1: 2011/01/25(火) 00:02:52.07
純「こんばんは、みなさん。私の名前は鈴木純です。」
純「職業はしがない物理学者で、たまに作家の真似事みたいなことをしています。」
純「今日は、私の親友で医師の平沢憂氏が2019年5月に体験した」
純「不思議で心温まる奇跡についてお話ししようと思います。」
純「職業はしがない物理学者で、たまに作家の真似事みたいなことをしています。」
純「今日は、私の親友で医師の平沢憂氏が2019年5月に体験した」
純「不思議で心温まる奇跡についてお話ししようと思います。」
2: 2011/01/25(火) 00:05:10.20
純「unknownとimpossibleは別のものである。」
純「物理屋の私にとっては当たり前だと思っていた事実でした。」
純「しかし、皆さんの中には、『信じて動き続ける』ことを忘れてしまい、」
純「無意識のうちにimpossibleをunknownと近似している人はいませんか?」
純「このお話はそう言った『大人』のために書いたものである、と始めに言っておきます。」
純「物理屋の私にとっては当たり前だと思っていた事実でした。」
純「しかし、皆さんの中には、『信じて動き続ける』ことを忘れてしまい、」
純「無意識のうちにimpossibleをunknownと近似している人はいませんか?」
純「このお話はそう言った『大人』のために書いたものである、と始めに言っておきます。」
3: 2011/01/25(火) 00:07:19.51
純「協力してくれた平沢氏と厚生労働大臣の真鍋和氏、」
純「理化学研究所の田井中聡博士には最大限の賛辞を送りつつ、」
純「そして天国にいる4人の天使とあわてん坊の子猫さんには最高の幸せを祈りつつ、」
純「このお話を皆さんに捧げます。」
純「不思議なお話の始まりです。」
純「理化学研究所の田井中聡博士には最大限の賛辞を送りつつ、」
純「そして天国にいる4人の天使とあわてん坊の子猫さんには最高の幸せを祈りつつ、」
純「このお話を皆さんに捧げます。」
純「不思議なお話の始まりです。」
4: 2011/01/25(火) 00:09:29.20
<注意書き>
純「それから、中の人から一つだけお知らせがあるそうです。」
純「なんでも、最近同じテーマを扱ったSSがあったようですが、」
純「このお話は内容も結末も全く違うので、遠慮せず投下していくそうです。」
純「では、ストーリーに移行します。」
</注意書き>
純「それから、中の人から一つだけお知らせがあるそうです。」
純「なんでも、最近同じテーマを扱ったSSがあったようですが、」
純「このお話は内容も結末も全く違うので、遠慮せず投下していくそうです。」
純「では、ストーリーに移行します。」
</注意書き>
5: 2011/01/25(火) 00:11:41.99
<憂ノカタリ>
皆さんは徹夜をしたことがありますか?
私はあまりしたことがありませんが、よくする人に聞くと同じような答えを聞きます。
『眠くて眠くてまぶたが下がってくる』
なら寝れば?そう問うと、同じような答えが返ってきます。
『でも眠る時間がもったいなくて・・・』
そしてこう答える人には、必ずある話をしています。
憂「ねえ、嗜眠性脳炎って知ってる?」
皆さんは徹夜をしたことがありますか?
私はあまりしたことがありませんが、よくする人に聞くと同じような答えを聞きます。
『眠くて眠くてまぶたが下がってくる』
なら寝れば?そう問うと、同じような答えが返ってきます。
『でも眠る時間がもったいなくて・・・』
そしてこう答える人には、必ずある話をしています。
憂「ねえ、嗜眠性脳炎って知ってる?」
6: 2011/01/25(火) 00:13:53.60
あれは忘れもしない2009年1月15日、澪さんの誕生日でした。
お姉ちゃんはその前の週から風邪気味で、しきりに頭痛を訴えていました。
なかなか治らないので心配し始めていたのですが、その日もとりあえず学校へ行きました。
熱は37度前後で、せきやのどの痛みといった風邪の症状はありません。
ただ頭が痛くぼーっとする症状のみがありました。
そのため私もお姉ちゃんも『風邪だろう』と油断していたのです。
『ただし明日になっても治らなかったら病院に行こう。』
そうお姉ちゃんと約束して、私は自分の教室へと向かいました。
いつもと変わらない愛らしい笑顔で手を振るお姉ちゃん。
それが私の見た最後の元気なお姉ちゃんの笑顔でした。
お姉ちゃんはその前の週から風邪気味で、しきりに頭痛を訴えていました。
なかなか治らないので心配し始めていたのですが、その日もとりあえず学校へ行きました。
熱は37度前後で、せきやのどの痛みといった風邪の症状はありません。
ただ頭が痛くぼーっとする症状のみがありました。
そのため私もお姉ちゃんも『風邪だろう』と油断していたのです。
『ただし明日になっても治らなかったら病院に行こう。』
そうお姉ちゃんと約束して、私は自分の教室へと向かいました。
いつもと変わらない愛らしい笑顔で手を振るお姉ちゃん。
それが私の見た最後の元気なお姉ちゃんの笑顔でした。
8: 2011/01/25(火) 00:16:08.40
桜ヶ丘病院は紬さんのお父さんが出資して設立された新しい病院です。
高校の時で止まった先輩たちやお姉ちゃんの時間。
いつまた動き出してもいいように、高校が見える丘の上にできました。
ピッ ピッ ピッ ピッ
モニタの音4つ、それに煽られるように呼吸音が4つ。
私は静かに息を吐き、ブラインドを開けました。
窓の外、丘の下にはあの思い出の学び舎があります。
高校の時で止まった先輩たちやお姉ちゃんの時間。
いつまた動き出してもいいように、高校が見える丘の上にできました。
ピッ ピッ ピッ ピッ
モニタの音4つ、それに煽られるように呼吸音が4つ。
私は静かに息を吐き、ブラインドを開けました。
窓の外、丘の下にはあの思い出の学び舎があります。
9: 2011/01/25(火) 00:18:32.71
あの学び舎の一角にある音楽室、2009年1月15日午後7時過ぎ。
生徒会帰りの和ちゃんが警備員さんと一緒に音楽室で意識不明の4人を見つけました。
4人ともお茶会をしているそのまんまの状態で、机に突っ伏していたそうです。
梓ちゃんが3時過ぎに部室に寄った時は、まだみんな無事だったそうです。
そのあと梓ちゃんが家の用事で4時前に帰ってからの3時間。
その間お姉ちゃんたちに何があったのかはまだわかっていません。
ただ、その3時間の間、誰も音楽室付近にはいなかったことはわかっています。
そしてもう1つ今の時点で分かっていること、それは・・・
お姉ちゃんたち4人が『嗜眠性脳炎』という特殊な病気にかかっていたことでした。
生徒会帰りの和ちゃんが警備員さんと一緒に音楽室で意識不明の4人を見つけました。
4人ともお茶会をしているそのまんまの状態で、机に突っ伏していたそうです。
梓ちゃんが3時過ぎに部室に寄った時は、まだみんな無事だったそうです。
そのあと梓ちゃんが家の用事で4時前に帰ってからの3時間。
その間お姉ちゃんたちに何があったのかはまだわかっていません。
ただ、その3時間の間、誰も音楽室付近にはいなかったことはわかっています。
そしてもう1つ今の時点で分かっていること、それは・・・
お姉ちゃんたち4人が『嗜眠性脳炎』という特殊な病気にかかっていたことでした。
10: 2011/01/25(火) 00:20:48.71
『脳炎』とは、その名の通り脳が炎症を起こす病気です。
世界的に有名なものとしては『日本脳炎』があります。
症状も種類も多岐にわたりますが、その中でも『嗜眠性脳炎』は少し変わったものです。
症状はただ一つ、『嗜眠』という睡眠以上昏睡以下の『深い眠り』についてしまうこと。
本当にそれだけです。
戦前には世界各所で流行したそうですが、1930年以後の報告は殆どありません。
そのため原因もほとんどわかっておらず、当然明確な治療法もありません。
治療にあたってくれた先生方は非常によく手を尽くしてくれたと思います。
ですがお姉ちゃんたちはあの1月15日からずっと目を覚ますことはありません。
世界的に有名なものとしては『日本脳炎』があります。
症状も種類も多岐にわたりますが、その中でも『嗜眠性脳炎』は少し変わったものです。
症状はただ一つ、『嗜眠』という睡眠以上昏睡以下の『深い眠り』についてしまうこと。
本当にそれだけです。
戦前には世界各所で流行したそうですが、1930年以後の報告は殆どありません。
そのため原因もほとんどわかっておらず、当然明確な治療法もありません。
治療にあたってくれた先生方は非常によく手を尽くしてくれたと思います。
ですがお姉ちゃんたちはあの1月15日からずっと目を覚ますことはありません。
11: 2011/01/25(火) 00:22:59.00
お姉ちゃんたちが入院してから10年が経過しました。
その間、この4人の周りから次々と人が消えていきました。
毎日のように来ていたお父さんとお母さんは1年後からめっきり姿を見せません。
澪さんと律さんの御両親も同様です。
紬さんの御両親はことあるごとに見えていますが、仕事のため間がしばしば空きます。
