あれって拷問ってより処刑器具だよな

(´・ω・｀)あれ使われて生き残れるもんなの？

夫「マジじゃん！　鉄で出来てるし、針もついてるし……」

妻「実物ってこんなに大きいんだね」

夫「いったいいくらしたんだよ！？」

妻「一万円」

夫「安いな！」

夫「しかし、なんでこんなものを……！？」

妻「通販サイト見てたらたまたま見かけて、ついポチッちゃったの」

夫「どういうたまたまだよ」

妻「中まで運んでくれた配達員さんは『これで奥さんを拷問したいですよ』なんて小粋なジョークかましてたわ」

夫「俺だって同じ立場なら言いたくなるわ。お疲れ様です……」

夫「アイアンメイデンか……生で見るの初めてだ」

妻「私も」

夫「漫画とかじゃたまに出てくるけどな」

妻「たとえば？」

夫「まず思いつくのは……金田一だな」

妻「ああ、あのいつも帽子被ってる」

夫「じっちゃんじゃねえ。孫の方だ」

妻「どういう風に出てきたの？」

夫「ある事件で、アイアンメイデンで殺される被害者がいるんだよ」

妻「まあ怖い。どんな事件？」

夫「細かくは覚えてないけど……レッドラムの事件」

妻「レッドラム？」

夫「英語の“MURDER”を逆から読むと“REDRUM”だろ？　そいつが犯人の事件だ」

妻「犯人は誰なの？」

夫「たしか……」ﾎﾞｿｯ

妻「なんで犯人バラすのぉ！　ミステリーの犯人バラすなんて最低っ！」

夫「お前が聞いたんだろうが！」

夫「あと、シャーマンキングでも出てきたな」

妻「私も読んだことあるけど、出てきたっけ？」

夫「自分の巫力を上げるためにアイアンメイデンに入ってる女の子がいるんだよ」

妻「あー、思い出した。いたいた。ものすごく強かったよね」

妻「あなたも入ってみれば？　巫力上がるかもよ」

夫「俺の魂が天に上がるだけだろうからやめとく」

妻「アイアンメイデンって怖いけど、これで刺された人がいるかと思うとロマン感じるよね」

夫「そんなとこにロマンを感じるお前が怖いよ」

夫「でもまぁ、実際に使われたかっていうと結構怪しいらしいぞ」

妻「え、そうなの？」

夫「脅すために使われただけとか、そんな説を聞いたことがある」

妻「ふうん、ちょっと残念」

夫「残念がるお前がますます怖くなったよ」

夫「……で、本題に入るけど。こんなもん買って何に使うんだよ？」

妻「んー、拷問」

夫「誰を？」

妻「あなた」

夫「ふざけんな！」

妻「じゃあそこらへん歩いてる人捕まえて、拷問してみようか」

夫「世が世ならお前は秘密警察になってたかもな。絶対向いてる」

妻「あ、そうだ。燻製肉を作るってのはどう？」

夫「お前、燻製肉の作り方なんて知ってるのか？」

妻「知らない」

夫「ダメじゃん」

妻「じゃあ……針治療に使うとか」

夫「こんなもんブッ刺したら氏ぬだけだろ」

妻「甘く刺せばいけるんじゃない？」

夫「それできる技量があるなら普通に鍼治療の資格取った方がいいと思う」

妻「じゃあこれ……なんの役にも立たないじゃん！」

夫「や、やっと気づいたのか……」

妻「こんなもんに一万も払って……私はなんてバカなの！」

妻「わけの分からないクソゲーに課金しちゃったようなものじゃない！」

夫「物品が残らない分課金の方がマシかもしれないな」

妻「もうやだっ！　私……アイアンメイデンに入る！」

夫「ちょっ！？」

まさかの自分

妻「さあ、入ったわ！　閉めて閉めて！」

夫「色んな意味で嫌だよ！」

妻「じゃあ自分で閉めるぅ！　セルフメイデン！」

夫「落ちつけ！　あ、そうだ！　アイアンメイデンの使い道が分かったぞ！」

妻「なになに！？」

夫「クローゼットにしよう。針に気をつけないといけないけど」

