1 :2012/08/20(月) 23:23:32.38


喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで、『笑ゥせぇるすまん』」コツ...コツ...

喪黒「ですが、ただのセールスマンじゃございません。わたしの取り扱う品物はココロ…」コツ...コツ...

喪黒「人間の、ココロでございます。ホーッホッホッホ…」コツ...コツ...

―――
――

3 :2012/08/20(月) 23:25:04.37


喪黒「この世は老いも若きも男も女も…心の寂しい人ばかり」コツ...コツ...

喪黒「そんな皆さんのココロのスキマをお埋め致します」コツ...コツ...

喪黒「いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます」コツ...コツ...

喪黒「さて、今日のお客様は…」コツ...

―――
――

千早「はぁ…最近、どうしてか上手く歌えないわね…。スランプかしら…」ハァ...
【如月 千早(16):アイドル】

―【歌報】―

喪黒「ホーッホッホッホ…」

―――
――




5 :2012/08/20(月) 23:26:09.51


――スタジオ
――16:30

千早「~♪」

千早「~♪~♪」

P「よし。千早、今日はここまでにしておこうか」

千早「それは、上手く歌えていなかったから…ですか?」チラッ

P「…」ジッ

千早「プロデューサー。お願いします。ハッキリ言ってください」ジッ

P「わかった…」

P「なぁ、千早。最近、歌に感情を込めているか?」

千早「当然です!感情の無い歌なんて、私は歌いたくありません!」キッ

P「…」

千早「…何ですか?その顔…」ビクッ

P「最近の千早は、独り善がりだ」

千早「えっ?」ドキッ




6 :2012/08/20(月) 23:27:05.69


P「『自分は歌が上手い』そう…思ってるんじゃないのか?」ジッ

千早「…そ、そんなこと…」

P「まぁ、いいさ。確かに千早の歌は、聴いてて癒されるからな」

千早「プロデューサー…///」キュンッ

P「でも…」

千早「…えっ?」

P「最初の頃の千早の歌は…癒され、励まされた。今のお前の歌は、癒されるだけだ」

千早「…」

P「じゃあ帰ろうか。家まで送っていくよ」

千早「…プロデューサー」チラッ

P「…うん?」

千早「私…もう少し練習していきます!昔みたいに歌えるように!」




7 :2012/08/20(月) 23:27:46.51


P「…よし!その言葉が聞きたかった!じゃあ千早、俺は一度事務所に戻ってから、また来る!一緒に頑張ろうな!」

千早「はい!ありがとうございます!」

P「じゃあまた後でな?」スタスタスタ

―――
――




8 :2012/08/20(月) 23:28:50.23


――スタジオ
――16:50

千早「~♪~♪」

千早「めとめがあうー♪」

??「ホーッホッホッホ。素晴らしい歌ですなぁ!」パチパチパチ

千早「っ!?」ビクッ

千早「…だっ、誰ですかっ!?あなたは!?」

??「ホーッホッホッホ。申し遅れました。私は、こういう者です」つ【名刺】

千早「…喪黒…福造?(『ココロのスキマ…お埋めします、』どういう意味かしら…)」チラッ

喪黒「ホーッホッホッホ…仕事でこのスタジオに来たのですが、アナタの素晴らしい歌声に、ついつい拍手を…」




9 :2012/08/20(月) 23:29:51.94


千早「あっ…。あ、ありがとうございます」

喪黒「ホーッホッホッホ。アナタのお名前は?」

千早「あっ、すみません!私、如月千早といいます」

喪黒「如月さん…アナタ今、悩みがありますね?」

千早「えっ?」ドキッ

喪黒「なかなか上手に歌えない。最初の頃は上手に歌えたけれど、今は上手く歌えない」

千早「…」ジッ

喪黒「と、いったとこれでしょうか」ニヤニヤ、ニヤニヤ、

千早「どういうつもり…ですか?」キッ

