1: 2014/05/24(土) 22:45:56.54 ID:hrkO55FTo
 
伊織「……はぁ?」

春香「好きなんだよね?」

伊織「春香……あんた、転びすぎて頭でも打ったの?」

春香「その言い方はひどいなぁ」

伊織「私があいつを好きだなんて、そんなことあるわけないじゃない」

春香「そう?」

伊織「そうよ。……まあ、あいつはバカだけど無能ではないし」

春香「うんうん」

伊織「仕事のパートナーとしては認めてあげなくもないわね!」

春香「そっかぁ」

伊織「でも、恋愛対象として見るかどうかは別問題よ」

春香「なるほどね」

伊織「ふふん」

春香「じゃあ、なんでプロデューサーさんの上着を着てるの?」

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3: 2014/05/24(土) 22:47:44.42 ID:hrkO55FTo
伊織「着てないわよ」

春香「着てるよ」

伊織「よく見なさいよ、ほら」

春香「?」

伊織「袖を通してないでしょ?」

春香「あっ、本当だ」

伊織「だからこれは着てるんじゃないわ、ただ包まってるだけよ」

春香「そっかぁ」

伊織「そうよ」

春香「……うん、じゃあなんでプロデューサーさんの上着に包まってるの?」

4: 2014/05/24(土) 22:51:31.84 ID:hrkO55FTo
伊織「は?なんでって……なんで?」

春香「え?なんで?」

伊織「……いやいや、ちょっと想像してみなさいよ」

春香「あ、うん」

伊織「春香が、レッスン後に事務所に来たとするでしょ?」

春香「うんうん」

伊織「で、あいつの椅子を見たら、背もたれに上着がかけてあるの」

春香「うん」

伊織「あいつが、朝からずっと着ていた上着よ」

春香「そうなるよね」

伊織「さあ、春香はその上着をどうするの?」

春香「えっと、別に何もしないけど」

伊織「なんで何もしないのよ!?」

春香「えっ、なんで驚かれるのかわからない」

5: 2014/05/24(土) 22:54:04.54 ID:hrkO55FTo
伊織「あいつの上着よ?」

春香「うん」

伊織「それが、すぐそこにあるのよ?」

春香「うん」

伊織「何もしないの?」

春香「何もしないけど」

伊織「……は、春香」

春香「うん?」

伊織「だ、大丈夫?本当に頭を打ったんじゃないの?」 オロオロ

春香「伊織が心配してくれるのは嬉しいけど、むしろ私の方が心配だよ」

伊織「だって、あいつの上着を目の前にしたら!」

春香「したら?」

伊織「こう、色々としたくなるのが普通じゃない!」

春香「ごめん、そんな普通は聞いたことがないよ」

6: 2014/05/24(土) 22:57:19.81 ID:hrkO55FTo
伊織「……まさかこの事務所に、何もしない子がいるなんて驚きだわ」

春香「何もしないのが普通だと思うけどなぁ」

伊織「何かするのが普通でしょ!」

春香「えっと……その自信はどこから来るの?」

伊織「それはもちろん、今までの経験よ」

春香「経験?」

伊織「もしあいつの上着を、私と千早が同時に見つけたら」

春香「…………」

伊織「その場でジャンケンが始まるわよ?」

春香「そういう特殊な例に私を当てはめないでほしいかな」

8: 2014/05/24(土) 23:02:14.22 ID:hrkO55FTo
伊織「雪歩なんてこの間、あいつのマグカッ……」

春香「えっ」

伊織「……あ、今のは無し」

春香「無しって何が!?」

伊織「これは誰にも言わないって約束だったのよ」

春香「そこまで言っちゃったら最後まで言おうよ!」

伊織「ダメよ!私は約束は守るわ!」

春香「もう半分以上言っちゃってるようなものだよ!」

伊織「とにかく、この話はもうお終いよ。はいはいやめやめ」

春香「深く追求すべきなのかどうか判断に迷うところだよ……」

10: 2014/05/24(土) 23:05:46.97 ID:hrkO55FTo
伊織「…………」 スリスリ

春香(伊織が、プロデューサーさんの上着に包まって)

伊織「…………」 モフモフ

春香(プロデューサーさんの椅子の上で丸くなってる)

