4: 2011/03/20(日) 23:06:54.41
■2011年3月20日 午前3時過ぎ 薫葉恩賜公園

女「まいど」

男「ぅお? ……なんだ、女か こんばんは」

女「月、見に来たの?」

男「あー、うん そう 女も?」

女「うん なんか眠れなかったし」

男「女ひとりで何出歩いてるんだよ ヤバイだろ夜中は」

女「んー、なんとなく、きみが来てる様な気がしたし」

男「気がしたんだったら、メールでもしとけば良いのに」

女「あ、そうか」

6: 2011/03/20(日) 23:09:31.14
女「凄い明るさだね、月 それにおっきい」

男「うん」

女「……」

男「……」

女「なんか、ボ~っと見ちゃうね」

男「あー、そうなー」

女「……」

男「明るさ、すげーよなー 目閉じると残像が残るよ」

女「あ、ほんとだ 太陽みたい」

男「……」

女「……」

7: 2011/03/20(日) 23:11:58.39
女「男」

男「あぃ?」

女「口、開けっ放し」

男「ああ」

女「スッゴイばか面だったよ」

男「いいじゃないさ 誰が見てる訳でも無いんだし」

女「私は数に入らないのか」

男「お前にはもう、格好付けるのも今更って感じでしょ」

女「まーね」

男「……」

女「……」

8: 2011/03/20(日) 23:14:23.38
女「……」

男「……」

女「あれ? カメラは?」

男「ん? 持ってきてないよ」

女「今日は撮らないの? 写真」

男「あー、うん、今日はいいや」

女「きみ、いつも資料資料言って色々撮ってるじゃない」

男「ん~、まあ、いいでしょ、こういうのは 見てるだけで」

女「そーだねー そうだよね」

男「……」

女「きれいだよね」

男「うん」

9: 2011/03/20(日) 23:21:21.11
男「なんか雲が多くなってきたな」

女「隠れちゃう」

男「アレ位だったら、すぐに晴れるでしょ」

女「もっと近くで見たいなぁ」

男「無理だろ 今で最大に近いんだから」

女「宇宙に行けば良いじゃない」

男「宇宙って、俺ら行けないじゃん」

女「月に近づく遊覧飛行ツアーとか、これから出来るかも知れないでしょ?」

男「いつかって話なら、そうかも知れないけど」

女「そうそう」

11: 2011/03/20(日) 23:28:41.21
男「お前、そんな非現実的な事言い出すタイプだったっけ 俺が言うならまだしも」

女「私は実は殆ど信じてないけどね でも、生徒の前では何についても
  可能性はたくさんあるよ、って風に話す様にしてるんだよ」

男「ああ、うん、なるほど」

女「いつか、そういう仕事をしてくれる子が、私の教え子から出てくるかも
  知れないじゃない?」

男「まぁ、そうだよなぁ」

女「あれ、男はこういう夢とか絵空事みたいの、キライじゃなかったっけ」

男「可能性の話なら、いいんじゃないの?」

女「うん」

男「お、雲が切れる」

女「あ、ほんとだ」

男「……」

女「……」

13: 2011/03/20(日) 23:35:26.72
女「……」

男「……」

女「なんだっけ、今日のこの月」

男「ん?」

女「何か名前があったでしょ? なんとかムーンみたいなの」

男「ああ、エクストラスーパームーン」

女「うん、それ スゴイ名前だよね」

男「うん、月と地球が接近して、月がでかく見えるのを『スーパームーン』ていうんだけど
  今回のは最大規模で、最も近くなるんだって、しかも満月 19年振り」

女「へー、19年か~」

男「長いよなぁ」

女「……」

男「……」

15: 2011/03/20(日) 23:40:41.38
女「……」

男「……」

女「……あれ、19年って言うと、私らってもう知り合ってるんじゃない?」

男「んん? ……ああ、本当だ ギリギリ会ってるかも」

女「そうだよ、小学校に入るちょっと前くらいだったから」

男「そうか そうか~ そう考えると、俺らもなげー付き合いだよなぁ」

女「そーね 途中あんまり会わない時期も、あったけどね」

男「ま、そうな お互い、実家を離れちゃうとね」

