1: 2014/06/03(火) 22:09:12.52 ID:MF2y/ueo0.net
梓が弁当箱に蓋をした。
パチリ。と音がする。
「お弁当! 完成しましたよ!」
梓は胸を張って言った。
「うまくできたねぇ。あずにゃん」
唯がニコニコと笑う。
「じゃあ、みんなのこと叩き起こしてきますね!」
鍋の蓋とおたまを持った梓が、キッチンから出て行った。
パチリ。と音がする。
「お弁当! 完成しましたよ!」
梓は胸を張って言った。
「うまくできたねぇ。あずにゃん」
唯がニコニコと笑う。
「じゃあ、みんなのこと叩き起こしてきますね!」
鍋の蓋とおたまを持った梓が、キッチンから出て行った。
2: 2014/06/03(火) 22:10:29.07 ID:MF2y/ueo0.net
「みなさん! 朝ですよ!」
梓が鍋の蓋をおたまで叩きながら叫ぶ。
カンカンとやかましい音が寝室に響いた。
「もう朝なの~?」
紬がベットから上半身だけ起こして言った。
寝ぼけているようで、その瞼は閉じられたままだ。
「げっ! まだ5時じゃねーか!」
布団にもぐりこんだまま時計を見て、律がそう叫んだ。
その横で澪はすやすやと眠りについている。
「”もう”5時です! 太陽はもう顔を出しているんですから!
日の出営業ですよ!」
梓がカンカンと鍋の蓋を打ち鳴らす。
「それはまた意味合いが変わってくるだろ……」
両手で耳を押さえながら、律が呆れて言った。
梓が鍋の蓋をおたまで叩きながら叫ぶ。
カンカンとやかましい音が寝室に響いた。
「もう朝なの~?」
紬がベットから上半身だけ起こして言った。
寝ぼけているようで、その瞼は閉じられたままだ。
「げっ! まだ5時じゃねーか!」
布団にもぐりこんだまま時計を見て、律がそう叫んだ。
その横で澪はすやすやと眠りについている。
「”もう”5時です! 太陽はもう顔を出しているんですから!
日の出営業ですよ!」
梓がカンカンと鍋の蓋を打ち鳴らす。
「それはまた意味合いが変わってくるだろ……」
両手で耳を押さえながら、律が呆れて言った。
4: 2014/06/03(火) 22:11:46.27 ID:MF2y/ueo0.net
「じゃあ、行きますよ!」
けいおん部の五人は、紬の別荘を出発した。
時刻は朝の5時半である。
「眉毛くらい、描かせてくれよな」
律がそうぼやいた。
「じゃあもっと早起きしてください!
私と唯先輩は2時に起きたんですよ!」
お弁当係の梓が、律を叱りつけた。
唯がニコニコとしながら言う。
「眉毛くらい平気だよぉ。どうせ誰とも会わないんだし」
「そうですよ! ここはムギ先輩の山なんだから!」
梓の言葉に、律は表情を曇らせる。
「だからって、こんな早朝からピクニックってのもなぁ……」
その後方では、紬と澪の二人が抱き合うようにして、
立ったまま寝ていたのであった。
けいおん部の五人は、紬の別荘を出発した。
時刻は朝の5時半である。
「眉毛くらい、描かせてくれよな」
律がそうぼやいた。
「じゃあもっと早起きしてください!