伊織「…………」 クンカクンカ

春香「ねえ、伊織」

伊織「何よ?」

春香「プロデューサーさんの上着に包まって、何してるの?」

伊織「何って……決まってるじゃない」

春香「?」

伊織「あいつの匂いを嗅いでるのよ」

春香「……そんな当たり前のことみたいな表情で言われると、ちょっと私の中の常識がぐらつくんだけど」

11: 2014/05/24(土) 23:09:11.74 ID:hrkO55FTo
伊織「……あいつ、またコロンつけてきたのね」 スンスン

春香「…………」

伊織「そんなものいらないのに……そのままの匂いが一番なんだから」 クンカクンカ

春香「ね、ねえ、伊織?」

伊織「?」

春香「ごめんね、堪能してる最中なのに」

伊織「いいわよ、匂いを嗅ぎながらでも会話はできるわ」

春香(あっ、嗅ぐのはやめないんだ……)

伊織「で、話って何よ?」

春香「うん……伊織ってさ」

伊織「私?」

春香「やっぱりプロデューサーさんのこと、好きでしょ?」

13: 2014/05/24(土) 23:12:56.86 ID:hrkO55FTo
伊織「またその話に戻るわけ?」 スーハー

春香「だって、そうとしか思えないんだもん」

伊織「それは、まあ……一人の人間として、それなりの好意はあるわよ?」

春香「あるんだ、やっぱり」

伊織「でも、恋愛感情とはまた別でしょ?ラブかライクか、ってことね」

春香「ラブじゃないんだ?」

伊織「当然でしょ、さっきからそう言ってるじゃない」

春香「じゃあ伊織、もしもの話だけど」

伊織「?」

春香「もしプロデューサーさんに告白されたらどうする?」

伊織「告白って?」

春香「プロデューサーさんが、伊織!お前のことが好きだ!って言ったら、どうするの?」

伊織「どうするって、決まってるじゃない」

春香「…………」

14: 2014/05/24(土) 23:17:26.59 ID:hrkO55FTo
伊織「正座させて、みっちりお説教よ」

春香「お説教するの?」

伊織「そもそもあいつの年齢で、私くらいの子にそんなことを言う時点でダメでしょ?」

春香「確かに年齢差はあるけど……」

伊織「犯罪よ、犯罪」

春香(女子高生でも……ダメかなぁ、やっぱり)

伊織「まあ、年の差は……付き合い方によっては、許されるかもしれないけど」

春香「うんうんそうだよね、ちょっとくらいの差は大丈夫だよね!」

伊織「なんで春香が安心してるのよ」

春香「いえいえ何でもないですよ?」

伊織「まあいいけど……一番重要なことは別にあるじゃない」

春香「別にって?」

伊織「私はアイドル。あいつはプロデューサー」

春香「ああ、それはまあ……ね」

15: 2014/05/24(土) 23:22:26.50 ID:hrkO55FTo
伊織「同業者ってだけでも問題なのに」

春香「うん」

伊織「プロデューサーが、自分が担当してるアイドルに告白だなんて」

春香「うんうん」

伊織「問題よ、もう大問題よ」

春香「そっか、そうだよね」

伊織「だからあいつに、プロデューサーとしての立場をきっちり自覚させるの」

春香「なるほど」

伊織「自分だけじゃなくて、事務所や他のアイドルのことも考えなきゃダメよってね」

春香(よかった、一応そのあたりの常識はあるんだね)

伊織「だからその辺のことを、みっちりお説教するのよ」

春香「そっかぁ」

伊織「新婚旅行の行き先を決めるのはそれからね」

春香(あれっ、いつの間にか告白が成功してた)

18: 2014/05/24(土) 23:45:10.59 ID:hrkO55FTo
伊織「まあ仕方ないわよね、私は別に何とも思ってないけど」

春香「はぁ」

伊織「あいつったら、この伊織ちゃんのことが好きで好きでたまらないのよ」

春香「そ、そうなのかなぁ」

伊織「だからきっと私に振られたら、ショックで廃人になっちゃうと思うわ」

春香「そ、そうなんだー……」

伊織「だからホラ、仕方なくよ!なんて慈悲深くって心が広いのかしら、私って!」

春香(…………)

伊織「まるで聖母みたいよね!」

春香「うーん、でもプロデューサーさんって」

伊織「?」

春香「結婚するなら年上の人がいいって言ってたような」

伊織「…………」

春香(なんてね、冗談ですよ冗談)

