってくるんじゃね?」

唯「だったら、さわちゃんの場合は音楽室だから……」

律「あれだよ、モーツァルトだよ! だって音楽の父だし!」

唯「おおっ! なるほど、さすがりっちゃん!」

律「へへん!」

澪「音楽の父はバッハだけどな」

13: 2011/11/20(日) 03:06:12.99 ID:gEG/4M300
梓「あの……話進めていいですか……?」

澪「ああ、うん」

律「いや、だからなんで口を押さえて教室から出ただけで妊娠するのか教えろよ」

澪「つわりだろ。急にえずいたから口押さえて慌てて出ていったってことじゃないの?」

梓「そのとおりです!」

唯「それがパッと出てくるあたり、澪ちゃんとあずにゃんってなんだかHだよね」

律「ほんとほんと」

梓「なっ!? 純と同じような反応!」

澪「さわ子先生くらいの年齢でそんなあからさまな行動とられたらそう思っても仕方ないだろ」

梓「そうですよ、唯先輩と律先輩がお子ちゃまなだけです!」

律「私だったらもっと違う、さわちゃんらしい発想をするけどな」

梓「た、例えば?」

15: 2011/11/20(日) 03:10:46.43 ID:gEG/4M300
律「前の日に飲み過ぎて、お酒が抜けないまま学校に来て、発声練習なんて大声を出したせいで
  気持ち悪くなってリバースしそうになった」

