1: 2021/05/30(日) 18:00:13.416
DQN「おいパシリ、パン買ってこいや」
パシリ「お待ち下さい」
DQN「あ?」
パシリ「今日はすでに焼きそばパンとコロッケパンを食べておられます」
パシリ「これ以上は炭水化物の取りすぎかと……」
DQN「なんで取りすぎるとまずいんだよ」
パシリ「血糖値が上昇し、眠気をもよおし、午後の授業に差し支えるかと」
DQN「俺は元々授業なんざ聞いてねーよ!」
パシリ「それはよくありません。喧嘩もよろしいですが、学業もおろそかにしてはなりません」
DQN「あー、うぜえ!」
DQN(どうしてこうなった……)
パシリ「お待ち下さい」
DQN「あ?」
パシリ「今日はすでに焼きそばパンとコロッケパンを食べておられます」
パシリ「これ以上は炭水化物の取りすぎかと……」
DQN「なんで取りすぎるとまずいんだよ」
パシリ「血糖値が上昇し、眠気をもよおし、午後の授業に差し支えるかと」
DQN「俺は元々授業なんざ聞いてねーよ!」
パシリ「それはよくありません。喧嘩もよろしいですが、学業もおろそかにしてはなりません」
DQN「あー、うぜえ!」
DQN(どうしてこうなった……)
4: 2021/05/30(日) 18:03:37.308
……
少し前――
DQN「おい、パン買ってこいや」
パシリ「パンくらい自分で……」
DQN「あ?」
パシリ「いえ……何でもないです」
……
パシリ「買ってきました!」
DQN「おせえ! 次からはもっと早く買ってこい!」
パシリ「は、はいっ!」
少し前――
DQN「おい、パン買ってこいや」
パシリ「パンくらい自分で……」
DQN「あ?」
パシリ「いえ……何でもないです」
……
パシリ「買ってきました!」
DQN「おせえ! 次からはもっと早く買ってこい!」
パシリ「は、はいっ!」
6: 2021/05/30(日) 18:06:17.196
パシリ「はぁ……」
パシリ(毎日毎日パシリにされて……自分が情けない)
主人「む?」
主人「おやおや、あんなところでうなだれてる下々の人間がいるぞ」
執事「本当ですね」
執事「もしもし、何かあったんですか?」
主人「悩みがあるのなら、この私が聞いてやろうぞ」
パシリ(なんだ、このやたら濃い二人組は……)
パシリ(毎日毎日パシリにされて……自分が情けない)
主人「む?」
主人「おやおや、あんなところでうなだれてる下々の人間がいるぞ」
執事「本当ですね」
執事「もしもし、何かあったんですか?」
主人「悩みがあるのなら、この私が聞いてやろうぞ」
パシリ(なんだ、このやたら濃い二人組は……)
8: 2021/05/30(日) 18:10:27.784
パシリ「いつもいつもパシリにされて……」
執事「なるほど、パシリに……」
主人「執事よ、パシリとはなんだ?」
執事「“使い走り”の略で、買い物や掃除など命じられた用件をこなす人間のことです」
主人「ようするに執事のようなものか。なぜそれが嫌なのだ?」
執事「明確な主従関係がある人間同士ならばともかく、同級生に使い走りをさせるのは健全とはいえませんからね」
主人「なるほどな」
主人「つまり、お前はパシリをやめたいということだな?」
パシリ「まあ、そうなります……」
執事「なるほど、パシリに……」
主人「執事よ、パシリとはなんだ?」
執事「“使い走り”の略で、買い物や掃除など命じられた用件をこなす人間のことです」
主人「ようするに執事のようなものか。なぜそれが嫌なのだ?」
執事「明確な主従関係がある人間同士ならばともかく、同級生に使い走りをさせるのは健全とはいえませんからね」
主人「なるほどな」
主人「つまり、お前はパシリをやめたいということだな?」
パシリ「まあ、そうなります……」