19: 2014/05/24(土) 23:50:35.02 ID:hrkO55FTo
伊織「う……嘘よ、そんなの嘘」

春香「うーん、確かそう言ってた気がするんだけど」

伊織「あ、あいつは変態なの!一回り年下の子にしか興味が無いんだから!」

春香(酷い言われ様)

伊織「だ、だって……この事務所で年上って言ったら、一人しか」

春香「えっ?」

伊織「あいつより年上の女の人なんて、ここには一人しかいないじゃない!」

春香「えっ、あの、伊織落ち着いt



ガチャッ


小鳥「ふぅ、ただいま戻りましたー」

伊織「ちょっと小鳥!!」 ガタッ

小鳥「え?ど、どうしたの、伊織ちゃん」

伊織「何であんたは独身なの!?早くどこかの誰かと結婚しなさいよ!!」

小鳥「!?」 ガーン

春香「伊織!伊織落ち着いて!さすがに小鳥さんが可哀想!」

21: 2014/05/24(土) 23:58:13.87 ID:hrkO55FTo





小鳥「ひっぐ、ぐすっ……うっ、ふぇええええ」 

春香「こ、小鳥さん落ち着いてください、ね?」 ナデナデ

伊織「わ、私が悪かったわよ……」 ナデナデ

小鳥「わだっ、私だってぇ……好きで独身でいるわけじゃないのにぃ……ぐすっ」 

春香(本気で泣いてる……)

伊織(本気で泣いてるわ……)

小鳥「お母さんには何度も言われたけど、まさか一回り年下の子に言われるなんて……」 ボロボロ

春香「い、伊織も、別に本気で言ったわけじゃ……ねっ?」

伊織「そ、そうよ、ちょっと取り乱しただけよ」

小鳥「慰められてる!私の方が大人なのに!いい年した大人なのに!」

春香「ま、まあまあ」 ナデナデ

伊織「落ち着きなさいよ」 ナデナデ

小鳥「…………」 グスン

22: 2014/05/25(日) 00:06:02.84 ID:YdtGY7Mpo





小鳥「なるほど、そういうことだったのね」

伊織「……そうよ」

小鳥「もう伊織ちゃんったら、そんなことで取り乱しちゃうなんて!可愛い!」

伊織「う、うるさいわね!」

春香(っていうか小鳥さん、立ち直るの早いなぁ)

小鳥「大丈夫よ、伊織ちゃんはとっても可愛いもの!」

伊織「そ、そう?」

小鳥「そうよ!可愛ければどうということはない!」

伊織「……ま、まあそうよね!当然よね!」

小鳥「うふふっ」

伊織「あんな変態を受け入れてあげるような器量良しなんて、きっと私くらいのものよ!」

春香(……まだプロデューサーさんの上着をスーハースーハーしてる伊織も、どっちかと言うと……)

24: 2014/05/25(日) 00:10:41.05 ID:YdtGY7Mpo
ガチャッ


P「ただいま戻りましたー」

春香「!?」

小鳥「あっプロデューサーさん、お帰りなさい」

春香(い、伊織!早くその上着を元の場所に……)