私と唯先輩は2時に起きたんですよ!」
お弁当係の梓が、律を叱りつけた。
唯がニコニコとしながら言う。
「眉毛くらい平気だよぉ。どうせ誰とも会わないんだし」
「そうですよ! ここはムギ先輩の山なんだから!」
梓の言葉に、律は表情を曇らせる。
「だからって、こんな早朝からピクニックってのもなぁ……」
その後方では、紬と澪の二人が抱き合うようにして、
立ったまま寝ていたのであった。
5: 2014/06/03(火) 22:13:00.35 ID:MF2y/ueo0.net
「到着です! ここでお弁当を食べます!」
梓と唯の二人がテキパキと準備を始める。
「ええ? 早くないか……?」
律は驚いた。
まだ別荘を出てから、5分と歩いていない。
「朝ごはんですよ。みんなおなかすいてるでしょう?」
広げたビニールシートの四隅に石を置きながら、梓が言う。
「いや、別に。つーか二人ほど寝てるし」
梓が律の示した方を見ると、
ビニールシートに横になっている紬と澪が目に入った。
「なんでまだ寝てるんですかー!!!」
梓は激怒した。
梓と唯の二人がテキパキと準備を始める。
「ええ? 早くないか……?」
律は驚いた。
まだ別荘を出てから、5分と歩いていない。
「朝ごはんですよ。みんなおなかすいてるでしょう?」
広げたビニールシートの四隅に石を置きながら、梓が言う。
「いや、別に。つーか二人ほど寝てるし」
梓が律の示した方を見ると、
ビニールシートに横になっている紬と澪が目に入った。
「なんでまだ寝てるんですかー!!!」
梓は激怒した。
6: 2014/06/03(火) 22:14:21.85 ID:MF2y/ueo0.net
「梓ちゃん、ごめんなさいねぇ。
昨日は遅くまでウノをやっていたの……」
「ムギがスキップばっかり使うから、私の番が来なくて……」
紬と澪は目をこすりながら言った。
「ええ? お前らあれからずっとスキップ合戦してたのか」
律が呆れて言った。
二人の勝負を見るのに飽きてしまって寝たのは、
確か日付が変わる前のことだったはずだ。
「律ちゃんが寝た直後にね。
スキップのカードを、ついにコンプリートしたのよ」
紬が胸を張った。
「ムギはそれを一枚一枚出すんだよ……。
さすがの私も心が折れかけた」
澪はため息をついた。
昨日は遅くまでウノをやっていたの……」
「ムギがスキップばっかり使うから、私の番が来なくて……」
紬と澪は目をこすりながら言った。
「ええ? お前らあれからずっとスキップ合戦してたのか」
律が呆れて言った。
二人の勝負を見るのに飽きてしまって寝たのは、
確か日付が変わる前のことだったはずだ。
「律ちゃんが寝た直後にね。
スキップのカードを、ついにコンプリートしたのよ」
紬が胸を張った。
「ムギはそれを一枚一枚出すんだよ……。
さすがの私も心が折れかけた」
澪はため息をついた。
8: 2014/06/03(火) 22:16:28.82 ID:MF2y/ueo0.net
「そんなことをしてる暇があったのなら、
お弁当作るのを手伝ってくれても良かったでしょう!」
梓が吠えた。
「そんなことってのは何よ!?」
「そうだぞ、梓! 世の中には言っていいことと悪いことがある!」
紬と澪も負けていなかった。
三人の間にバチバチと火花が散る。
「まぁまぁ」唯が仲裁に入った。
「みんな、準備が整ったよ!」
唯が大仰に示した先を見ると、
豪華なお弁当がビニールシートの上に広げられていた。
お弁当作るのを手伝ってくれても良かったでしょう!」
梓が吠えた。
「そんなことってのは何よ!?」
「そうだぞ、梓! 世の中には言っていいことと悪いことがある!」
紬と澪も負けていなかった。
三人の間にバチバチと火花が散る。
「まぁまぁ」唯が仲裁に入った。
「みんな、準備が整ったよ!」
唯が大仰に示した先を見ると、
豪華なお弁当がビニールシートの上に広げられていた。
9: 2014/06/03(火) 22:17:22.81 ID:MF2y/ueo0.net
「わー! すごくおいしそうです!