9: 2021/05/30(日) 18:13:39.450
主人「だったら、そのDQNとやらを懲らしめてやればよかろう」
パシリ「えっ!」
主人「この私がDQNを叩きのめしてやろう! この書道3級の私がな!」シュッシュッ
パシリ「いや、そういうのはちょっと……」
主人「嫌か」
パシリ「は、はい。あいつ喧嘩三昧でメチャクチャ強いし、出来れば穏便に解決したいっていうか……」
主人「ワガママな奴だ」
パシリ「す、すみません……」
執事「ではいっそ、パシリを極めるというのはいかがでしょう?」
パシリ「へ?」
パシリ「えっ!」
主人「この私がDQNを叩きのめしてやろう! この書道3級の私がな!」シュッシュッ
パシリ「いや、そういうのはちょっと……」
主人「嫌か」
パシリ「は、はい。あいつ喧嘩三昧でメチャクチャ強いし、出来れば穏便に解決したいっていうか……」
主人「ワガママな奴だ」
パシリ「す、すみません……」
執事「ではいっそ、パシリを極めるというのはいかがでしょう?」
パシリ「へ?」
10: 2021/05/30(日) 18:17:44.126
執事「奇しくも先ほどご主人様がおっしゃいましたね」
執事「“パシリとは執事のようなもの”と」
主人「うむ、それがどうした?」
執事「DQN君とやらにパシリ扱いをやめさせるのはなかなか難しいでしょう」
執事「ならばいっそ、パシリを極め、あなたが楽しんでパシリをできるようになればいいのではないかと」
主人「ほう、面白いアイディアだな」
執事「というわけで、私の講義を受ける気はありませんか?」
パシリ「……」
パシリ(今のままパシリをしてても、ろくなことにならないだろうし……)
パシリ「分かりました、お願いします!」
執事「“パシリとは執事のようなもの”と」
主人「うむ、それがどうした?」
執事「DQN君とやらにパシリ扱いをやめさせるのはなかなか難しいでしょう」
執事「ならばいっそ、パシリを極め、あなたが楽しんでパシリをできるようになればいいのではないかと」
主人「ほう、面白いアイディアだな」
執事「というわけで、私の講義を受ける気はありませんか?」
パシリ「……」
パシリ(今のままパシリをしてても、ろくなことにならないだろうし……)
パシリ「分かりました、お願いします!」
13: 2021/05/30(日) 18:20:08.952
執事「執事用の服を着て頂きました」
パシリ「……どうです?」
執事「よく似合っておりますよ」
主人「とはいえまだまだ服に着られておるな。執事というよりは羊だ」
パシリ「はぁ……」
執事「さて、さっそくですが……もっと背筋を伸ばしましょう」
パシリ「は、はい」シャキッ
執事「執事が猫背では、やはり格好がつきませんからね」
パシリ「……どうです?」
執事「よく似合っておりますよ」
主人「とはいえまだまだ服に着られておるな。執事というよりは羊だ」
パシリ「はぁ……」
執事「さて、さっそくですが……もっと背筋を伸ばしましょう」
パシリ「は、はい」シャキッ
執事「執事が猫背では、やはり格好がつきませんからね」
17: 2021/05/30(日) 18:23:38.092
執事「執事は英語では“バトラー”と申しまして、お酒のボトルが由来であるといわれています」
執事「つまり、お酒や食器を管理するのが仕事だったというわけです」
パシリ「へぇ~」
執事「しかし、あなたもDQN君も未成年ですから、お酒を扱う必要はないでしょう」
執事「もし万が一、酒を買ってこいなどと言われたら固く断りましょう」
執事「主人の間違いを正す、それも執事の立派な使命です」
パシリ「できるでしょうか……」
執事「できるできないではなく、やるのです。私もいつもやってることですから」
パシリ「は、はい!」
主人「ん? なにか引っかかる言い方だな」