律さんの弟の聡君だけが唯一定期的に毎週土曜日、お見舞いに来ています。
『平沢せんせ!』
その間、この4人の周りから次々と人が消えていきました。
毎日のように来ていたお父さんとお母さんは1年後からめっきり姿を見せません。
澪さんと律さんの御両親も同様です。
紬さんの御両親はことあるごとに見えていますが、仕事のため間がしばしば空きます。
律さんの弟の聡君だけが唯一定期的に毎週土曜日、お見舞いに来ています。
『平沢せんせ!』
12: 2011/01/25(火) 00:25:10.07
振り返ると、スーツ姿の梓ちゃんが病室の入り口に立っていました。
梓ちゃんは化学系の大学から薬学部に編入して、今は大学院にいるそうです。
梓「今日も先輩たちは元気?」
そういいながら彼女は4つのベッドをぐるりと見回しました。
憂「うん。相変わらずみんなお寝坊さんだけどね。」
梓「そっか・・・まったく、唯先輩だけでなくムギ先輩たちまで!」
彼女は高校時代と同じように口を膨らませて両手を腰に当てました。
その時、私はある異変に気付いたのです。
梓ちゃんは化学系の大学から薬学部に編入して、今は大学院にいるそうです。
梓「今日も先輩たちは元気?」
そういいながら彼女は4つのベッドをぐるりと見回しました。
憂「うん。相変わらずみんなお寝坊さんだけどね。」
梓「そっか・・・まったく、唯先輩だけでなくムギ先輩たちまで!」
彼女は高校時代と同じように口を膨らませて両手を腰に当てました。
その時、私はある異変に気付いたのです。
14: 2011/01/25(火) 00:27:25.68
憂「梓ちゃん、指輪は?」
先々週あった時にはつけていた婚約指輪が、今日の彼女の細い指にはありません。
彼女は『気づかれちゃったか』とつぶやいてツインテールを翻しました。
梓「婚約なんて、まだ私には早すぎるよ。」
そしてお姉ちゃんの暖かい手を取って呟きました。
梓「先輩たちがこの状態なのに、誰が結婚なんてするもんですか。」
憂「梓ちゃん・・・」
梓「大体、憂だって同じ考えなんでしょ?」
憂「うっ」
先々週あった時にはつけていた婚約指輪が、今日の彼女の細い指にはありません。
彼女は『気づかれちゃったか』とつぶやいてツインテールを翻しました。
梓「婚約なんて、まだ私には早すぎるよ。」
そしてお姉ちゃんの暖かい手を取って呟きました。
梓「先輩たちがこの状態なのに、誰が結婚なんてするもんですか。」
憂「梓ちゃん・・・」
梓「大体、憂だって同じ考えなんでしょ?」
憂「うっ」
15: 2011/01/25(火) 00:29:36.94
梓「っと、冗談はここまでだね。ほら、これ。」
梓ちゃんは私にA4サイズのパンフレットと名札を渡してくれました。
梓「来週企業向けカンファレンスがあるんだけど、そこでいい発表があるの。」
彼女はそういいながら表紙右下のショートカットの女性の写真をつつきました。
憂「和ち・・・さん!」
梓「K-lD-Y1127の臨床試験が許可されるんだ。後で和先輩にもお礼言っとかなきゃね。」
大学を出て厚生省の役人になった和ちゃんは、その立場から私たちを助けてくれています。
こうして新薬開発や試験の許可を出してくれるのもその一環です。
忙しいため滅多にお見舞いには来てくれませんが、非常に頼もしい存在です。
梓ちゃんは私にA4サイズのパンフレットと名札を渡してくれました。
梓「来週企業向けカンファレンスがあるんだけど、そこでいい発表があるの。」
彼女はそういいながら表紙右下のショートカットの女性の写真をつつきました。
憂「和ち・・・さん!」
梓「K-lD-Y1127の臨床試験が許可されるんだ。後で和先輩にもお礼言っとかなきゃね。」
大学を出て厚生省の役人になった和ちゃんは、その立場から私たちを助けてくれています。
こうして新薬開発や試験の許可を出してくれるのもその一環です。
忙しいため滅多にお見舞いには来てくれませんが、非常に頼もしい存在です。
16: 2011/01/25(火) 00:31:45.58
梓「L-DOPAも反応軽微、だけど筋痙攣はなくなって自律運動ができた。だから」
憂「うん、今度こそ、奇跡が起こる。」
嗜眠性脳炎によって寝たきりになった人の大半は、パーキンソン症候群を発症しています。
特に筋痙攣は顕著で、お姉ちゃんたちも日や時間によっては痙攣で体が動かなくなります。
これを抑えるための薬品の一つに『L-DOPA』があります。
L-DOPAはもともとパーキンソン病の薬品として開発されました。
その効果の一つである筋痙攣抑制により嗜眠から脱却できるのではないか。
かつてそう考えた医師がいました。
そして、奇跡が起こったのです。
憂「うん、今度こそ、奇跡が起こる。」
嗜眠性脳炎によって寝たきりになった人の大半は、パーキンソン症候群を発症しています。
特に筋痙攣は顕著で、お姉ちゃんたちも日や時間によっては痙攣で体が動かなくなります。
これを抑えるための薬品の一つに『L-DOPA』があります。
L-DOPAはもともとパーキンソン病の薬品として開発されました。
その効果の一つである筋痙攣抑制により嗜眠から脱却できるのではないか。
かつてそう考えた医師がいました。
そして、奇跡が起こったのです。
17: 2011/01/25(火) 00:33:54.55
L-DOPAを投与された人の中に回復をした患者が現れたのです。
意識を完全に取り戻し、自律運動が可能になったり・・・。
その奇跡にはもちろん個人差があります。
しかし、報告では、全くと言っていいほど効果のなかった例もありました。
残念ながらお姉ちゃんたちもその例になってしまったのです。
意識を完全に取り戻し、自律運動が可能になったり・・・。
その奇跡にはもちろん個人差があります。
しかし、報告では、全くと言っていいほど効果のなかった例もありました。
残念ながらお姉ちゃんたちもその例になってしまったのです。
18: 2011/01/25(火) 00:36:04.74
しかしただで起きる気はさらさらありません。
私は紬さんのお父さんの会社と梓ちゃんに協力を要請。
すぐさま投与時のデータを提供して新薬の開発を開始しました。
そして先月、とうとう新薬が完成したと梓ちゃんから報告がありました。
暫定的な名前は『K-lD-Y1127』。
最後の識別番号Y1127は、偶然か運命か、お姉ちゃんの名前と誕生日になりました。
『あずにゃーん、うーいー、おこしてー』
薬の完成を聞いたとき、眠っているはずのお姉ちゃんの声が聞こえた気がしました。
憂「待ってて、お姉ちゃん。あとちょっとだから。」
私はお姉ちゃんの寝顔にそう誓ったのです。
私は紬さんのお父さんの会社と梓ちゃんに協力を要請。
すぐさま投与時のデータを提供して新薬の開発を開始しました。
そして先月、とうとう新薬が完成したと梓ちゃんから報告がありました。
暫定的な名前は『K-lD-Y1127』。
最後の識別番号Y1127は、偶然か運命か、お姉ちゃんの名前と誕生日になりました。
『あずにゃーん、うーいー、おこしてー』
薬の完成を聞いたとき、眠っているはずのお姉ちゃんの声が聞こえた気がしました。
憂「待ってて、お姉ちゃん。あとちょっとだから。」
私はお姉ちゃんの寝顔にそう誓ったのです。
19: 2011/01/25(火) 00:38:26.75
2019年4月30日、都内の某医大の講堂で新薬についての合同発表会がありました。
20ある項目のうち最後の項目で、その薬は発表されました。
和「続いて最後に、ドーパミン補充と脳病変抑制のための新薬を発表します。」
司会役の和ちゃんはそう言うと、紬さんのお父さんの会社の人にマイクを渡しました。
成分、効果、想定される副作用、使用量目安・・・。
諸説明を一通りおさらいしながら聞いた後、再び和ちゃんがマイクを取りました。
20ある項目のうち最後の項目で、その薬は発表されました。
和「続いて最後に、ドーパミン補充と脳病変抑制のための新薬を発表します。」
司会役の和ちゃんはそう言うと、紬さんのお父さんの会社の人にマイクを渡しました。
成分、効果、想定される副作用、使用量目安・・・。
諸説明を一通りおさらいしながら聞いた後、再び和ちゃんがマイクを取りました。
20: 2011/01/25(火) 00:40:42.15
和「新薬K-lD-Y1127は、これから4人の女性に投与される予定です。」
私はハッとして壇上を見上げました。
和「ここからは私事になりますが、この4人は私の高校時代の同級生でした。」
和「今から10年3か月前、4人は突然嗜眠性脳炎を発症。当時わずか17歳でした。」
和「その倒れた4人を見つけたのは私です。部室で、仲良く4人で眠りについていました。」
和「その時から10年間、私は彼女たちの『目覚め』を待ち続けています。」
和「既にL-DOPAでの効果が薄かったため、今回も効果が顕著になるとは限りません。」
和「しかしそれでも私は信じています。」
和「彼女たちの『目覚め』を。」
私はハッとして壇上を見上げました。
和「ここからは私事になりますが、この4人は私の高校時代の同級生でした。」
和「今から10年3か月前、4人は突然嗜眠性脳炎を発症。当時わずか17歳でした。」