伊織「何よ、どこに行ってたのよ」 クンカクンカ

春香「」

P「ああ、ちょっと外回りにな」

伊織「ふーん、そう」

P「その上着、後で戻しておいてくれよ?」

伊織「わかってるわよ」 モフモフ

春香「」

25: 2014/05/25(日) 00:15:54.77 ID:YdtGY7Mpo
伊織「そんなことより、ほら」

P「?」

伊織「ん!」

P「ああ、はいはい」 ナデナデ

伊織「まったくもう、言われるまでやらないなんて本当にダメなんだから!」

P「ははは、ごめんな」

春香「……あれ?あれれ?あれ?」

P「ところで伊織、そろそろレッスンに行かなきゃまずいんじゃないか?真たちと合流するんだろ?」

伊織「言われなくてもわかってるわよ、ふんっ」

P「そうか、ごめんごめん」

伊織「手!止まってるでしょ!」

P「はいはい」 ナデナデ

春香「…………」

P「春香?どうかしたのか?」

春香「いえ、もしかして本当に頭を打っちゃったのかと思いまして」

P「誰が?」

春香「私が」

26: 2014/05/25(日) 00:20:40.15 ID:YdtGY7Mpo
P「まったく春香は面白いことを言うなぁ」

伊織「んー……じゃ、そろそろ行くわ」

P「おう、頑張ってこいよ」

伊織「これ、持って行っちゃダメ?」

P「レッスンに必要無いだろ、置いていきなさい」

伊織「わかったわよ、もう……」

P「うん、伊織は素直で良い子だなぁ」

伊織「私が良い子なのは当然じゃない?にひひっ!」

P「じゃ、後で様子を見に行くから」

伊織「絶対よ!来なかったら百叩きの刑なんだから!」

P「怪我だけはしないようになー」



バタン



春香「あの、プロデューサーさん」

P「うん?」

春香「本当に変態になっちゃったんですか」

P「えっ」

27: 2014/05/25(日) 00:25:56.16 ID:YdtGY7Mpo
春香「だ、だって伊織、プロデューサーさんの上着を着てましたよね?」

P「あれは着てないらしいぞ」

春香「うん、まあ、そうなんですけど」

P「何が良いのかはよくわからないけど、別に何か困ることがあるわけじゃないし」

春香「は、はい」

P「わざわざやめるように言うほどのことじゃないだろ?」

春香「え?いや、うーん……そうなのかなぁ」

P「あの意地っ張りだった伊織が、素直に甘えてくれるようになったわけだし」

春香(匂いを嗅ぐのと甘えるのは次元が違う気がしますけど)

P「あれはあれで良い傾向なんだよ、きっと」

春香「はぁ……」

P「さすがに千早と取り合いをしてた時は止めたけどな、二人とも」

春香「ですよねぇ」

28: 2014/05/25(日) 00:31:29.38 ID:YdtGY7Mpo
P「伊織も、まだまだ幼いところもあるし……誰かに甘えたい時もあるんだろう」

春香(むしろアブノーマルな方向に成長している気が)

P「だから、しばらくは見守ってやるさ」

春香「……プロデューサーさんって」

P「うん?」

春香「器が広いですよね」

P「なんだ急に」

春香「いやー、改めて実感しましたよ」

P「そ、そうか」

春香「はい」

P「……さて、後であいつらに差し入れでも持って行ってやるかな」

春香「いいなぁ」

P「この間は春香たちにもスポーツドリンクを持って行っただろ?」

春香「はい、美味しくいただきました!」

29: 2014/05/25(日) 00:34:45.09 ID:YdtGY7Mpo
P「そうだ、その時の領収書を上着に入れっぱなしだったな」

春香「経費で落ちるものなんですか?」

P「落ちるかどうかじゃない、落とすのさ。えーっと、上着上着っと」

千早「…………」 モフモフ

P「…………」

千早「…………」 クンカクンカ

P「千早、戻ってたのか」

千早「はい、つい先ほど」 スリスリ

P「そうか」

千早「…………」 スーハー

P「気が済んだら戻しておいてくれな」

千早「わかりました」


春香(……プロデューサーさんは器が大きいって言うより)

春香(ただ鈍感なだけなのかも……)

30: 2014/05/25(日) 00:43:11.81 ID:YdtGY7Mpo





伊織「じゃあ今度は、最初から通してやってみるわよ!」

真美「えぇー、ちょっとは休もうよいおりーん」

伊織「体がリズムを覚えているうちにおさらいした方がいいでしょ!」

亜美「なんだか最近のいおりん、元気ありまくりって感じだよね」

真「うん、何だか前よりずっとタフになった感じだよ」

伊織「そう?……まあ、そうかもね」

真「何かトレーニングでも始めたの?」

伊織「うーん、トレーニングってわけじゃないけど」

真「教えてよ、ボクも参考にしたいな!」

伊織「うーん……まあ、強いて言うなら」



伊織「最高の栄養源を見つけたってところかしらね?にひひっ!」

31: 2014/05/25(日) 00:44:35.58 ID:YdtGY7Mpo
それ以降、スタミナをつけるためという大義名分で
Pの匂いを嗅ごうとするアイドルが続出したとかしないとか


終わり

39: 2014/05/25(日) 02:50:06.13
乙乙

40: 2014/05/25(日) 03:01:59.19
乙りん

引用元: 春香「伊織ってプロデューサーさんのことが好きなの?」