喪黒「ホーッホッホッホ。私の仕事はセールスマンなのです。顔を見れば、大抵の事はわかります」




12 :2012/08/20(月) 23:31:13.40


千早「セールスマン…。ふふっ。私に何を買わせようというんですか?」

喪黒「ホーッホッホッホ。お金は一銭も頂きません。それに、私の取り扱う品物はココロ。
人間の、ココロでございます」ニヤニヤ、ニヤニヤ、

千早「人間の…ココロ?」

喪黒「そう。悩める人々のココロのスキマを埋めるのが、私の仕事なのです」

喪黒「例えば…『歌の苦手な人に、歌に悩みを持っている人に、それを解決する方法をご紹介する』というような事もしております」

千早「歌…」ビクッ

喪黒「そして如月さん。アナタのココロのスキマ…それは先程、私が申し上げた通り」ニヤニヤ、ニヤニヤ

千早「じょっ、冗談じゃありません!なんでいきなり見ず知らずのアナタにそんな事を言われなくちゃいけないんですか!?」バンッ




13 :2012/08/20(月) 23:32:12.50


喪黒「ホーッホッホッホ。これはこれは…とんだ失礼を。ならば、私はこれで…」

千早「…」

喪黒「それと如月さん」ニヤニヤ、ニヤニヤ、

千早「…何ですか?」

喪黒「もし、私の助けがほしい時は…その名刺の裏に、私の連絡先が出ています」

千早「…」

喪黒「では、私はこれで…。ホーッホッホッホ…」コツコツコツ...

千早「変な人…」

―――
――




14 :2012/08/20(月) 23:33:12.34


――スタジオ
――18:00

千早「はぁ…はぁ…」

P「千早」

千早「はぁ…はぁ…。はい、プロデューサー…」

P「今日は…ここまでにしよう。これ以上やっても、声が枯れるだけだ」

千早「もっと歌えますっ!ごほっ、ごほっ…」ゴホッ、ゴホッ、

P「無理するなって…な?ゆっくり取り戻していこう」ナデナデ、ナデナデ、

千早「…」

千早「わかり…ました…」

千早「くっ…」

―――
――




15 :2012/08/20(月) 23:35:13.65


――千早の部屋
――19:00

千早「…」ハァ...

千早「スランプね…私らしくない…」

千早「歌…歌えなくなっちゃったのかな…」グスッ
――ハラッ

千早「…何かしら、これ…」

つ【名刺】

千早「ココロのスキマ…さっきのだわ…」

喪黒『例えば…『歌の苦手な人に、歌に悩みを持っている人に、それを解決する方法をご紹介する』というような事もしております』

千早「歌…解決…」

千早「…」

千早「…」スッ

――プルルルル、プルルルル、

―――
――




16 :2012/08/20(月) 23:36:19.85


――BAR【魔の巣】
――21:00

千早「…」

喪黒「ホーッホッホッホ。如月さん…どうされたのです?先程から、黙って…」

千早「歌…前みたいに歌えなくなってしまったんです。私には…歌しか無いのに」ギリッ

喪黒「…」ニヤリ

喪黒「…よろしい!ならば、私が何とか致しましょう!」

千早「…」チラッ

喪黒「ホーッホッホッホ…」ゴソゴソ、ゴソゴソ、

喪黒「どうぞこれを。アナタに差し上げます」つ【マイク】

千早「…マイク?」

喪黒「はい。マイクです」




17 :2012/08/20(月) 23:37:23.43


千早「冗談は辞めてください。マイクなんか、何本も持っています」

喪黒「…」ニヤッ

喪黒「ホーッホッホッホ。これはただのマイクではございません」

千早「えっ?」

喪黒「それは、過去に何人もの歌姫が所有していた、いわば『歌姫のマイク』なのです」

千早「歌姫…」

喪黒「それがあれば、アナタは以前の…いえ、以前よりも素晴らしい歌を歌える事でしょう」

千早「これ…おいくらですか?」チラッ

喪黒「ホーッホッホッホ。お金は一銭も頂きません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます」ニヤニヤ、ニヤニヤ、