和「その倒れた4人を見つけたのは私です。部室で、仲良く4人で眠りについていました。」
和「その時から10年間、私は彼女たちの『目覚め』を待ち続けています。」
和「既にL-DOPAでの効果が薄かったため、今回も効果が顕著になるとは限りません。」
和「しかしそれでも私は信じています。」
和「彼女たちの『目覚め』を。」
21: 2011/01/25(火) 00:42:59.35
その日の夜、私は担当医に無理を言ってお姉ちゃんたちの試験に立ち会いました。
投薬をするのは梓ちゃんです。
オレンジジュースに混ぜて、まずは入り口側の律さんから飲ませました。
オレンジジュースを少しずつ口に流し込むと、1分ほどで飲み干しました。
そして続けて向かいの澪さん、窓際はす向かいの紬さんときて、最後にお姉ちゃんです。
お姉ちゃんへの投薬は、私がやりました。
甘いものが大好きなお姉ちゃんは、律さんよりも早くジュースを飲んでくれました。
投薬をするのは梓ちゃんです。
オレンジジュースに混ぜて、まずは入り口側の律さんから飲ませました。
オレンジジュースを少しずつ口に流し込むと、1分ほどで飲み干しました。
そして続けて向かいの澪さん、窓際はす向かいの紬さんときて、最後にお姉ちゃんです。
お姉ちゃんへの投薬は、私がやりました。
甘いものが大好きなお姉ちゃんは、律さんよりも早くジュースを飲んでくれました。
22: 2011/01/25(火) 00:45:11.78
それから黙って見つめること10分。
まず和ちゃんがゆっくりと口を開きました。
和「確かL-DOPAはかなり早く効果が出たはずだけど、これはどうなの?」
梓「ベースはL-DOPAですし、動物実験でも同じように比較的早く効果が出ました。」
憂「前回一番反応が早くて大きかった律さんでも一晩かかりましたね。」
和「そうなの・・・なら、待つしかないわね。」
和ちゃんは携帯を取り出し、ボタンを2回だけ押して耳に宛てました。
和「もしもし?私よ。曽我部局長に「明日は会議に直行直帰」って伝えといて。それじゃ。」
まず和ちゃんがゆっくりと口を開きました。
和「確かL-DOPAはかなり早く効果が出たはずだけど、これはどうなの?」
梓「ベースはL-DOPAですし、動物実験でも同じように比較的早く効果が出ました。」
憂「前回一番反応が早くて大きかった律さんでも一晩かかりましたね。」
和「そうなの・・・なら、待つしかないわね。」
和ちゃんは携帯を取り出し、ボタンを2回だけ押して耳に宛てました。
和「もしもし?私よ。曽我部局長に「明日は会議に直行直帰」って伝えといて。それじゃ。」
23: 2011/01/25(火) 00:47:26.68
携帯をしまうと、彼女は横でチラチラと律さんの方を見る聡君に声をかけました。
和「あなたたち、明日も研究室あるんでしょ?」
聡「でも姉ちゃんが・・・」
和「大丈夫。目を覚ましたら一番に呼んであげるから。」
聡君は少し渋っていましたが、少しして一礼し梓ちゃんと一緒に部屋を出ていきました。
そのあと製薬会社の研究員も一旦退席して、部屋には私と和ちゃんだけが残りました。
4人分の寝息。4人分の計器の音。
面会時間はとうに過ぎた夜の病院は、物音一つしない闇です。
和「あなたたち、明日も研究室あるんでしょ?」
聡「でも姉ちゃんが・・・」
和「大丈夫。目を覚ましたら一番に呼んであげるから。」
聡君は少し渋っていましたが、少しして一礼し梓ちゃんと一緒に部屋を出ていきました。
そのあと製薬会社の研究員も一旦退席して、部屋には私と和ちゃんだけが残りました。
4人分の寝息。4人分の計器の音。
面会時間はとうに過ぎた夜の病院は、物音一つしない闇です。
24: 2011/01/25(火) 00:49:44.95
憂「和ちゃん」
私は呼び方も口調も元に戻して和ちゃんを呼びながら、そっと病室の戸を閉めました。
和「どうしたの、憂?」
憂「ありがとう。」
和ちゃんはゆっくりと立ち上がり、律さんの横に移動して座りました。
和「そんな事言われるようなことはしてないわ。」
そういいながら律さんの前髪をかき分けました。
和「私がしたのは当たり前の努力と当たり前の行動だけなんだから。」
私は呼び方も口調も元に戻して和ちゃんを呼びながら、そっと病室の戸を閉めました。
和「どうしたの、憂?」
憂「ありがとう。」
和ちゃんはゆっくりと立ち上がり、律さんの横に移動して座りました。
和「そんな事言われるようなことはしてないわ。」
そういいながら律さんの前髪をかき分けました。
和「私がしたのは当たり前の努力と当たり前の行動だけなんだから。」
25: 2011/01/25(火) 00:52:14.28
律は夢を見ていた。
軽音部の部室に澪たちと4人で座り、いつもの放課後ティータイム。
そこへ梓が飛び込んできて、定位置に着席。
紬が手際よくお茶とお菓子を準備。
みんなでティータイムなんてあの日以来だな。
澪「ん?律、どうかしたのか?」
紬「りっちゃんも風邪気味なのね。顔色が悪いわ。」
覗き込んでくるムギの顔色もまた悪い。
律(そうだ、これはあの日の・・・)
律は2009年1月15日を思い出していたのだ。
軽音部の部室に澪たちと4人で座り、いつもの放課後ティータイム。
そこへ梓が飛び込んできて、定位置に着席。
紬が手際よくお茶とお菓子を準備。
みんなでティータイムなんてあの日以来だな。
澪「ん?律、どうかしたのか?」
紬「りっちゃんも風邪気味なのね。顔色が悪いわ。」
覗き込んでくるムギの顔色もまた悪い。
律(そうだ、これはあの日の・・・)
律は2009年1月15日を思い出していたのだ。
26: 2011/01/25(火) 00:54:23.34
<律ノカタリ>
家の用事で早めに梓が帰った直後だった。
唯「ん~、りっちゃんも頭痛いの~?」
そういう唯もさっき澪に分けてもらった冷えぴたをおでこに貼っている。
澪「人の誕生日だってのにそろいもそろって風邪ってなぁ。」
律(そうだ、この後だ)
律(まずは澪だった)
澪「まっ・・・たく・・・あ・・・れ・・・?」
彼女の体が不自然に上下に揺れたかと思うと、そのままガタンと机に突っ伏してしまった。
家の用事で早めに梓が帰った直後だった。
唯「ん~、りっちゃんも頭痛いの~?」
そういう唯もさっき澪に分けてもらった冷えぴたをおでこに貼っている。
澪「人の誕生日だってのにそろいもそろって風邪ってなぁ。」
律(そうだ、この後だ)
律(まずは澪だった)
澪「まっ・・・たく・・・あ・・・れ・・・?」
彼女の体が不自然に上下に揺れたかと思うと、そのままガタンと机に突っ伏してしまった。
27: 2011/01/25(火) 00:56:32.65
紬「ちょっと、澪ちゃん!?」
律(すぐにムギが)
歩き出そうとした紬を襲ったのは強烈なめまいを伴う眠気。
病魔が操る狂気的な眠気に耐え切れず、彼女も椅子に座って机に突っ伏してしまった。
律(もう既に唯も)
唯「あずにゃ~ん、よしよ~し・・・」
寝言はすぐに消え、3人は深い眠りについた。
律(すぐにムギが)
歩き出そうとした紬を襲ったのは強烈なめまいを伴う眠気。
病魔が操る狂気的な眠気に耐え切れず、彼女も椅子に座って机に突っ伏してしまった。
律(もう既に唯も)
唯「あずにゃ~ん、よしよ~し・・・」
寝言はすぐに消え、3人は深い眠りについた。
28: 2011/01/25(火) 00:58:52.91
事の異変にはさすがの律も気付いていたが、既に遅かった。
律の視界がぐにゃりと曲がり、強烈なめまいが彼女を襲った。
律(なん・・・だ・・・)
何を言うこともかなわず、彼女もまた澪と同じように机に突っ伏して眠った。
彼女の意識はそれ以来10年以上、闇の中をさまよい続けていたのだった。
律の視界がぐにゃりと曲がり、強烈なめまいが彼女を襲った。
律(なん・・・だ・・・)
何を言うこともかなわず、彼女もまた澪と同じように机に突っ伏して眠った。
彼女の意識はそれ以来10年以上、闇の中をさまよい続けていたのだった。
29: 2011/01/25(火) 01:01:03.61
『・・・だね。』
『うん。・・・だから、頼むよ。』
『それじゃあ朝ごはん、いこうか。』
遠くで声がする。
まあ、それはいい。
10年間、ここまでは何度も繰り返してきたことを覚えている。
でもこの先、声が出ることは
律「い・・・ちゃ」
えっ?
『うん。・・・だから、頼むよ。』
『それじゃあ朝ごはん、いこうか。』
遠くで声がする。
まあ、それはいい。
10年間、ここまでは何度も繰り返してきたことを覚えている。
でもこの先、声が出ることは
律「い・・・ちゃ」
えっ?
30: 2011/01/25(火) 01:03:12.44
憂梓「律さん(先輩)!?」
目なんか開くはずが・・・あったよ!?
何度か瞬きをしてみると、少しずつ目の前がはっきりしてくる。
覗き込んでいるのはスーツ姿のツインテールと白衣姿のポニーテール。
憂「律さん!?私です、憂です。わかりますか!?」
律「あはは、わかってる・・・よ。ずっと私・・・の世話をしてくれてたね。」
梓「律先輩!私のこともわかりますか!?」
律「忘れるわけないじゃないか。私たちのために薬を作って・・・くれたんだよな?」
梓「先輩・・・」
目なんか開くはずが・・・あったよ!?
