1: 2021/04/27(火) 18:15:16.590 ID:LxXTQatt0
人気ラーメン店 ― 遊謝 ―

店主「へい、ラーメンお待ち!」

客「来た来た!」

客「さっそくコショウをかけて……」パッパッ

店主「出て行ってくれ」

客「え?」

店主「俺のラーメンにいきなりコショウをかけるような奴は客じゃない。代金はいいから出ていってくれ」

客「そ、そんなぁ……」

3: 2021/04/27(火) 18:15:45.114
食券制なのに…

4: 2021/04/27(火) 18:15:54.513
胡椒をかけなくてもいいようなラーメンを作ってくださる?

5: 2021/04/27(火) 18:15:56.941
つまみだされるまで強引に啜ればお得なん

6: 2021/04/27(火) 18:16:17.900
コショウ置くなよwww

16: 2021/04/27(火) 18:19:13.546 ID:LxXTQatt0
中年「……」ズゾゾッ

店主「お客さん」

中年「なに?」

店主「そうやって下品に麺をすすられると、店の品位が落ちる。出て行ってくれ」

中年「な、なんだと!?」

店主「いいから出ていけ。もちろん代金はいらない」

中年「分かったよ……」

28: 2021/04/27(火) 18:22:41.189 ID:LxXTQatt0
青年「ラーメンはまずスープから……」

店主「出て行ってくれ」

青年「なんで!?」

店主「ラーメンをスープから飲んで通ぶる客は虫唾が走るんでね」



女「おいしそー! 写真撮っちゃお!」パシャッ

店主「出て行ってくれ」

女「どして!?」

店主「俺のラーメンはグラビアアイドルじゃないんだよ。写真なんか撮るんじゃない」

30: 2021/04/27(火) 18:25:09.857 ID:LxXTQatt0
ナンダヨ… キャクニムカッテ… ヒドイ…

シーン…

店主「……ふう。これでよし」

?「フッ、なるほど……」

店主「……」

?「ワシの気配を察したから、客を逃がしたというわけか。相変わらず人のいいことだ」

店主「ああ、そうだ……魔王!」

魔王「久しぶりだな、勇者よ。まさかラーメン屋になってるとは思わなかったぞ」

35: 2021/04/27(火) 18:27:03.508
おい誰だよチャンネル替えたの

36: 2021/04/27(火) 18:28:18.909 ID:LxXTQatt0
店主「かつて俺たちはこことは違う世界で、一騎打ちをした……」

魔王「結果は相討ち……」

店主「俺はこの世界に転生することができ、この世界の人間として生き、ラーメン屋を開業した」

魔王「一方のワシは次元の狭間に閉じ込められ、永久にそこを彷徨うはずだった」

店主「なのになぜ、お前がここにいる!?」

魔王「憎しみだよ。なにもない空間でひたすら貴様への憎悪を増幅させ……次元を切り裂いたのだ!」

店主「そうやってこの世界にやってきたというわけか……」

41: 2021/04/27(火) 18:31:20.749 ID:LxXTQatt0
魔王「ラーメン屋などやってる貴様に、もはやかつての力はあるまい」

魔王「今こそ復讐してくれるわ!」

店主「それはどうかな?」

魔王「なにっ!?」

店主「生憎、この世界に転生したのは俺だけじゃなかったのさ」チャキッ

魔王「それは……ワシを倒した剣!」

店主「ああ、この剣もちゃんとついてきてくれてた……。こういう時のためにな!」

魔王「ならば剣ごと粉砕するのみよ! ゆくぞ!」

42: 2021/04/27(火) 18:33:18.930 ID:LxXTQatt0
魔王「喰らえ……我が暗黒の炎を!」

魔王「暗黒魔炎!!!」

ゴォワァァァァァッ!

ズガァァァァァンッ!

魔王「フッ、我が炎に焼き尽くされるがよい……」



魔王「いない!?」

43: 2021/04/27(火) 18:35:23.352 ID:LxXTQatt0
店主「こっちだ!」

魔王「ハッ!」

店主「(狙いは肩口――)でえやぁぁぁぁっ! 勇猛斬ッ!!!」



ズバァッ!!!



