3: 2012/12/22(土) 01:13:16.61 ID:RZfzjUt00
加持「どうせ暇だろ?」

ミサト「ごめんなさい」

加持「この前いい店を見つけたから君さえ良ければ」
加持「えっ」

ミサト「今夜は用事があるの」

加持「えっ」

ミサト「ごめんなさい」

加持「えっ……仕事か?」

ミサト「まあ、そんなところ」

加持「」

ミサト「そういうわけだから」テクテク

加持「あっ、おい! 葛城……」

4: 2012/12/22(土) 01:17:24.36
加持(とにかく腹が減っていた)テクテク

加持(葛城と行くはずだったレストランはもちろんキャンセルだ。色々とサプライズも仕込んだがぜんぶ無駄に終わった。電話に出た店員の反応が「あっ…(察し」だったのが地味につらい)

加持(もちろん仕事で付き合いのある女を誘うことだってできた。でも俺はしなかった。クリスマスくらい葛城のことだけ考えてたっていいじゃないかと思ったからだ。普段の負い目もある)

加持(…………)シュボッ、フー

加持(町はそこら中クリスマスで浮かれきっていた。腕を組んだ恋人たちの楽園だ。一方の俺はイルミネーションの下をトボトボと一人で肩を落としながら煙草片手に歩いている。これじゃ完全にくたびれたおっさんじゃないか)

彼女連れの青年「ちょっとそこのおっさん」

加持「えっ」

彼女連れの青年「ここ、禁煙だから」

加持「あっ、はい」

キャー、ユウクンカッコイー! ハハ、ヨセヨ! キャー!

加持(……はあ。腹が減ったな)トボトボ

6: 2012/12/22(土) 01:20:15.02
加持(葛城と飯を食うことしか考えていなかったせいで今夜の夕食は完全なノープランだ。コースメニューは結構な量があると聞いていたので昼飯を抜いたのが逆に仇となった)テクテク

加持(と言って今からレストランなんて入れるわけがない。予約で一杯だ)

キャッ キャッ

加持(何よりカップルで一杯だ。そんなところへ男一人で入っていけるわけがない)

加持(だからと言ってジャンクフードやファミレスで夕食を片付けられるほど俺は意志薄弱な男じゃない。葛城にフラれた夜でもうまいもんを食ってそれなりに満足して床につきたい)

加持(しかし……)ピタッ

キョロキョロ

加持(どこもかしこもカップルだらけだ。この中で男一人で食える店を探すのは骨が折れる)テクテク

エーホンジツーノミホウダイガー

加持(居酒屋か……)チラッ

7: 2012/12/22(土) 01:25:25.59
加持(たしかに居酒屋ならカップルはいない。だが……)

ウェーイwww

キョウハァ?wwwナントォ?wwwクリスマスノォ?wwwウチアゲェーイwww

ウェーイwww

加持(……ダメだ。あれじゃうるさくて飯の味がわからなくなってしまう。俺は一人で飯を食う時は静かに食うのが好きだ)

加持(居酒屋はダメか……)テクテク

キャッキャ

ウェーイwwwウェーイwww

加持(そもそもクリスマスに一人で外食すること自体難易度が高すぎるんだ。だが俺のマンションの冷蔵庫の中身はスッカラカンだ)

加持(まともなものを食おうと思えば外ですませるしかない)

キャッ キャッ

加持「ん? あれは……」

9: 2012/12/22(土) 01:32:17.25
加持(シンジくんじゃないか!)ハッ

加持(そうだ。何も店で食うことはない。シンジくんに晩御飯をご馳走になればいいんだ。多少うっとうしがられたってかまうもんか! そうと決まれば……)

イチャイチャ! ソ、ソトデハヤメテヨ! イチャイチャ!

加持「…………」
加持(そうか。そうだよな。シンジくんだってああ見えてやる時はやる男だ。クリスマスに一人でぶらぶらしてるわけがなかった)

加持「はあ。なんで飯を食うだけでこんなに苦労しなきゃならないんだ……」トボトボ

ドンッ

加持「あ、失礼……」チラッ

冬月「……君か」

加持「!?」

12: 2012/12/22(土) 01:36:23.18
加持「副司令、なぜこんなところに」

冬月「わからんかね。夕食だよ」

加持「夕食ならネルフで……」

冬月「ネルフは今はクリスマスパーティの真っ最中だ。私がいては楽しめんだろうと思ってな」

加持「はあ」

冬月「よければ一緒にどうかね」

加持「本気ですか」

冬月「そこに激辛料理の専門店がある」

加持「激辛料理?」

冬月「そうだ。香辛料と油でギトギトの料理を出すところだ」

加持「なるほど。まずカップルが出入りするような店ではない……ってわけですか」

冬月「くるかね」

加持「おともします」

13: 2012/12/22(土) 01:39:51.18
加持「しかしまさか副司令と夕食をご一緒する日が来るとは思いませんでしたよ」

冬月「まあそんなこともある。それにしても私は一人身だからいいとして、君は相手がいないわけでもなかろうに」

加持「はは。袖にされましてね」

冬月「と、言っている間に到着した。ここだ」

加持(ふむ。表通りを一本外れたところにある隠れ家的名店ってところか。……なるほど、これならチャラチャラした連中が入ってくる心配もない)

冬月「時に君は激辛料理は好きかね」

加持「葛城のせいでビールに合うものはなんでも好きになりましたよ」

冬月「よろしい」

14: 2012/12/22(土) 01:44:36.27
ウィーン

ッラッシャーセーイ

加持(うん。悪くない、悪くない雰囲気の店じゃないか。照明も明るすぎず暗すぎずかといって気取り過ぎているわけでもない。変なフロアミュージックがかかってないのも好印象だ)

ジュゥゥゥ…

加持「こいつは入店早々うまそうな音がしますな」

冬月「まあかけたまえ」

加持「は。では失礼して……」

冬月「まずはビールでいいかね?」

加持「もちろん。副司令もビールはお好きで?」

冬月「まあ習慣みたいなものだよ。銘柄を選びたまえ」

加持「ではハイネケンを」

冬月「私はモルツを。まずは小手調べにシシトウの串揚げでどうかね」

加持「ほう。お任せしますよ」

18: 2012/12/22(土) 01:50:08.18
加持(うん。いいな。決してクリスマスにカップルが訪れるような店じゃないが、落ち着いたオトナの空間ってやつだ。客層も俺よりはむしろ副司令の方に近い)

ポンッ

加持「副司令、まずは一杯」

冬月「すまんね。まあ君も気楽にやってくれ」

加持「は。では」

トクッ、トクトクトクトク、ジュワァ…

加持「一人身の夜に」

冬月「夜に」

チリーン、ゴクッ…ゴクッゴクッゴクッ……

加持「っくぁーッ!」ダンッ!
加持(いやあ、意気消沈して夏の夜の町をさまよったあとのハイネケンはきくなあ!)

22: 2012/12/22(土) 01:56:01.33
冬月「君のそれはあれかね。ドイツの」

加持「やあ、ドイツは関係ありませんよ。学生時代からです。初めて飲んだのがこれでしてね」

冬月「ふむ。私も似たようなものだよ」ゴクゴク

加持「まあしかし今更他のビールは飲めませんな」

冬月「まったくな」ゴトン

加持(と、言っている間にシシトウが届いたようだ)

加持「ほほう。味付けは塩のみですか」

冬月「シシトウは塩に限るよ」サクッ

ゴクッ… ゴクッ…

加持「お、副司令も中々イケる口ってやつですか。なら俺も……」

サクッ

加持「おっ、これは」

25: 2012/12/22(土) 02:01:06.04
加持「噛んだ途端ピリッとくるシシトウの辛味。そしてジュワッと口の中に広がる油の風味がたまりませんな。いやあ、うん」ゴクッ、ゴクッ

ゴクゴクゴクゴク、ドンッ!

加持「ビールおかわり!」
冬月「私もだ」

加持「うん。この塩加減がまたいい。そうそう、このくらいがいいんですよこのくらいが。まずはこれくらいから初めてビールをゴクッといくのが」

冬月「君も中々できるようだな」

加持「そりゃもう」

ビール、オマットーサマー

冬月「…………」サクッ

加持「…………」グビッ!

冬月「……次は海老でもどうかね」

加持「ほう。海老ですか」

27: 2012/12/22(土) 02:05:59.04
加持「しかし、海老で激辛というとエビチリですか? 悪くはありませんがもう少しこのピリッ! ゴクッ! を楽しみたいもんですな」

冬月「そんな君にうってつけのメニューだよ、これは」

加持「ほほう」

冬月「では海老の山椒炒めを三人前」

加持「三人前?」

冬月「一人一人前では足りんよ。すぐにわかる」

加持(なるほど。副司令のシナリオどおりってわけか。……それにしてもこのシシトウうまいな)ゴクゴク

冬月「ここからが本番だ」ゴクゴク

加持「おともしましょう」グビグビ


加持「ビールおかわり!」

30: 2012/12/22(土) 02:09:30.11
ハイッ! エビオマチー!

ジュゥゥ…

加持「こいつは……!」

冬月「そうだ。海老を殻ごとたっぷりの油で炒めた上に山椒、唐辛子、胡椒、ショウガ、紹興酒などをこれでもかと言うほどにぶっかけたものだ」

加持「こいつは胃袋が黙っちゃいませんよ……こりゃ酷い。匂いからしてもう口の中にピリピリくる」

冬月「まあ食べてみたまえ。これは手づかみで食ったほうがうまいぞ」

加持「は。それでは……」ガッ

パキッ

加持「アチチ」ガブッ!

加持「!」

31: 2012/12/22(土) 02:15:26.21
加持「副司令、こいつは……」

冬月「どうかね。油にとけ込んだ山椒の風味がまるで脳天まで突き抜けるような辛さだろう。口の中が第一種戦闘配置だ」

加持「しかも辛いと言ってもキムチやエビチリのようなもったりとした辛さとは段違いですよ。バリバリバリッ! と電撃的に辛い。しかもそれがアツアツの油と一緒になって口の中へ攻め込んでくる」

冬月「そうだ。そこへ紹興酒の風味と海老の身のプリンプリンの歯ごたえと身の甘さを感じるだろう」

加持「たまりませんな。俺がビールに手を出すのもも料理人のシナリオのうちってわけですか」ガッ

冬月「そういうわけだ」ガッ

加持「」モグモグ

冬月「」モグモグ

ゴクッ! ゴクッ! ゴクッ!

プハーッ!

35: 2012/12/22(土) 02:23:03.64
加持(うん。この海老のビールとの相性は抜群だ! 舌にビリビリくる熱さと辛さのユニゾンをキンッキンに冷えたビールがジュワーッ! と喉の下まで押し流してくれる)

ゴクッ! ゴクッ!

加持(だめだ。こんなもんを食ってるのにネクタイなんて締めちゃいられない!)スルッ

ガブッ! ガブガブガブッ!

加持(くーっ! 熱い! 辛い! うまい! 何よりビールがうまい!)ゴクッ!

冬月「まあ私を気にせず腕まくりでも何でもしたまえ。気を使って食っては飯がまずくなるぞ」

加持「や、おっしゃるとおりです」ウデマクリッ

加持(しかしこれじゃ完全におっさんだな……はあ)モグモグ

冬月「おかわり」

36: 2012/12/22(土) 02:29:56.66
加持(食い終わる頃には汗でびっしょりだ。まああの副司令が上着を脱いで腕まくりするくらいだからな)

冬月「では小手調べはこのくらいにして、だ」

加持「今までのが小手調べですか」
加持(しかしビールがうまいなあ!)グビグビ

冬月「この店の売りは実は中華ではないのだよ」

加持「なんですって?」ピクッ
加持(激辛料理と聞いて誰しもが思い浮かべる中華料理。今までの傾向からしてずばりここは中華料理の店だと半ば確信していたが……)

チラッ

加持「たしかに妙だとは思ってましたよ。みんなこの店の売りらしきものを手づかみで食べている。俺はさっきの海老がそうなんだとばかり思っていましたが……」

冬月「この店の売りは、インド料理だ」

加持「!?」

38: 2012/12/22(土) 02:34:40.46
加持「インド料理ですって!?」

冬月「そうだ。この中から好きなカレーを選びたまえ。全て激辛だ」

パラッ

加持「! 副司令、この『食べられなくても知りません』と書いてある超激辛マトンカレーというのは」

冬月「私のイチオシだ」

加持「!?」

冬月「私はそれを頼む。それも大盛りでだ。もちろん飲み物に水など頼まない。ラッシー一択だ」
冬月「しかし君までそうする義務はない。自分の好きな辛さのものを頼み給え」チラッ

加持「そうまで言われて他のものを頼んだんじゃ男がすたりますよ」メラッ
加持「俺も超激辛マトンカレー一択です」

冬月「よかろう」


冬月「で、ナンで食べるかね?」

加持「ナンでもいいですよ。お任せします」

冬月「マトンカレー二人前、両方ナンで頼む」

39: 2012/12/22(土) 02:41:52.57
ジュゥゥゥ…

加持「ナンを焼くいい匂いがしてきますな」

冬月「バターで焼くようだ。この店はナンがやや厚めでしかも大きい。食いでがある。普通インドカレーの店に行くと腹の足しにもならん大きさのナンでとんでもない値段を取られるものだが」

加持「男の店ってわけですか」

冬月「変な付け合せメニューがないのも嬉しい。もちろん私もセットメニューは大好きだがね。しかしセットメニューで注文できないカレーなどがあったりした時は正直困る」

加持「わかります。どうしてもそのカレーが食べてみたいのにそちらを頼むとセットではなく単品で頼まざるをえないから値段が高くなる」
加持「その上大してうまくなかったりするともうダメですよ」

冬月「うむ。私がグリーンカレーを頼んだ時がそうだった。あの毒々しい緑色からしてさぞかし辛いのだろうと思ったのだがね……」

加持「あれは野菜のまろやかな甘味を楽しむものですから」

冬月「私も若かった」

40: 2012/12/22(土) 02:42:52.11
やばい腹へってきた

43: 2012/12/22(土) 02:46:42.02
オサキニラッシーデース

加持「おっ。先に飲み物がきてしまいましたな、こりゃあ」

冬月「大問題だ」

加持「というと?」

冬月「このラッシーは早い話がヨーグルトジュースだ。そこに今は氷が入ってストローが刺さっている。この氷が厄介者だ」

加持「しかし氷がなければなまぬるくなりますよ。店内はすごい熱気です。油がビシバシはねてますからね」

冬月「君はラッシーを飲むのは初めてかね」

加持「ええ。お恥ずかしながら」

冬月「ならそう思うのも無理からぬことだ。いいかね、このラッシーを頼んだ目的は超激辛カレーの辛味を中和することにあるのだ。つまりラッシーがとけた氷で薄まるということは……」

加持「我々の口でサードインパクトが起こる……ってことですか」

44: 2012/12/22(土) 02:48:30.97
どういうことだよwwwwwwww

45: 2012/12/22(土) 02:53:26.38
冬月「有り体に言えばそうなる」

加持「そいつは困りますな」

冬月「うむ。ラッシーのどろっとした甘みがいい感じでカレーの辛いのをなんとかしてくれるのだ。それがサラッとしてみたまえ」

加持「我々の口内汚染度が危険域に達しますね」

冬月「君はどう見るね?」

加持「店員もそこは承知の上ですよ。すぐにカレーとナンが運ばれてくるはずです」

冬月「私はそうは思わん。見たまえ」チラッ

加持「?」
加持「……!」ハッ

加持「そうか」

冬月「そうだ。今日はクリスマスだ。いつもの手慣れたバイトが恋人とイチャイチャするために来られず店員はやや混乱している」

加持「……!」ダンッ

冬月「」ビクッ
冬月「何事かね。八つ当たりはやめたまえ」

加持「すみません。腕が勝手に……」

46: 2012/12/22(土) 03:01:21.63
数分後

マトンカレーニナリャース

加持(ウマそうな匂いだ。へえ、カレーの容器も凝ってるじゃないか。アラジンのランプのランプみたいなあのカレーを入れるやつにちゃんと入ってる)

加持(どれ、軽くスプーンで味を確かめてみるかな)ペロッ

加持「!」

冬月(どうやら気づいたようだな。自分が何を頼んでしまったのか。ふふ)

加持(こ、これは……か、辛い! 水を我慢できない辛さだ!)バッ

冬月「ラッシーのグラスからストローを抜くのはよしたまえ。一気に飲んではかえって逆効果だぞ。それはストロー越しにチビチビ飲むのが一番だ」

加持「たしかに。少量のラッシーで舌を休ませながら食べるのが一番か……言わばこのストローはラッシーに刺さったロンギヌスの槍」

加持(しかしそれにしてもなんて辛さだ。普通、日本のカレーは具がごろごろ入ってルーもドロッとしているがこのマトンカレーには文字通りマトンとあとは少量の香味野菜らしきものが浮いているだけだ)
加持(ルーもサラッとしている)

48: 2012/12/22(土) 03:05:45.50
ビール飲みたくなった

49: 2012/12/22(土) 03:08:24.00
加持(それだけに一般的にはくずれたジャガイモで相殺されるべき鋭い辛味が直に舌と喉を突き刺す。だが決して不快ではない。むしろ逆だ)
加持(俺はこれを待っていた。この刺激的な辛さを待っていたんだ。唐辛子と香辛料がダイレクトに香るスパイシーなカレーを!)

冬月(その通りだ。私は日本のカレーも好きだがよぶんなものが多すぎる。そこで出会ったのだよ。インドの神秘に!)

加持(そりゃダルシムも火を吹くわけだ!)
加持「それにこのナンもいい」

冬月「実に上等だ」

加持「ええ。厚すぎず薄すぎずしかも焼きたてです。これが冷めていたりすると本当に興ざめですからね」

冬月「そうだ。手にアツアツのバターがつくくらいのものでなければならんよ。千切ってみたまえ」

加持「うまそうな匂いがする。なるほど、このナン自体のバターのコクとカレールーのスパイシーな辛さが融合して……」モグッ!

加持「うおおおお辛い!」モグモグモグ!

51: 2012/12/22(土) 03:15:51.76
加持「副司令、このマトンってやつは中々イケますよ!」

冬月「もちろんだ。この独特の風味と香辛料の香りが相まってもうなんとも言えんだろう。肉と香りのサードインパクトだ」

加持「ええ。しかし辛い!」

冬月「そこでラッシーを一口だ」

チュー

加持・冬月「……ふぅ」

加持「このラッシーというやつは実に……こう、女神みたいなもんですな」

冬月「そうだ。悪魔のような辛さと戦う合間に一時の安らぎをくれる、まさしく女神とたとえるに相応しい」

加持「カレーとの相性も抜群ですよ。ヨーグルトの酸味の効いた味わいがカレーの後味をスッと消し去ってくれます。いや消し去ってくれるなんてもんじゃない。また食べたくしてくれる」

冬月「インドカレーを食べる時はぜひラッシーを頼んでほしいものだな」

加持「こいつはプレーンラッシーってやつか。俺も次は葛城でも誘ってみますよ」チュー

52: 2012/12/22(土) 03:22:47.36
加持(しかし暑いな。汗だくだ。鼻や顎から汗がしたたる)モグモグ

冬月「葛城一佐と言えば、君はよかったのかね」

加持「? 何がです?」

冬月「だからクリスマスパーティだよ」

加持「えっ」ピタッ

冬月「葛城一佐は部下と一緒に今頃楽しくやっているだろうに」モグモク

加持「えっ」

冬月「どうかしたかね」

加持「えっ、俺……呼ばれていませんよ」

冬月「……あっ(察し)」

加持「なん……なんだ。なんだなんだなんだ。仕事ってパーティかあいつ!」ダンッ

53: 2012/12/22(土) 03:24:21.08
ここ最近エヴァSSたくさんあったけど一番面白い

54: 2012/12/22(土) 03:24:43.20
加持さん…

55: 2012/12/22(土) 03:30:03.03
冬月「碇も顔だけ見せると言っていたぞ」

加持「司令も呼ばれたのに俺は呼ばれなかったんですか!?」

冬月「ちなみに私も呼ばれた」

加持「」

冬月「ほら……まあ、あれだ。君は監査部の人間だからな。司令室の面々とは面識も薄い」

加持「正直めちゃくちゃ落ち込みましたよ。なん……なんだよ。なん……せめて誘ってくれてもいいと思いませんか」

冬月「いやあ。誘いづらいだろう。ユーロから来たばかりの君は言わば外様だ」

加持「」ズーン
加持「ちなみに誰が出たんですか?」

冬月「碇、赤木博士、葛城一佐、伊吹くん、日向くん、青葉くん、式波大尉、レイも出たか、シンジくんも最初は顔だけ見せにきたぞ」

加持「それってつまりハブられたの俺だけじゃないか!」
加持「うわあ、てことはリッちゃんからも誘われなかったのか」

加持「うわあ……」

56: 2012/12/22(土) 03:38:50.11
冬月「君はクリスマスには予定があるとばかり思っていたよ」

加持「正直小一時間前まではそのつもりでいましたよ……」

冬月「…………」

ポン

加持「副司令」

冬月「まあ飲みたまえ」トクトク

加持「はい」グビッ
加持(でも副司令は呼ばれたんだよな……)ズーン

冬月「お、噂をすれば何とやらだ。どうやら終わったようだな。窓の下を見たまえ」

加持「えっ」

ザワザワ タノシカッター! ヤー、ノンダノンダー!

加持「えっ」

冬月「このすぐ下の階が二次会の会場だったからな。そりゃそうだろう。でなければ私がこんなところをぶらぶらしているわけがない」

加持「」

57: 2012/12/22(土) 03:42:14.52
クリスマスだけはじけるゲンドウ

58: 2012/12/22(土) 03:43:47.29
加持さんが人に戻れなくなっちゃう!!

59: 2012/12/22(土) 03:46:07.69
加持(あ、葛城)

プハーッ! ノンダノンダー! エヘヘー!

加持(あ、あいつ、俺の気も知らないで楽しそうにしやがって)グビグビ
加持(第一、誘う方も誘う方だ。今日はクリスマスだぞ。俺が葛城を誘うのなんてわかりきったことじゃないか)ゴトン

加持「葛城も葛城だ」ヒック

冬月「まあ飲みたまえ。代金は私が払っておく」トクトク

加持「副司令……」
加持(優しさが身にしみる。と同時に情けなさすぎるな)グビグビ

加持(みんなが盛り上がってる中で一人酒びたりとは……)ゴトン

ミサト「あれ? 加持くんじゃない」

加持「!?」

62: 2012/12/22(土) 03:48:06.61
加持さん(´;ω;`)

64: 2012/12/22(土) 03:51:20.03
加持「か、葛城……?」

ミサト「あ」
ミサト「これは副司令。失礼しました」シュビ

冬月「かまわんよ。で、どうかね。式波大尉は無事帰ったかね」

ミサト「はい。部下が家まで送り届けるそうです」

冬月「そうか。君もせっかくのクリスマスなのに子どもの世話で大変だな」

ミサト「仕事ですから」キリッ

加持「…………」グビッ

冬月「そうか。ではそこの飲んだくれの世話も任せたいのだがかまわんかね。私のおごりだ」

ミサト「マジですか」

冬月「マジだ」

67: 2012/12/22(土) 04:01:00.34
冬月「ではそういうわけだ。あとは葛城一佐に一任する。ではな」

テクテクテクテク 
ガララッ

ピシャ

加持「…………」グビッ

ミサト「んー、何食べよっかしらねー」パラパラ

加持「葛城、お前……仕事じゃ」

ミサト「そうよー。式波・アスカ・ラングレー大尉の保護者として彼女が家に帰るまであそこにいるのが私の仕事」

加持「俺は呼ばれなかったぞ」

ミサト「そりゃいくらなんでも二人して抜けて出るのはねー」
ミサト「人の目もあるし」

加持「えっ」

ミサト「にしてもあんたのその格好!」プププ
ミサト「まるでダメなおっさん、略してマダオね。マ・ダ・オ。せっかくのクリスマスの夜だってのに一人で飲んだくれてるなんて。なに、あたしにフラれたのがそんなにショックだったわけ?」ププー

加持「」

70: 2012/12/22(土) 04:10:30.75
加持「なん……な……なんだよ」グテー
加持「最初からそのつもりだったなら言ってくれよ……」ガックシ

ミサト「だっていきなり『今夜暇?』とかきかれてもねー。あの時のあんたの顔ったらもー」プププ

加持「あのなあ」

ミサト「当日まで誘ってくれなかった加持くんが悪いのよん」

加持「だってびっくりさせたいだろ」

ミサト「えー、あたしだって予定があるし」

加持「俺が誘うことくらいわかるじゃないか」

ミサト「まあねー」

加持「まったく」

ミサト「ごみん」テヘペロ

加持「…………」ギュー

ミサト「加持くんイタイ! ほっぺが! も、もげりゅ!」ムググ

加持「やれやれ」パッ

73: 2012/12/22(土) 04:22:17.20
ミサト「イタタ」スリスリ
ミサト「でも加持くん、あたしを待っててくれたわけよね、これって」ウリウリ

加持「他の女がひっからなかっただけさ」

ミサト「えー? 素直んなんなさいよー。あたしが来てくれて嬉しいくーせーにー」ウリウリ

加持「見ればわかるだろ」

ミサト「まあねー」ウフフ

ハァー

加持「葛城、飲もうか」

ミサト「あったりまえでしょ。こちとら二次会まで殆ど飲んでないんだから。ね、ここのお店って何がおいしいわけ?」

加持「海老のやつなんかお前の好きそうな味だったよ」

ミサト「ピリピリカラカラでビールがうまい! ってやつね」

加持「あとはまあそうだなあ……」

74: 2012/12/22(土) 04:29:10.11
リャーシター

カランコロン、バタン

ミサト「うはーっ! 辛かったー! もう口ん中がサードインパクト!」ダキッ

加持「俺よりあとから入ってきて俺より酔っ払うなよ……」ズーリ、ズーリ

ミサト「んー、加持くん、冷たいんじゃないー?」スリスリ

加持「汗だくだったからな。気化熱で冷えたのさ」

ミサト「そうじゃなくってさー」ギュー

加持「ほら、タクシー乗り場までは歩いてくれ。そっから先は背負ってやるから」ズリズリ

ミサト「ダメよ、タクシーなんて!」

加持「おま、俺に家までおぶっていけって言うのかよ!」

ミサト「だってほら、イルミネーションが綺麗だし。みんな歩いてるしー? あたしもー? 二人でー? 歩きたいなー? みたいなー」シュン

78: 2012/12/22(土) 04:45:35.42
加持「…………」ポリポリ

加持「じゃあほら」スッ

ミサト「いやっほーう!」ダキッ

加持「ちょっ!」ズシッ
加持「おいばか! 俺だってもう若くないんだぞ!」

ミサト「それ同い年のあたしもだいぶ傷つくわ……」

加持「まったく……じゃあ行くからな」ノッシノッシ

ミサト「んー、どこ行くのん?」ウフフ

加持「そりゃあとってもいいところさ」

ミサト「加持くんのえOち」ギュ

加持(そうしておれは夏のクリスマスイルミネーションの下を葛城と二人で歩いた。葛城は少し太っていたようだ。これはすぐあとに実際に目で見て確認したから間違いのないところだ)

加持「葛城、あれだ」
加持「来年のクリスマスはちゃんと空けとけよ」

加持(葛城が耳元でうふふと笑っておれに頬ずりした。そして「加持くん、ひげがちくちくする」と甘くささやいた)

加持(そうしておれたちは恋人たちの楽園の中にうまく紛れ込むことに成功したのだった。そう、実にうまく……)

オワリ

79: 2012/12/22(土) 04:46:50.19
あまりにも誰得なSSだった。

さすがの俺も猛省したわ。
正直すまなかった。

80: 2012/12/22(土) 04:46:52.60

81: 2012/12/22(土) 04:46:58.80
おめでとう

82: 2012/12/22(土) 04:47:17.46
乙 おめでとう

引用元: 加持「葛城、今夜はクリスマスだ」