唯「これ以上ないほどしっくりくるね。This is Sawako だよ」

律「だろ?」

梓「で、でも……」

澪「まぁ、私もそのほうがさわ子先生らしいとは思うけど」

梓「澪先輩まで!?」

澪「だって、梓。さわ子先生はまだ独身だぞ?」

梓「それはそうですけど……」

律「それにさ、梓だってさわちゃんの本性を知ってるだろ?」

唯「さわちゃんをお嫁さんに貰おうなんて聖人君子がこの世に存在するのだろうかっ!?」

律「それを踏まえた上で私の推測と梓の推測。どっちが正しいと思うか」

梓「なんだか自信が無くなってきました……」

律「な?」

16: 2011/11/20(日) 03:14:37.43 ID:gEG/4M300
律「さわちゃんが妊娠なんてありえないんだって」

唯「そうだよ、世界三大ありえないの一つだよ」

澪「お前ら何かさわ子先生に恨みでもあるのか?」

梓「でも、二日酔いの方が確かに説得力がありますね」

澪「あずにゃん陥落」

律「その内真実も自ずと明らかになるって」

唯「どうせ今日もムギちゃんのお茶とお菓子食べにくるだろうし
  そのときなんとな~く聞いてみたらいいんじゃない?」

梓「そうですよね」

律「そうそう」

梓「ところで、そのムギ先輩は?」

澪「ムギは今日掃除当番だから」

紬 ガチャ

律「って噂をすれば」

17: 2011/11/20(日) 03:18:10.11 ID:gEG/4M300
紬「……」

律「おーっす」

澪「ムギ、お疲れ様」

唯「ムギちゃ~ん、今日のお菓子は~?」

梓「もう! 唯先輩はそればっかり!」

唯「あ~ん、怒られた~」

紬「……」

澪「どうしたんだムギ?」

紬「た、大変なの……」

律「なにが?」

唯「ま、まさか!? 今日のお菓子忘れちゃったとか!?」

梓「えっ!? それは本当ですか!? 一大事じゃないですか!
  私がどれほど毎日のお菓子を楽しみにしているかムギ先輩はっ!」

19: 2011/11/20(日) 03:21:35.01 ID:gEG/4M300
紬「お菓子はちゃんと用意したけど……」

唯「な~んだ、ビックリした」

梓「もう! 唯先輩はお菓子のことばっかり!」

唯「あ~ん、また怒られ……ん?」

澪「なにがどう大変なんだ?」

紬「さっき部室に来る前にさわ子先生に会ってね」

紬「なんだか隅の方でコソコソと携帯で誰かと話してたから声は掛けなかったんだけど」

紬「話の内容が断片的にだけど聞こえちゃって……」

律「で、その話の内容が何か関係あるのか?」

紬「うん……。さわ子先生、妊娠してるのかも……」

梓「えっ!? やっぱりそうだったんですね!」

20: 2011/11/20(日) 03:25:50.81 ID:gEG/4M300
紬「え? やっぱりって、どういうこと?」

梓「今日の音楽の授業でこういうことがありまして……」

紬「なるほど……」

律「いやいやいや、だからさわちゃんが妊娠なんてありえないってば」

澪「ムギが聞いたさわ子先生の話の内容って?」

紬「えっとね、『やっぱり生はヤバかったのかも』って」

唯「うわ~……大人のダメな部分が垣間見えちゃったよ……」

梓「唯先輩なんのことだかわかるんですか!?」

唯「失敬なあずにゃん。私だって伊達に女子高生してないよ! 絶賛春機発動期中だよ!」

梓「す、すみません!?」

唯「憂も生ものには気をつけなきゃって言ってるし!
  さわちゃんも大人ならもっと食に気を遣わないと」

律「思春期かんけーねーじゃん」

澪「思春期と掛けてきたあたり、実は唯もわかってそうだけどな」

唯「えへへ」

21: 2011/11/20(日) 03:28:18.87 ID:gEG/4M300
紬「あと、『最近遅れ気味だ』とかも聞こえちゃって」

澪「遅れるって、つまりは、そういうことなんだろうな……」

律「でも、それだけじゃなんとも……。ムギも断片的にしか聞こえなかったんだろ?
  だったら何かの勘違いってことも」

紬「私もね、その時まではなんの話なのかわからなかったんだけど……」

紬「最後の一言で、何のことだか感づいちゃったの」

澪「その一言って……?」

紬「『やっぱり堕ろすしかないのかしら』って」

23: 2011/11/20(日) 03:32:55.70 ID:gEG/4M300
律「お、堕ろすって、中絶するってことか!?」

紬「そうだと、思う……」

唯「そんな……」

梓「まさか、本当に……」

律「で、でも例え本当に出来ちゃってたとしても、なにも堕ろすことはないだろ」

唯「そうだよね、できちゃった婚なんて最近じゃ珍しくないんでしょ?」

澪「さわ子先生も教師だから、あんまりそういうのは好ましくないってことなのかも……」

律「どういうことだよ?」

澪「だから、教育者として道を外すっていうか……」

唯「そんな!? それってちょっとどうかしてるよ!」

澪「私だってそう思うよ! だけど、中には教師を神格化し過ぎて
  ちょっとでもおかしなことがあれば騒ぎ出す人もいるかもしれないだろ
  結婚もまだなのに子供だなんてって」

梓「確かに……私たちより上の世代、とくに親の世代はそう思う人も多いかもしれないですね……」

紬「実際さわ子先生もそう言ってたわ……教師のイメージがどうとかって」

24: 2011/11/20(日) 03:38:08.35 ID:gEG/4M300
律「でも、でもさぁ……」

澪「わかってるよ、私だってさわ子先生にそんな間違ったことしてほしくない」

紬「きっと、学校の関係者には知られずに独りでなんとかするつもりなんだわ」

梓「だからコソコソと携帯で電話してたってことですか……」

紬「たぶん、学校とは関係ない友達に相談してたんじゃないかしら……」

唯「ねぇ、だったら私たちでさわちゃんを説得しようよ」

澪「説得するったって……」

唯「産まれてくる赤ちゃんのためだよ!」

紬「そうね、さわ子先生も突然のことで気が動転しちゃって、思考が一方向に凝り固まっちゃてるのかも」

唯「うん、だから、少なくとも私たちは味方だよって言ってあげればきっと」

梓「唯先輩……」

律「だな、さわちゃんが一番不安なんだろうし」

25: 2011/11/20(日) 03:42:08.62 ID:gEG/4M300
梓「でも、なんて言って説得すれば……」

澪「私たちがどれだけ産んだほうがいいって説得したところで
  実際産むのも、その赤ちゃんを育てるのもさわ子先生だしな」

紬「そう考えると、ただ中絶するなっていうのもなんだか無責任よね……」

律「何言ってんだよ! 産みもしないのにちゃんと避妊しない方が無責任だろ!」

澪「それは……そうだな」

唯「ねぇ、みんな」

梓「なんですか?」

唯「赤ちゃんってどうやって出来るか……知ってる?」

律「おい、この期に及んで純情ぶるなよ」

27: 2011/11/20(日) 03:46:39.07 ID:gEG/4M300
唯「いや、じゃなくてさ、私だってキャベツ畑で赤ちゃんが出来るだなんてさすがに思ってないし」