妻「それいい！」

夫（ひとまず妻の拷問は避けられたか……）

次の日――

夫「ふぁぁぁ……」

夫「さ、今日も会社に行くかぁ……」

ｽﾞﾝ…

夫「うわあああああっ！！！」

妻「なに大声出してるの」

夫「朝からアイアンメイデンを見るってのはなかなか心臓に悪いな」

夫（俺の提案通り、アイアンメイデンはクローゼットになった）

夫（中には俺のスーツが何着か入っている……）

夫（拷問器具から服を取り出すなんて、なんともいえない気分だ……）

だが、拷問器具にしまっていたスーツを着ると……気が引き締まる。

まるで自分が処刑人になったかのように……。

そう、俺は現代の処刑人……世の中の悪を抹頃しまくってやる！

妻「かっこいい～！　必殺仕事人みたい！」

夫「こんなこと思ってねえから！　俺の心の声を捏造するな！」

妻「ごめんね、つい」

夫「行ってきまーす！」

夜になり――

夫「ただいまー」

妻「お帰り」

ｽﾞﾝ…

夫「おわぁっ！」

妻「どうしたの？」

夫「アイアンメイデンのお出迎えはビックリするよ」

深夜――

夫「うぅ～、トイレトイレ」ｽﾀｽﾀ

ｽﾞﾝ…

夫「うぎゃああああああああああああああっ！！！！！」

妻「ど、どうしたの！？」

夫「深夜に見るアイアンメイデンは怖すぎる！　マジで心臓止まるかと思った！」

妻「あー、これは確かに怖いわ。夢に出そう」

妻「それと……心臓は止まらなかったけど、そっちも止まらなかったみたいね」

夫「新しいパンツにしなきゃ……とほほ」

しかし――

夫「慣れってのは恐ろしいもんだ」

妻「え？」

夫「見慣れると、アイアンメイデンもインテリアとして悪くない気がしてきた」

妻「でしょ」

夫「アイアンメイデン見ながら白米を食うのも余裕だよ」ﾊﾟｸﾊﾟｸ

妻「トマトジュース飲む？」

夫「トマトジュースはちょっと……」

妻「ねえ、見て」

夫「ん？」

妻「今日はアイアンメイデンで燻製肉を作ってみたの」

夫「ホントにやったのか！」

妻「本を見ながら、何事もチャレンジだと思ってね」

夫「どれ……」ﾓｸﾞｯ

妻「どう？」

夫「うん、うまい！　香ばしくて、よく出来てるよ！」

妻「アイアンメイデンで料理の鉄人ね！」

妻「――このメールはなんなの！？」

夫「いや、違うんだ」

妻「明らかに若い女の子からだよね！？　『また飲みに誘って下さい』って！」

夫「誤解だ！」

妻「アイアンメイデンに閉じ込めてやる！」

夫「許して！　ごめんなさい！　もうしませぇぇぇん！」

夫「なぁ……今夜いいだろ？」

妻「うん……」

妻「でもここだと……ほらアイアンメイデンが見てる」

夫「いいじゃないか。見られてる方が興奮するよ」

妻「もう……」

妻「あ、そうだ！　どうせなら二人でアイアンメイデン入る？」

夫「どんなプレイだ！」

妻「もうすぐ赤ちゃんが産まれるね」

夫「ああ、ついに俺たちも親になるんだ」

妻「ところでこのアイアンメイデンなんだけど……」

夫「ん？」

妻「危ないから、針は外そうか」

夫「そうだな。子供が刺さっちゃったら大変だ」

子供が生まれ――

息子「かくれんぼしよー！」

娘「うん、やろうやろう！」

息子「ジャーンケーン」

娘「ポン！」

息子「ちぇっ！　ぼくが鬼か！」

娘「じゃー、かくれるねー！」

息子「やっぱりこの中に隠れてた！」ｶﾞﾁｬｯ

娘「見つかっちゃった！」

ｷｬｯｷｬｯ



夫「恐ろしい拷問器具・アイアンメイデンもすっかり子供の遊び場だな」

妻「うん……」

妻「だけど心なしか、アイアンメイデンの顔が微笑んでるように見えるわ」







おわり

おもしろかった乙

拷問器具も使い用ってね