魔王「ぐ、ぐあああああああああっ……!」

店主(終わった――)

44: 2021/04/27(火) 18:38:17.931 ID:LxXTQatt0
魔王「……」ニヤッ

店主「……え!?」

魔王「やはり……この程度か」

店主「なんだと……!? たしかに斬った感触は……!」

魔王「むんっ!」ビュオッ

ザシュッ!

店主「ぐあっ!(この爪の鋭さ、昔より……!)」

48: 2021/04/27(火) 18:42:09.143 ID:LxXTQatt0
店主「くそっ!」ビュオッ

ギインッ!

店主「効かない……!?」

魔王「考えてもみろ」

魔王「たしかに貴様の強さは衰えていない。以前のままだ。が、それは“成長していない”ということでもある」

店主「!」

魔王「だが、ワシは次元の狭間でずっと貴様を呪い続けてた……復讐することだけを考えて」

魔王「呪って呪って呪って、ついに次元の壁を切り裂くまでに至った」

魔王「つまり、ワシと貴様のレベル差は絶望的になってるというわけだァ!」

ズガァァァァンッ!

店主「ぐはぁっ!」

52: 2021/04/27(火) 18:45:13.776 ID:LxXTQatt0
店主「うおおおっ! 勇雷斬ッ!!!」

バリバリバリッ!

魔王「懐かしい技だ……この技で半身を黒焦げにされたのを覚えている」

魔王「そんなかつてはワシに大きなダメージを与えた技も、今やかすり傷すら与えられぬ」

店主「……!」

魔王「お返ししよう。暗獄魔炎ッ!!!」

ズゴォワァァァァァッ!

店主「がああああっ!」

53: 2021/04/27(火) 18:47:57.718 ID:LxXTQatt0
店主「あ、ぐ、ぅ……」シュゥゥゥゥ…

魔王「哀れなものだな」

魔王「かつてはワシと相討ちになった男が、このザマとは」

魔王「貴様を葬ったら、本格的にこの世界の支配を開始してやる!」

魔王「トドメだッ!」ゴゴゴゴゴ…

店主「ぐっ――」

55: 2021/04/27(火) 18:50:43.734 ID:LxXTQatt0
「やめろおおおおおっ!!!」

魔王「む!?」

客「店主さんを傷つけるな!」

店主「お、お客さん……? どうして……? さっきあんな乱暴に追い出したのに……」

客「戻ってきたのは俺だけじゃないぜ」

店主「え……?」

中年「フッ、やはりこういうことだったか」

青年「すいません、戻ってきちゃいました」

女「写真撮るぐらいであんなに怒るなんておかしいと思ったもん!」

店主「み、みんな……!」

56: 2021/04/27(火) 18:53:27.147 ID:LxXTQatt0
客「話はちょっと聞いてた。お前、かつて店主さんと戦った魔王らしいな?」

魔王「だったらなんだ」

客「お前は店主さんのレベルは上がってないっていってたけど、そんなことないぞ」

魔王「なにをいうか。現にこうしてワシに歯が立たないではないか」

客「そりゃたしかに戦いに関するレベルは上がってないだろう。だが――」

客「ラーメン屋としてのレベルは上がってるはずだ!」

店主「!!!」

57: 2021/04/27(火) 18:56:27.248 ID:LxXTQatt0
中年「その通りだ。ラーメン激戦区といわれるこの地区で人気店になったんだからねえ」

青年「そうです! 自分の歩んできた道を信じて下さい!」

女「お願い! 立ち上がって!」

店主「みんな……ありがとう!」

魔王「な……回復している!?」

店主「勇者とは、皆から勇気をもらって立ち上がれる者のことだからな」

店主「魔王、戦いでは敗れたが、今度はラーメン屋としての俺の実力を見せてやる!」

魔王「面白い! 見せてもらおうか!」

59: 2021/04/27(火) 18:59:06.491 ID:LxXTQatt0
店主(激しい戦いだったが、幸い厨房は無事だ。これならラーメンを作れる!)

店主(相手が魔王だといっても特別なことはしない。いつも通りに作る!)