執事「つまり、お酒や食器を管理するのが仕事だったというわけです」
パシリ「へぇ~」
執事「しかし、あなたもDQN君も未成年ですから、お酒を扱う必要はないでしょう」
執事「もし万が一、酒を買ってこいなどと言われたら固く断りましょう」
執事「主人の間違いを正す、それも執事の立派な使命です」
パシリ「できるでしょうか……」
執事「できるできないではなく、やるのです。私もいつもやってることですから」
パシリ「は、はい!」
主人「ん? なにか引っかかる言い方だな」
18: 2021/05/30(日) 18:25:57.540
執事「ではまず、正しいお辞儀の仕方から……」
執事「相手を敬うように、美しく……」ペコッ
パシリ「こうですか?」ペコッ
執事「ふむ、なかなかスジがよろしい」
……
執事「続いて紅茶の入れ方をお教えしましょう」
パシリ「紅茶なんてペットボトルでしか飲んだことないですけど」
執事「私のいうとおりやれば、すぐにおいしい紅茶が入れられるようになりますよ」
パシリ「頑張ります!」
執事「相手を敬うように、美しく……」ペコッ
パシリ「こうですか?」ペコッ
執事「ふむ、なかなかスジがよろしい」
……
執事「続いて紅茶の入れ方をお教えしましょう」
パシリ「紅茶なんてペットボトルでしか飲んだことないですけど」
執事「私のいうとおりやれば、すぐにおいしい紅茶が入れられるようになりますよ」
パシリ「頑張ります!」
19: 2021/05/30(日) 18:28:06.864
執事「本日はお疲れ様でした」
主人「うむ、下々の人間にしてはよくやっていたぞ」
パシリ「ありがとうございます」
執事「明日からしばらく、この屋敷にお通い下さい」
執事「あなたならすぐ、どこに出ても恥ずかしくない執事になれますよ」
パシリ「はいっ!」
パシリ(パシリをやめたいはずが、なぜか執事を目指すことになってしまった)
パシリ(だけどこうなった以上、頑張ろう……!)
主人「うむ、下々の人間にしてはよくやっていたぞ」
パシリ「ありがとうございます」
執事「明日からしばらく、この屋敷にお通い下さい」
執事「あなたならすぐ、どこに出ても恥ずかしくない執事になれますよ」
パシリ「はいっ!」
パシリ(パシリをやめたいはずが、なぜか執事を目指すことになってしまった)
パシリ(だけどこうなった以上、頑張ろう……!)
20: 2021/05/30(日) 18:31:13.148
それからというもの――
執事「執事は常にエレガントでなければなりません」
パシリ「はい」
執事「しかし、主人より目立ってはいけません。執事は影でなければなりません」
パシリ「エレガントで影……ですか。なかなか難しいですね」
~
執事「本日はベッドメイキングについてお教えしましょう」
パシリ「こんなの必要ですかね……?」
執事「物はついでです。覚えて損はないでしょうから」
パシリ「覚えたら、家で親にやってあげようと思います」
執事「執事は常にエレガントでなければなりません」
パシリ「はい」
執事「しかし、主人より目立ってはいけません。執事は影でなければなりません」
パシリ「エレガントで影……ですか。なかなか難しいですね」
~
執事「本日はベッドメイキングについてお教えしましょう」
パシリ「こんなの必要ですかね……?」
執事「物はついでです。覚えて損はないでしょうから」
パシリ「覚えたら、家で親にやってあげようと思います」
21: 2021/05/30(日) 18:34:19.016
やがて――
執事「今日は一人で紅茶を入れ、テーブルに出してみて下さい」
パシリ「分かりました」
パシリ「……」スッスッ
パシリ「……」トクトク…
パシリ「どうぞ」
主人「……うむ」グビッ
主人「うん、うまい! デリシャス!」
パシリ「光栄です」
