～上条の部屋～


テレビ
『孤児院の子供たちは、タイガーマスクさんありがとう、と大はしゃぎ！
一体、どんな人が贈ってくれてるんでしょうね～』


上条「タイガーマスクか……」

インデックス「ガツガツガツガツ！　おかわり！！」

上条「悪い……、もうない」

インデックス「全然足りないんだよ！　もっと寄越すんだよ！！」ﾊﾞﾝｯ

上条「俺の分まで食っておいて何を…………」

インデックス「とうまのイジワル！　もっと食べたい食べたい食べたい～！！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

上条（うちにも来ないかな……伊達直人…………）

　　～御坂の部屋～

テレビ
『不遇の子供たちを救おうとするタイガーマスクの心意気には、
いや～、本当に心が洗われる気持ちですねぇ』


御坂「ふーん……、ねぇ黒子ぉ。　アンタ、タイガーマスクって知ってる？」

黒子「さぁ……？　テレビでは40年前の漫画のキャラクターだとおっしゃってましたが」

御坂「ふーむ、犯人は50歳前後かしら？」

黒子「犯人って……」

御坂「……決めた！　私もタイガーマスクやるわ！」

黒子「はぁ？」

御坂「面白そうじゃない！　このタイミングで私も寄付すれば、テレビで騒がれるわよ、きっと！」

黒子「動機がかなり不純な気が……」

御坂「でも、タイガーマスクじゃアレよねぇ。　名義はゲコ太で贈りましょう！」

黒子「もろにお姉様の趣味ですわね」

御坂「贈り物は福袋に入ってたFF14でいいかしら。　子供たち喜ぶわよ～、これ～」

黒子「……何の嫌がらせですの」

　ミーハーな御坂は、話題のタイガーマスクを真似して児童養護施設に贈り物をしようと考えた。
　そして、それは御坂一人ではなかった……。


テレビ
『またまた児童養護施設に贈り物です！　ムスカ大佐から現金数万円が贈られました。
前回のクレヨンしんちゃん、伊達政宗に続いて、これで100件を超える勢いとなりました！』


御坂「何よこれ！　私は！？　私のゲコ太はなんで報道されないわけぇ！！」

黒子「贈ったものが悪かったのでは……？　福袋のいらないものを処分しただけですの」

初春「でも、ネットではそれなりに盛り上がってますよ。　ほら」ｶﾁｶﾁ


　　ニュース速報(VIP)＠２ちゃんねる

　　1　FF14おくったやつ出てこいよｗｗｗｗｗｗｗｗ（286）
　　2　タイガーマスクからTENGAが届いた（42）
　　3　アナログテレビ送るのやめてください（267）
　　4　壊れた冷蔵庫送った奴、マジで出てこい（181）
　　5　　平　野　綾　VS　か　ら　揚　げ　（987）


御坂「ネットなんてどうでもいいのよ！　テレビに出たかったのに！」

黒子「しかし、同じようなことを考える人っていっぱいいるんですのねぇ」

御坂「大体、なんなのよ！　このタイガーマスクって！　目立ちたいだけの偽善者じゃない！！」

初春「そんなことはないと思いますけど……」

黒子「自分のことを棚に上げてよくそんなことを…………」

御坂「次は爆弾でも送りつけてやろうかしら……。　そしたらテレビに…………」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

初春「やめてください……」




　　～一方通行の部屋～


一方通行「……ふーン」ｶﾁｶﾁ

　一方通行は不機嫌そうな顔で、机に肘をつきながらパソコンを操作している。

一方通行（ったくよォ、真似してる奴は何考えてンだか……。　何だよFF14って……、どこの馬鹿だ……）

これからどういう流れにもってくんだよｗｗｗ

先が読めねぇ・・・

打ち止め「何見てるのー」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ

一方通行「なぁ、お前はFF14貰ったら嬉しいか？」

打ち止め「嬉しいわけないじゃん！　ってミサカはミサカは国産ネトゲに絶望してみたり！」

一方通行「だよな……。　まァ、他の奴がどうしようが関係ねェか」

一方通行（本当に救われない子供は今でも大勢いる……。　親から捨てられたチャイルドエラーが……）



　※　『置き去り（チャイルドエラー）』とは？

　学園都市内の学校に入学する生徒は、原則として親元から離されて、
　寮に住居を置き生活する決まりになっている。
　その制度を悪用して、入学費だけ払って子供を預けた後、行方をくらます保護者が後を絶たない。
　そうして、置き去りにされ、親から見捨てられた子供がチャイルドエラーと呼ばれている。