店主(まず、どんぶりにスープを入れ――)

店主(麺を湯切り)チャッチャッチャッ

店主(麺を入れて、具をいくつかのっけたら――)

店主「へい、お待ち!」サッ

魔王「は、早い!」

店主「どんなに味がよくても、作るのが遅けりゃ流行るのは無理だからな」

60: 2021/04/27(火) 19:01:05.847
厨房すげえ

61: 2021/04/27(火) 19:01:20.315
厨房の防御力

62: 2021/04/27(火) 19:01:46.543
厨房に結界を張ってたんだろう

63: 2021/04/27(火) 19:03:03.275 ID:LxXTQatt0
店主「さあ、食べてみてくれ」

魔王「いただきます」

魔王「……」ズルッ

魔王「……」ズズズッ

魔王「こ、これは……!」

魔王「うまい! うまいぞ!」

魔王「麺と鶏がらのスープが見事に絡み合い、絶妙なハーモニーを醸し出しているぅ!」

魔王「しかも後味は爽やか! 箸が止まらん! 麺をすする口が止まらん!」ズゾゾゾゾッ

店主「……」ニヤッ

64: 2021/04/27(火) 19:05:16.532 ID:LxXTQatt0
魔王「……」ゴクゴク

魔王「――ぷはっ!」

客「おおっ、スープまで!」

中年「羨ましいねえ。私にはもうできないよ」

魔王「ごちそうさま……!」

店主「どうだった?」

魔王「悔しい……悔しいが、美味かった……!」

魔王「貴様のレベルが上がっていないというのは、ワシの認識不足だったようだ……!」

66: 2021/04/27(火) 19:08:27.414 ID:LxXTQatt0
魔王「……ん?」パァァァ…

店主「どうした?」

魔王「これはまさか……」パァァァァ…

女「魔王の体が光り輝いてく!」

青年「どうしたんでしょう!?」

魔王「うわああああああ……!」

パァァァァァ…

人間「こ、これは……!」シュゥゥゥ…

店主「魔王が……人間に……!?」

67: 2021/04/27(火) 19:11:32.930 ID:LxXTQatt0
人間「そうだ、思い出した……」

人間「かつてワシは人間だった。しかし、凄絶な古代戦争で仲間を失い、家族を失い、恋人を失い――」

人間「人というものに絶望し、魔に魅入られて、魔王になったのだった……」

客「そんな過去があったなんて……」

女「なんて可哀想な人なの……」グスッ

青年「だけどラーメンのおかげで魔が浄化され、人間に戻れたんですね!」

店主「よかったな」

人間「ありがとう……ありがとう……!」

68: 2021/04/27(火) 19:14:21.925 ID:LxXTQatt0
人間「さっそくお礼をしたいが……」

店主「お礼はいらないがお代はいただこう。650円になります」

人間「はい」

店主「350円のお釣りです」

店主「ありがとうございましたー! またお越し下さいませー!」



パチパチパチパチパチ…

69: 2021/04/27(火) 19:17:37.156 ID:LxXTQatt0
店主「皆さん。こうして魔王を倒せた……いや魔王を救えたのは皆さんのおかげです」

店主「さっきは追い出しちゃってすみませんでした」

店主「お詫びといってはなんですが、さっきの分ラーメンをご馳走します!」

客「やったぁ!」

中年「お、嬉しいねえ」

青年「ありがとうございます!」

女「わーい! 写真撮ってもいいよね?」

店主「どうぞどうぞ! 調味料ふりかけてもいいですよ!」

70: 2021/04/27(火) 19:20:23.310 ID:LxXTQatt0
それからというもの――

人間「よぉ、また来てしまったぞ」ガララッ

店主「お、いらっしゃい。魔王!」

人間「おいおい、魔王はやめてくれよ。ワシはもう真人間なんだからさ」

店主「おっと、そうだったな!」






―おわり―

72: 2021/04/27(火) 19:21:14.755
俺たちの夕飯はこれからだ!

73: 2021/04/27(火) 19:30:27.152

イイハナシダナー

76: 2021/04/27(火) 19:37:21.677
>魔王「いただきます」

ワロタ

引用元: 客「うまそうなラーメンだ、さっそくコショウをかけて…」店主「出て行ってくれ」