何度か瞬きをしてみると、少しずつ目の前がはっきりしてくる。
覗き込んでいるのはスーツ姿のツインテールと白衣姿のポニーテール。
憂「律さん!?私です、憂です。わかりますか!?」
律「あはは、わかってる・・・よ。ずっと私・・・の世話をしてくれてたね。」
梓「律先輩!私のこともわかりますか!?」
律「忘れるわけないじゃないか。私たちのために薬を作って・・・くれたんだよな?」
梓「先輩・・・」
31: 2011/01/25(火) 01:05:21.16
<憂ノカタリ>
律「それにな、私だけじゃないと思うんだ。」
憂「えっ?」
振り返ると和ちゃんが声を上げていました。
和「澪!私よ、和よ!」
澪「のど・・・か・・・」
反対の方からは、もっと明確な声が聞こえてきました。
紬「憂ちゃん、どこ?目はまだ見えないけど、いるんでしょう!?」
澪さんと紬さんも目を覚ましました。
なら、ならば、
律「それにな、私だけじゃないと思うんだ。」
憂「えっ?」
振り返ると和ちゃんが声を上げていました。
和「澪!私よ、和よ!」
澪「のど・・・か・・・」
反対の方からは、もっと明確な声が聞こえてきました。
紬「憂ちゃん、どこ?目はまだ見えないけど、いるんでしょう!?」
澪さんと紬さんも目を覚ましました。
なら、ならば、
33: 2011/01/25(火) 01:07:30.13
唯「うーいー」
憂「お、お姉ちゃん!!!」
私はお姉ちゃんの肩に抱きつき、顔をうずめました。
唯「迷惑かけちゃった・・・ごめん・・・」
そんなことは気にしません。
この10年を捧げた私の、私たちのすべてはこの一瞬のためにありました。
憂「おはよう、お姉ちゃん!」
唯「おはよ、憂」
憂「お、お姉ちゃん!!!」
私はお姉ちゃんの肩に抱きつき、顔をうずめました。
唯「迷惑かけちゃった・・・ごめん・・・」
そんなことは気にしません。
この10年を捧げた私の、私たちのすべてはこの一瞬のためにありました。
憂「おはよう、お姉ちゃん!」
唯「おはよ、憂」
34: 2011/01/25(火) 01:09:43.52
<律ノカタリ>
聡「姉ちゃん!」
律「よぉ、聡!」
夕方、大分目も声も元気になった私たちは玄関まで車いすで聡を出迎えることにした。
さすがに足腰は弱って立たないので車いすになったけど、これで十分。
10年寝てたんだから、仕方ないよな。
おまけに三年寝太郎どころか十年寝律なんだから、出迎えの一つもしなきゃ罰当たりだ。
そう思って玄関に行くと、案の定私たちの周りには人垣。
まあ、これも仕方ないか。
聡「姉ちゃん!」
律「よぉ、聡!」
夕方、大分目も声も元気になった私たちは玄関まで車いすで聡を出迎えることにした。
さすがに足腰は弱って立たないので車いすになったけど、これで十分。
10年寝てたんだから、仕方ないよな。
おまけに三年寝太郎どころか十年寝律なんだから、出迎えの一つもしなきゃ罰当たりだ。
そう思って玄関に行くと、案の定私たちの周りには人垣。
まあ、これも仕方ないか。
35: 2011/01/25(火) 01:11:52.61
聡「姉ちゃん!姉ちゃんおかえり!!!」
人前もはばからず泣いて抱きついてくる弟に、いささか私の涙腺も緩んだ。
いやはや、年を取ったのは事実らしい。
でも聡だってもう立派な成人のはずだ。
律「お前ももう25になるんだから、人前でやすやす泣くんじゃない!」
聡「姉ちゃんだって・・・28にもなって乳母車なんか乗って泣きやがって・・・」
律「言うようになったな、この野郎っ!」
拳骨を軽くくらわしたつもりだったけど、力なんて入りゃしない。
なっさけないけど、仕方ないね。
人前もはばからず泣いて抱きついてくる弟に、いささか私の涙腺も緩んだ。
いやはや、年を取ったのは事実らしい。
でも聡だってもう立派な成人のはずだ。
律「お前ももう25になるんだから、人前でやすやす泣くんじゃない!」
聡「姉ちゃんだって・・・28にもなって乳母車なんか乗って泣きやがって・・・」
律「言うようになったな、この野郎っ!」
拳骨を軽くくらわしたつもりだったけど、力なんて入りゃしない。
なっさけないけど、仕方ないね。
36: 2011/01/25(火) 01:14:03.61
聡「父ちゃんと母ちゃんも明日朝には着くよ。姉ちゃんのこと電話で教えたら」
律「あー、そのことなんだけどさ。」
私は昼前から心に決めていたことをはっきりと弟に告げた。
聡「ん?どうしたの?」
律「『あの人たち』には会いたくないんだ。」
当然ながら、聡の顔が曇った。
いや、曇ったというより、驚きのあまり晴れ渡ってしまった、が正しい表現かもしれない。
律「あー、そのことなんだけどさ。」
私は昼前から心に決めていたことをはっきりと弟に告げた。
聡「ん?どうしたの?」
律「『あの人たち』には会いたくないんだ。」
当然ながら、聡の顔が曇った。
いや、曇ったというより、驚きのあまり晴れ渡ってしまった、が正しい表現かもしれない。
38: 2011/01/25(火) 01:16:17.16
律「確かに引っ越した小倉からは遠いかもしれないけど、年に1度くらいしか来ない。」
律「医療費は殆ど補助金任せで手続きも憂ちゃんと梓に押し付けて。」
律「身の回りの世話は全部病院と聡と憂ちゃんたち任せで。」
律「そんな人たちを親ともう一度呼ぶには、少し考える時間がほしいんだ。」
聡「それは・・・」
父さんと母さんが私の回復に否定的だったのは何年も前から知っていた。
お盆休み以外にお見舞いに来てくれていないのも知っていた。
お盆休みですら1時間もいないのも知っていた。
それを一番理解していたのが私よりも聡だというのも知っていた。
律「医療費は殆ど補助金任せで手続きも憂ちゃんと梓に押し付けて。」
律「身の回りの世話は全部病院と聡と憂ちゃんたち任せで。」
律「そんな人たちを親ともう一度呼ぶには、少し考える時間がほしいんだ。」
聡「それは・・・」
父さんと母さんが私の回復に否定的だったのは何年も前から知っていた。
お盆休み以外にお見舞いに来てくれていないのも知っていた。
お盆休みですら1時間もいないのも知っていた。
それを一番理解していたのが私よりも聡だというのも知っていた。
40: 2011/01/25(火) 01:18:28.14
澪「私もそうしたんだ、聡。」
後ろにいる澪もそう言った。
澪「うちの両親も1年に2回か3回くらいしか来てくれない。」
澪「たまに来たと思ったら法律だの書類だのを憂に押し付けていく。」
澪「私の意識が全くないものと思っているんだろうけどな」
澪「仕事がうまくいかないのを私のせいにして私の前で愚痴ったのには、正直絶望したよ。」
梓「澪先輩・・・」
後ろにいる澪もそう言った。
澪「うちの両親も1年に2回か3回くらいしか来てくれない。」
澪「たまに来たと思ったら法律だの書類だのを憂に押し付けていく。」
澪「私の意識が全くないものと思っているんだろうけどな」
澪「仕事がうまくいかないのを私のせいにして私の前で愚痴ったのには、正直絶望したよ。」
梓「澪先輩・・・」
42: 2011/01/25(火) 01:20:42.93
唯「私はさっきお父さんとお母さんと電話でお話したよ。」
唯はいつもの笑顔と口調で私たちの前に進み出てきた。
唯「私は会いたかったんだけど、憂がまだ気にしてるみたいだからね。」
憂「私はもう両親と絶縁していますから。」
それは話に聞いていた。
高校を出た時点で薄情さに怒った憂ちゃんは両親を前にして絶縁を宣言。
医学部へは奨学金で通い、卒業してムギのお父さんの伝手でこの病院に入ったらしい。
本当に大したものだ、と思う。
唯はいつもの笑顔と口調で私たちの前に進み出てきた。
唯「私は会いたかったんだけど、憂がまだ気にしてるみたいだからね。」
憂「私はもう両親と絶縁していますから。」
それは話に聞いていた。
高校を出た時点で薄情さに怒った憂ちゃんは両親を前にして絶縁を宣言。
医学部へは奨学金で通い、卒業してムギのお父さんの伝手でこの病院に入ったらしい。
本当に大したものだ、と思う。
44: 2011/01/25(火) 01:22:54.03
紬「私はさっき両親と会ったわ。」
律「・・・あのお昼の後のいなかった時間か。」
ムギは静かにうなずいた。
紬「父もりっちゃんや澪ちゃんの御両親の態度を知っていたから、別室で静かにね。」
紬「それに、みんなの前で泣くのはちょっと恥ずかしかったし。」
紬「父も母もみなさん『とご家族』によろしくって。」
私はまだ涙を流し続ける聡を見上げて、ため息をついてしまった。
律「『ご家族』、ね。」
聡は右腕で涙をぬぐい、『家族だよ』とつぶやいた。
律「・・・あのお昼の後のいなかった時間か。」
ムギは静かにうなずいた。
紬「父もりっちゃんや澪ちゃんの御両親の態度を知っていたから、別室で静かにね。」
紬「それに、みんなの前で泣くのはちょっと恥ずかしかったし。」
紬「父も母もみなさん『とご家族』によろしくって。」
私はまだ涙を流し続ける聡を見上げて、ため息をついてしまった。
律「『ご家族』、ね。」
聡は右腕で涙をぬぐい、『家族だよ』とつぶやいた。
46: 2011/01/25(火) 01:25:03.07
翌朝になると、弱っていた足も少しは役に立つようになってきた。
とはいえ、まだ支えありでも10秒以上立っていることはできない。
でも足首を自由に曲げることはできるようになった。
手は比較的自由に動く。
ならば話は早い。
律「憂ちゃん、頼みがあんだけど。」
仕事の合間に病室に来た憂ちゃんに、私はあるものを耳打ちで注文した。
彼女はパッと顔を輝かせて、病室を出て行った。
とはいえ、まだ支えありでも10秒以上立っていることはできない。
でも足首を自由に曲げることはできるようになった。
手は比較的自由に動く。
ならば話は早い。
律「憂ちゃん、頼みがあんだけど。」
仕事の合間に病室に来た憂ちゃんに、私はあるものを耳打ちで注文した。
彼女はパッと顔を輝かせて、病室を出て行った。
48: 2011/01/25(火) 01:27:11.65
1時間ほどして息を切らしながら病室に飛び込んできたのは梓だった。
唯「お~、あずにゃ・・・ん!?」
梓の背中に背負われた黒いケースを見た唯は、手に持っていたダンベルを床に落とした。