澪「何が言いたいんだ、唯」

唯「つまり、相手がいるってことだよね?」

律「まぁ、そりゃあな」

唯「だから相談するならその相手の人に一番先に話すもんじゃない?」

紬「うん、私もそう思うわ」

唯「きっとその相手がさ、言ったんじゃない?」

唯「『堕ろせよ』って」

梓「そうかもしれませんね……」

唯「さわちゃんだって本当は産みたいのかもしれない
  だけど、相手がそれを許してくれないのかも」

紬「そんな……非道い」

澪「さすがにシングルマザーなんて厳しすぎるよな……」

30: 2011/11/20(日) 03:52:43.90 ID:gEG/4M300
唯「もしかしたらすでに別れを切り出されてるかも……」

梓「さわ子先生可哀相です……」

律「もしそうだとしたら、男の風上にも置けない奴だな」

紬「だったら、私たちどうすれば……」

律「とりあえずさ、さわちゃんもそんなこと相談出来る人なんて限られてくると思うんだ」

律「だから、せめて私たちはさわちゃんの悩みを少しでも和らげれるようにしてやろうぜ」

梓「で、でも、そこの話題に触れるまでが問題ですよ」

紬「果たして、聞いてもいいものか」

澪「かなりナイーブな問題だからな」

律「抱え込むよりも少しでも吐き出したほうが楽になるって」

唯「うん、私もそう思うよ」

澪「……そうだな」

32: 2011/11/20(日) 03:58:11.75 ID:gEG/4M300
  ガチャ

さわ子「やっほ~」

律「き、来たっ!」

唯「ど、どうしよう……!」

澪「と、とりあえず落ち着け」

さわ子「なになに? 私が来ちゃマズイ話でもしてたの?」

梓「いや、あの……」

紬「先生、いつものミルクティーでいいですか?」

さわ子「うん、お願いね」

唯「き、今日のケーキも美味しいよ!」

さわ子「それは楽しみね♪」

34: 2011/11/20(日) 04:02:07.53 ID:gEG/4M300
澪(おい、律。どうするんだよ)

律(み、澪がそれとなく聞いてくれ)

澪(無理だって!)

梓(あの、やっぱり私たちが切り出すよりもさわ子先生自らが切り出すまで待ったほうがよくないですか?)

律(確かに……。いきなり私たちが言っても「余計なお世話よ」てなことになりかねん)

唯(でも、それでずっとさわちゃんが悩みを胸にしまい込んでしまう可能性も)

律(だったら、切りだす切っ掛けをこちらから作り出すまで!)

梓(何か策があるんですか?)

律(まぁ、任せとけ。さわちゃんにはなんとなく気づいてもらう)

紬「はい、どうぞ先生」

さわ子「んん~♪ このために学校へ来てると言っても過言じゃないわ」

35: 2011/11/20(日) 04:05:44.37 ID:gEG/4M300
律「ムギ、私もお茶おかわり」

紬「はい、どうぞ」

律「サンキュー、サンキュー」

律「……産休」

唯澪梓「!?」

唯(り、りっちゃん!?)

梓(もしかして、それが作戦ですか!?)

澪(さすがにそれじゃあ……)

律(うるさい! だったら何か他あるのかよ!)

澪(うぐ……仕方ないか……)

澪「ムギ、私も」

紬「は~い」

澪「さ、産休……」

さわ子「?」

36: 2011/11/20(日) 04:09:43.75 ID:gEG/4M300
澪(本当に、こんなんでいいのか……?)

律(よし、続け! 唯、梓!)

唯「ムギちゃ~ん、私も~」

梓「私も、お願いします」

紬「ええ、ちょっと待ってね」

紬「はい、どうぞ」

唯「お~サンキューサンキュー産休」

梓「さ、産休です」

さわ子「あら、梓ちゃんがサンキューだなんて珍しいわね」

唯「産休するのは珍しいことじゃないよ」

さわ子「そう?」

唯「じ、女性として!」

さわ子「何言ってるの?」

40: 2011/11/20(日) 04:19:28.13 ID:gEG/4M300
律(もう一押しだな!)

澪(そ、そうか?)

唯(りっちゃん、次は私がいくよ!)

律(頼むぞ!)

唯「そういえばさ~、この前親戚のお姉ちゃんが赤ちゃん産んでさ~」

律「へー! 会ってきたのか?」

唯「うん! すっごく可愛かったよ~!
  それにそのお姉ちゃんもずいぶんとお母さんっぽくなってて
  なんだか女性として羨ましかったよ~」

澪「や、やっぱり、女性としての幸せだもんな出産は」

梓「そ、そうですよね!」

さわ子「出産……赤ちゃん……」

律(こ、効果は絶大だ!)

41: 2011/11/20(日) 04:23:51.85 ID:gEG/4M300
紬(ねぇ、さっきからみんなどうしたの?)