19 :2012/08/20(月) 23:38:40.97


千早「あっ…ありがとうございます!」パァッ

喪黒「ですが…」

千早「えっ?」

喪黒「ですが一つ。約束があります」ニヤニヤ、

千早「約束…ですか?」

喪黒「そのマイク。必ず『信じて』使ってください。『マイク』を疑ってはなりません。如月千早さん…いいですか?
必ず『マイク』『だけ』を『信じて』使ってください」ジィッ

千早「わっ…わかりました。この『マイク』『だけ』を『信じて』使います」ビクッ

喪黒「ホーッホッホッホ。それならばよいのです」ニヤニヤ、

喪黒「ホーッホッホッホ…」ニヤニヤ、ニヤニヤ、

―――
――




22 :2012/08/20(月) 23:40:47.59


次の日
――スタジオ
――11:40

千早「~♪~♪」

千早「あおいーとりー♪」

P「…」フルフル、フルフル、

千早「どうしました?プロデューサー…」チラッ

P「お前…」

千早「…」ドキッ

P「スランプから抜け出せたんだな…いや、それ以上だ…」グスッ

千早「…」

千早「…えっ?」

P「歌に感情…なんて次元じゃない…。如月千早が、歌なんだ…」グスッ

千早「あのっ…プロデューサー?」オロオロ、オロオロ

P「千早!次の定例ライブのトリはお前だ!その歌を、復活した『歌姫』如月千早の歌をファンの皆に聴かせてやってくれ!」




23 :2012/08/20(月) 23:42:29.38


千早「私が歌姫…トリ…」グスッ

千早「がっ、頑張りますっ!」

P「じゃあ俺はこの事を社長に報告してくる!また帰ってきたら、レッスンの続きをしよう!」タッタッタッタッ

――ガチャッ、バタンッ!

千早「…ふふっ。このマイクのおかげなのかしら」クスクス、クスクス、

喪黒「ホーッホッホッホ。如月さん」トントン、

千早「あっ…!喪黒さん!」パァッ

喪黒「ホーッホッホッホ。どうですかな?『歌姫のマイク』は」

千早「はい!このマイクのお陰でスランプから抜け出せました!」

喪黒「ホーッホッホッホ。それなら良かった」

千早「はい!このマイクはもう手離せません!」




24 :2012/08/20(月) 23:42:39.25 


嫌な予感しかしない




26 :2012/08/20(月) 23:44:01.00


喪黒「ホーッホッホッホ…。その様子なら、約束も守ってくださっている様ですね」ニヤニヤ、ニヤニヤ、

千早「約束…?」

喪黒「はい。必ず、その『マイク』『だけ』を『信じて』使うこと」

千早「あっ、はい!大丈夫です!この『マイク』『だけ』を『信じて』使ってますから!」

喪黒「ホーッホッホッホ。それなら良いのです。では、私はこれで…」コツコツコツ...

千早「ふふっ…このマイクで歌えば、私はもう…」

――ガチャッ、




27 :2012/08/20(月) 23:45:37.52


P「ちはやー!トリがお前に決まったぞー!社長がOKだってさー!」タッタッタッタッ

千早「…ほっ、ほんとですかっ!あっ…」グスッ

千早「ふふっ…嬉しいはず…なのに…涙、が…」グスッ、グスッ、

P「…」ギュッ

千早「あっ…プロデューサー…」ギュー

P「おかえり…やっと帰ってきたな。千早…」ナデナデ、ナデナデ、

千早「ぷ…ぷろでゅーさぁ…」グスン...グスッ...

千早「はい…『プロデューサー』を『信じて』…良かった…」ギュッ

P「千早…」ナデナデ、

千早「ふふっ…」

――
喪黒「…」コツ...