執事「今日は一人で紅茶を入れ、テーブルに出してみて下さい」
パシリ「分かりました」
パシリ「……」スッスッ
パシリ「……」トクトク…
パシリ「どうぞ」
主人「……うむ」グビッ
主人「うん、うまい! デリシャス!」
パシリ「光栄です」
23: 2021/05/30(日) 18:38:41.513
パシリ「いかがでしたか?」
執事「文句なしの合格です」
パシリ「ありがとうございます!」
執事「かつての気弱な姿はもはや感じられず、今や見違えるようですよ」
主人「うむ、我が屋敷で雇ってもいいぐらいだ」
パシリ「嬉しいです!」
執事「今のあなたならば、素晴らしい使い走りになれるはずです」
主人「DQNとやらにしっかり奉仕してくるがいい」
パシリ「頑張ります!」
執事「文句なしの合格です」
パシリ「ありがとうございます!」
執事「かつての気弱な姿はもはや感じられず、今や見違えるようですよ」
主人「うむ、我が屋敷で雇ってもいいぐらいだ」
パシリ「嬉しいです!」
執事「今のあなたならば、素晴らしい使い走りになれるはずです」
主人「DQNとやらにしっかり奉仕してくるがいい」
パシリ「頑張ります!」
24: 2021/05/30(日) 18:41:12.400
DQN「おい!」
パシリ「なんでしょう?」スッ…
DQN「なんだよ。妙にかしこまった感じで……」
パシリ「ご用件をどうぞ」
DQN「パン買ってこいや!」
パシリ「承知しました。5分ほどでお届けできるかと存じます」
DQN「お、おう」
パシリ「なんでしょう?」スッ…
DQN「なんだよ。妙にかしこまった感じで……」
パシリ「ご用件をどうぞ」
DQN「パン買ってこいや!」
パシリ「承知しました。5分ほどでお届けできるかと存じます」
DQN「お、おう」
26: 2021/05/30(日) 18:44:13.488
パシリ「買ってきました。お召し上がり下さい」
DQN「早いな、ありがとよ」
パシリ「いえ、ご主人様のお役に立てて光栄です」ペコッ
DQN「ご主人様て……」
パシリ「他に何かございませんか?」
DQN「……ねえよ」
パシリ「では何かありましたら、すぐお呼び下さい」
DQN(なんだってんだいったい……)
DQN「早いな、ありがとよ」
パシリ「いえ、ご主人様のお役に立てて光栄です」ペコッ
DQN「ご主人様て……」
パシリ「他に何かございませんか?」
DQN「……ねえよ」
パシリ「では何かありましたら、すぐお呼び下さい」
DQN(なんだってんだいったい……)
28: 2021/05/30(日) 18:46:09.035
DQN「ふぁぁ……」
パシリ「眠いのでしたら、コーヒーはいかがですか?」
DQN「え!?」
パシリ「バッチリ目が覚めますよ」ニコッ
DQN「あ、ありがとよ」グビッ
DQN「う、うめえや」
パシリ「ありがとうございます」
DQN(こいつ……いったい何があったんだ!?)
パシリ「眠いのでしたら、コーヒーはいかがですか?」
DQN「え!?」
パシリ「バッチリ目が覚めますよ」ニコッ
DQN「あ、ありがとよ」グビッ
DQN「う、うめえや」
パシリ「ありがとうございます」
DQN(こいつ……いったい何があったんだ!?)
29: 2021/05/30(日) 18:49:29.747
パシリ(執事さんに教わった、奉仕の一番のコツは――)
執事『主人を好きになることです』
パシリ『自分をパシリにした奴を好きになんてなれるでしょうか?』
執事『いいところを探すのです』
パシリ『いいところ……』
執事『どんな人間にも必ずいいところはあります。私のご主人様にさえあるのですから、必ずあるはずです』
パシリ『分かりました……探してみます!』
主人『ん、どういう意味?』
パシリ(DQNのいいところ、見つけてみよう……!)