女「うん」

男「……」

女「……」

17: 2011/03/20(日) 23:44:36.52
男「……」

女「……」

男「……子供の頃にこんなの見たら、覚えてそうなもんなんだけどなぁ」

女「小さかったし、夜更かしはさせて貰えなかったんじゃない?」

男「あ、そうか」

女「うん、きっとそうだよ 男のおかあさん、厳しかったじゃない」

男「悔しいな、見れてた筈だったのに見れなかったとか」

女「でも、いいじゃない 今見てるんだから」

男「ああ、そうだね」

女「……」

男「……」

20: 2011/03/20(日) 23:49:12.91

女「……」

男「……」

女「明るいね~」

男「ああ、空全体も結構明るいね」

女「うん あ、そのせいか、ここに来る時、そんなに怖くなかった」

男「あ、お前、帰りは1人とかで歩くなよ 家まで送るから」

女「え、いいよ 方向反対じゃない、きみんちって」

男「いいから、送られとけって」

女「心配し過ぎだって、きみは」

男「……」

女「……」

21: 2011/03/20(日) 23:54:02.58
男「大体さぁ」

女「なに?」

男「公園まで来て、俺が居なけりゃどうしてたんだよ」

女「そしたら、ひとりで見てたよ」

男「あほか あぶねーっての」

女「いいじゃない、居たんだから」

男「良くねーよ お前、生徒がそういう言い方したら叱るだろ」

女「今日は仕事の無い日だからいいの」

男「適当だなぁ」

女「……」

男「……」

23: 2011/03/20(日) 23:58:25.70
女「……」

男「……」

女「男、ずっと月見てると、なんか変な気分になってこない?」

男「ん~? いや、特に」

女「ルナティック、って狂人とか精神障害みたいな意味があるでしょ
  月には魔力があって、人を狂わすって言われてるんだよ、昔から」

男「全然無いなぁ むしろクリアーな気分だよ だってキレイでしょ、月」

女「私はするな なんかドキドキする 非日常感っていうか」

男「俺は、結構夜に外歩くからなぁ 慣れなのかな」

女「あー、男は仕事の帰り、遅いもんね」

男「そーそー」

女「……」

男「……」

25: 2011/03/21(月) 00:01:38.01
男「……」

女「……」

男「寒くない?」

女「うん、ちょっと」

男「そろそろ、帰っとこうか」

女「うん……なんか、もったいない気もするけど」

男「またいつか見れるでしょ」

女「そだね ……次に今みたいに見れるのって、いつになるの?」

男「さぁ、知らないや 周期は一定じゃないみたいだけど」

女「そか」

男「……」

女「……」

27: 2011/03/21(月) 00:07:03.73
女「……」

男「……」

女「その頃まだ、私らって、まだ仲良いかな」

男「そりゃ、わからないよな これから何かあって仲悪くなるかも知れないし、
  事故とか病気とかでどっちか氏んでるかもしれない」

女「うん」

男「それに、19年前から今までだって、全然会わなかった時期だってあった訳だし」

女「そうだね 離れた場所に居るかも知れないよね」

男「それもあるよな」

女「うん わかんないや わかんないね」

男「……」

女「……」

29: 2011/03/21(月) 00:13:51.00
女「帰ろうか」

男「ああ ん~、ベンチでケツが冷えた」

女「私もだ」

男「そんじゃ、送ってくかね」

女「ありがとね」

男「普段も、夜道は気をつけろよな」

女「気をつけてるよ」

男「ならいいけど」

女「うん、ありがとう」

男「ほんじゃ行こう」

女「うん 手、つないでもいい?」



おわり

30: 2011/03/21(月) 00:14:50.83

31: 2011/03/21(月) 00:17:05.39

37: 2011/03/21(月) 00:28:23.85
もひとつ

夕べほど強烈じゃないけど、今夜も良い月なのは間違いないので
見れる人は見てみると良いよー

ではさいなら

引用元: 女「大きな月」