梓「唯先輩!忘れ物ですよ!」
彼女はギターケースをおろし、ポケットから2つの小さい紙袋を取り出した。
梓「こっちの袋は唯先輩、こっちの袋は澪先輩です!」
2人のベッドに置くと、今度は聡が部屋の外から四角く長い袋を持って現れた。
唯「お~、あずにゃ・・・ん!?」
梓の背中に背負われた黒いケースを見た唯は、手に持っていたダンベルを床に落とした。
梓「唯先輩!忘れ物ですよ!」
彼女はギターケースをおろし、ポケットから2つの小さい紙袋を取り出した。
梓「こっちの袋は唯先輩、こっちの袋は澪先輩です!」
2人のベッドに置くと、今度は聡が部屋の外から四角く長い袋を持って現れた。
49: 2011/01/25(火) 01:29:28.51
紬「聡君!?」
聡はその袋をムギの食事用のテーブルに乗せた。
梓「お二人の弦は、私のおごりです。早く張り替えてください!」
聡「キーボードはお母様から預かりました。定期的にお手入れしていたそうですよ?」
3人は喜んでそれぞれの楽器を広げ始めた。
そうとくれば
律「おい聡、わかってんだろうな?」
聡「はいはい。」
聡は笑顔で2本の使い古したスティックを差し出してきた。
聡「10年間、ずっととっといたんだからな。」
聡はその袋をムギの食事用のテーブルに乗せた。
梓「お二人の弦は、私のおごりです。早く張り替えてください!」
聡「キーボードはお母様から預かりました。定期的にお手入れしていたそうですよ?」
3人は喜んでそれぞれの楽器を広げ始めた。
そうとくれば
律「おい聡、わかってんだろうな?」
聡「はいはい。」
聡は笑顔で2本の使い古したスティックを差し出してきた。
聡「10年間、ずっととっといたんだからな。」
50: 2011/01/25(火) 01:31:39.29
<憂ノカタリ>
次の日から、4人は1日1時間だけ病院の講堂を使って楽器を演奏し始めました。
全員車いす必須で、律さんだけは足首も使うため椅子着用で、
梓ちゃんも夕方になると必ず病院に来て参加する形です。
5人そろってみると、あのころの放課後ティータイムがそのまま戻ってきたみたいです。
背が伸びたのはお姉ちゃんと紬さんだけで、それも車いすの上ではほぼわかりません。
髪型も私や梓ちゃんが整えていたためあまり変わりありません。
27歳になってすこーしだけ大人の雰囲気が濃くなった気はします。
でも楽器を持って揃ったお姉ちゃんたちの時計は、まだ殆ど進んでいないのです。
次の日から、4人は1日1時間だけ病院の講堂を使って楽器を演奏し始めました。
全員車いす必須で、律さんだけは足首も使うため椅子着用で、
梓ちゃんも夕方になると必ず病院に来て参加する形です。
5人そろってみると、あのころの放課後ティータイムがそのまま戻ってきたみたいです。
背が伸びたのはお姉ちゃんと紬さんだけで、それも車いすの上ではほぼわかりません。
髪型も私や梓ちゃんが整えていたためあまり変わりありません。
27歳になってすこーしだけ大人の雰囲気が濃くなった気はします。
でも楽器を持って揃ったお姉ちゃんたちの時計は、まだ殆ど進んでいないのです。
52: 2011/01/25(火) 01:33:49.62
<律ノカタリ>
意識が戻って1週間ほどして、病室に見覚えのある顔がやってきた。
さ「やっほー!みんな、おめでとう!」
少し年を取った感じはするけど、やっぱりさわちゃんはさわちゃんだった。
あの頃のように美人で、あの頃より少し大人の魅力が増えたように感じる。
そろそろこの質問も大丈夫だろう。
律「さわちゃんけっこ「それ以上言ったら夢の世界に送り返すわよ」」
なるほど、それは御免こうむりたい。
意識が戻って1週間ほどして、病室に見覚えのある顔がやってきた。
さ「やっほー!みんな、おめでとう!」
少し年を取った感じはするけど、やっぱりさわちゃんはさわちゃんだった。
あの頃のように美人で、あの頃より少し大人の魅力が増えたように感じる。
そろそろこの質問も大丈夫だろう。
律「さわちゃんけっこ「それ以上言ったら夢の世界に送り返すわよ」」
なるほど、それは御免こうむりたい。
53: 2011/01/25(火) 01:35:58.30
さ「あなたたちが倒れてから、軽音部がどうなったと思う?」
みんなが一様に静かになった。
澪「廃部、ですよね?」
澪が言うと、唯もムギも頷いた。
するとさわちゃんはにやりと笑みを浮かべた。
さ「あなたたち、これ、なんだと思う?」
さわちゃんが私たちの前にかざして見せたのは、一通の卒業証書だった。
唯「わ!わ!これ見て!私の卒業証書だっ!!!」
みんなが一様に静かになった。
澪「廃部、ですよね?」
澪が言うと、唯もムギも頷いた。
するとさわちゃんはにやりと笑みを浮かべた。
さ「あなたたち、これ、なんだと思う?」
さわちゃんが私たちの前にかざして見せたのは、一通の卒業証書だった。
唯「わ!わ!これ見て!私の卒業証書だっ!!!」
54: 2011/01/25(火) 01:38:17.59
それは唯の卒業証書。
でもよく見ると、肝心の日付が書いていない。
唯「あれ?でもこれ日付が・・・」
さ「そうよ。あなたたちは特例で無期限休学になってたの。だからまだ在校生なのよ。」
律「てことは?」
澪「部員はまだ4人いる?」
さ「ええ、まだ退部届は受け取ってないわ。」
紬「ということは、まだ部活自体は存続している、と?」
さ「ええ、その通りよ。」
でもよく見ると、肝心の日付が書いていない。
唯「あれ?でもこれ日付が・・・」
さ「そうよ。あなたたちは特例で無期限休学になってたの。だからまだ在校生なのよ。」
律「てことは?」
澪「部員はまだ4人いる?」
さ「ええ、まだ退部届は受け取ってないわ。」
紬「ということは、まだ部活自体は存続している、と?」
さ「ええ、その通りよ。」
55: 2011/01/25(火) 01:40:27.87
さ「活動中の部員はいないけど、あなたたちがいつ戻ってもいいようにしといたの。」
さ「梓ちゃんと一緒に、10年間、ずっと軽音部を守り続けてきたのよ。」
律「なんと!」
唯「さすがさわちゃん!」
さ「でも私は今年で桜高からいなくなるの。」
唯律澪紬「えっ!?」
さ「顧問がいなくなるから、本当に今年でこの部活はおしまい。」
さ「梓ちゃんと一緒に、10年間、ずっと軽音部を守り続けてきたのよ。」
律「なんと!」
唯「さすがさわちゃん!」
さ「でも私は今年で桜高からいなくなるの。」
唯律澪紬「えっ!?」
さ「顧問がいなくなるから、本当に今年でこの部活はおしまい。」
57: 2011/01/25(火) 01:42:38.82
さ「だから、ね。最後に、卒業証書を受け取るよりも前に、あなたたちの手で締めてほしいの。」
さ「伝説の『放課後ティータイム』、桜高軽音部を!」
さ「伝説の『放課後ティータイム』、桜高軽音部を!」
59: 2011/01/25(火) 01:45:00.39
<憂ノカタリ>
お姉ちゃんたちはその日から毎日2時間の練習をしました。
来る日も来る日も、まだ強張っている手や指をほぐしながら、マメをつぶしながら。
それでも、頑張っているお姉ちゃんを見るのは本当に楽しかったのです。
だけど、現実は容赦なく、足音も立てずに迫ってきていたのです。
お姉ちゃんたちはその日から毎日2時間の練習をしました。
来る日も来る日も、まだ強張っている手や指をほぐしながら、マメをつぶしながら。
それでも、頑張っているお姉ちゃんを見るのは本当に楽しかったのです。
だけど、現実は容赦なく、足音も立てずに迫ってきていたのです。
60: 2011/01/25(火) 01:47:16.05
<律ノカタリ>
いつも通り練習が終わって病室に戻る途中、澪がつぶやいた。
澪「あのさ、みんな」
みんな看護師さんの手を止めさせて澪の方を振り返った。
澪「その、手が、さ」
私は澪の右手を見て震えてしまった。
いや、それ以上に震えていたのは澪の右手だった。
澪の右手は赤いひざ掛けの上で小刻みに、断続的に震えている。
それは明らかに意識的なものではなかった。
いつも通り練習が終わって病室に戻る途中、澪がつぶやいた。
澪「あのさ、みんな」
みんな看護師さんの手を止めさせて澪の方を振り返った。
澪「その、手が、さ」
私は澪の右手を見て震えてしまった。
いや、それ以上に震えていたのは澪の右手だった。
澪の右手は赤いひざ掛けの上で小刻みに、断続的に震えている。
それは明らかに意識的なものではなかった。
62: 2011/01/25(火) 01:50:03.28
澪「なあ、みんな、なんか言ってよ。私の手、演奏疲れのせいだよな?」
私は即座にそう考えることにした。
律「そ、そうだよ!澪は本当に心配性だな。28になるんだからもっと落ち着こうぜ!」
でももう私にもみんなにもわかっていることだった。
悪魔の足音は再びそこまで迫っていたのだ。
私は即座にそう考えることにした。
律「そ、そうだよ!澪は本当に心配性だな。28になるんだからもっと落ち着こうぜ!」
でももう私にもみんなにもわかっていることだった。
悪魔の足音は再びそこまで迫っていたのだ。
63: 2011/01/25(火) 01:53:08.32
<憂ノカタリ>
K-lD-Y1127はベースとなったL-DOPA系と同じく習慣性を持っていました。
そもそも抑制はしていても脳の病変は少しずつ確実に進んでいくので、
既製品とあまり効き目の時間に差はないというのは薄々わかっていた事実でした。
お姉ちゃんたちには気付かれないよう、薬の量は少しずつ増やしていました。
ある一定量からはさすがにばれそうだったので、今度は食事にも混ぜ始めました。
しかしそれでも限界は少しずつ忍び寄ってきていたのです。
K-lD-Y1127はベースとなったL-DOPA系と同じく習慣性を持っていました。
そもそも抑制はしていても脳の病変は少しずつ確実に進んでいくので、
既製品とあまり効き目の時間に差はないというのは薄々わかっていた事実でした。
お姉ちゃんたちには気付かれないよう、薬の量は少しずつ増やしていました。
ある一定量からはさすがにばれそうだったので、今度は食事にも混ぜ始めました。
しかしそれでも限界は少しずつ忍び寄ってきていたのです。
64: 2011/01/25(火) 01:55:18.52