執事『主人を好きになることです』
パシリ『自分をパシリにした奴を好きになんてなれるでしょうか?』
執事『いいところを探すのです』
パシリ『いいところ……』
執事『どんな人間にも必ずいいところはあります。私のご主人様にさえあるのですから、必ずあるはずです』
パシリ『分かりました……探してみます!』
主人『ん、どういう意味?』
パシリ(DQNのいいところ、見つけてみよう……!)
30: 2021/05/30(日) 18:54:27.738
DQN「マジかよ~!」
クラスメイト「だろ? ビックリだよな!」
ペチャクチャ…
パシリ(ああいう性格だから、誰とでも気さくに話せるし……)
仲間「大変だ! あいつが他校の奴にカツアゲされたってよ!」
DQN「ンだとォ!? 俺がブッ飛ばしてやる!」
タタタッ…
パシリ(粗暴だけど、誰かのために喧嘩するようなところもある)
パシリ(そういえば、僕もパシリにはされてたけど、殴られたことはなかった)
パシリ(こうしてじっくり観察してると、DQNにもいいところはあるんだな)
パシリ(少なくとも僕が持ってないものを沢山持ってる……)
クラスメイト「だろ? ビックリだよな!」
ペチャクチャ…
パシリ(ああいう性格だから、誰とでも気さくに話せるし……)
仲間「大変だ! あいつが他校の奴にカツアゲされたってよ!」
DQN「ンだとォ!? 俺がブッ飛ばしてやる!」
タタタッ…
パシリ(粗暴だけど、誰かのために喧嘩するようなところもある)
パシリ(そういえば、僕もパシリにはされてたけど、殴られたことはなかった)
パシリ(こうしてじっくり観察してると、DQNにもいいところはあるんだな)
パシリ(少なくとも僕が持ってないものを沢山持ってる……)
32: 2021/05/30(日) 18:56:20.213
DQN「ついてくんなよ!」
パシリ「私はご主人様に仕えておりますゆえ」
DQN「やべ、ぬかるみに……」ベチョ
パシリ「靴を磨きましょう」
DQN「いいよ! そこまですんなよ!」
パシリ「ご奉仕させて下さい。それが私の望みなのです」
DQN「……!」
パシリ「私はご主人様に仕えておりますゆえ」
DQN「やべ、ぬかるみに……」ベチョ
パシリ「靴を磨きましょう」
DQN「いいよ! そこまですんなよ!」
パシリ「ご奉仕させて下さい。それが私の望みなのです」
DQN「……!」
34: 2021/05/30(日) 18:59:31.408
DQN「いい加減にしろよッ!」
DQN「お前の魂胆は分かってる。こうやって俺にまとわりついて」
DQN「過剰にサービスして、今までパシリにされた恨みを晴らしてるんだろ!? そうなんだろ!?」
パシリ「……いいえ」
DQN「あ?」
パシリ「たしかに最初はそういう面もありました」
パシリ「しかし、こうやってあなたにお仕えするうち、だんだんとあなたのことが好きになっていったのです」
DQN「好き……だとォ!?」
パシリ「もちろん、“パシリとして”という意味ですよ」
DQN「お前の魂胆は分かってる。こうやって俺にまとわりついて」
DQN「過剰にサービスして、今までパシリにされた恨みを晴らしてるんだろ!? そうなんだろ!?」
パシリ「……いいえ」
DQN「あ?」
パシリ「たしかに最初はそういう面もありました」
パシリ「しかし、こうやってあなたにお仕えするうち、だんだんとあなたのことが好きになっていったのです」
DQN「好き……だとォ!?」
パシリ「もちろん、“パシリとして”という意味ですよ」
35: 2021/05/30(日) 19:01:40.819
パシリ「あなたは喧嘩はよくしますが、弱い人間に暴力を振るうことはしませんし」
パシリ「誰とでも気さくに話せ、どんな相手にも臆しない心の強さを持っておられます」
パシリ「私はそういうあなたを気に入ってしまったのです」
DQN「うぐ……」
パシリ「ですから、私は嫌味や当てつけなどではなく、好きであなたにお仕えしているのです」
DQN「勝手にしろ!」クルッ
パシリ「はい、勝手にします」
パシリ「誰とでも気さくに話せ、どんな相手にも臆しない心の強さを持っておられます」
パシリ「私はそういうあなたを気に入ってしまったのです」
DQN「うぐ……」
パシリ「ですから、私は嫌味や当てつけなどではなく、好きであなたにお仕えしているのです」
DQN「勝手にしろ!」クルッ
パシリ「はい、勝手にします」
37: 2021/05/30(日) 19:06:29.055
パシリ「ガムでもいかがです?」
DQN「おう」
パシリ「この後のご予定は?」
DQN「ねえよ。家に帰るだけ……ん?」
他校生徒「へへへ……」
ズラッ…
DQN「てめえら……!」
他校生徒「いつだったかは三人がかりでやられちまったからよ」
他校生徒「今日は10人以上集めてきたぜぇ! ツラ貸しな」
DQN(ぐっ、マジかよ……。だが、こんな奴らにイモ引けるか!)
DQN「いいぜ、受けてやらァ!」
DQN「おう」
パシリ「この後のご予定は?」
DQN「ねえよ。家に帰るだけ……ん?」
他校生徒「へへへ……」
ズラッ…
DQN「てめえら……!」
他校生徒「いつだったかは三人がかりでやられちまったからよ」
他校生徒「今日は10人以上集めてきたぜぇ! ツラ貸しな」
DQN(ぐっ、マジかよ……。だが、こんな奴らにイモ引けるか!)
DQN「いいぜ、受けてやらァ!」
39: 2021/05/30(日) 19:08:32.354
他校生徒「よし……ここでやろうや」パキポキ
DQN「……お前は逃げろ! 無関係なんだから!」
パシリ「……」
パシリ「主人の危機に逃げるパシリ……いえ、執事はいませんよ」
DQN「バカが!」
他校生徒「もう一人は誰だか知らねえが……まとめてやっちまうぞ! かかれぇ!」
オーッ!!!
DQN「……お前は逃げろ! 無関係なんだから!」
パシリ「……」
パシリ「主人の危機に逃げるパシリ……いえ、執事はいませんよ」
DQN「バカが!」
他校生徒「もう一人は誰だか知らねえが……まとめてやっちまうぞ! かかれぇ!」
オーッ!!!
40: 2021/05/30(日) 19:11:13.196
ドカッ! バキッ!
DQN「ぐっ!」
パシリ「ぐはっ……!」
他校生徒「ヒャハハ、流石のおめえもこの人数にゃかなわねえか!」
他校生徒「もう一人の奴も弱すぎだしよぉ! なんの戦力にもなってねえ!」
ガッ! ドゴォッ!
DQN「がっ……!」
パシリ「うぐ……」ドサッ…
パシリ(かっこつけて喧嘩に参加しちゃったけど、こいつら容赦がない……)
パシリ(このままじゃ……!)
他校生徒「そっちのザコはもういい。DQNをフクロにしちまうぞ! 病院送りにしてやれ!」
パシリ(DQN君が……!)
DQN「ぐっ!」
パシリ「ぐはっ……!」
他校生徒「ヒャハハ、流石のおめえもこの人数にゃかなわねえか!」
他校生徒「もう一人の奴も弱すぎだしよぉ! なんの戦力にもなってねえ!」
ガッ! ドゴォッ!
DQN「がっ……!」
パシリ「うぐ……」ドサッ…
パシリ(かっこつけて喧嘩に参加しちゃったけど、こいつら容赦がない……)
パシリ(このままじゃ……!)