―――
――


29 :2012/08/20(月) 23:47:04.61


ライブの日
――ライブ会場:千早の楽屋
――20:00

P「千早、もう少しでラストナンバーだ。イケるな?」

千早「…はい!『プロデューサー』を『信じて』ますから」

P「そっか。ありがとな」ナデナデ、ナデナデ、

千早「ふふっ…」

P「じゃあ俺は、ステージ横に皆の様子を見てくる。時間になったら、スタッフが呼びに来るから」

千早「わかりました」

P「じゃあ、また後で」

――ガチャッ、バタン

千早「ふぅ…私が、ラストナンバーを…」

――ガチャッ

千早「…?プロデューサー?」チラッ

――バタン




30 :2012/08/20(月) 23:48:27.58


喪黒「ホーッホッホッホ…。お久しぶりです。如月さん」ニヤニヤ、ニヤニヤ、

千早「あっ!喪黒さん!はい!このマイクのお陰でここまで…」

喪黒「…」ジリッ...

千早「…喪黒さん?」

喪黒「ホーッホッホッホ…。如月さん、アナタ…約束を破りましたね?」

千早「…」ドキッ

喪黒「私は、『マイク』『だけ』を『信じて』使ってください。
私は、そう申し上げました」ジリッ...ジリッ...

千早「いっ、今の私があるのはプロデューサーを信じてきたからです!
『マイク』『だけ』の力じゃありません!」ジリッ...




31 :2012/08/20(月) 23:50:01.94


喪黒「ホーッホッホッホ。…なりません」

千早「…えっ?」

喪黒「アナタは『マイク』を裏切りました。もうどうなっても…私は知りませんよ?」ジリッ...ジリッ...

千早「こっ…こないで…」ジリッ...



33 :2012/08/20(月) 23:51:23.64


喪黒「ドーーーーーーーーーン!!!!!!!」つドーーーーーーーーーーン!!!!!!!




34 :2012/08/20(月) 23:52:08.80


千早「いっ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」グルグルグルグル...

―――
――




35 :2012/08/20(月) 23:53:03.09


MC「さぁ、765プロ定例ライブ!ラストナンバーに参りましょう!」

MC「ラストナンバーを飾るは…765プロが歌姫!」

MC「如月千早ちゃんでーす!」バッ

千早「…」フラフラ、フラフラ、

P(どうしたんだ?千早の様子がおかしい…)

千早「…」スッ

千早「 」パクパク、パクパク、



38 :2012/08/20(月) 23:55:40.25


P(どっ、どうしたんだ!千早!口をパクパクさせて!)ハラハラ、ハラハラ、

千早「 」パクパク、パクパク、

千早「 」パクパク...

千早「 」

――ザワザワ...ザワザワ...

千早「 」フラァ...バタン

――ザワザワ!ザワザワ!

P「ちっ、ちはやーーーー!!」タッタッタッタッ

千早「プッ…プロデューサー…歌…うた…うたがうたえなくなってしまいました…」グスッ、グスッ、

P「」

―――
――




39 :2012/08/20(月) 23:56:36.05


喪黒「ホーッホッホッホ。歌に一生を捧げるのも結構ですが、歌以外のシアワセもまた一生なのです」

喪黒「ホーッホッホッホ…」コツコツコツ...

おわり




42 :2012/08/20(月) 23:57:37.54


はい。ここまでありがとうございました。以上、如月千早篇でした。

…さて、次のお客様は



46 :2012/08/21(火) 00:00:51.61


前に書いた響が案外ウケたから、千早で書いてみた
次は誰がお客として選ばれるんだろう




47 :2012/08/21(火) 00:01:39.42 


あずささん読みたい




48 :2012/08/21(火) 00:01:57.37


読みたくないけど読んでくる
なんかホラー映画見る直前みたい




49 :2012/08/21(火) 00:02:42.62


貴音さん読みたいです




51 :2012/08/21(火) 00:08:08.97 ID:W+eZJ3iU0


廃人レベルじゃなくて安心した
だけど千早のメンタルだとヤバいかもね

響のはなあ……