最初に限界が近づいたのは澪さんでした。
演奏後やリハビリ後などに手首や足首の痙攣が起こるようになりました。
それは1日遅れてお姉ちゃんに、3日遅れて紬さんと律さんにも現れました。
この頃になると、もう誰もその話に触れようとしません。
みんな何も言わなくてもわかっているのです。
そして4日後に迫った最終ライブに向けて、祈り続けているのです。
演奏後やリハビリ後などに手首や足首の痙攣が起こるようになりました。
それは1日遅れてお姉ちゃんに、3日遅れて紬さんと律さんにも現れました。
この頃になると、もう誰もその話に触れようとしません。
みんな何も言わなくてもわかっているのです。
そして4日後に迫った最終ライブに向けて、祈り続けているのです。
65: 2011/01/25(火) 01:57:28.23
ライブ2日前、とうとう悪魔は牙をあらわにしました。
練習後、澪さんは痙攣とともに軽い嗜眠状態に陥ってしまいました。
突然の、本当に一瞬の出来事でした。
目を覚ますまでは5分と短かったのですが、これが伸びることは容易に想像できます。
そしてそれを縮めることはできません。
試験中の薬の限界投与量を過ぎて投与することは法令上許されません。
破ってしまえば和ちゃんや紬さんのお父さんに多大な迷惑がかかります。
そして私にできるのは、祈ることだけでした。
練習後、澪さんは痙攣とともに軽い嗜眠状態に陥ってしまいました。
突然の、本当に一瞬の出来事でした。
目を覚ますまでは5分と短かったのですが、これが伸びることは容易に想像できます。
そしてそれを縮めることはできません。
試験中の薬の限界投与量を過ぎて投与することは法令上許されません。
破ってしまえば和ちゃんや紬さんのお父さんに多大な迷惑がかかります。
そして私にできるのは、祈ることだけでした。
66: 2011/01/25(火) 01:59:38.82
<律ノカタリ>
ライブ当日朝、食事をとりながら私たちは他愛もない会話を繰り広げていた。
ライブの話題はあえて出さない。
始まる10分前、12時過ぎたくらいから、一気にすればいい。
今必要なのはリラックスをすること。
そして悪魔を極力近寄せないことだ。
ライブ当日朝、食事をとりながら私たちは他愛もない会話を繰り広げていた。
ライブの話題はあえて出さない。
始まる10分前、12時過ぎたくらいから、一気にすればいい。
今必要なのはリラックスをすること。
そして悪魔を極力近寄せないことだ。
67: 2011/01/25(火) 02:01:47.74
悪魔は4人で話している時や演奏をしている時に攻撃してくることはない。
卑怯なのは、それらが終わった直後に攻撃を仕掛けてくることだ。
心をくじくためには最良のタイミングだ。
だからこそ私たちは話すのを辞めなかった。
どんなつまらない話題でも、言葉のキャッチボールを続けた。
それが今の私たちにできる精一杯の、唯一の抵抗だから。
卑怯なのは、それらが終わった直後に攻撃を仕掛けてくることだ。
心をくじくためには最良のタイミングだ。
だからこそ私たちは話すのを辞めなかった。
どんなつまらない話題でも、言葉のキャッチボールを続けた。
それが今の私たちにできる精一杯の、唯一の抵抗だから。
68: 2011/01/25(火) 02:03:57.84
<憂ノカタリ>
想定通り、不随意運動や短時間嗜眠はまだ気分次第である程度制御できるようです。
『楽しい』『うれしい』『興奮する』といった感情がそれらを抑制するカギとなります。
それによってドーパミンが分泌されている間は、パーキンソン症候群が収まるのです。
ですがそれが終わった後、達成感が少しずつ薄れてきたら・・・
想像するのはやめます。
私は他の医師と梓ちゃんに連絡を取り、会場内に医療班を待機させました。
お姉ちゃんたちに見つからないよう、気付かれないよう。
そして、それでいて、抜かりがないように。
想定通り、不随意運動や短時間嗜眠はまだ気分次第である程度制御できるようです。
『楽しい』『うれしい』『興奮する』といった感情がそれらを抑制するカギとなります。
それによってドーパミンが分泌されている間は、パーキンソン症候群が収まるのです。
ですがそれが終わった後、達成感が少しずつ薄れてきたら・・・
想像するのはやめます。
私は他の医師と梓ちゃんに連絡を取り、会場内に医療班を待機させました。
お姉ちゃんたちに見つからないよう、気付かれないよう。
そして、それでいて、抜かりがないように。
69: 2011/01/25(火) 02:06:06.69
<和ノカタリ>
『娘を楽にしてやってください』
ムギのお父さんからそう頼まれたのは去年のことだった。
『これ以上先輩たちを苦しめたくありません!!!』
梓が私の前で泣き叫んだのは2年前のことだった。
『お姉ちゃん、いつでも生きるのを辞めていいのに、それもできないんだ。』
憂がノイローゼを患い始めたのは6年前のことだった。
『今、楽にしてあげるからね。』
思い余って病床の唯の首に手をかけたのは、8年前のことだった。
『娘を楽にしてやってください』
ムギのお父さんからそう頼まれたのは去年のことだった。
『これ以上先輩たちを苦しめたくありません!!!』
梓が私の前で泣き叫んだのは2年前のことだった。
『お姉ちゃん、いつでも生きるのを辞めていいのに、それもできないんだ。』
憂がノイローゼを患い始めたのは6年前のことだった。
『今、楽にしてあげるからね。』
思い余って病床の唯の首に手をかけたのは、8年前のことだった。
70: 2011/01/25(火) 02:08:17.83
唯は確かに涙を流した。
私も涙を流した。
そしてその時決意した。
もう一度唯たちに『夢』を見せてあげたいと。
そして、楽にしてあげたいと。
私も涙を流した。
そしてその時決意した。
もう一度唯たちに『夢』を見せてあげたいと。
そして、楽にしてあげたいと。
71: 2011/01/25(火) 02:10:34.46
和「どう?私らしい卑怯で冷酷で、それでいて完璧な作戦でしょ?」
10か月ほど前、バーの一角に呼び出した梓に計画書を渡した。
彼女は計画書に一通り目を通すと、無言でそれをカバンにしまった。
和「同意してくれるのね?」
梓「スコッチください。」
ほどなくして差し出されたウィスキーのグラスを手に取り、彼女はそれを一気にあけた。
知っている限り、彼女はお酒を飲まない。いや、飲めないはずだ。
そんな彼女は深々とため息をついてもう一杯頼むと、小さく舌打ちをして呟いた。
梓「・・・同意しますよ。」
10か月ほど前、バーの一角に呼び出した梓に計画書を渡した。
彼女は計画書に一通り目を通すと、無言でそれをカバンにしまった。
和「同意してくれるのね?」
梓「スコッチください。」
ほどなくして差し出されたウィスキーのグラスを手に取り、彼女はそれを一気にあけた。
知っている限り、彼女はお酒を飲まない。いや、飲めないはずだ。
そんな彼女は深々とため息をついてもう一杯頼むと、小さく舌打ちをして呟いた。
梓「・・・同意しますよ。」
72: 2011/01/25(火) 02:12:44.69
<憂ノカタリ>
私はすべてを聞かされ、知っていました。
K-lD-Y1127の致命的な副作用を。
そしてその裏に控える梓ちゃんたちの計画を。
この薬は体内に入るとドーパミンになり、それがお姉ちゃんたちの活動を維持しています。
しかしある生薬群と一緒に服用すると、ドーパミンが生成されず分解されてしまうのです。
それどころか分解された物質の一部は神経毒の一種となり、呼吸を緩やかに止めます。
その薬の処方がライブの後の夕飯に『胃薬』名義で入るのです。
処方量から換算するに、1日以内に心停止に陥るでしょう。
私はすべてを聞かされ、知っていました。
K-lD-Y1127の致命的な副作用を。
そしてその裏に控える梓ちゃんたちの計画を。
この薬は体内に入るとドーパミンになり、それがお姉ちゃんたちの活動を維持しています。
しかしある生薬群と一緒に服用すると、ドーパミンが生成されず分解されてしまうのです。
それどころか分解された物質の一部は神経毒の一種となり、呼吸を緩やかに止めます。
その薬の処方がライブの後の夕飯に『胃薬』名義で入るのです。
処方量から換算するに、1日以内に心停止に陥るでしょう。
73: 2011/01/25(火) 02:15:04.29
和ちゃんからこの話を聞いたとき、私は涙することもなく即座に同意をしました。
これ以上苦しむお姉ちゃんを見たくない。
傷つけず苦しまず、最後に夢を見て永遠の眠りにつけるのなら。
それがお姉ちゃんに残された最後の最高の道だと思ったのでした。
これ以上苦しむお姉ちゃんを見たくない。
傷つけず苦しまず、最後に夢を見て永遠の眠りにつけるのなら。
それがお姉ちゃんに残された最後の最高の道だと思ったのでした。
74: 2011/01/25(火) 02:17:23.11
<律ノカタリ>
唯『あぁカミサマお願い 一度だけの』
紬『Miracle Timeください!』
ライブが終わって病室に戻った後、3人の声を聴きながら、私は右腕を握った。
澪『もしすんなり話せれば、そのあとは』
おさまれ、私の右手。
唯『どうにかなるよね』
おさまれ、私の眠気。
唯『ふわふわ時間♪』
澪紬『ふわふわ時間♪』
唯「・・・りっちゃん、元気ないよ?」
唯『あぁカミサマお願い 一度だけの』
紬『Miracle Timeください!』
ライブが終わって病室に戻った後、3人の声を聴きながら、私は右腕を握った。
澪『もしすんなり話せれば、そのあとは』
おさまれ、私の右手。
唯『どうにかなるよね』
おさまれ、私の眠気。
唯『ふわふわ時間♪』
澪紬『ふわふわ時間♪』
唯「・・・りっちゃん、元気ないよ?」
76: 2011/01/25(火) 02:20:08.01
気が付くと、唯が歌うのをやめて私の方を向いていた。
唯「大丈夫だよ、りっちゃん。私もね、さっきからね、頭がぼーっとしてるんだ。」
紬「私なんか、もう足首が固まって動かないのよ。ペダル、踏めないわ・・・。」
澪「私だって、もう、思い出せない単語がいくつかあるんだ。」
そうか。リーダーは私だもんな。
私まで元気がなくてどうするんだッ!