他校生徒「そっちのザコはもういい。DQNをフクロにしちまうぞ! 病院送りにしてやれ!」
パシリ(DQN君が……!)
41: 2021/05/30(日) 19:14:22.736
主人「む、あれは……?」
執事「パシリ君ですね。どうやら非行少年同士の抗争に巻き込まれてるようです」
主人「野蛮なことだ。下々の人間のすることは理解に苦しむな」
執事「いかがいたしましょう?」
主人「決まっている。助けてやれ」
執事「承知しました。しばしおそばを離れることをお許し下さい」バッ
執事「パシリ君ですね。どうやら非行少年同士の抗争に巻き込まれてるようです」
主人「野蛮なことだ。下々の人間のすることは理解に苦しむな」
執事「いかがいたしましょう?」
主人「決まっている。助けてやれ」
執事「承知しました。しばしおそばを離れることをお許し下さい」バッ
42: 2021/05/30(日) 19:17:28.724
執事「皆様、暴力はおやめ下さい」
DQN「……?」ボロッ…
パシリ(し、執事さん……? どうしてここに……?)
他校生徒「なんだお前は?」
執事「申し遅れました。私、××家に仕える執事です」
他校生徒「執事ィ? んなもんが何しにきやがった?」
執事「そこで倒れてるパシリ君は私の大切な弟子なような方でしてね」
執事「ご主人の命令を受け、助けに来た次第です」
他校生徒「助けに来た? お前みたいな優男が? 笑わせんな!」
執事「拳を収めるつもりはないと」
他校生徒「収めるかよ! むしろお前にも振りかざしてやんよ!」
執事「承知しました」ペコッ
DQN「……?」ボロッ…
パシリ(し、執事さん……? どうしてここに……?)
他校生徒「なんだお前は?」
執事「申し遅れました。私、××家に仕える執事です」
他校生徒「執事ィ? んなもんが何しにきやがった?」
執事「そこで倒れてるパシリ君は私の大切な弟子なような方でしてね」
執事「ご主人の命令を受け、助けに来た次第です」
他校生徒「助けに来た? お前みたいな優男が? 笑わせんな!」
執事「拳を収めるつもりはないと」
他校生徒「収めるかよ! むしろお前にも振りかざしてやんよ!」
執事「承知しました」ペコッ
45: 2021/05/30(日) 19:20:18.401
執事「では、こちらから参ります」
他校生徒「おーう、かかってこ……」
バチィッ!
他校生徒「ぶっ!?」
ドサッ…
「えっ!?」 「一発であいつが!?」 「ウソだろ!?」
執事「どうしました、皆さん? かかってこないのですか?」
「……この野郎!!!」
ワァッ!!!
他校生徒「おーう、かかってこ……」
バチィッ!
他校生徒「ぶっ!?」
ドサッ…
「えっ!?」 「一発であいつが!?」 「ウソだろ!?」
執事「どうしました、皆さん? かかってこないのですか?」
「……この野郎!!!」
ワァッ!!!
47: 2021/05/30(日) 19:23:06.197
ワアァァァァァ……!
執事「それでは少々暴れさせて頂きます」
バキッ! ドカッ! ドゴォッ!
「ぐはっ……!」 「うげっ!」 「いでぇ!」
DQN「なんだこいつ……! メチャクチャつええ……!」
パシリ「執事さん……こんなに強かったのか……」
執事「それでは少々暴れさせて頂きます」
バキッ! ドカッ! ドゴォッ!