　学園側からすれば、金にならない厄介者であり、子供たちは不遇に扱われることになる。
　日本が抱える社会現象の一つである。

　　～学園都市の児童養護施設～


子供たち「わーわー！」ｷｬｯｷｬ

園長「みんなー、転ばないようにねぇ」

子供たち「はーい！」


園長「さて、今のうちにお掃除でも――あら？」

一方通行「……よォ」

園長「あらあら、今日も来てくれたのねぇ」

一方通行「通りがかっただけだ。　ほらっ、ガキどもにどら焼き買ってきたからよ」

園長「あらぁ～、いつもありがとうねぇ。　みんなー！　一方通行お兄ちゃんが来てくれたわよ～！」

子供たち「あー、お兄ちゃんだー！」

園長「どら焼きだって、ほらっ。　みんなでお茶にしましょう」

子供たち「やったぁ～！」

園長「はい、どうぞ」ﾄﾝｯ

一方通行「ああ……」ｽﾞｽﾞｽﾞ

子供1「これおいしー！」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

子供2「白髪ー、ありがとなー」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

一方通行「けっ、味わって食えよ。　安もンじゃねェからな」

園長「……悪いわね。　いつも、そんな高いものを……」

一方通行「あ、いや、いいンだよ。　俺が勝手にやってるだけだ」

　一方通行は、つまらないことを言ってしまったなと、少し考え込み顔を逸らした。
　その視線の先で、彼はあるものを見つけた。

一方通行「これ……」

園長「ああ、タイガーマスクね。　あなた、その漫画が大好きだったわよねぇ」

一方通行「そうだな……、何回読ンだかな。　こんな古くてボロボロの漫画をよ……」

園長「うちの施設はお金がないから古い本しかなくてねぇ。　もっと新しい本があればいいんだけれど……」

一方通行「新しけりゃいいってもンでもねェだろ。　古くたっていいものはあるさ」

園長「……ねぇ覚えてる？　他の施設の子供たちと交流会を開いた時のこと」

一方通行「覚えてるよ。　タイガーマスクごっこしようって言ったら、すっげェ笑われたからな、一生忘れられねェ」

園長「そんな古い漫画知らないよって言われたわよねぇ。　あの時、私も申し訳なくってねぇ。
　　　うちにもっと新しい本があれば、あなたが笑われずに済んだのかなってねぇ」

一方通行「あンときゃ悔しかったけどよ、まだガキだったし泣くことしかできなかった。
　　　　　　でもよ、笑われようが馬鹿にされようが、
　　　　　　俺にとっちゃ最高のヒーローなンだよ。　……今でもそうさ」


園長「……うちにもね、きたわ。　タイガーマスクの贈り物」

一方通行「そうか、そいつァよかったな」

園長「うん、サッカーボールや自転車……、それに500万円も……」

一方通行「はは、物好きがいたもンだなァ」

園長「ありがたいけど、こんな大金……ねぇ。　もらっていいものか悩むわ」

一方通行「いいじゃねェか。　くれるっつーンだからもらっておけよ」

園長「でも――」

一方通行「プレゼントってのはさ、あげる方も嬉しいもンだ……。　もらってやれ」

園長「……いいのね？」

一方通行「俺に聞くな、俺は伊達直人じゃねェンだからよ」

　一方通行は園長から目を逸らし、横顔でそう語った。

子供3「なぁー、お兄ちゃん遊ぼう～」

一方通行「ンじゃあ、鬼ごっこでもするかァ？」

子供4「えー、お兄ちゃんってすげえマジに追いかけてくるからイヤだよぉ～」

一方通行「うるせェ、俺様に逆らうな～。　おらおら、外に出るぞ～」

子供たち「あははー」ｷｬｯｷｬ


園長「……あなたが無理をしてないか、それだけが心配なのよ…………」

　　～学園都市、第7学区ストリート～


御坂「あーあ、何がタイガーマスクよ。　ゲコ太のほうが全然可愛いじゃんっつの！」ﾃｸﾃｸ


　　『やだー、なにあれー』　『人が倒れてるぞ』　『ジャッジメント呼んだほうがよくない？』


御坂「ん？　なにかしら、…………ああっ！！　アンタはっ！！」

上条「う、うう……」

御坂「ど、どうしたの！？　何で倒れてんのよ！　まさか、また何か厄介ごとに……？」

上条「お……おな…………」

御坂「おな？」

上条「おなかすいた…………」ｸﾞｳｳｩｩｩ

御坂「……はぁ？」

　　～常盤台中学校の近くのレストラン～


上条「う、うめえええええ！！　こんな美味いもんがこの世にあるのかああああ！！！」ﾓｸﾞﾓｸﾞﾓｸﾞ

黒子「現代の日本に行き倒れがいるとは……」

初春「男の人の食べっぷりって見てて気持ちがいいですね」

上条「いいのか御坂！　本当に奢ってくれるのか！？　後で払えって言っても無い袖は振れないぞ！？」

御坂「べ、別にいいわよ、それくらい。　知り合いが餓氏したら目覚め悪いしねっ」///

初春「でも、なんで倒れるほどお腹を空かせていたんですか？」

上条「ううっ……、金がなくって…………」

黒子「飢えるほどの貧困なんですの……？」

上条「うちにも来ないかなぁ……タイガーマスク…………」

御坂「ったく、どこへ行ってもタイガーマスクの話題が出るわねぇ」

初春「実は、御坂さんも子供たちにプレゼントしたんですよ～」

黒子「ええ、……誰もやりたがらないような在庫処分のクソゲーを」

御坂「ちょ、ちょっと初春さん！　余計なことを――」

上条「ええええ！？　み、御坂！！」ｶﾞｼｯ

御坂「は、はいっ！　な、なにっ？」///

御坂（手……！　アイツが私の手を握って……ふにゃああ！！）///


上条「お……お……、お前がタイガーマスクだったのか！？？」


御坂「…………は？」

初春「あっはっは、違いますよ～。　そうじゃなくて――」


御坂「そ、そうよ！　私がタイガーマスクだったのよ！！」


黒子「えっ？」

初春「えっ？」

御坂「いや～、ニセモノや面白半分の便乗が多くて大変だわぁ～」ｱｯﾊｯﾊ

黒子「お、お姉様……？」

上条「そうだったのか！　お前がそんな立派な奴だったとは……！　見直したぞ、御坂！！」

御坂「子供は国の宝よ？　私たちで育てていかないとね？　ねぇ、黒子と初春さんもそう思うわよね？」

初春「え、ええ……」

黒子「はぁ……」


記者「そこの君！　今の話は本当かい！？」

御坂「へ？　あなたは……？」

記者「僕は学園都市TVの者です！　君がタイガーマスクなのかい！？」

御坂「え、ええ……まぁ…………」

記者「いや～！　何か報道のネタが落ちてないかと探してたところだったんだ！　天の恵みとはこのことだ！」

御坂「え、いや、あの……その…………」ｱﾀﾌﾀ

記者「学園都市中を騒がせているタイガーマスクの正体は、
　　　なんと可憐な女の子だった！　イケる！　絶対数字取れるよ！」

上条「そうでしょう！　こいつは凄い奴なんですよ！　なにせレベル5の第3位ですから！」

記者「なんだって！？　じゃあ、君があの超電磁砲なのかい！？」

御坂「え、ええ……そうです……けど、あの…………」ｼﾄﾞﾛﾓﾄﾞﾛ

記者「こいつぁ最高のネタを手に入れたぞ！　早速だけど、テレビ局の方へ来てもらっていいかな！」

上条「はい！　お願いします！」

御坂「ちょ、ちょっと！　何を勝手に――」

記者「早速、車を回すよ！　さあ、こちらへ！！」

御坂「は、はぁ…………」ｱｾｱｾ


黒子（こ、これは…………）

初春（とんでもないことになりました…………）

　　～テレビ局、楽屋～


初春「御坂さん、どうするつもりですか……？」

御坂「どうするって……どうしよう…………」

黒子「念願叶ってテレビに出れてよかったじゃありませんの」

御坂「そ、そんな冷たいこと言わないでよ、黒子ぉ～！」

黒子「自業自得ですわ」

初春「そもそも、何でこんな嘘を……？」

御坂「だ、だって、あいつの前でいい格好したかったんだもん……、ついとっさに…………」

黒子「ケっ！　あんな類人猿のどこがいいんだか！」ﾍﾟｯ

御坂「こうなったら覚悟を決めたわ……！　なりきってやろうじゃないの！　タイガーマスクに！！」


上条「おーい御坂ー、そろそろ出番みたいだぞ～」ｶﾞﾁｬ

御坂「わ、分かったわっ！　いま行く！」

　　～一方通行の部屋～

テレビ
『遂にタイガーマスクの正体が明らかになりました！
ご紹介しましょう！　御坂美琴さんです！』

御坂『どうもぉ！』

司会『いやぁ、こんな可愛らしい方がタイガーマスクだったんですね！』

御坂『ええ、私がタイガーマスクだったんです！』

司会『何故、福祉施設に匿名で寄付を？』

御坂『まだ学生の身ですので、名乗るほどの者ではありません』

司会『若いのに素晴らしいお考えだ！　人知れず善行を重ねる少女……、胸が打たれる思いです！』

御坂『いえ、それほどでも！』


一方通行「……何やってンだコイツ」

打ち止め「あー、お姉様だ！　お姉様がタイガーマスクだったのっ？　すごーい！」

　　～収録スタジオ～


司会「子供たちに手を差し伸べるタイガーマスクに、いくつか質問があるのですが」

御坂「ええ！　なんでも聞いてちょうだい！」

司会「今までいくらほど寄付を？」

御坂「1千万円くらいかしらね！」

司会「それは凄い！　それだけのお金を寄付するだけの理由とは……？」

御坂「子供たちの笑顔のためよ！　それ以上の理由が必要かしら！」

司会「素晴らしいお答えです！　なぜ、タイガーマスクを名乗っているのですか？」

御坂「いやー、小さい頃から好きだったわ～、タイガーマスク！」

司会「あなたのような少女がですか？　いやー、実は私もあの漫画大好きなんですよねぇ！
　　　ちなみに、どの試合が一番好きですか？」

御坂「し、試合っ？　そ、そうね……、タイガーマスクと伊達直人の試合かしら！」

司会「えっ？」

御坂「えっ？」

御坂（ま、まずい……、知ってる名前を並べただけなんだけど、何かおかしかったかしら……）

司会「え、ええっと、敵ファイターで好きなキャラクターはいますかっ？」

御坂「て、敵ファイター？　ええっと……、リ、リカルド・マルチネス…………？」

司会「はい……？」

御坂「ごほっごほっ！　な、なんだか乾燥してますねぇ！　このスタジオ！！」

AD「はーい、CM入りましたー！」


御坂「ご、ごめんなさい、咳が急に～アハハ～……」

ディレクター「生放送ですから気を付けてくださいね。
　　　　　　　次は、福祉施設で子供たちに贈り物をする絵を撮りますんで、移動おねがいしまーす」

御坂（胃が痛くなってきた……）ｷﾘｷﾘ

　　～学園都市、児童養護施設～


一方通行「よぉガキども。　今日はケーキを持ってきてやったぞ」

子供たち「やったー！　ケーキ～！」ﾜｰｲ


園長「いつもすまないわねぇ。　お金、大丈夫なの？」

一方通行「今の俺は、学園都市最強のレベル5の第1位だぜ？　金なンて寝てても転がり込ンでくるぜ」

園長「でも……」

一方通行「心配すンなって。　俺は無理なンてしてねェ。　やりたいことをやってるだけだ」

園長「ならいいのだけど……」

一方通行「それよりもよ、茶ァ淹れてくれ。　いつも家じゃコーヒーしか飲まないからさ。　ここの茶が楽しみなンだ」

園長「ふふ、いま淹れるわね」

一方通行「ああ～、やっぱここの茶はうめェわ」ｽﾞｽﾞｽﾞ

園長「…………」ｼﾞｰ

一方通行「あン？　なンだよ、人の顔じっと見て」

園長「立派になったなって思ってね。　あの泣き虫だったあなたが……」

一方通行「よせよ、昔の話は……」

園長「チャイルドエラー……、ここの子たちはみんな親御さんから捨てられた子供ばかり……。
　　　学園都市は、そんな可哀想な子供たちを厄介者としか見てくれないわ……。
　　　あなたのように才能のある子は、それでも幸せになれるけど……」

一方通行「何かあったのか……？」

園長「この間、研究所のお偉いさん方が来てね。
　　　研究のために、うちの子を引き取らせて欲しいって……」

一方通行「おい、それって……！」

園長「人体実験よ……。　不要な人間を利用してあげると言われたわ……。　もちろん断ったけど……」

一方通行「……！！　どこのクソ野郎だ！　俺がぶっ頃してやる！！」

園長「その人たちが悪いわけじゃないのよ……。
　　　　この学園都市という厳しい競争社会が、人から余裕を奪ってしまっている気がするの……。
　　　　それが何だかとても悲しくてね……。
　　　　レベル0のあの子達でも幸せになれるのかしらって思ってしまうのよ……」

一方通行「……俺がみンなを守ってやる」

園長「え……？」

一方通行「レベルがどうとか、親がいねェとか、そンなもン俺が全部引き受けてやるよ。
　　　　　　俺はきっと統括理事会だって動かせる人間になってみせる！
　　　　　　学園都市を変えてみせる！　だから、アンタは何も心配するな……」

園長「……嬉しいわ、でもね、私はあなたのことが一番心配なのよ…………」

一方通行「……無理はしない。　約束する」

園長「ええ……」

　　わいわい　がやがや　ざわざわ

一方通行「ン？　なンか、外が騒がしくねェか？」

園長「あら、そういえば、テレビの人が来るのを忘れてたわ」

一方通行「テレビだァ？」


御坂「やあ、子供たちよ！　待たせたな！」ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗｯ

一方通行「…………」

御坂「…………」

一方通行「……何やってンだ、お前」


　一方通行の目の前には、タイガーマスクのコスプレをした御坂がいた……。


御坂「……アンタこそ、なんでこんなところに」

一方通行「ここは俺の実家みてェなもンだ」

御坂「あ、アンタもチャイルドエラーだったの……？」

一方通行「まァな。　で、お前のその酔狂な格好はなンだ？」

御坂「こ、これは……」

上条「あれ！　一方通行じゃん！」

黒子「お知り合いですの？」

一方通行「上条か……、この馬鹿を引き取ってくれ」

上条「まぁまぁ、聞いて驚けよ！　なんと御坂があのタイガーマスクだったんだぜ！　偉いよな！」

一方通行「さっきテレビで見たが……」

御坂「そ、そうよ！　私が子供たちの希望の星、タイガーマスクだったのよ！」

一方通行「……へェ」

御坂「ま、アンタみたいな小悪党には分からないでしょうねぇ。　慈愛に満ちた私の正義の行いが！」

一方通行「ああ、1ピコメートルも理解できねェな……」


AD「それじゃ撮影に入りまーす。　御坂さん、お願いします」

御坂「はーい、……生放送だから、邪魔すんじゃないわよ？」

一方通行「ちっ、たかがローカルテレビではしゃいでるンじゃないぜ」


ディレクター「よし、タイガーマスクと子供たちが触れ合う感動のシーンだ」

AD「カメラまわしまーす」

御坂「さ、子供たち、これは私からのプレゼントよ。　受け取って」

子供たち「…………」

御坂「ふふ、遠慮しているのかしら。　さあ」

子供1「ちがうよ。　こんなのタイガーマスクじゃない」

御坂「えっ？」ﾋﾟｸｯ


子供2「僕、知ってるもん！　タイガーマスクが誰か！」

子供3「そうだそうだ！　ニセモノは帰れ！」

御坂「ちょ、このクソガキども……！　マッスルスパーク喰らわすわよ！」

子供4「タイガーマスクにそんな技ないよ！　それキン肉マンじゃん！」

子供5「お姉さん、ほんとはタイガーマスク知らないんじゃないの？」

御坂「そ、そそそそんなことないわよっ！」

子供6「じゃあ、虎の穴ってなんだ～？」

子供7「タイガーマスクなら当然答えられるよねっ？」

御坂「と、とらのあな……？」ｱｾｱｾ

子供たち「どうしたのー？　早く答えてよー」


御坂「……エ、工口同人誌売ってるところ…………？」


子供たち「…………」

上条「…………」

黒子「…………」

TVスタッフ「…………」

子供1「何言ってるの？　タイガーマスクが特訓したところだよ」

御坂「……ふーん、そうなんだぁ」


　　シーン……


御坂「黒子ぉ～」

黒子「は、はい？」

御坂「帰るわよ」

黒子「はぁ……？」


御坂「ああああああああああああああああっ！！！」ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ

黒子「お、お姉様っ！　待ってくださいまし～！」ﾀｯﾀｯﾀｯ

上条「……御坂はタイガーマスクじゃなかったのか？」

子供たち「全然違うよ！　タイガーマスクは一方通行お兄ちゃんだよ！」

一方通行「あ……？　バ、バカ言え……、俺がそンな暇なことするわけないだろ……！」ﾌﾟｲｯ

園長「ふふ、相変わらず、隠し事をするのが下手ねぇ」

一方通行「お、俺は……」

園長「嘘をつく時、顔を逸らす癖……、昔から変わってないわ」

一方通行「う……」

上条「一方通行がタイガーマスクなのか！？」


ディレクター「つ、つまり、さっきの女はニセモノで、本物はレベル5の第1位だったというわけか！」

AD「これはこれで話題性ありますよ！」

ディレクター「一方通行さん！　是非お話を！」

一方通行「うるせえ！　冷やかし目的のてめェらに言うことなンざ何もねェよ！」

園長「あらあら、いいじゃない。　何か一言、言ってあげたら？」

一方通行「……ちっ、それじゃあ一つだけ言っておく。
　　　　　　勘違いして浮かれてる奴が多いけどよ、
　　　　　　タイガーマスクは流行りもンなンかじゃねェ。
　　　　　　40年前からずっと子供たちのヒーローで……、
　　　　　　昔も今も、そしてこれからもそれは変わらねェ。　……それだけだ」

上条「そうだな、面白半分で便乗する奴はすぐに飽きるだろうけど、
　　　　本物のヒーローはこれからもずっとヒーローだよな！」



　その後も、様々な名義で福祉施設への贈り物は続いたが、
　徐々にその数は減ってゆき、タイガーマスク運動は収束していった……。
　テレビでは、早くもその話題が忘れ去られようとしており、
　人々は新しい話題に飛びついていった。

　しかし、子供を想う気持ちは、いつの世も変わらない。
　きっと、この先もタイガーマスクは現れるだろう！　それが正義のヒーローなのだから！

　　～御坂の部屋～

御坂「テレビで大恥掻いた……。　もう駄目……生きていけない…………」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

黒子「あの……、今日も学校には行かないつもりですの…………？」

御坂「ハハ、このゲーム、やってみると案外面白いわねぇ～……」ｶﾁｶﾁ

黒子「お姉様……、黒子の方を見てくださいまし…………」

御坂「あーこれか、これは碩老樹瞑想窟で手に入るわよ。
　　　馬鳥免許取ったら馬鳥馬留から馬鳥乗ってスグいけるよ。
　　　刻苦勉励と天佑神助の効果アップだからマジオススメ」ｶﾁｶﾁ

黒子「お食事ここに置きますの……。　早く元気になってくださいましね」


　一方、虚栄心丸出しで成りすましに失敗した御坂は、
　学園都市中から白い目で見られるようになってしまった。
　ショックに打ちひしがれた彼女は、2週間ヒキこもるが……、


御坂「おっはよぉー！　みんな～！」


　タイガーマスクの話題が消えた頃、
　何事もなかったかのように学校に姿を現したという。


　おしまい

読んでくれた人ありがとう。
つまんなかったら、ほんとゴメン。

おつううう