がんばれ田井中律!
唯「大丈夫だよ、りっちゃん。私もね、さっきからね、頭がぼーっとしてるんだ。」
紬「私なんか、もう足首が固まって動かないのよ。ペダル、踏めないわ・・・。」
澪「私だって、もう、思い出せない単語がいくつかあるんだ。」
そうか。リーダーは私だもんな。
私まで元気がなくてどうするんだッ!
がんばれ田井中律!
77: 2011/01/25(火) 02:22:17.49
律「ばーか。お前らみんな心配しすぎなんだよ!」
律「私たちには不出来な姉よりずっと頼りになる平沢先生がいるだろ!?」
唯がぷーっと頬を膨らませた。
唯「むうっ!りっちゃんひどいっ!!!」
律「いざとなれば薬品のエキスパートの梓も厚生省のお役人の和もいる。」
律「あんまりくよくよすんじゃない!」
律「だから・・・だから・・・ああっ、もう!」
律「心配するな!私たちはいつまでもずっと一緒なんだぞっ!!!」
律「私たちには不出来な姉よりずっと頼りになる平沢先生がいるだろ!?」
唯がぷーっと頬を膨らませた。
唯「むうっ!りっちゃんひどいっ!!!」
律「いざとなれば薬品のエキスパートの梓も厚生省のお役人の和もいる。」
律「あんまりくよくよすんじゃない!」
律「だから・・・だから・・・ああっ、もう!」
律「心配するな!私たちはいつまでもずっと一緒なんだぞっ!!!」
78: 2011/01/25(火) 02:24:27.00
律「ふわふわ時間!」
唯「ふ、ふわふわ時間!」
律「ふわふわ時間!」
唯紬「ふわふわ時間!!」
律「ふわふわ時間!」
唯紬澪「ふわふわ時間!!!」
梓「・・・」
唯「ふ、ふわふわ時間!」
律「ふわふわ時間!」
唯紬「ふわふわ時間!!」
律「ふわふわ時間!」
唯紬澪「ふわふわ時間!!!」
梓「・・・」
80: 2011/01/25(火) 02:26:40.66
<憂ノカタリ>
ライブの後の夕飯は、お姉ちゃんの大好きなカレーでした。
唯「ういー」
憂「どうしたの、お姉ちゃん?」
お姉ちゃんは不意に私の名前を呼んで、顔をキリッと引き締めました。
唯「憂、10年以上も私たちのお世話をしてくれてありがとう!本当に感謝してる!」
憂「ど、どうしたのお姉ちゃん、改まって。」
唯「だけどどうしてももう1つだけ、お願いを聞いてほしいんだ!」
ライブの後の夕飯は、お姉ちゃんの大好きなカレーでした。
唯「ういー」
憂「どうしたの、お姉ちゃん?」
お姉ちゃんは不意に私の名前を呼んで、顔をキリッと引き締めました。
唯「憂、10年以上も私たちのお世話をしてくれてありがとう!本当に感謝してる!」
憂「ど、どうしたのお姉ちゃん、改まって。」
唯「だけどどうしてももう1つだけ、お願いを聞いてほしいんだ!」
81: 2011/01/25(火) 02:28:52.94
憂「お願い?」
その言葉に、他の3人と一緒にいた梓の目線も私たちに集まりました。
唯「うん。私たちは、どう考えたって長生きできないしさ。だからそのあとの話。」
憂「お姉ちゃん!!!」
思わず出した私の大声に、ナースステーションから看護師さんが駆けつけてきてしまいました。
唯「私が氏んだら、ううん、氏んでも、だけどさ」
唯「私みたいな人の病気を治す、立派なお医者さんになってね。」
憂「えっ?」
その言葉に、他の3人と一緒にいた梓の目線も私たちに集まりました。
唯「うん。私たちは、どう考えたって長生きできないしさ。だからそのあとの話。」
憂「お姉ちゃん!!!」
思わず出した私の大声に、ナースステーションから看護師さんが駆けつけてきてしまいました。
唯「私が氏んだら、ううん、氏んでも、だけどさ」
唯「私みたいな人の病気を治す、立派なお医者さんになってね。」
憂「えっ?」
82: 2011/01/25(火) 02:31:10.60
唯「私の病気、治し方がはっきりしてないんだよね、あずにゃん?」
急に話を振られて、梓ちゃんは一瞬困ってしまいました。
梓「え、ええ。はっきりと確立はしていません。」
唯「だからさ、他にもこの病気になっている人を救ってあげてほしいんだ。」
唯「間違っても私の後を追ったりはしないでね?」
憂「!?」
梓「・・・」
急に話を振られて、梓ちゃんは一瞬困ってしまいました。
梓「え、ええ。はっきりと確立はしていません。」
唯「だからさ、他にもこの病気になっている人を救ってあげてほしいんだ。」
唯「間違っても私の後を追ったりはしないでね?」
憂「!?」
梓「・・・」
83: 2011/01/25(火) 02:33:23.64
唯「私はもう元気になった。だから今度は他の人を元気にさせてあげてよ。」
唯「それで、私たちと同じような、『最後の』素晴らしい夢を見せてあげてよ。」
唯「これがお姉ちゃんとしての最初で最後で最大のお願いだよっ!」フンスッ
・・・その1時間後、お姉ちゃんは嗜眠状態に陥りました。
唯「それで、私たちと同じような、『最後の』素晴らしい夢を見せてあげてよ。」
唯「これがお姉ちゃんとしての最初で最後で最大のお願いだよっ!」フンスッ
・・・その1時間後、お姉ちゃんは嗜眠状態に陥りました。
84: 2011/01/25(火) 02:35:44.51
ピー・・・
憂「午前5時5分、氏亡確認」
予め準備しておいた4枚のうち最後の白い布をお姉ちゃんの顔にそっとかぶせます。
お姉ちゃんが亡くなったのは2019年5月12日、ライブの翌朝のことでした。
3時半過ぎに澪さんと紬さんが、4時過ぎに律さんが亡くなった後でした。
薬の投与量を調整したせいか、4人ともほぼ同じ時間に亡くなりました。
憂「午前5時5分、氏亡確認」
予め準備しておいた4枚のうち最後の白い布をお姉ちゃんの顔にそっとかぶせます。
お姉ちゃんが亡くなったのは2019年5月12日、ライブの翌朝のことでした。
3時半過ぎに澪さんと紬さんが、4時過ぎに律さんが亡くなった後でした。
薬の投与量を調整したせいか、4人ともほぼ同じ時間に亡くなりました。
85: 2011/01/25(火) 02:37:53.04
不思議と、涙は流れないものですね。
あれほど大好きだったお姉ちゃんの最期をきちんと看取れたからでしょうか?
それとも、この後お姉ちゃんとの最後の約束を反故にしようとしているからでしょうか。
いずれにせよ、私の手の中にある注射を打てば、私の心臓は止まるのです。
平父「唯・・・憂・・・」
私はハッとして病室の入り口を見ました。
あれほど大好きだったお姉ちゃんの最期をきちんと看取れたからでしょうか?