いったい誰が作ったんですか!?」
梓が目をキラキラとさせて言う。
いや、お前だろ。と律が突っ込みかけた、そのとき。
「あ、私だった!」梓は頭をコチンと叩き、舌をペロっと出した。
「なんだこいつ……」
さすがの律も少しイラついたようだった。
「何それ。かわいいつもりかしら」
「引くわ」
紬と澪が厭味ったらしく言う。
「……文句があるなら、食べなくてもいいんですよ」
梓の中に、静かな怒りの炎がともった。
いったい誰が作ったんですか!?」
梓が目をキラキラとさせて言う。
いや、お前だろ。と律が突っ込みかけた、そのとき。
「あ、私だった!」梓は頭をコチンと叩き、舌をペロっと出した。
「なんだこいつ……」
さすがの律も少しイラついたようだった。
「何それ。かわいいつもりかしら」
「引くわ」
紬と澪が厭味ったらしく言う。
「……文句があるなら、食べなくてもいいんですよ」
梓の中に、静かな怒りの炎がともった。
11: 2014/06/03(火) 22:18:36.33 ID:MF2y/ueo0.net
「こんなにおいしいのになぁ」
唯がお弁当を頬張りながら言った。
横目で悔しそうに梓がそれを見る。
「食べるのは、こちらの決着がついてからです」
そう言って、紬と澪の方へ向き直った。
「梓ちゃん。なかなか、面白いことを言うのね」
「勝負はウノで決めるのか?」
二人の発言を聞いて、梓は鼻で笑った。
「何かあるとすぐウノウノって。
馬鹿の一つ覚えみたい」
「なんだと!?」
澪が激昂した。
唯がお弁当を頬張りながら言った。
横目で悔しそうに梓がそれを見る。
「食べるのは、こちらの決着がついてからです」
そう言って、紬と澪の方へ向き直った。
「梓ちゃん。なかなか、面白いことを言うのね」
「勝負はウノで決めるのか?」
二人の発言を聞いて、梓は鼻で笑った。
「何かあるとすぐウノウノって。
馬鹿の一つ覚えみたい」
「なんだと!?」
澪が激昂した。
14: 2014/06/03(火) 22:20:25.38 ID:MF2y/ueo0.net
「澪ちゃん、少し落ち着きましょう」
紬がそれを制する。
「ムギ! だって、こいつ……!」
澪の目には涙が浮かんでいた。
澪の肩をポンポンと叩き、
やおら梓の方へ向き直りながら、クスクスと紬が笑う。
「ねぇ梓ちゃん。私たちとウノをやるのが怖いんでしょう?
だからそうやって逃げてるだけよね」
ハッと気づいたように、澪が梓を睨み付けた。
「なるほど、そういうことか。
せこいこと考えるもんだな。梓も……!」
そう言って、ギリギリと歯ぎしりをする。
そんなつもりじゃないのに。
梓は少しムキになった。
「いいでしょう! ウノでもなんでもやってやりますよ!」
その言葉を受けて、紬がニヤリと笑った。
紬がそれを制する。
「ムギ! だって、こいつ……!」
澪の目には涙が浮かんでいた。
澪の肩をポンポンと叩き、
やおら梓の方へ向き直りながら、クスクスと紬が笑う。
「ねぇ梓ちゃん。私たちとウノをやるのが怖いんでしょう?
だからそうやって逃げてるだけよね」
ハッと気づいたように、澪が梓を睨み付けた。
「なるほど、そういうことか。
せこいこと考えるもんだな。梓も……!」
そう言って、ギリギリと歯ぎしりをする。
そんなつもりじゃないのに。
梓は少しムキになった。
「いいでしょう! ウノでもなんでもやってやりますよ!」
その言葉を受けて、紬がニヤリと笑った。
15: 2014/06/03(火) 22:22:21.26 ID:MF2y/ueo0.net
「ねえ、みんな。食べないのー?
あ、律ちゃん。同じのばっか食べてると偏るよ」
「細かいこと気にすんなって!
お、これうまいから最後に取っておこう」
唯に交じって、律まで舌鼓を打っていた。
「いい!? 一回勝負よ!」
その横で梓、紬、澪の三人はルールの確認をしていた。
「最後に英語のカードが残ったら、ペナルティなんですよね」
梓がそう言うと、紬と澪が顔を見合わせて吹き出した。
「何かしらそれ! どこのハウスルールぅ!?」
「こりゃあ傑作だ! とんだお客さんが紛れ込んじまったな!」
腹を抱えて笑い転げている。
梓は顔が熱くなるのを感じた。
「もしかして、点数計算もできないのかしら!?」
「おいおい、まさかな! ……できないのか?」
紬と澪は顔をニヤつかせながら梓の方を見る。
真っ赤な顔をして俯いた梓は、
膝の上で握った拳を悔しそうに震わせていた。
あ、律ちゃん。同じのばっか食べてると偏るよ」
「細かいこと気にすんなって!