澪(実は、どうせならさわ子先生の方から悩みを打ち明けてもらった方がいいって話になって)

梓(こうやって、先生があのことを話しやすい環境を整えているところなんです)

紬(なるほど、だったら任せて!)

律(頼んだぞ、ムギ!)

紬「先生、今日は珍しい物が手に入って、先生にも食べて頂きたくて持ってきたんです」

さわ子「まぁ! 楽しみね」

紬「その年に獲れた最上級の梅のみを集めて腕のいい職人が丹精込めて造った梅干しです」

さわ子「梅干しって……」

紬「これ一粒で3000円!」

さわ子「いただくわ!」

42: 2011/11/20(日) 04:27:34.59 ID:gEG/4M300
律「へ~、そういえばさ、よく妊婦さんなんかは酸っぱいものが欲しくなるっていうよな~」

紬「そうなの! この梅干しを食べた妊婦さんの産んだ赤ちゃんは大層元気にスクスク育つって評判なの!」

さわ子「……妊婦……元気な赤ちゃん……」

唯(効いてる、効いてるね!)

律(そろそろ、悩みを打ち明け頃だろ)

澪(なんかこれ、逆に追い込んでないか?)

さわ子「ねぇ、あなた達」

律「は、はい!」

さわ子「さっきから、出産とか赤ちゃんとか……」

さわ子「いったい、何なの……?」

さわ子「もしかして、私のこと馬鹿にしてる? 見下してるの?」

43: 2011/11/20(日) 04:31:49.47 ID:gEG/4M300
唯「いや、あの……」

さわ子「……」

澪「別にそんなつもりは……」

さわ子「嘘よ……。だったらなんでこのタイミングで出産や妊婦なんて話が出てくるのよ
     白状なさい。あなた達、いったい何を知っているの?」

梓「先生……怖いです……」

さわ子「私が今どんな気持ちでいるかなんて、どうせあなた達にはっ!!」

紬「ごめんなさいっ!」

さわ子「……」

唯「ムギ、ちゃん……」

紬「実は、さっき先生が携帯で話してるのを聞いちゃって……」

さわ子「……そう、そうだったのね
     まさか聞かれていただなんて、迂闊だったわ」

律「だからさ、少しでもさわちゃんの力になってやりたくて……」

45: 2011/11/20(日) 04:38:17.02 ID:gEG/4M300
さわ子「その気持ちは嬉しけど、こればっかりは私自身の問題よ」

唯「そうだけど……」

澪「同じ女性として、私たちも考えなければいけないことだと思ったので……」

さわ子「あなた達は高校生じゃない、まだ全然早いわよ」

梓「ですけど……」

さわ子「もう一度言うわ。これはあなた達には関係のないことよ」

さわ子「それに、そんなことを教え子に心配されるなんて、どうも……ね」

律「教え子だろうが何だろうが……関係ねぇって」

澪「律……」

律「さわちゃんが苦しんでいる姿を見たら……なんとか力になってやりたいって思うのが普通だろ」

さわ子「……困ったわね」

46: 2011/11/20(日) 04:44:36.34 ID:gEG/4M300
唯「ねぇ、さわちゃん、なんとか考えなおさない?」

さわ子「考えなおすって言われても……どうしたら……」

紬「さわ子先生は、子供お嫌いですか……?」

さわ子「嫌いじゃないわよ……」

唯「だったらさ、産もうよ」

さわ子「そんな簡単に言わないで」

唯「……」

さわ子「それに、こればっかりは一人じゃどうしようもないじゃない……」

梓「や、やっぱり」

澪「じゃあ、相手の人は……」

さわ子「……言わせないで、惨めになっちゃう」

律「くっ! ちくしょう……!」

47: 2011/11/20(日) 04:48:28.70 ID:gEG/4M300
さわ子「わかったでしょ、これは私自身の問題であって
     あなた達がどうこうできることじゃないのよ」

唯「ううっ……」グスッ

紬「唯ちゃん……」

さわ子「ち、ちょっと!? 泣かないでよ!」

唯「だって……だって……」

さわ子「正直そこまで心配されても本当に困るんだけど……」

澪「私だって、さわ子先生やその産まれるべき赤ちゃんのことを思うと涙が出そうです……」

さわ子「……えぇ~」

律「なぁ、無責任かもしれないけど、私たちは本当にさわちゃんには赤ちゃん産んで欲しいんだよ」

さわ子「何もこれから永遠に子供を作らないとは言ってないのよ
     でも、物事には順序っていうものがあって……」

梓「これからのことじゃなくって、今この時のことです!」

さわ子「いや、だから、それは相手がいないと無理だって」

紬「なんだったら私の家が全力でサポートします!」

さわ子「本当に? 面倒見てくれるの?」

48: 2011/11/20(日) 04:55:53.06 ID:gEG/4M300
紬「幸い家にはメイドが沢山いるので、世話する人間は事欠きません」

さわ子「いや、メイドって女でしょ? できれば若い執事がいいんだけど……」

紬「ごめんなさい、執事は還暦を過ぎた1人しかいないもので……」

さわ子「じゃあ、駄目じゃない!」

律「子供の面倒見るんならメイドさんでもいいだろ」

さわ子「誰が子供だ!」

梓「誰がって、さわ子先生の子供なんじゃ」

さわ子「もしムギちゃんの家に若いイケメン執事がいるなら
     とりあえず合コンなりお見合いなりのセッティングをしてもらって、そこからお付き合いを始めて
     で、トントン拍子に結婚までいって、然る後に合体。子供はそれからでしょ
     さすがに教職してるだけあってその辺の分別はついてるわよ」

澪「分別がついてないから子供が出来ちゃったんじゃ……」

さわ子「はぁ? 何言ってるのよ」

唯「さわちゃん、とぼけちゃ駄目だよ、みんな知ってるんだから」

さわ子「???」

律「さわちゃんのお腹にはもうすでに新しい命が宿ってるんだろ!」

さわ子「それは初耳です」

49: 2011/11/20(日) 05:00:45.82 ID:gEG/4M300
律「え……だって、中絶するって……」

さわ子「はぁ? 中絶? 誰が?」

律「さわちゃんが」

さわ子「私はまだ処Oよ!」

唯律澪紬梓「!?」

さわ子「ごめん、嘘ついた」

律「ああ……うん……」

さわ子「ってか、なんでそんな私が妊娠したみたいな話になってるのよ?」

紬「さわ子先生が『やっぱり堕ろすしかないのかしら』って電話で」

さわ子「堕ろす? ……ああ~。確かに言ったかもね」

律「ほ、ほら!」

さわ子「給料前だし、貯金をやっぱり下ろすしかないのかしら、となら言ったわ」

律「……」

50: 2011/11/20(日) 05:05:18.26 ID:gEG/4M300
唯「じ、じゃあ最近遅れ気味だっていうのは?」

さわ子「両親がね、結婚はまだか、氏ぬ前に孫の顔が見たいって煩くってね
     まだまだ結婚なんて先のことだって思ってたけど、あんまり急かされるもんだから
     やっぱり婚期が遅れてるのかなって最近気になり始めて……」

律「な、なんと……」

さわ子「でもね、私だって、ただ手をこまねいているわけじゃないのよ!」

さわ子「最近やっとの思いでゲットした彼氏を私の部屋に手料理でもってお招きしたとき
     これ見よがしに部屋中ゼクシィを目立つところに置きまくって
     『いつでもOKよ!』感を出してたのに、それっきりで連絡もとれなくなっちゃって……」

梓「それってがっつきすぎなんじゃ……」

さわ子「そうかしら……」

澪「生はヤバかったっていうのは」

さわ子「そのことで紀美達に愚痴聞いてもらおうと居酒屋で飲んじゃってね
     ヤケになって生ビールたらふくいったら、久しぶりにベロンベロンになって
     なんだかお店に迷惑かけちゃったらしいのよね……私はよく覚えてないんだけど」

さわ子「だから、生飲み過ぎたのはヤバかったって話」

さわ子「ちなみにその飲み会で迷惑かけたぶん支払いは私持ちってことで
     生活費が足りなくなって貯金を切り崩さなきゃならなくなったわけで」

51: 2011/11/20(日) 05:13:10.73 ID:gEG/4M300
紬「確か、教師のイメージがなんとかとも言ってましたけど」

さわ子「女教師ってモテそうなイメージじゃない?
     だから結婚なんてその気になればすぐって思ってたんだけど
     なんだか現実は厳しくってね……」

梓「それじゃあ、今日の音楽の授業で急に口を押さえて
  教室から出ていったのは、もしかして……!!」

さわ子「いや~、恥ずかしい話なんだけど、昨日のお酒が抜けないまま学校に来て
     発声練習なんて大声を出したせいで、気持ち悪くなってリバースしそうになってね」

唯律澪紬梓「……」

さわ子「な、なによ……急に黙って……」

唯「Oh...This is Sawako」

 おしまい

53: 2011/11/20(日) 05:25:40.33
おつおつ

引用元: さわ子「NO, Thank you!」