「ぐはっ……!」 「うげっ!」 「いでぇ!」
DQN「なんだこいつ……! メチャクチャつええ……!」
パシリ「執事さん……こんなに強かったのか……」
49: 2021/05/30(日) 19:26:29.465
「ひいっ!」 「助けてぇ!」 「逃げろぉ!」
ザワザワ… ヒィィィ…
執事「こんなところでしょうか」
パシリ「執事さん……あなた強かったんですね……」
執事「ここでおさらいです。執事を英語でなんというか覚えていますか?」
パシリ「バトラー……でしたよね」
執事「そう、ですからバトルも強いんです」
パシリ「えええええ!?」
主人「執事は空手、柔道、合気道をたしなんでおるからな」
パシリ「へええ……」
主人「ちなみに私は書道3級!」シャキンッ
パシリ「……」
主人「何かリアクションしたまえ!」
パシリ「す、すみません!」
ザワザワ… ヒィィィ…
執事「こんなところでしょうか」
パシリ「執事さん……あなた強かったんですね……」
執事「ここでおさらいです。執事を英語でなんというか覚えていますか?」
パシリ「バトラー……でしたよね」
執事「そう、ですからバトルも強いんです」
パシリ「えええええ!?」
主人「執事は空手、柔道、合気道をたしなんでおるからな」
パシリ「へええ……」
主人「ちなみに私は書道3級!」シャキンッ
パシリ「……」
主人「何かリアクションしたまえ!」
パシリ「す、すみません!」
50: 2021/05/30(日) 19:29:15.899
DQN「誰だか知らねえが、ありがとよ……」
執事「いえいえ、大きな怪我を負ってなくてなによりです」
DQN「あんくらい……屁でもねえよ」
執事「さすがパシリ君が認めた方ですね」
DQN「あ、そうだ」
DQN「お前も……ありがとう」
パシリ「いや、なんの役にも立てなかったし……」
DQN「そんなことねえ。一緒に戦ってくれただけで、俺は嬉しかったよ」
DQN「巻き込んじまって……すまねえ」
パシリ「ご主人様……」
執事「いえいえ、大きな怪我を負ってなくてなによりです」
DQN「あんくらい……屁でもねえよ」
執事「さすがパシリ君が認めた方ですね」
DQN「あ、そうだ」
DQN「お前も……ありがとう」
パシリ「いや、なんの役にも立てなかったし……」
DQN「そんなことねえ。一緒に戦ってくれただけで、俺は嬉しかったよ」
DQN「巻き込んじまって……すまねえ」
パシリ「ご主人様……」
51: 2021/05/30(日) 19:32:14.526
DQN「ご主人様はもうやめてくれ」
パシリ「!」
DQN「ちょっというの照れ臭いけど……」
DQN「今まですまなかった。これからはダチになってくれねえか。対等な……友達に!」
パシリ「うん! いいよ!」
DQN「んじゃ……これからもよろしく!」
パシリ「僕の方こそ!」
ガシッ…
パシリ「!」
DQN「ちょっというの照れ臭いけど……」
DQN「今まですまなかった。これからはダチになってくれねえか。対等な……友達に!」
パシリ「うん! いいよ!」
DQN「んじゃ……これからもよろしく!」
パシリ「僕の方こそ!」
ガシッ…
54: 2021/05/30(日) 19:35:43.652
執事「パシリ君は晴れてパシリを卒業できたようです。よかったですね」
主人「うむ。ところで執事よ」
執事「なんでしょう?」
主人「私の友達になってくれないか?」
執事「嫌です」
主人「えぇ~……」
執事「私は執事を卒業するつもりはありませんよ、ご主人様」
主人「フッ、では帰るとしようか。祝杯に、美味いワインを用意してくれ」
― 完 ―
主人「うむ。ところで執事よ」
執事「なんでしょう?」
主人「私の友達になってくれないか?」
執事「嫌です」
主人「えぇ~……」
執事「私は執事を卒業するつもりはありませんよ、ご主人様」
主人「フッ、では帰るとしようか。祝杯に、美味いワインを用意してくれ」
― 完 ―
55: 2021/05/30(日) 19:36:46.387
乙
56: 2021/05/30(日) 19:36:53.544
乙です面白かった
57: 2021/05/30(日) 19:36:55.482
面白かった乙
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