お、これうまいから最後に取っておこう」
唯に交じって、律まで舌鼓を打っていた。
「いい!? 一回勝負よ!」
その横で梓、紬、澪の三人はルールの確認をしていた。
「最後に英語のカードが残ったら、ペナルティなんですよね」
梓がそう言うと、紬と澪が顔を見合わせて吹き出した。
「何かしらそれ! どこのハウスルールぅ!?」
「こりゃあ傑作だ! とんだお客さんが紛れ込んじまったな!」
腹を抱えて笑い転げている。
梓は顔が熱くなるのを感じた。
「もしかして、点数計算もできないのかしら!?」
「おいおい、まさかな! ……できないのか?」
紬と澪は顔をニヤつかせながら梓の方を見る。
真っ赤な顔をして俯いた梓は、
膝の上で握った拳を悔しそうに震わせていた。
17: 2014/06/03(火) 22:24:21.06 ID:MF2y/ueo0.net
「じゃあ、そのルールで始めようか」
口元を歪めながら澪が言い放つ。
「ええ、そうね。仕方ないからお客さん、
……梓ちゃんのルールでやりましょうか」
澪と同様にして、口元を歪めながら紬もそう続けた。
梓はただ黙って俯いていた。
「ハンデとして、ビリじゃなかったら梓の勝ちでいいよ」
澪は嫌らしい笑みを浮かべている。
「じゃあ梓ちゃんから始めていいわよ」
クスクスと笑いながら紬が言った。
梓は無言のまま緑の2のカードを出す。
「じゃあ次は私だな」
青の2を出しながら澪はそう言って、
紬に目で合図を送った。
お互い黙って頷き合う。
「私はこれね」
紬が出したカードは青のリバースであった。
口元を歪めながら澪が言い放つ。
「ええ、そうね。仕方ないからお客さん、
……梓ちゃんのルールでやりましょうか」
澪と同様にして、口元を歪めながら紬もそう続けた。
梓はただ黙って俯いていた。
「ハンデとして、ビリじゃなかったら梓の勝ちでいいよ」
澪は嫌らしい笑みを浮かべている。
「じゃあ梓ちゃんから始めていいわよ」
クスクスと笑いながら紬が言った。
梓は無言のまま緑の2のカードを出す。
「じゃあ次は私だな」
青の2を出しながら澪はそう言って、
紬に目で合図を送った。
お互い黙って頷き合う。
「私はこれね」
紬が出したカードは青のリバースであった。
18: 2014/06/03(火) 22:25:16.71 ID:MF2y/ueo0.net
「あらー? ごめんなさいね、梓ちゃん」
紬が吹き出しながら言う。
梓は次のカードを出す準備をしていたが、
順番を反対回しにされたのでその手を引っ込めた。
「私の番か。じゃあこれな」
澪は赤のリバースを出す。
「ちょっとぉ! また梓ちゃんの順番が来ないじゃないの!」
「おっと! 悪いな、梓!」
二人はげらげらと笑った。
梓は拳を震わせた。
今に。
今に、見ていろ。
涙を浮かべたその目で、赤のリバースを凝視していた。
紬が吹き出しながら言う。
梓は次のカードを出す準備をしていたが、
順番を反対回しにされたのでその手を引っ込めた。
「私の番か。じゃあこれな」
澪は赤のリバースを出す。
「ちょっとぉ! また梓ちゃんの順番が来ないじゃないの!」
「おっと! 悪いな、梓!」
二人はげらげらと笑った。
梓は拳を震わせた。
今に。
今に、見ていろ。
涙を浮かべたその目で、赤のリバースを凝視していた。
19: 2014/06/03(火) 22:26:24.53 ID:MF2y/ueo0.net
「みんなー。もう食べるの無くなっちゃうよぉ?」
「つーか残ってるのフグ刺しだけだな」
お弁当をあらかた食べつくした唯と律は満足げだった。
しかし勝負をしている三人にはその声は届いていないようだ。
……いや。
もう勝負ですらない。
一方的な虐殺が始まっていた。
「またリバース! そして、ウノ!」
「私もリバースね! ウノ!」
二人は延々とリバースを出し続けていた。
澪が最後の一枚を場に出す。
それは黄色の6だった。
「はい、上がりー」
言うと、両手をぱぁっと広げた。
「つーか残ってるのフグ刺しだけだな」
お弁当をあらかた食べつくした唯と律は満足げだった。
しかし勝負をしている三人にはその声は届いていないようだ。
……いや。
もう勝負ですらない。
一方的な虐殺が始まっていた。
「またリバース! そして、ウノ!」
「私もリバースね! ウノ!」
二人は延々とリバースを出し続けていた。
澪が最後の一枚を場に出す。
それは黄色の6だった。
「はい、上がりー」
言うと、両手をぱぁっと広げた。
20: 2014/06/03(火) 22:27:51.98 ID:MF2y/ueo0.net
「梓ちゃん。順番回ってきて良かったわねぇ」
紬がニコニコとして言った。
梓の手元では、6枚のカードが揺れている。
「こっちはもう一枚しかないんだ。
早く出せよ」
澪が言う。
「……たか」
梓がボソボソと何かを言った。
「何かしら?」
紬が顔を歪めた。
「勝ったと、思いましたか」
梓が顔を上げた。
紬がニコニコとして言った。
梓の手元では、6枚のカードが揺れている。
「こっちはもう一枚しかないんだ。
早く出せよ」
澪が言う。
「……たか」
梓がボソボソと何かを言った。
「何かしら?」
紬が顔を歪めた。
「勝ったと、思いましたか」
梓が顔を上げた。
22: 2014/06/03(火) 22:29:10.76 ID:MF2y/ueo0.net
紬と澪は顔を見合わせた。
「英語のカードで上がれないんだから、
最後は必然的に私に順番が回ってきますよね」
梓が6枚の手札を、天高く掲げた。
「受けてみろっ……! これが報いです!」
バァン!と6枚の手札を場に叩きつけた。
そこには綺麗に同じ数字が並んでいる。
「ば、馬鹿な」
澪と紬がぐにゃあと崩れ落ちた。
梓は固く目を閉じ、天を仰いでいる。
「お、勝負ついたのか」
その後ろで、律がフグ刺しを一気食いしていた。
「英語のカードで上がれないんだから、
最後は必然的に私に順番が回ってきますよね」
梓が6枚の手札を、天高く掲げた。
「受けてみろっ……! これが報いです!」
バァン!と6枚の手札を場に叩きつけた。
そこには綺麗に同じ数字が並んでいる。
「ば、馬鹿な」
澪と紬がぐにゃあと崩れ落ちた。
梓は固く目を閉じ、天を仰いでいる。
「お、勝負ついたのか」
その後ろで、律がフグ刺しを一気食いしていた。
23: 2014/06/03(火) 22:30:30.64 ID:MF2y/ueo0.net
「こちらの、完敗ね」
ふっ、と紬は息を吐いた。
「ああ……。お前の勝ちだよ、梓」
澪の表情には諦観の色が含まれている。
梓が胸を張った。
「ええ。私の勝ちです」
紬と澪はばつが悪そうに俯いた。
その視線の先に、手が差し伸べられる。
二人が顔を上げると梓の笑顔が目に飛び込んできた。
「次も、負けませんよ」
ふっ、と紬は息を吐いた。
「ああ……。お前の勝ちだよ、梓」
澪の表情には諦観の色が含まれている。
梓が胸を張った。
「ええ。私の勝ちです」
紬と澪はばつが悪そうに俯いた。
その視線の先に、手が差し伸べられる。
二人が顔を上げると梓の笑顔が目に飛び込んできた。
「次も、負けませんよ」
25: 2014/06/03(火) 22:32:45.59 ID:MF2y/ueo0.net
「許して、くれるのか?」
「いいの? 梓ちゃん……」
梓は黙ってコクリ、と頷く。
澪と紬もそれに頷きで答え、三人は固い握手を交わした。
勝負が終わったのを察知した唯が、そこへ近づいてくる。
「もう食べるのないよー?」
唯にそう声をかけられると、三人は顔を見合わせた。
そして梓が唯の方へ向き直り、言う。
「いいんですよ。もっと大事なものを手に入れましたから」
紬と澪は微笑をたたえて頷き合った。
「それなら、まぁ、いいけど」
唯と律が後片付けを始めた。
その横に。
いつまでも強敵(とも)を称えあっている三人の姿があった。
終わり
おまけに続く
「いいの? 梓ちゃん……」
梓は黙ってコクリ、と頷く。
澪と紬もそれに頷きで答え、三人は固い握手を交わした。
勝負が終わったのを察知した唯が、そこへ近づいてくる。
「もう食べるのないよー?」
唯にそう声をかけられると、三人は顔を見合わせた。
そして梓が唯の方へ向き直り、言う。
「いいんですよ。もっと大事なものを手に入れましたから」
紬と澪は微笑をたたえて頷き合った。
「それなら、まぁ、いいけど」
唯と律が後片付けを始めた。
その横に。
いつまでも強敵(とも)を称えあっている三人の姿があった。
終わり
おまけに続く
26: 2014/06/03(火) 22:34:00.83 ID:MF2y/ueo0.net
おまけ1
澪「またリバース! そして、ウノ!」
紬「私はスキップね! ウノ!」
梓「あ、ちょっとタンマ」
澪「またリバース! そして、ウノ!」
紬「私はスキップね! ウノ!」
梓「あ、ちょっとタンマ」
27: 2014/06/03(火) 22:34:34.27 ID:MF2y/ueo0.net
おまけ2
「これっくらっいの おべんっとばっこに♪
おっにぎっり おっにぎっり ちょいと詰めて♪」
梓はニコニコとしながらおにぎりを握った。
「きざーみしょうがに ごましおふって♪」
ルンルン、と歌の通りにお弁当を作る。
「にんじんさん♪ ごぼうさん♪ しいたけさん♪」
煮物を詰め込んだ。
「すじーのとおった ふーき♪」
そうして蓋を閉めると、
出来上がったばかりのお弁当をバァン!と床に叩きつける。
蓋が外れ、具材が飛び散った。
「なぁんで肉が入っていないんですかああああ!!!!」
梓が吠えた。
「これっくらっいの おべんっとばっこに♪
おっにぎっり おっにぎっり ちょいと詰めて♪」
梓はニコニコとしながらおにぎりを握った。
「きざーみしょうがに ごましおふって♪」
ルンルン、と歌の通りにお弁当を作る。
「にんじんさん♪ ごぼうさん♪ しいたけさん♪」
煮物を詰め込んだ。
「すじーのとおった ふーき♪」
そうして蓋を閉めると、
出来上がったばかりのお弁当をバァン!と床に叩きつける。
蓋が外れ、具材が飛び散った。
「なぁんで肉が入っていないんですかああああ!!!!」
梓が吠えた。
29: 2014/06/03(火) 22:35:48.99 ID:MF2y/ueo0.net
「ちょっと、あずにゃん!?
そんなことすると、もったいないオバケが出るよ!」
唯が咎めた。
「はん!」と梓が鼻で笑う。
「もったいないオバケ? ……上等ですよ!
あんな野菜の化け物ぶち頃してやります!」
「梓! 待て!」澪が割って入った。
「バランスよく栄養取らないと、大きくなれないぞ!」
その言葉にわなわなと梓が震える。
「別に……」
拳を固く握りしめた。
「別に! 大きくなくても需要はありますから!」
澪の胸を見ながらそう言った梓の目には、光るものがあった。
そんなことすると、もったいないオバケが出るよ!」
唯が咎めた。
「はん!」と梓が鼻で笑う。
「もったいないオバケ? ……上等ですよ!
あんな野菜の化け物ぶち頃してやります!」
「梓! 待て!」澪が割って入った。
「バランスよく栄養取らないと、大きくなれないぞ!」
その言葉にわなわなと梓が震える。
「別に……」
拳を固く握りしめた。
「別に! 大きくなくても需要はありますから!」
澪の胸を見ながらそう言った梓の目には、光るものがあった。
31: 2014/06/03(火) 22:37:21.44 ID:MF2y/ueo0.net
「そういう意味じゃあ……」
澪は胸を手で隠した。
「ふざっけんじゃねーです!」
梓がわんわんと泣く。
そこへ唯が割って入った。
「あずにゃん! 口調が某第3ドールみたいになってるよ!」
「うるせーです! 口調がどうとか……。
そんな既成概念は私がぶっ壊してやるですぅ!」
きいいい!と梓が地団太を踏む。
「ちょっと唯ちゃん!」
紬が言った。
「紅茶を淹れてちょうだい!」
こっちは第5ドールかな。
唯はそう思った。
澪は胸を手で隠した。
「ふざっけんじゃねーです!」
梓がわんわんと泣く。
そこへ唯が割って入った。
「あずにゃん! 口調が某第3ドールみたいになってるよ!」
「うるせーです! 口調がどうとか……。
そんな既成概念は私がぶっ壊してやるですぅ!」
きいいい!と梓が地団太を踏む。
「ちょっと唯ちゃん!」
紬が言った。
「紅茶を淹れてちょうだい!」
こっちは第5ドールかな。
唯はそう思った。
33: 2014/06/03(火) 22:38:59.92 ID:MF2y/ueo0.net
「胸とかそういうの抜きにして、栄養バランスは大事なのよぉ。
……乳酸菌、とってるぅ?」
まさか澪まで来るとは。
唯は焦った。
なんとかしてポジションを確保せねば。
誰だ。
私に合っているのは、……誰だ。
「大変なのぉ。うにゅうう」
なんとか見つけた唯が言った。
「なんの真似ですかそれ? 池沼?」
「池沼かしらね」
「池沼だな」
三人は口々に感想を漏らす。
「あれ……」
唯は面食らった。
流れに乗ったつもりだったんだけど。
……乳酸菌、とってるぅ?」
まさか澪まで来るとは。
唯は焦った。
なんとかしてポジションを確保せねば。
誰だ。
私に合っているのは、……誰だ。
「大変なのぉ。うにゅうう」
なんとか見つけた唯が言った。
「なんの真似ですかそれ? 池沼?」
「池沼かしらね」
「池沼だな」
三人は口々に感想を漏らす。
「あれ……」
唯は面食らった。
流れに乗ったつもりだったんだけど。
36: 2014/06/03(火) 22:40:39.02 ID:MF2y/ueo0.net
※律ちゃんは今日はお休みです。
「野菜も食べないとダメよ。梓ちゃん」
諭すように紬が言う。
「……分かりました。
これからは好き嫌いしないでちゃんと食べます」
梓の言葉を聞いて、うんうんと澪が笑顔で頷いた。
「じゃあ、行くわよ」
紬の号令で三人がサラダバーに行ってしまうと、
そこには心に傷を負った唯だけが残された。
「うにゅうう……」
自信作だったのになぁ。
唯の頬を伝って、涙が一筋落ちた。
終わり
「野菜も食べないとダメよ。梓ちゃん」
諭すように紬が言う。
「……分かりました。
これからは好き嫌いしないでちゃんと食べます」
梓の言葉を聞いて、うんうんと澪が笑顔で頷いた。
「じゃあ、行くわよ」
紬の号令で三人がサラダバーに行ってしまうと、
そこには心に傷を負った唯だけが残された。
「うにゅうう……」
自信作だったのになぁ。
唯の頬を伝って、涙が一筋落ちた。
終わり
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