それとも、この後お姉ちゃんとの最後の約束を反故にしようとしているからでしょうか。
いずれにせよ、私の手の中にある注射を打てば、私の心臓は止まるのです。
平父「唯・・・憂・・・」
私はハッとして病室の入り口を見ました。
86: 2011/01/25(火) 02:40:07.11
そこには部屋を出て行こうとする娘の遺体を見て涙を流す男女の姿がありました。
一瞬、私は手持ちの塩化カリウムを首筋から注入してやりたい衝動に駆られました。
それをこらえ、誰もいなくなった病室から出て2人の前に立ちました。
憂「申し訳ありませんが身内以外の方はご遠慮願います。」
すると父は私の腕をつかんで頭を下げました。
平父「憂、ごめん。2人にはつらいことばかり
私はその手を勢いよく振り払いました。
一瞬、私は手持ちの塩化カリウムを首筋から注入してやりたい衝動に駆られました。
それをこらえ、誰もいなくなった病室から出て2人の前に立ちました。
憂「申し訳ありませんが身内以外の方はご遠慮願います。」
すると父は私の腕をつかんで頭を下げました。
平父「憂、ごめん。2人にはつらいことばかり
私はその手を勢いよく振り払いました。
87: 2011/01/25(火) 02:42:16.77
憂「今更何をお話するつもりはありません。私は姉の氏亡手続きがありますので、これで。」
去り際の私の背中に、父の小さな消え入りそうな声が聞こえてきました。
平父「それでも、お前たち2人とも娘なんだ。それだけは忘れないで・・・ください。」
憂「・・・心の隅に止めておきます。」
私は持っていた注射器をそばの廃棄物入れに放り込み、ナースステーションへ向かいました。
振り返る気はありません。
ただお姉ちゃんの氏に際を見せてあげられなかったのは、少しだけかわいそうに思いました。
やっぱり父と母なんですから。
去り際の私の背中に、父の小さな消え入りそうな声が聞こえてきました。
平父「それでも、お前たち2人とも娘なんだ。それだけは忘れないで・・・ください。」
憂「・・・心の隅に止めておきます。」
私は持っていた注射器をそばの廃棄物入れに放り込み、ナースステーションへ向かいました。
振り返る気はありません。
ただお姉ちゃんの氏に際を見せてあげられなかったのは、少しだけかわいそうに思いました。
やっぱり父と母なんですから。
88: 2011/01/25(火) 02:44:26.36
<和ノカタリ>
『これから部活に行ってきます。いろいろお世話になりました。 梓』
梓からメールが入ったのは朝の通勤中だった。
端末をたたんだ私は、丸の内を歩きながら考えた。
そして、初夏の青空を見上げ、あの子たちにお別れを告げることにした。
和「よかったのよね、みんな。・・・ごめんなさい、みんな。」
そして目を軽く腕でぬぐい、私は歩き始める。
あの子たちの歌が、どこかから聞こえてきた気がする。
『ふわふわ時間♪』
和「ふわふわ時間♪」
『これから部活に行ってきます。いろいろお世話になりました。 梓』
梓からメールが入ったのは朝の通勤中だった。
端末をたたんだ私は、丸の内を歩きながら考えた。
そして、初夏の青空を見上げ、あの子たちにお別れを告げることにした。
和「よかったのよね、みんな。・・・ごめんなさい、みんな。」
そして目を軽く腕でぬぐい、私は歩き始める。
あの子たちの歌が、どこかから聞こえてきた気がする。
『ふわふわ時間♪』
和「ふわふわ時間♪」
89: 2011/01/25(火) 02:46:35.95
<聡ノカタリ>
聡「姉ちゃん、ただいま。」
小さくなった姉ちゃんを小倉の実家に連れてきたのは、葬式の1週間後だった。
先に帰った父さんと母さんを追う形で家に帰り、骨壺を仏壇に乗せた。
そしてその時、重要な忘れ物を思い出し、慌てて取りに戻って更に1日経過してしまった。
聡「ごめんよ、大切なものを忘れてた。」
ことんと音を立てて骨壺に触れたのは、2本のボロボロになったスティック。
聡「最後のライブ、マジでかっこよかったよ。」
聡「姉ちゃん、ただいま。」
小さくなった姉ちゃんを小倉の実家に連れてきたのは、葬式の1週間後だった。
先に帰った父さんと母さんを追う形で家に帰り、骨壺を仏壇に乗せた。
そしてその時、重要な忘れ物を思い出し、慌てて取りに戻って更に1日経過してしまった。
聡「ごめんよ、大切なものを忘れてた。」
ことんと音を立てて骨壺に触れたのは、2本のボロボロになったスティック。
聡「最後のライブ、マジでかっこよかったよ。」
90: 2011/01/25(火) 02:48:45.88
聡「姉ちゃん・・・」
どうやら俺のシスコンは10年経っても治らなかったらしい。
涙が止まらない。悔しい。
『なーに泣いてんだ、いい年こいて!』
仏壇から声がした?そんなはずはない。
でも、その言葉はありがたく頂いておくよ、姉ちゃん。
田井中聡、これからも頑張りますよ!
どうやら俺のシスコンは10年経っても治らなかったらしい。
涙が止まらない。悔しい。
『なーに泣いてんだ、いい年こいて!』
仏壇から声がした?そんなはずはない。
でも、その言葉はありがたく頂いておくよ、姉ちゃん。
田井中聡、これからも頑張りますよ!
91: 2011/01/25(火) 02:50:55.43
<律ノカタリ>
律「さーて、と。私の用も終わったし、始めますか!」
聡が届けてくれたスティックを持ち、カウントのために振り上げた。
澪「走んなよ?走ったら怒るぞ?」
紬「うふふ、でも少し走るくらいがちょうどいいわ、りっちゃん。」
唯「大丈夫だよ!りっちゃんのやりやすいようにやって!」
律「・・・そうだn『遅れました!』」
声の主を見て、私の方は声を失った。
律「さーて、と。私の用も終わったし、始めますか!」
聡が届けてくれたスティックを持ち、カウントのために振り上げた。
澪「走んなよ?走ったら怒るぞ?」
紬「うふふ、でも少し走るくらいがちょうどいいわ、りっちゃん。」
唯「大丈夫だよ!りっちゃんのやりやすいようにやって!」
律「・・・そうだn『遅れました!』」
声の主を見て、私の方は声を失った。
92: 2011/01/25(火) 02:53:05.35
唯「あずにゃんだ!」
紬「あらあら、やっぱり来ちゃったのね。」
澪「仕方ないなぁ。梓、早く用意しろ。」
梓は背負ってきたムスタングを手早く広げ、アンプにセットした。
律「お前、まさか・・・」
唖然としていると、梓は私に向かって子供のような笑みを浮かべて言ってきた。
梓「あれ?ひょっとして律先輩、私がいなくてさびしかったんですか?」
紬「あらあら、やっぱり来ちゃったのね。」
澪「仕方ないなぁ。梓、早く用意しろ。」
梓は背負ってきたムスタングを手早く広げ、アンプにセットした。
律「お前、まさか・・・」
唖然としていると、梓は私に向かって子供のような笑みを浮かべて言ってきた。
梓「あれ?ひょっとして律先輩、私がいなくてさびしかったんですか?」
93: 2011/01/25(火) 02:55:15.21
唯「あ~、りっちゃん真っ赤!」
澪「おーおー、妬けるねえ。」
紬「いいのよいいのよ、続けて続けて。」
律「・・・だーっ、もう、いくぞっ!ふわふわ時間!」
カウントダウンと同時にギターが走り出す。
そう、止まっていたみんなの時間は、やっと動き出したのだ。
澪「おーおー、妬けるねえ。」
紬「いいのよいいのよ、続けて続けて。」
律「・・・だーっ、もう、いくぞっ!ふわふわ時間!」
カウントダウンと同時にギターが走り出す。
そう、止まっていたみんなの時間は、やっと動き出したのだ。
94: 2011/01/25(火) 02:58:52.99
<あとがき>
純「平沢氏は、現在も桜ヶ丘病院に現場の医師として勤務されています。」
純「しかし彼女があの奇跡に出会ってから今年で40年が経過しましたが、」
純「今でも彼女はこの病気を研究し続けています。」
純「この病気のまだ見つからぬ決定的な治療法を、今日も追い続けているのです。」
Fin
純「平沢氏は、現在も桜ヶ丘病院に現場の医師として勤務されています。」
純「しかし彼女があの奇跡に出会ってから今年で40年が経過しましたが、」
純「今でも彼女はこの病気を研究し続けています。」
純「この病気のまだ見つからぬ決定的な治療法を、今日も追い続けているのです。」
Fin
95: 2011/01/25(火) 03:01:06.64
というわけで、終わります。
支援してくださった皆様、叩いてくださった皆様、ありがとうございました。
トイレに行って戻ってきて質問があれば答えて、落ちようと思います。
支援してくださった皆様、叩いてくださった皆様、ありがとうございました。
トイレに行って戻ってきて質問があれば答えて、落ちようと思います。
96: 2011/01/25(火) 03:06:41.24
乙…
難病に苦しむ人がいる事を心に留めておくよ
難病に苦しむ人がいる事を心に留めておくよ
100: 2011/01/25(火) 03:09:56.05
特にいないようなので、追記を2つほど投下しておきます。
元ネタ:映画『レナードの朝』(1989年)及びオリバー・サックス著の同名ノンフィクション小説
なおレナードの朝のエンディングはもっと鬱です。
ハッピーエンドにしたくて違うエンディングに強制変更しました。
気になる方は映画版『レナードの朝』を見てください。
元ネタ:映画『レナードの朝』(1989年)及びオリバー・サックス著の同名ノンフィクション小説
なおレナードの朝のエンディングはもっと鬱です。
ハッピーエンドにしたくて違うエンディングに強制変更しました。
気になる方は映画版『レナードの朝』を見てください。
105: 2011/01/25(火) 03:17:14.22
追記2
初投下につき上の方で跳満くらいました。
でも三倍くらいは食らうんじゃないか、役満でもしゃーねーなくらいには思っていたので、胸をなでおろしています。
いつも東上線の中でエレ速さんを楽しみに見ていて、いつか書きたいと思って勢いに乗りガンガン書きました。
しかし投下してみると、諸作者方のすごさがわかります。
もう1個、今度は映画+咲で書いてみたいと考えています。
また機会があれば、よろしくお願いします。
初投下につき上の方で跳満くらいました。
でも三倍くらいは食らうんじゃないか、役満でもしゃーねーなくらいには思っていたので、胸をなでおろしています。
いつも東上線の中でエレ速さんを楽しみに見ていて、いつか書きたいと思って勢いに乗りガンガン書きました。
しかし投下してみると、諸作者方のすごさがわかります。
もう1個、今度は映画+咲で書いてみたいと考えています。
また機会があれば、よろしくお願いします。
106: 2011/01/25(火) 03:19:30.26
おつかれさん次も待ってる
引用元: 唯「おはよ、憂」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります